ふゆう

浮遊

遠野遥 2023

紹介 About

高校生のふうかが、年上の会社経営者の男の家で暮らし、男の元恋人を象ったマネキンの下で夜ごとホラーゲームに没入する長篇。ゲーム内の悪霊から逃げる感覚と、現実の住まい、人間関係、身体へのまなざしが重なり、現実とゲームの境界が不穏に揺れる。ホラーゲームの逃走は娯楽であると同時に、現実の関係から抜け出せない状態の反復として響く。依存、搾取、視線、身体感覚の希薄化を、遠野遥らしい乾いた文体で描く。

評価 Reception

河出書房新社とAmazonは本作を『破局』後の衝撃作として紹介し、モモコグミカンパニーの推薦コメントを掲載している。Web河出の廣田龍平による書評は、ふうかの知覚に沿って現実世界とゲーム世界が連動する構成、女性の身体が搾取や視線の対象になる問題を論じている。作品単体の主要文学賞受賞・候補は今回確認できなかった。

出典 Sources

遠野遥のほかの収録作 More

  1. 001 2019 改良 かいりょう 単行本・河出書房新社 女装し、美しくなることへ執着する大学生の「私」を描くデビュー作。コールセンターで働く語り手は、メイクや服装、仕草を研究し、美容や風俗に金を費やしながら、女装した自分を他者に見てほしいという欲望を強めていく。美への希求が、性をめぐる暴力と絶望へ接続される過程を、乾いた一人称で描く。 身体ジェンダー 第56回 文藝賞
  2. 002 2020 破局 はきょく 初出・文藝 2020年夏季号 主人公の陽介は、筋トレと公務員試験の勉強に励む大学4年生。母校のラグビー部でコーチも務め、政治家を目指す恋人・麻衣子がいる。やがて新入生の灯に好意を寄せられ、関係を持つようになる。陽介は常に「正しさ」やマナー、他人にどう見られるかを基準に行動するが、その整いすぎた思考と行動のあいだには、どこか空洞が… 恋愛身体 第163回 芥川賞
  3. 003 2022 教育 きょういく 単行本・河出書房新社 超能力の育成を掲げる学校を舞台に、成績向上のために性的ノルマ、身体鍛錬、勉学が制度化された長篇。成績で部屋のグレードが決まり、監視と規律のもとで生徒たちが「正しさ」に従っていく環境が、語り手の日常として淡々と提示される。学園小説、ディストピア、寓話の形式を交差させながら、教育と管理、身体、欲望、競争… 同調圧力身体
  4. 004 2026 吸血鬼 きゅうけつき 単行本・集英社 女性が中学生になると若さや美しさで十二等級に順位付けされ、社会的地位と財産のある男性に望まれれば十五歳で結婚を強いられる架空社会を描くディストピア長篇。拒否した女性は「へびつかい」と呼ばれ迫害される世界で、中学生の有紗は友人たちと学校生活を送りながら、美術館で出会ったアナウンサーの美優と開業医の白井… ジェンダー身体同調圧力