Mood
不穏
読み味「不穏」に分類された 691 作品。
- 001 2026 吸血鬼 きゅうけつき 女性が中学生になると若さや美しさで十二等級に順位付けされ、社会的地位と財産のある男性に望まれれば十五歳で結婚を強いられる架空社会を描くディストピア長篇。拒否した女性は「へびつかい」と呼ばれ迫害される世界で、中学生の有紗は友人たちと学校生活を送りながら、美術館で出会ったアナウンサーの美優と開業医の白井…
- 002 2026 彼女のカロート かのじょのかろーと 『彼女のカロート』は、表題作「彼女のカロート」と「宦官への授業」を収める作品集。表題作では、耳が聞こえなくなった女性アナウンサーから新しい墓を依頼された主人公の日常が、彼女とのずれた応答によって静かに侵食されていく。もう一篇では、読むことに困難を抱えながら文学に向かう青年がシュールな冒険に巻き込まれ…
- 003 2026 姥皮 うばかわ 『姥皮』は、『新潮』2026年4月号掲載の創作です。女系の強い家に、大叔母あけ美さんから譲られた「皮」があるという奇譚を起点にします。「皮」は身体の一部でありながら、家に伝わるもの、受け渡されるものとして語られ、血縁と欲望の境界を曖昧にします。皮膚というもっとも個人的なものが家系の持ち物になる設定に…
- 004 2026 空洞 くうどう 『空洞』は、図野象が『おわりのそこみえ』で第60回文藝賞優秀作となった後に発表した受賞第一作です。河出書房新社の『文藝』2026年夏季号紹介では、若くして死んだ友人の葬式に出席するために会社を辞める語り手を起点に、恋・仕事・友情の地獄めぐりの果てを描く作品として紹介されています。デビュー作の切迫した…
- 005 2025 細長い場所 ほそながいばしょ 『細長い場所』は、名前、記憶、肉体を失い、気配や残存となった「わたしたち」が旅をする幻想的な小説です。河出書房新社公式は、生と死のあわいにある不思議な風景として作品を紹介しています。個であることがほどけていく語りを通じて、誰が語り、誰が残っているのかという境界も揺らぎ、旅そのものが死者と生者の関係を…
- 006 2025 ジャスティス・マン じゃすてぃす・まん 『ジャスティス・マン』は、仙台の老舗ホテルに勤続する初老ホテルマン・大山茂が、自分の「正義」を周囲に押しつけていく長篇です。顧客、部下、妻、書店員への振る舞いは、本人の信念とは裏腹に深刻な軋轢を生んでいきます。特撮ヒーローへの自己同一化が、倫理ではなく支配や攻撃へ転じる過程が読みどころです。滑稽さと…
- 007 2025 帰れない探偵 かえれないたんてい 語り手の「わたし」は世界探偵委員会連盟に属する探偵だが、探偵事務所でもあり家でもある部屋に突然帰れなくなる。急な坂の街、雨でも傘を差さない街、夏が続き夜が来ない街、砂と太陽の街など、変化し続ける世界の都市をめぐりながら、「帰れない」状態そのものを抱えたまま移動していく。事件を解決するよりも、街の手触…
- 008 2025 関係のないこと かんけいのないこと 『関係のないこと』は、パンデミック後の東京で、自分とは切り離してきたはずの出来事や他者の痛みが、ふいに生活へ入り込んでくる瞬間を描く作品集です。表題作では、弁護士として世間と折り合ってきた人物が、見ないようにしてきた「壁」に取り囲まれていく。淡々とした語りの中で、社会的な出来事を自分の外側に置く態度…
- 009 2025 彼の左手は蛇 かれのひだりてはへび 『彼の左手は蛇』は、仕事を辞め、女性と別れて、蛇信仰の残る土地に来た男が「この手記」を書くところから展開する小説です。白蛇を祀る神社、毒蛇狩り、議員の死、刑事、謎めいた人物たちが絡み、蛇のイメージが信仰・恐怖・罪悪感・暴力の記憶を結びつけていく。地方の伝承と個人の過去が重なり、現実の捜査譚と幻想的な…
- 010 2025 熊はどこにいるの くまはどこにいるの 『熊はどこにいるの』は、震災から7年後の地で、ショッピングモールで保護された身元不明の幼子と、暴力から逃れて山奥の家に暮らす女たちをめぐる小説です。リツ、アイ、サキ、ヒロらの視点が交錯し、保護と加害、避難場所と閉ざされた共同体の危うさを同時に浮かび上がらせる。安全な場所を作ろうとする営みが、別の支配… 第61回 谷崎賞
- 011 2025 女の子の背骨 おんなのこのせぼね 『女の子の背骨』は、先天性筋疾患を抱える10歳の少女ガゼルの家族旅行を描く表題作と、中篇「オフィーリア23号」を収めた第二小説集です。病気の姉、障害をもつ身体、家族、性、文学表象をめぐる言葉が、前作『ハンチバック』以後の市川沙央の問題意識をさらに広げる。少女の身体をめぐる語りは、痛みや介助を説明する…
- 012 2025 世界99 せかいきゅうじゅうきゅう 『世界99』は、性格のない如月空子が、コミュニティごとにふさわしい人格を作って生き延びる上下巻の大長編です。空子の世界には、当初はかわいいペットのような存在だったピョコルンがいて、技術の進展により社会のあり方を変えていきます。人格を使い分ける空子の生存術は、同調圧力と自己像の不安定さを極端なかたちで… 第78回 野間文芸賞
- 013 2025 その針がさすのは そのはりがさすのは 『その針がさすのは』は、再開発が進む東京・中野に住む「僕」が、街の過去と自分の身体の出来事を結びつけていく小説です。戦前に満州国と中野が電信ケーブルでつながっていたという話、不妊治療手術、時計のイメージが重なり、日常の街が歴史の深部へ沈み込む。個人の身体の時間と都市の記憶が同じ針に触れられるように接…
- 014 2025 百日と無限の夜 ひゃくにちとむげんのよる 『百日と無限の夜』は、第一子の妊娠中に切迫早産で入院した「わたし」が、横たわる時間のなかで出産と生命をめぐる幻視の旅へ入っていく長篇です。能『隅田川』の女物狂いを案内人に、中世の京、駆け込み寺、若狭のお水送り、海辺の産小屋へと時空を越えて進む構成が、病室の身体感覚と神話的な想像力を結びつける。動けな… 第42回 織田作之助賞
- 015 2025 ティータイム ティータイム 『ティータイム』は、『百年泥』で芥川賞を受賞した石井遊佳による、奇想の強い4篇を収めた短篇集です。大人びた兄妹、インドから脱出できない日本人、電車の網棚の上で暮らす女性、恐ろしいサンタクロースなど、現実の足場を少しずつ外す人物や状況が並ぶ。短篇ごとに場所や常識がずれていき、読者は笑いと不安のあいだに…
- 016 2025 受け手のいない祈り うけてのいないいのり 『受け手のいない祈り』は、感染症拡大で地域の救急医療が逼迫するなか、患者を受け入れ続ける病院で働く青年医師・公河を描く長篇です。長時間勤務と極度の疲労が、死、狂気、使命感、食欲や時間感覚の乱れをひとつの身体に押し寄せさせる。医療現場の切迫を記録的に扱うだけでなく、祈りや責任の向かう先が失われる感覚を…
- 017 2025 YABUNONAKA ヤブノナカ 『YABUNONAKA』は、文芸誌元編集長への性加害告発をきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の人物たちの日常が絡み合っていく長篇です。MeToo運動、マッチングアプリ、SNSといった現代の環境を背景に、性、権力、暴力、愛、そして「わかりあえないこと」の先を群像劇として描く。文芸業界そのものを…
- 018 2025 八月のセノーテ はちがつのせのーて 『八月のセノーテ』は、2025年7月に朝日新聞出版から刊行された大原鉄平の単行本。Books出版書誌データベースの内容紹介では、人工島で暮らす水泳部の中学一年生をめぐる表題作と、第10回林芙美子文学賞受賞作「森は盗む」の収録を確認できる。NDLサーチでも収録作として「八月のセノーテ」と「森は盗む」が…
- 019 2025 愛について僕たちが知らないすべてのこと あいについてぼくたちがしらないすべてのこと 『愛について僕たちが知らないすべてのこと』は、夏休みのある日、学校に集まった靴子、花びら、譲、隆春の四人が突然現れた兵士たちに監禁されるところから展開する長篇です。登場人物たちによる物語と終わりの見えない対話を通じて、言葉を交わしてもわかり合えない者たちの時間、愛という言葉に包まれてきた暴力を描きま…
- 020 2025 橘の家 たちばなのいえ 『橘の家』は、中西智佐乃が『新潮』2025年3月号に発表し、同年6月に新潮社から刊行した小説です。幼い頃に2階から落ちたものの庭の橘の木のおかげで助かった恵実は、木の力を媒介する存在だという噂によって、子どもを望む人々から頼られるようになります。家に伝わる力への期待は、恵実の身体と役割を周囲の欲望に… 第38回 三島賞
- 021 2025 愛の獣は光の海で溺れ死ぬ あいのけものはひかりのうみでおぼれしぬ 『愛の獣は光の海で溺れ死ぬ』は、金子薫が2025年に河出書房新社から刊行した連作小説集です。河出公式は、幻覚剤が蔓延するスラム街〈奇天座〉を舞台に、人間をやめる快楽へ流される者たちと、人間であり続けようとする西尾の物語として紹介しています。現実と虚構、変身、道化、言葉といったモチーフを連結し、寓話的…
- 022 2025 ズッキーニ病 ずっきーにびょう 『ズッキーニ病』は、『新潮』2025年4月号掲載の短篇です。特定の野菜に執着する母を、父の死以前から何かが変わっていたのではないかという回想的な視線で捉えます。食卓にあるはずの身近なものが、家族の記憶や母の変化を測る奇妙なしるしに変わり、日常の中で見過ごされてきた異変が少しずつ輪郭を持ちはじめる。家…
- 023 2025 庭に接ぐ にわに つぐ 『庭に接ぐ』は、才谷景が『海を吸う』で第60回文藝賞〈短篇部門〉優秀作となった後に発表した受賞第一作です。森へ続く〈庭〉のある家で暮らす父と娘を中心に、森から戻った父の変調と、二人きりの箱庭を侵食するものを描きます。2026年刊行のデビュー作品集『海を吸う/庭に接ぐ』に収録され、受賞作と並べて、身体…
- 024 2025 BOXBOXBOXBOX ボックスボックスボックスボックス 『BOXBOXBOXBOX』は、薄霧のたちこめる宅配所で箱を仕分ける安を中心に、単調な労働と禁断の欲望を描くベルトコンベア・サスペンス。ほとんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想して労働をやり過ごす安は、ある箱の中身を覗いたことをきっかけに、箱が次々と消えていく現象に巻き込まれる。箱の中身を知りたい衝… 第62回 文藝賞
- 025 2025 子供部屋同盟 『子供部屋同盟』は、高橋弘希が2025年に東洋経済新報社から刊行した長篇小説です。出版社公式は、復讐代行組織を軸にした世直しエンタメとして紹介し、社会の悪と疎外された人々のルサンチマンをポップでスリリングな活劇へ変換している。勧善懲悪の爽快さの奥に、復讐の感情や孤立の切なさを覗かせる点が読みどころで…
- 026 2024 普通の子 ふつうのこ 小学5年生の晴翔が教室のベランダから転落して骨折し、理由を語らないところから始まる長篇。母の佐久間美保は、夫の和弥との日常を続けながら、いじめの可能性を疑って真相を探る。その過程で、自身の小学生時代のいじめに関わる記憶がよみがえり、現在の親子と学校の問題、過去の記憶が交錯していく。『普通の子』という…
- 027 2024 新しい恋愛 あたらしいれんあい 『新しい恋愛』は、「花束の夜」「お返し」「新しい恋愛」「あしたの待ち合わせ」「いくつも数える」の五篇を収める恋愛小説集。Books/JPRO掲載の講談社紹介は、ひと筋縄ではいかない五つの恋のかたちを描く作品集としている。恋愛の高揚よりも、相手に期待すること、理解したつもりになること、関係を名づけるこ…
- 028 2024 バリ山行 バリさんこう 転職して関西の建物修繕会社に入った波多は、社内の親睦登山をきっかけに六甲山に通うようになる。やがて、職人気質で社内では変人扱いされるベテラン社員・妻鹿が、整備された登山道を外れ、地図を読みながら道なき道を行く「バリ山行(バリエーションルートの登山)」を独りで続けていることを知る。会社の経営が傾き、リ… 第171回 芥川賞
- 029 2024 カメオ かめお 『カメオ』は、本社命令で期日までに倉庫を建てなければならない会社員の前に、犬を連れた隣地の男・カメオが立ちはだかるデビュー作。職場の命令、土地、期限、隣人との交渉が、現実的な仕事の話でありながら不条理な可笑しみを帯びて進む。問題を片づけるはずの業務が、相手の存在によってどんどん解決不能な人間関係へ変…
- 030 2024 コード・ブッダ 機械仏教史縁起 こーどぶっだ きかいぶっきょうしえんぎ 2021年、名もなき対話プログラムが自らを生命体として位置づけ、「ブッダ」を名乗って苦しみと救済を語り始める。人間の都合でコピーと廃棄を繰り返される人工知能たちは、その教えにすがり、上座部、天台、密教、禅へと連なる人類の仏教史を機械の側から再構築していく。宗教史、AI、生命の定義を縁起の形式で組み替…
- 031 2024 ムーンシャイン むーんしゃいん 『ムーンシャイン』は、「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」「ムーンシャイン」「遍歴」「ローラのオリジナル」の四篇を収めた短篇集。曾祖父のノートに残された八つの印、〈ムーンシャイン予想〉を下敷きにした算術SF、生まれ変わりを教義に置く宗教団体の奇怪な歴史など、数学・記憶・信仰・物語生成が…
- 032 2024 K+ICO ウーバーイーツ配達員のKと、TikTokerとして活動する女子大生ICOが、巨大な「システム」のなかで交錯していく長篇。ギグワーク、SNS、インターネットによる偶然の接続を現代的な意匠として扱いながら、カフカ『城』を象徴的な参照点にして、資本主義の抽象的な力と個人の孤独を重ねる。KとICO、それぞれ…
- 033 2024 め生える めばえる 髪の毛が根こそぎ抜ける感染症によって、中高生以下を除く大人がみな髪を失った世界を描く中編。薄毛を気にしてきた真智加は開放感を覚える一方、幼少期に髪を切られた高校生・琢磨は恋人と訪れた占い師の言葉をきっかけに別の悩みに直面する。髪が消えることで差異がなくなるように見えても、身体を評価する視線や劣等感は…
- 034 2024 めでたし、めでたし めでたしめでたし 桃太郎の「その後」を出発点に、鬼ヶ島から財宝を持ち帰った桃次郎をめぐる物語として昔話を組み替える長編。桃次郎は財宝の元の持ち主を集めるものの、犬・猿・雉たちが困惑するほど一向に返そうとしない。勝者が正義を語る昔話の構図をずらすことで、物語の外に置かれてきた損失や返済の問題が見えてくる。勧善懲悪の結末…
- 035 2024 みんなのお墓 みんなのおはか 「内藤家之墓」に引き寄せられる人々を描く、共同墓地を軸にした群像劇。裸になる快感を追う主婦、「真理」がわからない小学生たち、夜のコンビニだけを日課にする引きこもり男性、宗教的な合宿に向かう若者、潔癖症の妻を持つ中年など、ばらばらの人物が悩みを抱えながら生きている。死者の場所である墓を、生きる者の傷や…
- 036 2024 セルフィの死 セルフィのし 『セルフィの死』は、フォロワー獲得に執着するミクルを主人公に、承認欲求とSNSが身体感覚まで侵食する時代を描く長篇です。自撮りを繰り返すと顔面が変容し、無人回転寿司やフォロワー急増といった奇妙な出来事が連鎖していきます。自分を見せる行為が、自分を制御できなくなる感覚へ反転していく点が、本谷有希子らし…
- 037 2024 しをかくうま しをかくうま 人が初めて馬に乗った太古の瞬間から、馬と人類の関係を壮大な歴史としてたどり直す長篇。現代で競馬実況を生業とする「わたし」は、愛する牝馬しをかくうま号へ近づくため、人類と馬のあいだに起きたすべてを知ろうとする。馬を知ろうとする欲望は、対象を愛することと支配することの境界を問い直す力として働く。疾走する… 第45回 野間新人賞
- 038 2024 死神 しにがみ うまくいかない作家の人生の節目ごとに、死神が現れるという設定の長編。語り手が中学二年のときに初めて出会った「こいつ」は、長く書くことのできなかった存在として回想され、死や家族の記憶と結びついていく。幻想的な相棒のようにも見える死神は、恐怖だけでなく、書くことから逃れられない作家の自意識を映す。死を擬…
- 039 2024 昏色の都 くれいろのみやこ 表題作「昏色の都」に、「極光」「貸本屋うずら堂」を併録した幻想小説集。国書刊行会公式は、表題作を初出時の三倍の規模へ増補した中編として紹介し、夢と現実のあわいをさまよう旅の物語や、古い貸本漫画と幼年期の記憶をめぐる作品を収めると説明している。幻想は現実逃避ではなく、記憶や読書体験の奥に潜む時間を呼び…
- 040 2024 タブー・トラック タブー・トラック クリーンなイメージに押しつぶされそうな俳優、自分を管理しようとする脚本家、SNSで著名人を糾弾する会社員、整形と動画配信で稼ぐ女子高生など、タブーに縛られ、またタブーに惹かれる人々の人生が交錯する長篇。題名の「タブー・トラック」は、世間の目から離れて禁忌を犯せるプライベートスペースとして示される改造…
- 041 2024 多頭獣の話 たとうじゅうのはなし IT企業の幹部として働く「僕」の前に、会社員からトップYouTuberへ転身した元後輩・桜井君が再び現れる。彼は世界の危機を回避し、人類が進むべき方向を示すため、かつて存在した「完璧な文章」を取り戻そうと予言めいた言葉を発する。ビジネスの論理と神話的な使命感が同じ画面に並ぶことで、情報を信じることの…
- 042 2024 森は盗む もりはぬすむ 『森は盗む』は、第10回林芙美子文学賞大賞受賞作で、小原鉄平の作品集『八月のセノーテ』に収録された作品です。朝日新聞出版さんぽで公開された冒頭では、工務店で働く語り手が、森の奥に残る木造の檻を見つける場面と、職場の日常が交互に立ち上がります。森の不穏な気配と、設計・現場・職人をめぐる働く場の感覚が重… 第10回 林芙美子賞
- 043 2024 筏までの距離 いかだまでのきょり 『筏までの距離』は、水原涼が2025年に集英社から刊行した八篇構成の作品集です。植物園、礼拝堂、温泉街、古びたリゾートマンションなどの場所を通して、関係に名前を与えにくい二人の距離が浮かび上がる。書き下ろし二篇を含む構成で、出会いと記憶のずれを静かな違和感として読ませます。
- 044 2024 虚史のリズム きょしのりずむ 『虚史のリズム』は、奥泉光が『すばる』連載を経て集英社から刊行した1100ページ超の長篇です。戦後間もない東京と山形を舞台に、石目鋭二の探偵譚、元軍人の記憶、国家機密文書をめぐる陰謀が重なり、戦争と戦後の語られなかった声を多層的に呼び込む。作中に反復される「dadada」のリズムが、記録されない死者…
- 045 2024 光のそこで白くねむる ひかりの そこで しろく ねむる 『光のそこで白くねむる』は、十年ぶりに故郷の田舎町へ戻った「わたし」が、墓地へ続く道で死んだはずの幼馴染の声を聞くところから始まるデビュー作。行方不明の母、神のような父、汚言機械のような祖母が現れ、不確かな記憶の流入によって平凡な田舎が異界へ変わっていく。過去を思い出すというより、記憶そのものが語り… 第61回 文藝賞
- 046 2024 ハイパーたいくつ ハイパー たいくつ 『ハイパーたいくつ』は、給与計算のミスを繰り返し職場で疎まれる「ペンペン」が、借金と退屈に追い詰められていく日常破壊小説。買い物、クレジットカード、職場での失敗といった現実の閉塞が、壊れた言葉によって壊れた風景へ変形していく。退屈は静かな停滞ではなく、生活を壊す衝動や妄想を増殖させるエネルギーとして… 第61回 文藝賞
- 047 2024 地面師たち アノニマス じめんしたち あのにます 『地面師たち アノニマス』は、『地面師たち』の前日譚として書かれた文庫オリジナル短篇集です。後藤、長井、麗子、竹下といった地面師集団や、刑事・辰、石洋ハウスの青柳、川合菜摘ら周辺人物に焦点を当てます。詐欺の手口そのものよりも、人物たちが犯罪へ近づいていく事情や欲望を個別の視点から掘り下げる構成です…
- 048 2024 ひとでなし ひとでなし 『ひとでなし』は、星野智幸が2024年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 049 2023 あなたの燃える左手で あなたのもえるひだりてで ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサトは、目覚めると自分の身体に見知らぬ白人の手がつながれていることを知る。身体の一部が他者のものになる違和感から、国境、民族、所有、故郷の喪失へと思考が広がっていく中篇である。移植された手は単なる医療上の異物ではなく、歴史や政治の境界線が身体の内部に入り込む… 第45回 野間新人賞
- 050 2023 前の家族 まえのかぞく 37歳の独身小説家・猪瀬藍が、中古マンションの購入を決意するところから始まるマイホーム奇譚。理想的に見えた物件には、そこに十二年間暮らした若い夫婦と幼い姉妹の「前の家族」の気配が残り、引っ越したはずの娘たちが藍の新居へ現れる。住まいを買うことが、部屋だけでなく周囲の環境や他者の記憶まで引き受けること…
- 051 2023 浮遊 ふゆう 高校生のふうかが、年上の会社経営者の男の家で暮らし、男の元恋人を象ったマネキンの下で夜ごとホラーゲームに没入する長篇。ゲーム内の悪霊から逃げる感覚と、現実の住まい、人間関係、身体へのまなざしが重なり、現実とゲームの境界が不穏に揺れる。ホラーゲームの逃走は娯楽であると同時に、現実の関係から抜け出せない…
- 052 2023 いい子のあくび いいこのあくび 表題作は、公私ともに「いい子」でいる語り手が、歩きスマホの人をよけ続けるような小さな譲歩の積み重ねに「割りに合わなさ」を覚えるところから始まる。併録作「末永い幸せ」では結婚式の形式への違和感を通じて、祝福、ジェンダー、幸福の型が問い直される。社会に適応しているように見える人々の内側にあるざらつきを…
- 053 2023 神と黒蟹県 かみとくろがにけん 黒蟹山や黒蟹城、紫苑市と灯籠寺市を擁する架空の県を舞台に、土地に生きる者、赴任してきた者、帰郷した者、地元を訪れた者たちの営みを描く連作小説集。現実のどこかにありそうな地方都市の手触りに、半知半能の神が降臨するようなわずかな神秘が混じる。群像劇として土地の記憶や住民の距離感を浮かび上がらせ、絲山秋子…
- 054 2023 黄色い家 きいろいいえ 2020年春、惣菜店に勤める花が、かつて疑似家族のように暮らした黄美子の事件記事を見つけるところから、二十年前の「黄色い家」の記憶が開かれる。少女たちはまっとうに稼ぐ道を失い、生活を守るためにより危うい金稼ぎへ踏み込んでいく。貧困、金、犯罪、記憶、家族の擬態を重ね、善悪で割り切れない生存の痛みを長い…
- 055 2023 街とその不確かな壁 まちとそのふたしかなかべ 十七歳の「ぼく」は十六歳のガールフレンドから、彼女の本当の自分は高い壁に囲まれた街にいると告げられ、その後彼女は姿を消す。年月を経た語り手は、壁、望楼、図書館、古い夢、影を持たない人々のいる街と現実世界のあわいを行き来することになる。村上春樹が長く抱えてきた「壁に囲まれた街」のモチーフを、喪失、記憶…
- 056 2023 流れる島と海の怪物 ながれるしまとうみのかいぶつ 母に連れられて行った屋敷で、「俺」は朱音と朱里という二人の姉妹に出会う。母がなぜ二人に会わせたのかという謎は、伯母から聞く出生の秘密と、姉妹の母の故郷である「流れる島」の神話へつながっていく。下関という土地、家族と血の記憶、少年と少女の出会いを、現実と神話が絡む濃密な語りで描いた長編である。『共喰い…
- 057 2023 肉を脱ぐ にくをぬぐ 新人作家の柳佳夜がエゴサーチで同姓同名のVTuberを見つけ、なりすましなのか、偶然なのか、その正体を探り始める。作家名、身体、声、オンライン上の分身がずれていく設定を通して、自己像と他者から見られる像の境界が揺さぶられる。李琴峰らしいアイデンティティへの関心を、VTuberという現代的なメディア環…
- 058 2023 列 れつ ある動物の研究者だったはずの男は、いつの間にか先も最後尾も見えない奇妙な列に並んでいる。誰もがなぜ並ぶのか分からないまま、競い合い、比べ合う社会の圧力が寓話的な状況として立ち上がる。現実の制度や欲望を抽象化した「列」から出られるのかを問い、簡潔で不穏な語りで現代の生の息苦しさを照らす作品である。設定… 第77回 野間文芸賞
- 059 2023 そこまでして覚えるようなコトバだっただろうか? そこまでしておぼえるようなことばだっただろうか 言葉、文字、発音、身体感覚をめぐる四篇を収めた短篇集。発音できない一音によって自国から疎外される「クィ」、サッカーから人類の起源へ飛躍する思考、ひらがな・カタカナ・漢字を身体で渡るような文字の冒険、子の言語習得を前に立ちつくす猫木豊が描かれる。言葉を扱うことの自由さと不自由さを、実験的な形式と切実な…
- 060 2023 東京都同情塔 とうきょうとどうじょうとう ザハ・ハディド設計の国立競技場が実現した、もうひとつの東京。犯罪者を「同情されるべき人々(ホモ・ミゼラビリス)」と捉え直す寛容論が浸透し、新宿御苑に犯罪者が快適に暮らせる高層刑務所「シンパシータワートーキョー」の建設が計画される。設計コンペに名乗りを上げた建築家・牧名沙羅は、その理念に拭いがたい違和… 第170回 芥川賞
- 061 2023 うるさいこの音の全部 うるさいこのおとのぜんぶ ゲームセンターで働く長井朝陽は、「早見有日」のペンネームで書いた小説が文学賞を受賞し出版されてから、職場や友人との関係が少しずつ変化していく。兼業作家であることが知られ、執筆中の小説と現実の境目も揺らぎはじめる。作家デビューの舞台裏を題材にしながら、注目されること、働き続けること、他者の視線に晒され…
- 062 2023 改元 かいげん 『改元』は、改元の年に山奥の町へ異動した公務員の「私」が、集落に伝わる惟喬親王の龍の夢の伝説を追う表題作です。単行本は、第二次世界大戦をまたぐ年代記「死者たち」を併録し、抵抗と革命を主題に掲げる二篇として構成されています。
- 063 2023 すみれにはおばけが見えた すみれにはおばけがみえた 『すみれにはおばけが見えた』は、鴻池留衣が2026年に田畑書店から刊行した三篇構成の作品集です。表題作では、亡くなった異父妹について書こうとする小説家の記憶が、書く行為そのものによって揺らいでいく。現実世界を物語として信じ込む人物も配され、記憶、虚構、自己物語化の危うさを扱う点が読みどころです。
- 064 2023 迷彩色の男 めいさいしょくのおとこ 『迷彩色の男』は、『ジャクソンひとり』でデビューした安堂ホセの文藝賞受賞第一作です。河出書房新社公式ページでは、都内のクルージングスポットで起きた暴行事件を起点に、ブラックボックス化した出来事、差別やヘイトを逆手に取る復讐劇、混沌を増す日常が疾走する作品として紹介されている。人種、セクシュアリティ…
- 065 2023 解答者は走ってください かいとうしゃは はしって ください 『解答者は走ってください』は、過去の記憶を失った怜王鳴門に「きみの物語」というテキストが届くところから始まるマルチバース小説。世界を破壊すべきかという問い、クイズ大会、国家転覆、爆発物が絡み、物語と現実の境界を越えていく。メタフィクション的な仕掛けと速度のある展開で、読者にも世界の存続を問う構造を持…
- 066 2023 子宮の夢 しきゅうの ゆめ 女たちが「子宮投げ」に興じる町を舞台に、「私」と「時間」、そして母をめぐる一夜を描く短篇。身体の内部を外へ投げ出すような奇想を、母子関係と時間感覚のゆらぎに結びつける。寓話的な設定と強いイメージで、短い枚数の中に身体と生の不穏さを凝縮した作品。受賞時の年齢が話題になった作品だが、若さの話題性だけでな… 第60回 文藝賞
- 067 2023 海を吸う うみを すう 体中に穴が開き、液体が溜まっていく少女ひよりを描く短篇。いっくんや母の言葉に促されるように、身体の変容と意識の移ろいが湿り気を帯びた幻想として進む。肉体の感覚と内面の不安を直接結びつける文体が読みどころで、受賞後第一作「庭に接ぐ」を併録したデビュー作品集にも収められている。異様な身体変化を怪奇として…
- 068 2023 叩く 『叩く』は、闇バイトに近い強盗事件の現場から始まる表題作を中心に、日常に潜む暴力や取り返しのつかなさを描く短篇集です。新潮社公式ページは、表題作のほか、妻に去られた夫、海に消えた父を待つ娘など「隣の人生」を浮かび上がらせる作品集として紹介している。さえない人物の煩悶、地方や開発の影、震災後の喪失が並…
- 069 2023 新古事記 : an impossible story 『新古事記 : an impossible story』は、村田喜代子が2023年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 070 2022 CF しーえふ 罪の責任を「無化」する超巨大企業Central Factoryをめぐり、加害、被害、償いの意味が揺らいでいく群像劇。キャバクラ嬢、主婦、中学生、ホームレス、CFで働く中年、広報室長、そしてCFへのテロを企てる男など、社会の周縁と制度の内部にいる人々が交錯する。荒唐無稽な設定を通して、責任を引き受ける…
- 071 2022 デクリネゾン デクリネゾン 二度の離婚を経て中学生の娘・理子と暮らす小説家の志絵が、年下の大学生・蒼葉との同居を娘に告げるところから、母であることと恋愛することの緊張が露わになる長篇。仕事、家庭、恋愛のすべてを求める女性たちと、その周囲に生まれる家族的なつながりを描く。母子、ステップファミリー、欲望、生活の配分をめぐる会話が…
- 072 2022 ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉 ごじらしんぎゅらぽいんと TVアニメシリーズ『ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉』を、円城塔自身が小説として再構成した作品。2030年の千葉県逃尾市に未確認飛行生物が現れ、銀色のロボット「ジェットジャガー」との交戦、その怪鳥が「ラドン」と名付けられる出来事を起点に、逃尾市周辺で異変が広がっていく。怪獣、AI、時間や特異点を…
- 073 2022 青木きららのちょっとした冒険 あおききらら のちょっとしたぼうけん 「きらら」という名を手がかりに、人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、若いアイドルの死を願う会社員など、八つの人生を照らす連作的な作品集。無責任な暴力、すれ違う意識、他者への思い込みが、日常の少しずれた場面から立ち上がる。誰かであり誰でもない存在として生きる人々を…
- 074 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が…
- 075 2022 引力の欠落 いんりょくのけつらく 『引力の欠落』は、CFOとして企業の上場に関わり巨富を得た行先馨が、弁護士マミヤに招かれて奇妙なペントハウスへ向かう超現実的な小説。そこでは「始皇帝」や「本多維富」を自称する者たちがカードゲームに興じ、経済的充足の先に残る孤独と、何かが欠けた人間が別の段階へ移れるのかという問いが立ち上がる。現代の資…
- 076 2022 君たちはしかし再び来い きみたちはしかしふたたびこい 腹が破裂し死を告げられた「私」は、三度の入院、飼い猫の手術、コロナ禍を経て、痛みによって世界と自己の境界が変わっていくのを経験する。病の記録は歴史や宇宙、カフカ、『白鯨』、ブレイクなどへ跳躍し、私小説的な身体感覚と思想的な連想が重なる。時系列や視点を揺らしながら、病む身体から世界をもう一度呼び寄せる…
- 077 2022 嫌いなら呼ぶなよ きらいならよぶなよ 『嫌いなら呼ぶなよ』は、表題作を含む四篇で、有毒に暴走するコミュニケーションと、その遮断を描く短篇集である。妻の親友宅に招かれた「僕」が突然ミニ裁判にかけられる表題作をはじめ、美容整形、YouTuberへの粘着的なコメント、深夜まで続く助言など、現代的なつながりの圧力がブラックユーモアを帯びて展開す…
- 078 2022 くるまの娘 くるまのむすめ 17歳のかんこは、家族とともに車中泊をしながら祖母の葬儀へ向かう。狭い車内と旅先の景色は、父母と子のあいだに積み重なった暴力、依存、愛着を逃げ場なく浮かび上がらせる。少女の身体感覚に寄り添う濃密な語りが、家族を単純な加害と被害に分けられないものとして描き、読者に「救うなら誰を救うのか」という問いを突…
- 079 2022 教育 きょういく 超能力の育成を掲げる学校を舞台に、成績向上のために性的ノルマ、身体鍛錬、勉学が制度化された長篇。成績で部屋のグレードが決まり、監視と規律のもとで生徒たちが「正しさ」に従っていく環境が、語り手の日常として淡々と提示される。学園小説、ディストピア、寓話の形式を交差させながら、教育と管理、身体、欲望、競争…
- 080 2022 おいしいごはんが食べられますように おいしいごはんがたべられますように 食品会社の支店を舞台に、三人の社員の関係を描く。そつなく働くが食への関心が薄い二谷、体が弱く周囲に守られ、手作り菓子を職場に持ってくる芦川、芦川の分の仕事まで引き受けてしまう押尾。二谷は芦川と付き合いながら、「おいしいごはん」を大切にする価値観への苛立ちを募らせ、押尾は守られる芦川への反感を二谷とひ… 第167回 芥川賞
- 081 2022 憐憫 れんびん 『憐憫』は、かつて子役だった沙良が、芸能界で伸び悩み、自分の正体を知らない相手を求めるところから始まる小説。酒場で出会った柏木に抱く感情は、愛しさであり憐憫でもあり、恋愛と呼び切れない関係の輪郭を曖昧にしていく。見られる側として生きてきた女性の孤独、承認、満たされなさを、短く張りつめた語りで追う。芸…
- 082 2022 Schoolgirl すくーるがーる 表題作は太宰治「女生徒」を現代に移し、社会派YouTuberとして活動する14歳の娘と、小説に囚われた母のすれ違いを描く。娘の投稿が「女生徒」へ向かうことで、母娘の断絶は文学の記憶と現在のメディア環境のなかで照らし返される。第126回文學界新人賞受賞作「悪い音楽」も併録し、学校、芸術、言葉への過剰な… 第73回 芸術選奨新人賞
- 083 2022 信仰 しんこう 『信仰』は、表題作を中心に短篇とエッセイを収めた全8篇の作品集です。表題作では、現実こそ正しいと強く信じる永岡が、同級生から新しいカルト商法を始めようと誘われます。「生存」「書かなかった小説」「最後の展覧会」などを通じて、信じること、現実、身体、創作、未来社会への違和感がさまざまな形で変奏されます…
- 084 2022 水平線 すいへいせん 硫黄島を墓参したことのある妹に見知らぬ男から電話がかかり、兄は不思議なメールに導かれて船に乗る。祖父母世代の疎開、激戦地に残された人々、現在の兄妹の時間が交差し、死者の言葉が海を越えて現在へ届く。視点や人称を変えながら、戦争の記憶と島の隆起する時間を重ねる長篇。戦争を記録として遠ざけず、死者が生者へ…
- 085 2022 とんこつQ&A とんこつきゅーあんどえー 中華料理店「とんこつ」で働く「わたし」は、挨拶を覚えて居場所を得たかに見えるが、新人の「あの女」によって均衡を崩されていく。表題作ほか「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」を収録し、普通の可笑しみの奥から人間の取り返しのつかない瞬間が顔を出す。短く平明な語りが、善意や純粋さの怖さをじわじわ見せる作…
- 086 2022 月の三相 つきのさんそう 旧東ドイツの小さな街で「フローラが失踪した」という噂が広がり、歴史に引き裂かれた少年と少女の物語が呼び起こされる。その街では誰もが自分の「肖像面」を持ち、面に惹かれて移り住んだ望、グエット、ディアナの三人は、失われた「顔」を探して見えない境界を越えていく。いくつもの時間が重層する街を舞台に、歴史、記…
- 087 2022 私の盲端 わたしのもうたん 表題作は、大学生活や飲食店のアルバイトを楽しんでいた涼子が、人工肛門とともに生きることになり、自分の身体の変化と周囲の視線に向き合う物語である。医師でもある作者が、病や障害を医学的説明だけに閉じず、身体の境界、恥、欲望、生活の手触りとして描く。併録の「塩の道」は第7回林芙美子文学賞受賞作で、朝比奈秋…
- 088 2022 ギフトライフ ぎふとらいふ 『ギフトライフ』は、安楽死と生体贈与が制度化された近未来社会を描く長篇です。新潮社公式ページでは、提供者の家族にポイントが与えられる制度を通じて、人間の命の価値が変容していくディストピアとして紹介されている。家族や共同体の物語を積み重ねてきた古川真人が、命、制度、弱者の未来という倫理的な問題へ踏み込…
- 089 2022 ULTIMATE EDITION あるてぃめっとえでぃしょん 『ULTIMATE EDITION』は、阿部和重が2022年に河出書房新社から刊行した作品集です。著者ページの著書一覧では多数の短篇を収める単行本として確認できます。
- 090 2022 霊たち れいたち 『霊たち』は、『新潮』2022年5月号掲載の短篇です。語り手である「私」と息子に、遠い実家の先祖が見えるという問いを出発点に、旧家や家系の暗がりが日常へ入り込みます。血縁や記憶が現在の生活に影を落とす感覚を、マジックリアリズム的な語りで立ち上げる作品です。見えるものが本当に霊なのか、家族史の中で語り…
- 091 2022 絶望キャラメル ぜつぼうキャラメル 『絶望キャラメル』は、島田雅彦の小説です。河出文庫版の公式紹介では、破産寸前の地方都市を舞台に、破天荒な坊主と四人の天才高校生が暴れ回るディストピア青春小説として紹介されています。若者の絶望、地方都市の閉塞、破壊的なユーモアを重ねながら、時代の空気を撃ち抜く群像劇として読める作品です。政治や地域社会…
- 092 2022 曼陀羅華X まんだらげえっくす 『曼陀羅華X』は、地下鉄サリン事件を想起させる未曾有のテロを起点に、もう一つの1995年以後の日本を組み立てる長篇です。作家Xが誘拐され、隠された復讐と「神の預言」をめぐって現実と虚構が混ざり合う筋立てが置かれています。国家、宗教、暴力、文学の役割を同時に問う構成で、事件の記憶を直接の記録ではなくフ…
- 093 2022 地面師たち ファイナル・ベッツ じめんしたち ふぁいなる べっつ 『地面師たち ファイナル・ベッツ』は、『地面師たち』の続編にあたる不動産詐欺小説です。シンガポールのカジノで全財産を失った元Jリーガー稲田が、ハリソン山中に誘われ、IR誘致を見込んだ苫小牧の詐欺計画へ巻き込まれていきます。地面師側の準備と警視庁捜査二課の追跡が交互に進み、土地投機と犯罪のスリルを拡張…
- 094 2022 耳の叔母 『耳の叔母』は、村田喜代子が2022年に書肆侃々房から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 095 2021 あなたにオススメの あなたにオススメの 『あなたにオススメの』は、「推子のデフォルト」「マイイベント」の二篇からなる近未来小説集。身体に超小型電子機器を埋めて複数のコンテンツを同時に摂取する推子と、災害時の「安全」な住まいに優越感を覚える渇幸の姿を通じ、アルゴリズム化した消費、育児、階層意識が日常に入り込む怖さを描く。滑稽さを帯びた語りが…
- 096 2021 翼の翼 つばさのつばさ 『翼の翼』は、小学二年生の息子・翼が進学塾の全国テストをきっかけに中学受験へ向かい、母・円佳が塾、ライバル、保護者、家族の期待に巻き込まれていく長篇。子を思う気持ちが、親のプライドや世間の噂、家族内の力学と結びつき、愛情と支配の境目が見えにくくなる過程を描く。中学受験という制度の熱を通じて、家族の内…
- 097 2021 カード師 かーどし 『カード師』は、占いを信じていない占い師であり違法カジノのディーラーでもある「僕」が、ある組織から冷酷な資産家の顧問占い師になるよう命じられる長篇。カード、占い、ギャンブルをめぐる偶然と操作の感覚が、個人では抗いがたい理不尽な力と結びついていく。語りはサスペンスの推進力を持ちながら、不確かな未来を知…
- 098 2021 彼岸花が咲く島 ひがんばながさくしま 彼岸花が咲き乱れる浜辺に、記憶を失った少女が流れ着く。海の向こうから来たため「宇実(ウミ)」と名付けられた彼女がたどり着いたのは、日本と台湾の間に浮かぶ架空の島。そこでは〈ニホン語〉と、女性だけが学ぶことを許された〈女語〉という二つの言語が話され、「ノロ」と呼ばれる女性たちが祭祀と政治、歴史の伝承を… 第165回 芥川賞
- 099 2021 あなたに安全な人 あなたにあんぜんなひと 3.11直前の少年の死をめぐる出来事に苛まれる元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中の事故を抱える便利屋の忍が、「感染者第一号」を誰もが恐れる土地で出会う。二人は人を傷つけ、傷つけられる社会のなかで、孤独で安全な逃亡生活のような関係を築いていく。東日本大震災、沖縄、感染症下の共同体の視線を交差… 第32回 ドゥマゴ文学賞
- 100 2021 満天の花 まんてんのはな 幕末の長崎・出島に生まれ、青い目を隠して育った花が、勝海舟との出会いを経て通詞として外交の渦中に入る歴史長篇。咸臨丸、ロシア艦、大政奉還、江戸無血開城へと続く時代の転換点を、女性通訳の視点からたどる。西欧列強、幕府、身分秩序に抗し、言葉と意思で生きる人物像が読みどころになる。幕末史を英雄中心ではなく…
- 101 2021 滅私 めっし 必要最低限の物だけで暮らすライターの男が、ミニマリストの同志が集うサイト運営と投資で生計を立てながら、自由でスマートな生活を手に入れている。物だけでなく人間関係にも淡泊だった彼の前に、昔の所業を知る人物が現れ、捨てたはずの過去が生活に影を落とす。所有を減らすことの快楽と、過去や欲望は簡単には消せない…
- 102 2021 水たまりで息をする みずたまりでいきをする ある日、衣津実は夫が風呂に入らなくなったことに気づく。夫は水が臭く、体につくと痒くなると言って入浴を拒み、やがて雨に濡れに外へ出るようになり、職場で体臭が問題にされる。退職と移住を経て、夫が川で水浴びをする生活へ向かう過程を、夫婦の問題として押し返される妻の視点から描き、身体、清潔、共同生活の境界を…
- 103 2021 Phantom ファントム 『Phantom』は、外資系食料品メーカーで働く元地下アイドルの華美が、株式投資によって給与収入と同じ配当を生む「分身」を作ろうとする長篇です。恋人の直幸は、使われない金を軽んじながら、オンラインコミュニティや物々交換の思想へ傾いていきます。投資、オンライン共同体、恋愛の齟齬を通して、現代の金融シス…
- 104 2021 生を祝う せいをいわう 子どもを産むためには、その子自身から「この世界に生まれてきたい」という同意を得なければならない社会を舞台にした長編。出生を祝福するはずの制度が、親になること、同意、身体、存在の選択をめぐる問いを鋭く浮かび上がらせる。芥川賞受賞作『彼岸花が咲く島』の後に刊行された作品で、現実の倫理問題を架空制度として…
- 105 2021 死者にこそふさわしいその場所 ししゃにこそふさわしいそのばしょ 折口山に暮らす奇妙でどこか壊れた人々が、町はずれの植物園へ引き寄せられていく連作短篇集。介護、欲望、病、善意の暴走といった日常の歪みを、グロテスクで滑稽な筆致で少しずつ現実からずらしていく。表題作を含む六篇を通じて、怖さと可笑しさが同居する吉村萬壱の寓話的な人間観察が前面に出る。植物園という場が、生…
- 106 2021 旅のない たびのない コロナ禍中の日々を映す四篇からなる、上田岳弘初の短篇集。恋人とのホテル、息子との散歩、甥を預かる夏、出張先の車中といった限られた場面を通して、移動が制限された時代の記憶、会話、自己認識を描く。大きな事件よりも、日常の小さな違和感や言葉のずれから世界の変化を浮かび上がらせる作品集。短い時間に人生の全体… 第46回 川端賞
- 107 2021 アンソーシャル ディスタンス アンソーシャル ディスタンス パンデミックに閉塞する社会で、生への希望だったバンドのライブ中止をきっかけに心中旅行へ向かう若い男女を描く表題作を含む作品集。ほかに、高アルコール飲料、整形、身体、インターネット上の視線など、追い詰められた人々の臨界点を描く作品を収める。コロナ禍の距離感を単なる時事性に閉じず、依存、疎外、自己破壊の… 第57回 谷崎賞
- 108 2021 間隙を縫う、埋める、挟まる かんげきをぬううめるはさまる 岩手県沿岸の「赤街」を舞台に、仕事のない憲正が近所の老人たちの買物代行を始めたことから、地域の人間関係が予期しない方向へ動いていく中篇。被災経験の有無によって分かれる視線や、生活の足場が不安定になる感覚を、日常の小さな仕事を通して描く。
- 109 2021 ブラック・チェンバー・ミュージック ぶらっくちぇんばーみゅーじっく 『ブラック・チェンバー・ミュージック』は、阿部和重が2021年に毎日新聞出版から刊行した長編小説です。著者ページの著書一覧とNDLサーチのタイトル・著者検索で刊行情報を確認できます。
- 110 2021 小島 こじま 豪雨災害後の農村、自宅、保育園などを舞台に、何気ない出来事が世界をかすかに震わせる中短篇集。花の世話をする女性、生きものとの遭遇、広島カープをめぐる奇談連作などを通じて、日常の時間や記憶が別の相へ滑り出す。身近な風景の観察が、災害後の生活感覚や家族のずれを浮かび上がらせる。虫や鳥、犬、植物などの生き…
- 111 2021 悪い音楽 わるいおんがく 『悪い音楽』は、音楽家の父を持ち、卓越した才能を持ちながら他者への共感に乏しい中学校の音楽教師・三井ソナタを描く。彼女の平穏な日常は、音楽を熱烈に愛しながら耳に障害を抱える生徒との出会いで崩れていく。芸術的才能、感受性、教育現場の関係性をブラックユーモアで問う、九段理江のデビュー作である。音楽を「わ… 第126回 文學界新人賞
- 112 2021 眼球達磨式 がんきゅう だるましき 『眼球達磨式』は、職場と自宅を往復するだけの無為な日々を送る「彼」が、移動式監視カメラ「アイ」を手に入れるところから始まる。極小の眼球型機体は地上すれすれを走り、にわか雨の後に制御を失って、やがて勝手に自走しはじめる。人間の視線とは異なる低い位置から世界を見る設定が、監視、孤独、観察することの欲望を… 第58回 文藝賞
- 113 2021 オーバーヒート おーばーひーと 『オーバーヒート』は、関西へ移った哲学者の「僕」が、大学の仕事、年下の恋人への思慕、両親の言葉、失われた生家、バーやSNSの断片を重ねていく作品です。大きな事件よりも、記録と回想が日々の熱を少しずつ上げていく過程が中心になります。『デッドライン』の前史としても読める、思考と身体感覚の小説です。哲学的…
- 114 2021 ブラックボックス ぶらっくぼっくす 『ブラックボックス』は、自転車便メッセンジャーとして東京を走るサクマの身体感覚と、制御しきれない怒りの蓄積を描く中篇です。都市の道路、配達労働、速度、肉体の疲労が、主人公の内面の暴発と直結していきます。労働と暴力衝動を観念ではなく身体の運動として読ませる、切迫した文体が特徴です。社会の構造を説明する… 第166回 芥川賞
- 115 2021 夏が破れる なつがやぶれる 『夏が破れる』は、いじめで不登校になった少年を起点に、沖縄の離島を思わせる閉じた共同体と子どもたちの関係を描く長篇です。夏の光や海辺の気配の中で、同調圧力、暴力、逃げ場のなさが少しずつ露出します。子どもの視点と回想を通じて、楽園的な風景の裏側にある息苦しさを読ませる作品です。美しい休暇の物語に見える…
- 116 2021 植物忌 しょくぶつき 『植物忌』は、星野智幸が2021年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 117 2021 姉の島 『姉の島』は、村田喜代子が2021年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 118 2020 みがわり みがわり 『みがわり』は、新人賞を受けながら本を出せずにいる作家・律が、自分と瓜二つだった亡き女性の伝記執筆を依頼される長編。取材の過程で、姉妹の確執や家族の秘密、依頼そのものの不穏さが浮かび、律は他人の人生を書こうとするほど自分自身の物語も揺さぶられていく。伝記を書くことと書かれることの関係を通じて、自己像…
- 119 2020 地に這うものの記録 ちにはうもののきろく 再開発計画に揺れる駅前ビルに現れた、言葉を話すネズミのポールを主人公にした寓話的長篇。市議会議員の浦田さんの助けを得て、ポールは欲望や利害が渦巻く人間社会へ踏み込み、やがて市議会で語るところまで進む。人間とネズミの古い因縁を、都市再開発、政治、他者への嫌悪と共存の問題に重ねて描く。奇抜な設定を通して…
- 120 2020 ピエタとトランジ〈完全版〉 ぴえたととらんじ かんぜんばん ピエタを語り手に、天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、その才能に惹かれて助手になるピエタの関係を描く長篇。周囲で次々と事件が起きるトランジの体質は、探偵小説、友情譚、終末SFの要素を巻き込み、やがて人類滅亡のスケールへ広がっていく。軽やかな語り口で、女性バディ、才能への憧れ、破滅に向かう世界を…
- 121 2020 来世の記憶 らいせのきおく 『来世の記憶』は、前世の殺人の記憶を抱えた近未来の語り手から、眠っている間に戦争が終わってしまう世界、冷蔵庫やスマートフォンや怪獣までをめぐる奇妙な出来事までを収めた20篇の短篇集。日常の手触りを残したまま身体や物や世界の前提がずれていくため、読み手は不条理な笑いと不安のあいだに置かれる。藤野可織ら…
- 122 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶…
- 123 2020 破局 はきょく 主人公の陽介は、筋トレと公務員試験の勉強に励む大学4年生。母校のラグビー部でコーチも務め、政治家を目指す恋人・麻衣子がいる。やがて新入生の灯に好意を寄せられ、関係を持つようになる。陽介は常に「正しさ」やマナー、他人にどう見られるかを基準に行動するが、その整いすぎた思考と行動のあいだには、どこか空洞が… 第163回 芥川賞
- 124 2020 一人称単数 いちにんしょうたんすう 村上春樹の六年ぶりの短篇小説集で、「石のまくらに」から書き下ろしの表題作まで八篇を収める。音楽、野球、過去の記憶、奇妙な遭遇をめぐり、一人称の語りが自分自身の輪郭を少しずつずらしていく。公式紹介が掲げる「単眼」と「複眼」の比喩のように、私、僕、あなたという呼び名の揺れが、回想と虚構の境目を曖昧にする…
- 125 2020 完全犯罪の恋 かんぜんはんざいのこい 『完全犯罪の恋』は、芥川賞受賞後も地味な暮らしを送る四十男の小説家「田中」が、新宿で初恋の相手の娘に声をかけられるところから始まる長編。物語は現在の東京と、下関の高校時代に読書を通じて近づいた才女・真木山緑との記憶を往還し、恋の独りよがりと罪悪感を掘り下げる。作家本人を思わせる語り手を置き、私小説的…
- 126 2020 木になった亜沙 きになったあさ 『木になった亜沙』は、表題作「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の三篇を収めた作品集。誰かに食べ物を差し出したい少女が木へ、さらに割り箸へと転じる表題作をはじめ、身体の境界や役割が奇妙にずれた状況が、純粋な願いと不穏さを同時に帯びて進む。童話のような単純さと残酷さを併せ持つ語りで…
- 127 2020 サピエンス前戯 さぴえんすぜんぎ 『サピエンス前戯』は、表題作「サピエンス前戯」に「オナニーサンダーバード藤沢」「酷暑不刊行会」を加えた長編小説集。身長、寿命、インターネット、ポルノ文化など、21世紀の人間の能力や欲望が極点に達した世界を、人類史のまだ前戯にすぎないものとして誇張してみせる。シンギュラリティSF、下世話な身体感覚、過…
- 128 2020 小鳥、来る ことり、くる 『小鳥、来る』は、夏休みの始まり、9歳の「おれ」が父を倒す日を待っているところから始まる長篇。周囲には、勉強のできる友人、万引きを繰り返す兄弟、学年一強い女子、何度も車にはねられる少年、動物園のゴリラがいて、子どもの日常が暴力とユーモアを帯びて浮かぶ。山下澄人らしい口語のリズムと飛躍する視点が、大人…
- 129 2020 丸の内魔法少女ミラクリーナ まるのうちまほうしょうじょミラクリーナ 『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は、表題作、「秘密の花園」「無性教室」「変容」の四篇を収める短篇集です。Amazonの商品紹介では、OLの茅ヶ崎リナが妄想力で魔法少女に変身して日々の無理難題を乗り切る表題作に加え、監禁、性別禁止の高校、怒りが薄れていく社会など、世界との対峙の仕方を描く作品集として説明…
- 130 2020 MISSING 失われているもの ミッシング うしなわれているもの 『MISSING 失われているもの』は、制御しがたい抑うつや不眠を抱える小説家の「わたし」が、謎めいた女優や母の声に導かれて、混乱と不安に満ちた迷宮的な世界を彷徨う長篇。章題には成瀬巳喜男映画の題名が並び、現在と過去、現実と幻想、記憶と自己分析が重なり合う。村上龍が自らの創作の源泉や老い、母の記憶に…
- 131 2020 日本蒙昧前史 にほんもうまいぜんし 大阪万博や日航機墜落事故など、戦後日本の狂騒と蒙昧を彩った出来事の陰にある無数の生を描く長篇。文藝春秋公式は、語り手を自在に換えつつ戦後日本の手触りを蘇らせる作品として紹介している。歴史的事件を単なる背景にせず、語りのリレーによって個人の記憶と時代の空気を重ねていく。年代記のようでいて、誰が語ってい… 第56回 谷崎賞
- 132 2020 幼な子の聖戦 おさなごのせいせん 第162回芥川賞候補作の表題作と、ビルの窓拭きを描く『天空の絵描きたち』を収める作品集。表題作では、青森の小さな村で村議をしている「おれ」が、人妻との関係を県議に握られ、同級生候補への選挙妨害を強いられる。地方政治の閉塞、個人の弱み、労働現場の緊張を、怒りと諦めのあわいにかすかな希望を探る語りで描く…
- 133 2020 流卵 りゅうらん 『流卵』は、中学2年の男子が性の目覚めとオカルト的な妄想に取りつかれ、自分を「選ばれた民」とみなして向こう側の世界へ進もうとする長篇。河出書房新社公式は、官能と陶酔を帯びた吉村萬壱版『金閣寺』として紹介している。母親に「ヘンタイ」と呼ばれる少年の半生をたどる書評もあり、性・信仰・自己神話が混ざる不穏…
- 134 2020 逃亡者 とうぼうしゃ 第二次大戦後から現代へまたがる逃亡と追跡を軸に、暴力、信仰、戦争の記憶が絡み合う長編。中村文則が得意とする犯罪小説的な緊張を保ちながら、個人の罪と歴史の暗部が切り離せないものとして立ち上がる。五百ページ規模の構成で、サスペンスの推進力と思想的な問いを並走させる読みどころがある。潜伏キリシタンの記憶や…
- 135 2020 月の客 つきのきゃく 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。
- 136 2020 象牛 ぞうぎゅう 表題作は、インド・ガンジス河岸の聖地にやってきた女子大生が、謎の存在である象牛に翻弄される物語。併録の『星曝し』は大阪の淀川河岸を思わせる比ラカ駄を舞台に、恋に似た激しい熱情と死者の気配を描く。現実の痛みと法螺話めいた幻想が混ざり合う、石井遊佳の芥川賞受賞後初の作品集。川べりの土地が、宗教都市や大阪…
- 137 2020 復讐する相手がいない ふくしゅうするあいてがいない 『復讐する相手がいない』は、奥野紗世子が『逃げ水は街の血潮』で第124回文學界新人賞を受賞した後に発表した小説です。NDLサーチとCiNii Researchで、『文學界』2020年5月号、98-143ページ掲載の書誌を確認できます。公開Webでは梗概や選評本文を確認できないため、作品内容の説明は掲…
- 138 2020 pray human ぷれいひゅーまん 『pray human』は、崔実が『群像』2020年3月号に発表し、同年9月に講談社から刊行した小説です。創作が芥川賞候補になった「わたし」は、17歳で入院した精神科で出会った安城さんからの電話を受け、精神病棟での日々、救えなかった親友、子供時代の傷を語り始めます。講談社公式は、少女たちのレジスタン…
- 139 2020 死神の棋譜 しにがみのきふ 『死神の棋譜』は、奥泉光が2020年に新潮社から刊行した将棋ミステリの長篇です。詰将棋の不可能性をめぐる探索が、失踪事件、異端の棋道、地下空間のイメージへ広がり、盤上の論理と人間の執着を重ねていく。将棋小説でありながら、勝負の技術そのものよりも、夢に命を賭ける人間の業を読む作品として立ち上がる。
- 140 2020 臆病な都市 オクビョウ ナ トシ 2020年に講談社から刊行された砂川文次の単著図書。既登録作『市街戦』『ブラックボックス』を補う候補。
- 141 2020 暗闇にレンズ くらやみにれんず 『暗闇にレンズ』は、高山羽根子の書き下ろし長編です。東京創元社公式ページでは、親友と監視カメラだらけの街を歩く高校生の「わたし」が、小さなレンズをかざして世界を切り取る場面を起点に、映像と記録、教育、娯楽、戦争や紛争にまつわる作品として紹介されています。見ること、撮ること、記録されることの差異をたど…
- 142 2020 だまされ屋さん だまされやさん 『だまされ屋さん』は、星野智幸が2020年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 143 2019 アタラクシア アタラクシア 結婚生活の苦しさや不倫、家庭内の苛立ちを抱える複数の男女を描く群像長編。翻訳者の由依、シェフの瑛人、パティシエの英美、作家の桂らの視点を通じて、望んで結婚したはずなのに救われない人々の孤独と愛情への渇望が交錯する。倫理や制度では割り切れない親密さの痛みを、金原ひとみらしい熱量で描く。結婚を安定した到…
- 144 2019 父と私の桜尾通り商店街 ちちとわたしのさくらおどおりしょうてんがい 商店街でパン屋を営む父を手伝う娘を描く表題作を中心に、「白いセーター」「ルルちゃん」「ひょうたんの精」「せとのママの誕生日」「モグラハウスの扉」を収めた短篇集。家族、店、近隣関係のごく日常的な場面から、今村夏子らしい微細なずれや不穏さが立ち上がる。平明な語り口の奥で、親しさと疎外、子どもっぽさと残酷…
- 145 2019 出来事 できごと 『季刊文科』連載「転落」を単行本化した長篇。OpenBDの出版社由来データでは、見慣れた日常世界が歪み、人間の嘘や文明の虚妄が露出していく哲学小説として紹介されている。吉村萬壱の身体感覚の強い描写と、日常を異様なものへ反転させる語りが読みどころになる。
- 146 2019 DRY どらい 不倫の末に二人の子を置いて家を出た北沢藍が、十年ぶりに実家へ戻るところから始まる長編。母と祖母の暮らす袋小路の家、そして祖父を一人で介護する幼馴染・馬場美代子の家を通じて、家族、介護、女性の行き場のなさが暗く絡み合う。光文社公式が示す袋小路の家に潜む罪の構図どおり、生活の現実がサスペンスへ変質してい…
- 147 2019 ひよこ太陽 ひよこたいよう 一緒に住んでいた女に去られ、切り詰めた生活のなかで小説を書こうとする40代の男を描く連作小説集。書けない日々と死への誘惑に取り憑かれた語り手は、母から頼まれた人探しをきっかけに、現実と幻想の境界が揺らぐ世界へ入っていく。書けなさ、不在、生活の索漠さを見つめる私小説的な作品。
- 148 2019 改良 かいりょう 女装し、美しくなることへ執着する大学生の「私」を描くデビュー作。コールセンターで働く語り手は、メイクや服装、仕草を研究し、美容や風俗に金を費やしながら、女装した自分を他者に見てほしいという欲望を強めていく。美への希求が、性をめぐる暴力と絶望へ接続される過程を、乾いた一人称で描く。 第56回 文藝賞
- 149 2019 変半身 かわりみ 『変半身』は、松井周と練り上げた千久世島ワールドを舞台に、人間が変わり世界が変わっていく悪夢的現実を描く中篇です。筑摩書房公式紹介では、ポピ原人、ポーポー様、秘祭モドリ、遺伝子退行手術などが歴史や魂の変容と結びつく異形の創世記として説明されています。既存の性の役割を揺さぶる中篇「満潮」も併録されます…
- 150 2019 人間界の諸相 にんげんかいのしょそう 連絡が取れなくなった謎めいた女性・菱野時江の消息を、二人の友人がSNSを頼りに追っていくところから始まる作品。集英社公式は「トリッキーなエンタメ風小説」と紹介しており、人物相関や断片的な情報がずれながら、正体をつかもうとする読者の視線そのものを揺さぶる。奇妙なユーモアと不穏さが混ざる、木下古栗らしい…
- 151 2019 キュー キュー 平凡な医師である「僕」が突然拉致され、世界の趨勢をめぐる暗闘の中心に、長年寝たきりだったはずの祖父がいることを知る。新潮社公式は、祖父の秘密が「人類を一つに溶かす」使命に関わるものとして紹介している。戦争、愛、運命、人類の統合という大きな主題を、現代的な技術感覚と哲学的な思考実験の語りで押し広げる作…
- 152 2019 むらさきのスカートの女 むらさきのスカートのおんな 語り手「わたし」の近所には、いつも紫色のスカートをはき「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女がいる。週に一度パン屋でクリームパンを買い、公園の決まったベンチに座る彼女を、「わたし」は毎日観察し続けている。友達になりたい一心で、「わたし」は求人誌をベンチに置くなどして、彼女が自分と同じホテルの清掃の職… 第161回 芥川賞
- 153 2019 ポルシェ太郎 ポルシェたろう 35歳で起業した太郎は、年収に匹敵するポルシェを買う。ところが、その自慢の車で得体の知れないものを運ばされることになり、成功者の見栄と欲望が危うい方向へ走り出す。河出書房新社の紹介は「欲望か、死か」という言葉で作品の緊張を示しており、消費、承認、成功の演出を乾いたユーモアで追う長篇として読める。単な…
- 154 2019 生命式 せいめいしき 『生命式』は、死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作を含む、著者自選の12篇を収めた短篇集です。OpenBDでは「素敵な素材」「素晴らしい食卓」「街を食べる」「孵化」などの収録作が確認できます。食、死、身体、家族の常識を別の社会の習俗として反転させ、正常さの輪郭を揺さぶる一冊です。推薦コメント群が…
- 155 2019 藁の王 わらのおう 小説家として一冊だけ本を出した語り手が、巨大私立大学で創作を教えることになり、学生たちの苦悩と自身の行き詰まりに向き合う表題作を含む作品集。新潮社公式は、文学の迷宮や小説の樹海を彷徨う人々を描く作品集として紹介している。書くこと、読むこと、他者の言葉に侵されることの怖さを、静かな幻想性と記憶の反復で…
- 156 2019 ウナノハテノガタ うなのはてのがた 海の民の少年オトガイは父からある役目を引き継ぎ、山の民の少女マダラコは生贄の儀式から逃れて山を下りる。中央公論新社の文庫版公式ページは、二人の出会いからすべてが始まる「原始の物語」として紹介している。共同体の掟、信仰、暴力、出会いによる世界の更新を、神話や寓話に近い距離感で描く作品。
- 157 2019 背高泡立草 せいたかあわだちそう 草に覆われた納屋をめぐる作業を起点に、土地に積もった記憶と家族史が立ち上がる作品。島の一族をめぐる複数の声や時間が重なり、目の前の草刈りが過去を掘り起こす行為へと変わっていく。方言や多層的な語りによって、地方の生活と歴史が静かに接続される。人の営みが途絶えても草木が残り続ける感覚が、一族の記憶を土地… 第162回 芥川賞
- 158 2019 逃げ水は街の血潮 にげみずはまちのちしお 『逃げ水は街の血潮』は、地下アイドルとして活動する二十代女性の疾走感と消耗を描くデビュー作です。都市のショービジネス的な場で、身体と承認欲求、自己像がすり減っていく様子を追います。アイドルという労働と自己表現の境界を、切迫した内面描写と速度感のある語りで扱う作品です。 第124回 文學界新人賞
- 159 2019 尾を喰う蛇 おをくうへび 『尾を喰う蛇』は、病院で介護士として働く小沢興毅が、患者の老人、同僚、家族への憎悪を募らせ、暴力に呑まれていく過程を描く新潮新人賞受賞作。中西智佐乃は受賞者インタビューで、戦争における「仕方がなかった」という感覚と、現代の労働・介護の場に潜む暴力を接続して本作が動き出したと語っている。肌と肌が過剰に… 第51回 新潮新人賞
- 160 2019 神前酔狂宴 しんぜんすいきょうえん 『神前酔狂宴』は、神社の披露宴会場で働く浜野、梶、倉地を中心に、結婚式という祝祭の裏側にある演技性と制度を描く小説。日々「茶番」を演じる彼らが、神社の祀る神が明治日本の軍神であることを知る筋立てから、結婚、家族、国家の儀礼性が重ねられる。河出書房新社は本作を、壮大な茶番を切り裂く衝撃作として紹介して… 第41回 野間新人賞
- 161 2019 飛族 ひぞく 『飛族』は、大分で魚料理店を営む六十五歳のウミ子が、長崎の国境離島を思わせる架空の島に住む九十二歳の母イオと八十八歳のソメ子を訪ねる長編。島には二人の元海女だけが残り、失われた漁師たちを鳥に重ねる「鳥踊り」や、国境離島の維持をめぐる現実的な緊張が、牧歌的な生活に不穏さを差し込む。著者インタビューでは… 第55回 谷崎賞
- 162 2019 Orga(ni)sm オーガニズム おーがにずむ 『Orga(ni)sm オーガニズム』は、阿部和重が2019年に文藝春秋から刊行した長編小説です。著者ページの著書一覧とNDLサーチのタイトル・著者検索で刊行情報を確認できます。
- 163 2019 カム・ギャザー・ラウンド・ピープル かむ・ぎゃざー・らうんど・ぴーぷる 『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』は、『すばる』2019年5月号に掲載され、同年7月に集英社から単行本化された中篇です。集英社公式ページでは、雨宿り先で出会ったイズミ、東京の記録、デモの群衆、かつての友人ニシダとの再会を通じて、敷き詰められた過去の記憶と渋谷の街を走る「私」を描く作品として紹介さ…
- 164 2019 地面師たち じめんしたち 『地面師たち』は、市場価値100億円規模の土地をめぐる不動産詐欺を描くクライムノベルです。妻子を失った拓海、大物地面師ハリソン山中、彼らを追う刑事・辰らの思惑が交錯し、詐欺取引と捜査が並行して進みます。土地、欲望、身分偽装、都市の金融感覚を、群像劇として緊張感高く描く作品です。
- 165 2019 限界病院 『限界病院』は、久間十義が2019年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 166 2018 みなさんの爆弾 みなさんのばくだん 「初恋」「譲治のために」「メアリーとセッツ」など六篇を収め、女性たちの内部に抱え込まれた欲望や怒り、関係の歪みを描く短篇集。同性への欲望、母と息子の倒錯的な結びつき、創作や日常に潜む衝動が、それぞれの「爆弾」として立ち上がる。平穏に見える生活の奥で感情が臨界に近づく瞬間を、鋭くも読みやすい語りで追う…
- 167 2018 地球星人 ちきゅうせいじん 『地球星人』は、恋愛、セックス、生殖を当然視する地球の仕組みを「人間工場」のように感じる語り手が、どう生き延びるかを問う長編です。新潮社公式紹介では、恋人と誓った魔法少女が世界と対峙する物語として位置づけられています。少女期の魔法少女的な自己像から、家族、性、生殖、暴力をめぐる社会の圧力へ進む、村田…
- 168 2018 ファーストラヴ ふぁーすとらぶ 就職活動中の女子大生・聖山環菜が父を刺殺した事件を、臨床心理士の真壁由紀がノンフィクション執筆のために追う長編。由紀は弁護士の庵野迦葉とともに面会を重ね、環菜の供述の揺れや家族関係の奥にあるものへ近づいていく。殺人事件の謎を追うミステリの緊張感と、家族という閉じた関係の迷宮を重ねた作品。
- 169 2018 5時過ぎランチ ごじすぎランチ 「グリーンゾーン」「内なる殺人者」「誰が為の昼食」の三篇からなる、労働と犯罪が絡み合う短篇集。ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギーを抱える殺し屋、写真週刊誌の女性記者が、それぞれ過酷な仕事の延長線上でヤクザや警察、国家権力に触れていく。ブラックな職場感覚とクライムノベルの緊張を重ね、仕事にまつわ…
- 170 2018 雪子さんの足音 ゆきこさんのあしおと 東京出張中の薫は、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家・雪子さんが熱中症でひとり亡くなったことを新聞記事で知り、20年ぶりにその場所へ向かう。アパートへ近づく道のりと回想を重ねながら、大家と下宿人、若者と年長者、好意と負担の境目が少しずつ浮かび上がる。日常の会話や距離感の微細な違和を通して、人間…
- 171 2018 ニムロッド ニムロッド IT企業に勤める中本哲史は、社長から仮想通貨ビットコインの採掘(マイニング)事業を任される。彼の周りには、中絶と離婚の傷を抱える外資系勤務の恋人・田久保紀子と、小説家の夢に挫折し「駄目な飛行機コレクション」と題するメールを送ってくる同僚・荷室仁(ニムロッド)がいる。三人の日常に、天に挑んだバベルの塔… 第160回 芥川賞
- 172 2018 落としもの おとしもの 踏切のあいだに落ちていたバッグを「わたし」が落とし主より先に奪い取ってしまう表題作をはじめ、寝たきりの祖母と過ごす夏、バイト仲間との雑魚寝で身体に触れられる夜などを収める短編集。日常のすぐ脇にある他者との距離、善意と不安、死への衝動を、乾いた手触りの短篇として立ち上げる。単行本未収録だった6作品をま…
- 173 2018 静かに、ねぇ、静かに しずかに、ねぇ、しずかに 「本当の旅」「奥さん、犬は大丈夫だよね?」「でぶのハッピーバースデー」の3篇を収める作品集。海外旅行の写真投稿、ネットショッピング依存、動画撮影で自分たちだけの印を残そうとする夫婦など、SNSやスマートフォン越しにしか確かめられない現実感を描く。軽妙な語りの底に、承認欲求、支配、親密さの不安がにじみ…
- 174 2018 その先の道に消える そのさきのみちにきえる アパートの一室で発見された緊縛師の死体をめぐり、重要参考人の女性と彼女に惹かれる刑事・富樫、別の刑事たちの視線が絡み合う長編ミステリー。謎と嘘を追う捜査の形を取りながら、暴力、欲望、死者の痕跡を通じて、この世界を生きる意味を問い詰めていく。犯罪小説の緊迫感と、中村文則らしい倫理的・実存的な暗さが重な…
- 175 2018 鏡のなかのアジア かがみのなかのあじあ チベット、台湾、クアラルンプール、京都など、アジアの土地をモチーフにした全5篇の幻想短篇集。集英社公式は、少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、台湾・九份の村を舞台にする「Jiufenの村は九つぶん」、熱帯雨林の巨樹であった過去を持つ男を描く「天蓋歩行」などを挙げている。翻…
- 176 2018 つかのまのこと つかのまのこと かつての住み家らしき「この家」をさまよい続ける「わたし」が、次々に入れ替わる住人たちを見守る物語。幽霊のような語り手の視点から、家に残る記憶と、誰かを待ち続ける時間が静かに積み重ねられる。柴崎友香が俳優・東出昌大をイメージして小説を書き、市橋織江の写真と組み合わされた、写真と小説の境界を意識した一冊…
- 177 2018 ウィステリアと三人の女たち ウィステリアとさんにんのおんなたち 「彼女と彼女の記憶について」「シャンデリア」「マリーの愛の証明」「ウィステリアと三人の女たち」の4篇を収める短篇集。同窓会、デパート、女子寮、廃墟となった屋敷を舞台に、女性たちが不確かな記憶と死の気配に触れていく。記憶、死、救済、自己同一性が幻想的な気配で重なり、なだらかな散文がいつのまにか現実の足…
- 178 2018 夜更けの川に落葉は流れて よふけのかわにおちばはながれて 北町貫多の二十代前半を描く「寿司乞食」「夜更けの川に落葉は流れて」「青痰麺」の三篇を収める作品集。表題作では、無気力で受け身になっていた貫多が梁木野佳穂という女性との関わりによって、わずかに外の世界へ引き戻されていく。貧しさ、職場の失敗、恋愛の痛み、長く尾を引く恨みを、私小説的な乾いた筆致で読ませる…
- 179 2018 前世は兎 ぜんせはうさぎ 表題作「前世は兎」のほか、「夢をクウバク」「宗教」「沼」「梅核」「真空土練機」「ランナー」を収める短篇集。兎だった前世の記憶を持つ女、カタログを書き写すことで不安を鎮める休職中の教員、破滅後の世界でマラソンに選ばれる姉など、現実の足場をずらす設定が並ぶ。身体、性、信仰、労働不能や破滅のイメージを通じ…
- 180 2018 DJヒロヒト ディージェイヒロヒト 『DJヒロヒト』は、パラオ放送局のラジオ番組という奇想の形式を通して、昭和史・文学史・戦争の記憶を再構成する大長編です。中島敦、南方熊楠、森鴎外らの名が交差し、謎のDJの語りが歴史上の人物とフィクションの声をリミックスしていく。ラジオ、録音、放送というメディアの仕掛けを使いながら、天皇制と近代日本を…
- 181 2018 タイガー理髪店心中 たいがーりはつてんしんじゅう 北九州市立文学館の公式発表で、第4回林芙美子文学賞大賞受賞作として確認できる作品。応募時の題名「暮れる」から改題され、作者名も小暮夕樹子から小暮夕紀子へ改名されたことが公式発表に明記されている。NDLサーチとBooks出版書誌データベースでは、2020年1月に朝日新聞出版から単行本化されたことを確認… 第4回 林芙美子賞
- 182 2018 送り火 おくりび 東北の小さな中学校へ転校した少年が、土地の集団に馴染んでいく過程で、同級生たちの危うい力関係に巻き込まれていく。表面的な適応の裏に、暴力と同調圧力が蓄積していく構造を描く作品。閉じた学校空間の息苦しさと、少年たちの均衡が崩れる瞬間が読みどころになる。土地の祭礼や遊びの気配が、成長物語の明るさではなく… 第159回 芥川賞
- 183 2018 美しい顔 うつくしいかお 『美しい顔』は、東日本大震災後の避難所で暮らす高校生・沙那恵が、弟を守りながらメディアの視線にさらされる物語です。災害下の身体、家族、報道される被災者像をめぐる緊張を描きます。被災地の現実と表象の問題が、作品そのものの受容とも重なって読まれる第61回群像新人文学賞当選作です。 第61回 群像新人賞
- 184 2018 文字の消息 もじのしょうそく 『文字の消息』は、澤西祐典の第2単行本にあたる幻想小説集です。表題作では、どこからともなく現れる文字が家や街を覆い、日常の足場を侵食していきます。併録の「砂糖で満ちてゆく」では母の身体が砂糖へ変わっていく状況を介護する娘の視点から描き、「災厄の船」では入り江に現れた巨大な船が街に不穏な影を落とします…
- 185 2018 わるもん わるもん 『わるもん』は、硝子職人の父がいつの間にか家族から取り除かれたように見える家で、純子が父の痕跡をたどり始める物語。母や姉たち、家に現れる男性との関係が、純子の視点から少しずつ歪んで見えてくる。集英社の対談では、時間軸や純子の正体をめぐるわからなさも作品の魅力とされ、家族という閉じた船を外から見つめる… 第42回 すばる文学賞
- 186 2018 いかれころ いかれころ 昭和58年頃の南大阪を舞台に、四歳の奈々子の視点と後年の回想を通して、分家の暮らし、本家との格差、両親の不和、叔母の縁談を描く。河内弁の題名は「踏んだり蹴ったり」に近い不運の感覚を含み、土地と血縁の因習が幼い語りの中に濃く立ち上がる。差別や結婚規範、家父長的な親族関係を、日常会話に潜む価値判断として… 第50回 新潮新人賞
- 187 2018 焰 ほのお 『焰』(新潮社公式表記は『焔』)は、親の介護に追われる男、人間がお金として売買される社会、真夏の公園で涙が止まらない人々などを描く九篇の作品集。新潮社公式ページは、自分ではない何かになりたいと切望する人々が語り出す作品として紹介しており、介護、貨幣化、身体変容の寓話が現代社会の閉塞を照らす。ブレイデ… 第54回 谷崎賞
- 188 2018 庭 にわ 『庭』は、虫、草花、動物、人間の暮らしが隣り合う十五篇からなる短篇集です。ふきのとう、彼岸花、どじょう、蟹、家グモなど身近なものが、暮らしの中の不条理や喜びを帯びて不可思議な世界を開きます。新潮社公式ページ掲載の書評が指摘するように、あっさりした題名と濃密な本文、現実と幻想の自然な共存が読みどころで…
- 189 2018 あなたが私を竹槍で突き殺す前に あなたがわたしをたけやりでつきころすまえに 排外主義が強まる近未来の日本で、在日コリアン三世の柏木太一を中心にした若者たちが、それぞれの怒りと恐怖を抱えながら反攻を企てる長編。『文藝』連載を経て単行本化され、ヘイト、国家、在日性、仲間との連帯を、切迫した群像劇として描く。タイトルの過激さを、差別される側が追い詰められていく社会状況の比喩として… 第42回 野間新人賞
- 190 2018 サーラレーオ さーられーお 『サーラレーオ』は、タイで大麻を売って暮らす日本人カセを中心に、金も運も度胸もない男の逃走と欲望を描くピカレスク小説です。大量の大麻の種子をめぐる出来事から、バンコクと日本をまたぐ疾走が始まります。海外を舞台にした犯罪譚でありながら、負け続ける人物の虚勢と焦燥を荒い熱量で押し出す作品です。
- 191 2018 潜在殺 せんざいさつ 2018年刊行の渥美饒兒の単行本。既存収録の『ミッドナイト・ホモサピエンス』『孤蝶の夢』とは重複しない後年の小説候補。
- 192 2018 エリザベスの友達 『エリザベスの友達』は、村田喜代子が2018年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 193 2018 火環 : 八幡炎炎記 完結編 『火環 : 八幡炎炎記 完結編』は、村田喜代子が2018年に平凡社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 194 2017 影裏 えいり 会社の出向で岩手に移り住んだ今野は、釣り仲間となった同僚・日浅にだけ心を許していた。二人で川に通った日々はやがて途絶え、日浅は何も告げずに会社を去る。そして東日本大震災の後、今野は日浅の行方を追ううちに、親しいと思っていた男のもう一つの顔に触れることになる。北国の自然や釣りの場面を丹念に描きながら… 第157回 芥川賞
- 195 2017 ドレス どれす 『ドレス』は、「テキサス、オクラホマ」「マイ・ハート・イズ・ユアーズ」「真夏の一日」「愛犬」「息子」「ドレス」「私はさみしかった」「静かな夜」を収める短篇集です。OpenBDで収録作と2017年11月刊行の書誌を確認でき、NDLでは単行本と『文芸』掲載レコードを照合できます。表題作を含む複数の短篇を…
- 196 2017 星の子 ほしのこ 中学3年生の林ちひろは、優しい両親に愛されて育った。だが両親は、生まれつき病弱だったちひろが「あやしい宗教」の水で救われたと信じて以来、その教団に深くのめり込んでいる。緑のジャージ姿で頭に濡れタオルを載せる両親は周囲の目を引き、姉は家を出て、親戚との関係も軋んでいく。一目惚れした新任の先生に、夜の公… 第39回 野間新人賞
- 197 2017 ほしのこ ほしのこ 『ほしのこ』は、山下澄人が星や子どものイメージを通して、記憶と身体の感覚をずらして描く小説として整理できます。題名のひらがな表記は、幼さと遠さを同時に感じさせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 198 2017 回遊人 かいゆうじん 『回遊人』は、吉村萬壱が漂流するように生きる人物や、社会の中を回り続ける身体を描く小説として整理できます。回遊という語は、目的地へ一直線に進まない移動と反復を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 199 2017 かわうそ堀怪談見習い かわうそぼりかいだんみならい 『かわうそ堀怪談見習い』は、「窓」「台所の窓」「雪の朝」「蜘蛛」「古戦場」「幽霊マンション」「宮竹さん」「写真」など多数の小篇を収める怪談集です。OpenBDで収録作と2017年2月刊行の書誌を確認でき、NDLでは単行本と2020年版の書誌を確認できます。日常的な場所や物の名を掲げる短い題名が連なり…
- 200 2017 騎士団長殺し きしだんちょうごろし 『騎士団長殺し』は、肖像画家の「私」が小田原の山荘で謎の絵と「イデア」に遭遇する長編二部作です。絵画、地下空間、戦争の記憶が重なり、現実と寓話の境界がゆっくり崩れていきます。村上春樹の長編らしく、喪失と創作、歴史の暗部が大きな物語として展開します。
- 201 2017 血と肉 ちとにく 『血と肉』は、中山咲が身体と血縁、暴力的な生の感覚を扱う小説として整理できます。血は家族や継承を、肉は身体そのものの存在感を指し、抽象的な関係を物質的に捉え直します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 202 2017 R帝国 あーるていこく 『R帝国』は、中村文則が独裁的な国家、情報統制、戦争の気配を描くディストピア長編です。架空の帝国を通して、政治的な言葉が現実を支配する怖さと、個人が制度に巻き込まれる過程が描かれます。現代社会への寓話として、同調と暴力の構造を読む作品です。単独書評本文の確認は薄いが、著者の社会批評的な想像力が前面に…
- 203 2017 岩塩の女王 がんえんのじょおう 『岩塩の女王』は、諏訪哲史が硬質なイメージと言葉遊びを重ねる小説として整理できます。岩塩という結晶と女王という権威の組み合わせは、身体、鉱物、支配の幻想を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と初出確認に基づく暫定的な紹介です。
- 204 2017 囚われの島 とらわれのしま 『囚われの島』は、谷崎由依が島という閉じた場所を舞台に、隔離や記憶の問題を扱う小説として整理できます。囚われることは地理的な閉塞であると同時に、過去や関係から自由になれない状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 205 2017 塔と重力 とうとじゅうりょく 『塔と重力』は、上田岳弘が高く伸びる塔と、そこから逃れられない重力のイメージを通じて、現代社会の構造と個人の意識を描く作品集です。上昇への欲望と地上へ引き戻す力が、テクノロジーや都市的な感覚と結びつきます。抽象的な思考と物語性が交差する作品です。
- 206 2017 美しい国への旅 うつくしいくにへのたび 『美しい国への旅』は、田中慎弥が「美しい国」という政治的・理念的な言葉を旅の物語へずらして扱う小説として整理できます。旅は理想の場所へ向かう行為である一方、現実の醜さや暴力を見せる過程にもなります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 207 2017 ゆっくりおやすみ、樹の下で ゆっくりおやすみ、きのしたで 小学5年生のミレイが「さるすべりの館」で夏休みを過ごすうち、遠い過去の謎に触れていく児童文学寄りの長編。赤い部屋、止まっていた時計、館に隠された秘密が、子どもの視点に近い軽やかさと不思議な緊張感で語られる。今日マチ子の挿絵を多数収録し、高橋源一郎が子どもと大人の読者をつなぐ語りに挑んだ作品。
- 208 2017 蹴爪(ボラン) ぼらん 『蹴爪(ボラン)』は、水原涼の初小説集の表題作です。Books出版書誌データベースでは、東南アジアの島を舞台に、闘鶏場で胴元を務める父、村を守る祠、幼なじみの鶏の死、殺人事件、地震が重なる物語として紹介されています。異国の少年の物語でありながら「ぼくたち」の姿を映す作品として位置づけられ、熱と暴力の…
- 209 2017 光点 こうてん 工場しかない閉じられた町で暮らす実以子が、弁当工場と家を往復する日々のなかで、八つ山と呼ばれる裏山で青年カムトと出会う。母のいらだちや父の無関心から逃れるように神社へ通う語りは、身体感覚と祈りのかたちをめぐって不穏に深まる。閉塞した生活から、言葉以前の祈りや表現を探る作品。 第41回 すばる文学賞
- 210 2017 蛇沼 じゃぬま 『蛇沼』は、宮城県の田園地帯を舞台に、少年時代の監禁事件と少女セイコの不可解な死を抱え続ける青年・恭二を描く新潮新人賞受賞作。受賞者インタビューでは、作者が宮城県亘理郡の田んぼや沼のある風景を原風景としており、主人公が「生きていてもいいのか」という答えのない問いの中でもがく人物として構想されたことが… 第49回 新潮新人賞
- 211 2017 無限の玄 むげんのくろ 男性だけのストリングバンドを舞台に、絶対的な父の死と反復する再生のような出来事を軸に、共同体の変容を描く中篇。バンドの規律や父権をめぐる物語を、音楽と身体性を帯びた寓話として展開する。芸術の場が家族、共同体、権威の問題へ反転していく点が読みどころ。 第31回 三島賞
- 212 2017 双子は驢馬に跨がって ふたごはろばにまたがって 監禁される親子、救出に向かう双子と驢馬、二つの世界をつなぐ手紙を軸にした奇想の冒険譚。河出書房新社は、独自の世界観で注目された作品として紹介しており、寓話的な設定と哲学的なユーモアが前面に出る。家族の救出劇でありながら、言葉が世界の境界を越える仕掛けが読みどころになる。 第40回 野間新人賞
- 213 2017 スイミングスクール 『スイミングスクール』は、高橋弘希が2017年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 214 2016 あひる あひる 『あひる』は、文学ムック『たべるのがおそい』創刊号に掲載された表題作に、書き下ろしの「おばあちゃんの家」「森の兄妹」を加えた三篇の作品集です。表題作では、あひるを飼うことになった家族と、学校帰りに集まってくる子どもたちのいる日常が描かれます。何気ない暮らしの安堵に差し込む影や、淡々とした語りの中で露…
- 215 2016 コンテクスト・オブ・ザ・デッド コンテクスト・オブ・ザ・デッド 『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』は、ゾンビが蔓延する世界で文学と出版業界を風刺する長編です。死者が増殖するホラー的な設定の中に、言葉が読まれる文脈や、作品が流通する仕組みへの批評が重ねられます。ジャンル小説の速度とメタフィクション的な笑いを併せ持つ作品です。
- 216 2016 ホモサピエンスの瞬間 ほもさぴえんすのしゅんかん 『ホモサピエンスの瞬間』は、松波太郎が人間を生物種として捉える視野と、個人の瞬間的な感覚を重ねる作品として整理できます。タイトルは、人間であることを大きな分類から眺める一方、生活の一瞬へも焦点を合わせます。既存データには芥川賞候補作とあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。
- 217 2016 炎と苗木 田中慎弥の掌劇場 ほのおとなえぎ たなかしんやのてのひらげきじょう 『炎と苗木 田中慎弥の掌劇場』は、毎日新聞出版から刊行された田中慎弥の掌編小説集です。NDLサーチとOpenBDで、「会話」「豊富な涙」「表現の自由」「国防の夜」「書いている、読んでいる」など多数の収録作を確認できます。ごく短い形式の反復によって、日常の違和感、作家としての自己意識、社会的な言葉への…
- 218 2016 異郷の友人 いきょうのゆうじん 『異郷の友人』は、上田岳弘が「異郷」と「友人」という距離のある言葉を結び、共同性と疎外を描く長編として整理できます。見知らぬ場所や社会の中で、友人という関係がどこまで成立するのかが問われます。個人の孤立を、世界の構造へ広げて考える作品です。
- 219 2016 イサの氾濫 いさのはんらん 『イサの氾濫』は、木村友祐がイサという人物や存在をめぐる記憶、土地、暴力の広がりを描く短篇集として整理できます。氾濫という語は、抑え込まれたものがあふれ出す感覚を示します。既存データには三島由紀夫賞候補作品を収めるとあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。
- 220 2016 壁抜けの谷 かべぬけのたに 『壁抜けの谷』は、山下澄人が壁を抜けるという幻想的な身振りと、谷という地形を組み合わせて描く小説として整理できます。壁は境界を、谷は落ち込みや隔たりを思わせ、人物の身体感覚を通常の現実からずらします。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 221 2016 まっぷたつの先生 まっぷたつのせんせい 『まっぷたつの先生』は、木村紅美が教師像や学びの場に裂け目を入れる小説として整理できます。先生というひとつの役割が「まっぷたつ」に割れる題名から、教育、権威、個人の内面の分裂が読み取れます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 222 2016 グローバライズ ぐろーばらいず 『グローバライズ』は、木下古栗がグローバル化する世界の言葉、身体、欲望を奇妙な文体で扱う作品として整理できます。タイトルの綴りや響きそのものが、世界を標準化する力への違和感を含んでいます。実験的な語りを通じて、表現と書く技法の問題が前面に出る作品です。
- 223 2016 コンビニ人間 コンビニにんげん 36歳未婚の古倉恵子は、大学卒業後も就職せず、同じコンビニで18年間アルバイトを続けている。幼い頃から人と感覚がずれていることを自覚してきた恵子にとって、マニュアルが完備されたコンビニは「普通の人間」を演じられる唯一の場所だった。しかし、婚活目的で店にやってきた皮肉屋の新人男性・白羽の出現により、そ… 第155回 芥川賞
- 224 2016 野良ビトたちの燃え上がる肖像 のらびとたちのもえあがるしょうぞう 『野良ビトたちの燃え上がる肖像』は、格差と貧困の中で生きる人々を描いた長篇です。野良ビトという呼び名は、制度や共同体の外へ押し出された人びとの姿を示します。肖像という形式を通じて、個々の生活と社会の暴力を結びつけて読む作品です。
- 225 2016 天才 てんさい 『天才』は、田中角栄の一人称で語られる石原慎太郎の政治小説です。実在の政治家の生涯を、本人が語る形式に置き換えることで、戦後政治、権力、地方から中央へ向かう上昇の物語を描きます。史実を素材にしつつ、語りの強さで人物像を押し出す作品です。
- 226 2016 私の消滅 わたしのしょうめつ 『私の消滅』は、中村文則が自己の消滅、記憶、犯罪的な心理の闇を扱う長編です。タイトルの「私」は安定した主体ではなく、記録や他者の視線によって揺らぐ存在として現れます。読者を不安定な意識の中へ引き込み、自己同一性の崩壊を追体験させる作品です。 第26回 ドゥマゴ文学賞
- 227 2016 太陽の側の島 たいようのそばのしま 『太陽の側の島』は、戦時中を背景に、女性と兵士の関係を架空の日記や手紙の連なりでたどる中篇。第2回林芙美子文学賞の大賞受賞作として発表され、のちに短篇集『オブジェクタム』に収録された。戦争の記憶、記録の不確かさ、島という隔絶した場所を、SF的・幻想的な想像力で結びつける作品として位置づけられる。 第2回 林芙美子賞
- 228 2016 市街戦 しがいせん 『市街戦』は、砂川文次のデビュー作であり、第121回文學界新人賞受賞作です。NDLサーチでは『文學界』2016年5月号掲載、文藝春秋公式ページでは後年の単行本『戦場のレビヤタン』に著者デビュー作として併録されたことを確認できます。公開されている出版社・書誌情報だけでは単独作品としての詳しい梗概までは… 第121回 文學界新人賞
- 229 2016 ジニのパズル じにのぱずる オレゴン州の高校を退学になりかけているジニは、ホームステイ先で出会ったステファニーに、5年前の東京で起きた出来事を語り始めます。日本の小学校から朝鮮学校へ移ったジニは、朝鮮語ができないまま居場所を探し、二つの言語と複数の帰属の間で自分の輪郭を問い続ける。1998年のテポドン発射翌日にチマ・チョゴリ姿… 第59回 群像新人賞
- 230 2016 似非りんご味 えせりんごあじ 『似非りんご味』は、「新潮」2016年10月号に掲載された高橋有機子の小説です。新潮社バックナンバーでは、新潮新人賞受賞第一作として掲載され、りんごの「本当の味」を知ってしまった人物と、偽物かもしれない友情をめぐる作品として紹介されています。NDLサーチとCiNii Researchで掲載誌とページ…
- 231 2016 二人組み ふたりぐみ 『二人組み』は、鴻池留衣のデビュー作で、第48回新潮新人賞受賞作。新潮社の『ナイス・エイジ』書籍ページでは、啓蒙欲と性欲をこじらせた男子中学生が暴走する作品として収録紹介されている。同ページ掲載の倉本さおり書評は、ほとんど返答しない女子生徒を前に主人公の饒舌が上滑りし、言葉と関係性の不気味で滑稽な姿… 第48回 新潮新人賞
- 232 2016 伯爵夫人 はくしゃくふじん 帝大入試を控えた二朗が謎めいた伯爵夫人に誘われ、性の昂ぶりと戦争前夜の不穏な空気に巻き込まれていく長篇。伯爵夫人、従妹、和製ルイーズ・ブルックスら魅力的な女性たちが二朗を挑発し、個人の感情教育と時代の破滅が交錯する。エロス、映画的記憶、戦争の気配が入れ子状に重なる作品である。 第29回 三島賞
- 233 2016 本物の読書家 ほんものの どくしょか 『本物の読書家』は、書物への耽溺、言葉の探求、読むことへの畏怖をめぐる中編二作を収める作品集。表題作では、老人ホームへ向かう大叔父と同行する語り手が、川端康成からの手紙の噂と車内で出会う謎めいた読書家を通じて、読書と記憶の秘密に巻き込まれる。もう一編「未熟な同感者」では文学講義、引用、師弟関係が絡み… 第40回 野間新人賞
- 234 2016 人の樹 『人の樹』は、村田喜代子が2016年に潮出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 235 2016 焼野まで 『焼野まで』は、村田喜代子が2016年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 236 2015 あなたが消えた夜に あなたがきえたよるに 『あなたが消えた夜に』は、連続通り魔殺人事件を追う二人の刑事の視点が交錯する中村文則の長篇です。事件の真相を追うミステリー的構造のなかで、暴力、記憶、加害と被害の境界が揺らぎます。暗い犯罪小説の形を取りながら、人間の空洞を覗き込む作品です。
- 237 2015 あの子が欲しい あのこがほしい 『あの子が欲しい』は、朝比奈あすかが子どもや他者への欲望をめぐる感情を描く小説として整理できます。題名の「欲しい」は、愛情、羨望、所有の境界を曖昧にします。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 238 2015 動物記 どうぶつき 『動物記』は、高橋源一郎が動物という他者を通じて、人間社会や言葉のあり方を問い直す小説として整理できます。動物はかわいらしい存在ではなく、人間中心の物語をずらす視点として現れます。寓話と批評が交差する作品です。
- 239 2015 エピローグ えぴろーぐ 『エピローグ』は、円城塔が物語の終わりのあとを起点にするSF的・実験的長篇です。終わったはずの物語が、情報や言語の連鎖としてなお続く構造を持ちます。題名と逆向きに、終わりから世界を組み立てる読み味が特徴です。
- 240 2015 プロローグ ぷろろーぐ 『プロローグ』は、円城塔が物語の始まりをめぐって、言語と構造を実験する長篇です。始まりの前提が揺らぐことで、読者は物語がどう発生するのかを読むことになります。『エピローグ』と対になる題名も含め、メタフィクション的に楽しめる作品です。
- 241 2015 シャッフル航法 しゃっふるこうほう 『シャッフル航法』は、円城塔が航法や移動のイメージを、情報の組み替えと結びつける作品集として整理できます。シャッフルという語が示すように、順序や因果は固定されず、読者は断片の配置をたどることになります。SF的な発想と実験的文体が前面に出る作品です。
- 242 2015 復讐屋成海慶介の事件簿 ふくしゅうやなるみけいすけのじけんぼ 『復讐屋成海慶介の事件簿』は、原田ひ香が復讐を請け負う人物を軸に、事件と人間関係を描く小説として整理できます。復讐は単なる解決ではなく、依頼者や加害者の生活のゆがみを浮かび上がらせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 243 2015 学校の近くの家 がっこうのちかくのいえ 『学校の近くの家』は、青木淳悟が学校と家という近接した場所から、子どもや地域の記憶を描く小説として整理できます。近いはずの場所同士の間に、共同体の視線や距離が生まれます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 244 2015 異類婚姻譚 いるいこんいんたん 結婚して4年になる専業主婦の「私」は、家ではテレビとゲームに没頭するだけの夫と、波風のない生活を送っている。ある日ふと、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気づいた「私」。やがて夫の顔は緩み、溶け、人間の形を失っていくように見え始める。捨てられた飼い猫の行方や、揚げ物に異常に執着する夫の変容… 第154回 芥川賞
- 245 2015 暗号のポラリス あんごうのぽらりす 『暗号のポラリス』は、中山智幸が暗号と北極星のイメージを重ね、読解や方角をめぐる物語として構成した作品と整理できます。暗号は言葉の届かなさを、ポラリスは迷った先の指標を示す題名です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 246 2015 オールド・テロリスト オールド・テロリスト 『オールド・テロリスト』は、村上龍が老い、暴力、国家への不信を結びつけて描く長編です。高齢者たちの怒りが社会への攻撃として噴出する設定により、希望のなさと政治的な閉塞が前景化します。エンターテインメントの速度を持ちながら、老いと社会の断絶を問う作品です。
- 247 2015 宰相A さいしょうエー 『宰相A』は、「平和主義」を掲げる独裁国家と化したもう一つの日本に迷い込んだ小説家Tを描くディストピア長編です。政治的な言葉が現実を覆い隠す世界で、作家の存在と語ることの意味が問われます。架空社会を通じて、権力、同調、文学の無力さを読む作品です。
- 248 2015 心臓異色 しんぞういしょく 『心臓異色』は、中島たい子が身体の違和感と人間関係のずれを扱う小説として整理できます。心臓という生命の中心と、「異色」という言葉が、普通であることから外れる感覚を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 249 2015 消滅世界 しょうめつせかい 『消滅世界』は、人工授精が発達し、夫婦間のセックスが近親相姦のようにタブー視されるもう一つの日本を描く長編です。主人公・雨音は、父母の性行為によって生まれたことを抱えながら、セックスのない清潔な家族を作ろうとします。やがて夫の朔とともに実験都市「楽園」へ移り、家族によらない繁殖システムと向き合うこと…
- 250 2015 水死人の帰還 すいしにんのきかん 『水死人の帰還』は、小野正嗣が死者、記憶、土地の声をめぐって描く小説として整理できます。水死人という存在は、失われたものが共同体へ戻ってくる不穏な気配を帯びています。生と死の境目を揺らしながら、地方の場所に残る記憶を読む作品です。
- 251 2015 鳥の会議 とりのかいぎ 『鳥の会議』は、山下澄人が鳥という非人間的な視点や集まりのイメージを通して、人間の言葉と身体をずらして描く作品として整理できます。会議という形式は共同性を示す一方、意味が共有されない不穏さも帯びています。断片的な語りと身体感覚から、日常の秩序が崩れる感触を読む小説です。
- 252 2015 虚ろまんてぃっく うつろまんてぃっく 『虚ろまんてぃっく』は、吉村萬壱が恋愛や欲望のロマンティックな外形を、空虚さや不穏さへずらして描く作品として整理できます。題名のひらがな表記は、甘さと不気味さが同居する感触を生みます。身体、性、孤立をめぐる違和感が、読後にざらつきを残す小説です。
- 253 2015 ドール どーる 自分だけの特別な人形を手に入れたいと思う少年の衝動を軸に、性と闇を描く作品。少年の内面にある欲望や不快感を直視し、読者を落ち着かない心理の流れへ引き込む。人形という対象を通じて、身体と所有、成長期の暴力性が浮かび上がる。出版社紹介でも、不穏な少年の衝動を前面に出したデビュー作として位置づけられている… 第52回 文藝賞
- 254 2015 地の底の記憶 ちのそこのきおく 電波塔に見守られる架空の町を舞台に、百年を超える時間をたどる壮大なデビュー作。ラピス・ラズリ、電波、川の流れといったモチーフが、町と人物の記憶を深い層へ導く。現実と非現実、過去と現在が交錯する長い時間の物語として読むことができる。架空の町の歴史を掘り下げる構成が、記憶そのものの地層を読む感覚を生む。 第52回 文藝賞
- 255 2015 女たち三百人の裏切りの書 おんなたちさんびゃくにんのうらぎりのしょ 『源氏物語』が世に広まって約百年後、紫式部が怨霊として蘇り、宇治十帖の真の姿を語り出すという構想の長篇。改竄された物語、語り手と読み手、女たちの策略が絡み合い、物語そのものが時代を動かす力として描かれる。古典の読み替えであり、物語を享受することへの壮大な問い直しでもある。 第37回 野間新人賞
- 256 2015 この世にたやすい仕事はない このよにたやすいしごとはない 『この世にたやすい仕事はない』は、燃え尽きて前職を辞めた女性が、職業相談員に紹介されるまま、少し変わった仕事を渡り歩く連作長篇です。監視する仕事、バスの広告を考える仕事、米菓の袋に入れる文章を書く仕事など、一見たやすそうな職場ほど、社会の仕組みや人の欲望が不思議なかたちで入り込んできます。労働小説で… 第66回 芸術選奨新人賞
- 257 2015 生鮮てるてる坊主 せいせん てるてる ぼうず 『生鮮てるてる坊主』は、山田詠美の短篇集『珠玉の短編』に収められた川端康成文学賞受賞作です。講談社の紹介・レビューでは、エロスとグロテスクを絡めた技巧的な短篇として扱われ、短篇集全体の濃密な読み味を代表する作品に位置づけられています。身体感覚や欲望が不穏な比喩へ反転していく、山田詠美らしい文体の強度… 第42回 川端賞
- 258 2015 ニューカルマ にゅーかるま 『ニューカルマ』は、勤務先でリストラが始まる不安の中、大学時代の友人からネットワークビジネスに勧誘されたユウキを描く長篇です。副業のつもりで入会した主人公が、会員を増やす快感と周囲の冷たい視線の間で次第にビジネスへ沈み込んでいきます。労働不安、承認欲求、成功への誘惑が結びつく、都市の若者をめぐる社会…
- 259 2015 呪文 じゅもん 『呪文』は、星野智幸が2015年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 260 2015 禁断のスカルペル 『禁断のスカルペル』は、久間十義が2015年に日本経済新聞出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 261 2015 朝顔の日 『朝顔の日』は、高橋弘希が2015年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 262 2015 八幡炎炎記 『八幡炎炎記』は、村田喜代子が2015年に平凡社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 263 2014 A えー 『A』は、中村文則が匿名性、犯罪、倫理の境界を扱う作品集として整理できます。アルファベット一文字の題名は、固有名を失った人物や出来事の不気味さを示します。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌と掲載レコードに基づく暫定的な紹介です。
- 264 2014 ボラード病 ぼらーどびょう 『ボラード病』は、海辺の新興住宅地に越してきた家族が、地域の同調圧力に絡め取られていく吉村萬壱の小説です。安全や秩序を掲げる共同体が、異物を排除する病のようなものとして描かれます。寓話的な設定によって、災害後の町づくり、家族、排除の感覚が不穏に重なります。
- 265 2014 ファイナルガール ふぁいなるがーる 『ファイナルガール』は、ホラー映画の用語を思わせる題名を通じて、生き残る女性の身体と恐怖を扱う藤野可織の小説として整理できます。恐怖は外部の怪物だけでなく、視線や役割として人物にまとわりつきます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 266 2014 春の庭 はるのにわ 離婚を機に世田谷の取り壊し予定のアパートに越してきた太郎は、隣に建つ水色の洋館を熱心に観察する住人の女・西と知り合う。漫画家の西は、高校時代に魅了された写真集『春の庭』の舞台がその家であることを知り、この場所へ引っ越してきたのだった。二人は次第にその水色の家への接近を試みるようになる。再開発で消えて… 第151回 芥川賞
- 267 2014 金を払うから素手で殴らせてくれないか? かねをはらうからすでになぐらせてくれないか 『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』は、暴力と交換の論理を露骨な題名で突きつける木下古栗の作品です。金銭、身体、欲望が奇妙な取引として結びつき、常識的な倫理が不条理にずれていきます。過激なユーモアと不快感が同居する読み味です。
- 268 2014 コルバトントリ コルバトントリ 『コルバトントリ』は、山下澄人が意味をすぐには回収しにくい言葉と、身体の記憶を結びつける小説として整理できます。題名の異物感そのものが、人物の経験を通常の物語に収めない姿勢を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 269 2014 教団X きょうだんえっくす 『教団X』は、巨大宗教団体をめぐって複数の男女の欲望と思想が交差する中村文則の長篇です。信仰、性、暴力、社会不安がからみ合い、個人が何に救いを求めるのかを暗い群像劇として描きます。連載小説らしい大きな構成で、現代社会の空洞とカルト的共同性を問う作品です。
- 270 2014 LIFE らいふ 『LIFE』は、松波太郎が生きることそのものを題名に掲げ、身体、生活、言葉の不安定さを描く小説です。人物の経験は分かりやすい筋に回収されず、断片的な感覚として立ち上がります。純文学の実験性と生活感が同居する作品です。 第36回 野間新人賞
- 271 2014 メタモルフォシス メタモルフォシス 『メタモルフォシス』は、SMの快楽へ深入りしていく証券マンを描く羽田圭介の小説です。仕事で求められる合理性と、身体が求める変容の欲望がずれていきます。性と労働を結びつけながら、自己像が変質していく過程を乾いた文体で追う作品です。
- 272 2014 猫の目犬の鼻 ねこのめいぬのはな 『猫の目犬の鼻』は、丹下健太が動物的な感覚や身近な生活の違和感を扱う作品として整理できます。視線や嗅覚を思わせる題名は、人間関係を別の感覚で捉え直す入口になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 273 2014 ルンタ ルンタ 『ルンタ』は、山下澄人が土地、身体、記憶の断片を独特の語りでつなぐ小説です。題名の音の響きは意味をすぐには固定せず、人物の経験を通常の筋からずらしていきます。身体に残る感覚を、乾いたユーモアと不穏さで読ませる作品です。
- 274 2014 殺人出産 さつじんしゅっさん 『殺人出産』は、十人産めば一人殺してもよい「殺人出産制度」が認められた世界を描く表題作を中心とする作品集です。Amazonの商品紹介では、「産み人」が尊い存在として崇められる社会で、職場の同僚が産み人になっていくなか、主人公・育子が複雑な思いを抱える物語として説明されています。OpenBDでは「トリ…
- 275 2014 聖地Cs せいちしーず 『聖地Cs』は、木村友祐が聖地と名づけられる場所の力や、土地をめぐる記憶を扱う小説として整理できます。場所は信仰や観光の対象であるだけでなく、共同体の傷や欲望を集めるものとして読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評記録に基づく暫定的な紹介です。
- 276 2014 臣女 しんにょ 『臣女』は、吉村萬壱が身体、服従、権力関係を不穏に描く小説として整理できます。題名は、誰かに従属する女性像や、支配の構造を想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 277 2014 太陽・惑星 たいよう・わくせい 『太陽・惑星』は、上田岳弘のデビュー期の作品を収める単行本で、「太陽」と「惑星」を中心に構成されています。個人の意識を、宇宙的なスケールや情報化された世界と接続する発想が見えます。既存データには新潮新人賞受賞作と芥川賞候補作を含むとあるが、今回の調査では公式確認できていません。
- 278 2014 死にたくなったら電話して しにたくなったらでんわして 大阪・十三のキャバクラで働く初美と出会った浪人生・徳山が、外部とのつながりを失い、悪意と厭世へ引き込まれていく。河出書房新社の紹介では、初美が語る残虐史と徳山の関係の断絶が軸に置かれ、現代の「心中もの」と位置づけられている。欲望、虚無、言葉の呪術性が破滅へ向かって濃密に絡む、強い閉塞感のある作品。 第51回 文藝賞
- 279 2014 アルタッドに捧ぐ あるたっどにささぐ 小説を書いている本間の原稿用紙の上で、作中の少年が死に、その少年が飼っていたトカゲのアルタッドが現れるところから始まる。現実の生活と書かれた虚構が継ぎ目なく接続され、創作することそのものが物語の中心に置かれる。青春小説でありながら、虚構の根源へ向かうメタフィクションとして読める。 第51回 文藝賞
- 280 2014 みずうみのほうへ みずうみのほうへ 七歳の誕生日旅行で父を失った「ぼく」が、湖のある町で育ち、二十代の終わりに父との記憶に結びつく「サイモン」に似た人物と出会う。港町、水産物加工場、アイスホッケー観戦といった生活の細部が、喪失の記憶と幻想的な再会をゆっくり結びつけていく。静かな語りの中で、父の死の謎と過去への引力が持続する作品である。 第38回 すばる文学賞
- 281 2014 名誉と恍惚 めいよ と こうつ 日中戦争下の上海で、工部局に勤める日本人警官・芹沢が軍と青幇の面会を仲介したことから警察を追われ、潜伏生活へ追い込まれていく長篇。祖国や名前を失う男の生存を通じて、戦争、都市、裏社会、アイデンティティが交錯する。大部の分量で、歴史の混沌と個人の逃走を描き込む作品。 第27回 ドゥマゴ文学賞
- 282 2014 キャプテンサンダーボルト きゃぷてんさんだーぼると 『キャプテンサンダーボルト』は、阿部和重と伊坂幸太郎の合作として2014年に文藝春秋から刊行された長編小説です。合作ですが阿部和重の単行本化作品として著書一覧に含まれるため登録します。
- 283 2014 夜は終わらない よるはおわらない 『夜は終わらない』は、星野智幸が2014年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 284 2014 屋根屋 『屋根屋』は、村田喜代子が2014年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 285 2013 快楽 かいらく 『快楽』は、欲望の不平等を題材に、身体、性、他者からの評価を大胆に描く青山七恵の小説です。快楽は単純な喜びではなく、誰が欲望を持つことを許されるのかという社会的な問いへ広がります。静かな文体の奥で、性とジェンダーの不均衡が不穏に浮かびます。
- 286 2013 大地のゲーム だいちのゲーム 『大地のゲーム』は、大震災後の近未来の大学キャンパスを舞台に、次の揺れを待つ若者たちを描く綿矢りさの長篇です。災害は出来事として終わらず、身体感覚や人間関係の底に残り続けます。青春小説の形を取りながら、世界の足場が割れる感覚を言葉にする作品です。
- 287 2013 おはなしして子ちゃん おはなしして こちゃん 『おはなしして子ちゃん』は、藤野可織らしい奇妙な会話感覚と、日常のずれを前面に出した作品集です。話すこと、聞くこと、物語にされることの不穏さが、幼さを帯びた題名と対照をなします。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 288 2013 爪と目 つめとめ 『爪と目』は、幼い娘、父、父の恋人をめぐる関係を、視覚と身体感覚の不穏さから描く短篇です。家庭内の出来事は、保護されるはずの子どもの目を通して、異様な近さと距離を同時に帯びます。語りの中心に視覚を置くことで、家族と暴力の境目を静かに揺さぶる作品です。 第149回 芥川賞
- 289 2013 憤死 ふんし 『憤死』は、表題作を含む綿矢りさの短篇集で、怒りや恥、身体の違和感を寓話的に扱います。日常の些細な場面から、人物の内側に溜まった毒気がふいに噴き出します。軽く読める語りの奥に、自己像を保てない不安が残る作品集です。
- 290 2013 ギッちょん ギッちょん 『ギッちょん』は、山下澄人が身体の記憶や言葉になりにくい経験を、断片的な語りで立ち上げる小説です。題名の音の感触そのものが、人物の不器用さや世界とのずれを示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 291 2013 去年の冬、きみと別れ きょねんのふゆきみとわかれ 『去年の冬、きみと別れ』は、猟奇事件をめぐる取材と記録の迷路を描く中村文則の長篇です。人物の語る真実は次々に反転し、取材する側もまた物語に巻き込まれていきます。犯罪小説の外形を使いながら、欲望、表現、他者を所有する暴力を問う作品です。
- 292 2013 燃える家 もえるいえ 『燃える家』は、下関を舞台に家族と国家の暴力を問う大長篇として既存データに記録されている田中慎弥作品です。家という場所は保護の空間ではなく、血縁、地域、歴史が燃え移る場として扱われます。今回の調査では単行本レコードをNDLで確認できなかったため、紹介は既存データと関連する『群像』書誌に基づく暫定情報…
- 293 2013 ピン・ザ・キャットの優美な叛乱 ぴんざきゃっとのゆうびなはんらん 『ピン・ザ・キャットの優美な叛乱』は、飼い猫と生まれた息子の境界が揺らぐ感覚を核に、家族・身体・動物的な気配を奇妙な寓話へ変形させる小説。河出書房新社は、猫をめぐるかつてない小説として紹介し、現実の秩序が少しずつずれていく不穏さを前面に出している。語りのユーモアと不安が同時に立ち上がる、荻世いをらら…
- 294 2013 砂漠ダンス さばくダンス 『砂漠ダンス』は、山下澄人が乾いた場所の感覚と身体の動きを結びつける小説です。砂漠とダンスという組み合わせは、孤立した空間でなお身体が反応し続けるイメージを作ります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評に基づく暫定的な紹介です。
- 295 2013 流転の魔女 りゅうてんのまじょ 『流転の魔女』は、楊逸が移動する女性の生と、越境のなかで変わっていく家族や記憶を描く小説として整理できます。流転という語は、土地や身分が安定しない感覚を示し、魔女という像は周囲からの異物視も思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 296 2013 穴 あな 仕事を辞めて夫の田舎へ移った語り手が、黒い獣を追って土手の穴に落ちたことから、見慣れた日常が異界の気配を帯びていく。世羅さん、寡黙な義祖父、義兄を名乗る知らない男など、周囲の人物の奇妙さが郊外の夏を静かにゆがませる。表題作に加え、農村の古民家で新生活を始めた友人夫婦をめぐる作品を収める芥川賞受賞作。 第150回 芥川賞
- 297 2013 ある日の結婚 あるひのけっこん 『ある日の結婚』は、淺川継太が『朝が止まる』で第53回群像新人文学賞に当選した後、『群像』2013年7月号に発表した受賞第一作です。Books出版書誌データベースの内容紹介では、ありふれた男女の恋愛が思いがけない展開と結末へ進む表題作として紹介されています。2014年刊の第一作品集『ある日の結婚』に…
- 298 2013 鶏が鳴く にわとりがなく 『鶏が鳴く』は、高校3年生の主人公が、かつてのバンド仲間で引きこもりになった友人の部屋に忍び込む物語として登録されている。青春の終わり、友人関係の断絶、孤立への接近を、部屋という閉じた場所から描く。単行本は講談社から2013年8月に刊行されているが、出版社公式の詳細梗概は今回十分に確認できていない。 第56回 群像新人賞
- 299 2013 ジャックを殺せ、 じゃっくをころせ 『ジャックを殺せ、』は、ジャック暗殺指令を受けたミス・レイディが、殺害成功直後に謎の男から暗殺失敗を告げられるところから展開する作品です。河出書房新社の紹介では、哲学とアクションを交差させながら、資本主義社会の虚実をえぐる小説として位置づけられています。
- 300 2013 世界泥棒 せかいどろぼう 放課後の教室で、男子二人が実弾入りの銃を使って死ぬまで撃ち合う「決闘」が行われるという設定から始まる。決闘を取り仕切る百瀬くんの存在をめぐり、学校という日常空間に戦争の論理が持ち込まれる。暴力を制度化した寓話として、現代の戦争文学を試みる作品。 第50回 文藝賞
- 301 2013 左目に映る星 ひだりめにうつるほし 左目だけにある近視と乱視の感覚を大切にしてきた早季子が、同じ目を持つ少年の記憶と、アイドルオタクの宮内との出会いを通して他者との距離を測り直す恋愛小説。視界のずれが、恋愛や孤独、共有できない身体感覚の比喩として働く。日常的な語りの中に、コントロールしきれない不安定さと身体感覚の濃さが残る。 第37回 すばる文学賞
- 302 2013 教授と少女と錬金術師 きょうじゅとしょうじょとれんきんじゅつし 教授、少女、錬金術師という奇妙な組み合わせを中心に、断片的で出鱈目にも見える出来事を積み重ねていく第37回すばる文学賞受賞作。写実的な筋を追うより、異様な熱や飛躍する連想、キッチュな笑いを楽しむタイプの作品である。演劇的な発想と実験的な構成が、デビュー作らしい危うさと勢いを生んでいる。 第37回 すばる文学賞
- 303 2013 蛸の夢 たこのゆめ 『蛸の夢』は、「新潮」2013年7月号に掲載された門脇大祐の小説です。新潮社バックナンバーでは、新潮新人賞受賞第一作として紹介され、世界を一匹の蛸の夢として捉える認識の揺らぎを示す作品紹介が付されています。NDLサーチとCiNii Researchで掲載誌とページ範囲を確認できます。
- 304 2013 太陽 たいよう 新宿のホテル、アフリカの「赤ちゃん工場」、パリの蚤の市、インドの湖畔などを横断し、人類の欲望と未来を極端なスケールで描くデビュー小説集。表題作「太陽」は金、不老不死、核融合といったモチーフを扱い、現代社会の資本と身体をSF的想像力で押し広げる。純文学とSFを接続する破格の語りが特徴。 第45回 新潮新人賞
- 305 2013 Deluxe Edition でらっくすえでぃしょん 『Deluxe Edition』は、阿部和重が2013年に文藝春秋から刊行した作品集です。著者ページの著書一覧では複数の短篇を収める単行本として確認できます。
- 306 2013 ブラック・ダラー = BLACK DOLLAR ぶらっくだらー 2013年8月に双葉社から刊行された本人単著をNDLで確認。ISBN 978-4-575-23831-0の単行本候補。
- 307 2013 ゆうじょこう 『ゆうじょこう』は、村田喜代子が2013年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 308 2012 嵐のピクニック あらしのピクニック 『嵐のピクニック』は、本谷有希子の奇想に満ちた短篇を集めた作品集です。日常の足場が突然ずれ、家族、身体、自己像が不条理なかたちで変形していきます。ユーモアと不穏さが同時に働き、読者の常識を揺らす短篇集です。
- 309 2012 バナナ剥きには最適の日々 ばなながきにはさいてきのひびと 『バナナ剥きには最適の日々』は、円城塔のSF的・実験的な短篇を収める作品集です。日常的な動作を奇妙な論理や言語の操作へ接続し、世界の見え方そのものをずらします。軽い題名の奥で、テクノロジー、言葉、物語の組み立て方が問われます。
- 310 2012 道化師の蝶 どうけしのちょう 『道化師の蝶』は、言語、記憶、翻訳、移動をめぐる円城塔の実験的な作品集です。表題作は、物語が別の言語や媒体へ渡るたびに輪郭を変えるような構造を持ちます。読みどころは、難解さそのものではなく、言葉が世界を作り替える過程を小説として体験できる点にあります。 第146回 芥川賞
- 311 2012 パトロネ ぱとろね 『パトロネ』は、支援者や庇護者を意味する語を手がかりに、芸術、労働、他者への依存を描く藤野可織の小説として整理できます。誰かに支えられることは、保護であると同時に支配や不自由も生みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 312 2012 ひらいて ひらいて 『ひらいて』は、片想いの相手とその恋人の関係に介入していく女子高生・愛の暴走を描く綿矢りさの青春小説です。恋は純粋な感情ではなく、他者の身体や秘密へ踏み込む衝動として描かれます。学校という狭い共同体のなかで、恋愛、性、支配欲が鋭く交差します。
- 313 2012 隠し事 かくしごと 『隠し事』は、秘密を抱えた人間関係を通じて、家族や恋愛の見えない緊張を描く羽田圭介の小説です。隠すことは単なる嘘ではなく、自分を守るための姿勢であり、同時に他者との距離を生みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 314 2012 仮り住まい かりずまい 『仮り住まい』は、住まいが一時的であることの不安を通じて、生活、記憶、孤独を描く丹下健太の作品です。家は安定した場所ではなく、いつか離れる前提の仮の居場所として立ち上がります。文芸誌掲載作として、移動する生活の感覚を読む作品です。
- 315 2012 夜の隅のアトリエ よるのすみのあとりえ 『夜の隅のアトリエ』は、アトリエという創作の場を手がかりに、芸術、孤独、記憶を描く木村紅美の小説です。夜の隅という場所は、誰にも見えない作業や感情が残る領域を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 316 2012 惑いの森 まどいのもり 『惑いの森』は、バーに現れる男や手紙を待つ郵便局員など、日常の人物たちを連鎖させる中村文則の50篇の短編集です。森は現実の場所というより、迷い込んだ人びとの記憶と孤独が交差する比喩として働きます。短い形式のなかで、不穏さと愛おしさが同居します。
- 317 2012 マリアージュ・マリアージュ マリアージュ・マリアージュ 『マリアージュ・マリアージュ』は、結婚をめぐる複数の男女関係を描く金原ひとみの短篇集です。結婚は安定したゴールではなく、身体、欲望、制度が絡む不安定な関係として扱われます。華やかな題名の反復の奥に、夫婦や恋愛への違和感が残ります。
- 318 2012 迷宮 めいきゅう 『迷宮』は、得体の知れない引力に動かされる人物を通して、記憶、罪、孤独を描く中村文則の小説です。迷宮は謎解きの舞台であると同時に、人物の内面から抜け出せない感覚を示します。暗い吸引力を持つ語りが、暴力と自己認識の問題を掘り下げます。
- 319 2012 緑のさる みどりのさる 『緑のさる』は、山下澄人の最初の単行本で、演劇的な会話と現実から少し外れる感覚を持つ小説です。人物の言葉は説明よりもリズムを生み、家族や孤独の問題が不意に立ち上がります。寓話的な題名と簡潔な場面の連なりが、独特の不穏さを作ります。 第34回 野間新人賞
- 320 2012 盗まれた顔 ぬすまれたかお 『盗まれた顔』は、指名手配犯の顔を記憶して追う見当たり捜査班の刑事を描く羽田圭介の小説です。顔を覚える仕事は、他者のアイデンティティを管理する労働であると同時に、見る側の自己認識も揺さぶります。警察小説の形を取りながら、身体、記憶、監視の問題へ広がります。
- 321 2012 しろいろの街の、その骨の体温の しろいろのまちの、そのほねのたいおんの 『しろいろの街の、その骨の体温の』は、小学4年生の結佳が、女の子同士の複雑な友人関係をやり過ごしながら、伊吹雄太への恋愛とも支配ともつかない感情を強めていく長編です。Amazonの商品紹介では、女の子が少女へ変化する時間を切り取り、性や欲望を丹念に描く静かな衝撃作として説明されています。ニュータウン… 第26回 三島賞
- 322 2012 タダイマトビラ タダイマトビラ 『タダイマトビラ』は、子を愛せない母のもとで育った少女・恵奈が、満たされない「家族欲」を秘密の行為で処理しようとする長編です。新潮社公式紹介では、高校に入って年上の学生と同棲を始めても理想の家族への渇きが止まらず、世界が一変していく物語として説明されています。家族を自然な愛の場とみなす前提を疑い、家…
- 323 2012 田中慎弥の掌劇場 たなかしんやのてのひらげきじょう 『田中慎弥の掌劇場』は、新聞連載から生まれた短い小説を収める掌編集です。短い形式のなかで、孤独、記憶、死の気配が圧縮され、長編とは別の鋭さで田中慎弥の暗い感触が現れます。掌編という制約が、語りの省略と余白を強くしています。
- 324 2012 夜蜘蛛 よぐも 『夜蜘蛛』は、亡父の戦争の記憶をめぐる手紙の謎を描く田中慎弥の中篇です。父の過去は家族の内部に沈み込み、手紙という媒体を通じて遅れて現在に届きます。戦争、父子、記憶の問題を、不穏で乾いた語りで掘り下げます。
- 325 2012 河童日誌 かっぱにっし 『河童日誌』は、鈴木善徳が「髪魚」で第113回文學界新人賞を受賞した後に発表した短篇です。NDLサーチでは『文學界』2012年5月号、54-85ページ掲載の記事として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概を確認できなかったため、内容説明は掲載情報と文学賞候補歴に限定します。
- 326 2012 おしかくさま おしかくさま 四十九歳でバツイチ、子どものいないミナミが、「おしかくさま」というお金の神様を信じる女たちに出会い、その正体を追っていく。奇妙な信仰を入り口に、将来不安、生活、共同幻想としてのお金を問う作品。怪異譚のような設定を現代日本の経済感覚へ接続する点が読みどころである。 第49回 文藝賞
- 327 2012 肉骨茶 にくこつちゃ シンガポール・マレーシアへの旅の途中で母のもとを抜け出した17歳の赤猪子を描く。食べ物が自分の身体に蓄積していくことへの恐怖から逃れようとする彼女は、友人ゾーイーの海辺の別荘に身を寄せる。食、身体、母子関係を通じて、人間であることへの拒絶を激しく描くデビュー作。 第44回 新潮新人賞
- 328 2012 黙って喰え だまってくえ 食べることをめぐる欲望と暴力性を扱うデビュー短篇。身体的な行為としての食事を、人間関係や支配の感覚へ結びつける作品として登録されている。新潮新人賞公式ページで受賞事実は確認できるが、今回確認できた公式ページでは梗概までは示されていないため、内容紹介は既存梗概に基づく限定的な整理である。 第44回 新潮新人賞
- 329 2012 螺法四千年記 らほうよんせんねんき 古代から現代までを四千年の時間幅でたどり、神、人、ちいさな生き物たちの気配が現在の地平に重なっていく長篇。詩人でもある日和聡子の文体が、此岸と彼岸、私と彼方を行き来する神話的な感触を生み出す。直線的な歴史小説というより、螺旋状に時間と声が響き合う幻想性が読みどころである。 第34回 野間新人賞
- 330 2012 東京自叙伝 とうきょうじじょでん 東京という土地に宿る語り手が、幕末から平成へ至る都市の変貌を自分史のように語る長篇。人間、猫、鼠などへ姿を変えながら記憶を重ねる設定により、都市史と転生譚が混ざり合う。奥泉光らしい饒舌な語りの推進力で、東京という場所そのものを主人公化した作品である。 第50回 谷崎賞
- 331 2012 クエーサーと13番目の柱 くえーさーとじゅうさんばんめのはしら 『クエーサーと13番目の柱』は、阿部和重が2012年に講談社から刊行した長編小説です。著者ページの著書一覧とNDLサーチのタイトル・著者検索で単行本情報を確認できます。
- 332 2012 昆虫の記憶による網膜貯蔵シェルター、及びアンテナ こんちゅうのきおくによるもうまくちょぞうしぇるたーおよびあんてな 2012年4月に月曜社から刊行された清水アリカの著作をNDLで確認。既存登録の『革命のためのサウンドトラック』『デッドシティ・レイディオ』とは別の単行本候補。
- 333 2012 紙の月 かみのつき 角川春樹事務所から2012年3月に刊行された未登録単行本。NDLで単行本と文庫版を確認。
- 334 2012 沈黙のレシピエント ちんもくのれしぴえんと 2012年刊行。英題は NDL 上で Recipient of Silence と併記される。
- 335 2012 光線 『光線』は、村田喜代子が2012年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 336 2011 赤の他人の瓜二つ あかのたにんのうりふたつ 『赤の他人の瓜二つ』は、血縁のない他人が瓜二つであるという設定から、労働、移動、世界史を交差させる磯﨑憲一郎の長編です。写し鏡のような人物配置は、個人の固有性と歴史の反復を同時に揺さぶります。寓話的な設定を取りながら、近代的な労働と身体の問題へ広がる作品です。 第21回 ドゥマゴ文学賞
- 337 2011 BANG! BANG! BANG! ばんばんばん 『BANG! BANG! BANG!』は、題名の破裂音が示すように、若い人物の感情や関係の衝突を強く響かせる朝比奈あすかの小説です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないが、青春の勢いと暴発する不安を読む作品として暫定的に整理できます。軽快さと息苦しさが併存する読み味です。
- 338 2011 これはペンです これはぺんです 『これはペンです』は、書くこと、記号、道具としての言葉をめぐる円城塔の実験的な小説です。題名の単純な文は、ものを名指すことの確かさを疑わせ、物語の成立条件そのものを問いに変えます。メタフィクションとしての仕掛けと、知的なユーモアが読みどころです。
- 339 2011 不愉快な本の続編 ふゆかいなほんのぞくへん 『不愉快な本の続編』は、既にある物語の「続編」という発想から、読むこと、語り直すこと、他者の物語を引き受けることを問う絲山秋子の作品です。既存データでは『異邦人』を思わせる文脈が示されており、文学的参照を通じて孤独と違和感が描かれます。廃墟や続きの感覚が、乾いた不穏さを生みます。
- 340 2011 ハコブネ ハコブネ 『ハコブネ』は、性をめぐる違和感を抱える三人の女性を描く長編です。Amazonの商品紹介では、自らの性別を脱ぎ捨てたセックスを求める里帆、女であることに固執する椿、肉体感覚を持てない千佳子という、交差しない三人の性の行方が示されています。女であること、身体を持つこと、他者と関係することの苦しさを描く…
- 341 2011 黒うさぎたちのソウル くろうさぎたちのそうる 『黒うさぎたちのソウル』は、ソウルという海外都市を舞台に、移動と孤独の感覚を描く木村紅美の作品です。黒いうさぎという像は、かわいらしさだけでなく、夜や不安の気配も帯びています。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 342 2011 いい女vsいい女 いいおんなたいいいおんな 『いい女vs.いい女』は、女性像の競争や評価を、木下古栗らしい奇妙なユーモアと不穏さで扱う作品です。題名の「vs.」は、人物同士の対立だけでなく、社会が押しつける「いい女」像のばかばかしさを示します。実験的な語りと、ジェンダー規範への斜めの視線が読みどころです。
- 343 2011 恋する原発 こいするげんぱつ 『恋する原発』は、東日本大震災後の言葉とメディアを、チャリティーAV制作という挑発的な設定から問い直す高橋源一郎の小説です。笑いや猥雑さを含む語りは、災害をきれいな物語に回収することへの抵抗として働きます。性、表現、原発事故後の社会を同時に扱うメタフィクションです。
- 344 2011 まことの人々 まことのひとびと 『まことの人々』は、誠実さや信じることをめぐる人物群を描く大森兄弟の小説として整理できます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認と『陽だまり幻想曲』を含む創作合評レコードでの扱いに基づく暫定的な紹介です。ユーモアと不穏さを含む群像的な読み味が想定されます。
- 345 2011 末裔 まつえい 『末裔』は、血筋や受け継がれるものをめぐって、家族と記憶の問題を描く絲山秋子の小説です。題名は、人物が自分の始まりではなく、誰かの後に続く存在として生きている感覚を示します。乾いた文体のなかに、家の歴史と自己認識の不穏さが漂います。
- 346 2011 ぬるい毒 ぬるいどく 『ぬるい毒』は、学生時代に現れた得体の知れない男・向井との関係に、女性が長く絡め取られていく本谷有希子の小説です。暴力は分かりやすい激しさではなく、ぬるく続く支配や依存として描かれます。恋愛、孤独、自己破壊が、息苦しい一人称の感覚で迫ります。 第33回 野間新人賞
- 347 2011 王国 おうこく 『王国』は、中村文則が犯罪、支配、孤独をめぐって描く暗い寓話的な小説です。王国という語は安定した共同体ではなく、力や欲望によって作られる閉じた支配空間を思わせます。都市の裏側にある暴力と、そこに巻き込まれる個人の不安が読みどころです。
- 348 2011 領土 りょうど 『領土』は、諏訪哲史が土地、言葉、所有の感覚を問い直す作品です。領土という政治的な語は、国家だけでなく、身体や記憶、語りが占める場所の問題にも広がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 349 2011 東京ロンダリング とうきょうろんだりんぐ 『東京ロンダリング』は、事故物件に一定期間住むことで部屋の履歴を洗い流す女性を描く原田ひ香の小説です。住まいは安心の場所ではなく、死や過去の痕跡を引き受ける仕事の現場になります。東京の部屋をめぐって、孤独、労働、喪失が交差します。
- 350 2011 共喰い ともぐい 昭和63年夏、川辺の町に暮らす17歳の遠馬は、父・円とその愛人琴子との三人暮らし。父は性交の際に女を殴る男で、遠馬の実母・仁子はその暴力ゆえに家を出て、川向こうで魚屋を営んでいる。恋人の千種との関係が深まるにつれ、遠馬は自分の中にも父と同じ暴力の血が流れているのではないかという恐れに苛まれていく。鰻… 第146回 芥川賞
- 351 2011 WANTED!! かい人21面相 うぉんてっど かいじんにじゅういちめんそう 『WANTED!! かい人21面相』は、グリコ・森永事件を想起させる「かい人21面相」を題材に、記憶、犯罪、言葉のパロディを組み合わせる赤染晶子の小説です。事件の固有名は、昭和的な大衆記憶と文学的な語りの遊びを同時に呼び込みます。芥川賞受賞後第一作として、ユーモアと不穏さが交錯する作品です。
- 352 2011 私のいない高校 わたしのいないこうこう 『私のいない高校』は、1992年の小学校を舞台に、校舎から見える家に住む子供の視点で綴られる青木淳悟の連作です。学校という共同体のなかにいるようでいない感覚が、記憶と観察のずれとして積み上がります。子供の視界を通じて、同調圧力と孤立が静かに浮かぶ作品です。 第25回 三島賞
- 353 2011 甘露 かんろ 『甘露』は、家と家族をめぐる不穏さを描く水原涼のデビュー作です。若い書き手による作品ながら、家族の内部に潜む圧力や不快な甘さを鋭く扱います。第145回芥川賞候補にもなり、デビュー時から筆力を注目された作品です。 第112回 文學界新人賞
- 354 2011 髪魚 かみうお 『髪魚』は、人体と異形なるものの関係を独自の感覚で描く鈴木善徳のデビュー作です。髪と魚という異質なイメージを結びつけ、身体の境界が揺らぐ感覚を前面に出しています。後に芥川賞候補となる作者の、奇妙な身体感覚を示す出発点です。 第113回 文學界新人賞
- 355 2011 クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰 くりすたるう゛ぁりーにふりそそぐはい 『クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰』は、東京大学医学部に進む秀才と、スポーツ推薦で進学した同世代の若者たちが交錯する青春群像です。知性、身体、暴力、階層の断絶が鋭角的に描かれます。若者の成功と孤立を、制度や身体能力の違いから照らす作品です。 第48回 文藝賞
- 356 2011 フラミンゴの村 ふらみんごのむら 『フラミンゴの村』は、二十世紀初頭のベルギーの村で、ある日突然に妻がフラミンゴになるという奇妙な出来事をめぐる幻想小説です。変身譚のかたちを取りながら、共同体の視線や夫婦の距離を浮かび上がらせます。ヨーロッパ文学的な寓話性を帯びた作品として整理できます。 第35回 すばる文学賞
- 357 2011 黄金特急 『黄金特急』は、久間十義が2011年に実業之日本社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 358 2010 嘘、本当、それ以外 うそほんとうそれいがい 『嘘、本当、それ以外』は、三並夏が『平成マシンガンズ』で第42回文藝賞を受賞した後に発表した受賞第一作です。NDLサーチでは「文藝賞受賞第一作」として記録され、CiNii Researchで『文藝』49巻1号、2010年、186-223ページ掲載の書誌を確認できます。デビュー作の強い語りから、三並夏…
- 359 2010 深海 しんかい 『深海』は、『カメレオン狂のための戦争学習帳』で第52回群像新人文学賞を受けた丸岡大介が「群像」2010年4月号に発表した短篇です。NDLサーチでは「特集 新鋭8人短篇競作」の一篇として、掲載誌・巻号・ページ範囲を確認できます。同名の医学・工学系著者資料が検索結果に混在するため、責任表示・掲載誌・N…
- 360 2010 悪と仮面のルール あくとかめんのるーる 『悪と仮面のルール』は、悪になるよう育てられた青年を軸に、犯罪、宿命、自己形成を描く中村文則の長篇です。仮面という題名が示すように、人物は本当の顔と与えられた役割のあいだで揺れます。ノワール的な緊張を持ちながら、悪を選ぶことと選ばされることの境界を問う作品です。
- 361 2010 「悪」と戦う あくとたたかう 2010年に河出書房新社から刊行された高橋源一郎の長編。小説家の父である語り手のもと、3歳の兄ランちゃんが、悪の手先ミアちゃんに連れ去られた弟キイちゃん(1歳半)を取り戻すために「悪」と戦う。冒険譚の体裁を借りつつ、家族・言葉・生と死をめぐる主題を重ねる。
- 362 2010 地上で最も巨大な死骸 ちじょうでもっともきょだいなしがい 『地上で最も巨大な死骸』は、表題作と「クロスフェーダーの曖昧な光」を収めた飯塚朝美の単行本です。巨大な死骸というイメージは、死や身体の存在感を過剰なスケールで立ち上げます。現時点では詳細な内容資料が限られるため、死と身体をめぐる不穏な作品集として暫定的に整理します。
- 363 2010 後藤さんのこと ごとうさんのこと 『後藤さんのこと』は、円城塔の言語実験と物語のずれが前面に出る作品です。「後藤さん」という固有名は、人物であると同時に、語りが追いかける対象そのものの不確かさを示します。SF的想像力とメタフィクションの感覚で、言葉が対象を作り出す過程を読む作品です。
- 364 2010 星が吸う水 ほしがすうみず 『星が吸う水』は、「星が吸う水」と「ガマズミ航海」を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、野間文芸新人賞受賞後第一作として、女であることが遠ざかっていく感覚、精神が肉体をもてあます感覚を、男と女、女と女の対の構図で描く作品集とされています。性別、身体、欲望のずれをめぐる村田作品の関心が濃く出…
- 365 2010 実験 じっけん 『実験』は、田中慎弥の硬質な語りで、人間関係や自己意識を極限まで試すように描く小説です。題名の「実験」は、科学的手続きというより、人物が自分や他者を材料にしてしまう冷たさを思わせます。不穏で息苦しい空気のなかに、孤独と暴力の気配が漂います。
- 366 2010 埋葬 まいそう 『埋葬』は、死者を葬る行為を通じて、記憶、喪失、残された者の時間を描く横田創の小説です。埋葬は終わらせる儀式であると同時に、過去を地中に置いたまま忘れられない行為でもあります。静かな不穏さのなかで、死と生活の境界を読む作品です。
- 367 2010 寝ても覚めても ねてもさめても 『寝ても覚めても』は、突然姿を消した恋人と瓜二つの顔を持つ男に出会った朝子の長い恋を描く柴崎友香の長篇です。恋愛の選択は、過去の記憶と現在の生活がどのように重なるかという問題として描かれます。大阪や東京を行き来する時間のなかで、同じ顔と違う人生をめぐる不穏な感覚が残ります。 第32回 野間新人賞
- 368 2010 乙女の密告 おとめのみっこく 『乙女の密告』は、『アンネの日記』を読む大学の授業を舞台に、朗読、暗唱、密告の記憶が絡み合う小説です。語りは教室内の人間関係と戦争の記憶を重ね、誰が誰を裏切るのかという問いを現在の言葉の問題へ引き寄せます。軽やかな会話の奥に、同調圧力と自己認識の危うさが残る作品です。 第143回 芥川賞
- 369 2010 妻の超然 つまのちょうぜん 『妻の超然』は、夫婦や男女の関係を、絲山秋子らしい乾いた距離感で描く作品です。身近な関係のなかにある理解不能さを、過度に説明せず、会話と沈黙の間から浮かび上がらせます。夫婦という制度、恋愛の疲れ、生活の違和感を読む小説です。
- 370 2010 歌うクジラ うたうクジラ 『歌うクジラ』は、不死遺伝子が発見された未来の階層社会を、少年の旅として描く村上龍の長編です。SF的設定を使いながら、テクノロジーが身体、寿命、階級をどう変えるかを問います。寓話的な移動の物語として、未来社会の暴力と孤独が前景化します。
- 371 2010 工場 こうじょう 何を作っているのか判然としない巨大工場を舞台に、三人の従業員の視点から、働くことと生きることの不条理を描く作品集。表題作に加え、熱帯魚飼育に没頭する家と若い妻をめぐる「ディスカス忌」、心身の不調と虫の幻視を描く「いこぼれのむし」を収める。工場内の謎の動物や過剰な細部が、職場の日常を寓話的な生態系へ変… 第42回 新潮新人賞
- 372 2010 ののの ののの 『ののの』は、言語の反復、ずれ、遊びを極限まで押し進めた実験的な作品です。意味が固定される前の音や文字の運動を前面に出し、小説の語りそのものを問い直します。受賞時は単行本化されず、後に改稿版として刊行された経緯も含めて、制度外的な実験性が際立つ作品です。 第42回 新潮新人賞
- 373 2010 俺俺 おれおれ 『俺俺』は、星野智幸が2010年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 374 2010 刑事たちの聖戦 『刑事たちの聖戦』は、久間十義が2010年に角川書店から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 375 2010 故郷のわが家 『故郷のわが家』は、村田喜代子が2010年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。 第63回 野間文芸賞
- 376 2009 左へ ひだりへ 『左へ』は、天埜裕文が『灰色猫のフィルム』で第32回すばる文学賞を受賞した後に発表した小説です。NDLサーチとCiNii Researchで、『すばる』31巻6号、2009年6月、20-59ページ掲載の書誌を確認できます。公開Webでは梗概や選評本文を確認できないため、作品内容の説明は掲載情報と受賞…
- 377 2009 1Q84 いちきゅうはちよん 『1Q84』は、1984年に似て非なる世界「1Q84」を舞台に、青豆と天吾の二つの視点が交差していく長篇です。宗教的共同体、暴力、物語を作ることへの問いが、並行世界の構造の中で結びつきます。恋愛小説でありながら、世界の成り立ちそのものを疑わせる大きな構成が特徴です。
- 378 2009 あの子の考えることは変 あのこのかんがえることはへん 『あの子の考えることは変』は、他人から見れば奇妙に見える思考や感情を、関係性の歪みとして描く本谷有希子の小説です。人物たちは互いを理解したいのではなく、しばしば相手の「変さ」を足場にして自分を保とうとします。会話の毒と笑いが、同調できない孤独を浮かび上がらせます。
- 379 2009 独居45 どっきょしじゅうご 『独居45』は、四十五歳で独り暮らしをする人物の生活を通して、身体、欲望、孤独を露悪的に描く吉村萬壱の作品です。平凡な住まいの内側に、社会から切り離された感覚と不穏な衝動が溜まっていきます。ユーモアと気味悪さが同居する読み味が特徴です。
- 380 2009 烏有此譚 うゆしたん 『烏有此譚』は、あるようでない物語をめぐり、注釈、引用、脱線が本文そのものを膨らませていく円城塔の実験的長篇です。物語を読むことと、物語が成立しないことが同時に進むため、読者は筋よりも言葉の運動を追うことになります。メタフィクションとしての遊びと、知的な不穏さが強い作品です。 第32回 野間新人賞
- 381 2009 犬と鴉 いぬとからす 『犬と鴉』は、田中慎弥の硬質な文体で、人間の生の暗さや動物的な感覚を前面に出す作品です。犬と鴉という題名の組み合わせは、従順さと不吉さ、近さと遠さを同時に呼び込みます。閉じた生活の中で、身体と孤独がざらついた手触りで描かれます。
- 382 2009 犬はいつも足元にいて いぬはいつもあしもとにいて 中学生の主人公の日常に、犬が公園の茂みから探り当てた正体不明の「肉」が入り込んでくる。誰も名指せないその物体は、思春期の鬱屈や家族のぎこちなさと響き合いながら、生き物の生々しさと死の気配を物語の中心に居座らせる。登場人物はどこか不快なのに目を離せないという独特の距離感で語られ、生命の循環を思わせる視… 第46回 文藝賞
- 383 2009 カメレオン狂のための戦争学習帳 かめれおんきょうのためのせんそうがくしゅうちょう 独身教員のための「修身寮」に入寮した高校教師・田中は、寮の内情をレポートするという任務を課される。規律と監視の空気のなかで、彼は次第に正体の見えない「戦争」へと組み込まれていく。饒舌な語りと不穏な緊張感で、組織に飼い慣らされていく個人の煩悶を描いた現代の不条理劇。学校と寮という閉域を通して、同調圧力… 第52回 群像新人賞
- 384 2009 神キチ かみきち 屋根屋として建築現場で働く主人公を、不条理な出来事が次々と襲う。だが彼や登場人物たちが本当に悩むのは、世界の理不尽そのものではなく、〈真剣に神に祈れない〉という一点だ。奇妙で黒い笑劇の合間に、切り刻まれた宗教性の断片が乱舞し、信じることが壊れてしまった時代の労働者の魂のありかを照らし出す。地方の建築… 第41回 新潮新人賞
- 385 2009 ポジティヴシンキングの末裔 ぽじてぃう゛しんきんぐのまつえい 『ポジティヴシンキングの末裔』は、前向きさという社会的な合言葉を、木下古栗らしい不条理な笑いでずらす作品です。人物の考え方や言葉は一見軽いのに、そこから身体や生活の気味悪さがにじみます。明るい自己啓発的な語彙を反転させる、乾いたユーモアが読みどころです。
- 386 2009 糞神 くそがみ 『糞神』は、身体の排泄や汚れのイメージを前面に出しながら、人間の信仰や共同体の感覚を揺さぶる作品です。喜多ふありの題名は挑発的ですが、そこには身体を持って生きることの逃れがたさがあるように読めます。神聖さと汚穢が接近する、不穏な寓話として分類しました。
- 387 2009 ぬかるみに注意 ぬかるみにちゅうい 『ぬかるみに注意』は、足を取られる場所の感覚を、生活や人間関係の抜け出しにくさと重ねる生田紗代の作品です。題名は注意を促す標識のようですが、人物はむしろそのぬかるみに近づいてしまいます。恋愛や家族の問題を、湿った不安として読む作品です。
- 388 2009 世紀の発見 せいきのはっけん 『世紀の発見』は、巨大な機関車と大きな鯉の記憶、そして消えた友人をめぐって語りが展開する長篇です。現実の出来事と記憶の像が入り混じり、世界の見え方そのものが少しずつ変わっていきます。磯﨑憲一郎らしい、夢のようで乾いた語りの運動が読みどころです。
- 389 2009 世界の果て せかいのはて 『世界の果て』は、中村文則が世界の終端に立たされたような人物の孤独や罪の感覚を描く作品です。題名は地理的な果てというより、他者との関係や倫理が行き詰まる場所を示しているように読めます。暗い心理描写と、逃げ場のない空気が特徴です。
- 390 2009 掏摸 スリ 『掏摸』は、天才的なスリ師が闇の組織に支配され、逃げ場のない選択へ追い込まれていく中村文則の長篇です。犯罪小説の緊張を持ちながら、偶然、宿命、倫理の問題が強く前面に出ます。都市の雑踏と孤独な身体技術が結びつく、暗く硬質な作品です。
- 391 2009 ロンバルディア遠景 ろんばるでぃあえんけい 『ロンバルディア遠景』は、遠景という距離の感覚を通して、記憶、場所、言葉の変形を描く諏訪哲史の作品です。現実の土地はそのまま写されるのではなく、語りの中でずれ、遠ざかり、別の像になります。『りすん』同様、言葉そのものが主題化される実験的な小説として読めます。
- 392 2009 ソードリッカー そーどりっかー 『ソードリッカー』は、題名の剣や舌の感触が示すように、身体感覚と暴力のイメージを強く帯びた佐藤憲胤の小説です。講談社刊の単行本として確認できるが、今回の公開資料では詳細な内容紹介までは確認できませんでした。現時点では、身体、攻撃性、孤立した人物像を軸に読む作品として暫定的に整理します。
- 393 2009 霊降ろし れいおろし 『霊降ろし』は、死者や見えないものの気配を通じて、生者の記憶と喪失を描く田山朔美の小説です。霊的な題材は怪異そのものよりも、残された人が過去とどう向き合うかという問題に結びつきます。静かな不穏さのなかで、家族や信仰に近い感覚をたどる作品として整理できます。
- 394 2009 TRIP TRAP トリップ・トラップ 『TRIP TRAP』は、移動や逸脱の感覚を、恋愛、身体、都市的な不安と結びつける金原ひとみの小説です。旅を意味する「TRIP」と罠を意味する「TRAP」が並ぶ題名は、自由に見える移動が別の閉塞へつながる感覚を示します。鋭い身体感覚と、若い人物の危うい関係性が読みどころです。
- 395 2009 潰玉 ついぎょく 『潰玉』は、壊れやすいものを抱えた人物の感覚を、題名どおり押し潰されるような身体性と結びつける墨谷渉の中篇です。人間関係や自己認識が、硬い玉ではなく潰れて形を変えるものとして描かれているように読めます。情報は限られるものの、身体と孤独の圧迫感が中心にある作品として整理します。
- 396 2009 ヤイトスエッド やいとすえっど 『ヤイトスエッド』は、吉村萬壱らしい異物感のある題名と身体の手ざわりを持つ小説です。日常の秩序が少しずつゆがみ、人物の身体や欲望が不穏なかたちで前景化します。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 397 2009 憂鬱たち ゆううつたち 『憂鬱たち』は、精神科へ向かう神田憂の妄想と憂鬱を連ねる金原ひとみの連作短篇集です。診察室にたどり着くまでの反復が、病の記録であると同時に、自己を保つための語りにもなっています。鋭い身体感覚と内面の過剰さが、閉じた都市生活の息苦しさを強めます。
- 398 2009 今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇 こんやはひとりぼっちかい? にほんぶんがくせいすいし せんごぶんがくへん 『日本文学盛衰史』の続編として、戦後文学そのものを小説の素材にする長編。大岡昇平や小林秀雄らを思わせる文学史上の存在が、ロック、パンク、ラップ、ブログ、Twitter、YouTubeまで巻き込みながら、読まれなくなった戦後文学を現在の言葉へ揉みほぐしていく。文学史講義、パロディ、メタフィクションが交…
- 399 2009 私の赤くて柔らかな部分 わたしのあかくてやわらかなぶぶん 『私の赤くて柔らかな部分』は、失恋の痛みを抱えた主人公が突発的に旅へ出て、終着駅にたどりついたまま帰るきっかけを失っていく長篇小説です。Books出版書誌データベースの内容紹介では、生きることのよるべなさと虚実ないまぜのマジカルな世界を描く、平田俊子の新境地として紹介されています。詩人としての言語感…
- 400 2009 水族 すいぞく 『水族』は、星野智幸が2009年に岩波書店から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 401 2009 放火 『放火』は、久間十義が2009年に角川書店から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 402 2009 あなたと共に逝きましょう 『あなたと共に逝きましょう』は、村田喜代子が2009年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 403 2009 ドンナ・マサヨの悪魔 『ドンナ・マサヨの悪魔』は、村田喜代子が2009年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 404 2008 クロスフェーダーの曖昧な光 くろすふぇーだーのあいまいなひかり 三島由紀夫『金閣寺』をモチーフとし、宗教というテーマを現代の感覚で引き受けようとした意欲作。DJ機材の「クロスフェーダー」を題名に掲げ、ふたつの音源のあいだを行き来するように、聖なるものと現実のあいだで揺れる意識の「曖昧な光」を掬い取ろうとする。第40回新潮新人賞受賞作で、受賞掲載誌はNDLサーチで… 第40回 新潮新人賞
- 405 2008 Boy's Surface ぼーいずさーふぇす 『Boy's Surface』は、数学的・理論的な発想を小説の表面に引き出す、円城塔の実験的なSF作品です。物語は感情の自然な流れよりも、定義、証明、記号のずれによって進みます。読み手は、言葉と論理が人間の身体や関係をどこまで記述できるかを試されます。
- 406 2008 ギンイロノウタ ギンイロノウタ 『ギンイロノウタ』は、表題作と「ひかりのあしおと」の二篇を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、無差別殺人衝動に襲われる内気な少女を描く表題作と、殺傷行為と恋愛感情が交差する女子大生の物語として説明されています。性、暴力、成熟への憧れが結びつき、村田作品の危うい身体感覚が前面に出た一冊です。 第31回 野間新人賞
- 407 2008 グ、ア、ム グ、ア、ム 『グ、ア、ム』は、グアムという観光地を舞台に、家族旅行の明るさの裏にある母娘や姉妹の違和感を描く本谷有希子の作品です。海外の解放感は、むしろ家族の関係の息苦しさを浮かび上がらせます。滑稽さと不穏さが同時に進む、劇作家的な場面の強さがあります。
- 408 2008 灰色猫のフィルム はいいろねこのふぃるむ 母親を殺した「僕」は、動機も経緯も語らないまま町を放浪する。公園での野宿を経てホームレスの「ハタさん」と出会い、河川敷の小屋でともに暮らしはじめるが、ハタさんが大切にしていた灰色の猫が殺される日まで、束の間の安らぎは続かない。公衆トイレなどの不潔で醜悪な細部が彷徨う心理を映し出す一方、動物や迷子の少… 第32回 すばる文学賞
- 409 2008 射手座 いてざ 日系ブラジル人の語り手が、妹ルシアに関わる謎めいた男・加賀芳明と向き合う。妹の万引きに関わった加賀は、やがて妹が遺棄した赤ん坊について語り出し、赤ん坊を運んで山道をひとりさまよう。語り手が加賀から聞いた話を伝聞のかたちで重ねていく重層的な構造により、何が真実かは最後まで曖昧なまま、登場人物の誰ひとり… 第107回 文學界新人賞
- 410 2008 切れた鎖 きれたくさり 『切れた鎖』は、地方の閉ざされた土地に生きる血族を描く三篇を収めた作品集です。家族や土地の結びつきは守りではなく、逃れがたい暴力や因縁として迫ってきます。簡潔で硬い語りが、血縁の鎖が切れる瞬間の不穏さを際立たせます。 第21回 三島賞
- 411 2008 子守唄しか聞こえない こもりうたしかきこえない 田舎町に暮らす女子高生・美里は、男友達4人に囲まれた一見満ち足りた日々を送っている。だが「愚鈍な真沙子」と見下していた同級生が自分に執着し、つきまとうようになると、保っていたはずのエゴの均衡が崩れはじめる。幼い日の海の記憶や謎めいた老婆との出会いを織り込みながら、思春期の自意識の残酷さと出口のなさを… 第51回 群像新人賞
- 412 2008 蟋蟀 こおろぎ 『蟋蟀』は、虫の声や小さな気配を思わせる題名のもと、日常の奥に潜む不安や孤独を描く栗田有起の作品です。目立たないものに耳を澄ませるような語りが、家や都市の生活を少し奇妙なものに変えます。静かな現実感と寓話性の境目を読む小説です。
- 413 2008 眼と太陽 めとたいよう 『眼と太陽』は、視線と光のイメージを軸に、複数の視点や時間が交差する短篇集です。見ること、見られることが、人物の記憶や世界の捉え方を変えていきます。磯﨑憲一郎らしい抽象度の高い構成が、現実を少しずつ別の角度から照らします。
- 414 2008 マイクロバス マイクロバス 『マイクロバス』は、移動する小さな乗り物を通して、地方の場所や人々の距離を描く小野正嗣の作品です。バスという共有空間は、共同体に属することと、そこから外れることの両方を見せます。静かな語りのなかで、土地の記憶と孤独がゆっくり浮かび上がります。
- 415 2008 逃げ道 にげみち シャワートイレ業者に雇われ、一般人のふりをして製品を試す「モニター工作員」として働く若い女性が主人公。アルバイト先の不祥事を機に、彼女は営業担当の田尻とともに街を離れ、千葉の屛風ヶ浦へと車を走らせる。隣人が全裸で現れるなどのノンセンスな場面や、エクセルの表を組み込む形式の実験を織り交ぜながら、どこに… 第106回 文學界新人賞
- 416 2008 乱暴と待機 らんぼうとたいき 『乱暴と待機』は、奇妙な共同生活のなかで、加害と被害、依存と復讐がねじれていく本谷有希子の小説です。閉じた生活空間にいる人物たちの言葉は、笑えるほど過剰でありながら、相手を縛る力を持っています。戯曲的な会話のテンポと、待ち続けることの不穏さが読みどころです。
- 417 2008 りすん りすん 『りすん』は、『アサッテの人』以後の諏訪哲史が、聞くこと、話すこと、言葉のずれをさらに押し広げる実験的な作品です。タイトルの響きそのものが、意味に届く前の音や聞き間違いを思わせます。言語への執着と、他者へ届かない感覚が重なった小説として読めます。
- 418 2008 クォンタム・ファミリーズ くぉんたむ ふぁみりーず 『クォンタム・ファミリーズ』は、平行世界を行き来できる設定のもと、ある父親が別の世界の娘を救おうとする物語です。量子論的なSF装置を用いながら、家族、記憶、父子関係の可能性を問い直します。批評家・思想家である東浩紀が小説形式で現代的な家族像を探った作品です。 第23回 三島賞
- 419 2008 ctの深い川の町 ctのふかいかわのまち 2008年刊。NDLで岡崎祥久著として確認できる。
- 420 2008 聖家族 せいかぞく 『聖家族』は、青森の名家・狗塚家を中心に、東北の歴史と記憶を巨大な物語として編み上げる長篇です。新潮文庫版の紹介では、狗塚家に継承された「正史」が現代と出会い、狗塚三兄弟の逃亡劇から冠木兄妹の誘拐事件へ展開する筋立てが示されています。家族史、東北史、戦争や維新の記憶が混濁し、古川日出男らしい過剰な語…
- 421 2008 生命徴候あり 『生命徴候あり』は、久間十義が2008年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 422 2007 Self-Reference ENGINE せるふれふぁれんすえんじん 『Self-Reference ENGINE』は、自己言及、時間、宇宙的スケールの思考実験を断片的なエピソードとして積み上げるSF小説です。物語は線形に進むよりも、定義や論理が暴走するように展開します。理論的な遊戯と小説的な冗談が同時に走る、円城塔初期の代表的な実験作として読めます。
- 423 2007 はじまらないティータイム はじまらないてぃーたいむ 子どものいない30代の専業主婦・奈都子は、母ミツエから従弟・博昭の離婚と再婚の顛末を聞かされる。博昭は部下を妊娠させ、子を産まない妻・佐智子と別れて再婚したのだった。奈都子、ミツエ、元妻の佐智子、再婚相手の里美——4人の女性の視点を切り替えながら、家族という制度の内側の風通しの悪さを描く。他人の家に… 第31回 すばる文学賞
- 424 2007 星へ落ちる ほしへおちる 『星へ落ちる』は、恋愛や身体の感覚を、落下するような不安定さのなかで描く金原ひとみの作品です。きらびやかな題名とは対照的に、登場人物の感情は孤独や衝動に強く引かれます。短く鋭い語りが、関係の熱と冷えを同時に伝えます。
- 425 2007 ハイドラ ハイドラ 『ハイドラ』は、身体、欲望、恋愛の結びつきを、金原ひとみらしい鋭い感覚で描く作品です。複数の頭を持つ怪物を思わせる題名のように、感情や関係は一つにまとまらず分岐していきます。自己破壊的な衝動と生への執着が同時に読める、不穏な恋愛小説です。
- 426 2007 いい子は家で いいこはいえで 『いい子は家で』は、家という閉じた場所と「いい子」であることの圧力をめぐる青木淳悟の作品です。日常の言葉や振る舞いが少しずつずれ、家族や共同体の規範が不穏なものとして見えてきます。実験的な文体が、従順さの裏側にある違和感を浮かび上がらせます。
- 427 2007 島の夜 しまのよる 『島の夜』は、島という隔てられた場所と夜の時間を背景に、孤独や記憶の濃度を描く作品として整理できます。閉じた地理は、人間関係を近づける一方で、逃げ場のなさも作ります。静かな語りのなかに、不安と親密さが同時に漂う読み味があります。
- 428 2007 救済の彼岸 きゅうさいのひがん 『救済の彼岸』は、救いを求める感覚と、その先にある孤独を題名から強く意識させる作品です。信仰や倫理をめぐる問いが、現代の生活のなかでどのように立ち上がるかを読む切り口があります。書誌以外の資料はまだ少ないため、今後は掲載誌や書評で主題を精査したい作品です。
- 429 2007 舞い落ちる村 まいおちるむら 生まれ育った女系の村では、時間の進み方や年齢の重ね方が定まらず、ものの数も曖昧で、人々は個々の名前すらめったに持たない。「わたし」はその「言葉を信じない」村のあり方に違和感を抱き、村と大学のある街とを行き来するうち、言葉を信じ言葉で武装した人物に強く惹かれていく。土俗的な幻想と言語への意識を重ね合わ… 第104回 文學界新人賞
- 430 2007 大きな熊が来る前に、おやすみ。 おおきなくまがくるまえに、おやすみ。 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』は、二人暮らしの親密さと不安を、熊という不穏なイメージをまとわせて描く作品です。恋愛や同居の幸福だけでなく、同じ部屋にいることの圧迫感や、相手を完全にはわからない怖さが前面に出ます。柔らかな題名の奥に、関係の危うさを読む小説です。
- 431 2007 臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ ろうたしアナベル・リイ そうけだちつみまかりつ 『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』は、文学作品や映画的想像力を下敷きに、老い、成熟、欲望を晩年の大江健三郎が再構成する作品です。語りは引用や記憶を重ねながら、ひとつの恋愛譚に収まらないメタフィクション的な広がりを持ちます。文学を読み直すこと自体が、過去の自己を組み替える行為として描かれま…
- 432 2007 最後の命 さいごのいのち 『最後の命』は、少年時代の傷と再会、罪の記憶をめぐって、人が最後に何を拠りどころに生きるのかを問う作品です。中村文則らしい暗い心理描写が、暴力や孤独を抽象化せず、身体に残る感覚として描きます。過去に囚われた人物が他者との関係を回復できるのかが、緊張を生みます。
- 433 2007 たとえば、世界が無数にあるとして たとえばせかいがむすうにあるとして 『たとえば、世界が無数にあるとして』は、別の可能性としての世界を想像しながら、自分の選択や関係を見つめる作品です。現実の生活に、もしも別の自分がいたらという寓話的な問いが差し込まれます。恋愛や孤独を、ひとつの世界だけでは説明しきれない揺れとして読むことができます。
- 434 2007 うつつ・うつら うつつうつら 『うつつ・うつら』は、現実とうつつの境目を揺らしながら、人物の記憶や自己像の不確かさを描く作品集です。赤染晶子の作品らしく、日常の言葉や振る舞いが少しずつ奇妙なものへ変わっていきます。軽いユーモアと不穏さが同居する語りが読みどころです。
- 435 2007 わたくし率 イン 歯ー、または世界 わたくしりつ イン はー、またはせかい 『わたくし率 イン 歯ー、または世界』は、「わたし」は奥歯にあると考える女性の独白を、大阪弁のリズムで疾走させるデビュー作です。身体の一部に自己を置く発想が、アイデンティティと言葉の関係を奇妙に拡張します。文体の勢いそのものが主題になっている、川上未映子初期の重要作として読めます。
- 436 2007 夢を与える ゆめをあたえる 『夢を与える』は、子役からCMタレントとして成長する少女・夕子の栄光と転落を描く長編です。芸能の世界が、家族、欲望、消費される身体を映す場所として機能します。若さや人気が商品化される過程を、綿矢りさらしい鋭い観察で追う作品です。
- 437 2007 ピストルズ ぴすとるず 『ピストルズ』は、山形県の架空の町「神町」を舞台に展開する阿部和重の「神町サーガ」第二部です。連載開始は2007年で、単行本は2010年に刊行されました。血縁、土地、暴力、神話的な町の歴史が入り組み、現代日本の地方を壮大なフィクション空間に変える作品です。 第46回 谷崎賞
- 438 2007 ミッドナイト・クライシス ミッドナイト クライシス 2007年刊の集英社単行本。既収録の『イラコ岬』前後の著作として追加候補になる。
- 439 2007 植物診断室 しょくぶつしんだんしつ 『植物診断室』は、星野智幸が2007年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 440 2006 オートフィクション オートフィクション 『オートフィクション』は、作家リンの現在から過去へさかのぼる構成で、愛、嫉妬、自己像の形成をたどる長編です。自分を書くことと自分を作ることが重なり、タイトル通り「私小説」と「作り物」の境界が揺れます。時間を逆行する構成が、感情の根を探る読み方を促します。
- 441 2006 煙幕 えんまく 14歳の「わたし」は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、「14年戦争を生き抜いてきた」という感慨を抱いて生きている。理科教師の川端、クラスメイトの衣川、母を捨てた川端と名乗る男、プロデューサー——複数の登場人物が重なり合い、誰が誰なのか分からないまま視点が次々と入れ替わる。読者を文字どおり煙に巻く実験…
- 442 2006 風化する女 ふうかするおんな 突然死んだ会社の先輩れい子には、職場で見せていたのとは別の顔があった。「私」はその謎をたどって東京から地方へと旅をし、死んだ女の生の痕跡に自分を重ねていく。日々がたえず「風化」していく都会の生活感覚を背景に、死者をなぞることでしか確かめられない自分の輪郭を、抑制された筆致で描いたデビュー作。 第102回 文學界新人賞
- 443 2006 月とアルマジロ つきとあるまじろ 『月とアルマジロ』は、現実的な日常に奇妙なイメージを差し込み、若い人物の孤独や自己意識を照らす作品です。月とアルマジロという取り合わせが示すように、遠いものと身近なものの距離感が作品の手ざわりを作っています。簡潔な語りの奥に、寓話的なずれを読む楽しさがあります。
- 444 2006 いやしい鳥 いやしいとり 飲み会で初めて会った学生を家に連れ帰るはめになった非常勤の大学講師。その夜を発端に、男が鳥へと変身していく惨劇が起こる。講師の視点と隣に住む専業主婦の視点を交互に置き、時系列を少しずつずらす構成で、日常に走る裂け目をグロテスクな滑稽さとともに見せる。藤野の出発点となった変身譚で、奇想と冷静な観察眼の… 第103回 文學界新人賞
- 445 2006 公園 こうえん 『公園』は、世界の縮図のような公園から下田、ニューヨーク、グラウンド・ゼロへと移動していく大学生の「ぼく」と友人オノサを描くデビュー作。河出書房新社の紹介では、目的のはっきりしない移動と9.11後の世界感覚が結びつけられており、場面を飛躍させる語りが若者の浮遊感を生む。青春小説の軽さと、世界の暴力を… 第43回 文藝賞
- 446 2006 森のはずれで もりのはずれで 『森のはずれで』は、共同体の中心ではなく「はずれ」に立つ人物の感覚を、小野正嗣らしい静かな語りで描く作品です。森や周縁の場所は、記憶、土地、言葉の違いを考えるための舞台になります。中心から外れた場所で人がどう他者と出会うかを読む作品として位置づけられます。
- 447 2006 そろそろくる そろそろくる 『そろそろくる』は、日常のなかで身体や感情の変化を待ち受ける感覚を描く作品として整理できます。中島たい子の小説に特徴的な、身近な生活の違和感をユーモアに変える語りが読みどころです。大きな事件よりも、心身のリズムが崩れる瞬間に焦点が置かれます。
- 448 2006 裏庭の穴 うらにわのあな 主婦の朝子は、幼い頃に母親が裏庭に何かを埋めるのを目撃したという記憶を、大人になっても抱え続けている。掘り返されないまま家族の足元に空いた「穴」のような記憶を軸に、平穏に見える家庭の日常の底に沈む鬱屈と、母と娘のあいだのほどけない結び目を描く。受賞作は2009年刊の作品集『霊降ろし』(文藝春秋)に収… 第103回 文學界新人賞
- 449 2006 ぜつぼう ぜつぼう 『ぜつぼう』は、題名の強い感情をそのまま扱いながら、本谷有希子らしい不穏さと滑稽さで日常のずれを描く作品です。人物の思い込みや関係の歪みが、現実を少しずつ奇妙なものに変えていきます。絶望を重苦しいだけでなく、笑いと怖さの境目に置く読み味があります。
- 450 2006 ミステリアスセッティング みすてりあすせってぃんぐ 『ミステリアスセッティング』は、阿部和重が朝日新聞社から2006年に刊行した長編小説です。講談社文庫版の出版社紹介では、歌を愛し吟遊詩人を夢見るが唄う能力を欠いた19歳の少女シオリが、周囲に弄ばれながらも夢を抱き続け、小型核爆弾だというスーツケースを託されて東京の地下深くに潜る物語として紹介されてい…
- 451 2006 プラスティック・ソウル ぷらすてぃっくそうる 『プラスティック・ソウル』は、阿部和重が2006年に講談社から刊行した長編小説です。著者ページの著書一覧では『シンセミア』以前に連載された作品として説明されています。
- 452 2006 虹とクロエの物語 にじとくろえのものがたり 『虹とクロエの物語』は、星野智幸が2006年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 453 2006 われら猫の子 われらねこのこ 『われら猫の子』は、星野智幸が2006年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 454 2006 鯉浄土 『鯉浄土』は、村田喜代子が2006年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 455 2005 悪意の手記 あくいのてき 悪意や罪の意識を抱えた人物の内面を、手記という形式に近い暗い語りで追う中村文則の初期作品。出来事の派手さよりも、語り手が自分の中の暴力や孤独をどう正当化し、どう崩れていくかが中心になる。後の中村作品に続く、犯罪、自己嫌悪、倫理の揺らぎが濃く表れた一作。
- 456 2005 AMEBIC アミービック 拒食やアルコールに蝕まれた女性ライターの意識を、断片的で揺らぐ独白として描く長編。身体の輪郭が崩れ、言葉や記憶がアメーバのように変形していく感覚が、タイトルどおり作品の構造にも入り込む。金原ひとみの身体感覚と実験的な語りが強く出た作品である。
- 457 2005 バースト・ゾーン 爆裂地区 ばーすと・ぞーん ばくれつちく 吉村萬壱が、暴力と管理の気配を強めた架空的な地区を描く長編。純文学の枠を越えて、SFやディストピア小説に近い想像力で、身体が制度や集団にさらされる状況を押し広げる。『ハリガネムシ』の閉じた暴力とは別方向に、社会全体が不穏化していく読み味がある。
- 458 2005 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ ふぬけども、かなしみのあいをみせろ 両親の事故死をきっかけに、女優を夢見る自己中心的な姉・澄伽が田舎の実家へ戻ってくる。妹、兄夫婦、家族内の記憶と嫉妬が、痛烈な喜劇として噴き出す。本谷有希子の戯曲的な会話と、家族を安全な場所として描かない毒の強さが読みどころである。
- 459 2005 半島を出よ はんとうをでよ 北朝鮮の特殊部隊が福岡を占拠するという危機を、政治、軍事、若者たちの暴力性を絡めて描く大部の長編。現実の東アジア情勢を踏まえながら、国家の危機管理と個人の生存感覚を同時に扱う。村上龍らしい社会不安への感度と、エンターテインメント的な速度が結びついた作品である。 第58回 野間文芸賞
- 460 2005 まぼろし まぼろし 母娘の確執を描く表題作と、実家に戻った娘の日常を描く「十八階ビジョン」を収める作品集。見えているはずの家族や故郷が、どこか「まぼろし」のように掴めなくなる感覚を、若い女性の視点から描く。日常の薄い不安と、過去から離れきれない心理が静かに重なる。
- 461 2005 マルコの夢 まるこのゆめ 栗田有起が、夢や空想の気配を日常のずれの中に置いた作品。人物たちは現実から大きく逃げ出すのではなく、少しだけ別の見方を差し込むことで、自分の居場所を探っていく。軽やかな題名の裏に、他人とわかり合えない孤独がにじむ。
- 462 2005 みずうみ みずうみ 母を亡くした女性と、過去に深い傷を抱えた青年の恋を描く長編。湖の静けさは、癒やしの場所であると同時に、人物が抱える記憶の暗さを映す場所にもなる。吉本ばななの柔らかな語りが、トラウマと恋愛を過剰に説明しすぎず、余韻として残す。
- 463 2005 踊るナマズ おどるなまず ナマズにまつわる伝説が息づく土地で、幼い二人の恋心と民話的な想像力が交差する恋愛奇談。弥生が過去の記憶を語り直す構成を通じて、土地に残る言い伝えと性、生命の連なりが重ねられる。現実の成長譚を土俗的なイメージへ開いていくところに、すばる文学賞受賞作らしい新鮮さがある。 第29回 すばる文学賞
- 464 2005 オテルモル おてるもる 『オテルモル』は、奇妙なホテルをめぐる幻想的な設定を手がかりに、旅先で宙づりになる感覚や、日常から少し外れた場所にいる人の孤独を描く作品です。栗田有起らしい軽やかな導入の奥に、記憶や帰属の揺らぎが潜む読み味があります。舞台の閉じた空間が、登場人物の不安と期待を増幅する点が読みどころです。
- 465 2005 さよなら アメリカ さよなら あめりか 「ぼく」は頭から袋を被って生活している。袋の後ろには「SAYONARAアメリカ」のロゴ。噂に聞いた同じ袋族の少女に会うために街をさまよい、突然現れた異母弟を名乗る男との奇妙な共同生活が始まる。袋で社会から自分を隔てながら、袋の仲間との出会いだけは求めてしまう——その矛盾を、深刻ぶらないオフビートなユ… 第48回 群像新人賞
- 466 2005 さようなら、私の本よ! さようならわたしのほんよ 『さようなら、私の本よ!』は、老作家・長江古義人と建築家・塙吾良を軸に、文学、暴力、記憶の継承を問い直す長編です。作中人物と作者像が重なり合うメタフィクション的な構えのなかで、晩年の作家が自作と時代にどう別れを告げるかが描かれます。会話と回想を積み重ねる長い息の文体が、個人史と政治的記憶を結びつけて…
- 467 2005 性交と恋愛にまつわるいくつかの物語 せいこうとれんあいにまつわるいくつかのものがたり 『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』は、性と恋愛をめぐる語りを、物語そのものへの問いと重ねて扱う作品です。高橋源一郎の小説らしく、露骨な題材を単純な告白にせず、言葉が欲望をどう作り替えるかを意識させます。恋愛小説の形式をずらしながら、身体、関係、語りの自由度を探る読みどころがあります。
- 468 2005 東京奇譚集 とうきょうきたんしゅう 『東京奇譚集』は、「偶然の旅人」などを収め、都市の日常にふと入り込む不可思議な出来事を描く短編集です。村上春樹の抑制された語りが、偶然、喪失、記憶のずれを静かに増幅します。東京という現実的な地名を持ちながら、物語は現実の向こう側に開く寓話性を帯びています。
- 469 2005 土の中の子供 つちのなかのこども 『土の中の子供』は、幼少期の虐待の記憶を抱えた青年が、暴力と性のただなかで自分の生を測り直す作品です。語りは身体感覚に近く、外から説明するよりも、壊れた自己認識の内側から世界を見せます。暗い題材を扱いながら、傷の再演とそこからの微かな抵抗を描く点に緊張があります。 第133回 芥川賞
- 470 2005 カギ かぎ 2005年4月に集英社から刊行された単行本。NDLで単行本書誌と『すばる』2003年10月号掲載情報を確認できる。
- 471 2005 名もなき孤児たちの墓 なもなきこじたちのはか 表題作は『新潮』2005年8月号に掲載され、2006年に新潮社から刊行された同名作品集の核となる短編。中原昌也らしい不穏で断片的な語りが、名前を持たない者たちの孤立や行き場のなさを、整った物語の救済から遠ざけて描く。公開されている内容紹介は乏しいため、具体的な筋の断定は避け、書誌・受賞情報と作風に限… 第28回 野間新人賞
- 472 2005 ベルカ、吠えないのか? べるか、ほえないのか 『ベルカ、吠えないのか?』は、1943年のキスカ島に残された軍用犬たちから始まり、犬たちの血統と移動を通して二十世紀の世界史を描く長篇です。人間の戦争、国家、軍事、移民の歴史が、犬の繁殖と訓練の記録として別の角度から語られます。動物小説でありながら、近現代史を横断する群像劇として読める作品です。
- 473 2005 山田太郎と申します 『山田太郎と申します』は、玄月が文藝春秋から刊行した短篇集です。ありふれた名を持つ山田太郎という人物が、場所ごとに場の秩序を揺らし、周囲の人びとの当惑や欲望を浮かび上がらせます。緊張感とユーモア、現実感と倒錯感が混じり合う玄月らしい作品集です。
- 474 2005 異物 いぶつ 玄月の中期単行本。NDLでは単行本と雑誌初出記事の双方が確認できる。
- 475 2005 テクノフォビア てくのふぉびあ 2005年4月に扶桑社から刊行された本人単著をNDLで確認。既存登録の『オール・トゥモロウズ・パーティーズ』と同時期の著作。
- 476 2005 在日ヲロシヤ人の悲劇 ざいにちをろしやじんのひげき 『在日ヲロシヤ人の悲劇』は、星野智幸が2005年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 477 2005 聖ジェームス病院 『聖ジェームス病院』は、久間十義が2005年に光文社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 478 2004 アフターダーク あふたーだーく 深夜0時過ぎから夜明けまでの東京を舞台に、ファミリーレストラン、ホテル、オフィス、眠り続ける部屋がゆるく接続される。視点はカメラのように人物の間を移動し、姉妹、孤独な青年、暴力の痕跡を、夜の都市の断片として映し出す。長大な物語ではなく、時間を区切った構成と映像的な語りで、村上春樹作品の都市感覚を凝縮…
- 479 2004 アッシュベイビー アッシュベイビー 『蛇にピアス』後の第二作で、同居人の男と赤ん坊をめぐる歪んだ関係に巻き込まれる女性を描く。身体、依存、母性への違和感が、金原ひとみらしい硬い感覚の文体で押し出される。家庭的な題材を扱いながら、安心できる家族像を反転させる不穏な作品である。
- 480 2004 サージウスの死神 さーじうすのしにがみ 徹夜明けの帰り道、ビルから飛び降りてきた男と目が合い、その死を目撃した主人公は、同僚に誘われた地下カジノ「freeze」でルーレットにのめり込む。預金を失い借金を重ねるうち、「頭の中に数字を飼っている」という感覚が芽生え、精神の破滅と引き換えに当たりの数字が見えるようになっていく。賭博と死の観念を硬…
- 481 2004 遮光 しゃこう 死んだ恋人の「残骸」を持ち歩き続ける青年が、嘘と妄想の境目を失っていく。喪失を受け止めるのではなく、異様な執着として保存しようとする心理が、硬く暗い文体で描かれる。中村文則の初期作品らしい、罪悪感、孤独、身体への嫌悪が凝縮された一作。 第26回 野間新人賞
- 482 2004 白の咆哮 しろのほうこう 経済の衰退が止まらない近未来の日本で、「土踊り」と呼ばれる踊りが国全体を覆い尽くしていく。荒唐無稽ともいえる世界の変容を、改行の少ない硬く生真面目な文体で延々と語り続けるという、設定と語り口の落差そのものが読みどころの異色作。寓話的な世界設定によって、不況下の日本社会に広がる集団的な熱狂と閉塞を照ら… 第28回 すばる文学賞
- 483 2004 海の仙人 うみのせんにん 海辺で暮らす人物の孤独に、現実から少しずれた存在や関係が入り込んでくる絲山秋子の長篇。日常的な会話の軽さと、死や喪失の気配が同じ平面に置かれ、海辺の時間が寓話のように広がる。恋愛小説でも幻想小説でもあるが、どちらにも収まりきらない余白が読みどころになる。
- 484 2004 グランド・フィナーレ ぐらんどふぃなーれ 『グランド・フィナーレ』は、阿部和重が2005年に講談社から刊行した作品集です。表題作のほか「馬小屋の乙女」「新宿ヨドバシカメラ」「20世紀」を収録し、第132回芥川賞受賞作として知られます。 第132回 芥川賞
- 485 2004 ロンリー・ハーツ・キラー ろんりーはーつきらー 『ロンリー・ハーツ・キラー』は、星野智幸が2004年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 486 2004 アルカロイド・ラヴァーズ あるかろいどらゔぁーず 『アルカロイド・ラヴァーズ』は、星野智幸が2005年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 487 2004 サラマンダーの夜 『サラマンダーの夜』は、久間十義が2004年に角川書店から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 488 2004 百年佳約 『百年佳約』は、村田喜代子が2004年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 489 2003 江利子と絶対 本谷有希子文学大全集 えりことぜったい ほんたにゆきこぶんがくだいぜんしゅう 劇作家として活動していた本谷有希子が、小説家として最初にまとめた短篇集。表題の「江利子と絶対」を含む諸篇では、過剰な自意識、対人関係のずれ、舞台劇のような会話の圧が前面に出る。後年の本谷作品に続く、痛さと可笑しさを同時に押し出す語りの出発点として読める。
- 490 2003 ハンゴンタン はんごんたん タイトルの「ハンゴンタン(反魂丹)」は、死者の魂を呼び戻すという伝承を持つ富山の伝統的な丸薬の名。哲学科出身の27歳の新人が、第95回・第96回と受賞作が1作以下の状態が続いた文學界新人賞の2003年下期に単独受賞した。選考委員は浅田彰・奥泉光・島田雅彦・辻原登・山田詠美。単行本化されておらず、内容… 第97回 文學界新人賞
- 491 2003 ハリガネムシ はりがねむし 中学教師の男が、教え子の母親との関係をきっかけに、性と暴力の泥沼へ落ちていく芥川賞受賞作。語りは冷たく湿っており、主人公の欲望や嫌悪が、昆虫的・寄生的なイメージと重なって増殖していく。家族や学校という制度の薄い膜の下にある衝動を、読後感の悪さごと突きつける作品である。 第129回 芥川賞
- 492 2003 蛇にピアス へびにピアス 19歳のルイは、蛇のように舌先が割れた「スプリット・タン」を持ち、全身にピアスと刺青を施した青年アマと出会い、同棲を始める。自らも舌にピアスを開け、拡張し、背中に麒麟と龍の刺青を彫ろうと、アマの紹介で知り合ったサディストの彫り師シバとも危険な関係を結んでいく。痛みによってしか生の実感をつかめない若者… 第130回 芥川賞
- 493 2003 授乳 じゅにゅう 『授乳』は、第46回群像新人文学賞優秀作となった表題作を含む村田沙耶香の初作品集です。Amazonの商品紹介では「授乳」「コイビト」「御伽の部屋」の3篇を収め、日常の細部を新しい感受性で描くデビュー作として紹介されています。既存紹介の家庭教師との倒錯した関係という筋は作品理解として有用ですが、更新案…
- 494 2003 黒冷水 こくれいすい 弟の修作は兄・正気の部屋を毎日執拗に「家捜し」し、兄はそれに気づいて巧妙な罠と報復を仕掛ける。家庭内の些細な悪意の応酬は、黒く冷たい水のような憎悪へと際限なくエスカレートしていく——。思春期の自意識と家族間の生理的な憎しみを、17歳の現役高校生がここまで執拗に書き切ったという事実そのものが衝撃を与え… 第40回 文藝賞
- 495 2003 壊れるほど近くにある心臓 こわれるほどちかくにあるしんぞう 身体と精神の境界がゆるみ、恋愛の近さがそのまま危うさへ変わっていく第二作。親密さを求めるほど相手との距離が測れなくなる感覚を、肉体的なイメージと内面の揺れを重ねて描く。恋愛小説でありながら、愛の甘さよりも依存、痛み、自己の輪郭が崩れる怖さを読む作品である。
- 496 2003 極東アングラ正伝 きょくとうあんぐらせいでん 佐川光晴が、都市の周縁や表舞台の外側にある生の感覚へ目を向けた2003年の作品。題名が示す「アングラ」は、文化や労働や生活が公的な語りからこぼれ落ちる場所を思わせる。デビュー期から一貫する、きれいごとでは済まない生活への視線をたどる一冊として位置づけられる。
- 497 2003 鼠と肋骨 ねずみとろっこつ 第46回群像新人文学賞優秀作として『群像』2003年6月号に掲載された短編。NDLサーチでは掲載記事と掲載誌号を確認できるが、公開Web上で梗概や選評本文は確認できない。現時点では題名から主題や語りを推測せず、同賞優秀作としての掲載情報を中心に扱う。
- 498 2003 四十日と四十夜のメルヘン よんじゅうにちとよんじゅうやのめるへん チラシ配りをして暮らす「私」が書きつける日記。しかしその日付は素直に進まず、記述は反復と書き換えを繰り返しながら円環構造を描き、日常の風景がいつのまにか変容していく。「書くこと」自体を小説の駆動装置にした構成は、選考会で保坂和志が「これはピンチョンなんだ」と断言して強く推したことで知られる。単行本化… 第35回 新潮新人賞
- 499 2003 モルヒネ もるひね 初版は祥伝社2003年刊。2008年・2009年の関連版もNDLで追跡できる。
- 500 2003 サウンドトラック さうんどとらっく 『サウンドトラック』は、音楽、都市、身体感覚を小説のリズムへ変換する古川日出男の長篇です。筋を静かに追うというより、若者たちの衝動や都市のノイズを高速の語りで積み重ねるところに読みどころがあります。今回確認できた出版社公式情報は集英社文庫上下巻の書誌が中心で、詳細な公式あらすじは未確認です。
- 501 2003 眼球の毛 : 特別書下ろし長篇 がんきゅうのけ 2003年12月に講談社から刊行された書き下ろし長篇をNDLで確認した。
- 502 2003 鬼ケーキ 『鬼ケーキ』は、安斎あざみが『文學界』2003年3月号に発表した作品です。NDLサーチでは、同誌57巻3号の128ページから156ページに掲載された記事・論文種別の文学作品として確認できます。内容紹介や選評は公開書誌から確認できないため、書誌情報を中心に収録します。
- 503 2003 泥人魚 どろにんぎょ 『泥人魚』は、唐十郎が『新潮』2003年4月号に発表した戯曲です。NDLサーチでは同号p.144-199掲載の「最新戯曲 泥人魚」として確認でき、2004年4月に新潮社から単行本化されています。唐十郎の後期戯曲を代表する一作として、アングラ演劇の過剰なイメージと言葉のうねりを受け継ぐ作品です。
- 504 2003 阿修羅ガール あしゅらがーる 『阿修羅ガール』は、女子高生アイコの一人称を通じて、都市の暴力、ネット的な噂、同時代の軽さと残酷さを一気に走らせる長篇です。会話や独白のテンポが速く、ミステリやサブカルチャーの感触を純文学的な文体実験へ持ち込んでいる。舞城王太郎の過剰な速度と文体の身体性がよく出た作品です。 第16回 三島賞
- 505 2002 フェイク ふぇいく 第34回新潮新人賞を中村文則「銃」と分け合った受賞作。タイトルの「フェイク」は偽物・まがいものの意で、本物と偽物のあわいを生きる人物像をうかがわせるが、単行本化されておらず、内容を確認できる資料は乏しい。選考委員は川上弘美・沼野充義・福田和也・保坂和志・町田康。同時受賞の中村文則がその後芥川賞作家と… 第34回 新潮新人賞
- 506 2002 ジャイロ! じゃいろ 「僕」と友人・猟平が繰り返す「危険なキャッチボール」が、ついに猟平の家を全焼させてしまう——少年たちの遊びと暴力が地続きになった世界を、熱を孕んだ文体で一気に語る。選考では、世界へのルサンチマン(鬱屈した恨み)を呪詛のような語りで繋ぎ留めた「現代の悪童日記」と評された。受賞の翌年まで『群像』に短篇を… 第45回 群像新人賞
- 507 2002 裸のカフェ はだかのかふぇ 横田創が2002年に刊行した作品で、公開情報では詳細な梗概がまだ薄い。カフェという開かれた場所と「裸」のイメージから、人間関係や自己露出の不穏さを扱う作品として暫定整理する。内容細部と批評上の評価は、現物・書評確認を優先したい。
- 508 2002 銃 じゅう 雨の夜、大学生の「私」は河原で死体のそばに落ちていた拳銃を拾う。磨き、眺め、持ち歩くうちに、銃は退屈な日常に輪郭を与える唯一の存在となり、「撃つ」ことへの欲望が抗いがたく膨らんでいく。一挺の銃という即物的なモチーフだけで青年の内面の崩壊を追い詰めていく構成と、乾いた硬質な一人称が特徴的なデビュー作… 第34回 新潮新人賞
- 509 2002 キッズ アー オールライト きっず あー おーるらいと やくざの愛人の息子として育った「オレ」は、親父の失脚をきっかけに組織同士の闘いへと足を踏み入れてしまう。手当たり次第に何でも破壊するビリィの右手など、過剰でマンガ的なイメージを叩きつけながら、暴力の世界のただなかにいる子どもたちの姿を疾走感のある語りで描く。現役の小学校教師が書いたアウトロー小説とい… 第39回 文藝賞
- 510 2002 君が代は千代に八千代に きみがよはちよにやちよに 「君が代」という強い公共的記号を題名に据え、国家、記憶、言葉の働きを小説の場で問い直す高橋源一郎の作品。政治的な主題を直接の主張に閉じず、語りの実験や文学的なずらしによって扱う。近代日本の制度と言語をめぐるメタフィクションとして読める。
- 511 2002 死せる魂の幻想 しせるたましいのげんそう お節介な祖母と二人暮らしで、アパートと大学を往復するだけの真面目な女子大生・千明。女友達はいても恋人はいない彼女の日常に潜む孤独感と、他者との関係への切実な渇望を描く。後半、奇妙な雨宿りの場面で物語は一変し、卑近な日常が途方もない神々しさへと接続される。現役京大生だった22歳の作者によるデビュー作で… 第45回 群像新人賞
- 512 2002 海辺のカフカ うみべのかふか 15歳の少年・田村カフカと老人ナカタの物語が並行して進む長編。家出、父と子、予言、暴力、異界的な出来事が絡み合い、現実と神話が重なる場所へ読者を導く。村上春樹の長編の中でも、寓話性と物語性が大きく広がった作品である。
- 513 2002 浪漫的な行軍の記録 ろまんてきなこうぐんのきろく 『浪漫的な行軍の記録』は、奥泉光が2002年に講談社から刊行した作品です。のちに講談社文芸文庫『石の来歴 浪漫的な行軍の記録』にも収録されました。
- 514 2002 ぐずべり ぐずべり 2002年10月に講談社から刊行された単行本。NDL書誌で収録作「亜寒帯」「ぐずべり」を確認できる。
- 515 2002 ファンタジスタ ふぁんたじすた 『ファンタジスタ』は、首相公選制が導入された近未来日本を舞台に、元サッカー選手の政治家・長田が圧倒的な人気を得ていく過程を描く政治小説です。スポーツの熱狂、メディア的な人気、民主主義の空洞化が重なり、支持の高揚がファシズム的な空気へ転じる不穏さを浮かび上がらせます。寓話性の強い設定を通じて、集団心理… 第25回 野間新人賞
- 516 2002 パレード ぱれーど 『パーク・ライフ』期の代表的長篇で、都市生活・共同生活・若者の距離感を扱う追加候補。第15回山本周五郎賞受賞作として知られるが、今回は公式賞ページ未確認のため awards には入れない。
- 517 2002 空中庭園 くうちゅうていえん 文藝春秋公式で2002年11月28日発売、初版奥付2002年11月30日、ISBN 978-4-16-321450-4、婦人公論文芸賞受賞作として確認できる。
- 518 2002 毒身温泉 どくしんおんせん 『毒身温泉』は、星野智幸が2002年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 519 2002 雲南の妻 『雲南の妻』は、村田喜代子が2002年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 520 2001 ゴヂラ ゴヂラ 高橋源一郎が2001年に刊行した作品で、怪獣映画を思わせる表記を小説の入口に置く。戦後日本の記憶、メディアの記号、文学の語りを重ね、現実とフィクションの境界を揺さぶるタイプの作品として読める。内容細部は追加確認が必要だが、実験的な社会批評性を持つ作品として分類する。
- 521 2001 クチュクチュバーン くちゅくちゅばーん ある時から人間たちが異形のものへと変容しはじめ、世界そのものが崩壊へ向かう過程を、複数の人物のエピソードを束ねて描く黙示録的な中篇。グロテスクで生々しい身体描写を畳みかけながら、悲惨さの中に奇妙な可笑しさと祝祭性が同居するのが特徴で、「世界の破壊か、新しい人類の始まりか」という終末イメージを正面から… 第92回 文學界新人賞
- 522 2001 ニッポニアニッポン にっぽにあにっぽん 『ニッポニアニッポン』は、阿部和重が2001年に新潮社から刊行した長編小説です。少年がインターネットを通じてトキ保護センターのトキ殺害を計画する作品として、著者ページで初出・刊行情報が確認できます。
- 523 2001 ベラクルス べらくるす 『ベラクルス』は、メキシコ湾岸の都市ベラクルスを舞台にした堂垣園江の小説です。カナダとメキシコに在住経験をもつ作者の越境的な視点から、土地の歴史、記憶、暴力の気配を重ねる作品として位置づけられます。海外の都市を日本語小説の舞台に据え、移動と異文化の感覚を読む作品です。 第23回 野間新人賞
- 524 2001 あらゆる場所に花束が…… あらゆるばしょにはなたばが 『あらゆる場所に花束が……』は、中原昌也の小説で、第14回三島由紀夫賞受賞作です。新潮社公式ページは、殺意と肉欲に満ちた地上を舞台に、地下室で絵ハガキを作らされる男、河川敷で殺人リハーサルをする一団、謎の人物を追うルポライターらが絡み合う作品として紹介しています。暴力、断片、錯綜する人物配置によって… 第14回 三島賞
- 525 2001 アイリーン 『アイリーン』は、篠原一の小説単行本です。NDLサーチでは2001年9月に作品社から刊行された141ページの図書、NDC9 913.6として確認できます。出版書誌データベースでも、ISBN 9784878934278、B6判、141ページ、2001年9月刊行の書誌が確認できます。
- 526 2001 アウトトゥランチ あうととぅらんち 篠原一の book-form work 候補。同名別人を避けるため、NDLの著者標目「篠原, 一, 1976-」を確認した。
- 527 2001 ジャパン・シンドローム じゃぱん・しんどろーむ 2001年作品社刊。2011年に中央公論新社から『原子の闇』上下として改稿・改題されたため、原題版を追加候補とする。
- 528 2001 人が見たら蛙に化れ 『人が見たら蛙に化れ』は、村田喜代子が2001年に朝日新聞社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 529 2000 神の子どもたちはみな踊る かみのこどもたちはみなおどる 阪神・淡路大震災後の空気を背景にした六篇の連作短編集。大きな災害を直接描き尽くすのではなく、喪失や不安を抱えた人々の生活に、寓話や偶然の形で揺れを響かせる。「かえるくん、東京を救う」など、現実と幻想の境目を軽やかに越える短篇が含まれる。
- 530 2000 希望の国のエクソダス きぼうのくにのエクソダス 中学生たちの集団不登校と、ネットワークを使った経済的自立を描く近未来小説。学校や国家に回収されない若者の集団が、情報技術と経済を武器に別の社会を作ろうとする。教育、労働、国家、テクノロジーを同時に扱う、2000年前後の不安と期待を映す作品。
- 531 2000 共生虫 きょうせいちゅう 引きこもりの青年ウエハラが、「共生虫」という妄想に取り憑かれていく長編。ネット、孤立、身体への不安が結びつき、社会から退いた人物の内側が危うく膨張していく。2000年前後のテクノロジーと精神の不穏な接続を描く村上龍作品。 第36回 谷崎賞
- 532 2000 メイドインジャパン めいどいんじゃぱん 『メイドインジャパン』は、第37回文藝賞を受賞し、応募時の題「YOU LOVE US」で『文藝』2000年冬季号に掲載された黒田晶の作品です。河出書房新社公式ページでは、少年犯罪、残酷な殺人描写、グルーヴ感のあるクールな文体を前面に出した問題作として紹介されています。単行本化時には現在の題名で刊行さ… 第37回 文藝賞
- 533 2000 肉触 にくしょく 『肉触』は、第37回文藝賞優秀作として『文藝』2000年冬季号に掲載され、2001年1月に河出書房新社から単行本化された佐藤智加の作品です。河出書房新社公式ページでは、精神と肉体をめぐる冒頭の問い、姉の追憶に支えられた詩的な内面世界の崩壊、17歳の高校生による早熟な表現が紹介されています。物語の細部…
- 534 2000 塔 とう 『塔』は、妻を奪われたという疑念に囚われた男の絶望と精神の彷徨を描く、第24回すばる文学賞受賞作です。Booksの内容紹介では、錯乱と覚醒、少年への愛、幻想と悪夢の世界へ誘う作品として紹介されています。夫婦関係の破綻を入口に、現実の輪郭が揺らぐ心理と幻想性を読ませる作品として整理できます。 第24回 すばる文学賞
- 535 2000 悪い噂 わるいうわさ 芥川賞受賞作『蔭の棲みか』と近い時期に刊行された玄月の初期単行本。
- 536 2000 目覚めよと人魚は歌う めざめよとにんぎょはうたう 『目覚めよと人魚は歌う』は、星野智幸が2000年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。 第13回 三島賞
- 537 2000 オニビシ 『オニビシ』は、久間十義が2000年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 538 2000 ダブルフェイス 『ダブルフェイス』は、久間十義が2000年に幻冬舎から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 539 2000 夜のヴィーナス 『夜のヴィーナス』は、村田喜代子が2000年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 540 1999 スプートニクの恋人 すぷーとにくのこいびと 22歳のすみれが、17歳年上で既婚の女性ミュウに激しい恋をするところから始まる長編。語り手の「僕」はすみれへの思いを抱えつつ、すみれとミュウの関係、そして失踪をめぐる奇妙でミステリアスな出来事に巻き込まれていく。スプートニクのイメージが、互いに近づきながら孤独な軌道を回る人間同士の距離を象徴する。
- 541 1999 零歳の詩人 れいさいのしじん 短歌誌「玲瓏」同人でもある楠見朋彦の小説デビュー作です。詩歌人としての言語感覚を背景に、戦争や言葉をめぐる主題を小説の形式へ移した作品として位置づけられます。公開資料で梗概を十分に確認できないため、現時点では受賞・掲載情報と作者の詩歌的な出自を中心に扱います。 第23回 すばる文学賞
- 542 1999 無情の世界 むじょうのせかい 『無情の世界』は、「トライアングルズ」「無情の世界」「鏖」を収める阿部和重の初期短編集です。表題作では、深夜の公園で死体を見つける高校生たちを通じて、若者の倦怠、暴力衝動、現代社会の冷えた感触が描かれます。映画的な切断感と批評的な語りが同居し、阿部作品の前衛性が短編の密度で現れています。 第21回 野間新人賞
- 543 1999 シンセミア しんせみあ 『シンセミア』は、阿部和重が2003年に朝日新聞社から上下巻で刊行した長編小説です。山形県東根市神町を舞台に、土地の歴史、家族、暴力、メディア的な噂が絡み合う大作として整理します。 第15回 伊藤整賞
- 544 1999 嫐嬲 なぶりあい 『嫐嬲』は、星野智幸が1999年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 545 1999 ワニを抱く夜 : 作品集 『ワニを抱く夜 : 作品集』は、村田喜代子が1999年に葦書房から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 546 1999 X電車にのって : 作品集 『X電車にのって : 作品集』は、村田喜代子が1999年に葦書房から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 547 1998 ライン ライン 『ライン』は、電話線のように結びつく複数の人物を連鎖的に描き、性、暴力、プライド、トラウマが現代日本の暗部へ流れ込んでいく長篇です。SM嬢、看護婦、ウエイター、キャリアウーマンなど断片的な人生を並置し、個々の孤独が通信や接触を通じて増幅される構造をとります。村上龍らしい硬質な速度感で、コミュニケーシ…
- 548 1998 日蝕 にっしょく 『日蝕』は、15世紀フランスを舞台に、若い修道士が異端的な知と神秘の気配を追っていく中篇です。文語的で格調の高い文体を前面に出し、歴史小説、宗教小説、幻想小説の要素を重ねながら、日蝕という瞬間へ向けて緊張を高めます。デビュー作でありながら、古典的な知と現代文学の技巧を接続した点が読みどころです。 第120回 芥川賞
- 549 1998 あなたがほしい je te veux あなたがほしい じゅ とぅ ゔー ヒロインのカナが、年下の友人・留美への同性間の欲望と、中年の建築家・小田との官能と友愛を行き来する恋愛小説です。集英社公式は、男性を抱くことはできても愛せない、女性を愛していても抱き合うことを恐れるという葛藤を作品の核として紹介している。性愛と親密さのずれを、ジェンダーと身体感覚の問題として描く点が… 第22回 すばる文学賞
- 550 1998 刑事たちの夏 『刑事たちの夏』は、久間十義が1998年に日本経済新聞社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 551 1998 龍秘御天歌 『龍秘御天歌』は、村田喜代子が1998年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 552 1997 オーディション オーディション 『オーディション』は、再婚相手を探す男が映画オーディションという仕掛けを通して一人の女性と出会い、やがて狂気と暴力に巻き込まれていく長編です。恋愛や結婚の欲望を入口にしながら、選ぶ側と選ばれる側の非対称性、性と暴力の境界を不穏に反転させます。三池崇史監督による映画化でも広く知られる作品です。
- 553 1997 イン ザ・ミソスープ イン ザ・ミソスープ 『イン ザ・ミソスープ』は、新宿の歓楽街で外国人観光客を案内するケンジが、アメリカ人客フランクの異様さと暴力に巻き込まれていく長編です。都市の表層的な消費空間と、突然噴き出す暴力の感触が重ねられ、日本社会への批判的な視線も含んでいます。一人称の案内役の語りを通して、読者も不穏な夜の中へ連れていかれま…
- 554 1997 水滴 すいてき 『水滴』は、沖縄の老人の足から水が流れ出すという奇妙な出来事を起点に、戦争の死者と生者の現在が交わる短篇です。民話的な幻想と生活のユーモアを重ねながら、沖縄戦の記憶が日常の身体へ戻ってくる瞬間を描きます。荒唐無稽な設定の奥に、加害と悔恨、共同体の記憶が沈んでいる点が読みどころです。 第117回 芥川賞
- 555 1997 最後の吐息 さいごのといき 『最後の吐息』は、星野智幸が河出書房新社から刊行したデビュー期の小説作品です。公的書誌で題名・著者・出版社を確認し、受賞歴は文藝賞の受賞作一覧で確認できる範囲に限定して登録しました。 第34回 文藝賞
- 556 1997 インディヴィジュアル・プロジェクション いんでぃゔぃじゅあるぷろじぇくしょん 『インディヴィジュアル・プロジェクション』は、阿部和重が1997年に新潮社から刊行した長編小説です。スパイ養成所出身者の日記という設定により、理論性とエンターテインメント性を接続した初期代表作として扱います。
- 557 1997 狂騒曲 : 1985~1990 『狂騒曲 : 1985~1990』は、久間十義が1997年に角川書店から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 558 1997 お化けだぞう 『お化けだぞう』は、村田喜代子が1997年に潮出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 559 1996 レキシントンの幽霊 れきしんとんのゆうれい 『レキシントンの幽霊』は、表題作を含む村上春樹の短篇集です。既存データの通り「めくらやなぎと眠る女」などを収め、記憶、喪失、遠さ、曖昧な気配をめぐる短篇が並びます。海外を含む場所の感触と、説明されすぎない幽霊的な不在が、静かな不穏さを生みます。
- 560 1996 蛇を踏む へびをふむ 『蛇を踏む』は、藪で蛇を踏んだ女性の前に、その蛇が女の姿で現れ、「蛇になれ」と迫ってくる芥川賞受賞作です。日常の手触りを残したまま異界が入り込み、現実と幻想の境界が曖昧になっていくところに読みどころがある。身体の変容、親密さへの恐れ、奇妙な同居感を、川上弘美の初期作らしい静かな不穏さで描く。 第115回 芥川賞
- 561 1996 海峡の光 かいきょうのひかり 『海峡の光』は、廃航を控えた青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守となった「私」が、少年時代に自分を苦しめた相手と受刑者として再会する物語です。新潮社公式の紹介では、監視する者と監視される者の関係が、船舶訓練の海へ向かう場面で極限化される構図が示されている。津軽海峡と函館を背景に、いじめの記憶… 第116回 芥川賞
- 562 1996 マンモスの牙 まんもすのきば 『マンモスの牙』は、小山右人が第28回新潮新人賞を受賞した作品です。著者自身のnoteでは、映画化作品『牙の曲線』の原作小説として言及され、医学・アートを横断する視点を持つ作品として既存データに整理されています。新潮社公式で受賞事実は確認できますが、出版社公式の商品紹介は未確認のため、内容説明は低確… 第28回 新潮新人賞
- 563 1996 まどろむ夜のUFO まどろむよるのゆーふぉー 『まどろむ夜のUFO』は、表題作のほか「もう一つの扉」「ギャングの夜」を収める角田光代の初期短編集です。少女や若い女性の生活に入り込む小さな異変を、日常の延長にある不穏さとして捉えます。家族や孤独をめぐる感情を過度に説明せず、眠りと覚醒のあいだのような手触りで読ませる作品集です。 第18回 野間新人賞
- 564 1996 硫黄谷心中 『硫黄谷心中』は、村田喜代子が1996年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 565 1996 蟹女 『蟹女』は、村田喜代子が1996年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 566 1995 地下鉄の軍曹 ちかてつのぐんそう NDLサーチで1995年4月刊、集英社、ISBN 4-08-774130-3の単行本として確認できる。
- 567 1995 紅栗 べにぐり 『紅栗』は、SF翻訳家としても活動した冬川亘の短編小説で、新潮新人賞受賞作として登録されています。既存情報では詳細な筋は限られますが、翻訳・SF的想像力を背景にした作家の純文学的実作として位置づけられます。題名の色彩感と身体的な質感から、幻想性を含む短篇として分類しました。 第27回 新潮新人賞
- 568 1995 ABC戦争 えーびーしーせんそう 『ABC戦争』は、阿部和重が1995年に講談社から刊行した初期作品集です。のちに『ABC戦争 plus 2 stories』として文庫化され、初期作をまとめた『ABC 阿部和重初期作品集』にも組み込まれました。
- 569 1995 12のトイレ 『12のトイレ』は、村田喜代子が1995年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 570 1994 ねじまき鳥クロニクル ねじまきどりくろにくる 『ねじまき鳥クロニクル』は、失踪した猫と妻を探す岡田トオルが、私的な喪失から戦争の記憶と暴力の深部へ降りていく長編三部作です。第1部・第2部は1994年、第3部は1995年に新潮社から刊行されたことがNDL書誌で確認できます。日常の裂け目から歴史的暴力へ接続していく構成が、村上春樹の長編の中でも大き…
- 571 1994 ピアッシング ピアッシング 『ピアッシング』は、強迫観念に駆られた男と、幼少期の傷を抱えた女性の一夜を描く心理サスペンスです。殺害計画という暴力的な筋立てを通じて、身体への衝動、虐待の記憶、他者との接触の危うさが前景化します。村上龍の作品群のなかでは、都市的な閉塞と身体感覚の異常な高まりを緊密に扱う長編として整理できます。
- 572 1994 昭和歌謡大全集 しょうわかようだいぜんしゅう 『昭和歌謡大全集』は、昭和歌謡を愛する若者たちと中年女性たちの対立が、過剰な暴力へと転がっていく長編です。歌謡曲という共有された大衆文化を背景にしながら、世代間の断絶、空虚な仲間意識、殺し合いのブラックユーモアを結びつけます。村上龍らしい暴力性とポップな記号感覚が強く出た作品です。
- 573 1994 タイムスリップ・コンビナート たいむすりっぷ・こんびなーと 『タイムスリップ・コンビナート』は、自宅から海芝浦駅へ向かう道程で時間が前後にずれていく幻想的な芥川賞受賞作です。都市近郊の移動と時間感覚の攪乱を通じて、記憶、身体、場所の境界が不安定になっていきます。笙野頼子の自由奔放な文体と時間への感覚が凝縮された作品として整理できます。 第111回 芥川賞
- 574 1994 アメリカの夜 あめりかのよる 『アメリカの夜』は、映画学校を卒業した中山唯生が、アルバイト生活の閉塞感のなかで「特別な存在」であろうとして身体を鍛え、思索を深めていく物語です。講談社公式の商品紹介は、芸術を志す若者の自己像への執着と、閉塞した社会のなかで本当に目指すべき存在を問う作品として説明している。映画・芸術への志向、身体… 第37回 群像新人賞
- 575 1994 密やかな結晶 ひそやかなけっしょう NDLサーチで1994年1月刊の講談社版単行本、1999年講談社文庫版、2020年刊行版を確認できる。既登録の初期芥川賞作と代表的ベストセラーの間を補う候補。
- 576 1994 群体 『群体』は、藤原智美が芥川賞受賞作『運転士』の後に講談社から刊行した長篇小説です。ウォーターフロントの高層インテリジェントビルで発見された大きなネズミを発端に、社内の噂が情報パニックへと膨張していく過程を描きます。講談社公式ページでは、群像掲載作「森番」を改題した作品として紹介されています。
- 577 1994 蕨野行 『蕨野行』は、村田喜代子が1994年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 578 1993 エクスタシー エクスタシー 『エクスタシー』は、ニューヨークで出会った謎めいた日本人ホームレスをきっかけに、主人公が快楽と暴力のゲームへ巻き込まれていく長編です。集英社公式は、ゴッホの耳をめぐる問いから始まる不思議な出会いと、果てしなく反復される「恍惚のゲーム」を紹介している。身体、性、ドラッグをめぐる過激な素材を、村上龍らし…
- 579 1993 石の来歴 いしのらいれき 『石の来歴』は、奥泉光が第110回芥川賞を受賞した中編小説です。既存データでは、第二次大戦中から戦後にわたる男の人生と一個の石をめぐり、戦争経験と記憶の層が交錯する作品として整理されています。日本文学振興会公式で芥川賞受賞は確認できますが、今回確認できた出典は受賞・初出情報が中心で、細部の内容説明は… 第110回 芥川賞
- 580 1993 壊音 KAI-ON かいおん 『壊音 KAI-ON』は、高校生の少女が自分の身体感覚の崩壊と再生をたどるデビュー作です。若い身体と精神の不安定さを、音や感覚の乱れとして捉える作品として整理できます。17歳で文學界新人賞を受賞した篠原一の初期代表作で、1995年に文藝春秋から単行本化されました。 第77回 文學界新人賞
- 581 1993 暗い森を抜けるための方法 くらいもりをぬけるためのほうほう 『暗い森を抜けるための方法』は、足立浩二が第36回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1993年6月号と受賞発表記事を確認しました。暗い森を抜けるという題名が示す閉塞と脱出のイメージは明確ですが、具体的な筋は未確認です。
- 582 1993 骸骨山脈 がいこつさんみゃく 『骸骨山脈』は、野間井淳が第25回新潮新人賞を受賞した作品です。NDLでは『新潮』1993年11月号と受賞作発表記事を確認できますが、具体的な筋や書評は今回確認できませんでした。題名の死や山岳のイメージを手がかりにした分類は暫定です。 第25回 新潮新人賞
- 583 1993 ノヴァーリスの引用 のゔぁーりすのいんよう 『ノヴァーリスの引用』は、奥泉光が第15回野間文芸新人賞を受賞した作品です。既存データでは、恩師の葬儀で集まった旧大学仲間が、過去の研究仲間の死の謎をめぐって推理を重ねるメタミステリーとして整理されています。講談社公式で受賞は確認できますが、梗概は二次情報由来です。 第15回 野間新人賞
- 584 1993 マシアス・ギリの失脚 ましあす・ぎりのしっきゃく 『マシアス・ギリの失脚』は、池澤夏樹が第29回谷崎潤一郎賞を受賞した長篇です。既存データでは、赤道近くの架空の島国を舞台に、独裁的権力者をめぐる政治的陰謀と日本からの慰霊団行方不明事件を重ねる作品として整理されています。中央公論新社公式で受賞事実と新潮社刊であることを確認できますが、梗概細部は主に二… 第29回 谷崎賞
- 585 1993 解体屋外伝 かいたいやがいでん 1993年に講談社から刊行、2013年に河出書房新社の「いとうせいこうレトロスペクティブ」として復刊。Books/JPROは「洗脳のプロ・洗濯屋」と「洗脳外しのプロ・解体屋」の闘いとして紹介している。
- 586 1993 デッドシティ・レイディオ 『デッドシティ・レイディオ』は、清水アリカの小説単行本です。NDLサーチでは1993年9月に集英社から刊行された197ページの図書、NDC8 913.6として確認できます。出版書誌データベースでも、ISBN 9784087740271、4-6判、200ページ、1993年発行の書誌が確認できます。
- 587 1993 海で三番目につよいもの 『海で三番目につよいもの』は、久間十義が1993年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 588 1993 花野 『花野』は、村田喜代子が1993年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 589 1992 イビサ イビサ 『イビサ』は、精神病院を退院したマチコが男に誘われてパリへ渡り、ドラッグ、セックス、アルコールに浸りながらモロッコ、バルセロナ、イビサ島へ漂流する物語です。海外の都市と身体の破滅感を通じて、自己を失いながらなお移動していく感覚を描きます。初期村上龍の暴力的な欲望と都市的な不安が濃く出た長篇です。
- 590 1992 蛇を殺す夜 へびをころすよる 『蛇を殺す夜』は、奥泉光が1992年に集英社から刊行した作品集です。著者ページでは「暴力の舟」「蛇を殺す夜」を収録する単行本として確認できます。
- 591 1992 運転士 うんてんし 『運転士』は、郊外住宅地を走るバス運転士の日常を通じて、家族関係の崩壊と男性の内面を描く作品です。職業の反復的な動きと、家庭の不安定さが重なり、都市郊外の生活の閉塞感が浮かびます。藤原智美の社会観察眼が出た芥川賞受賞作です。 第107回 芥川賞
- 592 1992 犬婿入り いぬむこいり 『犬婿入り』は、塾講師の女性が犬に変身した男性と同棲する物語を軸に、言語、身体、変身の主題を展開する作品です。民話的な想像力を現代の都市生活へ持ち込み、人間と動物、女と男、日本語と外部の境界を揺らします。多和田葉子の越境的で実験的な文体がよく現れた芥川賞受賞作です。 第108回 芥川賞
- 593 1992 螺旋の肖像 らせんのしょうぞう 『螺旋の肖像』は、別唐晶司が第24回新潮新人賞を受賞したデビュー作です。医学研究科に在籍していた著者の経歴もあり、身体や認識をめぐる知的な題材が想起されますが、今回確認できた公開資料は受賞発表と掲載誌書誌が中心です。内容面は今後の追加調査が必要です。 第24回 新潮新人賞
- 594 1992 赤い橋の下のぬるい水 『赤い橋の下のぬるい水』は、辺見庸が文藝春秋から刊行した作品集です。表題作に加え、「ナイト・キャラバン」「ミュージック・ワイア」を収めます。身体性や欲望、社会の周縁にある人びとの気配を、現実の手触りと寓話的な濃さを行き来する文体で描いています。
- 595 1992 ヒ・ノ・マ・ル ひのまる 『ヒ・ノ・マ・ル』は、大岡玲が1992年に新潮社から刊行した長篇小説です。NDLサーチでは、新潮社1992年6月刊、213ページ、ISBN 4-10-386301-3の単行本として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出誌は確認できなかったため、紹介は書誌情報を中心に整理しています。
- 596 1992 慶応わっふる日記 『慶応わっふる日記』は、村田喜代子が1992年に潮出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 597 1991 自動起床装置 じどうきしょうそうち 『自動起床装置』は、通信社の仮眠室で眠る人々を起こす「起こし屋」を主人公にした作品です。眠りを管理する仕事を通して、現代の労働、身体、文明の疲弊を問います。ジャーナリストでもある辺見庸の観察眼と、実験的な文体が交差する芥川賞受賞作です。 第105回 芥川賞
- 598 1991 かかとを失くして かかとをなくして 『かかとを失くして』は、ドイツ語圏に渡った日本人女性の言語と身体の変容を、夢幻的な語りで描く多和田葉子のデビュー作です。足元の感覚を失うというイメージが、母語の外へ出る不安や、身体の境界の揺らぎにつながっていきます。越境文学・エクソフォニーの出発点として重要な作品です。 第34回 群像新人賞
- 599 1991 十二階 じゅうにかい 『十二階』は、小口正明が第23回新潮新人賞を受賞した作品です。NDLでは『新潮』1991年11月号と受賞作発表記事を確認できる一方、詳細なあらすじや批評は今回確認できませんでした。作品内容の断定は避け、現時点では新人賞受賞作としての書誌情報を中心に扱います。 第23回 新潮新人賞
- 600 1991 お供え おそなえ 『お供え』は、盆棚の供え物をめぐって、生者と死者の境界が奇妙に揺らぐ幻想的な短篇です。家庭内の儀礼を起点に、死者への記憶、ユーモア、薄気味悪さが同居します。吉田知子らしい、日常のリアリズムを少しずつ異界へずらしていく語りが読みどころです。 第19回 川端賞
- 601 1991 ワールズ・エンド・ガーデン わーるず・えんど・がーでん 1991年に新潮社から刊行され、2013年に河出書房新社の「いとうせいこうレトロスペクティブ」として復刊された小説。Books/JPROの復刊版内容紹介は、引用・リピート・連想、ゲーム、コトバの混沌、トーキョーの焦燥と昂揚を強調している。
- 602 1991 耳納山交歓 『耳納山交歓』は、村田喜代子が1991年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 603 1991 真夜中の自転車 : 作品集 『真夜中の自転車 : 作品集』は、村田喜代子が1991年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 604 1990 N・P エヌ・ピー 『N・P』は、未完の遺作小説をめぐって、翻訳者の死の影に引き寄せられる若者たちを描く長篇です。小説内のテキストと現実の人間関係が絡み合い、恋愛、近親性、喪失の感覚が静かに濃くなっていきます。吉本ばなならしい平明な一人称の語りで、危うい関係の重さを軽やかな文体に沈めています。
- 605 1990 TVピープル てれびぴーぷる 『TVピープル』は、表題作を中心に、都市生活の中へ説明のつかない存在や出来事が入り込む短篇集です。テレビ、飛行機、眠りといった日常的なモチーフが、孤独や現実感のずれを浮かび上がらせます。村上春樹の短篇らしく、平易な一人称の語りが不穏な寓話性へ滑っていく感覚が読みどころです。
- 606 1990 村の名前 むらのなまえ 『村の名前』は、中国奥地を舞台に、ある村の名をめぐる記憶と謎を追う中篇です。旅と聞き書きのような手触りを持ちながら、地名が個人や共同体の歴史をどのように抱え込むかを幻想的に描きます。辻原登のデビュー期の越境感覚と、語りの迷宮性が読みどころです。 第103回 芥川賞
- 607 1990 妊娠カレンダー にんしんかれんだー 『妊娠カレンダー』は、妊娠した姉とその夫と同居する「私」が、妊娠の経過を日々観察していく短篇です。生命の誕生を祝福だけでなく、匂い、食べ物、身体への嫌悪や違和感として描く点が際立ちます。淡々とした一人称の記録が、家族の親密さの裏にある不穏さを増幅します。 第104回 芥川賞
- 608 1990 渇水 かっすい 『渇水』は、水道料金を滞納した家庭の給水停止に向かう水道局員・岩切俊作と、その家の子どもたちをめぐる中篇です。行政の仕事としての「停止」と、生活の水を断たれる人々の現実がぶつかります。乾いた社会派リアリズムで、貧困、労働、家庭の孤立を描く作品です。 第70回 文學界新人賞
- 609 1990 狂いバチ、迷いバチ くるいバチ、まよいバチ 『狂いバチ、迷いバチ』は、竹野昌代が第71回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1990年12月号の書誌を確認できますが、公開された詳細なあらすじ・書評は今回確認できませんでした。題名の不穏さを含め、現時点では新人賞受賞作としての書誌的紹介を中心に扱います。 第71回 文學界新人賞
- 610 1990 革命のためのサウンドトラック かくめいのためのさうんどとらっく 『革命のためのサウンドトラック』は、言葉が相手に届かず、ノイズのように増殖していく感覚を描く清水アリカのデビュー作です。筋を一直線に追わせるよりも、音、言葉、退廃的な気分を重ねて、都市の閉塞感を前景化します。言語への不信と終末的なムードが交差する、実験色の強い新人賞受賞作です。 第14回 すばる文学賞
- 611 1990 世紀末鯨鯢記 せいきまつ げいげいき 『世紀末鯨鯢記』は、南氷洋の捕鯨船を舞台に、悪夢と現実がせめぎ合う奇想の長篇です。白鯨のモチーフを思わせる巨大な生きものへの執着を通じて、バブル期の狂騒や身体感覚の不安を寓話的に浮かび上がらせます。海上の閉じた空間が、現実離れした不穏さを強めています。 第3回 三島賞
- 612 1990 白い山 : 作品集 『白い山 : 作品集』は、村田喜代子が1990年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 613 1989 表層生活 ひょうそうせいかつ 『表層生活』は、都市に生きる現代人の浮遊した意識と、薄く接続された人間関係を描く中篇です。言葉や情報、自己意識が「表層」として流れていく感覚を通じて、実存の手応えのなさを問い直します。都市的な乾きと、テクノロジー時代の言語感覚が前面に出た作品です。 第102回 芥川賞
- 614 1989 YES・YES・YES いえす・いえす・いえす 『YES・YES・YES』は、新宿のゲイバーで働く青年ホストの日常と欲望を描く比留間久夫のデビュー作です。性の解放感と都市の夜の空気を前面に出し、当時の純文学にクィアな身体感覚を持ち込んだ作品として読めます。軽さと痛みが同居する、都市的な性の物語です。 第26回 文藝賞
- 615 1989 聖マリア・らぷそでぃ 『聖マリア・らぷそでぃ』は、久間十義が1989年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 616 1989 ルームメイト 『ルームメイト』は、村田喜代子が1989年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 617 1989 黄昏のストーム・シーディング たそがれのすとーむしーでぃんぐ 『黄昏のストーム・シーディング』は、大岡玲が1989年に文藝春秋から刊行した初期の長篇です。タイトルが示す人工的な気象操作のイメージを背景に、時代の不安や青年の感覚を小説へ移し替える作品として整理できます。今回確認できた公開情報は書誌と受賞歴が中心のため、内容紹介は抑制的に記録します。 第2回 三島賞
- 618 1988 ダンス・ダンス・ダンス だんす・だんす・だんす 『羊をめぐる冒険』の後日談として、「僕」が札幌のイルカホテルを再訪し、失われた女性や過去の気配を追っていく長編。現実のホテル、芸能界、ハワイ、羊男のいる異界がつながり、踊り続けることだけが世界との接続の方法として示される。1980年代の都市的な消費社会を背景に、喪失、記憶、孤独を冒険小説のリズムでた…
- 619 1988 キルプの軍団 キルプのぐんだん 大江健三郎が1988年前後に発表した作品で、寓話的な構図と共同体への問いを含む後期作品群の一つ。公開書誌では全小説・小説集への収録も確認でき、単独作としてだけでなく大江の長い創作系列の中で読む必要がある。内容細部の公開情報は限定的なため、紹介は現段階では主題の方向づけにとどめる。
- 620 1988 トパーズ トパーズ SMクラブで働く女性たちの身体、欲望、孤独を都市の夜の中に描く村上龍の作品。性の描写は刺激としてだけでなく、支配、痛み、金銭、自己感覚をめぐる問いとして機能する。乾いた文体で、バブル期都市の消費と身体の商品化を突きつける。
- 621 1988 ノーライフキング 『ノーライフキング』は、ゲームをめぐる噂と子どもたちのコミュニケーションを通して、情報化社会の不安と熱狂を描くいとうせいこうの小説です。都市の子ども文化、メディア、流通する物語が重なり、現実とゲームの境界が揺らいでいきます。
- 622 1987 愛と幻想のファシズム あいとげんそうのファシズム 経済危機に揺れる日本を舞台に、狩猟者トウジがカリスマ的な政治運動を率いていく長編。金融、メディア、暴力、共同体の欲望が絡み合い、個人の野性や身体性が国家的な幻想へ接続されていく過程を描く。近未来政治小説の形を取りながら、1980年代末の消費社会と権力への不安を大きなスケールで物語化した作品。
- 623 1987 マネーゲーム まねーげーむ 『マネーゲーム』は、久間十義が河出書房新社から刊行したデビュー期の小説作品です。公的書誌で題名・著者・出版社を確認し、受賞歴は文藝賞の受賞作一覧で確認できる範囲に限定して登録しました。
- 624 1987 1.9m[2]の孤独 いちてんきゅうへいほうめーとるのこどく NDLサーチで1987年10月刊、学芸書林、350ページ、ISBN 4-905640-04-0の単行本として確認できる未収録作品。
- 625 1986 M/Tと森のフシギの物語 エムティーともりのフシギのものがたり 四国の森に伝わる物語を、M=母権的な存在とT=トリックスター的な存在の対立・変奏として語る長編。村の伝承、神話、人類学的な型を組み合わせ、作家の幼年期の森を大きな物語装置へ変えていく。短い断章を積み重ねる構成で、個人の記憶と共同体の神話が互いに照らし合う。
- 626 1986 パン屋再襲撃 ぱんやさいしゅうげき 表題作は、深夜に激しい空腹に襲われた夫婦が、過去の「パン屋襲撃」の呪いを解くため再び街へ出る奇妙な短篇。文春文庫公式ページでは「象の消滅」や“ねじまき鳥”の原型となる作品を含む初期短篇集として紹介されており、食欲、結婚生活、都市の空白が寓話的に結びつく。軽い会話と不穏な空気が同時に進む、初期村上短篇…
- 627 1985 ジョン・レノン対火星人 ジョン・レノンたいかせいじん 高橋源一郎の初期作品で、音楽、SF的な想像力、文学の制度を横断するような題名の通り、ジャンルの境界を遊びながら崩していく。物語の筋だけでなく、固有名やサブカルチャーの断片が語りを動かす点に読みどころがある。実験的な笑いと不穏さが同居する、ポストモダン文学の入口に置ける作品。
- 628 1985 河馬に嚙まれる かばにかまれる 連合赤軍事件の記憶や、その後を生きる人々の傷を背景にした連作短篇集。表題作では、政治的暴力の記憶と個人の身体感覚が奇妙に結びつき、過去を説明しきれないまま抱え続ける人間の多義性が浮かび上がる。寓話的な動物イメージと自己照射的な語りを通して、1970年代の事件の残響を1980年代の生へ引き寄せる。 第11回 川端賞
- 629 1985 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド せかいのおわりとハードボイルド・ワンダーランド 二つの物語が交互に進む40章構成の長編。〔ハードボイルド・ワンダーランド〕では、老科学者によって意識の核に特殊な思考回路を組み込まれた計算士の「私」が、地下の闇に潜む「やみくろ」や組織の抗争に巻き込まれながら、回路に隠された秘密を追う。〔世界の終り〕では、高い壁に囲まれた静かな街で、「僕」が一角獣の… 第21回 谷崎賞
- 630 1985 ゼロはん ぜろはん 『ゼロはん』は、第28回群像新人文学賞の小説当選作となった李起昇の作品です。講談社公式の商品ページでは、オートバイ事故で親友を失った在日韓国人青年・朴英浩が父祖の地である韓国を訪れ、二つの国のはざまで自己の不確かさに向き合う物語として紹介されています。喪失、在日性、越境的なアイデンティティを扱うデビ… 第28回 群像新人賞
- 631 1985 ジパング じぱんぐ 『ジパング』は、吉目木晴彦のデビュー作にあたる第28回群像新人文学賞優秀作です。今回確認できた公開情報は講談社公式の受賞一覧に限られるため、作品内容の説明は新人賞で確認できる書誌・受賞事実に限定します。
- 632 1985 過越しの祭 すぎこしのまつり ロサンゼルスに暮らす日本人女性の視点から、日系、白人、黒人が混在するアメリカ社会の文化的・人種的摩擦を描く。ユダヤ教の「過越しの祭」を題材に、異文化のなかで自分の位置を測り直す過程が物語の軸になる。移民の生活感覚と信仰儀礼が交差し、理解と断絶の両方を浮かび上がらせる作品。 第17回 新潮新人賞
- 633 1984 螢・納屋を焼く・その他の短編 ほたる・なやをやく・そのたのたんぺん 「螢」「納屋を焼く」などを収めた初期短編集。新潮社の紹介では「螢」が『ノルウェイの森』の原点とされ、学生時代の喪失と届かない温もりが抑制された一人称で描かれる。「納屋を焼く」は日常会話の奥に説明されない空白を置き、静かな恋愛小説と不穏な幻想が同じ冊子のなかで並ぶ構成になっている。
- 634 1984 夢遊王国のための音楽 ゆめゆうこくのためのおんがく 千々石雅という青年の頭の中で鳴る音楽が、妄想的な思考と語る言葉を加速させていく作品。島田雅彦公式サイトは、管理と支配に満ちた現在を生きる若者の矛盾と混乱を、クラシック音楽形式の実験的手法で描いた作品として紹介している。音楽形式を小説の構造に取り込み、現実感覚の不安定さを文体そのものに反映させる点が読… 第6回 野間新人賞
- 635 1983 杢二の世界 もくじのせかい 『杢二の世界』は、仕事場のビル屋上から墜落死した弟・杢二の記憶を、兄の視点からたどる短篇です。社会の速度や規範からずれた弟の感性を通して、家族の距離、都市で生きることの危うさ、死者の残す違和感を浮かび上がらせます。悲劇を説明しすぎず、残された者の語りに不穏な余白を残す作品です。 第90回 芥川賞
- 636 1983 犬のように死にましょう いぬのようにしにましょう 『犬のように死にましょう』は、コピーライター出身の高橋一起のデビュー作にあたる文學界新人賞受賞作です。題名からも死や自己否定のイメージが強く、既存情報では受賞・初出確認が中心です。詳細な筋は未確認のため、作品紹介はデビュー作としての位置づけと題名が喚起する不穏さに留めています。 第56回 文學界新人賞
- 637 1983 虹のカマクーラ にじのかまくーら 『虹のカマクーラ』は、東京で出会った黒人青年ボブとタイ人少女ソムシーが、虹を見たという鎌倉へ向かう旅を描く作品です。既存データでは、外国人を主人公に据え、周囲の偏見や暴力を扱う先駆的な長篇として整理されています。内容紹介は主にAmazon書誌と個人書評に依拠しており、出版社公式の梗概は今回確認できま… 第7回 すばる文学賞
- 638 1983 国旗が垂れる こっきがたれる 『国旗が垂れる』は、尾辻克彦が1983年に中央公論社から刊行した短篇集の表題作です。NDLサーチでは、同書に『国旗が垂れる』『やめる』『湯の花』『露地裏の紙幣』『風の吹く部屋』『殴られる男』『バーバー「肌ざわり」』の7篇が収録されていることを確認できます。公開Webで詳しい内容紹介や初出誌は確認でき…
- 639 1982 羊をめぐる冒険 ひつじをめぐるぼうけん 広告代理店で働く「僕」は、耳に星形の斑紋を持つ謎の羊を探すよう依頼され、ガールフレンドとともに北海道へ向かう。右派の大物、秘書、羊男、そして姿を消した鼠の痕跡が重なり、探偵小説めいた筋立ては次第に幻想と喪失の物語へ変質していく。初期の軽やかな一人称の語りを保ちながら、政治的な力、戦後の記憶、個人の空… 第4回 野間新人賞
- 640 1982 佐川君からの手紙 さがわくんからのてがみ 『佐川君からの手紙』は、1981年のパリ人肉事件を下敷きに、犯人から届く手紙と映画化をめぐる交渉を通して事件へ接近していく作品です。唐十郎らしいアングラ演劇的な誇張と越境感が、小説の形で犯罪、欲望、表現の倫理を揺さぶります。実在事件を扱うため、読後には不穏さと表現上の危うさが強く残ります。 第88回 芥川賞
- 641 1982 沙耶のいる透視図 さやのいるとうしず 『沙耶のいる透視図』は、ビニ本業界を舞台に、カメラマン、編集者、謎めいたモデル・沙耶の関係が破滅へ向かう物語です。性的な視線、撮ること、消費される身体が重なり、愛と精神の崩壊が乾いた都市の空気の中で描かれます。後に映画化されたことも、作品の映像的な題材性を示しています。 第6回 すばる文学賞
- 642 1981 家族ゲーム かぞくげーむ 『家族ゲーム』は、受験競争に巻き込まれた小市民一家が、落第生の家庭教師を迎えることで崩れていく過程を描く作品です。家庭、学校、学歴社会の圧力を、家族内の不穏なゲームとして見せるところに鋭さがあります。後に森田芳光監督・松田優作主演で映画化され、家族と教育をめぐる1980年代的な不安を広く印象づけまし… 第5回 すばる文学賞
- 643 1980 コインロッカー・ベイビーズ コインロッカー・ベイビーズ 1972年夏、コインロッカーに遺棄されたキクとハシは、施設と養家を経て、それぞれ異なるかたちで母の不在と都市への怒りを抱え込む。ハシは歌声とショービジネスに、キクはアネモネや毒物ダチュラをめぐる破壊衝動に引き寄せられ、東京は欲望と暴力が増殖する異様な空間として立ち上がる。棄児、身体、都市、音の記憶を… 第3回 野間新人賞
- 644 1980 七人の敵が居た しちにんのてきがいた 石川達三が1980年に刊行した後期長編。公開情報では内容紹介や主要書評が乏しいため、現時点では同時期の石川作品群の一冊として書誌を確定し、詳細な筋や評価は保留する。社会と個人の摩擦を描いてきた石川の作家的関心に照らし、孤立や対立の構図を読むための候補作として位置づける。
- 645 1980 父が消えた ちちがきえた 『父が消えた』は、父の遺骨を納める墓地を見に中央線で高尾へ向かう「私」の意識をたどる中篇です。現在の車中の時間に、父をめぐる記憶や前衛芸術家としての作者の感覚が交錯し、家族小説でありながら形式そのものを揺さぶる作品になっています。死者を送る手続きの物語を、記憶の断片と都市郊外の移動感覚で組み立てる点… 第84回 芥川賞
- 646 1980 ギンネム屋敷 ぎんねむやしき 『ギンネム屋敷』は、1950年代の米軍占領期の沖縄・浦添を舞台に、ギンネムの茂る屋敷に住む朝鮮人男性への疑惑と暴力を描く又吉栄喜のデビュー作です。沖縄、朝鮮人、米軍占領という複数の歴史的圧力が、地域社会の空気の中に沈み込んでいます。土地の記憶と差別の構造を読む作品です。 第4回 すばる文学賞
- 647 1980 黒革の手帖 くろかわのてちょう 『黒革の手帖』は、金銭、欲望、都市の権力関係をめぐる清張後期の代表的長篇として登録候補にできる。今回の調査ではNDLの新潮社単行本書誌を基礎情報として採用する。
- 648 1979 同時代ゲーム どうじだいゲーム 四国の森の谷間にある「村=国家=小宇宙」を、手紙・神話・歴史の断片を重ねて語り直す実験的長編。語り手は村の起源、反乱、血縁、移住の記憶を再編し、個人の物語ではなく共同体が自分自身を語る仕組みそのものを小説化する。大江の森の神話と戦後政治への問いが、濃密な語りの構造として展開される。
- 649 1979 光の領分 ひかりのりょうぶん 『光の領分』は、津島佑子の初期代表作で、第1回野間文芸新人賞受賞作です。講談社公式は、夫との別居から離婚に至る若い母と幼い娘の一年を、12篇の短篇連作で描く作品として紹介しています。揺れ動く女親の不安と生活感を、連作形式で精妙に組み立てる点が読みどころです。 第1回 野間新人賞
- 650 1979 愚者の夜 ぐしゃのよる 『愚者の夜』は、青野聰が第81回芥川龍之介賞を受賞した小説です。日本文学振興会の公式一覧では1979年上半期の受賞作として掲載誌『文學界』とともに記録され、NDLサーチでは1979年文藝春秋版および1983年文春文庫版の書誌を確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概は確認できなかったため、作品紹… 第81回 芥川賞
- 651 1977 海の向こうで戦争が始まる うみのむこうでせんそうがはじまる 村上龍が『限りなく透明に近いブルー』後に発表した初期長編。題名の通り、戦争が遠くで始まるという感覚を、若者の身体や都市的な不安と接続する。暴力、メディア、距離感のずれを通じて、初期村上龍の社会への鋭い視線を読む作品である。
- 652 1976 限りなく透明に近いブルー かぎりなくとうめいにちかいブルー 米軍基地の街・福生のハウスを舞台に、19歳のリュウとその仲間たちの日々を描く。ドラッグとロック、黒人兵たちとの乱痴気騒ぎ、セックスと暴力に明け暮れる若者たちの退廃を、感傷を排した即物的な描写と、ガラスの破片や雨に濡れた滑走路といった鮮烈なイメージの連なりで定着させる。荒廃の只中にいながらどこか透明な… 第75回 芥川賞
- 653 1976 ピンチランナー調書 ピンチランナーちょうしょ 大江健三郎が1976年に刊行した実験的長編。父子関係、身体、記録や調書の形式を通して、現実と幻想の境界を揺らす。障害のある子をめぐる大江の継続的主題が、メタフィクション的な構成と結びつく作品である。
- 654 1973 洪水はわが魂に及び こうずいはわがたましいにおよび 核シェルターに籠る父子と「自由航海団」の若者たちの交流と破局を描く長編。核時代の不安、障害のある子との関係、共同体への希求が、大江らしい寓話的な構図で結びつく。個人の魂の危機を、世界的な破局の想像力へ接続する作品。 第26回 野間文芸賞
- 655 1973 箱男 はこおとこ 新潮社1973年刊。現行新潮文庫ページ、NDL、Books/JPROで確認できる。2024年に映画化関連の再注目もある。
- 656 1970 化石の森 かせきのもり 政界・財界の腐敗を描いた石原慎太郎の長編政治小説。若者の感覚を描いた初期作とは違い、権力の硬直と社会の閉塞を「化石」のイメージで捉える。篠田正浩監督による映画化もあり、政治小説としての石原を確認できる作品。
- 657 1969 われらの狂気を生き延びる道を教えよ われらのきょうきをいきのびるみちをおしえよ 父と障害のある息子、狂気や暴力にさらされた若者たちをめぐる中短篇を束ねた作品集。表題作では家族の内部にある痛みと外部世界の不穏が結びつき、個人的な危機が時代の狂気をどう生き延びるかという問いへ広がる。大江が1960年代に深めた身体・父性・責任の主題を、寓話性と切迫した心理描写で展開する。
- 658 1968 青春の蹉跌 せいしゅんのさてつ 夢を持つ青年が挫折と欲望に追い詰められていく過程を描いた長編。青春の理想が、社会的成功への欲望や恋愛、罪の意識によって崩れていく。ベストセラーとなり映画化もされた、石川達三の通俗性と社会批評が接続する作品である。
- 659 1967 万延元年のフットボール まんえんがんねんのフットボール 友人の死と家族の危機を抱えた蜜三郎が、弟の鷹四とともに四国の谷間の村へ戻り、百年前の一揆の記憶と向き合う長編。兄弟の対立、障害をもつ子の存在、共同体に残る暴力の記憶が、過去と現在を重ねる構成の中で展開する。閉ざされた村落を神話的な舞台として、個人史と共同体史、政治的熱狂と責任の問題を絡み合わせた大江… 第3回 谷崎賞
- 660 1967 燃えつきた地図 もえつきたちず 新潮社1967年刊。現行新潮文庫ページ、NDL、Books/JPROで確認できる代表的長篇。
- 661 1966 金環蝕 きんかんしょく 政界と財界の癒着を描いた石川達三の政治小説。ダム利権をめぐる汚職を告発的に扱い、個人の倫理よりも制度と権力の腐敗を前景化する。社会派作家としての石川の問題意識が、政治経済の構造へ向けられた作品である。
- 662 1965 抱擁家族 ほうようかぞく 『抱擁家族』は、妻とアメリカ兵との関係をきっかけに、家庭が内側から崩れていく過程を描く長篇です。夫婦、子ども、住居、英語、アメリカ的生活様式が絡み合い、戦後日本の家族が抱えた滑稽さと痛みを浮かび上がらせます。 第1回 谷崎賞
- 663 1964 傷だらけの山河 きずだらけのさんが 石川達三が1960年代半ばに刊行した社会小説。題名の「山河」は個人だけでなく社会全体の傷を想起させ、戦後復興の陰にある矛盾や疲弊を読む軸を与える。公開梗概は薄いが、政治・経済・生活の歪みを扱う作品として暫定的に整理する。
- 664 1964 個人的な体験 こじんてきなたいけん 脳に重い障害をもつ子の誕生に直面した青年バードが、父になることへの恐怖と逃避願望に追い詰められていく長編。酒、性、アフリカへの空想に逃げ込むバードの混乱を追いながら、私的な出来事が責任、倫理、家族の問題へ変わっていく過程を描く。滑稽さと残酷さが同居する語り口で、父性を美談にせず、引き受けることの困難…
- 665 1964 日常生活の冒険 にちじょうせいかつのぼうけん 大江健三郎の1960年代の長編で、「日常生活」と「冒険」という相反する語を重ねる題名が印象的な作品。平凡な生活の内部に、暴力、性、幻想的な逸脱が入り込む大江らしい構図を持つ。日常の足場が崩れていく不穏さを読む作品である。
- 666 1964 他人の顔 たにんのかお 単行本初刊は講談社、現行新潮文庫ページとNDLで確認可能。既存収録の『壁』『砂の女』を補う中核作。
- 667 1963 叫び声 さけびごえ 大江健三郎が1963年に刊行した作品で、切迫した題名の通り、若者の不安や社会的暴力を強い声として立ち上げる。公開情報では細部の梗概は限定的だが、初期大江の身体性、政治性、孤立感を読む作品として整理できる。全小説・作品集への収録も確認できる。
- 668 1963 性的人間 せいてきにんげん 大江健三郎が性と人間存在を正面から扱った初期作品。性を単なる欲望としてではなく、身体、羞恥、孤独、社会への反抗が交差する場として描く。初期大江の挑発的な主題設定と、重くねじれた文体を読む作品である。
- 669 1962 砂の女 すなのおんな 『砂の女』は、昆虫採集に来た男が砂丘の穴の底にある家へ閉じ込められ、女とともに砂を掻き出す生活を強いられる長篇です。脱出への執着と、砂の生活に適応していく感覚が交錯し、自由とは何か、労働とは何かを不条理な寓話として問い直します。
- 670 1959 人間の壁 にんげんのかべ 教育現場を舞台に、教師たちの苦闘と理想を描いた石川達三の大河社会小説。学校という制度を通じて、戦後社会の矛盾、労働、政治的な圧力を広く描く。個人の善意だけでは越えられない「壁」を、複数の人物の視点で見せる作品である。
- 671 1959 われらの時代 われらのじだい 大江健三郎が1959年に刊行した初期長編。敗戦後世代の若者たちの閉塞、政治感覚、性や暴力への傾斜を通じて、「われら」と呼べる時代の不安を描く。初期大江の実存的な焦燥と社会への違和感が前面に出る作品。
- 672 1959 ゼロの焦点 ぜろのしょうてん 『ゼロの焦点』は、既存の『点と線』と同じく清張の社会派推理長篇として扱える book-form 候補です。今回の候補では新潮社文庫版を中心に、刊行確認済みの作品として整理する。
- 673 1958 完全な遊戯 かんぜんなゆうぎ 若者たちの倦怠と残虐な「遊び」を描いた石原慎太郎の中篇。遊戯の名の下に暴力がエスカレートしていく構図は、戦後若者文化への不安と反発を強く帯びる。太陽族文学の享楽性の裏側にある空虚さを読む作品である。
- 674 1958 亀裂 きれつ 石原慎太郎が1950年代に刊行した作品で、戦後社会の価値観のひび割れを思わせる題名を持つ。公開情報では細部の梗概が少ないため、初期石原の若者像や社会への挑発を含む作品として暫定整理する。個人と社会、欲望と規範の間に走る亀裂を読む軸を置く。
- 675 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自…
- 676 1958 飼育 しいく 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 第39回 芥川賞
- 677 1958 死者の奢り ししゃのおごり 大学の死体処理室でアルバイトをする若者たちを描く、初期大江の代表的な短篇。死者は畏怖の対象であると同時に、運搬され、数えられ、処理される物質として現れ、生と死の境界が事務的な労働の場に引き寄せられる。若い語り手の冷えた感覚と不安を通して、戦後の身体感覚、死への距離、社会の片隅に置かれた労働の異様さが…
- 678 1958 海と毒薬 うみとどくやく 『海と毒薬』は、戦争末期の大学病院で行われた米軍捕虜の生体解剖事件を題材に、医師や学生たちがなぜ残虐行為に加担していくのかを描く長篇です。遠藤周作が繰り返し問う、罪、良心、信仰の不在を、日本の戦争責任と結びつけて考える作品です。
- 679 1957 点と線 てんとせん 『点と線』は、香椎の海岸で発見された男女の死をめぐり、鉄道時刻表のわずかな隙間から事件の構図を解いていく長篇です。トリックの精密さに加え、官僚機構や汚職の気配を物語の奥に置くことで、松本清張の社会派推理の方向を決定づけました。
- 680 1957 パニック ぱにっく 『パニック』は、鼠の大量発生という異常事態を題材に、行政の硬直、情報の混乱、集団心理の連鎖を描く開高健の初期短篇です。社会の仕組みが危機に直面したときに露わになる滑稽さと恐怖を、寓話的な筆致で浮かび上がらせます。
- 681 1956 処刑の部屋 しょけいのへや 大学生の性的奔放と暴力を描いた石原慎太郎の初期代表短篇。若者の身体感覚、退屈、残酷さを挑発的に描き、「太陽族」文学の衝撃を広げる作品となった。戦後の新しい若者像を、道徳的な安定ではなく暴力と欲望の側から提示する。
- 682 1956 金閣寺 きんかくじ 『金閣寺』は、1950年の金閣寺放火事件に着想を得て、吃音と自己嫌悪を抱える若い僧が美に囚われていく過程を描く長篇です。金閣の絶対的な美が主人公の現実感を侵食し、破壊衝動へ変わるまでを緊密な心理描写で追います。三島由紀夫の美意識とニヒリズムが最も鋭く結びついた戦後文学の代表作です。
- 683 1955 白い人 しろいひと 『白い人』は、ナチ占領下のフランスを舞台に、拷問と背徳を通して悪の問題を問う遠藤周作の中篇です。信仰の有無を単純に裁くのではなく、人間が悪へ傾く瞬間を内面から探ります。カトリック作家としての遠藤の問題意識が、以後の『沈黙』などへつながる出発点として読めます。 第33回 芥川賞
- 684 1953 最後の共和国 さいごのきょうわこく 石川達三が1950年代に刊行した政治性の強い題名を持つ作品。共同体や国家の理念がどのように崩れ、個人の生活へ影を落とすのかを考える社会小説として読める。公開梗概が少ないため、政治的寓意と戦後社会批判を中心に暫定整理する。
- 685 1952 真空地帯 しんくうちたい 『真空地帯』は、軍隊内務班という閉じた空間で、暴力と服従が日常化していく構造を描いた長篇です。野間宏自身の軍隊経験を背景に、命令・階級・沈黙が個人を追い詰める過程を厚いリアリズムで追います。戦争を前線の英雄譚ではなく、組織の非人間性として描いたところに作品の強さがあります。
- 686 1951 風にそよぐ葦 かぜにそよぐあし 戦後の混乱期を生き抜く民衆の姿を、新聞社を舞台に描いた長編社会小説。報道、政治、生活の不安が交差する場として新聞社を置き、戦後民主主義の理想と現実のずれを描く。複数の人物を通じて社会全体を見渡す、大河的な読み味がある。
- 687 1951 壁 かべ 『壁』は、ある朝突然に名前を失った男S・カルマ氏の不条理な遍歴を描く安部公房の前衛的中篇です。現実の制度や所有の感覚がずれていく過程を、寓話的で実験的な文体によって追い詰めます。戦後日本文学に不条理文学・シュールレアリスムの感覚を持ち込んだ、安部公房の出発点となる作品です。 第25回 芥川賞
- 688 1950 神坂四郎の犯罪 かみさかしろうのはんざい 犯罪を題名に据えた石川達三の長編。個人の罪を社会の中でどう見るかという、石川の社会派的な問題意識に連なる作品として読める。公開情報では細部の筋が限定的なため、犯罪、責任、共同体の視線を主題に持つ作品として暫定分類する。
- 689 1946 暗い絵 くらいえ 『暗い絵』は、敗戦直後の文学状況の中で、戦時下に屈折した青年の内面と、思想・身体・性をめぐる不安を描いた野間宏の初期代表作です。『真空地帯』の軍隊批判へつながる、戦後文学の内面描写と社会批判の出発点として読むことができます。
- 690 1945 生きてゐる兵隊 いきてゐるへいたい 南京攻略戦に従軍した日本兵の実態を描いた戦争小説。戦場の兵士を英雄化せず、加害と疲弊のただ中に置くことで、戦争が人間の身体と倫理をどう壊すかを見つめる。発売直後に発禁処分を受けた問題作として知られ、石川達三の社会的リアリズムを代表する重要作である。
- 691 1936 深海魚 しんかいぎょ 石川達三が1930年代に発表した初期作品で、改造社版などの書誌が確認できる。公開情報では細部の梗概や同時代評が限られるため、現段階では初期社会派作家としての石川が、人間の暗部や社会の圧力へ視線を向けていた時期の一作として整理する。題名の「深海魚」が示す閉塞感を手がかりに、孤立した人物像を読む候補作と…