ほしのこ
星の子
紹介 About
中学3年生の林ちひろは、優しい両親に愛されて育った。だが両親は、生まれつき病弱だったちひろが「あやしい宗教」の水で救われたと信じて以来、その教団に深くのめり込んでいる。緑のジャージ姿で頭に濡れタオルを載せる両親は周囲の目を引き、姉は家を出て、親戚との関係も軋んでいく。一目惚れした新任の先生に、夜の公園で儀式をする両親の姿を見られたことをきっかけに、ちひろの心は大きく揺れる。信仰に生きる家族を、断罪も擁護もせず子どもの視点から淡々と描き、家族の愛とは何かを問いかける長編。
評価 Reception
第39回野間文芸新人賞を受賞し、第157回芥川賞と2018年本屋大賞の候補にもなった。新興宗教を信じる親のもとで育つ子どもを、外からの告発ではなく内側の子どもの目から裁かずに描いた点が広く評価され、いわゆる宗教2世の問題を先取りした作品としても読み直されている。2020年に大森立嗣監督・芦田愛菜主演で映画化され、芦田の演技とともに原作への注目が再燃した。のちの芥川賞受賞へとつながる、今村夏子の評価を決定づけた一作。
受賞・候補歴 Awards
今村夏子のほかの収録作 More
- 001 2011 こちらあみ子 こちらあみこ 純真なまま周囲とすれ違っていく少女あみ子を描く表題作(太宰治賞受賞作「あたらしい娘」改題)を収めたデビュー単行本。 第24回 三島賞
- 002 2016 あひる あひる 飼いあひる「のりたま」をめぐる家族の不穏な日常を描く表題作ほかを収めた作品集。
- 003 2019 父と私の桜尾通り商店街 ちちとわたしのさくらおどおりしょうてんがい 商店街でパン屋を営む父を手伝う娘を描く表題作を中心に、「白いセーター」「ルルちゃん」「ひょうたんの精」「せとのママの誕生日」「モグラハウスの扉」を収めた短篇集。家族、店、近隣関係のごく日常的な場面から、今村夏子らしい微細なずれや不穏さが立ち上がる。平明な語り口の奥で、親しさと疎外、子どもっぽさと残酷…
- 004 2019 むらさきのスカートの女 むらさきのスカートのおんな 語り手「わたし」の近所には、いつも紫色のスカートをはき「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女がいる。週に一度パン屋でクリームパンを買い、公園の決まったベンチに座る彼女を、「わたし」は毎日観察し続けている。友達になりたい一心で、「わたし」は求人誌をベンチに置くなどして、彼女が自分と同じホテルの清掃の職… 第161回 芥川賞
- 005 2020 木になった亜沙 きになったあさ 『木になった亜沙』は、表題作「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の三篇を収めた作品集。誰かに食べ物を差し出したい少女が木へ、さらに割り箸へと転じる表題作をはじめ、身体の境界や役割が奇妙にずれた状況が、純粋な願いと不穏さを同時に帯びて進む。童話のような単純さと残酷さを併せ持つ語りで…
- 006 2022 とんこつQ&A とんこつきゅーあんどえー 中華料理店「とんこつ」で働く「わたし」は、挨拶を覚えて居場所を得たかに見えるが、新人の「あの女」によって均衡を崩されていく。表題作ほか「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」を収録し、普通の可笑しみの奥から人間の取り返しのつかない瞬間が顔を出す。短く平明な語りが、善意や純粋さの怖さをじわじわ見せる作…