Themes
孤独と疎外
主題「孤独と疎外」に分類された 571 作品。
- 001 2026 彼女のカロート かのじょのかろーと 『彼女のカロート』は、表題作「彼女のカロート」と「宦官への授業」を収める作品集。表題作では、耳が聞こえなくなった女性アナウンサーから新しい墓を依頼された主人公の日常が、彼女とのずれた応答によって静かに侵食されていく。もう一篇では、読むことに困難を抱えながら文学に向かう青年がシュールな冒険に巻き込まれ…
- 002 2026 生きとるわ 『生きとるわ』は、又吉直樹が2026年に文藝春秋から刊行した、6年ぶりの長篇小説です。出版社公式は、『火花』から10年後の新作として本作を位置づけ、友情や恋愛、裏切り、苦境をめぐる人間の姿を扱う作品として紹介している。900枚規模の長篇として、笑いと痛みの近さを又吉の語りで読む作品である。
- 003 2025 記念日 きねんび 『記念日』は、23歳のミナイ、42歳のソメヤ、76歳の乙部さんという年齢も境遇も違う女性三人が、奇妙なルームシェアをきっかけに交わっていく長篇です。「明日から、おばあさんになってみませんか?」という提案が、若さや老い、身体のままならなさ、他者と暮らすことの違和感を動かしていく。年齢や役割を一時的にず…
- 004 2025 温泉小説 おんせんしょうせつ 年齢も性別も境遇も異なる人びとが温泉地へ向かう六篇の連作的短篇集。おひとり様限定の温泉バスツアー、免許返納を迫られる後期高齢者、母の呪縛から逃れられない44歳の娘、亡き妻との記憶をたどる初老の男、50歳女性の一人旅、婚約者と別れて南の島で再出発を試みる若者など、人生の苦みや迷いを抱えた人物たちを描く…
- 005 2025 バックミラー バックミラー 『バックミラー』は、落ち目のミュージシャン、極度の無駄嫌いのM&A会社社長、樹木伐採に生活を揺さぶられる女性など、都市でままならなさを抱える人物たちを描く短篇集です。河出書房新社公式は、シニカルな笑いと冷徹な観察力で都会の人生を写す「令和の没落小説」と紹介している。表面的な合理性や成功願望の裏側で…
- 006 2025 帰れない探偵 かえれないたんてい 語り手の「わたし」は世界探偵委員会連盟に属する探偵だが、探偵事務所でもあり家でもある部屋に突然帰れなくなる。急な坂の街、雨でも傘を差さない街、夏が続き夜が来ない街、砂と太陽の街など、変化し続ける世界の都市をめぐりながら、「帰れない」状態そのものを抱えたまま移動していく。事件を解決するよりも、街の手触…
- 007 2025 関係のないこと かんけいのないこと 『関係のないこと』は、パンデミック後の東京で、自分とは切り離してきたはずの出来事や他者の痛みが、ふいに生活へ入り込んでくる瞬間を描く作品集です。表題作では、弁護士として世間と折り合ってきた人物が、見ないようにしてきた「壁」に取り囲まれていく。淡々とした語りの中で、社会的な出来事を自分の外側に置く態度…
- 008 2025 ティータイム ティータイム 『ティータイム』は、『百年泥』で芥川賞を受賞した石井遊佳による、奇想の強い4篇を収めた短篇集です。大人びた兄妹、インドから脱出できない日本人、電車の網棚の上で暮らす女性、恐ろしいサンタクロースなど、現実の足場を少しずつ外す人物や状況が並ぶ。短篇ごとに場所や常識がずれていき、読者は笑いと不安のあいだに…
- 009 2025 遠くまで歩く とおくまであるく コロナウイルス感染拡大の中、小説家のヤマネは「身近な場所を表現する」実践講座を担当する。地図や映像を手がかりに、PC越しの参加者たちがそれぞれの記憶、忘れられない景色、言葉を語り合い、その記憶が別の記憶を呼び起こしていく。移動できない時期に、場所を語ることが別の場所へ歩いていく行為として立ち上がる…
- 010 2025 燃ゆる海 もゆるうみ 馬を愛する女性がドバイへ渡る物語として紹介され、第11回林芙美子文学賞佳作に選ばれた作品。受賞時タイトルは「燃ゆる海」だが、雑誌掲載時には「燃ゆる馬」へ改題され、馬への愛着が異国への移動を導く力として前面に出る。馬は単なる趣味や対象ではなく、主人公の身体感覚、欲望、生活圏の外へ出ていく衝動を結びつけ…
- 011 2025 子供部屋同盟 『子供部屋同盟』は、高橋弘希が2025年に東洋経済新報社から刊行した長篇小説です。出版社公式は、復讐代行組織を軸にした世直しエンタメとして紹介し、社会の悪と疎外された人々のルサンチマンをポップでスリリングな活劇へ変換している。勧善懲悪の爽快さの奥に、復讐の感情や孤立の切なさを覗かせる点が読みどころで…
- 012 2024 バリ山行 バリさんこう 転職して関西の建物修繕会社に入った波多は、社内の親睦登山をきっかけに六甲山に通うようになる。やがて、職人気質で社内では変人扱いされるベテラン社員・妻鹿が、整備された登山道を外れ、地図を読みながら道なき道を行く「バリ山行(バリエーションルートの登山)」を独りで続けていることを知る。会社の経営が傾き、リ… 第171回 芥川賞
- 013 2024 カメオ かめお 『カメオ』は、本社命令で期日までに倉庫を建てなければならない会社員の前に、犬を連れた隣地の男・カメオが立ちはだかるデビュー作。職場の命令、土地、期限、隣人との交渉が、現実的な仕事の話でありながら不条理な可笑しみを帯びて進む。問題を片づけるはずの業務が、相手の存在によってどんどん解決不能な人間関係へ変…
- 014 2024 ある日の、あのタクシー あるひのあのたくしー 『ある日の、あのタクシー』は、運転手と乗客の一期一会の出会いを通して町の姿を描く、12編からなるタクシー小説集。車内という短い時間と閉じた空間に、乗る人の生活、職業、孤独、偶然の会話が交差する。移動する密室としてのタクシーが、普段はすれ違うだけの人々の事情を一時的に結びつける。タクシー運転手経験を持…
- 015 2024 K+ICO ウーバーイーツ配達員のKと、TikTokerとして活動する女子大生ICOが、巨大な「システム」のなかで交錯していく長篇。ギグワーク、SNS、インターネットによる偶然の接続を現代的な意匠として扱いながら、カフカ『城』を象徴的な参照点にして、資本主義の抽象的な力と個人の孤独を重ねる。KとICO、それぞれ…
- 016 2024 みんなのお墓 みんなのおはか 「内藤家之墓」に引き寄せられる人々を描く、共同墓地を軸にした群像劇。裸になる快感を追う主婦、「真理」がわからない小学生たち、夜のコンビニだけを日課にする引きこもり男性、宗教的な合宿に向かう若者、潔癖症の妻を持つ中年など、ばらばらの人物が悩みを抱えながら生きている。死者の場所である墓を、生きる者の傷や…
- 017 2024 無形 むけい 立ち退き勧告が進む海辺の団地を舞台に、年老い病を患う祖父と孫娘、親が失踪した姉弟、夫に先立たれた老女、友情以上の感情を育む少女たちなどの生活が重なっていく長編。形には残らない生活の喜びや悲しみを、団地に流れる季節と記憶のなかに描く。取り壊される場所の記憶を、誰か一人の所有物ではなく、複数の生活が交差…
- 018 2024 ナチュラルボーンチキン ナチュラルボーンチキン 45歳で一人暮らしの事務職・浜野文乃は、仕事、動画、ご飯という反復の生活を守ってきた。上司の指示で、捻挫を理由に在宅勤務を続ける若い編集者・平木直理の部屋を訪ねたことから、ホストクラブ通いの痕跡や奔放な価値観に触れ、忘れかけていた自分の欲望と向き合い始める。正反対に見える二人の出会いは、相手に救われ…
- 019 2024 セルフィの死 セルフィのし 『セルフィの死』は、フォロワー獲得に執着するミクルを主人公に、承認欲求とSNSが身体感覚まで侵食する時代を描く長篇です。自撮りを繰り返すと顔面が変容し、無人回転寿司やフォロワー急増といった奇妙な出来事が連鎖していきます。自分を見せる行為が、自分を制御できなくなる感覚へ反転していく点が、本谷有希子らし…
- 020 2024 昏色の都 くれいろのみやこ 表題作「昏色の都」に、「極光」「貸本屋うずら堂」を併録した幻想小説集。国書刊行会公式は、表題作を初出時の三倍の規模へ増補した中編として紹介し、夢と現実のあわいをさまよう旅の物語や、古い貸本漫画と幼年期の記憶をめぐる作品を収めると説明している。幻想は現実逃避ではなく、記憶や読書体験の奥に潜む時間を呼び…
- 021 2024 森は盗む もりはぬすむ 『森は盗む』は、第10回林芙美子文学賞大賞受賞作で、小原鉄平の作品集『八月のセノーテ』に収録された作品です。朝日新聞出版さんぽで公開された冒頭では、工務店で働く語り手が、森の奥に残る木造の檻を見つける場面と、職場の日常が交互に立ち上がります。森の不穏な気配と、設計・現場・職人をめぐる働く場の感覚が重… 第10回 林芙美子賞
- 022 2024 ひとでなし ひとでなし 『ひとでなし』は、星野智幸が2024年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 023 2023 前の家族 まえのかぞく 37歳の独身小説家・猪瀬藍が、中古マンションの購入を決意するところから始まるマイホーム奇譚。理想的に見えた物件には、そこに十二年間暮らした若い夫婦と幼い姉妹の「前の家族」の気配が残り、引っ越したはずの娘たちが藍の新居へ現れる。住まいを買うことが、部屋だけでなく周囲の環境や他者の記憶まで引き受けること…
- 024 2023 あわいに開かれて あわいにひらかれて 『あわいに開かれて』は、小野正嗣が「記憶」をめぐって編んだ約40編の掌編小説集である。短い断章の連なりは、日常のなつかしさと不可思議さのあいだを行き来し、はっきりした筋よりも、ふと開く時間や感覚の隙間を読ませる。断片の小ささは軽さではなく、失われたものや名づけにくい気配を受け止めるための形式になって…
- 025 2023 浮遊 ふゆう 高校生のふうかが、年上の会社経営者の男の家で暮らし、男の元恋人を象ったマネキンの下で夜ごとホラーゲームに没入する長篇。ゲーム内の悪霊から逃げる感覚と、現実の住まい、人間関係、身体へのまなざしが重なり、現実とゲームの境界が不穏に揺れる。ホラーゲームの逃走は娯楽であると同時に、現実の関係から抜け出せない…
- 026 2023 幻日/木山の話 げんじつ/きやまのはなし 『幻日/木山の話』は、コロナ禍を含む時間のなかで書き継がれた「木山」をめぐる連作小説集で、八つの短篇を収める。人、動植物、水や土や空気、社会が互いに影響し合う世界を、出来事の大きな起伏よりも時間の流れやまなざしの変化に沿って描く。孤独は閉じた心理ではなく、他者や自然へどう目を向けられるかという問いと…
- 027 2023 ハジケテマザレ ハジケテマザレ コロナ禍で派遣切りにあった「私」が、生活のためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」で働き始める作品集。YouTuberの恋人をめぐる騒動、クラブでの爆踊り、激辛フェスでのプロポーズ演出など、バイト仲間との出来事が愉快さと切実さを帯びて連なる。「普通」をめぐる言葉を軸に、労働、居場所、混ざり合う…
- 028 2023 かっかどるどるどぅ かっかどるどるどぅ 仕事、介護、家族、お金などの問題を抱え、孤立しながら生きる人々が、従来とは別のかたちで「共に生きる」道を探す群像劇。夢を捨てきれない60代の悦子、介護に明け暮れてきた芳江、非正規雇用を転々とする理恵、自死を考える保らが、食事をふるまう片倉吉野の古いアパートへ集まっていく。東北弁を含む声の響きと食卓の…
- 029 2023 神と黒蟹県 かみとくろがにけん 黒蟹山や黒蟹城、紫苑市と灯籠寺市を擁する架空の県を舞台に、土地に生きる者、赴任してきた者、帰郷した者、地元を訪れた者たちの営みを描く連作小説集。現実のどこかにありそうな地方都市の手触りに、半知半能の神が降臨するようなわずかな神秘が混じる。群像劇として土地の記憶や住民の距離感を浮かび上がらせ、絲山秋子…
- 030 2023 夜のだれかの岸辺 よるのだれかのきしべ 十九歳の春、茜は八十九歳のソヨミから毎晩の添い寝と朝食を頼まれ、家計を助けるためにその仕事を受ける。血縁でも介護契約でもない奇妙な近さのなかで、若さと老い、孤独、生活の手触りが交わっていく。講談社公式の本文抜粋が示すように、語りは茜の現実感に根ざし、働くことと誰かのそばにいることの境目を静かに問う作…
- 031 2023 蝙蝠か燕か こうもりかつばめか 2022年2月に急逝した西村賢太の未刊行小説集で、完結作としては最後の表題作を含む三篇を収める。北町貫多が藤澤清造資料の調査や書簡の額装をめぐって動く「廻雪出航」「黄ばんだ手蹟」と、死の前年の貫多を描く「蝙蝠か燕か」によって、師への執着と自分の文学を問い直す。私小説的な分身を通じ、歿後弟子としての覚…
- 032 2023 列 れつ ある動物の研究者だったはずの男は、いつの間にか先も最後尾も見えない奇妙な列に並んでいる。誰もがなぜ並ぶのか分からないまま、競い合い、比べ合う社会の圧力が寓話的な状況として立ち上がる。現実の制度や欲望を抽象化した「列」から出られるのかを問い、簡潔で不穏な語りで現代の生の息苦しさを照らす作品である。設定… 第77回 野間文芸賞
- 033 2023 共に明るい ともにあかるい 『共に明るい』は、早朝のバス、公園の端の野鳥園、恋人の家、島への修学旅行、工場の作業部屋などを舞台にした五篇の小説集です。誰もが抱える痛みや不満、不安、葛藤が、ふとした会話や場面の揺れを通して現れます。表題作のほか「野鳥園」「素晴らしく幸福で豊かな」「風雨」「池の中の」を収録します。説明しきれない心…
- 034 2023 図書館のお夜食 としょかんのおやしょく 『図書館のお夜食』は、東北の書店勤務がうまくいかず仕事を辞めようとしていた樋口乙葉が、東京郊外の「夜の図書館」で働き始める長編である。そこは夕方七時から深夜まで開く特殊な図書館で、亡くなった作家の蔵書を集めた本の博物館のような場所でもある。予想外の出来事と夜食を通して、本、食、仕事、ほどよい距離で語…
- 035 2023 おわりのそこみえ おわりの そこみえ 『おわりのそこみえ』は、消費者金融のアプリとマッチングアプリを行き来しながら暮らす二十五歳の美帆を描く。買い物依存と性依存を抱え、明日を必要としないように生きる彼女の現在が、地獄の底へ向かうような勢いで語られる。貧困、性、孤独の問題を、切迫した一人称のリズムで押し切る作品。絶望をただ暗く沈めるのでは…
- 036 2022 はぐれんぼう はぐれんぼう 『はぐれんぼう』は、あさりクリーニング店で働く優子が、長く引き取りに来られない衣服「はぐれんぼちゃん」を持ち帰ったことから始まる長編である。翌朝、衣服が体を覆うようにまとわりつき、優子は持ち主たちを訪ねるが、服は次々に受け取りを拒まれる。トレンチコート姿のユザさんに導かれながら帰るべき場所を探す道行…
- 037 2022 CF しーえふ 罪の責任を「無化」する超巨大企業Central Factoryをめぐり、加害、被害、償いの意味が揺らいでいく群像劇。キャバクラ嬢、主婦、中学生、ホームレス、CFで働く中年、広報室長、そしてCFへのテロを企てる男など、社会の周縁と制度の内部にいる人々が交錯する。荒唐無稽な設定を通して、責任を引き受ける…
- 038 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が…
- 039 2022 引力の欠落 いんりょくのけつらく 『引力の欠落』は、CFOとして企業の上場に関わり巨富を得た行先馨が、弁護士マミヤに招かれて奇妙なペントハウスへ向かう超現実的な小説。そこでは「始皇帝」や「本多維富」を自称する者たちがカードゲームに興じ、経済的充足の先に残る孤独と、何かが欠けた人間が別の段階へ移れるのかという問いが立ち上がる。現代の資…
- 040 2022 嫌いなら呼ぶなよ きらいならよぶなよ 『嫌いなら呼ぶなよ』は、表題作を含む四篇で、有毒に暴走するコミュニケーションと、その遮断を描く短篇集である。妻の親友宅に招かれた「僕」が突然ミニ裁判にかけられる表題作をはじめ、美容整形、YouTuberへの粘着的なコメント、深夜まで続く助言など、現代的なつながりの圧力がブラックユーモアを帯びて展開す…
- 041 2022 ミーツ・ザ・ワールド ミーツ・ザ・ワールド 焼肉擬人化漫画を愛する腐女子の会社員・由嘉里は、合コン帰りに酔いつぶれた新宿歌舞伎町で、キャバ嬢のライと出会う。ライの「この世界から消えなきゃいけない」という言葉をきっかけに共同生活が始まり、由嘉里は推しへの愛、三次元の恋、結婚や出産への思い込みを揺さぶられていく。対照的な二人の会話と歌舞伎町の人間…
- 042 2022 憐憫 れんびん 『憐憫』は、かつて子役だった沙良が、芸能界で伸び悩み、自分の正体を知らない相手を求めるところから始まる小説。酒場で出会った柏木に抱く感情は、愛しさであり憐憫でもあり、恋愛と呼び切れない関係の輪郭を曖昧にしていく。見られる側として生きてきた女性の孤独、承認、満たされなさを、短く張りつめた語りで追う。芸…
- 043 2022 老人ホテル ろうじんほてる 埼玉県の大家族で育った日村天使は、テレビに出る大家族の一員だったが、16歳で家を出て大宮のキャバクラで働く。生活保護を受けながら流されるように暮らしていた彼女は、かつて店で出会ったビルのオーナー・綾小路光子と、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルで再会する。光子の投資や生活の指南を通じて、天使…
- 044 2022 とんこつQ&A とんこつきゅーあんどえー 中華料理店「とんこつ」で働く「わたし」は、挨拶を覚えて居場所を得たかに見えるが、新人の「あの女」によって均衡を崩されていく。表題作ほか「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」を収録し、普通の可笑しみの奥から人間の取り返しのつかない瞬間が顔を出す。短く平明な語りが、善意や純粋さの怖さをじわじわ見せる作…
- 045 2022 雨滴は続く うてきはつづく 2004年、北町貫多は同人誌発表作「けがれなき酒のへど」が同人雑誌優秀作に選ばれ、純文学誌に転載されたことで文壇デビューを果たす。藤澤清造の歿後弟子であろうとする執念、純文学誌への執筆、恋情と自尊心の揺れが、貫多らしい苛立ちと滑稽さを伴って進む。完成直前で未完となった遺作長篇であり、作家になる以前の…
- 046 2022 カプチーノ・コースト かぷちーのこーすと 『カプチーノ・コースト』は、片瀬チヲルが『群像』2022年10月号に発表し、同年12月に講談社から刊行された小説です。会社を休職中の26歳の早柚が、地元の海岸でゴミ拾いを始めるひと月を通じて、自分を見つめ直していきます。講談社公式の内容紹介は、しんどいときほど周囲に頼れない感覚を冒頭に置き、休職、地…
- 047 2021 オーラの発表会 オーラのはっぴょうかい 『オーラの発表会』は、大学一年生の海松子が、人を好きになる気持ちや他人の感情をうまく読めないまま、友情と恋愛未満の関係に巻き込まれていく長篇。凧揚げを趣味にし、周囲に脳内であだ名をつける彼女の少しずれた観察が、幼なじみや社会人男性からの接近を通じて揺さぶられる。綿矢りさらしい軽やかな口語感とユーモア…
- 048 2021 カード師 かーどし 『カード師』は、占いを信じていない占い師であり違法カジノのディーラーでもある「僕」が、ある組織から冷酷な資産家の顧問占い師になるよう命じられる長篇。カード、占い、ギャンブルをめぐる偶然と操作の感覚が、個人では抗いがたい理不尽な力と結びついていく。語りはサスペンスの推進力を持ちながら、不確かな未来を知…
- 049 2021 北斗星に乗って ほくとせいにのって 『北斗星に乗って』は、上野発の寝台特急「北斗星」を軸にした8編の短篇小説集。列車という移動空間が、乗客の記憶や人生の分岐、もう一つの世界へ向かうような感覚をつないでいく。旅情だけでなく、日常から少し離れた場所で自分の過去や孤独に触れる、静かな幻想味を持つ作品集である。寝台特急の個室性と移動性を使い…
- 050 2021 あなたに安全な人 あなたにあんぜんなひと 3.11直前の少年の死をめぐる出来事に苛まれる元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中の事故を抱える便利屋の忍が、「感染者第一号」を誰もが恐れる土地で出会う。二人は人を傷つけ、傷つけられる社会のなかで、孤独で安全な逃亡生活のような関係を築いていく。東日本大震災、沖縄、感染症下の共同体の視線を交差… 第32回 ドゥマゴ文学賞
- 051 2021 ここはとても速い川 ここはとてもはやいかわ 児童養護施設で暮らす小学五年生の集と、園での年下の親友・ひじりの日々を描く表題作を中心にした小説集。二人が近くの淀川へ亀を見に行く時間など、子どもたちの生活の細部が温もりを含んだ言葉でたどられる。中原中也賞受賞詩人として注目された著者の初小説集で、表題作と小説第一作「膨張」を収録する。子どもの語彙や… 第43回 野間新人賞
- 052 2021 滅私 めっし 必要最低限の物だけで暮らすライターの男が、ミニマリストの同志が集うサイト運営と投資で生計を立てながら、自由でスマートな生活を手に入れている。物だけでなく人間関係にも淡泊だった彼の前に、昔の所業を知る人物が現れ、捨てたはずの過去が生活に影を落とす。所有を減らすことの快楽と、過去や欲望は簡単には消せない…
- 053 2021 死者にこそふさわしいその場所 ししゃにこそふさわしいそのばしょ 折口山に暮らす奇妙でどこか壊れた人々が、町はずれの植物園へ引き寄せられていく連作短篇集。介護、欲望、病、善意の暴走といった日常の歪みを、グロテスクで滑稽な筆致で少しずつ現実からずらしていく。表題作を含む六篇を通じて、怖さと可笑しさが同居する吉村萬壱の寓話的な人間観察が前面に出る。植物園という場が、生…
- 054 2021 旅のない たびのない コロナ禍中の日々を映す四篇からなる、上田岳弘初の短篇集。恋人とのホテル、息子との散歩、甥を預かる夏、出張先の車中といった限られた場面を通して、移動が制限された時代の記憶、会話、自己認識を描く。大きな事件よりも、日常の小さな違和感や言葉のずれから世界の変化を浮かび上がらせる作品集。短い時間に人生の全体… 第46回 川端賞
- 055 2021 アンソーシャル ディスタンス アンソーシャル ディスタンス パンデミックに閉塞する社会で、生への希望だったバンドのライブ中止をきっかけに心中旅行へ向かう若い男女を描く表題作を含む作品集。ほかに、高アルコール飲料、整形、身体、インターネット上の視線など、追い詰められた人々の臨界点を描く作品を収める。コロナ禍の距離感を単なる時事性に閉じず、依存、疎外、自己破壊の… 第57回 谷崎賞
- 056 2021 象の皮膚 ぞうのひふ 幼少時から重度のアトピー性皮膚炎に苦しんできた五十嵐凜は、仙台の書店で契約社員として働きはじめる。肌を隠し、他人と距離を取ることで日々をやり過ごす凜に、今度は接客業の理不尽な客対応や、震災後に本を求める人々の姿が重なっていく。子どもの頃の記憶と現在の職場を往還しながら、身体に刻まれた痛み、労働の疲弊…
- 057 2021 塩の道 しおのみち 『塩の道』は、第7回林芙美子文学賞大賞受賞作で、のちに朝比奈秋のデビュー単行本『私の盲端』に収録された作品です。受賞・収録情報から、著者初期の重要作として位置づけられます。医療や身体をめぐる著者の関心に連なる作品として整理できますが、公開資料では本文に踏み込んだ梗概が限られるため、細部の断定は避けて… 第7回 林芙美子賞
- 058 2021 小島 こじま 豪雨災害後の農村、自宅、保育園などを舞台に、何気ない出来事が世界をかすかに震わせる中短篇集。花の世話をする女性、生きものとの遭遇、広島カープをめぐる奇談連作などを通じて、日常の時間や記憶が別の相へ滑り出す。身近な風景の観察が、災害後の生活感覚や家族のずれを浮かび上がらせる。虫や鳥、犬、植物などの生き…
- 059 2021 眼球達磨式 がんきゅう だるましき 『眼球達磨式』は、職場と自宅を往復するだけの無為な日々を送る「彼」が、移動式監視カメラ「アイ」を手に入れるところから始まる。極小の眼球型機体は地上すれすれを走り、にわか雨の後に制御を失って、やがて勝手に自走しはじめる。人間の視線とは異なる低い位置から世界を見る設定が、監視、孤独、観察することの欲望を… 第58回 文藝賞
- 060 2021 植物忌 しょくぶつき 『植物忌』は、星野智幸が2021年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 061 2020 fishy フィッシー 三十代の女性三人が、それぞれの恋愛、結婚、仕事、女友だちとの距離を抱えながら、言い切れない本音をにじませていく連作長篇。男に対する屈託や違和感を、単純な対立ではなく、関係性が少しずつ更新される過程として描く。会話と内面の揺れを重ね、友情、欲望、自立の輪郭が変わっていく読み味がある。恋愛よりも、女性同…
- 062 2020 一橋桐子(76)の犯罪日記 ひとつばしとうこのはんざいにっき 76歳で一人暮らしの一橋桐子は、親友トモを亡くし、年金と清掃パートだけでは先行きの見えない老後に追い詰められる。孤独死で人に迷惑をかけるくらいなら刑務所に入ればよいのではないかと考え、万引、偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人と、より長く収監される方法を真剣に調べ始める。犯罪計画の滑稽さの奥に、貧困、老い…
- 063 2020 星月夜 ほしつきよる 日本の大学で日本語を教える台湾出身の柳凝月と、新疆ウイグル自治区出身で大学院進学を目指す玉麗吐孜の恋を描く長篇。二人は日本語という共通語で近づくが、家族、国家、在留資格、セクシュアリティをめぐる負荷は同じ形では共有できない。親密さの甘さよりも、相手を分かっていると思うことの危うさを静かな語りで照らす…
- 064 2020 一人称単数 いちにんしょうたんすう 村上春樹の六年ぶりの短篇小説集で、「石のまくらに」から書き下ろしの表題作まで八篇を収める。音楽、野球、過去の記憶、奇妙な遭遇をめぐり、一人称の語りが自分自身の輪郭を少しずつずらしていく。公式紹介が掲げる「単眼」と「複眼」の比喩のように、私、僕、あなたという呼び名の揺れが、回想と虚構の境目を曖昧にする…
- 065 2020 完全犯罪の恋 かんぜんはんざいのこい 『完全犯罪の恋』は、芥川賞受賞後も地味な暮らしを送る四十男の小説家「田中」が、新宿で初恋の相手の娘に声をかけられるところから始まる長編。物語は現在の東京と、下関の高校時代に読書を通じて近づいた才女・真木山緑との記憶を往還し、恋の独りよがりと罪悪感を掘り下げる。作家本人を思わせる語り手を置き、私小説的…
- 066 2020 木になった亜沙 きになったあさ 『木になった亜沙』は、表題作「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の三篇を収めた作品集。誰かに食べ物を差し出したい少女が木へ、さらに割り箸へと転じる表題作をはじめ、身体の境界や役割が奇妙にずれた状況が、純粋な願いと不穏さを同時に帯びて進む。童話のような単純さと残酷さを併せ持つ語りで…
- 067 2020 小鳥、来る ことり、くる 『小鳥、来る』は、夏休みの始まり、9歳の「おれ」が父を倒す日を待っているところから始まる長篇。周囲には、勉強のできる友人、万引きを繰り返す兄弟、学年一強い女子、何度も車にはねられる少年、動物園のゴリラがいて、子どもの日常が暴力とユーモアを帯びて浮かぶ。山下澄人らしい口語のリズムと飛躍する視点が、大人…
- 068 2020 御社のチャラ男 おんしゃのちゃらおとこ 『御社のチャラ男』は、社内で「チャラ男」と呼ばれる三芳部長をめぐり、彼を見つめる周囲の人々の語りから職場の現実を照らし出す長篇。中心人物を直接つかまえるのではなく、多方向から語られる噂や距離感によって、憎らしさと愛おしさが同居する人物像が立ち上がる。会社という共同体の空気、働く人の孤独、他人を語るこ…
- 069 2020 幼な子の聖戦 おさなごのせいせん 第162回芥川賞候補作の表題作と、ビルの窓拭きを描く『天空の絵描きたち』を収める作品集。表題作では、青森の小さな村で村議をしている「おれ」が、人妻との関係を県議に握られ、同級生候補への選挙妨害を強いられる。地方政治の閉塞、個人の弱み、労働現場の緊張を、怒りと諦めのあわいにかすかな希望を探る語りで描く…
- 070 2020 推し、燃ゆ おし、もゆ 「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」という一文から始まる。高校生のあかりは、学校でも家庭でも周囲の求める「普通」をうまくこなせず、アイドルグループの一員である「推し」上野真幸を解釈し応援することだけを生活の軸、自らの「背骨」として生きている。推しの炎上をきっかけに、彼の芸能活動もあかりの日常も少… 第164回 芥川賞
- 071 2020 ポラリスが降り注ぐ夜 ぽらりすがふりそそぐよる 新宿二丁目のバー「ポラリス」に集う、多様な性的アイデンティティを持つ女性たちを描く七つの恋の物語。筑摩書房公式は、魂と身体の触れあいを求めて二丁目を訪れる女性たちの物語として紹介している。都市の夜の親密さを起点に、セクシュアリティ、移動、言語、歴史の記憶が国境を越えて響き合う。連作の形を通して、個々…
- 072 2020 月の客 つきのきゃく 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。
- 073 2020 復讐する相手がいない ふくしゅうするあいてがいない 『復讐する相手がいない』は、奥野紗世子が『逃げ水は街の血潮』で第124回文學界新人賞を受賞した後に発表した小説です。NDLサーチとCiNii Researchで、『文學界』2020年5月号、98-143ページ掲載の書誌を確認できます。公開Webでは梗概や選評本文を確認できないため、作品内容の説明は掲…
- 074 2020 pray human ぷれいひゅーまん 『pray human』は、崔実が『群像』2020年3月号に発表し、同年9月に講談社から刊行した小説です。創作が芥川賞候補になった「わたし」は、17歳で入院した精神科で出会った安城さんからの電話を受け、精神病棟での日々、救えなかった親友、子供時代の傷を語り始めます。講談社公式は、少女たちのレジスタン…
- 075 2020 だまされ屋さん だまされやさん 『だまされ屋さん』は、星野智幸が2020年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 076 2019 私の家 わたしのいえ 祖母の法要で一堂に会した親戚たちを起点に、三世代にわたる一族の記憶と秘密をたどる連作短編集。同棲相手に追い出されて戻る梓、過去にこだわる母、孤独を愛する大叔母らの章が重なり、家族であっても他人のように分かり合えない距離を描く。家という場所を、帰る場所であると同時に逃れがたい記憶の容器として読ませる。
- 077 2019 君たちは今が世界 きみたちはいまがせかい 『君たちは今が世界』は、小学校という閉じた場で、子どもたちの関係、序列、沈黙の圧力が日々の世界そのものになっていく様子を描く長篇。副題的に示される英題「All grown-ups were once children」が示すように、子ども時代を単なる回想ではなく、現在進行形の切実な社会として捉える…
- 078 2019 アタラクシア アタラクシア 結婚生活の苦しさや不倫、家庭内の苛立ちを抱える複数の男女を描く群像長編。翻訳者の由依、シェフの瑛人、パティシエの英美、作家の桂らの視点を通じて、望んで結婚したはずなのに救われない人々の孤独と愛情への渇望が交錯する。倫理や制度では割り切れない親密さの痛みを、金原ひとみらしい熱量で描く。結婚を安定した到…
- 079 2019 父と私の桜尾通り商店街 ちちとわたしのさくらおどおりしょうてんがい 商店街でパン屋を営む父を手伝う娘を描く表題作を中心に、「白いセーター」「ルルちゃん」「ひょうたんの精」「せとのママの誕生日」「モグラハウスの扉」を収めた短篇集。家族、店、近隣関係のごく日常的な場面から、今村夏子らしい微細なずれや不穏さが立ち上がる。平明な語り口の奥で、親しさと疎外、子どもっぽさと残酷…
- 080 2019 出来事 できごと 『季刊文科』連載「転落」を単行本化した長篇。OpenBDの出版社由来データでは、見慣れた日常世界が歪み、人間の嘘や文明の虚妄が露出していく哲学小説として紹介されている。吉村萬壱の身体感覚の強い描写と、日常を異様なものへ反転させる語りが読みどころになる。
- 081 2019 瓦礫の死角 がれきのしかく 『瓦礫の死角』は、父の性犯罪によって解体した家族の記憶と、服役を終えようとする「あの人」の影を描く表題作を中心にした短篇集。講談社公式は、十七歳で無職の北町貫多が、刑期を終えようとする父、復讐に怯える母、消息不明の姉を抱えた家族の瓦礫に向き合う物語として紹介している。「病院裏に埋める」と表裏をなす不…
- 082 2019 ひよこ太陽 ひよこたいよう 一緒に住んでいた女に去られ、切り詰めた生活のなかで小説を書こうとする40代の男を描く連作小説集。書けない日々と死への誘惑に取り憑かれた語り手は、母から頼まれた人探しをきっかけに、現実と幻想の境界が揺らぐ世界へ入っていく。書けなさ、不在、生活の索漠さを見つめる私小説的な作品。
- 083 2019 人間界の諸相 にんげんかいのしょそう 連絡が取れなくなった謎めいた女性・菱野時江の消息を、二人の友人がSNSを頼りに追っていくところから始まる作品。集英社公式は「トリッキーなエンタメ風小説」と紹介しており、人物相関や断片的な情報がずれながら、正体をつかもうとする読者の視線そのものを揺さぶる。奇妙なユーモアと不穏さが混ざる、木下古栗らしい…
- 084 2019 待ち遠しい まちどおしい 北川春子、夫を亡くした青木ゆかり、新婚の遠藤沙希という世代も立場も異なる三人の女性が、ご近所付き合いを通じて少しずつ関わる長編。住まいの距離の近さと、価値観や人生段階のずれが生む噛み合わなさを、柴崎友香らしい生活の手触りのなかで描く。年齢、結婚、独居、見えにくい困難をめぐり、人はどこまで互いを判断せ…
- 085 2019 むらさきのスカートの女 むらさきのスカートのおんな 語り手「わたし」の近所には、いつも紫色のスカートをはき「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女がいる。週に一度パン屋でクリームパンを買い、公園の決まったベンチに座る彼女を、「わたし」は毎日観察し続けている。友達になりたい一心で、「わたし」は求人誌をベンチに置くなどして、彼女が自分と同じホテルの清掃の職… 第161回 芥川賞
- 086 2019 人間 にんげん 『人間』は、若い日に創作を志す者たちが集ったシェアハウスの記憶と、38歳になった「僕」の現在を往還する長篇。表現者になりたいという願い、仲間と暮らす時間の高揚、その後に残る成功や挫折の差が、自己像を問い直す物語として重なっていく。又吉直樹の初の長編として、芸術への憧れだけでなく、他者と比べながら生き…
- 087 2019 藁の王 わらのおう 小説家として一冊だけ本を出した語り手が、巨大私立大学で創作を教えることになり、学生たちの苦悩と自身の行き詰まりに向き合う表題作を含む作品集。新潮社公式は、文学の迷宮や小説の樹海を彷徨う人々を描く作品集として紹介している。書くこと、読むこと、他者の言葉に侵されることの怖さを、静かな幻想性と記憶の反復で…
- 088 2019 夜はおしまい よるはおしまい 「夜のまっただなか」「サテライトの女たち」「雪ト逃ゲル」「静寂」を収めた短篇集。夜、逃避、静けさといった収録作名が示すように、関係の余白や孤独を抱えた人物たちの時間を描く。島本理生の恋愛や家族関係をめぐる繊細な筆致を、より暗く静かなトーンで味わえる作品集として位置づけられる。短篇ごとの状況を急いで説…
- 089 2019 夢も見ずに眠った。 ゆめもみずにねむった 『夢も見ずに眠った。』は、夫を熊谷に残して札幌へ単身赴任した沙和子が、夫婦のすれ違いと離別を経て、新しい愛と信頼の形へ向かう長篇。岡山、札幌、熊谷など土地の記憶や物語が、二人の関係の変化と響き合う。移動する生活のなかで、結婚や家族の安定ではなく、相手を信じ直す距離を探るところが読みどころになる。
- 090 2019 逃げ水は街の血潮 にげみずはまちのちしお 『逃げ水は街の血潮』は、地下アイドルとして活動する二十代女性の疾走感と消耗を描くデビュー作です。都市のショービジネス的な場で、身体と承認欲求、自己像がすり減っていく様子を追います。アイドルという労働と自己表現の境界を、切迫した内面描写と速度感のある語りで扱う作品です。 第124回 文學界新人賞
- 091 2018 あなたの愛人の名前は あなたのあいじんのなまえは 『あなたの愛人の名前は』は、すれ違う大人の恋愛を描く六篇の作品集。集英社公式が示す「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」は、同じ関係を別々の視点から照らし、同じ部屋にいても互いの心が決定的にずれていく痛みを描く。欲望、秘密、婚約、浮気、世間の価値観に揺れる心を、島本理生らしい繊細な心理の動きとし…
- 092 2018 ブルーハワイ ぶるーはわい 『ブルーハワイ』『辰年』『聖ミクラーシュの日』『わかれ道』『山の上の春子』『わたしのおばあちゃん』を収めた短篇集。河出書房新社は、「あたりまえ」を知らない孤独が世界を撃ち抜く作品集として紹介している。日常のなかでそれぞれのことに夢中になる人々を、平明で少し乾いた語りで捉え、家族や記憶、他者との隔たり…
- 093 2018 みなさんの爆弾 みなさんのばくだん 「初恋」「譲治のために」「メアリーとセッツ」など六篇を収め、女性たちの内部に抱え込まれた欲望や怒り、関係の歪みを描く短篇集。同性への欲望、母と息子の倒錯的な結びつき、創作や日常に潜む衝動が、それぞれの「爆弾」として立ち上がる。平穏に見える生活の奥で感情が臨界に近づく瞬間を、鋭くも読みやすい語りで追う…
- 094 2018 独り舞 ひとりまい 台湾出身のレズビアン女性が、過去の痛みと孤独を抱えながら日本で生き直そうとするデビュー作。著者公式プロフィールでは、李琴峰が第二言語である日本語で初めて書いた小説とされており、移動と言語のずれ、性的マイノリティとしての孤立、自己回復の時間が重なる。内面に寄り添う一人称の語りが、越境する身体と言葉の不…
- 095 2018 雪子さんの足音 ゆきこさんのあしおと 東京出張中の薫は、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家・雪子さんが熱中症でひとり亡くなったことを新聞記事で知り、20年ぶりにその場所へ向かう。アパートへ近づく道のりと回想を重ねながら、大家と下宿人、若者と年長者、好意と負担の境目が少しずつ浮かび上がる。日常の会話や距離感の微細な違和を通して、人間…
- 096 2018 公園へ行かないか?火曜日に こうえんへいかないか?かようびに 2016年、アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者が、世界各国の作家・詩人たちと過ごした3か月をもとに描く11篇の連作小説集。英語で議論し、街を歩き、アメリカ大統領選挙の瞬間にも居合わせる経験を通じて、そこにいること/いないこと、知りたいのに届かないことを考え続ける…
- 097 2018 ニムロッド ニムロッド IT企業に勤める中本哲史は、社長から仮想通貨ビットコインの採掘(マイニング)事業を任される。彼の周りには、中絶と離婚の傷を抱える外資系勤務の恋人・田久保紀子と、小説家の夢に挫折し「駄目な飛行機コレクション」と題するメールを送ってくる同僚・荷室仁(ニムロッド)がいる。三人の日常に、天に挑んだバベルの塔… 第160回 芥川賞
- 098 2018 落としもの おとしもの 踏切のあいだに落ちていたバッグを「わたし」が落とし主より先に奪い取ってしまう表題作をはじめ、寝たきりの祖母と過ごす夏、バイト仲間との雑魚寝で身体に触れられる夜などを収める短編集。日常のすぐ脇にある他者との距離、善意と不安、死への衝動を、乾いた手触りの短篇として立ち上げる。単行本未収録だった6作品をま…
- 099 2018 羅針盤は壊れても らしんばんはこわれても 西村賢太の分身的主人公・北町貫多が、二十三歳を迎え、日雇い暮らしのなかで人生の敗北感を濃くしていく小説集。田中英光や藤澤清造の私小説に救いを求める貫多が、自らも私小説を書き始めようとする姿を軸に、貧困、文学への執着、自己嫌悪が泥臭く絡み合う。表題作に加え「陋劣夜曲」などを収め、惨めさと不屈さが同時に…
- 100 2018 静かに、ねぇ、静かに しずかに、ねぇ、しずかに 「本当の旅」「奥さん、犬は大丈夫だよね?」「でぶのハッピーバースデー」の3篇を収める作品集。海外旅行の写真投稿、ネットショッピング依存、動画撮影で自分たちだけの印を残そうとする夫婦など、SNSやスマートフォン越しにしか確かめられない現実感を描く。軽妙な語りの底に、承認欲求、支配、親密さの不安がにじみ…
- 101 2018 その先の道に消える そのさきのみちにきえる アパートの一室で発見された緊縛師の死体をめぐり、重要参考人の女性と彼女に惹かれる刑事・富樫、別の刑事たちの視線が絡み合う長編ミステリー。謎と嘘を追う捜査の形を取りながら、暴力、欲望、死者の痕跡を通じて、この世界を生きる意味を問い詰めていく。犯罪小説の緊迫感と、中村文則らしい倫理的・実存的な暗さが重な…
- 102 2018 たてがみを捨てたライオンたち たてがみをすてたらいおんたち 専業主夫を考える30歳の出版社社員・直樹、離婚後の孤独を抱える35歳の広告マン・慎一、アイドルを追う25歳の公務員・幸太郎という三人の男性を並べる長編。仕事の評価、家事・育児、父親像、恋愛や趣味を通じて、「大人の男」らしさやプライドの重さを問い直す。軽く読ませる群像劇の形を取りながら、弱音を吐きにく…
- 103 2018 つかのまのこと つかのまのこと かつての住み家らしき「この家」をさまよい続ける「わたし」が、次々に入れ替わる住人たちを見守る物語。幽霊のような語り手の視点から、家に残る記憶と、誰かを待ち続ける時間が静かに積み重ねられる。柴崎友香が俳優・東出昌大をイメージして小説を書き、市橋織江の写真と組み合わされた、写真と小説の境界を意識した一冊…
- 104 2018 私に付け足されるもの わたしにつけたされるもの 「四十歳」「白竜」「Mr.セメントによろしく」「瀬名川蓮子に付け足されるもの」など十二篇を収める短篇集。虎に襲われたい、くっつけたい、あきらめたい、移動したいといった、くだらなくも切実な願望を起点に、日常のずれや欲望の不可思議さを軽やかに描く。長嶋有らしいユーモアと観察眼が、平凡な生活に付け足される…
- 105 2018 ウィステリアと三人の女たち ウィステリアとさんにんのおんなたち 「彼女と彼女の記憶について」「シャンデリア」「マリーの愛の証明」「ウィステリアと三人の女たち」の4篇を収める短篇集。同窓会、デパート、女子寮、廃墟となった屋敷を舞台に、女性たちが不確かな記憶と死の気配に触れていく。記憶、死、救済、自己同一性が幻想的な気配で重なり、なだらかな散文がいつのまにか現実の足…
- 106 2018 夜更けの川に落葉は流れて よふけのかわにおちばはながれて 北町貫多の二十代前半を描く「寿司乞食」「夜更けの川に落葉は流れて」「青痰麺」の三篇を収める作品集。表題作では、無気力で受け身になっていた貫多が梁木野佳穂という女性との関わりによって、わずかに外の世界へ引き戻されていく。貧しさ、職場の失敗、恋愛の痛み、長く尾を引く恨みを、私小説的な乾いた筆致で読ませる…
- 107 2018 1R1分34秒 いちらうんどいっぷんさんじゅうよんびょう デビュー戦後に勝ちきれなくなった21歳のプロボクサーを語り手に、競技の身体感覚と自意識の停滞を描く小説。長年のトレーナーから離れ、変わり者のウメキチとの練習に入ることで、敗北や弱さをめぐる思考が少しずつ揺さぶられていく。ボクシングを勝敗だけでなく、身体・時間・他者との関係の問題として読ませるところに… 第160回 芥川賞
- 108 2018 わるもん わるもん 『わるもん』は、硝子職人の父がいつの間にか家族から取り除かれたように見える家で、純子が父の痕跡をたどり始める物語。母や姉たち、家に現れる男性との関係が、純子の視点から少しずつ歪んで見えてくる。集英社の対談では、時間軸や純子の正体をめぐるわからなさも作品の魅力とされ、家族という閉じた船を外から見つめる… 第42回 すばる文学賞
- 109 2018 焰 ほのお 『焰』(新潮社公式表記は『焔』)は、親の介護に追われる男、人間がお金として売買される社会、真夏の公園で涙が止まらない人々などを描く九篇の作品集。新潮社公式ページは、自分ではない何かになりたいと切望する人々が語り出す作品として紹介しており、介護、貨幣化、身体変容の寓話が現代社会の閉塞を照らす。ブレイデ… 第54回 谷崎賞
- 110 2018 潜在殺 せんざいさつ 2018年刊行の渥美饒兒の単行本。既存収録の『ミッドナイト・ホモサピエンス』『孤蝶の夢』とは重複しない後年の小説候補。
- 111 2017 踊る星座 おどるせいざ 『踊る星座』は、青山七恵が人と人の距離や、日常の中の小さな変化を星座のように配置する小説として整理できます。星座は離れた点を線で結ぶ見方であり、人物たちの孤独や関係もそのように読み替えられます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 112 2017 人間タワー にんげんたわー 『人間タワー』は、朝比奈あすかが人間関係の積み重なりや、集団の中で支え合うことの危うさを扱う小説として整理できます。タワーという題名は、高く積み上がる共同性と、崩れやすい均衡の両方を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 113 2017 影裏 えいり 会社の出向で岩手に移り住んだ今野は、釣り仲間となった同僚・日浅にだけ心を許していた。二人で川に通った日々はやがて途絶え、日浅は何も告げずに会社を去る。そして東日本大震災の後、今野は日浅の行方を追ううちに、親しいと思っていた男のもう一つの顔に触れることになる。北国の自然や釣りの場面を丹念に描きながら… 第157回 芥川賞
- 114 2017 劇場 げきじょう 『劇場』は、売れない劇作家・永田と、彼を支える沙希の恋愛を描く長編です。演劇を作ることと恋愛で相手を傷つけることが重なり、表現者の自意識と未熟さが露出します。恋愛小説であると同時に、創作の場にしがみつく人物の痛みを読む作品です。
- 115 2017 いつか来る季節 名古屋タクシー物語 いつかくるきせつ なごやたくしーものがたり 『いつか来る季節 名古屋タクシー物語』は、名古屋のタクシー運転手や乗客をめぐる物語として整理できます。タクシーは都市を移動する仕事の場であり、偶然出会う人びとの会話を運ぶ装置でもあります。地方都市の生活と労働を、移動の視点から読ませる作品です。
- 116 2017 回遊人 かいゆうじん 『回遊人』は、吉村萬壱が漂流するように生きる人物や、社会の中を回り続ける身体を描く小説として整理できます。回遊という語は、目的地へ一直線に進まない移動と反復を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 117 2017 かわうそ堀怪談見習い かわうそぼりかいだんみならい 『かわうそ堀怪談見習い』は、「窓」「台所の窓」「雪の朝」「蜘蛛」「古戦場」「幽霊マンション」「宮竹さん」「写真」など多数の小篇を収める怪談集です。OpenBDで収録作と2017年2月刊行の書誌を確認でき、NDLでは単行本と2020年版の書誌を確認できます。日常的な場所や物の名を掲げる短い題名が連なり…
- 118 2017 幸福な水夫 こうふくなすいへい 『幸福な水夫』は、木村友祐が水夫という移動する労働者の像を通じて、幸福と漂流の関係を描く作品として整理できます。海や船のイメージは、生活の不安定さと越境の感覚を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 119 2017 高架線 こうかせん 『高架線』は、東京の古いアパートの住人たちの来歴を、語り手を替えながらたどる長編です。高架線の下や周辺にある生活圏が、移動する都市とそこに留まる人びとの時間を結びます。複数の語りが重なり、場所に蓄積する記憶を立体的に読む作品です。
- 120 2017 もう生まれたくない もううまれたくない 『もう生まれたくない』は、長嶋有が生まれることへの拒否感を題名に掲げ、生活の倦怠や関係のずれを描く作品として整理できます。重い言葉を、日常的な会話や軽みのある文体の中に置くことで、絶望が少し奇妙な手ざわりを帯びます。生の重さをユーモアでずらす長嶋作品らしい小説です。
- 121 2017 無敵の二人 むてきのふたり 『無敵の二人』は、中村航が二人でいることの強さと危うさを描く小説として整理できます。無敵という言葉は明るい連帯を示す一方、外の世界に対する閉じた感覚も含みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 122 2017 茄子の輝き なすのかがやき 『茄子の輝き』は、「お茶の時間」「わすれない顔」「高田馬場の馬鹿」「茄子の輝き」などを収める連作短篇集です。Books/JPROの紹介では、別れた妻の面影、震災後の不安、同僚との会話など、不確かな記憶をめぐる場面を扱う作品として示されています。大きな事件よりも、日常の会話や街の断片に残る熱を拾い、滝…
- 123 2017 おらおらでひとりいぐも おらおらでひとりいぐも 主人公は東北出身、74歳の桃子さん。結婚を目前に故郷を飛び出して上京し、住み込みの仕事、周造との結婚、二児の子育て、そして夫との突然の死別を経て、いまは東京郊外の家にひとりで暮らす。静かな日々のなか、桃子さんの内から標準語と懐かしい東北弁の無数の「声」が湧き上がり、孤独や老い、夫への思い、これからの… 第158回 芥川賞
- 124 2017 ラジオ・ガガガ らじおががが 『ラジオ・ガガガ』は、「三匹の子豚たち」「アブラヤシのプランテーションで」「リトルプリンセス二号」「音にならないラジオ」など6篇を収める短篇集です。題名が示すラジオ的な声や音の感覚を軸に、家族、親族、仕事や生活のつながりを短篇ごとにずらして描く作品として整理できます。OpenBDで収録作は確認できる…
- 125 2017 芝公園六角堂跡 しばこうえんろっかくどうあと 『芝公園六角堂跡』は、「芝公園六角堂跡」「終われなかった夜の彼方で」「深更の巡礼」「十二月に泣く」を収める作品集です。文藝春秋BOOKSは、北町貫多が師・藤澤清造の終焉地に佇む場面と、私小説を書く理由を問う作品集として紹介しています。藤澤清造への執着、夜の東京、作家としての惑いが重なり、西村賢太の私…
- 126 2017 囚われの島 とらわれのしま 『囚われの島』は、谷崎由依が島という閉じた場所を舞台に、隔離や記憶の問題を扱う小説として整理できます。囚われることは地理的な閉塞であると同時に、過去や関係から自由になれない状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 127 2017 美しい国への旅 うつくしいくにへのたび 『美しい国への旅』は、田中慎弥が「美しい国」という政治的・理念的な言葉を旅の物語へずらして扱う小説として整理できます。旅は理想の場所へ向かう行為である一方、現実の醜さや暴力を見せる過程にもなります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 128 2017 私をくいとめて わたしをくいとめて 『私をくいとめて』は、おひとりさま生活を送る33歳のみつ子が、脳内の相談役「A」と対話しながら恋に踏み出す物語です。ひとりでいる自由と、他者と関わる不安が、軽快な内面の会話として描かれます。恋愛小説でありながら、自己防衛と孤独の扱い方を読む作品です。
- 129 2017 エーゲ海に強がりな月が えーげかいにつよがりなつきが 大学時代の同級生との失恋後、仕事優先の恋人とも別れた「私」が、OLの桂子に親密な感情を寄せ、自身の恋愛経験を語る。証券会社で投資家として出会った桂子と年上男性「カレチ」の駆け引きを軸に、現代女性の恋愛、孤独、幸福のかたちを描く。語り手が友人の恋を見つめながら自分の夫婦関係にも向き合う構図が読みどころ…
- 130 2017 光点 こうてん 工場しかない閉じられた町で暮らす実以子が、弁当工場と家を往復する日々のなかで、八つ山と呼ばれる裏山で青年カムトと出会う。母のいらだちや父の無関心から逃れるように神社へ通う語りは、身体感覚と祈りのかたちをめぐって不穏に深まる。閉塞した生活から、言葉以前の祈りや表現を探る作品。 第41回 すばる文学賞
- 131 2017 遊ぶ幽霊 あそぶゆうれい 『遊ぶ幽霊』は、第41回すばる文学賞佳作として『すばる』2017年11月号に掲載された兎束まいこの作品。NDLサーチで受賞区分、掲載誌、ページ範囲を確認できる。既存の梗概では幽霊を通じた生死の境界が示されているが、公式の詳細紹介は確認できていないため、内容面の記述は限定している。
- 132 2017 日曜日の人々(サンデー・ピープル) にちようびのひとびと さんでー ぴーぷる 『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』は、死に惹かれる心や自傷、摂食、不眠といった切迫した声を、複数の断片として響かせる青春小説。講談社は「他者に何かを伝えること」が救いになりうるのではないかという問いを掲げ、他者へ届く/届かない声を作品の中心に置いている。硬質で鋭い言葉の連なりが、孤独と希求を同時… 第39回 野間新人賞
- 133 2017 双子は驢馬に跨がって ふたごはろばにまたがって 監禁される親子、救出に向かう双子と驢馬、二つの世界をつなぐ手紙を軸にした奇想の冒険譚。河出書房新社は、独自の世界観で注目された作品として紹介しており、寓話的な設定と哲学的なユーモアが前面に出る。家族の救出劇でありながら、言葉が世界の境界を越える仕掛けが読みどころになる。 第40回 野間新人賞
- 134 2016 あひる あひる 『あひる』は、文学ムック『たべるのがおそい』創刊号に掲載された表題作に、書き下ろしの「おばあちゃんの家」「森の兄妹」を加えた三篇の作品集です。表題作では、あひるを飼うことになった家族と、学校帰りに集まってくる子どもたちのいる日常が描かれます。何気ない暮らしの安堵に差し込む影や、淡々とした語りの中で露…
- 135 2016 ホモサピエンスの瞬間 ほもさぴえんすのしゅんかん 『ホモサピエンスの瞬間』は、松波太郎が人間を生物種として捉える視野と、個人の瞬間的な感覚を重ねる作品として整理できます。タイトルは、人間であることを大きな分類から眺める一方、生活の一瞬へも焦点を合わせます。既存データには芥川賞候補作とあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。
- 136 2016 異郷の友人 いきょうのゆうじん 『異郷の友人』は、上田岳弘が「異郷」と「友人」という距離のある言葉を結び、共同性と疎外を描く長編として整理できます。見知らぬ場所や社会の中で、友人という関係がどこまで成立するのかが問われます。個人の孤立を、世界の構造へ広げて考える作品です。
- 137 2016 壁抜けの谷 かべぬけのたに 『壁抜けの谷』は、山下澄人が壁を抜けるという幻想的な身振りと、谷という地形を組み合わせて描く小説として整理できます。壁は境界を、谷は落ち込みや隔たりを思わせ、人物の身体感覚を通常の現実からずらします。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 138 2016 小松とうさちゃん こまつとうさちゃん 『小松とうさちゃん』は、絲山秋子が人物の距離感と、うさぎのような柔らかなイメージを組み合わせて描く小説として整理できます。固有名と愛称が並ぶ題名から、親密さとずれたコミュニケーションが立ち上がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 139 2016 虫たちの家 むしたちのいえ 『虫たちの家』は、九州の孤島にあるグループホームで、インターネットで傷ついた女性たちが共同生活を送る物語です。家という避難所は、保護の場であると同時に、傷ついた人びとの距離を測り直す場所になります。現代的な孤立とケアの問題を、共同生活の細部から読ませる作品です。
- 140 2016 三の隣は五号室 さんのとなりはごごうしつ 『三の隣は五号室』は、ひとつのアパートの部屋に住んだ人々の時間を描く連作長篇です。部屋という固定された場所を軸に、入居者の生活、恋愛、仕事、記憶が時代をまたいで入れ替わります。個人よりも場所の記憶を前に出す構成が読みどころで、淡々とした語りの中に時間の厚みがあります。 第52回 谷崎賞
- 141 2016 蠕動で渉れ、汚泥の川を ぜんどうでわたれ、おでいのかわを 『蠕動で渉れ、汚泥の川を』は、17歳の北町貫多が新聞専売所で働く日々を描く長編私小説です。労働の単調さ、貧しさ、屈辱感が、身体を引きずるような題名の感覚と重なります。西村賢太らしい苛立ちと自己嫌悪を、青年期の労働現場から読む作品です。
- 142 2016 かがやき かがやき 『かがやき』は、馳平啓樹が『文學界』2016年1月号に発表した作品で、2019年刊の初作品集の表題作です。Books出版書誌データベースでは、2011年に文學界新人賞を受賞し、兼業作家として創作活動を続けてきた馳平の初作品集として紹介されています。単行本には表題作のほか「梨の味」「クチナシ」「きんの…
- 143 2016 ジニのパズル じにのぱずる オレゴン州の高校を退学になりかけているジニは、ホームステイ先で出会ったステファニーに、5年前の東京で起きた出来事を語り始めます。日本の小学校から朝鮮学校へ移ったジニは、朝鮮語ができないまま居場所を探し、二つの言語と複数の帰属の間で自分の輪郭を問い続ける。1998年のテポドン発射翌日にチマ・チョゴリ姿… 第59回 群像新人賞
- 144 2016 五つ星をつけてよ いつつぼしをつけてよ 『五つ星をつけてよ』は、奥田亜希子が2016年10月に新潮社から刊行した連作集です。ディスプレイに並ぶ口コミの星や「いいね!」を手がかりに、服や家電だけでなく人間関係まで選ぼうとする人々を描きます。ブログ、SNS、写真共有サイトなど、手のひらサイズのインターネットが知らず知らずに心と心の距離を伸び縮…
- 145 2016 えん えん 『えん』は、第40回すばる文学賞佳作として『すばる』2016年11月号に掲載されたふくだももこの作品。既存梗概では、人と人のつながりを主題に、映画監督志望の著者らしい映像的な感性が文体に表れたデビュー作として整理されている。NDLサーチで受賞区分・掲載誌・ページ範囲は確認できるが、公式の詳細梗概や選…
- 146 2016 のろい男 俳優・亀岡拓次 のろいおとこ はいゆう かめおかたくじ 脇役俳優・亀岡拓次を主人公にした連作短篇集で、全国のロケ地を転々としながら仕事相手との淡い縁を紡ぐ日々を描く。続編として、職業俳優の孤独、現場ごとの仮のつながり、生活の滑稽さが積み重なる。諦観とユーモアを交え、主役ではない人物の時間を照らす作品。 第38回 野間新人賞
- 147 2016 浮遊霊ブラジル ふゆうれいぶらじる 『浮遊霊ブラジル』は、表題作を含む短篇集です。死後にブラジルへ行きたい浮遊霊、日常の中で少しずつ位置をずらされる人々、老いや孤独を抱える人物たちが、奇妙さと生活感のあいだで描かれます。現実のすぐ横にある別の通路を、津村記久子らしい平明な語りで開く一冊です。 第27回 紫式部文学賞
- 148 2015 愛のようだ あいのようだ 『愛のようだ』は、長嶋有が「愛」と断言しきれない関係の曖昧さを描く長篇です。題名の「ようだ」は、感情を確定せず、似ているもの、ずれているものとして捉える姿勢を示します。軽やかな語りのなかに、親密さの不確かさが残る作品です。
- 149 2015 あなたが消えた夜に あなたがきえたよるに 『あなたが消えた夜に』は、連続通り魔殺人事件を追う二人の刑事の視点が交錯する中村文則の長篇です。事件の真相を追うミステリー的構造のなかで、暴力、記憶、加害と被害の境界が揺らぎます。暗い犯罪小説の形を取りながら、人間の空洞を覗き込む作品です。
- 150 2015 繭 まゆ 『繭』は、青山七恵が閉じた空間や保護される感覚を手がかりに、女性の内面を描く小説として整理できます。繭は守るものでもあり、外へ出る前の窮屈な状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 151 2015 自画像 じがぞう 『自画像』は、朝比奈あすかが自己像と他者からの視線をめぐる不安を描く小説として整理できます。自画像は自分を描く行為であると同時に、見られる自分を作る行為でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 152 2015 天使はここに てんしはここに 『天使はここに』は、朝比奈あすかが救いを求める人物たちの孤独を描く小説として整理できます。天使という言葉は超越的な存在であると同時に、身近な誰かへの希望にも読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 153 2015 痴者の食卓 ちしゃのしょくたく 『痴者の食卓』は、西村賢太が食卓という生活の場に、屈辱や欲望、関係のこじれを持ち込む小説として整理できます。食べる場は穏やかな家庭の象徴ではなく、人物の弱さや執着が露出する場所になります。私小説的な語りで、生活の荒れと孤立を読ませる作品です。
- 154 2015 復讐屋成海慶介の事件簿 ふくしゅうやなるみけいすけのじけんぼ 『復讐屋成海慶介の事件簿』は、原田ひ香が復讐を請け負う人物を軸に、事件と人間関係を描く小説として整理できます。復讐は単なる解決ではなく、依頼者や加害者の生活のゆがみを浮かび上がらせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 155 2015 薄情 はくじょう 『薄情』は、群馬の地方都市に生きる男を通して、土地への愛着と冷淡さを描く絲山秋子の長篇です。故郷や人間関係は温かいものとしてだけでなく、切り捨てたり距離を置いたりするものとして現れます。地方の生活感と、人の薄情さを見つめる乾いた文体が読みどころです。 第52回 谷崎賞
- 156 2015 反人生 はんじんせい 『反人生』は、山崎ナオコーラが「人生を作る」という発想そのものから距離を取る小説です。社会が求める進路や物語化された生き方に対し、人物は別の速度で存在しようとします。人生を肯定的に組み立てる物語への違和感を、軽やかな語りで扱う作品です。
- 157 2015 火花 ひばな 売れない若手漫才師の徳永は、熱海の花火大会の営業で出会った先輩芸人・神谷の才能と破天荒な生き方に惹かれ、弟子にしてほしいと申し出る。神谷の伝記を書くという条件で交流が始まり、二人は東京の街を飲み歩きながら笑いの本質をめぐる対話を重ねていく。やがて徳永のコンビは少しずつ世に出る一方、笑いに純粋すぎる神… 第153回 芥川賞
- 158 2015 院内カフェ いんないかふぇ 『院内カフェ』は、中島たい子が病院内のカフェという場から、病やケア、日常の会話を描く小説として整理できます。病院という非日常の空間に、カフェのような日常的な場所が挟まることで、人と人の距離が変わります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 159 2015 無銭横町 むせんよこちょう 『無銭横町』は、西村賢太が北町貫多の生活、金銭、鬱屈を私小説的に描く作品集として整理できます。横町という場は、貧しさや人づきあいの狭さを抱えた生活圏として機能します。金のなさ、怒り、屈辱を乾いた語りで押し出すところに読みどころがあります。
- 160 2015 ペンギンのバタフライ ぺんぎんのばたふらい 『ペンギンのバタフライ』は、中山智幸が異質なものの組み合わせから想像力を広げる小説として整理できます。飛べない鳥であるペンギンと、羽ばたく蝶の対比が、変身や移動への願望を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 161 2015 残された者たち のこされたものたち 『残された者たち』は、過疎の集落・潮の浦の分校を舞台に、代用教員アンナと生徒たちの日常をユーモラスに描く文庫オリジナル作品です。小さな共同体に残る人びとの生活から、地方、教育、記憶の問題が見えてきます。大きな事件よりも、場に残る声や関係の細部を読む作品です。
- 162 2015 パノララ パノララ 『パノララ』は、柴崎友香が視線、場所、移動の感覚を広く開く長編です。タイトルはパノラマ的に広がる世界と、どこか音のずれた感覚を同時に含んでいます。人物の移動や会話を通して、都市と記憶の見え方が少しずつ変わる作品です。
- 163 2015 心臓異色 しんぞういしょく 『心臓異色』は、中島たい子が身体の違和感と人間関係のずれを扱う小説として整理できます。心臓という生命の中心と、「異色」という言葉が、普通であることから外れる感覚を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 164 2015 匿名者のためのスピカ とくめいしゃのためのすぴか 『匿名者のためのスピカ』は、島本理生が名前を持たない/名乗れない存在へのまなざしを扱う小説として整理できます。スピカという星の名は、匿名性の闇の中にある小さな指標のように働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 165 2015 鳥の会議 とりのかいぎ 『鳥の会議』は、山下澄人が鳥という非人間的な視点や集まりのイメージを通して、人間の言葉と身体をずらして描く作品として整理できます。会議という形式は共同性を示す一方、意味が共有されない不穏さも帯びています。断片的な語りと身体感覚から、日常の秩序が崩れる感触を読む小説です。
- 166 2015 うつむく朝 うつむくあさ 『うつむく朝』は、嶋幸子が第1回林芙美子文学賞で佳作に選ばれた作品です。現時点で確認できるウェブ資料は賞一覧データに限られ、単行本化や初出本文、梗概は確認できません。作品内容を推測せず、林芙美子文学賞の初回選考で評価された短篇として記録します。
- 167 2015 この世にたやすい仕事はない このよにたやすいしごとはない 『この世にたやすい仕事はない』は、燃え尽きて前職を辞めた女性が、職業相談員に紹介されるまま、少し変わった仕事を渡り歩く連作長篇です。監視する仕事、バスの広告を考える仕事、米菓の袋に入れる文章を書く仕事など、一見たやすそうな職場ほど、社会の仕組みや人の欲望が不思議なかたちで入り込んできます。労働小説で… 第66回 芸術選奨新人賞
- 168 2015 呪文 じゅもん 『呪文』は、星野智幸が2015年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 169 2014 A えー 『A』は、中村文則が匿名性、犯罪、倫理の境界を扱う作品集として整理できます。アルファベット一文字の題名は、固有名を失った人物や出来事の不気味さを示します。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌と掲載レコードに基づく暫定的な紹介です。
- 170 2014 風 かぜ 『風』は、青山七恵が移ろいやすい感情や生活の変化を、静かな文体で扱う小説として整理できます。風という題名は、人物の内面を直接説明するよりも、周囲の空気や関係の揺れとして読ませます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 171 2014 不自由な絆 ふじゆうなきずな 『不自由な絆』は、朝比奈あすかが人と人を結ぶ関係の重さを描く小説として整理できます。絆は美しいつながりではなく、家族や友人関係を縛る不自由さとして現れます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 172 2014 春の庭 はるのにわ 離婚を機に世田谷の取り壊し予定のアパートに越してきた太郎は、隣に建つ水色の洋館を熱心に観察する住人の女・西と知り合う。漫画家の西は、高校時代に魅了された写真集『春の庭』の舞台がその家であることを知り、この場所へ引っ越してきたのだった。二人は次第にその水色の家への接近を試みるようになる。再開発で消えて… 第151回 芥川賞
- 173 2014 清とこの夜 きよとこのよる 『清とこの夜』は、夜の時間を背景に、人物の孤独や記憶を描く広小路尚祈の小説として整理できます。題名は人名と「この夜」を結び、特定の一夜に凝縮される関係や感情を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 174 2014 星よりひそかに ほしよりひそかに 『星よりひそかに』は、柴崎友香が身近な生活のなかにある気配や感情を静かに追う小説として整理できます。大きな事件よりも、視線や場所の移ろい、言葉にならない思いが重視されます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 175 2014 コルバトントリ コルバトントリ 『コルバトントリ』は、山下澄人が意味をすぐには回収しにくい言葉と、身体の記憶を結びつける小説として整理できます。題名の異物感そのものが、人物の経験を通常の物語に収めない姿勢を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 176 2014 九年前の祈り くねんまえのいのり 35歳のさなえは、カナダ人の夫に去られたあと、激しい癇癪を起こす幼い息子・希敏を連れて、故郷である大分の海辺の小さな集落に帰ってくる。育児に疲弊する彼女の脳裏には、九年前、集落の女たちとカナダを旅した際、世話役の「みっちゃん姉」が異国の教会で見せた祈りの姿が繰り返し蘇る。そのみっちゃん姉の息子がいま… 第152回 芥川賞
- 177 2014 LIFE らいふ 『LIFE』は、松波太郎が生きることそのものを題名に掲げ、身体、生活、言葉の不安定さを描く小説です。人物の経験は分かりやすい筋に回収されず、断片的な感覚として立ち上がります。純文学の実験性と生活感が同居する作品です。 第36回 野間新人賞
- 178 2014 ミチルさん、今日も上機嫌 みちるさんきょうもじょうきげん 『ミチルさん、今日も上機嫌』は、原田ひ香が女性の日常と気分の揺れを描く小説として整理できます。題名の明るさは、生活のなかで自分を保とうとする振る舞いにも読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 179 2014 猫の目犬の鼻 ねこのめいぬのはな 『猫の目犬の鼻』は、丹下健太が動物的な感覚や身近な生活の違和感を扱う作品として整理できます。視線や嗅覚を思わせる題名は、人間関係を別の感覚で捉え直す入口になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 180 2014 寝相 ねぞう 『寝相』は、滝口悠生の最初期作品を収める小説集で、睡眠や身体の姿勢のような無意識の領域に、人物の記憶や関係がにじみます。既存データでは新潮新人賞受賞作「楽器」を含む最初の小説集とされています。日常の細部がゆっくりずれていく語りが読みどころです。
- 181 2014 女のいない男たち おんなのいないおとこたち 『女のいない男たち』は、「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「木野」などを収める村上春樹の短篇集です。女性を失った、あるいは理解できなかった男性たちの孤独が、語り直しや回想を通じて浮かび上がります。恋愛小説でありながら、喪失後に残る空白そのものを読む作品集です。
- 182 2014 離陸 りりく 『離陸』は、絲山秋子が時間と空間を大きく動かしながら、人の移動と記憶を描く長篇です。タイトルどおり、地上の生活から浮き上がるように物語が進み、現実の距離感が変わっていきます。旅や移動の小説であると同時に、記憶の重力をめぐる作品です。
- 183 2014 ルンタ ルンタ 『ルンタ』は、山下澄人が土地、身体、記憶の断片を独特の語りでつなぐ小説です。題名の音の響きは意味をすぐには固定せず、人物の経験を通常の筋からずらしていきます。身体に残る感覚を、乾いたユーモアと不穏さで読ませる作品です。
- 184 2014 鳥たち とりたち 『鳥たち』は、吉本ばななが移動、喪失、自由への感覚を鳥のイメージに重ねる小説として整理できます。鳥は、どこかへ飛び去るものとして、残された人の孤独や再生を映します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 185 2014 疒の歌 やまいだれのうた 『疒の歌』は、北町貫多の青年期を描く西村賢太の長篇私小説です。病だれを含む題名が示すように、身体の不調、生活の荒み、内面の歪みが語りの中心になります。自己嫌悪と執着を、乾いた文体で押し出し、青年期の孤立を生活の手ざわりから読ませる作品です。
- 186 2014 死にたくなったら電話して しにたくなったらでんわして 大阪・十三のキャバクラで働く初美と出会った浪人生・徳山が、外部とのつながりを失い、悪意と厭世へ引き込まれていく。河出書房新社の紹介では、初美が語る残虐史と徳山の関係の断絶が軸に置かれ、現代の「心中もの」と位置づけられている。欲望、虚無、言葉の呪術性が破滅へ向かって濃密に絡む、強い閉塞感のある作品。 第51回 文藝賞
- 187 2014 夜は終わらない よるはおわらない 『夜は終わらない』は、星野智幸が2014年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 188 2013 憧れの女の子 あこがれのおんなのこ 『憧れの女の子』は、朝比奈あすかが女性同士の視線や自己像の揺れを扱う小説として整理できます。題名の「憧れ」は、好意や羨望だけでなく、自分との差異を意識させる感情として働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 189 2013 おはなしして子ちゃん おはなしして こちゃん 『おはなしして子ちゃん』は、藤野可織らしい奇妙な会話感覚と、日常のずれを前面に出した作品集です。話すこと、聞くこと、物語にされることの不穏さが、幼さを帯びた題名と対照をなします。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 190 2013 憤死 ふんし 『憤死』は、表題作を含む綿矢りさの短篇集で、怒りや恥、身体の違和感を寓話的に扱います。日常の些細な場面から、人物の内側に溜まった毒気がふいに噴き出します。軽く読める語りの奥に、自己像を保てない不安が残る作品集です。
- 191 2013 ギッちょん ギッちょん 『ギッちょん』は、山下澄人が身体の記憶や言葉になりにくい経験を、断片的な語りで立ち上げる小説です。題名の音の感触そのものが、人物の不器用さや世界とのずれを示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 192 2013 昼田とハッコウ ひるたとはっこう 『昼田とハッコウ』は、二つの名前が並ぶ題名どおり、人物同士の距離や関係の変化を追う山崎ナオコーラの小説です。親密さは劇的にではなく、会話や生活の小さな差異として描かれるタイプの作品として読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 193 2013 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 しきさいをもたないたざきつくると、かれのじゅんれいのとし 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、36歳の多崎つくるが高校時代の突然の絶交の謎をたどる長篇です。名古屋、東京、フィンランドへ向かう旅は、記憶の欠落と自己像の空白を埋める巡礼として進みます。抑制された語りで、友情、喪失、回復不能な時間を扱います。
- 194 2013 自分を好きになる方法 じぶんをすきになるほうほう 『自分を好きになる方法』は、主人公リンデの人生から六つの一日を切り出し、自己肯定の難しさを描く本谷有希子の長篇です。人生の節目を大きなドラマではなく、身体感覚や他者とのずれとして捉えます。題名の明るさと、実際の生きづらさの落差が読みどころです。 第27回 三島賞
- 195 2013 棺に跨がる かんにまたがる 『棺に跨がる』は、北町貫多ものの系譜に属し、秋恵との同棲の終わりを軸にする西村賢太の連作集です。語りは私小説的で、屈辱、執着、生活の破綻がむき出しの文体で綴られます。恋愛や家族の物語というより、自己破壊的な男の孤立を読む作品です。
- 196 2013 去年の冬、きみと別れ きょねんのふゆきみとわかれ 『去年の冬、きみと別れ』は、猟奇事件をめぐる取材と記録の迷路を描く中村文則の長篇です。人物の語る真実は次々に反転し、取材する側もまた物語に巻き込まれていきます。犯罪小説の外形を使いながら、欲望、表現、他者を所有する暴力を問う作品です。
- 197 2013 ピン・ザ・キャットの優美な叛乱 ぴんざきゃっとのゆうびなはんらん 『ピン・ザ・キャットの優美な叛乱』は、飼い猫と生まれた息子の境界が揺らぐ感覚を核に、家族・身体・動物的な気配を奇妙な寓話へ変形させる小説。河出書房新社は、猫をめぐるかつてない小説として紹介し、現実の秩序が少しずつずれていく不穏さを前面に出している。語りのユーモアと不安が同時に立ち上がる、荻世いをらら…
- 198 2013 砂漠ダンス さばくダンス 『砂漠ダンス』は、山下澄人が乾いた場所の感覚と身体の動きを結びつける小説です。砂漠とダンスという組み合わせは、孤立した空間でなお身体が反応し続けるイメージを作ります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評に基づく暫定的な紹介です。
- 199 2013 獅子渡り鼻 ししわたりばな 『獅子渡り鼻』は、親の事情で海辺の集落に預けられた少年・尊の日々を描く小野正嗣の小説です。土地の記憶、祈り、共同体の気配が、少年の視界を通じて静かに立ち上がります。海辺の集落を舞台に、家族から離された子どもの孤独と場所への感受性を描きます。
- 200 2013 問いのない答え といのないこたえ 『問いのない答え』は、長嶋有が問いと答えの関係をずらし、日常の会話や共同性の空白を描く長篇です。正解を求める物語ではなく、答えだけが先にあるような感覚のなかで人物たちがつながります。軽やかな文体の奥に、震災後の不確かさや言葉の扱いにくさが残ります。
- 201 2013 忘れられたワルツ わすれられたわるつ 『忘れられたワルツ』は、絲山秋子が記憶からこぼれ落ちる感情や、日常の不意のずれを描く短篇集です。ワルツのような反復と忘却の感覚が、人物の孤独や時間の歪みを浮かび上がらせます。抑えた語りのなかで、喪失とユーモアが同居する作品です。
- 202 2013 歪んだ忌日 ゆがんだきじつ 『歪んだ忌日』は、西村賢太が忌日と記憶をめぐる感情のねじれを描く私小説的作品です。故人への思いは清らかな追悼ではなく、怒り、屈辱、生活の停滞を含んだものとして現れます。乾いた語りで、喪失と執着の歪みを読ませます。
- 203 2013 鶏が鳴く にわとりがなく 『鶏が鳴く』は、高校3年生の主人公が、かつてのバンド仲間で引きこもりになった友人の部屋に忍び込む物語として登録されている。青春の終わり、友人関係の断絶、孤立への接近を、部屋という閉じた場所から描く。単行本は講談社から2013年8月に刊行されているが、出版社公式の詳細梗概は今回十分に確認できていない。 第56回 群像新人賞
- 204 2013 左目に映る星 ひだりめにうつるほし 左目だけにある近視と乱視の感覚を大切にしてきた早季子が、同じ目を持つ少年の記憶と、アイドルオタクの宮内との出会いを通して他者との距離を測り直す恋愛小説。視界のずれが、恋愛や孤独、共有できない身体感覚の比喩として働く。日常的な語りの中に、コントロールしきれない不安定さと身体感覚の濃さが残る。 第37回 すばる文学賞
- 205 2013 すっぽん心中 すっぽん しんじゅう 休職中で行き詰まった男と、痛い目に遭いつつもあっけらかんと生きる女が、不忍池で出会い霞ヶ浦へ向かう表題作を中心にした作品集。貧しさや失敗を重く閉じ込めず、滑稽さと哀愁が混じる道行きとして描く。会話と行動のずれから、人物の孤独と生活の可笑しみがにじむ。 第40回 川端賞
- 206 2012 関東平野 かんとうへいや 『関東平野』は、第106回文學界新人賞受賞作『逃げ道』の作者・北野道夫が「文學界」2012年9月号に発表した短篇です。NDLサーチで掲載誌・巻号・ページを確認でき、芥川賞候補作家の群像では第148回芥川賞候補作として整理されています。今回確認できた公開情報では単行本化は見当たらず、書誌と候補歴を中心…
- 207 2012 愛について あいについて 『愛について』は、今の恋人、元恋人、忘れられない相手をめぐり、愛の身勝手さや未練を描く白岩玄の恋愛短編集です。恋愛は理想化されず、相手を求める気持ちと自己防衛のあいだで揺れます。軽さのなかに、親密さの不公平さが残る作品です。
- 208 2012 すみれ すみれ 『すみれ』は、青山七恵が若い女性の日常と、名づけがたい違和感を静かに描く小説です。すみれという小さな花の像は、華やかさよりも、身近な場所に残る感情の気配を思わせます。抑えた語りのなかで、家族や恋愛に回収されない孤独が見えてきます。
- 209 2012 プールサイドの彼方 ぷーるさいどのかなた 『プールサイドの彼方』は、水辺の境界性を背景に、若い人物の距離感や将来への不安を描く朝比奈あすかの小説です。プールサイドは日常と非日常、身体と視線が交差する場所として機能します。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 210 2012 パトロネ ぱとろね 『パトロネ』は、支援者や庇護者を意味する語を手がかりに、芸術、労働、他者への依存を描く藤野可織の小説として整理できます。誰かに支えられることは、保護であると同時に支配や不自由も生みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 211 2012 百年の憂鬱 ひゃくねんのゆううつ 『百年の憂鬱』は、伏見憲明が長い時間の憂鬱を、性、ジェンダー、孤独の問題と結びつけて描く作品として整理できます。百年という誇張された時間は、個人の悩みを社会的な制度や歴史の重さへ広げます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 212 2012 隠し事 かくしごと 『隠し事』は、秘密を抱えた人間関係を通じて、家族や恋愛の見えない緊張を描く羽田圭介の小説です。隠すことは単なる嘘ではなく、自分を守るための姿勢であり、同時に他者との距離を生みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 213 2012 仮り住まい かりずまい 『仮り住まい』は、住まいが一時的であることの不安を通じて、生活、記憶、孤独を描く丹下健太の作品です。家は安定した場所ではなく、いつか離れる前提の仮の居場所として立ち上がります。文芸誌掲載作として、移動する生活の感覚を読む作品です。
- 214 2012 夜の隅のアトリエ よるのすみのあとりえ 『夜の隅のアトリエ』は、アトリエという創作の場を手がかりに、芸術、孤独、記憶を描く木村紅美の小説です。夜の隅という場所は、誰にも見えない作業や感情が残る領域を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 215 2012 惑いの森 まどいのもり 『惑いの森』は、バーに現れる男や手紙を待つ郵便局員など、日常の人物たちを連鎖させる中村文則の50篇の短編集です。森は現実の場所というより、迷い込んだ人びとの記憶と孤独が交差する比喩として働きます。短い形式のなかで、不穏さと愛おしさが同居します。
- 216 2012 迷宮 めいきゅう 『迷宮』は、得体の知れない引力に動かされる人物を通して、記憶、罪、孤独を描く中村文則の小説です。迷宮は謎解きの舞台であると同時に、人物の内面から抜け出せない感覚を示します。暗い吸引力を持つ語りが、暴力と自己認識の問題を掘り下げます。
- 217 2012 緑のさる みどりのさる 『緑のさる』は、山下澄人の最初の単行本で、演劇的な会話と現実から少し外れる感覚を持つ小説です。人物の言葉は説明よりもリズムを生み、家族や孤独の問題が不意に立ち上がります。寓話的な題名と簡潔な場面の連なりが、独特の不穏さを作ります。 第34回 野間新人賞
- 218 2012 佐渡の三人 さどのさんにん 『佐渡の三人』は、佐渡という島の土地性を背景に、三人の人物の関係や記憶を描く長嶋有の小説です。島は閉じた場所でありながら、外から来る者と土地に残るものを結びつけます。長嶋作品らしい抑えたユーモアのなかで、家族や共同体への距離が見えてきます。
- 219 2012 週末カミング しゅうまつカミング 『週末カミング』は、週末という限られた時間を通じて、都市で暮らす人物の移動や感情の変化を描く柴崎友香の小説です。来るものを待つ感覚は、恋愛や記憶、生活のリズムと重なります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 220 2012 田中慎弥の掌劇場 たなかしんやのてのひらげきじょう 『田中慎弥の掌劇場』は、新聞連載から生まれた短い小説を収める掌編集です。短い形式のなかで、孤独、記憶、死の気配が圧縮され、長編とは別の鋭さで田中慎弥の暗い感触が現れます。掌編という制約が、語りの省略と余白を強くしています。
- 221 2012 わたしがいなかった街で わたしがいなかったまちで 『わたしがいなかった街で』は、柴崎友香が、経験していない戦争や過去の映像と、現在の都市生活を重ねる小説です。自分がいなかった場所や時間をどう想像するかが、記憶と責任の問いになります。静かな語りのなかで、戦争の記録と個人の日常が交差します。
- 222 2012 隙間 すきま 『隙間』は、人と人の間にある見えない距離を主題にした森山忍のデビュー作です。具体的な筋は限られていますが、題名どおり、関係の裂け目や沈黙の余白を読む作品として整理できます。親密さの中にある距離感を、静かな語りで描く作品です。 第115回 文學界新人賞
- 223 2012 泡をたたき割る人魚は あわをたたきわるにんぎょは ワニのような形をした島で、左半分に住む薫が「魚になりたい」と願い、脚と配達用の原付バイクと引き換えに人魚になる。童話的な変身譚を現代の島の生活へ移し、身体の違和感や孤独を寓話的に描く。人魚という異形の姿が、社会の中で生きることの痛みを照らす作品である。
- 224 2012 おしかくさま おしかくさま 四十九歳でバツイチ、子どものいないミナミが、「おしかくさま」というお金の神様を信じる女たちに出会い、その正体を追っていく。奇妙な信仰を入り口に、将来不安、生活、共同幻想としてのお金を問う作品。怪異譚のような設定を現代日本の経済感覚へ接続する点が読みどころである。 第49回 文藝賞
- 225 2012 給水塔と亀 きゅうすいとう と かめ 定年後に幼いころ暮らした土地へ戻ってきた独身男性を主人公に、給水塔の記憶と前住人が残した亀をめぐって老いと孤独を見つめる短篇。大きな事件ではなく、製麺所の排水、古い団地、ベランダからの風景といった細部が、人生の時間の流れを静かに立ち上げる。津村記久子らしい抑制された語りが、再出発のかすかな意欲を読み… 第39回 川端賞
- 226 2011 あかりの湖畔 あかりのこはん 『あかりの湖畔』は、湖畔という静かな場所を背景に、家族や記憶の揺らぎを描く青山七恵の小説です。人物の感情は大きく叫ばれるよりも、風景や会話の間ににじみます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名に基づく暫定的な紹介です。
- 227 2011 不愉快な本の続編 ふゆかいなほんのぞくへん 『不愉快な本の続編』は、既にある物語の「続編」という発想から、読むこと、語り直すこと、他者の物語を引き受けることを問う絲山秋子の作品です。既存データでは『異邦人』を思わせる文脈が示されており、文学的参照を通じて孤独と違和感が描かれます。廃墟や続きの感覚が、乾いた不穏さを生みます。
- 228 2011 ハコブネ ハコブネ 『ハコブネ』は、性をめぐる違和感を抱える三人の女性を描く長編です。Amazonの商品紹介では、自らの性別を脱ぎ捨てたセックスを求める里帆、女であることに固執する椿、肉体感覚を持てない千佳子という、交差しない三人の性の行方が示されています。女であること、身体を持つこと、他者と関係することの苦しさを描く…
- 229 2011 寒灯 かんとう 『寒灯』は、西村賢太の北町貫多ものの系譜にある私小説的な作品です。既存データでは、貫多と秋恵の同棲生活が崩れていく過程が中心に置かれています。貧しさ、恋愛の破綻、自己嫌悪を、乾いた語りで露出させる作品です。
- 230 2011 春待ち海岸カルナヴァル はるまちかいがんかるなゔぁる 『春待ち海岸カルナヴァル』は、海辺の土地と春を待つ時間を重ね、記憶や人間関係の揺れを描く木村紅美の小説です。カルナヴァルという祝祭的な語は、静かな海岸の風景に非日常の気配を差し込みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 231 2011 黒うさぎたちのソウル くろうさぎたちのそうる 『黒うさぎたちのソウル』は、ソウルという海外都市を舞台に、移動と孤独の感覚を描く木村紅美の作品です。黒いうさぎという像は、かわいらしさだけでなく、夜や不安の気配も帯びています。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 232 2011 虹色と幸運 にじいろとこううん 『虹色と幸運』は、柴崎友香らしい観察の文体で、都市の日常に差す色や偶然を拾う小説です。虹色や幸運は大きな救済ではなく、人物の生活のなかにふと現れて消える感覚として読めます。恋愛、記憶、孤独が、静かな風景描写のなかに沈んでいます。
- 233 2011 ぬるい毒 ぬるいどく 『ぬるい毒』は、学生時代に現れた得体の知れない男・向井との関係に、女性が長く絡め取られていく本谷有希子の小説です。暴力は分かりやすい激しさではなく、ぬるく続く支配や依存として描かれます。恋愛、孤独、自己破壊が、息苦しい一人称の感覚で迫ります。 第33回 野間新人賞
- 234 2011 王国 おうこく 『王国』は、中村文則が犯罪、支配、孤独をめぐって描く暗い寓話的な小説です。王国という語は安定した共同体ではなく、力や欲望によって作られる閉じた支配空間を思わせます。都市の裏側にある暴力と、そこに巻き込まれる個人の不安が読みどころです。
- 235 2011 すべて真夜中の恋人たち すべてまよなかのこいびとたち 『すべて真夜中の恋人たち』は、孤独な校閲者・冬子と年上の物理教師・三束さんの出会いを描く川上未映子の長編です。真夜中の光や静けさは、都市で働く女性の孤独と、他者に近づこうとする繊細な感情を照らします。恋愛小説でありながら、労働、孤独、自己認識の物語として読めます。
- 236 2011 東京ロンダリング とうきょうろんだりんぐ 『東京ロンダリング』は、事故物件に一定期間住むことで部屋の履歴を洗い流す女性を描く原田ひ香の小説です。住まいは安心の場所ではなく、死や過去の痕跡を引き受ける仕事の現場になります。東京の部屋をめぐって、孤独、労働、喪失が交差します。
- 237 2011 ビリジアン ビリジアン 『ビリジアン』は、色彩、風景、記憶の手ざわりを、柴崎友香らしい観察の文体で描く小説です。ビリジアンという色名は、人物の感情を説明するのではなく、視覚的な印象として残します。都市や郊外の日常のなかで、孤独と芸術的な感受性が静かに重なります。
- 238 2011 甘露 かんろ 『甘露』は、家と家族をめぐる不穏さを描く水原涼のデビュー作です。若い書き手による作品ながら、家族の内部に潜む圧力や不快な甘さを鋭く扱います。第145回芥川賞候補にもなり、デビュー時から筆力を注目された作品です。 第112回 文學界新人賞
- 239 2011 きんのじ きんのじ 『きんのじ』は、大阪文学学校在籍中に書かれた長谷原宏己のデビュー作です。製造業で働く人物の日常と内面を静かな文体で描く作品として整理されています。労働の反復の中にある孤独や尊厳を、派手な事件ではなく生活の手触りから読む作品です。 第113回 文學界新人賞
- 240 2011 犬とハモニカ いぬ と はもにか 『犬とハモニカ』は、孤独、記憶、男女の間に生じる微妙な感情を描く江國香織の短篇です。身近な事物である犬とハモニカのイメージが、語りの中で人と人の距離をやわらかく照らします。大きな事件よりも、感情のかすかな揺れを読む作品です。 第38回 川端賞
- 241 2011 ワーカーズ・ダイジェスト わーかーず・だいじぇすと 『ワーカーズ・ダイジェスト』は、東京で働くデザイナーの奈加子と、大阪で働く重信という二人の会社員を描く作品です。同じ名字を持つ二人の生活は大きく交差しないまま、仕事の疲れ、移動、職場の人間関係、日々の小さな不調を通して響き合います。働く人の時間を、劇的な成功や破局ではなく、淡々とした持続として捉える… 第28回 織田作之助賞
- 242 2010 深海 しんかい 『深海』は、『カメレオン狂のための戦争学習帳』で第52回群像新人文学賞を受けた丸岡大介が「群像」2010年4月号に発表した短篇です。NDLサーチでは「特集 新鋭8人短篇競作」の一篇として、掲載誌・巻号・ページ範囲を確認できます。同名の医学・工学系著者資料が検索結果に混在するため、責任表示・掲載誌・N…
- 243 2010 月曜日の朝へ げつようびのあさへ 『月曜日の朝へ』は、週の始まりである月曜の朝に向かう感覚を通じて、若い人物の生活と不安を描く朝比奈あすかの作品です。日常の時間割や働くことの圧力が、人物の気持ちを少しずつ追い込みます。平明な語りのなかに、青春から社会へ出る時期の息苦しさが表れます。
- 244 2010 アクアノートとクラゲの涙 あくあのーととくらげのなみだ 『アクアノートとクラゲの涙』は、水中を思わせるイメージとクラゲの浮遊感を通じて、記憶や孤独を描く樋口直哉の小説です。題名の柔らかい幻想性は、現実から少し離れた視界を与えます。公開資料で内容細部を確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲での暫定紹介です。
- 245 2010 うちに帰ろう うちにかえろう 『うちに帰ろう』は、家へ帰るという素朴な動作を通じて、家族や生活の拠点を見つめ直す広小路尚祈の小説です。帰る場所は安心だけでなく、過去や関係の重さを引き受ける場所でもあります。平明な題名のなかに、家族と地方的な生活感への問いが込められています。
- 246 2010 人もいない春 ひともいないはる 『人もいない春』は、西村賢太の私小説的な語りで、孤独、貧困、生活の荒みを描く作品です。春という明るい季節の言葉に対して、人のいなさが強調され、取り残された感覚が前面に出ます。乾いた自己暴露の文体が、生活の行き詰まりを読ませます。
- 247 2010 星が吸う水 ほしがすうみず 『星が吸う水』は、「星が吸う水」と「ガマズミ航海」を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、野間文芸新人賞受賞後第一作として、女であることが遠ざかっていく感覚、精神が肉体をもてあます感覚を、男と女、女と女の対の構図で描く作品集とされています。性別、身体、欲望のずれをめぐる村田作品の関心が濃く出…
- 248 2010 実験 じっけん 『実験』は、田中慎弥の硬質な語りで、人間関係や自己意識を極限まで試すように描く小説です。題名の「実験」は、科学的手続きというより、人物が自分や他者を材料にしてしまう冷たさを思わせます。不穏で息苦しい空気のなかに、孤独と暴力の気配が漂います。
- 249 2010 勝手にふるえてろ かってにふるえてろ 『勝手にふるえてろ』は、脳内の初恋相手「イチ」と現実の求愛者「ニ」のあいだで揺れるOLヨシカを描く綿矢りさの恋愛小説です。内面の饒舌さと現実の人間関係のずれが、ユーモラスで痛い語りを生みます。恋愛の物語でありながら、自己像、妄想、孤独の問題が強く表れます。
- 250 2010 見知らぬ人へ、おめでとう みしらぬひとへおめでとう 『見知らぬ人へ、おめでとう』は、見知らぬ相手に向けた祝福という奇妙な距離感から、他者との関係を描く木村紅美の作品です。直接の親密さではなく、社会のなかですれ違う人びとへの想像が物語を動かします。都市的な孤独と、言葉によって関係を作ることの危うさが読みどころです。
- 251 2010 コトリトマラズ ことりとまらず 『コトリトマラズ』は、止まらずに動き続ける小鳥のような感覚を通じて、人物の落ち着かなさや生活の変化を描く栗田有起の小説です。定住できない心の動きと、日常の小さなずれが物語の軸になります。軽やかな題名の奥に、孤独と移動の感覚が見えます。
- 252 2010 苦役列車 くえきれっしゃ 中卒で家を出た19歳の北町貫多は、東京の埠頭で冷凍倉庫から荷を運び出す日雇い仕事でその日暮らしを続けている。日当はすぐに酒と風俗に消え、家賃は滞納し、人付き合いもない。そんな彼が職場で専門学校生の日下部と知り合い、初めて友人と呼べそうな存在を得るが、劣等感と過剰な自意識がその関係に影を落としていく… 第144回 芥川賞
- 253 2010 真綿荘の住人たち まわたそうのじゅうにんたち 『真綿荘の住人たち』は、下宿や共同住宅を思わせる場所に集まる人びとの孤独とつながりを描く島本理生の作品です。住人たちは近くにいながら、それぞれの痛みや幸福の基準を抱えています。真綿のような柔らかさと息苦しさが同居する、関係性の小説です。
- 254 2010 マイルド生活スーパーライト まいるどせいかつすーぱーらいと 『マイルド生活スーパーライト』は、軽く薄い生活感を題名に掲げながら、日常の疲労や空虚さを描く丹下健太の小説です。強い事件よりも、生活の温度が下がっていくような感覚が中心にあります。公開資料では内容細部が限られるため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 255 2010 祝福 しゅくふく 『祝福』は、長嶋有らしい抑えたユーモアで、日常の会話や記憶のずれをすくう作品です。大きな事件よりも、人が誰かを祝う、あるいは祝福できない瞬間の微妙な距離に焦点があります。平明な語りのなかで、家族や友人関係に残る孤独が静かに見えてきます。
- 256 2010 夜よりも大きい よるよりもおおきい 『夜よりも大きい』は、小野正嗣が土地、記憶、喪失の感覚を静かに重ねる作品です。夜という時間よりも大きなものに包まれる感覚が、人物の孤独や死者の気配を呼び込みます。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 257 2010 自由高さH じゆうたかさH 『自由高さH』は、建築的な視点から人間の空間認識と自由の関係を探る保高洋三のデビュー作です。空間、身体、自由という抽象的な主題を、建築の語彙に近い感覚で小説化している点が特徴です。第143回芥川賞候補作にもなり、形式意識の強い新人作として位置づけられます。 第110回 文學界新人賞
- 258 2010 工場 こうじょう 何を作っているのか判然としない巨大工場を舞台に、三人の従業員の視点から、働くことと生きることの不条理を描く作品集。表題作に加え、熱帯魚飼育に没頭する家と若い妻をめぐる「ディスカス忌」、心身の不調と虫の幻視を描く「いこぼれのむし」を収める。工場内の謎の動物や過剰な細部が、職場の日常を寓話的な生態系へ変… 第42回 新潮新人賞
- 259 2010 俺俺 おれおれ 『俺俺』は、星野智幸が2010年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 260 2009 左へ ひだりへ 『左へ』は、天埜裕文が『灰色猫のフィルム』で第32回すばる文学賞を受賞した後に発表した小説です。NDLサーチとCiNii Researchで、『すばる』31巻6号、2009年6月、20-59ページ掲載の書誌を確認できます。公開Webでは梗概や選評本文を確認できないため、作品内容の説明は掲載情報と受賞…
- 261 2009 約束の夜に やくそくのよるに 『約束の夜に』は、『子守唄しか聞こえない』で第51回群像新人文学賞を受けた松尾依子が「群像」2009年5月号に発表した短篇です。NDLサーチでは「特集 新鋭15人短篇競作」の一篇として、掲載誌・巻号・ページ範囲を確認できます。今回確認できた公開情報は書誌事項に限られるため、内容紹介は掲載形態と発表時…
- 262 2009 あの子の考えることは変 あのこのかんがえることはへん 『あの子の考えることは変』は、他人から見れば奇妙に見える思考や感情を、関係性の歪みとして描く本谷有希子の小説です。人物たちは互いを理解したいのではなく、しばしば相手の「変さ」を足場にして自分を保とうとします。会話の毒と笑いが、同調できない孤独を浮かび上がらせます。
- 263 2009 かけら かけら 『かけら』は、日常の小さな破片のような出来事から、若い人物の孤独や関係の変化をすくい上げる青山七恵の作品です。簡潔な語りは感情を説明しすぎず、読者に余白を残します。家族や恋愛のはっきりしない揺れを、静かな手ざわりで読む小説です。
- 264 2009 魔法使いクラブ まほうつかいくらぶ 『魔法使いクラブ』は、若い人びとの小さな結びつきや願望を、魔法という言葉の軽やかさで包む作品です。現実を大きく変える力ではなく、日々を少しだけ違って見せる想像力が中心になります。青山七恵らしい静かな文体で、青春と孤独のあいだを描きます。
- 265 2009 あたしはビー玉 あたしはびーだま 『あたしはビー玉』は、山崎ナオコーラが一人称の感覚を通して、自己像の丸さや転がりやすさを描く作品です。題名の比喩は、主体が固定されず、他者との関係の中で動いてしまうことを示しているように読めます。軽やかな文体の奥に、孤独と自己認識の問題が残ります。
- 266 2009 ブルーシート ぶるーしーと 『ブルーシート』は、デビュー作「家畜の朝」を含む第一創作集として、底辺労働や生活の現場を描く作品です。都市の表面では見えにくい働く身体と貧困の感覚が、青いシートの仮設性と重なります。社会的な題材を、個人の孤独と身体感覚に引き寄せて読むことができます。
- 267 2009 ボーダー&レス ぼーだーあんどれす 東京の大学を出て就職した新入社員・江口理倫は、独特の魅力を持つ在日コリアンの同期・趙成佑(ソンウ)と親しくなる。気の合う友人同士のはずのふたりのあいだにも、「在日」という歴史が刻んだ見えない溝が走っていることに、僕はやがて直面する。国籍や民族だけでなく、この世界のあらゆる場所にあるボーダーを、若い会… 第46回 文藝賞
- 268 2009 独居45 どっきょしじゅうご 『独居45』は、四十五歳で独り暮らしをする人物の生活を通して、身体、欲望、孤独を露悪的に描く吉村萬壱の作品です。平凡な住まいの内側に、社会から切り離された感覚と不穏な衝動が溜まっていきます。ユーモアと気味悪さが同居する読み味が特徴です。
- 269 2009 ドリーマーズ ドリーマーズ 『ドリーマーズ』は、夢を見ることと現実を生きることのずれを、柴崎友香らしい都市の時間感覚で描く作品です。人物たちの関係は劇的に変わるというより、会話や移動のなかで少しずつ輪郭を変えます。淡い題名に対して、日常の底に残る孤独も読みどころになります。
- 270 2009 ヘヴン ヘヴン 『ヘヴン』は、いじめを受ける「僕」と同級生コジマの連帯を通じて、暴力と倫理を問う長篇です。弱さを共有する二人の関係は救いに見えますが、暴力を意味づけて耐えることの危うさも浮かび上がります。身体の痛みと思想的な問いが同時に迫る、川上未映子の代表的長篇の一つです。
- 271 2009 犬と鴉 いぬとからす 『犬と鴉』は、田中慎弥の硬質な文体で、人間の生の暗さや動物的な感覚を前面に出す作品です。犬と鴉という題名の組み合わせは、従順さと不吉さ、近さと遠さを同時に呼び込みます。閉じた生活の中で、身体と孤独がざらついた手触りで描かれます。
- 272 2009 カメレオン狂のための戦争学習帳 かめれおんきょうのためのせんそうがくしゅうちょう 独身教員のための「修身寮」に入寮した高校教師・田中は、寮の内情をレポートするという任務を課される。規律と監視の空気のなかで、彼は次第に正体の見えない「戦争」へと組み込まれていく。饒舌な語りと不穏な緊張感で、組織に飼い慣らされていく個人の煩悶を描いた現代の不条理劇。学校と寮という閉域を通して、同調圧力… 第52回 群像新人賞
- 273 2009 神キチ かみきち 屋根屋として建築現場で働く主人公を、不条理な出来事が次々と襲う。だが彼や登場人物たちが本当に悩むのは、世界の理不尽そのものではなく、〈真剣に神に祈れない〉という一点だ。奇妙で黒い笑劇の合間に、切り刻まれた宗教性の断片が乱舞し、信じることが壊れてしまった時代の労働者の魂のありかを照らし出す。地方の建築… 第41回 新潮新人賞
- 274 2009 月食の日 げっしょくのひ 『月食の日』は、日常のなかに差し込む陰りを、月食という天体現象のイメージと重ねる木村紅美の作品です。人との距離や生活の変化が、明るさを一時的に失う感覚として描かれます。静かで観察的な文体が、家族や孤独の輪郭を浮かび上がらせます。
- 275 2009 ポジティヴシンキングの末裔 ぽじてぃう゛しんきんぐのまつえい 『ポジティヴシンキングの末裔』は、前向きさという社会的な合言葉を、木下古栗らしい不条理な笑いでずらす作品です。人物の考え方や言葉は一見軽いのに、そこから身体や生活の気味悪さがにじみます。明るい自己啓発的な語彙を反転させる、乾いたユーモアが読みどころです。
- 276 2009 このあいだ東京でね このあいだとうきょうでね 『このあいだ東京でね』は、東京という場所で交わされる会話や記憶を、青木淳悟の観察的な文体でたどる作品です。題名のくだけた語りかけは、都市の出来事が誰かへの報告として残る感覚を示します。大きな筋よりも、場所と言葉のズレを読む小説です。
- 277 2009 糞神 くそがみ 『糞神』は、身体の排泄や汚れのイメージを前面に出しながら、人間の信仰や共同体の感覚を揺さぶる作品です。喜多ふありの題名は挑発的ですが、そこには身体を持って生きることの逃れがたさがあるように読めます。神聖さと汚穢が接近する、不穏な寓話として分類しました。
- 278 2009 何もかも憂鬱な夜に なにもかもゆううつなよるに 『何もかも憂鬱な夜に』は、死刑囚と向き合う若い刑務官が、自らの孤独な子供時代と現在を重ねていく中村文則の長篇です。犯罪や死刑制度の問題は、単なる社会的題材ではなく、人が他者の罪をどう受け止めるかという倫理の問いになります。暗い語りの中に、救いの可能性がかすかに残ります。
- 279 2009 ねたあとに ねたあとに 『ねたあとに』は、眠った後、起きた後に残る気配のようなものを、長嶋有らしい淡いユーモアで描く作品です。日常の会話や場面は軽く見えますが、人物同士の距離は少しずつ変化します。生活の小さな時間を、静かなずれとして読む小説です。
- 280 2009 ぬかるみに注意 ぬかるみにちゅうい 『ぬかるみに注意』は、足を取られる場所の感覚を、生活や人間関係の抜け出しにくさと重ねる生田紗代の作品です。題名は注意を促す標識のようですが、人物はむしろそのぬかるみに近づいてしまいます。恋愛や家族の問題を、湿った不安として読む作品です。
- 281 2009 東京借景 とうきょうしゃっけい 『東京借景』は、恩師らしき男、義眼の隣人、巨大な友人Qなど、距離の取りにくい人物たちとの関係を東京の風景に重ねる作品。河出書房新社は、いらだちを誘う相手との距離を描く「文藝賞受賞第一作」として紹介している。都市を単なる背景ではなく、他者への違和感や孤独を映し出す借景として扱うところに読みどころがある…
- 282 2009 世界の果て せかいのはて 『世界の果て』は、中村文則が世界の終端に立たされたような人物の孤独や罪の感覚を描く作品です。題名は地理的な果てというより、他者との関係や倫理が行き詰まる場所を示しているように読めます。暗い心理描写と、逃げ場のない空気が特徴です。
- 283 2009 瘡瘢旅行 そうはんりょこう 『瘡瘢旅行』は、藤澤清造の墓参と女性との旅を描く、北町貫多ものの作品集です。私小説的な語りは、文学への執着、貧しさ、対人関係のこじれを隠さずに差し出します。旅の形を取りながら、過去の傷や屈辱を抱え直す作品として読めます。
- 284 2009 掏摸 スリ 『掏摸』は、天才的なスリ師が闇の組織に支配され、逃げ場のない選択へ追い込まれていく中村文則の長篇です。犯罪小説の緊張を持ちながら、偶然、宿命、倫理の問題が強く前面に出ます。都市の雑踏と孤独な身体技術が結びつく、暗く硬質な作品です。
- 285 2009 ソードリッカー そーどりっかー 『ソードリッカー』は、題名の剣や舌の感触が示すように、身体感覚と暴力のイメージを強く帯びた佐藤憲胤の小説です。講談社刊の単行本として確認できるが、今回の公開資料では詳細な内容紹介までは確認できませんでした。現時点では、身体、攻撃性、孤立した人物像を軸に読む作品として暫定的に整理します。
- 286 2009 永遠のかけら えいえんのかけら 『永遠のかけら』は、失われた時間や記憶の断片を、恋愛や人間関係の揺れと重ねて読むことのできる高瀬ちひろの小説です。題名の「かけら」は、完全な永遠ではなく、人物の手元に残る小さな感情の痕跡を思わせます。公開資料で内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲に絞って紹介します。
- 287 2009 TRIP TRAP トリップ・トラップ 『TRIP TRAP』は、移動や逸脱の感覚を、恋愛、身体、都市的な不安と結びつける金原ひとみの小説です。旅を意味する「TRIP」と罠を意味する「TRAP」が並ぶ題名は、自由に見える移動が別の閉塞へつながる感覚を示します。鋭い身体感覚と、若い人物の危うい関係性が読みどころです。
- 288 2009 潰玉 ついぎょく 『潰玉』は、壊れやすいものを抱えた人物の感覚を、題名どおり押し潰されるような身体性と結びつける墨谷渉の中篇です。人間関係や自己認識が、硬い玉ではなく潰れて形を変えるものとして描かれているように読めます。情報は限られるものの、身体と孤独の圧迫感が中心にある作品として整理します。
- 289 2009 ヤイトスエッド やいとすえっど 『ヤイトスエッド』は、吉村萬壱らしい異物感のある題名と身体の手ざわりを持つ小説です。日常の秩序が少しずつゆがみ、人物の身体や欲望が不穏なかたちで前景化します。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 290 2009 憂鬱たち ゆううつたち 『憂鬱たち』は、精神科へ向かう神田憂の妄想と憂鬱を連ねる金原ひとみの連作短篇集です。診察室にたどり着くまでの反復が、病の記録であると同時に、自己を保つための語りにもなっています。鋭い身体感覚と内面の過剰さが、閉じた都市生活の息苦しさを強めます。
- 291 2009 水族 すいぞく 『水族』は、星野智幸が2009年に岩波書店から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 292 2008 やさしいため息 やさしいためいき 『やさしいため息』は、芥川賞受賞後第一作として発表され、日常のなかで揺れる若い人物の息づかいを静かに描く作品です。家族や生活の小さな変化が、はっきりした事件よりも大きく人物の感情を動かします。青山七恵らしい簡潔な文体が、孤独と自立のあいだの時間をすくい取ります。
- 293 2008 ばかもの ばかもの 『ばかもの』は、大学生の恋愛の終わりから十年後の再会までをたどり、アルコール依存を抱える男の時間を描く作品です。恋愛の失敗は単なる思い出ではなく、生活の崩れや病と結びついて残ります。絲山秋子の乾いた文体が、不器用な愛情と回復の難しさを抑制して描きます。
- 294 2008 ぼくは落ち着きがない ぼくはおちつきがない 『ぼくは落ち着きがない』は、学校や図書室の空気を背景に、落ち着かなさを抱える若い人物たちの会話と距離を描く作品です。長嶋有らしい少しずれたユーモアが、青春の居場所のなさを軽く見せます。図書館的な静けさと、内側のざわつきの対比が読みどころです。
- 295 2008 クロスフェーダーの曖昧な光 くろすふぇーだーのあいまいなひかり 三島由紀夫『金閣寺』をモチーフとし、宗教というテーマを現代の感覚で引き受けようとした意欲作。DJ機材の「クロスフェーダー」を題名に掲げ、ふたつの音源のあいだを行き来するように、聖なるものと現実のあいだで揺れる意識の「曖昧な光」を掬い取ろうとする。第40回新潮新人賞受賞作で、受賞掲載誌はNDLサーチで… 第40回 新潮新人賞
- 296 2008 ギンイロノウタ ギンイロノウタ 『ギンイロノウタ』は、表題作と「ひかりのあしおと」の二篇を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、無差別殺人衝動に襲われる内気な少女を描く表題作と、殺傷行為と恋愛感情が交差する女子大生の物語として説明されています。性、暴力、成熟への憧れが結びつき、村田作品の危うい身体感覚が前面に出た一冊です。 第31回 野間新人賞
- 297 2008 灰色猫のフィルム はいいろねこのふぃるむ 母親を殺した「僕」は、動機も経緯も語らないまま町を放浪する。公園での野宿を経てホームレスの「ハタさん」と出会い、河川敷の小屋でともに暮らしはじめるが、ハタさんが大切にしていた灰色の猫が殺される日まで、束の間の安らぎは続かない。公衆トイレなどの不潔で醜悪な細部が彷徨う心理を映し出す一方、動物や迷子の少… 第32回 すばる文学賞
- 298 2008 廃車 はいしゃ 車検切れが迫る壊れかけの車を、主人公は中国人留学生に無償で譲り渡す。ところが期限を過ぎても相手は約束した廃車手続きをせず、それどころか、わけのわからないまま主人公のほうが怨まれていく。日常の小さな親切が言葉も論理も通じない泥沼へ転がり落ちる過程を、乾いたユーモアで描いた不条理劇。受賞作は『文學界』2… 第107回 文學界新人賞
- 299 2008 走ル はしる 『走ル』は、高校生が自転車で北へ向かい続けるロードノベルです。走る身体の疲労と速度が、若い自意識や孤独をそのまま運んでいきます。目的地よりも、移動し続ける時間のなかで自分の輪郭が変わるところが読みどころです。
- 300 2008 星空の下のひなた。 ほしぞらのしたのひなた 『星空の下のひなた。』は、星空とひなたという対照的なイメージを重ね、若い人物の恋愛や孤独を描く作品として整理できます。明るさと暗さが同じ場面に同居し、日常のなかで見落とされがちな感情をすくいます。書誌以外の資料は少なく、今後は紹介記事・書評で精度を上げたい作品です。
- 301 2008 星のしるし ほしのしるし 『星のしるし』は、日常の風景のなかに残る小さな兆しを、柴崎友香らしい観察で描く作品です。星という遠いもののイメージが、都市の生活や人との距離に静かな奥行きを与えます。歩くような文体で、恋愛や記憶が大きな劇ではなく生活のなかに滲みます。
- 302 2008 射手座 いてざ 日系ブラジル人の語り手が、妹ルシアに関わる謎めいた男・加賀芳明と向き合う。妹の万引きに関わった加賀は、やがて妹が遺棄した赤ん坊について語り出し、赤ん坊を運んで山道をひとりさまよう。語り手が加賀から聞いた話を伝聞のかたちで重ねていく重層的な構造により、何が真実かは最後まで曖昧なまま、登場人物の誰ひとり… 第107回 文學界新人賞
- 303 2008 いつかソウル・トレインに乗る日まで いつかソウル・トレインにのるひまで 高橋源一郎が「初の恋愛小説」と銘打って2008年に集英社から刊行した長編。20年ぶりにソウルを再訪した主人公ケンジが、かつての恋人の娘ファソンと出会い、二人が惹かれ合いながら純愛を探す3日間を追う。題名の「ソウル・トレイン」は、アメリカの黒人音楽番組『Soul Train』と、韓国のソウル(Seou…
- 304 2008 けちゃっぷ けちゃっぷ 言いたいことを相手に直接言わず、何もかもブログにアップしてしまう──そんなヴァーチャル化した現代のコミュニケーションを、ネットの文体と口語をなだれ込ませた語りで写し取った作品。書き込みと現実のあいだでずれていく自意識を通して、ゼロ年代後半のウェブ社会に生きる若者の孤独と滑稽さを軽やかにすくい上げる… 第45回 文藝賞
- 305 2008 花束 はなたば 『花束』は、贈り物としての花束が持つ親密さと儀礼性を手がかりに、人と人の関係を描く作品です。美しいものを差し出す行為の裏に、言えなかった感情や生活の痛みが潜みます。静かな語りのなかで、家族や恋愛の距離が少しずつ見えてきます。
- 306 2008 金色のゆりかご きんいろのゆりかご 『金色のゆりかご』は、ゆりかごのイメージが示す家族や子どもの時間を、現実の生活のなかで見つめる作品です。佐川光晴らしい社会への視線が、保護されるべき場所とそこから漏れる不安を描きます。家族の温かさと脆さを同時に読む小説として整理できます。
- 307 2008 切れた鎖 きれたくさり 『切れた鎖』は、地方の閉ざされた土地に生きる血族を描く三篇を収めた作品集です。家族や土地の結びつきは守りではなく、逃れがたい暴力や因縁として迫ってきます。簡潔で硬い語りが、血縁の鎖が切れる瞬間の不穏さを際立たせます。 第21回 三島賞
- 308 2008 子守唄しか聞こえない こもりうたしかきこえない 田舎町に暮らす女子高生・美里は、男友達4人に囲まれた一見満ち足りた日々を送っている。だが「愚鈍な真沙子」と見下していた同級生が自分に執着し、つきまとうようになると、保っていたはずのエゴの均衡が崩れはじめる。幼い日の海の記憶や謎めいた老婆との出会いを織り込みながら、思春期の自意識の残酷さと出口のなさを… 第51回 群像新人賞
- 309 2008 蟋蟀 こおろぎ 『蟋蟀』は、虫の声や小さな気配を思わせる題名のもと、日常の奥に潜む不安や孤独を描く栗田有起の作品です。目立たないものに耳を澄ませるような語りが、家や都市の生活を少し奇妙なものに変えます。静かな現実感と寓話性の境目を読む小説です。
- 310 2008 マイクロバス マイクロバス 『マイクロバス』は、移動する小さな乗り物を通して、地方の場所や人々の距離を描く小野正嗣の作品です。バスという共有空間は、共同体に属することと、そこから外れることの両方を見せます。静かな語りのなかで、土地の記憶と孤独がゆっくり浮かび上がります。
- 311 2008 マウス マウス 『マウス』は、少女たちが自分らしくあるための揺れを描く長編です。Amazonの商品紹介では、少女から女性へ、子どもから大人へと移る時間のなかで、女の子同士の好意、友情、いじわる、ライバル心を鮮明に描く作品とされています。教室内の関係性と成長の痛みを、村田作品らしい息苦しさで読ませる作品です。
- 312 2008 長い終わりが始まる ながいおわりがはじまる 『長い終わりが始まる』は、終わりが一瞬ではなく長く続いていく感覚を、恋愛や生活の変化に重ねる作品です。山崎ナオコーラらしい平明な語りが、別れや変化を大げさにせず日常の速度で見せます。終わりを迎えるまでの時間そのものを読む小説です。
- 313 2008 ありったけの話 ありったけのはなし 『ありったけの話』は、話すこと、語り尽くそうとすることを通して、人と人の関係を描く作品です。題名の通り、言葉を差し出すことが親密さの表現である一方、語っても残る距離も浮かび上がります。中山智幸の作品として、会話と記憶の密度を読む一冊です。
- 314 2008 空で歌う そらでうたう 『空で歌う』は、歌うことや空を見上げる感覚を通して、若い人物の孤独と希望を描く作品として整理できます。芸術や声は、現実から逃げるためだけでなく、誰かに届くための手段になります。書誌以外の資料は少なく、今後は掲載誌・書評で主題を精査したい作品です。
- 315 2008 波打ち際の蛍 なみうちぎわのほたる 『波打ち際の蛍』は、傷を抱えた人物が、波打ち際のように揺れる場所で他者との距離を測り直す島本理生の作品です。蛍の光のようなかすかな希望と、身体に残る痛みが同時に描かれます。恋愛や回復を単純に美化せず、触れ合うことの怖さまで含めて読ませます。
- 316 2008 逃げ道 にげみち シャワートイレ業者に雇われ、一般人のふりをして製品を試す「モニター工作員」として働く若い女性が主人公。アルバイト先の不祥事を機に、彼女は営業担当の田尻とともに街を離れ、千葉の屛風ヶ浦へと車を走らせる。隣人が全裸で現れるなどのノンセンスな場面や、エクセルの表を組み込む形式の実験を織り交ぜながら、どこに… 第106回 文學界新人賞
- 317 2008 ラジ&ピース らじあんどぴーす 『ラジ&ピース』は、ラジオや言葉の届き方を思わせる題名のもと、人と人がどのように声を受け渡すかを描く作品です。絲山秋子らしい乾いた会話と距離感が、親密さと孤独を同時に浮かび上がらせます。平和やつながりを軽く言い切れないところに、作品の手触りがあります。
- 318 2008 乱暴と待機 らんぼうとたいき 『乱暴と待機』は、奇妙な共同生活のなかで、加害と被害、依存と復讐がねじれていく本谷有希子の小説です。閉じた生活空間にいる人物たちの言葉は、笑えるほど過剰でありながら、相手を縛る力を持っています。戯曲的な会話のテンポと、待ち続けることの不穏さが読みどころです。
- 319 2008 りすん りすん 『りすん』は、『アサッテの人』以後の諏訪哲史が、聞くこと、話すこと、言葉のずれをさらに押し広げる実験的な作品です。タイトルの響きそのものが、意味に届く前の音や聞き間違いを思わせます。言語への執着と、他者へ届かない感覚が重なった小説として読めます。
- 320 2008 ポトスライムの舟 ぽとすらいむのふね 『ポトスライムの舟』は、工場で働きながら生活費を切り詰めるナガセを主人公にした中篇です。世界一周クルーズの費用が自分の年収とほぼ同じだと知ったナガセは、その金額を一年で貯めようとします。非正規労働、家計の細さ、友人や母との関係、ポトスライムを育てる日々が重なり、生活を続けることの苦しさと粘りが描かれ… 第140回 芥川賞
- 321 2007 あなたの呼吸が止まるまで あなたのこきゅうがとまるまで 『あなたの呼吸が止まるまで』は、息をすること、生き延びること、他者と関わることを強い身体感覚で描く島本理生の小説です。恋愛や依存の感情が、相手の呼吸を意識するほど近い距離で語られます。親密さの美しさだけでなく、そこに潜む苦しさを読む作品です。
- 322 2007 ひとり日和 ひとりびより 『ひとり日和』は、二十歳の知寿が高齢の遠縁・吟子さんと同居し、働きながら自立の感覚を少しずつ探る作品です。老いと若さ、家族ではない同居、ひとりでいることの自由と寂しさが、淡々とした語りで描かれます。大きな成長物語ではなく、日々の観察から生活の輪郭が変わるところが読みどころです。 第136回 芥川賞
- 323 2007 アサッテの人 あさってのひと 吃音を抱えていた叔父は、いつしか「ポンパ!」などの意味を持たない言葉=アサッテの言葉を突発的に口にするようになり、やがて失踪した。「私」はその叔父をめぐる小説を書こうとするが、語りは草稿、叔父の日記、回想が混在するまま進んでいく。言葉の規範から「アサッテ」の方向へ逸脱したいという渇望を、小説の形式そ… 第50回 群像新人賞
- 324 2007 だだだな町、ぐぐぐなおれ だだだなまち、ぐぐぐなおれ 第50回群像新人文学賞優秀作に選ばれ、『群像』2007年6月号に掲載された作品。タイトルの擬音めいた口語と「おれ」を前面に出した造形から、停滞した町でくすぶる人物の感覚を、脱力した一人称で描く作品として整理できる。単行本書誌は今回確認できず、内容紹介は雑誌掲載情報と既存分類に基づく低確信の暫定記述に…
- 325 2007 ダーティ・ワーク だーてぃ・わーく 『ダーティ・ワーク』は、仕事や関係のなかで避けられない面倒さを、絲山秋子らしい乾いた文体で描く作品です。労働をきれいごとにせず、そこで生まれる距離、疲労、親密さを淡々と見つめます。人と人の関係を、会話と行動のずれから読ませるところに魅力があります。
- 326 2007 エロマンガ島の三人 えろまんがじまのさんにん 『エロマンガ島の三人』は、長嶋有の異色作品集として、奇妙な地名や設定から日常の感覚をずらしていく作品です。旅行記や冒険譚のような外見を借りながら、人と場所の距離感をユーモラスに扱います。題名の軽さの奥に、どこにも完全には属せない感覚が残ります。
- 327 2007 星へ落ちる ほしへおちる 『星へ落ちる』は、恋愛や身体の感覚を、落下するような不安定さのなかで描く金原ひとみの作品です。きらびやかな題名とは対照的に、登場人物の感情は孤独や衝動に強く引かれます。短く鋭い語りが、関係の熱と冷えを同時に伝えます。
- 328 2007 いい子は家で いいこはいえで 『いい子は家で』は、家という閉じた場所と「いい子」であることの圧力をめぐる青木淳悟の作品です。日常の言葉や振る舞いが少しずつずれ、家族や共同体の規範が不穏なものとして見えてきます。実験的な文体が、従順さの裏側にある違和感を浮かび上がらせます。
- 329 2007 カツラ美容室別室 かつらびようしつべっしつ 『カツラ美容室別室』は、美容室という場所を通して、働く人や訪れる人の関係を描く山崎ナオコーラの作品です。髪や見た目を整える場が、ジェンダー、労働、自己像を考える舞台になります。軽やかな会話のなかに、他人と同じ空間にいることの気まずさと楽しさが同居しています。
- 330 2007 島の夜 しまのよる 『島の夜』は、島という隔てられた場所と夜の時間を背景に、孤独や記憶の濃度を描く作品として整理できます。閉じた地理は、人間関係を近づける一方で、逃げ場のなさも作ります。静かな語りのなかに、不安と親密さが同時に漂う読み味があります。
- 331 2007 救済の彼岸 きゅうさいのひがん 『救済の彼岸』は、救いを求める感覚と、その先にある孤独を題名から強く意識させる作品です。信仰や倫理をめぐる問いが、現代の生活のなかでどのように立ち上がるかを読む切り口があります。書誌以外の資料はまだ少ないため、今後は掲載誌や書評で主題を精査したい作品です。
- 332 2007 また会う日まで またあうひまで 『また会う日まで』は、再会と別れをめぐる時間の感覚を、柴崎友香らしい日常の観察で描く作品です。人と人が会う場所、離れる場所、そのあいだに流れる記憶が物語の中心になります。関西の街を歩くような語りが、恋愛や孤独を過度に劇化せずに映し出します。
- 333 2007 バイバイ ばいばい 『バイバイ』は、別れを告げる言葉の軽さと重さを、恋愛や生活の終わりの感覚に重ねる作品です。望月あんねの作品として、人物が関係を断ち切るときに残る記憶や孤独に焦点を置いて読めます。大きな事件よりも、去ることと残されることの温度差が読みどころになります。
- 334 2007 二度はゆけぬ町の地図 にどはゆけぬまちのちず 『二度はゆけぬ町の地図』は、戻れない場所への執着と、貧しい生活の記憶を私小説的な語りでたどる作品です。西村賢太らしい露悪的な自己凝視が、地図に残る町と、もう行けない過去を重ねます。労働、金銭、孤独が乾いた笑いと屈辱の感覚で結びついています。
- 335 2007 オブ・ザ・ベースボール おぶ・ざ・べーすぼーる 年に一度くらいの割合で空から人が降ってくる町、ファウルズ。「私」はユニフォームとバットを支給されたレスキュー・チームの一員として、落ちてくる人をフルスイングで打ち返すべく日々待機している。およそ役に立たない職務をめぐる思弁が、乾いた論理の積み重ねでどこまでも転がっていく。不条理な設定を理詰めで駆動す… 第104回 文學界新人賞
- 336 2007 大きな熊が来る前に、おやすみ。 おおきなくまがくるまえに、おやすみ。 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』は、二人暮らしの親密さと不安を、熊という不穏なイメージをまとわせて描く作品です。恋愛や同居の幸福だけでなく、同じ部屋にいることの圧迫感や、相手を完全にはわからない怖さが前面に出ます。柔らかな題名の奥に、関係の危うさを読む小説です。
- 337 2007 パワー系181 ぱわーけいいちはちいち 身長181センチ、強靭な肉体を持つ女性リカが開いた個人サロンには、身体測定マニア、張り手を浴びたいマゾヒスト、衣類フェチなど、それぞれ奇妙な性癖を抱えた男たちが通ってくる。彼らが求める「本物のエクスタシー」を、湿った官能ではなく即物的でドライな筆致で記録していく。身体とマゾヒズムという題材を真っ向か… 第31回 すばる文学賞
- 338 2007 最後の命 さいごのいのち 『最後の命』は、少年時代の傷と再会、罪の記憶をめぐって、人が最後に何を拠りどころに生きるのかを問う作品です。中村文則らしい暗い心理描写が、暴力や孤独を抽象化せず、身体に残る感覚として描きます。過去に囚われた人物が他者との関係を回復できるのかが、緊張を生みます。
- 339 2007 たとえば、世界が無数にあるとして たとえばせかいがむすうにあるとして 『たとえば、世界が無数にあるとして』は、別の可能性としての世界を想像しながら、自分の選択や関係を見つめる作品です。現実の生活に、もしも別の自分がいたらという寓話的な問いが差し込まれます。恋愛や孤独を、ひとつの世界だけでは説明しきれない揺れとして読むことができます。
- 340 2007 図書準備室 としょじゅんびしつ 『図書準備室』は、高校卒業後にひきこもり続ける男の独白を中心に、閉じた場所と停滞する時間を描く第一作品集です。図書準備室という学校の余白のような場所が、社会へ出られない人物の内面と重なります。田中慎弥の硬質な語りが、青春の後に残った孤独を乾いた感触で示します。
- 341 2007 うつつ・うつら うつつうつら 『うつつ・うつら』は、現実とうつつの境目を揺らしながら、人物の記憶や自己像の不確かさを描く作品集です。赤染晶子の作品らしく、日常の言葉や振る舞いが少しずつ奇妙なものへ変わっていきます。軽いユーモアと不穏さが同居する語りが読みどころです。
- 342 2007 ミッドナイト・クライシス ミッドナイト クライシス 2007年刊の集英社単行本。既収録の『イラコ岬』前後の著作として追加候補になる。
- 343 2007 植物診断室 しょくぶつしんだんしつ 『植物診断室』は、星野智幸が2007年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 344 2006 暗渠の宿 あんきょのやど 『暗渠の宿』は、粗暴で不器用な私小説的主人公・北町貫多の同棲生活と生活感情を描く作品集です。貧困、労働、性的な執着が、露悪的な自己観察と乾いたユーモアのなかで語られます。暗渠という見えない水路の比喩のように、日常の底を流れる屈辱と欲望が読みどころになります。 第29回 野間新人賞
- 345 2006 どうで死ぬ身の一踊り どうでしぬみのひとおどり 『どうで死ぬ身の一踊り』は、大正期の私小説家・藤澤清造の「歿後弟子」を自任する男をめぐる、西村賢太初期の作品集です。文学への執着、貧しい生活、対人関係の不器用さが、露悪的でありながら妙に律儀な語りで押し出されます。私小説の系譜を現代に引き寄せる作品として読めます。
- 346 2006 エスケイプ/アブセント えすけいぷ/あぶせんと 『エスケイプ/アブセント』は、逃避と不在という二つの言葉を軸に、関係のなかで空白を抱える人物を描く作品です。絲山秋子らしい簡潔な文体が、説明しすぎないまま感情の距離を保ちます。逃げること、いないこと、忘れられないことが重なり合う静かな読後感があります。
- 347 2006 風化する女 ふうかするおんな 突然死んだ会社の先輩れい子には、職場で見せていたのとは別の顔があった。「私」はその謎をたどって東京から地方へと旅をし、死んだ女の生の痕跡に自分を重ねていく。日々がたえず「風化」していく都会の生活感覚を背景に、死者をなぞることでしか確かめられない自分の輪郭を、抑制された筆致で描いたデビュー作。 第102回 文學界新人賞
- 348 2006 銀色の翼 ぎんいろのつばさ 『銀色の翼』は、生活の現場にいる人々の視線から、家族、労働、社会的な孤立を描く佐川光晴の小説です。派手な事件よりも、日々の選択や関係のほころびを通して人物を立ち上げるタイプの作品として位置づけられます。現実に踏みとどまる語りが、傷や希望を過度に美化しない点が読みどころです。
- 349 2006 ヘンリエッタ へんりえった みーさん、あきえさん、そして「わたし」。女3人は「ヘンリエッタ」に守られながら、ちょっと奇妙な共同生活を送っている。血縁とも友情ともつかない女たちの暮らしのディテールを、幼さの残るまっすぐな言葉でつづり、閉じた生活圏のやわらかさと危うさを同時に感じさせる。高校在学中の17歳が書いたデビュー作として注… 第43回 文藝賞
- 350 2006 月とアルマジロ つきとあるまじろ 『月とアルマジロ』は、現実的な日常に奇妙なイメージを差し込み、若い人物の孤独や自己意識を照らす作品です。月とアルマジロという取り合わせが示すように、遠いものと身近なものの距離感が作品の手ざわりを作っています。簡潔な語りの奥に、寓話的なずれを読む楽しさがあります。
- 351 2006 生きてるだけで、愛。 いきてるだけで、あい。 『生きてるだけで、愛。』は、鬱と過眠に苦しむ寧子と、同棲相手・津奈木の関係を描く恋愛小説です。感情の爆発と生活の停滞が同時に描かれ、病や孤独が恋愛のなかでどう噴き出すかを見せます。荒さを残した一人称的な距離感が、登場人物の息苦しさを直接伝えます。
- 352 2006 いやしい鳥 いやしいとり 飲み会で初めて会った学生を家に連れ帰るはめになった非常勤の大学講師。その夜を発端に、男が鳥へと変身していく惨劇が起こる。講師の視点と隣に住む専業主婦の視点を交互に置き、時系列を少しずつずらす構成で、日常に走る裂け目をグロテスクな滑稽さとともに見せる。藤野の出発点となった変身譚で、奇想と冷静な観察眼の… 第103回 文學界新人賞
- 353 2006 公園 こうえん 『公園』は、世界の縮図のような公園から下田、ニューヨーク、グラウンド・ゼロへと移動していく大学生の「ぼく」と友人オノサを描くデビュー作。河出書房新社の紹介では、目的のはっきりしない移動と9.11後の世界感覚が結びつけられており、場面を飛躍させる語りが若者の浮遊感を生む。青春小説の軽さと、世界の暴力を… 第43回 文藝賞
- 354 2006 幻をなぐる まぼろしをなぐる 失恋の痛手を抱えた女性が、相手を忘れるために身体を鍛え、欲望と妄執を抱え込んでいく。集英社側の紹介では、痛みをただ感傷として描くのではなく、生々しさとピュアさをあわせ持つ「現代の失恋」の物語として打ち出されている。恋愛の喪失を身体の運動や執着の問題として描く点に読みどころがある、第30回すばる文学賞… 第30回 すばる文学賞
- 355 2006 愛の島 あいのしま 『愛の島』は、島という閉じた場所を背景に、愛や孤独をめぐる関係の揺れを描く作品として整理できます。遠く離れた場所である島は、人物の逃避先であると同時に、自分の感情と向き合う場にもなります。書誌情報以外の詳細資料はまだ少ないため、今後の批評・紹介資料で精度を上げたい作品です。
- 356 2006 森のはずれで もりのはずれで 『森のはずれで』は、共同体の中心ではなく「はずれ」に立つ人物の感覚を、小野正嗣らしい静かな語りで描く作品です。森や周縁の場所は、記憶、土地、言葉の違いを考えるための舞台になります。中心から外れた場所で人がどう他者と出会うかを読む作品として位置づけられます。
- 357 2006 無限のしもべ むげんのしもべ 早く目覚めすぎた休日の朝、稔がマンションから見下ろすと、駐車場に円卓を持ち込んでティーパーティーに興じる4人の男女がいた。そのなかの美人に目をつけた稔は、パーティーに加わりあわよくば濃密な性愛を、という淫靡な考えに取り憑かれ作戦を練り始める。性的妄想の無意味な暴走を生真面目な文体で押し切る、木下古栗… 第49回 群像新人賞
- 358 2006 沖で待つ おきでまつ 『沖で待つ』は、同期入社の男女の友情と、死後に残された約束をめぐる作品です。恋愛に回収されない親密さを、職場の記憶と喪失の感覚を通して描きます。絲山秋子の簡潔で乾いた語りが、死者との距離を過度に sentimental にせず保つところが読みどころです。 第134回 芥川賞
- 359 2006 ポータブル・パレード ぽーたぶる・ぱれーど 第38回新潮新人賞の小説部門受賞作として、『新潮』2006年11月号に掲載された作品。NDLサーチでは「小説部門受賞作」としての雑誌掲載情報を確認できるが、出版社公式の単行本紹介や内容紹介は今回確認できなかった。内容細部は公開情報が少ないため、現時点では受賞・掲載情報を中心にした暫定紹介にとどめる。 第38回 新潮新人賞
- 360 2006 そろそろくる そろそろくる 『そろそろくる』は、日常のなかで身体や感情の変化を待ち受ける感覚を描く作品として整理できます。中島たい子の小説に特徴的な、身近な生活の違和感をユーモアに変える語りが読みどころです。大きな事件よりも、心身のリズムが崩れる瞬間に焦点が置かれます。
- 361 2006 浮世でランチ うきよでらんち 『浮世でランチ』は、食事や仕事場の場面を通して、現代の若い人物が社会とどう折り合うかを描く作品です。山崎ナオコーラらしい軽い会話と観察が、日常の居心地の悪さを柔らかく浮かび上がらせます。ランチという身近な行為が、関係や労働を見直す入口になっています。
- 362 2006 ぜつぼう ぜつぼう 『ぜつぼう』は、題名の強い感情をそのまま扱いながら、本谷有希子らしい不穏さと滑稽さで日常のずれを描く作品です。人物の思い込みや関係の歪みが、現実を少しずつ奇妙なものに変えていきます。絶望を重苦しいだけでなく、笑いと怖さの境目に置く読み味があります。
- 363 2006 愛と癒しと殺人に欠けた小説集 あいといやしとさつじんにかけたしょうせつしゅう 講談社2006年刊の単行本。伊井直行の短篇側を補う追加候補。
- 364 2006 虹とクロエの物語 にじとくろえのものがたり 『虹とクロエの物語』は、星野智幸が2006年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 365 2006 われら猫の子 われらねこのこ 『われら猫の子』は、星野智幸が2006年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 366 2005 悪意の手記 あくいのてき 悪意や罪の意識を抱えた人物の内面を、手記という形式に近い暗い語りで追う中村文則の初期作品。出来事の派手さよりも、語り手が自分の中の暴力や孤独をどう正当化し、どう崩れていくかが中心になる。後の中村作品に続く、犯罪、自己嫌悪、倫理の揺らぎが濃く表れた一作。
- 367 2005 BGM びーじーえむ 現役教師として文藝賞を受賞した岡田智彦の、受賞後第一作として発表された作品。題名の「BGM」は、人物の感情を大きな事件で説明するのではなく、日常の背後で鳴り続ける気配として捉える読みを誘う。若い感覚と学校・生活の現場が交差する、2000年代文藝賞周辺の一作である。
- 368 2005 フルタイムライフ フルタイムライフ 新社会人として働きはじめた春子の日常を、会社の時間、疲れ、同僚との距離感から等身大に描く長編。仕事が劇的な自己実現になるのではなく、生活の大半を占める時間として淡々と積み上がる。柴崎友香らしい心情に寄りすぎない文体で、働きはじめの戸惑いと観察が描かれる。
- 369 2005 窓の灯 まどのひ 大学を辞めた「私」は、時代に取り残されたような喫茶店で働きながら、向かいの部屋の窓の中を覗くことを日課にしている。やがて視線は夜の街の散歩で垣間見える家々の窓へと広がり、他人の生活の灯に惹かれる気配がゆるやかに濃くなっていく。覗くことのうしろめたさと官能を、抑制の効いた一人称で描く第42回文藝賞受賞… 第42回 文藝賞
- 370 2005 マルコの夢 まるこのゆめ 栗田有起が、夢や空想の気配を日常のずれの中に置いた作品。人物たちは現実から大きく逃げ出すのではなく、少しだけ別の見方を差し込むことで、自分の居場所を探っていく。軽やかな題名の裏に、他人とわかり合えない孤独がにじむ。
- 371 2005 泣かない女はいない なかないおんなはいない 泣かない、あるいは泣けない女性の姿を、恋愛や仕事の日常の中から描く長嶋有の中篇。感情を大きく説明せず、会話や行動の端に表れる違和感で、人物の孤独を浮かび上がらせる。ユーモラスな題名の裏に、強がりと弱さが同時にある作品である。
- 372 2005 ニート にーと 「ニート」という言葉が社会的に広まった時期に、働くことから外れた人物の時間を描く絲山秋子の作品。無職であることを単純な問題や説教にせず、生活の細部、会話、周囲とのずれとして描く。乾いたユーモアの中に、労働規範から外れた人間の居場所のなさが見える。
- 373 2005 オテルモル おてるもる 『オテルモル』は、奇妙なホテルをめぐる幻想的な設定を手がかりに、旅先で宙づりになる感覚や、日常から少し外れた場所にいる人の孤独を描く作品です。栗田有起らしい軽やかな導入の奥に、記憶や帰属の揺らぎが潜む読み味があります。舞台の閉じた空間が、登場人物の不安と期待を増幅する点が読みどころです。
- 374 2005 さりぎわの歩き方 さりぎわのあるきかた 29歳の「僕」は、青春の終わりを記念するかのように一泊の合コンに参加する。怪しげな新事業の話、旧友の転落と自殺——若さの賞味期限が切れかかった男たちの周りで起こる出来事を、「こういうのがお望みのドラマなんだろう?」と斜に構えた語りで突き放しながら、それでも去り際の身の処し方を探っていく。まっとうな成… 第101回 文學界新人賞
- 375 2005 さよなら アメリカ さよなら あめりか 「ぼく」は頭から袋を被って生活している。袋の後ろには「SAYONARAアメリカ」のロゴ。噂に聞いた同じ袋族の少女に会うために街をさまよい、突然現れた異母弟を名乗る男との奇妙な共同生活が始まる。袋で社会から自分を隔てながら、袋の仲間との出会いだけは求めてしまう——その矛盾を、深刻ぶらないオフビートなユ… 第48回 群像新人賞
- 376 2005 逃亡くそたわけ とうぼうくそたわけ 『逃亡くそたわけ』は、精神病院を抜け出した二人の若者が、博多から九州を北へ進む逃避行を描く小説です。方言を含む勢いのある語りが、病や孤立を重く固定せず、滑稽さと切実さの両方で走らせます。逃げることが同時に自分の輪郭を確かめることになる、青春ロードノベルとして読めます。
- 377 2005 東京奇譚集 とうきょうきたんしゅう 『東京奇譚集』は、「偶然の旅人」などを収め、都市の日常にふと入り込む不可思議な出来事を描く短編集です。村上春樹の抑制された語りが、偶然、喪失、記憶のずれを静かに増幅します。東京という現実的な地名を持ちながら、物語は現実の向こう側に開く寓話性を帯びています。
- 378 2005 土の中の子供 つちのなかのこども 『土の中の子供』は、幼少期の虐待の記憶を抱えた青年が、暴力と性のただなかで自分の生を測り直す作品です。語りは身体感覚に近く、外から説明するよりも、壊れた自己認識の内側から世界を見せます。暗い題材を扱いながら、傷の再演とそこからの微かな抵抗を描く点に緊張があります。 第133回 芥川賞
- 379 2005 冷たい水の羊 つめたいみずのひつじ 級友たちの生け贄のようにいじめの標的にされた中学生の少年。彼は「いじめられたと感じたらそれがいじめ」という定義を逆手に取り、「自分はいじめられていない」という独自の論理に立てこもって、陰惨な仕打ちを受け続ける。いじめを告発した同級生の少女・水原里子との心中の計画が、物語に暗い水脈のように流れる。羊の… 第37回 新潮新人賞
- 380 2005 君は永遠にそいつらより若い きみはえいえんにそいつらよりわかい 『君は永遠にそいつらより若い』は、大学卒業を間近に控えたホリガイの、バイト、学校、下宿、友人との日々を描く津村記久子のデビュー作です。だらだらした学生生活の表面の下に、暴力や悪意、見過ごされがちな哀しみが少しずつ顔を出します。日常の軽さを保ちながら、傷ついた人の存在を消さずに書く、津村文学の出発点で… 第21回 太宰治賞
- 381 2005 名もなき孤児たちの墓 なもなきこじたちのはか 表題作は『新潮』2005年8月号に掲載され、2006年に新潮社から刊行された同名作品集の核となる短編。中原昌也らしい不穏で断片的な語りが、名前を持たない者たちの孤立や行き場のなさを、整った物語の救済から遠ざけて描く。公開されている内容紹介は乏しいため、具体的な筋の断定は避け、書誌・受賞情報と作風に限… 第28回 野間新人賞
- 382 2005 在日ヲロシヤ人の悲劇 ざいにちをろしやじんのひげき 『在日ヲロシヤ人の悲劇』は、星野智幸が2005年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 383 2004 アフターダーク あふたーだーく 深夜0時過ぎから夜明けまでの東京を舞台に、ファミリーレストラン、ホテル、オフィス、眠り続ける部屋がゆるく接続される。視点はカメラのように人物の間を移動し、姉妹、孤独な青年、暴力の痕跡を、夜の都市の断片として映し出す。長大な物語ではなく、時間を区切った構成と映像的な語りで、村上春樹作品の都市感覚を凝縮…
- 384 2004 青空感傷ツアー あおぞらかんしょうツアー 身勝手で魅力的な親友・音生に振り回されながら、「私」が各地を巡るロードノベル。旅は爽快な逃避であると同時に、親友への憧れや苛立ち、自分の輪郭の曖昧さを映し出す時間でもある。柴崎友香らしい移動の感覚と会話のリズムで、若い女性同士の距離を軽やかに描く。
- 385 2004 袋小路の男 ふくろこうじのおとこ 何も与えない男に、三年間片思いし続ける女の静かな恋愛小説。恋が進展しないこと、相手が応えないことを、単純な不幸ではなく、関係が袋小路のまま続いていく時間として描く。大きな事件を抑えた文体の中に、絲山秋子らしい乾いた痛みと可笑しさが残る。 第30回 川端賞
- 386 2004 ぐるぐるまわるすべり台 ぐるぐるまわるすべりだい 失意の青年が、バンドや仲間との関係の中で少しずつ再生へ向かう連作短篇集。若者の閉塞感を、深刻さだけでなく、音楽や会話の軽さ、少しずつ回り続ける遊具のような時間感覚で描く。中村航の青春小説としての明るさと、何者にもなれない痛みが並走する。 第26回 野間新人賞
- 387 2004 灰色の瞳 はいいろのひとみ 佐川光晴の2004年刊行作で、NDLには第一部・第二部として雑誌掲載記事が確認できる。人間関係や家族の記憶を、明るく割り切れない「灰色」の領域として見つめる作品として整理できる。佐川作品に通底する、生活の手触りと関係の痛みを追う読みに向いている。
- 388 2004 初子さん はつこさん あんパンとクリームパンしか売らないパン屋の二階で、ひたすらミシンを踏む洋裁職人の初子さん。一枚の布が誰かの身体を待つ服になることに魅せられて職人になったものの、夢を叶えた先に広がるのは単調な日々だった。京都の田舎町のよどんだ空気と、そこで生きる女性の手仕事の時間を、とぼけたユーモアと正確な観察で描く… 第99回 文學界新人賞
- 389 2004 狐寝入夢虜 きつねねいりゆめのとりこ 三週間前に職を失った上岡鳥子は、空腹を抱えて神社へ散歩に出かけ、帰り道に迷い、年下の古本屋の倅と茶飲み話をして花札に興じる。働かないこと自体は気にしないが、仕事に存在理由を求める世間様の考え方には反感を覚える——そんな鳥子の「高潔なる怠惰」を、現代の話なのにわざと落語のような古風な語りで聞かせる。語… 第47回 群像新人賞
- 390 2004 野ブタ。をプロデュース のぶた。をぷろでゅーす クラスの人気者を巧みに「演じる」高校生・桐谷修二は、いじめの標的になっている転校生・小谷信太=野ブタを人気者にプロデュースする計画を始める。教室という市場でキャラクターを売り出すゲームは成功していくが、演じることでしか居場所を作れない修二自身の空虚が次第に露わになる。スクールカーストと自己演出の時代… 第41回 文藝賞
- 391 2004 お縫い子テルミー おぬいこてるみー 夜間の縫製工場で働く女性たちをめぐる連作短篇集。針仕事、夜勤、同僚との距離が、働くことの孤独と可笑しさを浮かび上がらせる。栗田有起の柔らかいユーモアが、職場小説を重くなりすぎない読後感へ導いている。
- 392 2004 パラレル ぱられる 長嶋有の2004年刊行作で、複数の関係や時間が「パラレル」に並んでいく感覚をもつ長編。日常の会話やちょっとしたすれ違いを淡々と積み重ね、劇的な和解よりも、近くにいるのに重なりきらない人間関係を描く。脱力したユーモアの中に、現代的な孤独がにじむ。
- 393 2004 サージウスの死神 さーじうすのしにがみ 徹夜明けの帰り道、ビルから飛び降りてきた男と目が合い、その死を目撃した主人公は、同僚に誘われた地下カジノ「freeze」でルーレットにのめり込む。預金を失い借金を重ねるうち、「頭の中に数字を飼っている」という感覚が芽生え、精神の破滅と引き換えに当たりの数字が見えるようになっていく。賭博と死の観念を硬…
- 394 2004 遮光 しゃこう 死んだ恋人の「残骸」を持ち歩き続ける青年が、嘘と妄想の境目を失っていく。喪失を受け止めるのではなく、異様な執着として保存しようとする心理が、硬く暗い文体で描かれる。中村文則の初期作品らしい、罪悪感、孤独、身体への嫌悪が凝縮された一作。 第26回 野間新人賞
- 395 2004 真空が流れる しんくうがながれる 第36回新潮新人賞受賞作として『新潮』2004年11月号に掲載された、佐藤弘のデビュー作。公開書誌で確認できる情報は掲載号と受賞発表にほぼ限られるため、具体的な筋の断定は避ける。単行本書誌は今回のNDL検索では確認できず、雑誌掲載作として記録しておくべき作品である。 第36回 新潮新人賞
- 396 2004 ショートカット ショートカット 柴崎友香が、都市の移動や人との距離を軽いタッチで描いた2004年刊行作。道を短く抜ける「ショートカット」の感覚は、場所だけでなく、関係や記憶へ近道を探す若い人物たちの姿にも重なる。淡い会話と細部の観察によって、日常の中にある変化の瞬間をすくう。
- 397 2004 海の仙人 うみのせんにん 海辺で暮らす人物の孤独に、現実から少しずれた存在や関係が入り込んでくる絲山秋子の長篇。日常的な会話の軽さと、死や喪失の気配が同じ平面に置かれ、海辺の時間が寓話のように広がる。恋愛小説でも幻想小説でもあるが、どちらにも収まりきらない余白が読みどころになる。
- 398 2004 ロンリー・ハーツ・キラー ろんりーはーつきらー 『ロンリー・ハーツ・キラー』は、星野智幸が2004年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 399 2004 アルカロイド・ラヴァーズ あるかろいどらゔぁーず 『アルカロイド・ラヴァーズ』は、星野智幸が2005年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 400 2003 ダンボールボートで海岸 だんぼーるぼーとでかいがん 母の失踪と借金をきっかけに大学を休学したアオイが、周縁的な人々との関わりのなかで、ダンボールのボートで海へ出るという危うい夢想を抱く物語。紙のボートという壊れやすいイメージが、生活の足場を失った若者の閉塞感と、外へ向かいたい衝動を重ねて見せる。公開Webで確認できる公式情報は書誌と受賞掲載が中心のた… 第27回 すばる文学賞
- 401 2003 デッドエンドの思い出 デッドエンドのおもいで 失恋や裏切りからの小さな回復を描く五篇の短篇集。傷ついた人物が、行き止まりに見える場所から少しずつ生活を取り戻す過程を、吉本ばなならしいやわらかい語りで描く。大きな救済ではなく、日常の中にある小さな光を読む作品集である。
- 402 2003 江利子と絶対 本谷有希子文学大全集 えりことぜったい ほんたにゆきこぶんがくだいぜんしゅう 劇作家として活動していた本谷有希子が、小説家として最初にまとめた短篇集。表題の「江利子と絶対」を含む諸篇では、過剰な自意識、対人関係のずれ、舞台劇のような会話の圧が前面に出る。後年の本谷作品に続く、痛さと可笑しさを同時に押し出す語りの出発点として読める。
- 403 2003 ハリガネムシ はりがねむし 中学教師の男が、教え子の母親との関係をきっかけに、性と暴力の泥沼へ落ちていく芥川賞受賞作。語りは冷たく湿っており、主人公の欲望や嫌悪が、昆虫的・寄生的なイメージと重なって増殖していく。家族や学校という制度の薄い膜の下にある衝動を、読後感の悪さごと突きつける作品である。 第129回 芥川賞
- 404 2003 蛇にピアス へびにピアス 19歳のルイは、蛇のように舌先が割れた「スプリット・タン」を持ち、全身にピアスと刺青を施した青年アマと出会い、同棲を始める。自らも舌にピアスを開け、拡張し、背中に麒麟と龍の刺青を彫ろうと、アマの紹介で知り合ったサディストの彫り師シバとも危険な関係を結んでいく。痛みによってしか生の実感をつかめない若者… 第130回 芥川賞
- 405 2003 イッツ・オンリー・トーク いっつ・おんりー・とーく 躁鬱病を抱えた30代半ばの独身女性「私」は、東京・蒲田の町に引っ越してくる。彼女の周りには、病や性、仕事や家族の事情を抱えた人々が集まり、深く結びつきすぎない会話が日常をつないでいく。出版社公式が強調する「しんどい事情」を抱えた人々の生き方を、自己憐憫に寄せず、乾いたユーモアと距離感のある一人称で描… 第96回 文學界新人賞
- 406 2003 ジャージの二人 じゃーじのふたり 仕事や家庭から少し離れた父と息子が、山の別荘で同じようなジャージを着て夏を過ごす。大きな事件の代わりに、食事、虫、テレビ、会話の間合いといった細部が積み重なり、親子でありながらどこか他人同士でもある二人の距離が浮かび上がる。長嶋有らしい、脱力したユーモアと静かな寂しさが同居する作品。
- 407 2003 授乳 じゅにゅう 『授乳』は、第46回群像新人文学賞優秀作となった表題作を含む村田沙耶香の初作品集です。Amazonの商品紹介では「授乳」「コイビト」「御伽の部屋」の3篇を収め、日常の細部を新しい感受性で描くデビュー作として紹介されています。既存紹介の家庭教師との倒錯した関係という筋は作品理解として有用ですが、更新案…
- 408 2003 家畜の朝 かちくのあさ 中卒で道路工事などの日雇い仕事をしながら日銭を稼ぐ主人公と、その仲間たちのうだつの上がらない日々。労働と競艇と愚行で埋まる時間の隙間に、父親の自殺、学習障害、友人の堕胎といった出来事が断片として挟み込まれ、貧困が人と土地をどう蝕むかが一人称の語りで立ち上がる。労働運動の現場にいた作者が、「ワーキング… 第35回 新潮新人賞
- 409 2003 火薬と愛の星 かやくとあいのほし 女たらしの「おれ」は、さまざまな女性たちを渡り歩きながら何度も生を重ね、やがて一人の恋人に出会って初めて「ここで死のう」と思う——絵本『100万回生きたねこ』を下敷きに、軽薄な恋愛遍歴の語りの底へ、愛と死の寓話を沈めた一作。決定的なはずの「最後の恋人との出会い」をあえて正面から語らず、別のかたちで小… 第46回 群像新人賞
- 410 2003 蹴りたい背中 けりたいせなか 高校に入学したばかりのハツ(長谷川初実)は、クラスの輪に加わることを拒み、余り者として過ごしている。同じく孤立しているにな川は、女性モデル「オリチャン」に病的なまでに夢中な少年。ハツはオリチャンに会ったことがある縁でにな川と関わるようになり、彼の無防備な背中を「蹴りたい」という奇妙な衝動を抱えていく… 第130回 芥川賞
- 411 2003 壊れるほど近くにある心臓 こわれるほどちかくにあるしんぞう 身体と精神の境界がゆるみ、恋愛の近さがそのまま危うさへ変わっていく第二作。親密さを求めるほど相手との距離が測れなくなる感覚を、肉体的なイメージと内面の揺れを重ねて描く。恋愛小説でありながら、愛の甘さよりも依存、痛み、自己の輪郭が崩れる怖さを読む作品である。
- 412 2003 極東アングラ正伝 きょくとうあんぐらせいでん 佐川光晴が、都市の周縁や表舞台の外側にある生の感覚へ目を向けた2003年の作品。題名が示す「アングラ」は、文化や労働や生活が公的な語りからこぼれ落ちる場所を思わせる。デビュー期から一貫する、きれいごとでは済まない生活への視線をたどる一冊として位置づけられる。
- 413 2003 夏休み なつやすみ 就職も進路も決まりきらない青年が、夏の時間の中で宙ぶらりんの自分を抱えたまま過ごす。中村航らしい軽い会話と瑞々しい感覚で、何者にもなれない時期の切なさを描く。大きな転機よりも、季節の空気や友人関係の揺れが、青春の停滞と再生の気配を作っている。
- 414 2003 鼠と肋骨 ねずみとろっこつ 第46回群像新人文学賞優秀作として『群像』2003年6月号に掲載された短編。NDLサーチでは掲載記事と掲載誌号を確認できるが、公開Web上で梗概や選評本文は確認できない。現時点では題名から主題や語りを推測せず、同賞優秀作としての掲載情報を中心に扱う。
- 415 2003 オアシス おあしす 愛用の青い自転車を盗まれたフリーターの「私」は、呆然としたままそれを探す日々を送る。家には家事を放棄してしまった母と、その母に「パラサイト」されているOLの姉・サキ。女三人の奇妙な家族の均衡が、自転車の喪失を起点に少しずつあらわになっていく。母を疎みながら捨てられない娘たちの姿は「現代の新種の姥捨て… 第40回 文藝賞
- 416 2002 アルゼンチンババア アルゼンチンババア 母の死後、「アルゼンチンババア」と呼ばれる女性と暮らし始めた父をめぐる物語。奇妙な人物や場所への戸惑いを通して、家族の喪失を別の関係へ開いていく。吉本ばなならしい、死後の時間をやわらかく生き直す物語。
- 417 2002 縮んだ愛 ちぢんだあい 佐川光晴の作品で、既存データでは野間文芸新人賞受賞作とされる。家族や親密な関係に潜む痛みを、小さく「縮む」感覚として捉える作品として整理できる。佐川作品らしい生活への視線と、関係の中で変形していく愛のかたちを読む入口になる。 第24回 野間新人賞
- 418 2002 フェイク ふぇいく 第34回新潮新人賞を中村文則「銃」と分け合った受賞作。タイトルの「フェイク」は偽物・まがいものの意で、本物と偽物のあわいを生きる人物像をうかがわせるが、単行本化されておらず、内容を確認できる資料は乏しい。選考委員は川上弘美・沼野充義・福田和也・保坂和志・町田康。同時受賞の中村文則がその後芥川賞作家と… 第34回 新潮新人賞
- 419 2002 ジャイロ! じゃいろ 「僕」と友人・猟平が繰り返す「危険なキャッチボール」が、ついに猟平の家を全焼させてしまう——少年たちの遊びと暴力が地続きになった世界を、熱を孕んだ文体で一気に語る。選考では、世界へのルサンチマン(鬱屈した恨み)を呪詛のような語りで繋ぎ留めた「現代の悪童日記」と評された。受賞の翌年まで『群像』に短篇を… 第45回 群像新人賞
- 420 2002 裸のカフェ はだかのかふぇ 横田創が2002年に刊行した作品で、公開情報では詳細な梗概がまだ薄い。カフェという開かれた場所と「裸」のイメージから、人間関係や自己露出の不穏さを扱う作品として暫定整理する。内容細部と批評上の評価は、現物・書評確認を優先したい。
- 421 2002 ハミザベス はみざべす 二十歳の誕生日を前に、死んだと思っていた父が本当に死んだ。まちるが遺産として受け取ったのは、高層マンションの一室とハムスターの「ハミザベス」。母と暮らした家を出て、地上33階で始まる一人と一匹の生活に、元恋人の幼なじみや父の同居人だった女性が出入りし、奇妙な距離感の友情が育っていく。喪失から始まる物… 第26回 すばる文学賞
- 422 2002 銃 じゅう 雨の夜、大学生の「私」は河原で死体のそばに落ちていた拳銃を拾う。磨き、眺め、持ち歩くうちに、銃は退屈な日常に輪郭を与える唯一の存在となり、「撃つ」ことへの欲望が抗いがたく膨らんでいく。一挺の銃という即物的なモチーフだけで青年の内面の崩壊を追い詰めていく構成と、乾いた硬質な一人称が特徴的なデビュー作… 第34回 新潮新人賞
- 423 2002 リトル・バイ・リトル りとる・ばい・りとる 母の不在と継父との関係に揺れる少女の成長を描く島本理生の初期長編。十代の語り手が、家族への違和感、恋愛以前の孤独、日常の不安を少しずつ言葉にしていく。静かな文体で、傷つきやすい感情の変化を丁寧に追う作品。 第25回 野間新人賞
- 424 2002 王国 その1 アンドロメダ・ハイツ おうこく そのいち アンドロメダ・ハイツ 山奥で祖母と暮らした雫石が、都会で占い師の助手となる「王国」シリーズ第一作。自然の記憶、都市での仕事、スピリチュアルな感受性が交差し、傷ついた人が別の居場所を作る過程を描く。吉本ばなならしい癒やしと不思議さが、生活の手ざわりと結びつく。
- 425 2002 死せる魂の幻想 しせるたましいのげんそう お節介な祖母と二人暮らしで、アパートと大学を往復するだけの真面目な女子大生・千明。女友達はいても恋人はいない彼女の日常に潜む孤独感と、他者との関係への切実な渇望を描く。後半、奇妙な雨宿りの場面で物語は一変し、卑近な日常が途方もない神々しさへと接続される。現役京大生だった22歳の作者によるデビュー作で… 第45回 群像新人賞
- 426 2002 タンノイのエジンバラ たんのいのえじんばら 長嶋有の2002年の作品で、オーディオ機器を思わせる題名が、生活の中の音や記憶への感度を示す。公開情報は限定的だが、日常の小さな違和感や人間関係の距離を、静かでユーモラスな筆致で捉える長嶋作品の系譜に置ける。内容細部は追加確認が必要。
- 427 2002 わたしの好きなハンバーガー わたしのすきなはんばーがー 広告会社を定年まで勤め上げた67歳の新人が、蒔岡雪子「飴玉が三つ」と同時に第94回文學界新人賞を射止めた作品。新人賞の受賞者が軒並み若返っていく2000年代初頭にあって、企業社会を生き切った世代の書き手の登場は異彩を放った。選考委員は浅田彰・奥泉光・島田雅彦・辻原登・山田詠美。単行本化されておらず… 第94回 文學界新人賞
- 428 2002 よしわら よしわら 新潮新人賞受賞作「グラウンド」を、単行本化に際して『よしわら』と改題した中篇。風俗雑誌編集などの職歴を持つ作者の経歴とも重なり、労働、都市の周縁、学歴や階層から外れた人物の感覚を描く。新人賞受賞作が芥川賞候補にもなった、2000年代初頭の新潮新人賞系譜の一作。 第33回 新潮新人賞
- 429 2002 パレード ぱれーど 『パーク・ライフ』期の代表的長篇で、都市生活・共同生活・若者の距離感を扱う追加候補。第15回山本周五郎賞受賞作として知られるが、今回は公式賞ページ未確認のため awards には入れない。
- 430 2002 贋世捨人 にせよすてびと NDLサーチで「新潮」掲載書誌と2002年10月刊の新潮社版単行本、2007年文春文庫版を確認できる。
- 431 2002 毒身温泉 どくしんおんせん 『毒身温泉』は、星野智幸が2002年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 432 2001 インストール いんすとーる 高校生活から突然降りてしまった17歳の朝子が、部屋の荷物を全部捨てたことをきっかけに、マンションの押入れに住み着くような小学生・かずよしと知り合い、拾った中古パソコンで風俗チャットの「バイト」を代行するようになる。インターネット黎明期の風俗チャットという際どい題材を扱いながら、筆致はあくまで軽やかで… 第38回 文藝賞
- 433 2001 水に埋もれる墓 みずにうもれるはか 小野正嗣のデビュー作で、既存データでは朝日新人文学賞受賞作とされる。水や墓のイメージが示すように、土地、記憶、死者との関係をめぐる作品として位置づけられる。後の小野作品に続く、共同体の記憶と語りへの関心の出発点として読みたい。
- 434 2001 蚤の心臓ファンクラブ のみのしんぞうふぁんくらぶ 「誰にも“蚤の心臓”はあるのです。ちょっと引き抜いてみましょう。今より自由になれますよ」という惹句が示すとおり、人が抱える臆病さや気弱さを「蚤の心臓」という具体物のイメージに転化し、そこからの解放を軽みのある筆致で描いた作品。深刻な内面告白に向かいがちな新人文学賞応募作の中で、ユーモアと寓意で心の問… 第44回 群像新人賞
- 435 2001 最後の家族 さいごのかぞく 引きこもりの息子を抱えた四人家族の解体と再生を描く長編。家族の愛情が、支配、依存、逃避と紙一重であることを、村上龍らしい社会問題への視線で描き出す。家庭という閉じた場所を通じて、2000年前後の孤立とケアの難しさを読む作品。
- 436 2001 途中下車 とちゅうげしゃ 高橋文樹のデビュー作で、既存データでは幻冬舎NET学生文学賞大賞受賞作とされる。移動や途中下車のモチーフから、若い語り手が日常の経路を外れ、自分の居場所を探る作品として暫定整理する。公開情報が少ないため、内容紹介は今後の現物確認で補強したい。
- 437 2001 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? つぎのまちまで、きみはどんなうたをうたうの 柴崎友香の初期作品で、次の町へ向かう移動の感覚と、若い人々の会話や音楽の気配を描く。大きなドラマではなく、場所が変わるときの心の揺れ、友人関係の距離、都市の日常の質感が中心になる。後の柴崎作品に通じる、移動と観察の文学として読める。
- 438 2001 夜明けの音が聞こえる よあけのおとがきこえる 自ら声を封じ込めているうちに本当に声が出なくなってしまった「僕」が、治療者の勧めでホテルで働きはじめる。しかし職場に溶け込めず、ふとした誤解から従業員たちを敵に回し、執拗ないじめにさらされていく。語ることのできない主人公の内側に渦巻く苛立ちと怒りを、鮮烈な言葉の力で外へ撃ち出すような文章が特徴で、声… 第25回 すばる文学賞
- 439 2001 あらゆる場所に花束が…… あらゆるばしょにはなたばが 『あらゆる場所に花束が……』は、中原昌也の小説で、第14回三島由紀夫賞受賞作です。新潮社公式ページは、殺意と肉欲に満ちた地上を舞台に、地下室で絵ハガキを作らされる男、河川敷で殺人リハーサルをする一団、謎の人物を追うルポライターらが絡み合う作品として紹介しています。暴力、断片、錯綜する人物配置によって… 第14回 三島賞
- 440 2000 ひな菊の人生 ひなぎくのじんせい 吉本ばななが2000年に刊行した作品で、ロッキング・オン版と後年の幻冬舎版の書誌が確認できる。公開情報は限定的だが、タイトルの柔らかさとは裏腹に、人生の記憶や痛みをすくい上げる吉本作品の系譜に置ける。現段階では内容細部の確認を次回課題として残す。
- 441 2000 神の子どもたちはみな踊る かみのこどもたちはみなおどる 阪神・淡路大震災後の空気を背景にした六篇の連作短編集。大きな災害を直接描き尽くすのではなく、喪失や不安を抱えた人々の生活に、寓話や偶然の形で揺れを響かせる。「かえるくん、東京を救う」など、現実と幻想の境目を軽やかに越える短篇が含まれる。
- 442 2000 きょうのできごと きょうのできごと 京都で開かれた引っ越し祝いの飲み会に集まった若者たちの一夜を、複数の視点から描く柴崎友香のデビュー作。大きな事件よりも、会話、部屋の空気、街への移動が作る微細なずれを積み重ねる。日常の時間をそのまま文学の中心に置く、後の柴崎作品へつながる出発点。
- 443 2000 共生虫 きょうせいちゅう 引きこもりの青年ウエハラが、「共生虫」という妄想に取り憑かれていく長編。ネット、孤立、身体への不安が結びつき、社会から退いた人物の内側が危うく膨張していく。2000年前後のテクノロジーと精神の不穏な接続を描く村上龍作品。 第36回 谷崎賞
- 444 2000 肉触 にくしょく 『肉触』は、第37回文藝賞優秀作として『文藝』2000年冬季号に掲載され、2001年1月に河出書房新社から単行本化された佐藤智加の作品です。河出書房新社公式ページでは、精神と肉体をめぐる冒頭の問い、姉の追憶に支えられた詩的な内面世界の崩壊、17歳の高校生による早熟な表現が紹介されています。物語の細部…
- 445 2000 塔 とう 『塔』は、妻を奪われたという疑念に囚われた男の絶望と精神の彷徨を描く、第24回すばる文学賞受賞作です。Booksの内容紹介では、錯乱と覚醒、少年への愛、幻想と悪夢の世界へ誘う作品として紹介されています。夫婦関係の破綻を入口に、現実の輪郭が揺らぐ心理と幻想性を読ませる作品として整理できます。 第24回 すばる文学賞
- 446 2000 楽天屋 らくてんや 『楽天屋』は、「なゆた」「孤独のみちかけ」「楽天屋」の三篇を収める小説集です。講談社の商品紹介は、三十歳を過ぎても無為徒食のまま漂う男と周囲の女性たちのさすらいを、独自のユーモアと繊細な感覚で描く作品として紹介している。どこにも落ち着けない人物の感覚を、乾いた笑いと時代の空気の中で読む一冊です。 第22回 野間新人賞
- 447 2000 目覚めよと人魚は歌う めざめよとにんぎょはうたう 『目覚めよと人魚は歌う』は、星野智幸が2000年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。 第13回 三島賞
- 448 1999 スプートニクの恋人 すぷーとにくのこいびと 22歳のすみれが、17歳年上で既婚の女性ミュウに激しい恋をするところから始まる長編。語り手の「僕」はすみれへの思いを抱えつつ、すみれとミュウの関係、そして失踪をめぐる奇妙でミステリアスな出来事に巻き込まれていく。スプートニクのイメージが、互いに近づきながら孤独な軌道を回る人間同士の距離を象徴する。
- 449 1999 嫐嬲 なぶりあい 『嫐嬲』は、星野智幸が1999年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 450 1998 ライン ライン 『ライン』は、電話線のように結びつく複数の人物を連鎖的に描き、性、暴力、プライド、トラウマが現代日本の暗部へ流れ込んでいく長篇です。SM嬢、看護婦、ウエイター、キャリアウーマンなど断片的な人生を並置し、個々の孤独が通信や接触を通じて増幅される構造をとります。村上龍らしい硬質な速度感で、コミュニケーシ…
- 451 1998 ブエノスアイレス午前零時 ぶえのすあいれすごぜんれいじ 『ブエノスアイレス午前零時』は、雪深い故郷へ戻った青年と、過去に横浜で生きてきた盲目の老女の出会いを描く短篇です。温泉旅館という閉じた場所に、タンゴと異国の都市への憧れが差し込むことで、老い、記憶、失われた時間が濃く浮かび上がります。抑えた筆致とハードボイルドな感触が、深夜の一場面に人生の余白を凝縮… 第119回 芥川賞
- 452 1998 おしゃべり怪談 おしゃべりかいだん 『おしゃべり怪談』は、藤野千夜が性的マイノリティを含む人物たちの日常を、軽やかで会話的な感触の中に描いた作品です。題名の「怪談」は恐怖だけでなく、身近な生活の隙間に立ち上がる違和感や不安を指し、ユーモアと不穏さが同居します。深刻な主題を自然体の語りに溶かし込む、藤野作品らしい読み味が特徴です。 第20回 野間新人賞
- 453 1997 イン ザ・ミソスープ イン ザ・ミソスープ 『イン ザ・ミソスープ』は、新宿の歓楽街で外国人観光客を案内するケンジが、アメリカ人客フランクの異様さと暴力に巻き込まれていく長編です。都市の表層的な消費空間と、突然噴き出す暴力の感触が重ねられ、日本社会への批判的な視線も含んでいます。一人称の案内役の語りを通して、読者も不穏な夜の中へ連れていかれま…
- 454 1997 最後の息子 さいごのむすこ 『最後の息子』は、長崎から上京した若者が新宿で中年のゲイ男性と同居し、親密さと依存のあわいを見つめていく中篇です。都市の片隅で居場所を探す人物たちを、乾いた一人称の感覚で追い、性と孤独が生活の細部に染み出す様子を描きます。吉田修一のデビュー作として、以後の都市と人間関係への関心の出発点に位置づけられ… 第84回 文學界新人賞
- 455 1997 ラジオデイズ らじおでいず 『ラジオデイズ』は、鈴木清剛が第34回文藝賞を受賞したデビュー小説です。河出書房新社公式ページでは、主人公の部屋に10年ぶりに現れた同級生が居つき、追い払うことも親しくなることもできないまま過ごす気まずい一週間を描く作品として紹介されています。一人称の距離感と、やるせなさを抱えた若者同士の関係が読み… 第34回 文藝賞
- 456 1997 叶えられた祈り かなえられたいのり 『叶えられた祈り』は、萱野葵のデビュー作にあたる新潮新人賞受賞作です。既存情報では、後に映画化される『段ボールハウス・ガール』へつながる作者の出発点として整理されています。祈りという題名が示す願望と現実のずれを軸に、都市的な孤独を読む作品として位置づけました。 第29回 新潮新人賞
- 457 1996 レキシントンの幽霊 れきしんとんのゆうれい 『レキシントンの幽霊』は、表題作を含む村上春樹の短篇集です。既存データの通り「めくらやなぎと眠る女」などを収め、記憶、喪失、遠さ、曖昧な気配をめぐる短篇が並びます。海外を含む場所の感触と、説明されすぎない幽霊的な不在が、静かな不穏さを生みます。
- 458 1996 海峡の光 かいきょうのひかり 『海峡の光』は、廃航を控えた青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守となった「私」が、少年時代に自分を苦しめた相手と受刑者として再会する物語です。新潮社公式の紹介では、監視する者と監視される者の関係が、船舶訓練の海へ向かう場面で極限化される構図が示されている。津軽海峡と函館を背景に、いじめの記憶… 第116回 芥川賞
- 459 1996 まどろむ夜のUFO まどろむよるのゆーふぉー 『まどろむ夜のUFO』は、表題作のほか「もう一つの扉」「ギャングの夜」を収める角田光代の初期短編集です。少女や若い女性の生活に入り込む小さな異変を、日常の延長にある不穏さとして捉えます。家族や孤独をめぐる感情を過度に説明せず、眠りと覚醒のあいだのような手触りで読ませる作品集です。 第18回 野間新人賞
- 460 1996 くっすん大黒 くっすん だいこく 『くっすん大黒』は、仕事を辞め、妻にも去られた楠が、身の回りの不運を自宅にある不気味な大黒像のせいにして捨てに行く町田康のデビュー作です。日常の失敗や自意識の空回りが、大阪弁に近いリズムと独特の口語で転がっていく。貧しさ、夫婦の破綻、労働からの離脱を、陰惨さだけでなく滑稽さとして読ませる語りが大きな… 第7回 ドゥマゴ文学賞
- 461 1996 漂流物 ひょうりゅうぶつ NDLサーチで1996年12月刊の新潮社版単行本、および1999年11月刊の新潮文庫版が確認できる。全集収録ではなく初刊単行本を根拠に、車谷長吉の私小説的な短篇集として候補化する。
- 462 1995 離人たち りじんたち 『離人たち』は、第38回群像新人文学賞の小説優秀作として確認できる団野文丈の作品です。講談社公式の受賞作一覧で作品名・著者名を確認でき、NDLサーチでは『群像』1995年6月号の発表掲載と講談社1995年刊の書誌を確認できます。公開Webでは梗概や選評本文を確認できないため、作品内容の説明は受賞・掲…
- 463 1995 地下鉄の軍曹 ちかてつのぐんそう NDLサーチで1995年4月刊、集英社、ISBN 4-08-774130-3の単行本として確認できる。
- 464 1994 首飾り くびかざり 『首飾り』は、雨森零のデビュー作にあたる第31回文藝賞受賞作です。公開情報では作品内容の詳細な梗概は確認しにくいものの、既存資料では文藝時評で才能を評価された作品として記録されています。山形県文学全集への収録も確認され、地方の文学史上の文脈でも参照される作品です。 第31回 文藝賞
- 465 1994 夢見る貝の伝記 ゆめみるかいのでんき 『夢見る貝の伝記』は、吉目木晴彦が1994年に講談社から刊行した小説作品です。講談社公式、Books/JPRO、NDLサーチ、Amazonの商品ページで書誌を確認しました。
- 466 1993 冗談関係のメモリアル じょうだんかんけいのめもりある 『冗談関係のメモリアル』は、中村邦生が第77回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1993年12月号の書誌を確認できます。題名から、冗談や記憶をめぐる人間関係を扱う作品と見られますが、内容の詳細は未確認です。 第77回 文學界新人賞
- 467 1993 暗い森を抜けるための方法 くらいもりをぬけるためのほうほう 『暗い森を抜けるための方法』は、足立浩二が第36回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1993年6月号と受賞発表記事を確認しました。暗い森を抜けるという題名が示す閉塞と脱出のイメージは明確ですが、具体的な筋は未確認です。
- 468 1993 氷の海のガレオン こおりのうみのがれおん 『氷の海のガレオン』は、木地雅映子が第36回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。講談社公式の受賞者履歴で、作品名・著者名を確認できます。公開Webで内容紹介や選評本文を確認できないため、作品内容や舞台の説明は保留します。
- 469 1993 19分25秒 じゅうきゅうふんにじゅうごびょう 『19分25秒』は、引間徹が第17回すばる文学賞を受賞した作品です。既存データでは競歩の選手を題材に、義足の競歩選手との出会いを通じて青年が自分の人生を問い直す小説として整理されています。確認できた公開出典は賞歴・候補歴が中心で、内容紹介は既存調査に基づくため、分類の根拠は限定的です。 第17回 すばる文学賞
- 470 1993 デッドシティ・レイディオ 『デッドシティ・レイディオ』は、清水アリカの小説単行本です。NDLサーチでは1993年9月に集英社から刊行された197ページの図書、NDC8 913.6として確認できます。出版書誌データベースでも、ISBN 9784087740271、4-6判、200ページ、1993年発行の書誌が確認できます。
- 471 1992 イビサ イビサ 『イビサ』は、精神病院を退院したマチコが男に誘われてパリへ渡り、ドラッグ、セックス、アルコールに浸りながらモロッコ、バルセロナ、イビサ島へ漂流する物語です。海外の都市と身体の破滅感を通じて、自己を失いながらなお移動していく感覚を描きます。初期村上龍の暴力的な欲望と都市的な不安が濃く出た長篇です。
- 472 1991 至高聖所(アバトーン) しこうせいしょ あばとーん 『至高聖所(アバトーン)』は、大学生活と若者の精神的な苦闘を叙情的に描く松村栄子の芥川賞受賞作です。親密な関係と孤独、学びの場での息苦しさを、若い語りの感覚で立ち上げます。『海燕』掲載作として芥川賞を受けた点でも、1990年代初頭の文芸誌環境を示す作品です。 第106回 芥川賞
- 473 1991 なにもしてない なにもしてない 『なにもしてない』は、生きている実感を求めて現実と幻想のあいだを往還するモノローグの世界を描く作品です。日常の停滞を、単なる無為ではなく、身体と意識がずれていく感覚として押し広げます。笙野頼子の前衛的な私小説性が強く現れた初期代表作です。 第13回 野間新人賞
- 474 1991 誇り高き人々 ほこりたかきひとびと 『誇り高き人々』は、吉目木晴彦が1991年に講談社から刊行した小説作品です。講談社公式、Books/JPRO、NDLサーチ、Amazonの商品ページで書誌を確認しました。
- 475 1990 TVピープル てれびぴーぷる 『TVピープル』は、表題作を中心に、都市生活の中へ説明のつかない存在や出来事が入り込む短篇集です。テレビ、飛行機、眠りといった日常的なモチーフが、孤独や現実感のずれを浮かび上がらせます。村上春樹の短篇らしく、平易な一人称の語りが不穏な寓話性へ滑っていく感覚が読みどころです。
- 476 1990 狂いバチ、迷いバチ くるいバチ、まよいバチ 『狂いバチ、迷いバチ』は、竹野昌代が第71回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1990年12月号の書誌を確認できますが、公開された詳細なあらすじ・書評は今回確認できませんでした。題名の不穏さを含め、現時点では新人賞受賞作としての書誌的紹介を中心に扱います。 第71回 文學界新人賞
- 477 1990 革命のためのサウンドトラック かくめいのためのさうんどとらっく 『革命のためのサウンドトラック』は、言葉が相手に届かず、ノイズのように増殖していく感覚を描く清水アリカのデビュー作です。筋を一直線に追わせるよりも、音、言葉、退廃的な気分を重ねて、都市の閉塞感を前景化します。言語への不信と終末的なムードが交差する、実験色の強い新人賞受賞作です。 第14回 すばる文学賞
- 478 1990 ドッグ・デイズ どっぐ・でいず 『ドッグ・デイズ』は、『新潮』1990年11月号に掲載された藤枝和則の新潮新人賞受賞作です。NDLでは受賞作発表記事と掲載誌の書誌を確認できる一方、筋や語り口を詳述した信頼できる公開資料は今回確認できませんでした。そのため、現時点の紹介は受賞作・デビュー作としての位置づけを中心に留めます。 第22回 新潮新人賞
- 479 1989 ラッフルズホテル ラッフルズホテル シンガポールの名門ホテルを思わせる空間を舞台に、旅、欲望、演技する自己を描く村上龍の作品。ホテルという非日常の場所が、登場人物の孤独や消費社会の空虚さを浮かび上がらせる。都市的で乾いた感触の中に、海外への視線と身体感覚が重なる。
- 480 1989 ネコババのいる町で ねこばばのいるまちで 『ネコババのいる町で』は、ロサンゼルスから一人で日本に送られた少女・恵里子が、祖母と叔母のもとで育つ姿を描く作品です。場面緘黙症を抱える少女にとって、隣家の猫たちとの関係が、言葉にならない孤独の受け皿になっていきます。移動、家族、言語化できない傷を、子どもの視界に近い静けさで描く点が読みどころです。 第69回 文學界新人賞
- 481 1989 流離譚 りゅうりたん 『流離譚』は、中村隆資のデビュー作にあたる第69回文學界新人賞受賞作です。題名が示すように、定住できない感覚や移動の経験を軸にした作品として整理できます。第102回芥川賞候補にもなり、1989年下半期の新人賞作品として注目されました。 第69回 文學界新人賞
- 482 1989 YES・YES・YES いえす・いえす・いえす 『YES・YES・YES』は、新宿のゲイバーで働く青年ホストの日常と欲望を描く比留間久夫のデビュー作です。性の解放感と都市の夜の空気を前面に出し、当時の純文学にクィアな身体感覚を持ち込んだ作品として読めます。軽さと痛みが同居する、都市的な性の物語です。 第26回 文藝賞
- 483 1989 ハッピーハウス はっぴーはうす 『ハッピーハウス』は、二十八歳で課長を務めるキャリアウーマン・高沢優子が、仕事と酒の日々の空虚さを抱えながら孤独に踊り続ける姿を描く作品です。バブル期の働く女性の成功と消耗を、ダンスマラソンのイメージに重ねて描きます。明るい題名の奥にある息苦しさが読みどころです。 第26回 文藝賞
- 484 1989 ピアニシモ ぴあにしも 転校を繰り返してきた少年・氏家透の内側に住む分身ヒカルをめぐる、ドッペルゲンガー的な青春小説。少年の孤独とアイデンティティの揺らぎを、現実と内面の境目がにじむ語りで描く。第13回すばる文学賞当選作として発表された辻仁成の小説デビュー作で、同回の発表記事はNDLサーチで確認できる。 第13回 すばる文学賞
- 485 1988 ダンス・ダンス・ダンス だんす・だんす・だんす 『羊をめぐる冒険』の後日談として、「僕」が札幌のイルカホテルを再訪し、失われた女性や過去の気配を追っていく長編。現実のホテル、芸能界、ハワイ、羊男のいる異界がつながり、踊り続けることだけが世界との接続の方法として示される。1980年代の都市的な消費社会を背景に、喪失、記憶、孤独を冒険小説のリズムでた…
- 486 1988 キルプの軍団 キルプのぐんだん 大江健三郎が1988年前後に発表した作品で、寓話的な構図と共同体への問いを含む後期作品群の一つ。公開書誌では全小説・小説集への収録も確認でき、単独作としてだけでなく大江の長い創作系列の中で読む必要がある。内容細部の公開情報は限定的なため、紹介は現段階では主題の方向づけにとどめる。
- 487 1988 トパーズ トパーズ SMクラブで働く女性たちの身体、欲望、孤独を都市の夜の中に描く村上龍の作品。性の描写は刺激としてだけでなく、支配、痛み、金銭、自己感覚をめぐる問いとして機能する。乾いた文体で、バブル期都市の消費と身体の商品化を突きつける。
- 488 1988 うたかた/サンクチュアリ うたかた/サンクチュアリ 吉本ばななの初期作品集で、「うたかた」と「サンクチュアリ」を併録する。喪失や恋愛、居場所をめぐる不安を、柔らかく透明な語り口で描く。日常の小さな違和感から、生死のあわいや心の避難場所へ入っていく初期吉本作品らしさがある。
- 489 1988 尋ね人の時間 たずねびとのじかん 『尋ね人の時間』は、別れた妻子や死別した妹、好意を寄せる女性との距離を抱えたカメラマンの意識を追う作品です。都会で自分を見失った人物の感覚が、詩的で短い文の連なりとして表現されます。喪失を過剰に劇化せず、削ぎ落とした言葉で浮遊感を残す点が特徴です。 第99回 芥川賞
- 490 1988 汝ふたたび故郷へ帰れず なんじふたたびこきょうへかえれず 『汝ふたたび故郷へ帰れず』は、飯嶋和一のデビュー作です。現代の苦境に置かれた人物を描く作品として整理され、後に歴史小説へ大きく展開する作家の初期の問題意識をうかがわせます。故郷への帰還不能という題が、喪失と自己の行き場のなさを強く示しています。 第25回 文藝賞
- 491 1987 スティル・ライフ すてぃる・らいふ 『スティル・ライフ』は、染色工場で働く「ぼく」と、世界を少し離れた位置から見ている佐々井との交流を描く短篇です。大きな事件よりも、労働、会話、都市の時間の中で、世界が静かにつながって存在している感覚を描きます。透明感のある文体と、孤独を否定しない清澄な肯定感が読みどころです。 第98回 芥川賞
- 492 1987 川べりの道 かわべりのみち 『川べりの道』は、鷺沢萠のデビュー作にあたる第64回文學界新人賞受賞作です。在日コリアン二世の少女の揺れを繊細に描いた作品として整理され、川べりという境界的な場所が、血筋や帰属の不安を映します。若年での受賞という話題性だけでなく、移民的な自己認識を扱う点でも重要です。 第64回 文學界新人賞
- 493 1987 遠方より えんぽうより 『遠方より』は、谷口哲秋のデビュー作にあたる第65回文學界新人賞受賞作です。遠くから届くもの、遠くへ向かう視線を題名に持つ作品として、距離と記憶を主題化する初期作として整理しました。後に芥川賞候補にもなっており、文學界新人賞から純文学の選考圏へ進んだ作品です。 第65回 文學界新人賞
- 494 1987 巨食症の明けない夜明け きょしょくしょうのあけないよあけ 『巨食症の明けない夜明け』は、摂食障害に苦しむ女子大生の不安と孤独を描く松本侑子のデビュー作です。当時まだ広く認知されていなかった過食症を正面から扱い、身体と心の切迫を小説の主題にしています。青春小説であると同時に、女性の身体をめぐる社会的圧力を読む作品です。 第11回 すばる文学賞
- 495 1987 1.9m[2]の孤独 いちてんきゅうへいほうめーとるのこどく NDLサーチで1987年10月刊、学芸書林、350ページ、ISBN 4-905640-04-0の単行本として確認できる未収録作品。
- 496 1986 パン屋再襲撃 ぱんやさいしゅうげき 表題作は、深夜に激しい空腹に襲われた夫婦が、過去の「パン屋襲撃」の呪いを解くため再び街へ出る奇妙な短篇。文春文庫公式ページでは「象の消滅」や“ねじまき鳥”の原型となる作品を含む初期短篇集として紹介されており、食欲、結婚生活、都市の空白が寓話的に結びつく。軽い会話と不穏な空気が同時に進む、初期村上短篇…
- 497 1986 気配 けはい 『気配』は、片山恭一のデビュー作にあたる第63回文學界新人賞受賞作です。受賞歴とデビュー経緯は確認できますが、公開Webで信頼できる梗概や選評本文は確認できませんでした。既存記述にあった青春・孤独などの内容分類は根拠が弱いため、現時点では受賞作としての位置づけに限定します。 第63回 文學界新人賞
- 498 1985 河馬に嚙まれる かばにかまれる 連合赤軍事件の記憶や、その後を生きる人々の傷を背景にした連作短篇集。表題作では、政治的暴力の記憶と個人の身体感覚が奇妙に結びつき、過去を説明しきれないまま抱え続ける人間の多義性が浮かび上がる。寓話的な動物イメージと自己照射的な語りを通して、1970年代の事件の残響を1980年代の生へ引き寄せる。 第11回 川端賞
- 499 1985 回転木馬のデッド・ヒート かいてんもくばのでっどひーと 実際に聞いた話を小説の形に組み替えた、都市生活者たちの短いスケッチ集。表題の「回転木馬」は、同じ場所を巡り続けながら誰も抜け出せない人生の比喩として働き、各篇の人物は小さな違和感や疲労を抱えたまま日常を走り続ける。事実と虚構の境界をあいまいにしながら、村上春樹の乾いた観察眼と抑制されたユーモアが前面…
- 500 1985 テニスボーイの憂鬱 テニスボーイのゆううつ 村上龍が1985年に刊行した長編。テニスや消費文化の明るい表層を背景に、若者の空虚さ、身体感覚、欲望の行き場のなさを描く作品として読める。初期村上龍の過剰な都市感覚を、暴力だけでなく遊戯性や倦怠から見るための一冊。
- 501 1985 ダックスフントのワープ だっくすふんとのわーぷ 大学の心理学科に通う「僕」が、心を閉ざした少女の家庭教師を引き受け、異空間にワープしたダックスフントの物語を語り聞かせる。文春文庫の紹介では、物語への興味と対話を通じて少女が変化していくが、その先に不穏な展開があることが示されている。語ること、聞くこと、他者の心に近づこうとする試みが中心にあるデビュ… 第9回 すばる文学賞
- 502 1985 ワンルーム ワンルーム 母子・家庭だけでなく都市生活の孤独を補える候補。福武書店刊、のち再刊あり。
- 503 1985 電話男 でんわおとこ NDLサーチで1985年5月刊の福武書店版単行本、1987年版、2000年角川春樹事務所版を確認できる。
- 504 1984 螢・納屋を焼く・その他の短編 ほたる・なやをやく・そのたのたんぺん 「螢」「納屋を焼く」などを収めた初期短編集。新潮社の紹介では「螢」が『ノルウェイの森』の原点とされ、学生時代の喪失と届かない温もりが抑制された一人称で描かれる。「納屋を焼く」は日常会話の奥に説明されない空白を置き、静かな恋愛小説と不穏な幻想が同じ冊子のなかで並ぶ構成になっている。
- 505 1984 女からの声 おんなからのこえ 『女からの声』は、壊れかけた自己を抱える語り手と、真実の絆を求めて遍歴する妻ナホミを軸にした青野聰の長篇です。講談社公式ページでは、ニューヨーク、小笠原、東京、ネパール、アフガニスタンへと続く旅と、性愛や生の根源を求める人物たちの彷徨が紹介されています。男女関係、越境、孤独を濃密な文体で描く作品とし… 第6回 野間新人賞
- 506 1984 夢遊王国のための音楽 ゆめゆうこくのためのおんがく 千々石雅という青年の頭の中で鳴る音楽が、妄想的な思考と語る言葉を加速させていく作品。島田雅彦公式サイトは、管理と支配に満ちた現在を生きる若者の矛盾と混乱を、クラシック音楽形式の実験的手法で描いた作品として紹介している。音楽形式を小説の構造に取り込み、現実感覚の不安定さを文体そのものに反映させる点が読… 第6回 野間新人賞
- 507 1984 自由時間 じゆうじかん 『自由時間』は、山奥の別荘を舞台に、36歳の晴代が二十年を回想する構成の増田みず子作品です。既存のAmazon商品ページでは、新鋭書下ろし作品として刊行された作品の梗概を確認でき、NDLサーチでは新潮社1984年刊の書誌を確認できます。単身の時間、記憶、女性の内面を静かにたどる作品として整理できます… 第7回 野間新人賞
- 508 1983 中国行きのスロウ・ボート ちゅうごくゆきのすろうぼーと 村上春樹の最初の短篇小説集で、表題作をはじめ、初期作品に特徴的な一人称の軽さ、記憶の空白、都市生活の孤独が並ぶ。長編の「僕」の世界から少し距離を取り、短篇ごとに日常の違和感、すれ違う他者、説明されない幻想を試している。淡いユーモアと乾いた喪失感が共存し、初期村上短篇の実験場として読むことができる。
- 509 1983 だいじょうぶマイ・フレンド だいじょうぶマイ・フレンド 村上龍が1983年に刊行した、映画化とも接続するポップな幻想小説。現実の都市感覚に、異質な存在との遭遇や友情のモチーフを重ね、初期村上龍の暴力的なリアリズムとは別の軽さを見せる。サブカルチャー、映像、音楽的な速度感を小説へ持ち込む読みどころがある。
- 510 1983 カンガルー日和 かんがるーびより 村上春樹の初期短編集で、ショートショートを含む短い物語が並ぶ。日常の手ざわりからふいに幻想へ滑り込む語り口が特徴で、軽いユーモアの奥に孤独や関係の不確かさが残る。後年の長編へ続く比喩、欠落、都市生活者の感覚をコンパクトに読むことができる。
- 511 1983 若者たちの悲歌 わかものたちのひか 石川達三が1983年に刊行した作品。公開情報では詳細な梗概や批評が限定的なため、題名が示す若者像と悲劇性を手がかりに、世代の違和や社会との摩擦を扱う後期作として暫定整理する。内容の精査は現物・書評確認の優先候補として残す。
- 512 1983 杢二の世界 もくじのせかい 『杢二の世界』は、仕事場のビル屋上から墜落死した弟・杢二の記憶を、兄の視点からたどる短篇です。社会の速度や規範からずれた弟の感性を通して、家族の距離、都市で生きることの危うさ、死者の残す違和感を浮かび上がらせます。悲劇を説明しすぎず、残された者の語りに不穏な余白を残す作品です。 第90回 芥川賞
- 513 1983 犬のように死にましょう いぬのようにしにましょう 『犬のように死にましょう』は、コピーライター出身の高橋一起のデビュー作にあたる文學界新人賞受賞作です。題名からも死や自己否定のイメージが強く、既存情報では受賞・初出確認が中心です。詳細な筋は未確認のため、作品紹介はデビュー作としての位置づけと題名が喚起する不穏さに留めています。 第56回 文學界新人賞
- 514 1983 住宅 じゅうたく 『住宅』は、赤羽建美のデビュー作にあたる第57回文學界新人賞受賞作です。題名が示す住まいの空間を軸に、家や都市生活の閉塞を扱う作品として整理しました。芥川賞候補にもなっており、新人賞受賞作にとどまらず同時代の純文学選考でも注目された作品です。 第57回 文學界新人賞
- 515 1983 海に夜を重ねて うみによるをかさねて 『海に夜を重ねて』は、ストリッパーと知的障害のある青年との愛を描く作品です。社会の周縁に置かれた二人の関係を通して、身体、欲望、ケアの境界を問う物語として整理できます。後に映画「メイク・アップ」の原作となり、映像化にも接続した作品です。 第20回 文藝賞
- 516 1983 スクラップ・ストーリー すくらっぷすとーりー NDLサーチで1983年8月刊、集英社、ISBN 4-08-772445-Xの単行本として確認できる。1990年に集英社文庫版もある。
- 517 1982 羊をめぐる冒険 ひつじをめぐるぼうけん 広告代理店で働く「僕」は、耳に星形の斑紋を持つ謎の羊を探すよう依頼され、ガールフレンドとともに北海道へ向かう。右派の大物、秘書、羊男、そして姿を消した鼠の痕跡が重なり、探偵小説めいた筋立ては次第に幻想と喪失の物語へ変質していく。初期の軽やかな一人称の語りを保ちながら、政治的な力、戦後の記憶、個人の空… 第4回 野間新人賞
- 518 1981 星空 ほしぞら 石川達三が1981年に刊行した後期作品。公開データでは梗概・批評の確認が薄く、まずは新潮社刊行作としての書誌を押さえる段階にある。作家後期の視点から、記憶や老い、社会の中での孤立を読む軸を仮に与えておく。
- 519 1981 さようなら、ギャングたち さようならギャングたち 1982年に講談社から刊行された高橋源一郎のデビュー長編。詩の学校で教える「僕」と、犯罪集団というより言語と記憶のなかで生成される虚構の仲間として現れるギャングたちの世界を、断章・引用・固有名の遊びで組み上げる。物語は詩、ポップカルチャー、メタフィクションを軽やかに横断し、青春小説の形式を借りながら…
- 520 1981 小さな貴婦人 ちいさなきふじん 『小さな貴婦人』は、死んだ猫〈雲〉への愛惜を抱える女性と老いた女流詩人Gの対話を中心に、喪失と幻想の境界を静かに描く作品です。猫という身近な存在を媒介に、孤独、死者への執着、言葉では届ききらない感情が詩的に立ち上がります。現実の事件よりも、声や気配が醸す幻想性を読む作品です。 第85回 芥川賞
- 521 1980 1973年のピンボール せんきゅうひゃくななじゅうさんねんのぴんぼーる 『風の歌を聴け』に続く「鼠三部作」第二作で、翻訳事務所を営む「僕」の生活と、故郷に残る鼠の停滞が並行して語られる。「僕」はかつて通ったバーにあったピンボール台を探し、双子の女性との奇妙な同居や電話配電盤の葬送を経て、失われた時間の手触りに近づいていく。軽い会話と乾いたユーモアの背後に、青春の終わり…
- 522 1980 コインロッカー・ベイビーズ コインロッカー・ベイビーズ 1972年夏、コインロッカーに遺棄されたキクとハシは、施設と養家を経て、それぞれ異なるかたちで母の不在と都市への怒りを抱え込む。ハシは歌声とショービジネスに、キクはアネモネや毒物ダチュラをめぐる破壊衝動に引き寄せられ、東京は欲望と暴力が増殖する異様な空間として立ち上がる。棄児、身体、都市、音の記憶を… 第3回 野間新人賞
- 523 1980 七人の敵が居た しちにんのてきがいた 石川達三が1980年に刊行した後期長編。公開情報では内容紹介や主要書評が乏しいため、現時点では同時期の石川作品群の一冊として書誌を確定し、詳細な筋や評価は保留する。社会と個人の摩擦を描いてきた石川の作家的関心に照らし、孤立や対立の構図を読むための候補作として位置づける。
- 524 1980 ストレイ・シープ すとれい・しーぷ 『ストレイ・シープ』は、幼くして映画監督の父を失ったテレビ局勤務の女性が、喪失を抱えたまま年上の既婚男性との関係に入り込む私小説的作品です。父への思慕と恋愛、仕事の失敗が重なり、娘から女へと移行する過程の痛みが描かれます。都市で働く女性の孤独を、感情の揺れに寄せて読む作品です。 第17回 文藝賞
- 525 1980 海を越えた者たち うみをこえたものたち 『海を越えた者たち』は、笹倉明が第4回すばる文学賞佳作となった作品です。Prizesworldで受賞区分と掲載情報を確認できますが、公開Webで信頼できる梗概や選評本文は確認できませんでした。既存記述にあった海外放浪・青春の分類は題名や二次情報からの推測が残るため、現時点では保留します。
- 526 1979 風の歌を聴け かぜのうたをきけ 1970年の夏、「僕」と友人「鼠」の9日間を描いた村上春樹のデビュー作。短い章、乾いた会話、音楽や翻訳文学の気配によって、青春の終わりと喪失感が軽やかに語られる。後の「鼠三部作」へ続く、村上春樹の文体と世界観の出発点である。 第22回 群像新人賞
- 527 1979 光の領分 ひかりのりょうぶん 『光の領分』は、津島佑子の初期代表作で、第1回野間文芸新人賞受賞作です。講談社公式は、夫との別居から離婚に至る若い母と幼い娘の一年を、12篇の短篇連作で描く作品として紹介しています。揺れ動く女親の不安と生活感を、連作形式で精妙に組み立てる点が読みどころです。 第1回 野間新人賞
- 528 1979 愚者の夜 ぐしゃのよる 『愚者の夜』は、青野聰が第81回芥川龍之介賞を受賞した小説です。日本文学振興会の公式一覧では1979年上半期の受賞作として掲載誌『文學界』とともに記録され、NDLサーチでは1979年文藝春秋版および1983年文春文庫版の書誌を確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概は確認できなかったため、作品紹… 第81回 芥川賞
- 529 1978 夕暮まで ユウグレ マデ 後期の代表的長篇候補。既収録『暗室』後の吉行文学を補える。
- 530 1977 独りきりの世界 ひとりきりのせかい 石川達三が1970年代後半に刊行した作品。題名が示す孤独を中心に、社会や家族から切り離された人物の世界を描く作品として暫定整理する。公開情報が少ないため、内容細部は未確認だが、後期石川の個人の孤立への関心を読む候補作である。
- 531 1976 限りなく透明に近いブルー かぎりなくとうめいにちかいブルー 米軍基地の街・福生のハウスを舞台に、19歳のリュウとその仲間たちの日々を描く。ドラッグとロック、黒人兵たちとの乱痴気騒ぎ、セックスと暴力に明け暮れる若者たちの退廃を、感傷を排した即物的な描写と、ガラスの破片や雨に濡れた滑走路といった鮮烈なイメージの連なりで定着させる。荒廃の只中にいながらどこか透明な… 第75回 芥川賞
- 532 1974 その最後の世界 そのさいごのせかい 石川達三が1970年代に刊行した後期作品。題名は終末や閉ざされた世界を想起させ、社会の行き詰まりと個人の孤独を読む手がかりになる。公開情報が限られるため、後期石川の社会観・人生観を示す作品として暫定紹介する。
- 533 1973 箱男 はこおとこ 新潮社1973年刊。現行新潮文庫ページ、NDL、Books/JPROで確認できる。2024年に映画化関連の再注目もある。
- 534 1971 解放された世界 かいほうされたせかい 石川達三が1971年に刊行した作品で、新潮社版の書誌が確認できる。「解放」という語が示す自由への期待と、その後に残る孤独や責任を読む軸がある。公開梗概が薄いため、戦後社会の価値観の変化を扱う作品として暫定的に分類する。
- 535 1969 われらの狂気を生き延びる道を教えよ われらのきょうきをいきのびるみちをおしえよ 父と障害のある息子、狂気や暴力にさらされた若者たちをめぐる中短篇を束ねた作品集。表題作では家族の内部にある痛みと外部世界の不穏が結びつき、個人的な危機が時代の狂気をどう生き延びるかという問いへ広がる。大江が1960年代に深めた身体・父性・責任の主題を、寓話性と切迫した心理描写で展開する。
- 536 1969 暗室 あんしつ 『暗室』は、男女関係の親密さと断絶、欲望と倦怠を、吉行淳之介らしい冷ややかな観察で描く長篇です。明るい恋愛小説ではなく、関係の内部にある孤独や自己欺瞞を見つめる作品として、第三の新人以後の心理小説の系譜に置くことができます。 第5回 谷崎賞
- 537 1967 約束された世界 やくそくされたせかい 石川達三が1967年に刊行した作品で、新潮社版の書誌が確認できる。題名は理想や未来への約束を示す一方、それが現実の社会で損なわれる可能性も含む。公開情報が少ないため、戦後社会の期待と挫折をめぐる作品として暫定紹介する。
- 538 1967 燃えつきた地図 もえつきたちず 新潮社1967年刊。現行新潮文庫ページ、NDL、Books/JPROで確認できる代表的長篇。
- 539 1965 抱擁家族 ほうようかぞく 『抱擁家族』は、妻とアメリカ兵との関係をきっかけに、家庭が内側から崩れていく過程を描く長篇です。夫婦、子ども、住居、英語、アメリカ的生活様式が絡み合い、戦後日本の家族が抱えた滑稽さと痛みを浮かび上がらせます。 第1回 谷崎賞
- 540 1964 個人的な体験 こじんてきなたいけん 脳に重い障害をもつ子の誕生に直面した青年バードが、父になることへの恐怖と逃避願望に追い詰められていく長編。酒、性、アフリカへの空想に逃げ込むバードの混乱を追いながら、私的な出来事が責任、倫理、家族の問題へ変わっていく過程を描く。滑稽さと残酷さが同居する語り口で、父性を美談にせず、引き受けることの困難…
- 541 1964 日常生活の冒険 にちじょうせいかつのぼうけん 大江健三郎の1960年代の長編で、「日常生活」と「冒険」という相反する語を重ねる題名が印象的な作品。平凡な生活の内部に、暴力、性、幻想的な逸脱が入り込む大江らしい構図を持つ。日常の足場が崩れていく不穏さを読む作品である。
- 542 1964 出発は遂に訪れず しゅっぱつはついにおとずれず 『出発は遂に訪れず』は、島尾敏雄が特攻隊長として出撃直前に終戦を迎えた体験と深く結びつく、戦争小説系の代表作の一つです。NDLサーチでは1964年に新潮社から刊行された211ページの単行本として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出情報を十分に確認できなかったため、ここでは内容を断定しす…
- 543 1964 砂の上の植物群 スナ ノ ウエ ノ ショクブツグン 『暗室』以前の長篇・中篇系作品として、吉行の性と孤独の主題を補う候補。
- 544 1964 他人の顔 たにんのかお 単行本初刊は講談社、現行新潮文庫ページとNDLで確認可能。既存収録の『壁』『砂の女』を補う中核作。
- 545 1963 叫び声 さけびごえ 大江健三郎が1963年に刊行した作品で、切迫した題名の通り、若者の不安や社会的暴力を強い声として立ち上げる。公開情報では細部の梗概は限定的だが、初期大江の身体性、政治性、孤立感を読む作品として整理できる。全小説・作品集への収録も確認できる。
- 546 1963 性的人間 せいてきにんげん 大江健三郎が性と人間存在を正面から扱った初期作品。性を単なる欲望としてではなく、身体、羞恥、孤独、社会への反抗が交差する場として描く。初期大江の挑発的な主題設定と、重くねじれた文体を読む作品である。
- 547 1962 遅れてきた青年 おくれてきたせいねん 大江健三郎の初期長編で、「遅れてきた」若者の屈折した自己意識を描く作品。戦後の政治的・性的な不安を背景に、青年が自分の時代に乗り遅れた感覚を抱える。初期大江らしい、青春小説でありながら痛切で不穏な読み味を持つ。
- 548 1962 砂の女 すなのおんな 『砂の女』は、昆虫採集に来た男が砂丘の穴の底にある家へ閉じ込められ、女とともに砂を掻き出す生活を強いられる長篇です。脱出への執着と、砂の生活に適応していく感覚が交錯し、自由とは何か、労働とは何かを不条理な寓話として問い直します。
- 549 1961 充たされた生活 みたされたせいかつ 石川達三が1960年代初頭に刊行した生活小説。題名の「充たされた」が逆説的に響くように、安定した生活の中にある不満や空虚を扱う作品として読める。公開情報が限られるため、家族、階層、生活倫理の揺らぎを主題にした暫定紹介とする。
- 550 1960 風がめざめる カゼ ガ メザメル 『雨に似ている』後の初期小説として、純文学寄りの補完候補。
- 551 1959 われらの時代 われらのじだい 大江健三郎が1959年に刊行した初期長編。敗戦後世代の若者たちの閉塞、政治感覚、性や暴力への傾斜を通じて、「われら」と呼べる時代の不安を描く。初期大江の実存的な焦燥と社会への違和感が前面に出る作品。
- 552 1959 雨に似ている あめににている 『雨に似ている』は、菊村到が『硫黄島』で第37回芥川賞を受賞した後、1959年に雪華社から刊行した単行本です。NDLサーチでは261ページの図書として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出情報を確認できなかったため、内容は推測せず、菊村の初期作品を示す書誌として記録します。
- 553 1959 風の挽歌 カゼ ノ バンカ 1950年代末の初期作品として、既収録『雨に似ている』周辺の候補。
- 554 1959 死の棘(初期連作) しのとげ(しょきれんさく) 『死の棘(初期連作)』は、妻の精神疾患と夫婦生活の崩壊を、逃げ場のない一人称で書き継いだ私小説的連作です。家庭という最も近い場所が病と疑念によって変質していく過程を、苛烈な自己凝視で描きます。のちに完結版へ至る島尾敏雄文学の中心的モチーフが、初期の連作段階からすでに現れています。
- 555 1959 娼婦の部屋 ショウフ ノ ヘヤ 吉行の都市・性・孤独の主題を代表的に補う候補。のち新潮文庫で再刊。
- 556 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自…
- 557 1958 死者の奢り ししゃのおごり 大学の死体処理室でアルバイトをする若者たちを描く、初期大江の代表的な短篇。死者は畏怖の対象であると同時に、運搬され、数えられ、処理される物質として現れ、生と死の境界が事務的な労働の場に引き寄せられる。若い語り手の冷えた感覚と不安を通して、戦後の身体感覚、死への距離、社会の片隅に置かれた労働の異様さが…
- 558 1956 金閣寺 きんかくじ 『金閣寺』は、1950年の金閣寺放火事件に着想を得て、吃音と自己嫌悪を抱える若い僧が美に囚われていく過程を描く長篇です。金閣の絶対的な美が主人公の現実感を侵食し、破壊衝動へ変わるまでを緊密な心理描写で追います。三島由紀夫の美意識とニヒリズムが最も鋭く結びついた戦後文学の代表作です。
- 559 1956 ガラスの靴・愛玩 がらすのくつ・あいがん NDLで角川書店1956年刊『ガラスの靴・愛玩』を確認。後年の『ガラスの靴』単体版とは区別する。
- 560 1954 驟雨 しゅうう 『驟雨』は、料亭の女との短い逢瀬を軸に、中年男の倦怠と孤独を描く短篇です。感情を大きく説明せず、会話や身振りの細部から男女の距離を読ませるところに特徴があります。吉行淳之介の乾いた都市的感覚が、第三の新人の作風を代表するかたちで現れています。 第31回 芥川賞
- 561 1954 プールサイド小景 ぷーるさいどしょうけい 『プールサイド小景』は、社員旅行の一日を舞台に、家庭を持つ男の欲望と罪悪感を細密に描く短篇です。劇的事件よりも視線、沈黙、気まずさの変化を追うことで、都市生活者の不安を浮かび上がらせます。庄野潤三の静かな日常描写のなかに、戦後の家庭と個人の距離感が滲む作品です。 第32回 芥川賞
- 562 1951 壁 かべ 『壁』は、ある朝突然に名前を失った男S・カルマ氏の不条理な遍歴を描く安部公房の前衛的中篇です。現実の制度や所有の感覚がずれていく過程を、寓話的で実験的な文体によって追い詰めます。戦後日本文学に不条理文学・シュールレアリスムの感覚を持ち込んだ、安部公房の出発点となる作品です。 第25回 芥川賞
- 563 1951 広場の孤独 ひろばのこどく 『広場の孤独』は、朝鮮戦争下の東京を舞台に、新聞社に勤める在日中国人の知識人が戦争と民族のあいだで引き裂かれていく姿を描く作品です。政治状況を背景にしながら、個人の倫理と所属の不安を前景化する点に読みどころがあります。戦後文学の中でも、国際政治と内面の孤独を同時に扱った作品として位置づけられます。 第26回 芥川賞
- 564 1951 悪い仲間・陰気な愉しみ わるいなかま・いんきなたのしみ 『悪い仲間・陰気な愉しみ』は、病と貧しさ、青年期の停滞を背景にした安岡章太郎の初期短篇群です。結核療養や日常の挫折をめぐる内省を、過剰な劇化を避けた私小説的な語りで描きます。第三の新人と呼ばれる世代の、戦後の日常感覚と弱さへのまなざしがよく出た作品です。 第29回 芥川賞
- 565 1950 神坂四郎の犯罪 かみさかしろうのはんざい 犯罪を題名に据えた石川達三の長編。個人の罪を社会の中でどう見るかという、石川の社会派的な問題意識に連なる作品として読める。公開情報では細部の筋が限定的なため、犯罪、責任、共同体の視線を主題に持つ作品として暫定分類する。
- 566 1949 異邦人 いほうじん 『異邦人』は、敗戦後の中国で中国共産党軍に徴用された日本人の体験を描く短篇です。異国の軍事・政治状況に投げ込まれた人物を通して、戦後直後の日本人が抱えた疎外感と帰属の不安を切り取ります。物語の細部については公開出典が限られるため、ここでは受賞作として確認できる範囲を中心に紹介します。 第23回 芥川賞
- 567 1947 望みなきに非ず のぞみなきにあらず 石川達三が戦後間もない時期に刊行した作品で、新潮社版などの書誌が確認できる。題名には敗戦後の絶望と、それでも残る可能性への視線が併存している。公開情報が少ないため、戦後社会を背景にした再出発と倫理の小説として暫定的に整理する。
- 568 1946 暗い絵 くらいえ 『暗い絵』は、敗戦直後の文学状況の中で、戦時下に屈折した青年の内面と、思想・身体・性をめぐる不安を描いた野間宏の初期代表作です。『真空地帯』の軍隊批判へつながる、戦後文学の内面描写と社会批判の出発点として読むことができます。
- 569 1940 転落の詩集 てんらくのしいしゅ 石川達三が戦前から戦後にかけて読まれた作品で、八雲書店版や作品集収録が確認できる。題名の「転落」が示すように、社会的な地位や精神の崩れをめぐる小説として位置づけられる。内容細部は追加確認が必要だが、社会派の視線で人間の弱さを追う作品として分類する。
- 570 1936 深海魚 しんかいぎょ 石川達三が1930年代に発表した初期作品で、改造社版などの書誌が確認できる。公開情報では細部の梗概や同時代評が限られるため、現段階では初期社会派作家としての石川が、人間の暗部や社会の圧力へ視線を向けていた時期の一作として整理する。題名の「深海魚」が示す閉塞感を手がかりに、孤立した人物像を読む候補作と…
- 571 1935 雪国 ゆきぐに 『雪国』は、雪深い温泉地を訪れる島村と芸者駒子、葉子をめぐる関係を、抒情と余白の多い文体で描く中篇です。自然描写、身体感覚、叶わない関係の気配が重なり、川端康成の美意識を代表する作品として広く読まれてきました。