むらさきのスカートのおんな
むらさきのスカートの女
紹介 About
語り手「わたし」の近所には、いつも紫色のスカートをはき「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女がいる。週に一度パン屋でクリームパンを買い、公園の決まったベンチに座る彼女を、「わたし」は毎日観察し続けている。友達になりたい一心で、「わたし」は求人誌をベンチに置くなどして、彼女が自分と同じホテルの清掃の職場で働くよう誘導していく。ところが職場に入った女は思いがけず皆に溶け込み、観察する者とされる者の関係は少しずつ歪んでいく。ユーモアと不気味さが同居する、今村夏子の代表作。
評価 Reception
3度目の候補で第161回芥川賞を受賞。選考では小川洋子が、ピントの外れた人間を描く困難を乗り越えた才能とラストの哀しさを評価し、川上弘美は「作者の声がよく響いていた」と一番に推した。宮本輝も正常と異常の垣根の曖昧さが人間の迷宮につながると本領発揮を認めた一方、島田雅彦は技巧だけでは物足りないと留保した。英訳版 The Woman in the Purple Skirt(ルーシー・ノース訳)が2021年に英米で刊行されるなど海外でも紹介され、国際的な評価を広げた。
出典 Sources
- 『むらさきのスカートの女』|朝日新聞出版 紹介評価書誌
書誌、出版社紹介、第161回芥川龍之介賞受賞表示を確認。
- 芥川賞受賞者一覧|日本文学振興会 評価
第161回受賞作としての確認。
受賞・候補歴 Awards
今村夏子のほかの収録作 More
- 001 2011 こちらあみ子 こちらあみこ 純真なまま周囲とすれ違っていく少女あみ子を描く表題作(太宰治賞受賞作「あたらしい娘」改題)を収めたデビュー単行本。 第24回 三島賞
- 002 2016 あひる あひる 飼いあひる「のりたま」をめぐる家族の不穏な日常を描く表題作ほかを収めた作品集。
- 003 2017 星の子 ほしのこ 中学3年生の林ちひろは、優しい両親に愛されて育った。だが両親は、生まれつき病弱だったちひろが「あやしい宗教」の水で救われたと信じて以来、その教団に深くのめり込んでいる。緑のジャージ姿で頭に濡れタオルを載せる両親は周囲の目を引き、姉は家を出て、親戚との関係も軋んでいく。一目惚れした新任の先生に、夜の公… 第39回 野間新人賞
- 004 2019 父と私の桜尾通り商店街 ちちとわたしのさくらおどおりしょうてんがい 商店街でパン屋を営む父を手伝う娘を描く表題作を中心に、「白いセーター」「ルルちゃん」「ひょうたんの精」「せとのママの誕生日」「モグラハウスの扉」を収めた短篇集。家族、店、近隣関係のごく日常的な場面から、今村夏子らしい微細なずれや不穏さが立ち上がる。平明な語り口の奥で、親しさと疎外、子どもっぽさと残酷…
- 005 2020 木になった亜沙 きになったあさ 『木になった亜沙』は、表題作「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の三篇を収めた作品集。誰かに食べ物を差し出したい少女が木へ、さらに割り箸へと転じる表題作をはじめ、身体の境界や役割が奇妙にずれた状況が、純粋な願いと不穏さを同時に帯びて進む。童話のような単純さと残酷さを併せ持つ語りで…
- 006 2022 とんこつQ&A とんこつきゅーあんどえー 中華料理店「とんこつ」で働く「わたし」は、挨拶を覚えて居場所を得たかに見えるが、新人の「あの女」によって均衡を崩されていく。表題作ほか「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」を収録し、普通の可笑しみの奥から人間の取り返しのつかない瞬間が顔を出す。短く平明な語りが、善意や純粋さの怖さをじわじわ見せる作…