よあけのおとがきこえる
夜明けの音が聞こえる
紹介 About
自ら声を封じ込めているうちに本当に声が出なくなってしまった「僕」が、治療者の勧めでホテルで働きはじめる。しかし職場に溶け込めず、ふとした誤解から従業員たちを敵に回し、執拗ないじめにさらされていく。語ることのできない主人公の内側に渦巻く苛立ちと怒りを、鮮烈な言葉の力で外へ撃ち出すような文章が特徴で、声の喪失という設定が「語る」文学そのものへの問いにもなっている。閉塞の果てに射し込む魂の再生の気配が、題名の「夜明けの音」に重なる。
評価 Reception
第25回すばる文学賞受賞作。選考では奥泉光・島田雅彦・高樹のぶ子ら選考委員の圧倒的な支持を集めて単独受賞となった。『すばる』2001年11月号掲載、2002年1月に集英社から単行本化。