きつねねいりゆめのとりこ
狐寝入夢虜
紹介 About
三週間前に職を失った上岡鳥子は、空腹を抱えて神社へ散歩に出かけ、帰り道に迷い、年下の古本屋の倅と茶飲み話をして花札に興じる。働かないこと自体は気にしないが、仕事に存在理由を求める世間様の考え方には反感を覚える——そんな鳥子の「高潔なる怠惰」を、現代の話なのにわざと落語のような古風な語りで聞かせる。語りの芸そのもので現代の女性の生きにくさを軽やかに裏返してみせた、ユニークな受賞作。
評価 Reception
選考委員の加藤典洋は「この語りの力で、既成の作品の構造が壊れている」と評し、多和田葉子は「言葉が描写の道具に使われてたまるかと初めから張り切っている」と言葉の運動性を高く評価した。単行本には書き下ろし「水酔日記」を併録。