わーかーず・だいじぇすと

ワーカーズ・ダイジェスト

津村記久子 2011 第28回 織田作之助賞 受賞

紹介 About

『ワーカーズ・ダイジェスト』は、東京で働くデザイナーの奈加子と、大阪で働く重信という二人の会社員を描く作品です。同じ名字を持つ二人の生活は大きく交差しないまま、仕事の疲れ、移動、職場の人間関係、日々の小さな不調を通して響き合います。働く人の時間を、劇的な成功や破局ではなく、淡々とした持続として捉える一冊です。

評価 Reception

第28回織田作之助賞受賞作。筑摩書房の著者プロフィールで受賞歴を確認し、NDLサーチで集英社版単行本の書誌を確認した。

出典 Sources

受賞・候補歴 Awards

受賞 第28回 織田作之助賞 (2011年)

津村記久子のほかの収録作 More

  1. 001 2005 君は永遠にそいつらより若い きみはえいえんにそいつらよりわかい 初出・「マンイーター」として第21回太宰治賞受賞 『君は永遠にそいつらより若い』は、大学卒業を間近に控えたホリガイの、バイト、学校、下宿、友人との日々を描く津村記久子のデビュー作です。だらだらした学生生活の表面の下に、暴力や悪意、見過ごされがちな哀しみが少しずつ顔を出します。日常の軽さを保ちながら、傷ついた人の存在を消さずに書く、津村文学の出発点で… 青春暴力孤独と疎外 第21回 太宰治賞
  2. 002 2008 ポトスライムの舟 ぽとすらいむのふね 初出・「群像」2008年11月号 『ポトスライムの舟』は、工場で働きながら生活費を切り詰めるナガセを主人公にした中篇です。世界一周クルーズの費用が自分の年収とほぼ同じだと知ったナガセは、その金額を一年で貯めようとします。非正規労働、家計の細さ、友人や母との関係、ポトスライムを育てる日々が重なり、生活を続けることの苦しさと粘りが描かれ… 労働貧困生活 第140回 芥川賞
  3. 003 2008 ミュージック・ブレス・ユー!! みゅーじっく・ぶれす・ゆー 初出・書き下ろし単行本(KADOKAWA、2008年6月30日刊行) 高校3年生のオケタニアザミが、将来よりも音楽のことを考えながら、パンクロックを支えに日々を過ごす青春長編。大きな事件よりも、進路、友人関係、学校生活のぐだぐだした時間が、音楽への切実な依存とともに描かれる。軽さのある一人称の語りが、将来を前にした不安と自由の感覚を同時に立ち上げる。 青春芸術と表現一人称 第30回 野間新人賞
  4. 004 2012 給水塔と亀 きゅうすいとう と かめ 初出・「文学界」2012年3月号掲載 定年後に幼いころ暮らした土地へ戻ってきた独身男性を主人公に、給水塔の記憶と前住人が残した亀をめぐって老いと孤独を見つめる短篇。大きな事件ではなく、製麺所の排水、古い団地、ベランダからの風景といった細部が、人生の時間の流れを静かに立ち上げる。津村記久子らしい抑制された語りが、再出発のかすかな意欲を読み… 老い孤独と疎外記憶 第39回 川端賞
  5. 005 2015 この世にたやすい仕事はない このよにたやすいしごとはない 初出・単行本(日本経済新聞出版社、2015年刊行) 『この世にたやすい仕事はない』は、燃え尽きて前職を辞めた女性が、職業相談員に紹介されるまま、少し変わった仕事を渡り歩く連作長篇です。監視する仕事、バスの広告を考える仕事、米菓の袋に入れる文章を書く仕事など、一見たやすそうな職場ほど、社会の仕組みや人の欲望が不思議なかたちで入り込んできます。労働小説で… 労働生活孤独と疎外 第66回 芸術選奨新人賞
  6. 006 2016 浮遊霊ブラジル ふゆうれいぶらじる 初出・「文學界」2016年6月号(表題作) 『浮遊霊ブラジル』は、表題作を含む短篇集です。死後にブラジルへ行きたい浮遊霊、日常の中で少しずつ位置をずらされる人々、老いや孤独を抱える人物たちが、奇妙さと生活感のあいだで描かれます。現実のすぐ横にある別の通路を、津村記久子らしい平明な語りで開く一冊です。 孤独と疎外生と死生活 第27回 紫式部文学賞
  7. 007 2023 水車小屋のネネ すいしゃごやのねね 初出・単行本(毎日新聞出版、2023年3月刊行) 『水車小屋のネネ』は、親元を離れた姉妹が、水車小屋のある町で人々に支えられながら長い時間を生きていく長篇です。そば粉を挽く水車、言葉をまねる鳥ネネ、町の人たちとの関係が、生活を立て直すためのゆるやかな共同性を形づくります。大きな救済ではなく、誰かが誰かを少しずつ助ける時間を積み重ねる作品です。 家族労働生活 第59回 谷崎賞