フルタイムライフ

フルタイムライフ

柴崎友香 2005

紹介 About

新社会人として働きはじめた春子の日常を、会社の時間、疲れ、同僚との距離感から等身大に描く長編。仕事が劇的な自己実現になるのではなく、生活の大半を占める時間として淡々と積み上がる。柴崎友香らしい心情に寄りすぎない文体で、働きはじめの戸惑いと観察が描かれる。

評価 Reception

NDLサーチで2005年マガジンハウス版の書誌と、保坂和志・柴崎友香の特別対談「主人公の心情に染まらない小説」を確認した。対談記事から、心情説明に寄りかからない語りが評価軸になっていたことがうかがえる。

出典 Sources

柴崎友香のほかの収録作 More

  1. 001 2000 きょうのできごと きょうのできごと 単行本・河出書房新社 京都で開かれた引っ越し祝いの飲み会に集まった若者たちの一夜を、複数の視点から描く柴崎友香のデビュー作。大きな事件よりも、会話、部屋の空気、街への移動が作る微細なずれを積み重ねる。日常の時間をそのまま文学の中心に置く、後の柴崎作品へつながる出発点。 青春孤独と疎外記憶
  2. 002 2001 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? つぎのまちまで、きみはどんなうたをうたうの 単行本・河出書房新社 柴崎友香の初期作品で、次の町へ向かう移動の感覚と、若い人々の会話や音楽の気配を描く。大きなドラマではなく、場所が変わるときの心の揺れ、友人関係の距離、都市の日常の質感が中心になる。後の柴崎作品に通じる、移動と観察の文学として読める。 青春芸術と表現孤独と疎外
  3. 003 2004 青空感傷ツアー あおぞらかんしょうツアー 単行本・河出書房新社 身勝手で魅力的な親友・音生に振り回されながら、「私」が各地を巡るロードノベル。旅は爽快な逃避であると同時に、親友への憧れや苛立ち、自分の輪郭の曖昧さを映し出す時間でもある。柴崎友香らしい移動の感覚と会話のリズムで、若い女性同士の距離を軽やかに描く。 青春恋愛孤独と疎外
  4. 004 2004 ショートカット ショートカット 単行本・河出書房新社 柴崎友香が、都市の移動や人との距離を軽いタッチで描いた2004年刊行作。道を短く抜ける「ショートカット」の感覚は、場所だけでなく、関係や記憶へ近道を探す若い人物たちの姿にも重なる。淡い会話と細部の観察によって、日常の中にある変化の瞬間をすくう。 青春恋愛孤独と疎外
  5. 005 2006 その街の今は そのまちのいまは 単行本・新潮社 『その街の今は』は、カフェで働く歌ちゃんが古い写真に写る大阪に惹かれ、街の過去と現在を行き来する作品です。写真という媒体が、個人の記憶だけでなく都市の時間をたどる装置になります。柴崎友香らしい歩くような文体で、街を見ることと自分の現在を確かめることが重なります。 記憶芸術と表現青春
  6. 006 2007 また会う日まで またあうひまで 単行本・河出書房新社 『また会う日まで』は、再会と別れをめぐる時間の感覚を、柴崎友香らしい日常の観察で描く作品です。人と人が会う場所、離れる場所、そのあいだに流れる記憶が物語の中心になります。関西の街を歩くような語りが、恋愛や孤独を過度に劇化せずに映し出します。 恋愛記憶孤独と疎外
  7. 007 2008 星のしるし ほしのしるし 単行本・文藝春秋 『星のしるし』は、日常の風景のなかに残る小さな兆しを、柴崎友香らしい観察で描く作品です。星という遠いもののイメージが、都市の生活や人との距離に静かな奥行きを与えます。歩くような文体で、恋愛や記憶が大きな劇ではなく生活のなかに滲みます。 記憶恋愛孤独と疎外
  8. 008 2008 主題歌 しゅだいか 単行本・講談社 『主題歌』は、都市で暮らす人物たちの時間や感情を、音楽のように反復する記憶と結びつけて描く柴崎友香の作品です。大きな事件よりも、会話、移動、見えた風景の差異が人物の心の変化を形づくります。語りは静かですが、誰かの人生に流れている旋律を探すような読み味があります。 記憶恋愛芸術と表現
  9. 009 2009 ドリーマーズ ドリーマーズ 単行本・講談社 『ドリーマーズ』は、夢を見ることと現実を生きることのずれを、柴崎友香らしい都市の時間感覚で描く作品です。人物たちの関係は劇的に変わるというより、会話や移動のなかで少しずつ輪郭を変えます。淡い題名に対して、日常の底に残る孤独も読みどころになります。 記憶恋愛孤独と疎外
  10. 010 2010 寝ても覚めても ねてもさめても 単行本・河出書房新社 突然姿を消した恋人と瓜二つの顔を持つ男に出会った朝子の長い恋を描く長編。野間文芸新人賞を受賞し、濱口竜介監督により映画化された。 第32回 野間新人賞
  11. 011 2011 虹色と幸運 にじいろとこううん 単行本・筑摩書房 虹色と幸運は、柴崎友香による2011年発表の作品です。単行本は筑摩書房(2011年)。
  12. 012 2011 ビリジアン ビリジアン 単行本・毎日新聞社 ビリジアンは、柴崎友香による2011年発表の作品です。単行本は毎日新聞社(2011年)。
  13. 013 2012 週末カミング しゅうまつカミング 単行本・角川書店 週末カミングは、柴崎友香による2012年発表の作品です。単行本は角川書店(2012年)。
  14. 014 2012 わたしがいなかった街で わたしがいなかったまちで 単行本・新潮社 わたしがいなかった街では、柴崎友香による2012年発表の作品です。単行本は新潮社(2012年)。
  15. 015 2014 春の庭 はるのにわ 初出・文學界 2014年6月号 離婚を機に世田谷の取り壊し予定のアパートに越してきた太郎は、隣に建つ水色の洋館を熱心に観察する住人の女・西と知り合う。漫画家の西は、高校時代に魅了された写真集『春の庭』の舞台がその家であることを知り、この場所へ引っ越してきたのだった。二人は次第にその水色の家への接近を試みるようになる。再開発で消えて… 記憶死と喪失孤独と疎外 第151回 芥川賞
  16. 016 2014 星よりひそかに ほしよりひそかに 単行本・幻冬舎 星よりひそかには、柴崎友香による2014年発表の作品です。単行本は幻冬舎(2014年)。
  17. 017 2014 きょうのできごと、十年後 きょうのできごと、じゅうねんご 単行本・河出書房新社 デビュー作『きょうのできごと』の登場人物たちの十年後を描く続編。
  18. 018 2015 パノララ パノララ 単行本・講談社 パノララは、柴崎友香による2015年発表の作品です。単行本は講談社(2015年)。
  19. 019 2017 かわうそ堀怪談見習い かわうそぼりかいだんみならい 単行本・KADOKAWA かわうそ堀怪談見習いは、柴崎友香による2017年発表の作品です。単行本はKADOKAWA(2017年)。
  20. 020 2017 千の扉 せんのとびら 単行本・中央公論新社 新宿の巨大な都営団地を舞台に、そこで暮らした人々の記憶と時間をたどる長編。
  21. 021 2018 公園へ行かないか?火曜日に こうえんへいかないか?かようびに 単行本・新潮社 2016年、アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者が、世界各国の作家・詩人たちと過ごした3か月をもとに描く11篇の連作小説集。英語で議論し、街を歩き、アメリカ大統領選挙の瞬間にも居合わせる経験を通じて、そこにいること/いないこと、知りたいのに届かないことを考え続ける… 移民と越境言葉と言語芸術と表現
  22. 022 2018 つかのまのこと つかのまのこと 単行本・KADOKAWA かつての住み家らしき「この家」をさまよい続ける「わたし」が、次々に入れ替わる住人たちを見守る物語。幽霊のような語り手の視点から、家に残る記憶と、誰かを待ち続ける時間が静かに積み重ねられる。柴崎友香が俳優・東出昌大をイメージして小説を書き、市橋織江の写真と組み合わされた、写真と小説の境界を意識した一冊… 記憶死と喪失家族
  23. 023 2019 待ち遠しい まちどおしい 単行本・毎日新聞出版 北川春子、夫を亡くした青木ゆかり、新婚の遠藤沙希という世代も立場も異なる三人の女性が、ご近所付き合いを通じて少しずつ関わる長編。住まいの距離の近さと、価値観や人生段階のずれが生む噛み合わなさを、柴崎友香らしい生活の手触りのなかで描く。年齢、結婚、独居、見えにくい困難をめぐり、人はどこまで互いを判断せ… 家族老い孤独と疎外
  24. 024 2020 百年と一日 ひゃくねんといちにち 単行本・筑摩書房 人や店、駅、家、空港、家族の記憶が、数ページの掌編の中で十年、二十年、百年の時間へ伸びていく短篇集。個々の人物の大事件ではなく、場所に積み重なる時間、誰かが去り誰かが来る反復、忘れられていく出来事の痕跡を描く。長いタイトルと淡々とした語りが、日常の一瞬を歴史の厚みへ接続する。 記憶家族死と喪失
  25. 025 2023 続きと始まり つづきとはじまり 単行本・集英社 東日本大震災、熊本地震、未知の病原体の出現を背景に、別々の場所で暮らす男女三人の日常が描かれる。大きな出来事の「始まり」と「続き」は個人の生活時間のなかで重なり、誰にも同じように流れたはずの月日が、それぞれ異なる記憶として蓄積していく。複数の人物の日々を並置し、災害とパンデミック以後の時間感覚を静か… 災害記憶家族 第60回 谷崎賞
  26. 026 2025 帰れない探偵 かえれないたんてい 単行本・講談社 『帰れない探偵』は、探偵事務所兼自宅へ突然帰れなくなった「わたし」が、世界のさまざまな街を巡る連作探偵小説です。急な坂の街、雨でも傘を差さない街、夜にならない夏の街などを歩く探偵の移動を通じて、帰る場所、知らない街と知っている街のずれ、時間と記憶の手ざわりが浮かび上がる。事件解決よりも、場所の感覚と… 記憶移民と越境言葉と言語
  27. 027 2025 遠くまで歩く とおくまであるく 単行本・中央公論新社 『遠くまで歩く』は、コロナウイルス感染拡大のさなか、小説家のヤマネがある講座を担当するところから始まる長篇小説です。PC越しに語られる受講生たちの記憶、忘れられない風景や言葉が重なり、移動が制限された時期に人がどのように遠くへ届くのかを描く。柴崎友香らしい、場所・時間・記憶の細部を静かにつなぐ語りが… 記憶言葉と言語芸術と表現