まいおちるむら

舞い落ちる村

谷崎由依 2007 第104回 文學界新人賞 受賞

紹介 About

生まれ育った女系の村では、時間の進み方や年齢の重ね方が定まらず、ものの数も曖昧で、人々は個々の名前すらめったに持たない。「わたし」はその「言葉を信じない」村のあり方に違和感を抱き、村と大学のある街とを行き来するうち、言葉を信じ言葉で武装した人物に強く惹かれていく。土俗的な幻想と言語への意識を重ね合わせた、濃密な比喩に満ちたデビュー作。

評価 Reception

選考委員の浅田彰は「一種の幻想耽美小説」と位置づけ、辻原登は比喩の豊富さと正確さを絶賛した。単行本は2009年2月に文藝春秋から刊行され、谷崎はのち『囚われの島』などで芸術選奨新人賞級の評価を得る書き手に成長した。

受賞・候補歴 Awards

受賞 第104回 文學界新人賞 (2007年上期)

谷崎由依のほかの収録作 More

  1. 001 2017 囚われの島 とらわれのしま 単行本・河出書房新社 囚われの島は、谷崎由依による2017年発表の作品です。単行本は河出書房新社(2017年)。
  2. 002 2018 鏡のなかのアジア かがみのなかのあじあ 単行本・集英社 チベット、台湾、クアラルンプール、京都など、アジアの土地をモチーフにした全5篇の幻想短篇集。集英社公式は、少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、台湾・九份の村を舞台にする「Jiufenの村は九つぶん」、熱帯雨林の巨樹であった過去を持つ男を描く「天蓋歩行」などを挙げている。翻… 移民と越境言葉と言語記憶
  3. 003 2019 遠の眠りの とおのねむりの 単行本・集英社 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇… 労働青春芸術と表現
  4. 004 2019 藁の王 わらのおう 単行本・新潮社 小説家として一冊だけ本を出した語り手が、巨大私立大学で創作を教えることになり、学生たちの苦悩と自身の行き詰まりに向き合う表題作を含む作品集。新潮社公式は、文学の迷宮や小説の樹海を彷徨う人々を描く作品集として紹介している。書くこと、読むこと、他者の言葉に侵されることの怖さを、静かな幻想性と記憶の反復で… 芸術と表現記憶孤独と疎外
  5. 005 2025 百日と無限の夜 ひゃくにちとむげんのよる 単行本・集英社 『百日と無限の夜』は、第一子の妊娠中に切迫早産で入院した「わたし」が、横たわる時間のなかで出産と生命をめぐる幻視の旅へ入っていく長篇です。能『隅田川』の女物狂いを案内人に、中世の京、駆け込み寺、若狭のお水送り、海辺の産小屋へと時空を越えて進む構成が、病室の身体感覚と神話的な想像力を結びつける。妊娠・… 母と子身体