じゃぬま

蛇沼

佐藤厚志 2017 第49回 新潮新人賞 受賞

紹介 About

『蛇沼』は、宮城県の田園地帯を舞台に、少年時代の監禁事件と少女セイコの不可解な死を抱え続ける青年・恭二を描く新潮新人賞受賞作。受賞者インタビューでは、作者が宮城県亘理郡の田んぼや沼のある風景を原風景としており、主人公が「生きていてもいいのか」という答えのない問いの中でもがく人物として構想されたことが語られている。父に蔑ろにされる次男としての家族葛藤、過去の死への鬱屈、暴力の噴出が、東北の土地の記憶と結びついている。

評価 Reception

第49回新潮新人賞受賞作。新潮社の賞公式ページで受賞と「新潮」2017年11月号掲載を確認し、受賞者インタビューで作品の舞台、監禁事件、家族・父子関係、暴力の主題を確認した。

出典 Sources

受賞・候補歴 Awards

受賞 第49回 新潮新人賞 (2017年)

佐藤厚志のほかの収録作 More

  1. 001 2021 象の皮膚 ぞうのひふ 単行本・新潮社 幼少時から重度のアトピー性皮膚炎に苦しんできた五十嵐凜は、仙台の書店で契約社員として働きはじめる。肌を隠し、他人と距離を取ることで日々をやり過ごす凜に、今度は接客業の理不尽な客対応や、震災後に本を求める人々の姿が重なっていく。子どもの頃の記憶と現在の職場を往還しながら、身体に刻まれた痛み、労働の疲弊… 身体労働
  2. 002 2022 荒地の家族 あれちのかぞく 初出・新潮 2022年12月号 宮城県亘理町の植木職人・坂井祐治、四十歳。あの「災厄」の二年後に妻を病で亡くし、再婚した相手も流産の後に家を出て、いまは老いた母と中学生の息子と暮らしている。津波という言葉を正面に掲げず「災厄」「海の膨張」と呼びながら、荒れた海辺の土地で黙々と木に向かう男の日常を描く。職を転々とする旧友や没落してい… 災害死と喪失家族 第168回 芥川賞
  3. 003 2024 常盤団地の魔人 ときわだんちのまじん 単行本・新潮社 常盤団地の三号棟に住む小学三年生の今野蓮は、喘息を抱え、学校ではまだ友人関係をつくりきれずにいる。団地に越してきた同い年のシンイチ、乱暴だが求心力をもつ年上の少年たち、老朽化した団地の池や空き地をめぐる出来事のなかで、蓮は子どもだけの社会にある憧れ、序列、暴力を少しずつ知っていく。冒険譚の軽やかさを… 青春同調圧力暴力
  4. 004 2025 ジャスティス・マン じゃすてぃす・まん 単行本・文藝春秋 『ジャスティス・マン』は、仙台の老舗ホテルに勤続する初老ホテルマン・大山茂が、自分の「正義」を周囲に押しつけていく長篇です。顧客、部下、妻、書店員への振る舞いは、本人の信念とは裏腹に深刻な軋轢を生んでいきます。特撮ヒーローへの自己同一化が、倫理ではなく支配や攻撃へ転じる過程が読みどころです。滑稽さと… 労働同調圧力暴力