ふゆう
浮遊
紹介 About
『浮遊』は、年の離れたITベンチャーCEOの男と暮らす十六歳のふうかを中心に、日常とホラーゲームの感覚が浸み合っていく長編である。男の元恋人を象ったマネキンの下で夜ごとゲームの悪霊から逃げる設定が、現実の人間関係の不気味さと重なり、身体感覚と恐怖の境界を揺らす。遠野遥らしい乾いた文体で、依存、欲望、住まいの閉塞感を淡々と露出させる。
評価 Reception
河出書房新社公式ページは、本作を芥川賞受賞作『破局』後の衝撃作として紹介し、モモコグミカンパニーによる推薦コメントを掲載している。Web河出の廣田龍平評は、物語がふうかの知覚に沿って進み、ゲーム世界と現実世界が褶曲的に交換される構成、女性の身体が男性の搾取や視線の対象になる問題を論じている。NDLでは『文藝』掲載の初出と単行本書誌を確認できるが、作品単位の主要文学賞受賞・候補は今回確認できなかった。
出典 Sources
- 『浮遊』遠野遥|河出書房新社 紹介評価書誌
内容紹介、推薦コメント、関連書評導線、ISBN、発売日を確認。
- 少女は何から逃げているのか?|Web河出 紹介評価
廣田龍平による『文藝』2023年春季号掲載書評を確認。
- 浮遊|国立国会図書館サーチ 書誌
単行本書誌を確認。
- 浮遊|国立国会図書館サーチ 書誌
『文藝』掲載の初出書誌を確認。
遠野遥のほかの収録作 More
- 001 2019 改良 かいりょう 女装し、美しくなることに執着する大学生の「私」を描くデビュー作。コールセンターのアルバイト収入を美容やデリヘルに費やす私は、メイクや服装、仕草を研究し、やがて女装した自分を他人に認められたいという欲望を抱く。その望みは、性をめぐる理不尽な暴力と絶望へ向かっていく。 第56回 文藝賞
- 002 2020 破局 はきょく 主人公の陽介は、筋トレと公務員試験の勉強に励む大学4年生。母校のラグビー部でコーチも務め、政治家を目指す恋人・麻衣子がいる。やがて新入生の灯に好意を寄せられ、関係を持つようになる。陽介は常に「正しさ」やマナー、他人にどう見られるかを基準に行動するが、その整いすぎた思考と行動のあいだには、どこか空洞が… 第163回 芥川賞
- 003 2022 教育 きょういく 成績向上のために性的な規律が制度化された学校を舞台に、生徒たちは管理された欲望と競争のなかで「正しさ」に従っていく。語り手は異様なルールを淡々と受け入れ、読者は倫理の壊れた環境が日常として語られる不気味さに引きずり込まれる。学園小説の形を借りながら、教育、身体、成績主義、同調の圧力が人間の判断をどう…
- 004 2026 吸血鬼 きゅうけつき 『吸血鬼』は、女性が中学生になると若さや美しさで十二等級に順位付けされ、十五歳での結婚を強いられる社会を描くディストピア長篇です。中学生の有紗は友人たちと学校生活を送りながら、校外学習で出会ったアナウンサーの美優と開業医の白井を通じて、知らなかった富裕な世界へ触れていく。容姿、結婚、階級、迫害を制度…