おあしす
オアシス
紹介 About
愛用の青い自転車を盗まれたフリーターの「私」は、呆然としたままそれを探す日々を送る。家には家事を放棄してしまった母と、その母に「パラサイト」されているOLの姉・サキ。女三人の奇妙な家族の均衡が、自転車の喪失を起点に少しずつあらわになっていく。母を疎みながら捨てられない娘たちの姿は「現代の新種の姥捨て山」とも評された。大学在学中の22歳が、家族の倦怠を等身大の乾いた感覚で掬い上げたデビュー作。
評価 Reception
第40回文藝賞受賞作の一つとして『文藝』2003年冬季号に掲載され、同年11月に河出書房新社から単行本化された。NDLサーチでは受賞者連続対談「『オアシス』の中で起こっている“激動”」の掲載も確認でき、2006年には河出文庫化された。
出典 Sources
- NDLサーチ「オアシス」 評価書誌
第40回文藝賞発表号の受賞作掲載情報。
- NDLサーチ『オアシス』 書誌
- 出版書誌データベース『オアシス』 書誌
- NDLサーチ「神山修一×生田紗代--『オアシス』の中で起こっている“激動”」 評価
受賞者連続対談の掲載情報。対談本文は未確認。
受賞・候補歴 Awards
生田紗代のほかの収録作 More
- 001 2004 タイムカプセル たいむかぷせる 過去にしまいこんだ感情や記憶を、現在の自分が開け直すようにたどる作品。若い人物の時間感覚を、懐かしさだけでなく、未来へ残してしまったものへの不安として描く。生田紗代のデビュー後の文脈では、青春の明るさと居場所のなさを同時に読む入口になる。
- 002 2005 まぼろし まぼろし 母娘の確執を描く表題作と、実家に戻った娘の日常を描く「十八階ビジョン」を収める作品集。見えているはずの家族や故郷が、どこか「まぼろし」のように掴めなくなる感覚を、若い女性の視点から描く。日常の薄い不安と、過去から離れきれない心理が静かに重なる。
- 003 2007 たとえば、世界が無数にあるとして たとえばせかいがむすうにあるとして 『たとえば、世界が無数にあるとして』は、別の可能性としての世界を想像しながら、自分の選択や関係を見つめる作品です。現実の生活に、もしも別の自分がいたらという寓話的な問いが差し込まれます。恋愛や孤独を、ひとつの世界だけでは説明しきれない揺れとして読むことができます。
- 004 2009 ぬかるみに注意 ぬかるみにちゅうい 『ぬかるみに注意』は、足を取られる場所の感覚を、生活や人間関係の抜け出しにくさと重ねる生田紗代の作品です。題名は注意を促す標識のようですが、人物はむしろそのぬかるみに近づいてしまいます。恋愛や家族の問題を、湿った不安として読む作品です。
- 005 2010 それいゆ それいゆ 『それいゆ』は、題名が示す光や明るさとは対照的に、若い人物の自己認識や恋愛の揺れをたどる小説として整理できます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌情報と作者の同時期作品の文脈に基づく暫定的な紹介です。明るさに向かう感覚と、都市的な孤独のあいだに読みどころがあります。