はしる

走ル

羽田圭介 2008

紹介 About

『走ル』は、高校生が自転車で北へ向かい続けるロードノベルです。走る身体の疲労と速度が、若い自意識や孤独をそのまま運んでいきます。目的地よりも、移動し続ける時間のなかで自分の輪郭が変わるところが読みどころです。

評価 Reception

国立国会図書館サーチで2008年河出書房新社刊の単行本と雑誌掲載記事を確認できます。今回確認できた評価情報は書誌中心で、書評・受賞歴は未確認です。

出典 Sources

羽田圭介のほかの収録作 More

  1. 001 2003 黒冷水 こくれいすい 初出・文藝 2003年冬季号 弟の修作は兄・正気の部屋を毎日執拗に「家捜し」し、兄はそれに気づいて巧妙な罠と報復を仕掛ける。家庭内の些細な悪意の応酬は、黒く冷たい水のような憎悪へと際限なくエスカレートしていく——。思春期の自意識と家族間の生理的な憎しみを、17歳の現役高校生がここまで執拗に書き切ったという事実そのものが衝撃を与え… 家族暴力青春 第40回 文藝賞
  2. 002 2006 不思議の国のペニス ふしぎのくにのペニス 単行本・河出書房新社 『不思議の国のペニス』は、性欲に振り回される男子高校生の日常を、露骨さと滑稽さを交えて描く作品です。青春小説の枠組みを使いながら、身体の変化や欲望を制御できない不安を前面に出しています。題名の挑発性に対して、語りは若い自意識のぎこちなさを追うところに読みどころがあります。 青春身体
  3. 003 2010 御不浄バトル ごふじょうバトル 単行本・集英社 『御不浄バトル』は、ブラック企業で働く男がトイレを唯一の避難所として戦う、羽田圭介の職場小説です。労働の場で追い詰められた身体が、排泄の空間に逃げ込む構図がユーモラスで痛切です。職場、身体、屈辱の問題を、過剰な題名の勢いで読ませます。 労働身体貧困
  4. 004 2010 ミート・ザ・ビート ミート・ザ・ビート 単行本・文藝春秋 『ミート・ザ・ビート』は、郊外で暮らすフリーターの青年の日常を、音楽的なリズムを持つ文体で描く羽田圭介の小説です。労働と無為のあいだを揺れる生活に、ビートのような反復と焦燥が重なります。若い身体、貧困、郊外の閉塞を読む作品です。 労働青春貧困
  5. 005 2011 「ワタクシハ」 ワタクシハ 単行本・講談社 『「ワタクシハ」』は、就職活動に翻弄される元バンドマンの大学生を描く羽田圭介の就活小説です。自己PRや面接の言葉が、主人公の音楽への未練や自己像をゆがめていきます。労働へ入る前の儀礼としての就活を、乾いた違和感とともに読む作品です。 労働青春アイデンティティ
  6. 006 2012 隠し事 かくしごと 単行本・河出書房新社 『隠し事』は、秘密を抱えた人間関係を通じて、家族や恋愛の見えない緊張を描く羽田圭介の小説です。隠すことは単なる嘘ではなく、自分を守るための姿勢であり、同時に他者との距離を生みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 家族記憶孤独と疎外
  7. 007 2012 盗まれた顔 ぬすまれたかお 単行本・幻冬舎 『盗まれた顔』は、指名手配犯の顔を記憶して追う見当たり捜査班の刑事を描く羽田圭介の小説です。顔を覚える仕事は、他者のアイデンティティを管理する労働であると同時に、見る側の自己認識も揺さぶります。警察小説の形を取りながら、身体、記憶、監視の問題へ広がります。 アイデンティティ労働テクノロジー
  8. 008 2014 メタモルフォシス メタモルフォシス 単行本・新潮社 『メタモルフォシス』は、SMの快楽へ深入りしていく証券マンを描く羽田圭介の小説です。仕事で求められる合理性と、身体が求める変容の欲望がずれていきます。性と労働を結びつけながら、自己像が変質していく過程を乾いた文体で追う作品です。 身体労働
  9. 009 2015 スクラップ・アンド・ビルド スクラップ・アンド・ビルド 初出・文學界 2015年 無職で資格試験の勉強と転職活動を続ける28歳の健斗は、母と、87歳の祖父との三人暮らし。「早う死にたか」と口癖のように繰り返す祖父に対し、健斗は介護職の友人の助言をひねって解釈し、あえて何もかも世話を焼いて自立の機会を奪う「足し算の介護」によって、祖父の望む穏やかな死を後押ししようと思い立つ。同時に… 家族老いケアと介護 第153回 芥川賞
  10. 010 2016 コンテクスト・オブ・ザ・デッド コンテクスト・オブ・ザ・デッド 単行本・講談社 『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』は、ゾンビが蔓延する世界で文学と出版業界を風刺する長編です。死者が増殖するホラー的な設定の中に、言葉が読まれる文脈や、作品が流通する仕組みへの批評が重ねられます。ジャンル小説の速度とメタフィクション的な笑いを併せ持つ作品です。 芸術と表現言葉と言語死と喪失
  11. 011 2017 成功者K せいこうしゃケー 単行本・河出書房新社 『成功者K』は、芥川賞受賞とメディア露出で人生が変貌していく作家Kを描く、私小説的メタフィクションです。成功は幸福ではなく、視線、消費、自己演出の圧力として人物にまとわりつきます。作家が商品化される現代の文芸状況を、皮肉と自虐で読ませる作品です。 芸術と表現労働同調圧力
  12. 012 2018 5時過ぎランチ ごじすぎランチ 単行本・実業之日本社 「グリーンゾーン」「内なる殺人者」「誰が為の昼食」の三篇からなる、労働と犯罪が絡み合う短篇集。ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギーを抱える殺し屋、写真週刊誌の女性記者が、それぞれ過酷な仕事の延長線上でヤクザや警察、国家権力に触れていく。ブラックな職場感覚とクライムノベルの緊張を重ね、仕事にまつわ… 労働暴力貧困
  13. 013 2019 ポルシェ太郎 ポルシェたろう 初出・文藝 掲載(前篇・後篇) 35歳で起業した太郎は、年収に匹敵するポルシェを買う。ところが、その自慢の車で得体の知れないものを運ばされることになり、成功者の見栄と欲望が危うい方向へ走り出す。河出書房新社の紹介は「欲望か、死か」という言葉で作品の緊張を示しており、消費、承認、成功の演出を乾いたユーモアで追う長篇として読める。単な… 労働同調圧力身体
  14. 014 2021 滅私 めっし 単行本・新潮社 必要最低限の物だけで暮らすライターの男が、ミニマリストの同志が集うサイト運営と投資で生計を立てながら、自由でスマートな生活を手に入れている。物だけでなく人間関係にも淡泊だった彼の前に、昔の所業を知る人物が現れ、捨てたはずの過去が生活に影を落とす。所有を減らすことの快楽と、過去や欲望は簡単には消せない… アイデンティティ労働消費社会
  15. 015 2021 Phantom ファントム 単行本・文藝春秋 『Phantom』は、外資系食料品メーカーで働く元地下アイドルの華美が、株式投資によって給与収入と同じ配当を生む「分身」を作ろうとする長篇です。恋人の直幸は、使われない金を軽んじながら、オンラインコミュニティや物々交換の思想へ傾いていきます。投資、オンライン共同体、恋愛の齟齬を通して、現代の金融シス… 労働テクノロジー消費社会
  16. 016 2024 タブー・トラック タブー・トラック 単行本・講談社 クリーンなイメージに押しつぶされそうな俳優、自分を管理しようとする脚本家、SNSで著名人を糾弾する会社員、整形と動画配信で稼ぐ女子高生など、タブーに縛られ、またタブーに惹かれる人々の人生が交錯する長篇。題名の「タブー・トラック」は、世間の目から離れて禁忌を犯せるプライベートスペースとして示される改造… 同調圧力身体テクノロジー
  17. 017 2025 バックミラー バックミラー 単行本・河出書房新社 『バックミラー』は、落ち目のミュージシャン、極度の無駄嫌いのM&A会社社長、樹木伐採に生活を揺さぶられる女性など、都市でままならなさを抱える人物たちを描く短篇集です。河出書房新社公式は、シニカルな笑いと冷徹な観察力で都会の人生を写す「令和の没落小説」と紹介している。表面的な合理性や成功願望の裏側で… 孤独と疎外労働アイデンティティ
  18. 018 2025 その針がさすのは そのはりがさすのは 単行本・新潮社 『その針がさすのは』は、再開発が進む東京・中野に住む「僕」が、街の過去と自分の身体の出来事を結びつけていく小説です。戦前に満州国と中野が電信ケーブルでつながっていたという話、不妊治療手術、時計のイメージが重なり、日常の街が歴史の深部へ沈み込む。個人の身体の時間と都市の記憶が同じ針に触れられるように接… 記憶身体テクノロジー