はつこさん
初子さん
紹介 About
あんパンとクリームパンしか売らないパン屋の二階で、ひたすらミシンを踏む洋裁職人の初子さん。一枚の布が誰かの身体を待つ服になることに魅せられて職人になったものの、夢を叶えた先に広がるのは単調な日々だった。京都の田舎町のよどんだ空気と、そこで生きる女性の手仕事の時間を、とぼけたユーモアと正確な観察で描く。劇的な事件のないまま可笑しさと寂しさが同居する、赤染晶子の資質が最初から表れたデビュー作。
評価 Reception
第99回文學界新人賞受賞作として『文學界』2004年12月号に掲載された。2007年に文藝春秋から刊行された『うつつ・うつら』の書誌と、2025年にpalmbooksから刊行された表題作版『初子さん』の書誌をNDLサーチで確認できる。今回の追加出典では受賞掲載と単行本・再刊書誌を中心に確認した。
出典 Sources
- NDLサーチ「受賞作 初子さん」 評価書誌
- NDLサーチ『うつつ・うつら』 書誌
文藝春秋版作品集の書誌確認。NDLレコード上の内容細目は今回確認できていない。
- NDLサーチ『初子さん』palmbooks版 評価書誌
受賞・候補歴 Awards
赤染晶子のほかの収録作 More
- 001 2007 うつつ・うつら うつつうつら 『うつつ・うつら』は、現実とうつつの境目を揺らしながら、人物の記憶や自己像の不確かさを描く作品集です。赤染晶子の作品らしく、日常の言葉や振る舞いが少しずつ奇妙なものへ変わっていきます。軽いユーモアと不穏さが同居する語りが読みどころです。
- 002 2010 乙女の密告 おとめのみっこく 『乙女の密告』は、『アンネの日記』を読む大学の授業を舞台に、朗読、暗唱、密告の記憶が絡み合う小説です。語りは教室内の人間関係と戦争の記憶を重ね、誰が誰を裏切るのかという問いを現在の言葉の問題へ引き寄せます。軽やかな会話の奥に、同調圧力と自己認識の危うさが残る作品です。 第143回 芥川賞
- 003 2011 WANTED!! かい人21面相 うぉんてっど かいじんにじゅういちめんそう 『WANTED!! かい人21面相』は、グリコ・森永事件を想起させる「かい人21面相」を題材に、記憶、犯罪、言葉のパロディを組み合わせる赤染晶子の小説です。事件の固有名は、昭和的な大衆記憶と文学的な語りの遊びを同時に呼び込みます。芥川賞受賞後第一作として、ユーモアと不穏さが交錯する作品です。