おいしいごはんがたべられますように
おいしいごはんが食べられますように
紹介 About
食品会社の支店を舞台に、三人の社員の関係を描く。そつなく働くが食への関心が薄い二谷、体が弱く周囲に守られ、手作り菓子を職場に持ってくる芦川、芦川の分の仕事まで引き受けてしまう押尾。二谷は芦川と付き合いながら、「おいしいごはん」を大切にする価値観への苛立ちを募らせ、押尾は守られる芦川への反感を二谷とひそかに共有する。誰も明確な悪人ではないのに息苦しい職場の力学を、食べることと働くことを通して浮かび上がらせ、善意や思いやりの形をした同調圧力の不気味さを描き出す。
評価 Reception
第167回芥川賞の選考では、松浦寿輝が候補作中「ずば抜けて面白い」と最も強く推し、芦川の人物造形を絶賛。川上弘美は登場人物が作者の手を離れて独立している点を、奥泉光は一人称と三人称を組み合わせて関係を立体的に描く方法意識を評価した。一方、島田雅彦は結末に脱力したと述べ、吉田修一は重要な場面が会話文で処理される冗長さを指摘した。受賞後はテレビ番組での紹介も追い風に約1か月で15万部を突破、累計30万部を超えるベストセラーとなり、各国語への翻訳も進んでいる。
出典 Sources
- 芥川賞受賞者一覧|公益財団法人日本文学振興会 評価
第167回芥川賞(2022年上半期)受賞と掲載誌「群像」を確認。
受賞・候補歴 Awards
高瀬隼子のほかの収録作 More
- 001 2019 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 性と身体をめぐる関係性の不均衡を、乾いた観察眼で描いた作品。のちに芥川賞候補・受賞へ続く高瀬隼子のデビュー作。 第43回 すばる文学賞
- 002 2020 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 間橋薫は卵巣の手術を経て、恋人の郁也とも性交渉から距離を置いて暮らしている。そこへ郁也の子を妊娠したという女性が現れ、子どもを育ててくれないかと唐突に持ちかける。愛をどう証明するのか、子どもを産むことと持つことは何を意味するのかを、薫の身体感覚と故郷の家族への思いを通じて問うデビュー作。 第43回 すばる文学賞
- 003 2021 水たまりで息をする みずたまりでいきをする ある日、衣津実は夫が風呂に入らなくなったことに気づく。夫は水が臭く、体につくと痒くなると言って入浴を拒み、やがて雨に濡れに外へ出るようになり、職場で体臭が問題にされる。退職と移住を経て、夫が川で水浴びをする生活へ向かう過程を、夫婦の問題として押し返される妻の視点から描き、身体、清潔、共同生活の境界を…
- 004 2023 いい子のあくび いいこのあくび 表題作は、公私ともに「いい子」でいる語り手が、歩きスマホの人をよけ続けるような小さな譲歩の積み重ねに「割りに合わなさ」を覚えるところから始まる。併録作「末永い幸せ」では結婚式の形式への違和感を通じて、祝福、ジェンダー、幸福の型が問い直される。社会に適応しているように見える人々の内側にあるざらつきを…
- 005 2023 うるさいこの音の全部 うるさいこのおとのぜんぶ ゲームセンターで働く長井朝陽は、「早見有日」のペンネームで書いた小説が文学賞を受賞し出版されてから、職場や友人との関係が少しずつ変化していく。兼業作家であることが知られ、執筆中の小説と現実の境目も揺らぎはじめる。作家デビューの舞台裏を題材にしながら、注目されること、働き続けること、他者の視線に晒され…
- 006 2024 新しい恋愛 あたらしいれんあい 『新しい恋愛』は、「花束の夜」「お返し」「新しい恋愛」「あしたの待ち合わせ」「いくつも数える」の五篇を収める恋愛小説集。Books/JPRO掲載の講談社紹介は、ひと筋縄ではいかない五つの恋のかたちを描く作品集としている。恋愛を自明の感情としてではなく、共感、違和感、距離、期待のずれから見直すところに…
- 007 2024 め生える めばえる 髪の毛が根こそぎ抜ける感染症によって、中高生以下を除く大人がみな髪を失った世界を描く中編。薄毛を気にしてきた真智加は開放感を覚える一方、幼少期に髪を切られた高校生・琢磨は恋人と訪れた占い師の言葉をきっかけに別の悩みに直面する。外見の差異が一見平等化された社会を通して、身体へのまなざし、コンプレックス…