Mood
静謐
読み味「静謐」に分類された 554 作品。
- 001 2026 舞う砂も道の実り まうすなもみちのみのり 孤児として育ったワオスリ、大家族の移住先を探すイフン、離れ離れになった子を探すダエが、ともに旅へ出るロードノベル。時代も場所も定かでない土地をたどり、町々での出会いと別れを通して、三人はそれぞれの喪失や人生の意味に向き合っていく。旅は目的地へ進む筋であると同時に、血縁ではない者同士が一時的な家族のよ…
- 002 2026 彼女のカロート かのじょのかろーと 『彼女のカロート』は、表題作「彼女のカロート」と「宦官への授業」を収める作品集。表題作では、耳が聞こえなくなった女性アナウンサーから新しい墓を依頼された主人公の日常が、彼女とのずれた応答によって静かに侵食されていく。もう一篇では、読むことに困難を抱えながら文学に向かう青年がシュールな冒険に巻き込まれ…
- 003 2026 私的応答 してきおうとう 『私的応答』は、1995年の震災を経験した銅子と、母、娘の厚美を軸に、母娘三代の時間をたどる長編です。倒れたミシン、避難所の体育館、梅田で浴びたシャワーといった記憶が、年月を隔てても日常の奥で反響し続けます。震災の経験を大きな出来事としてだけでなく、家族の会話、沈黙、許しがたさの中に残るものとして描…
- 004 2026 わたしは社会 わたしはしゃかい 『わたしは社会』は、芝夏子が2026年4月に朝日新聞出版から刊行した単行本。Books出版書誌データベースでは、放課後児童クラブで働きだす人物をめぐる表題作と、第6回林芙美子文学賞佳作「煙草の神様」の併録を確認できる。NDLサーチでも同じ収録作情報を確認でき、既収録の「煙草の神様」を単行本収録の文脈…
- 005 2026 本日ノ亡者 娑婆ノ縁尽キテ ほんじつのもうじゃしゃばのえんつきて 『本日ノ亡者 娑婆ノ縁尽キテ』は、2026年1月に朝日新聞出版から刊行された津田美幸の単行本。Books出版書誌データベースの内容紹介では、60年に一度の御本尊開帳を控える限界集落の寺を舞台に、秘仏の開示をめぐる老僧、博物館学芸員、役場担当者の思惑が交差する表題作として紹介されている。第11回林芙美…
- 006 2026 満ちる街 みちるまち 『満ちる街』は、限界集落に住む電力会社職員の徳真が、農園の土地売却をめぐる出来事に関わっていく作品です。地方のインフラ、土地、暮らしの持続をめぐる問題が、現代的な地域小説の形で立ち上がります。土地を売るか守るかという選択の背後に、そこに住む人々の生活圏と将来像のずれが見えてきます。電力会社員という立… 第12回 林芙美子賞
- 007 2025 記念日 きねんび 『記念日』は、23歳のミナイ、42歳のソメヤ、76歳の乙部さんという年齢も境遇も違う女性三人が、奇妙なルームシェアをきっかけに交わっていく長篇です。「明日から、おばあさんになってみませんか?」という提案が、若さや老い、身体のままならなさ、他者と暮らすことの違和感を動かしていく。年齢や役割を一時的にず…
- 008 2025 温泉小説 おんせんしょうせつ 年齢も性別も境遇も異なる人びとが温泉地へ向かう六篇の連作的短篇集。おひとり様限定の温泉バスツアー、免許返納を迫られる後期高齢者、母の呪縛から逃れられない44歳の娘、亡き妻との記憶をたどる初老の男、50歳女性の一人旅、婚約者と別れて南の島で再出発を試みる若者など、人生の苦みや迷いを抱えた人物たちを描く…
- 009 2025 細長い場所 ほそながいばしょ 『細長い場所』は、名前、記憶、肉体を失い、気配や残存となった「わたしたち」が旅をする幻想的な小説です。河出書房新社公式は、生と死のあわいにある不思議な風景として作品を紹介しています。個であることがほどけていく語りを通じて、誰が語り、誰が残っているのかという境界も揺らぎ、旅そのものが死者と生者の関係を…
- 010 2025 帰れない探偵 かえれないたんてい 語り手の「わたし」は世界探偵委員会連盟に属する探偵だが、探偵事務所でもあり家でもある部屋に突然帰れなくなる。急な坂の街、雨でも傘を差さない街、夏が続き夜が来ない街、砂と太陽の街など、変化し続ける世界の都市をめぐりながら、「帰れない」状態そのものを抱えたまま移動していく。事件を解決するよりも、街の手触…
- 011 2025 曇りなく常に良く くもりなくつねによく 『曇りなく常に良く』は、同じ高校に通う五人の少女たちの一年間を描く青春群像劇です。よく似た声が混ざり合う関係の中で、友情、同調、わずかなずれが日々の会話と学校生活に滲みます。少女たちの「仲のよさ」は安定した居場所であると同時に、自分の言葉を見失わせる圧力にもなり、誰かと同じでいることの安心と苦しさを…
- 012 2025 百日と無限の夜 ひゃくにちとむげんのよる 『百日と無限の夜』は、第一子の妊娠中に切迫早産で入院した「わたし」が、横たわる時間のなかで出産と生命をめぐる幻視の旅へ入っていく長篇です。能『隅田川』の女物狂いを案内人に、中世の京、駆け込み寺、若狭のお水送り、海辺の産小屋へと時空を越えて進む構成が、病室の身体感覚と神話的な想像力を結びつける。動けな… 第42回 織田作之助賞
- 013 2025 たのしい保育園 たのしいほいくえん 『たのしい保育園』は、二歳のももちゃんと父が川べりを歩き、保育園へ向かい、連絡帳を書こうとする日々を描く連作小説です。育児のなかで消えていく一日一日の記憶を、父の観察と子どもの時間感覚の両方からすくい取ります。子どもの発語や歩幅に合わせる語りが、親の側の戸惑いと喜びも同時に浮かび上がらせます。大きな…
- 014 2025 遠くまで歩く とおくまであるく コロナウイルス感染拡大の中、小説家のヤマネは「身近な場所を表現する」実践講座を担当する。地図や映像を手がかりに、PC越しの参加者たちがそれぞれの記憶、忘れられない景色、言葉を語り合い、その記憶が別の記憶を呼び起こしていく。移動できない時期に、場所を語ることが別の場所へ歩いていく行為として立ち上がる…
- 015 2025 月を見に行こうよ つきをみにいこうよ 『月を見に行こうよ』は、アイオワ大学の国際創作プログラム IWP に招かれた経験をもとに、世界各地から集まった詩人や小説家たちの交流を描く物語です。背景も言語も異なる創作者たちが、約二か月半の滞在のなかで互いの作品観や創作への覚悟に触れていく。滞在先の共同生活は、言葉が通じることと理解し合えることの…
- 016 2025 麝香豌豆 すいとぴー 『麝香豌豆』は、井岡道子が2025年に未知谷から刊行した八篇構成の作品集です。四万十川上流の山村と、青年期を過ごした京都という二つの土地を軸に、習俗、家族、友人知人との関係を静かに切り取る。土地の記憶と個人の感情が重なり、日常の一場面を象徴的に読ませるところに読みどころがあります。
- 017 2025 処暑 しょしょ 『処暑』は、阿部あみが「文學界」2025年12月号に発表した短篇です。NDLサーチとCiNii Researchでは「処暑 : 二〇二五年下半期同人雑誌優秀作」として記録され、掲載誌・巻号・ページ範囲・責任表示を確認できます。『裏庭』で第5回林芙美子文学賞佳作となった後の発表作として収録します。公開…
- 018 2025 アナグマ あなぐま 『アナグマ』は、葬祭会社に出向した五十代の女性を語り手に、新しい職場での死との接触と、母の介護や看取りの記憶が重なるさまを描く作品です。死を扱う労働の現場と、家族内のケアの記憶が交差し、中年期の孤独と責任を静かな語りで見つめます。葬祭と介護という二つの場面を通じて、他者の死を手続きとして扱わざるをえ… 第11回 林芙美子賞
- 019 2025 時の家 ときのいえ 『時の家』は、建築士が設計した一軒の家に暮らした三代の住人たちの記憶を、訪問者である青年のスケッチを通して呼び起こす作品です。丸柱、天井、漆喰の壁といった細部に、住む人の感情と時間が蓄積していきます。建物を見る行為が、そこにいた人々の声や関係を再構成する読みの装置になっています。家を単なる舞台ではな… 第47回 野間新人賞
- 020 2025 美土里倶楽部 『美土里倶楽部』は、夫を亡くした美土里と三人の女友達を中心に、死別後の暮らしを一年の時間で追う長篇です。中央公論新社公式ページは、夫の不在、墓、供養の問題に向き合う「未亡人倶楽部」の物語として紹介している。悲嘆を一方向に沈ませるのではなく、女友達どうしの会話や思案を通して、死者を抱えた生活の手触りを…
- 021 2024 かりそめの星巡り かりそめのほしめぐり ドイツでの暮らしのなかに、故郷である仙台の風景、文学作品、美術、過去からの声を重ねていくエッセイ集。Books 出版書誌データベースでは、河北新報連載「記憶の素描」と日本経済新聞連載「美の十選」を収録した、著者初のエッセイ集として紹介されている。小説作品で展開してきた記憶、土地、言葉、死者との距離と…
- 022 2024 あきらめる あきらめる 『あきらめる』は、近所の川沿いを歩く早乙女雄大が、入院中の大切な人との時間や家を出た家族のことを抱えながら、親子風の二人組と出会う長編。火星移住が身近になった近未来を背景に、彼らと「オリンポス山」を目指す展開へ進む、現実の悩みとゆるいSF的飛躍が混ざる作品である。題名の「あきらめる」を敗北ではなく「…
- 023 2024 いつか、あの博物館で。 いつかあのはくぶつかんで 『いつか、あの博物館で。』は、ロボット博物館への校外学習で同じ班になった中学一年生四人を描く群像劇。美しいアンドロイドの気象予報士との出会いをきっかけに、彼らはロボットと人間の違い、自分だけの心、他者との距離を考えていく。テクノロジーの題材は、未来社会の説明ではなく、思春期の子どもたちが自分の感情を…
- 024 2024 僕たちの保存 ぼくたちのほぞん 『僕たちの保存』は、語り手のゲンさん、年上の武上さん、引きこもりの甥シンスケ、人気漫画家の亀谷さんらが、新幹線、自転車、バス、テスラを乗り継いで旅に出るロードノベル。震災被害者の形見であるMSXパソコンが、過去と現在、記憶と情報の保存をつないでいく。データ、モノ、思い出の保存方法が変わっていく時代を…
- 025 2024 ある日の、あのタクシー あるひのあのたくしー 『ある日の、あのタクシー』は、運転手と乗客の一期一会の出会いを通して町の姿を描く、12編からなるタクシー小説集。車内という短い時間と閉じた空間に、乗る人の生活、職業、孤独、偶然の会話が交差する。移動する密室としてのタクシーが、普段はすれ違うだけの人々の事情を一時的に結びつける。タクシー運転手経験を持…
- 026 2024 無形 むけい 立ち退き勧告が進む海辺の団地を舞台に、年老い病を患う祖父と孫娘、親が失踪した姉弟、夫に先立たれた老女、友情以上の感情を育む少女たちなどの生活が重なっていく長編。形には残らない生活の喜びや悲しみを、団地に流れる季節と記憶のなかに描く。取り壊される場所の記憶を、誰か一人の所有物ではなく、複数の生活が交差…
- 027 2024 サンショウウオの四十九日 サンショウウオのしじゅうくにち 外から見ればひとりの人間にしか見えないが、その身体には杏と瞬というふたつの意識が宿っている——半身ずつを分け合って生きる29歳の結合双生児の姉妹。父もまた、胎児のまま兄の身体に取り込まれた「胎児内胎児」として摘出されて生をうけた、稀有な来歴を持つ。その父の片割れともいえる伯父の訃報が届き、四十九日ま… 第171回 芥川賞
- 028 2024 昏色の都 くれいろのみやこ 表題作「昏色の都」に、「極光」「貸本屋うずら堂」を併録した幻想小説集。国書刊行会公式は、表題作を初出時の三倍の規模へ増補した中編として紹介し、夢と現実のあわいをさまよう旅の物語や、古い貸本漫画と幼年期の記憶をめぐる作品を収めると説明している。幻想は現実逃避ではなく、記憶や読書体験の奥に潜む時間を呼び…
- 029 2024 森は盗む もりはぬすむ 『森は盗む』は、第10回林芙美子文学賞大賞受賞作で、小原鉄平の作品集『八月のセノーテ』に収録された作品です。朝日新聞出版さんぽで公開された冒頭では、工務店で働く語り手が、森の奥に残る木造の檻を見つける場面と、職場の日常が交互に立ち上がります。森の不穏な気配と、設計・現場・職人をめぐる働く場の感覚が重… 第10回 林芙美子賞
- 030 2024 最近 さいきん 『最近』は、パンデミック後の近い過去を背景に、平凡な夫婦と周囲の人々の生活を精密に追う連作長篇です。救急外来の待合室で想起される赤い猫の噂を入口に、家族、友人、病院、日々の手続きや会話が、不安と責任の曖昧さを呼び込みます。大きな事件ではなく、生活の中で少しずつ増えていく違和感や気配が連作のつながりを…
- 031 2024 木偏の母 きへんのはは 『木偏の母』は、『すばる』2024年2月号に掲載された短篇です。同居人エレナを介して日本語の個人レッスンを引き受けた語り手が、漢字を習得したい五十代後半の女性ダフネと出会う。漢字の部首や日本語学習を入口に、言語、異文化、他者との距離を静かに描く作品として整理できる。
- 032 2023 あわいに開かれて あわいにひらかれて 『あわいに開かれて』は、小野正嗣が「記憶」をめぐって編んだ約40編の掌編小説集である。短い断章の連なりは、日常のなつかしさと不可思議さのあいだを行き来し、はっきりした筋よりも、ふと開く時間や感覚の隙間を読ませる。断片の小ささは軽さではなく、失われたものや名づけにくい気配を受け止めるための形式になって…
- 033 2023 FICTION フィクション 演劇する集まりを「FICTION」と名づけ、十六年続けてきた「わたし」が、仲間の死や病、自身の大病を経て回想を始める連作短篇集。収録作は「FICTION 01 象使い」から「FICTION 07 助けになる習慣」まで、演劇と小説、記憶と作り話の境界を行き来する。新潮社は芥川賞受賞作『しんせかい』に連…
- 034 2023 幻日/木山の話 げんじつ/きやまのはなし 『幻日/木山の話』は、コロナ禍を含む時間のなかで書き継がれた「木山」をめぐる連作小説集で、八つの短篇を収める。人、動植物、水や土や空気、社会が互いに影響し合う世界を、出来事の大きな起伏よりも時間の流れやまなざしの変化に沿って描く。孤独は閉じた心理ではなく、他者や自然へどう目を向けられるかという問いと…
- 035 2023 神と黒蟹県 かみとくろがにけん 黒蟹山や黒蟹城、紫苑市と灯籠寺市を擁する架空の県を舞台に、土地に生きる者、赴任してきた者、帰郷した者、地元を訪れた者たちの営みを描く連作小説集。現実のどこかにありそうな地方都市の手触りに、半知半能の神が降臨するようなわずかな神秘が混じる。群像劇として土地の記憶や住民の距離感を浮かび上がらせ、絲山秋子…
- 036 2023 夜のだれかの岸辺 よるのだれかのきしべ 十九歳の春、茜は八十九歳のソヨミから毎晩の添い寝と朝食を頼まれ、家計を助けるためにその仕事を受ける。血縁でも介護契約でもない奇妙な近さのなかで、若さと老い、孤独、生活の手触りが交わっていく。講談社公式の本文抜粋が示すように、語りは茜の現実感に根ざし、働くことと誰かのそばにいることの境目を静かに問う作…
- 037 2023 街とその不確かな壁 まちとそのふたしかなかべ 十七歳の「ぼく」は十六歳のガールフレンドから、彼女の本当の自分は高い壁に囲まれた街にいると告げられ、その後彼女は姿を消す。年月を経た語り手は、壁、望楼、図書館、古い夢、影を持たない人々のいる街と現実世界のあわいを行き来することになる。村上春樹が長く抱えてきた「壁に囲まれた街」のモチーフを、喪失、記憶…
- 038 2023 ラーメンカレー ラーメンカレー 『ラーメンカレー』は、ロンドンの結婚式やペルージャへの旅をきっかけに、高校時代の同級生たちの言葉と記憶があふれ出す連作短編集である。表題作を含む「窓目くんの手記」連作と複数の短篇を収め、食べ物の名前の軽さとは裏腹に、青春の偶然や移動、他者との出会いが時間をまたいで響く構成になっている。滝口悠生らしい…
- 039 2023 最愛の さいあいの 『最愛の』は、学生時代に手紙を交わした望未を忘れられない久島が、彼女の「忘れて」という願いに向き合い、自分のためだけの文章を書き始める恋愛長編である。情報や欲望を処理する現代的な主体と、手紙という遅い言葉の形式が対置され、恋愛を記憶・忘却・書くことの問題として掘り下げる。上田岳弘が繰り返し描いてきた…
- 040 2023 トゥデイズ とぅでいず 子育てのため郊外の大規模マンション「Rグランハイツ」に越してきた美春と恵示、五歳の息子コースケの一家を中心に、管理組合、リモートワーク、近隣住民との関わりが描かれる。大事件ではなく、住むこと、育てること、今日を続けることの小さな揺れを積み重ねる。日常の可笑しさと共同住宅の距離感を、長嶋有らしい軽やか…
- 041 2023 共に明るい ともにあかるい 『共に明るい』は、早朝のバス、公園の端の野鳥園、恋人の家、島への修学旅行、工場の作業部屋などを舞台にした五篇の小説集です。誰もが抱える痛みや不満、不安、葛藤が、ふとした会話や場面の揺れを通して現れます。表題作のほか「野鳥園」「素晴らしく幸福で豊かな」「風雨」「池の中の」を収録します。説明しきれない心…
- 042 2023 図書館のお夜食 としょかんのおやしょく 『図書館のお夜食』は、東北の書店勤務がうまくいかず仕事を辞めようとしていた樋口乙葉が、東京郊外の「夜の図書館」で働き始める長編である。そこは夕方七時から深夜まで開く特殊な図書館で、亡くなった作家の蔵書を集めた本の博物館のような場所でもある。予想外の出来事と夜食を通して、本、食、仕事、ほどよい距離で語…
- 043 2023 続きと始まり つづきとはじまり 二つの大きな地震と未知の感染症が時間の背景に置かれ、別々の場所で暮らす三人の日常が並行して描かれる。出来事の後にも生活は続き、過去の記憶や喪失は現在の手触りの中に戻ってくる。災害やパンデミックを直接の劇的事件としてではなく、長く蓄積する時間と人々の生活感覚として捉える長篇。大きな歴史の区切りよりも… 第60回 谷崎賞
- 044 2023 水車小屋のネネ すいしゃごやのねね 『水車小屋のネネ』は、親元を離れた姉妹が、水車小屋のある町で人々に支えられながら長い時間を生きていく長篇です。そば粉を挽く水車、言葉をまねる鳥ネネ、町の人たちとの関係が、生活を立て直すためのゆるやかな共同性を形づくります。大きな救済ではなく、誰かが誰かを少しずつ助ける時間を積み重ねる作品です。姉妹の… 第59回 谷崎賞
- 045 2023 ラウリ・クースクを探して らうりくーすくをさがして 『ラウリ・クースクを探して』は、ソ連末期から独立後のエストニアを背景に、プログラミング、国家の崩壊、個人の夢と挫折を結びつける長篇です。朝日新聞出版公式ページでは、コンピュータ・プログラミングの才能を持つラウリがソ連の研究者として生きる道を目指しながら、歴史の変動に巻き込まれていく物語として紹介され…
- 046 2023 あるもの あるもの 『あるもの』は、鳥山まことが「三田文学」第3期第153号に発表した小説です。NDLサーチでは、記事タイトルとシリーズ情報から第二十九回三田文學新人賞受賞作として確認できます。公開Webで梗概・選評本文を確認できなかったため、作品内容の説明は掲載書誌と受賞情報に限定します。
- 047 2023 新古事記 : an impossible story 『新古事記 : an impossible story』は、村田喜代子が2023年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 048 2023 琥珀の家の掌 こはくのいえのてのひら 『琥珀の家の掌』は、『群像』2023年10月号に掲載された石沢麻依の作品です。今回確認できた公開情報は書店ページによる掲載情報に限られ、出版社公式の詳細梗概や書評は未確認。既存分類では記憶と静謐な読み味を仮置きしているが、内容説明は低確信として扱う。
- 049 2022 カルチャーセンター かるちゃーせんたー カルチャーセンターで共に過ごしたニシハラくんの未発表小説『万華鏡』を収録し、その小説に寄せられた作家・編集者たちのコメントまでも作品の一部として組み込む小説。松波太郎がニシハラくんへ語りかける形で、書きたいという欲望、書かれたものへの責任、そして「これは小説なのか」という問いを空白ごと立ち上げていく…
- 050 2022 古本食堂 ふるほんしょくどう 『古本食堂』は、神保町の小さな古書店を舞台に、本と食べ物を介して人がつながり直していく長篇。国文科の学生・美希喜は、急逝した大叔父の古書店を継ぐため上京した珊瑚を手伝ううちに、古本を探す客、町の食堂、店に残された記憶に触れていく。古書の具体的な手触りとカレー、中華、寿司などの食の描写が重なり、進路の…
- 051 2022 この世の喜びよ このよのよろこびよ ショッピングセンターの喪服売り場で働く「あなた」は、かつて幼い娘たちとこのセンターで長い時間を過ごした。いまはフードコートに入り浸る中学生の少女と言葉を交わすようになり、彼女との関わりのなかで、子育ての日々の記憶や、言葉にならないまま積もっていた感情が少しずつよみがえってくる。全編が「あなた」への呼… 第168回 芥川賞
- 052 2022 水平線 すいへいせん 硫黄島を墓参したことのある妹に見知らぬ男から電話がかかり、兄は不思議なメールに導かれて船に乗る。祖父母世代の疎開、激戦地に残された人々、現在の兄妹の時間が交差し、死者の言葉が海を越えて現在へ届く。視点や人称を変えながら、戦争の記憶と島の隆起する時間を重ねる長篇。戦争を記録として遠ざけず、死者が生者へ…
- 053 2022 月の三相 つきのさんそう 旧東ドイツの小さな街で「フローラが失踪した」という噂が広がり、歴史に引き裂かれた少年と少女の物語が呼び起こされる。その街では誰もが自分の「肖像面」を持ち、面に惹かれて移り住んだ望、グエット、ディアナの三人は、失われた「顔」を探して見えない境界を越えていく。いくつもの時間が重層する街を舞台に、歴史、記…
- 054 2022 私の盲端 わたしのもうたん 表題作は、大学生活や飲食店のアルバイトを楽しんでいた涼子が、人工肛門とともに生きることになり、自分の身体の変化と周囲の視線に向き合う物語である。医師でもある作者が、病や障害を医学的説明だけに閉じず、身体の境界、恥、欲望、生活の手触りとして描く。併録の「塩の道」は第7回林芙美子文学賞受賞作で、朝比奈秋…
- 055 2022 カプチーノ・コースト かぷちーのこーすと 『カプチーノ・コースト』は、片瀬チヲルが『群像』2022年10月号に発表し、同年12月に講談社から刊行された小説です。会社を休職中の26歳の早柚が、地元の海岸でゴミ拾いを始めるひと月を通じて、自分を見つめ直していきます。講談社公式の内容紹介は、しんどいときほど周囲に頼れない感覚を冒頭に置き、休職、地…
- 056 2022 中有の森 ちゅううのもり 『中有の森』は、江場秀志が2022年に作品社から刊行した小説です。NDLサーチで、作品社刊、ISBN 978-4-86182-891-1、NDC 913.6の単行本として確認できます。公開Webで信頼できる梗概や初出誌を確認できなかったため、作品内容の説明は書誌情報に限定します。
- 057 2022 耳の叔母 『耳の叔母』は、村田喜代子が2022年に書肆侃々房から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 058 2022 マグノリアの手 まぐのりあのて 『マグノリアの手』は、『群像』2022年11月号に掲載された短篇です。講談社群像公式サイトでは、マグノリアの白い花が語り手の失われた白い左手の記憶を呼び起こす作品として紹介されている。花のイメージと身体の欠落を結び、記憶と喪失を詩的にたどる作品として整理できる。
- 059 2021 母親からの小包はなぜこんなにダサいのか ははおやからのこづつみはなぜこんなにださいのか 『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』は、実家から届く小包をめぐって、昭和・平成・令和をまたぐ家族の思いを描く連作集。業者から買った野菜を実家からの荷物と偽る女性、父が受け取っていた小包の謎、母からの最後の荷物など、物の中にしまわれた気遣い、ずれ、寂しさが開封されていく。タイトルの軽さに対して…
- 060 2021 北斗星に乗って ほくとせいにのって 『北斗星に乗って』は、上野発の寝台特急「北斗星」を軸にした8編の短篇小説集。列車という移動空間が、乗客の記憶や人生の分岐、もう一つの世界へ向かうような感覚をつないでいく。旅情だけでなく、日常から少し離れた場所で自分の過去や孤独に触れる、静かな幻想味を持つ作品集である。寝台特急の個室性と移動性を使い…
- 061 2021 星のように離れて雨のように散った ほしのようにはなれてあめのようにちった 『星のように離れて雨のように散った』は、行方不明の父、未完の『銀河鉄道の夜』、書きかけの小説という三つの「未完」をめぐる長篇です。人生の岐路に立つ女子大学院生の語り手が、宮沢賢治作品の影や父の残した手紙を手がかりに、自分自身の物語を探していきます。父の不在を単なる謎解きにせず、失われたものを言葉で追…
- 062 2021 貝に続く場所にて かいにつづくばしょにて コロナ禍に覆われたドイツの学術都市ゲッティンゲンで暮らす日本人留学生の「私」のもとに、東日本大震災の津波で行方不明になったはずの友人・野宮が現れる。九年前に仙台で被災した記憶と、疫病下の異国の街の現在が静かに重なり合い、惑星の名を冠した小径、聖人伝や絵画の細部、庭に埋められた様々な品をたどりながら… 第165回 芥川賞
- 063 2021 ここはとても速い川 ここはとてもはやいかわ 児童養護施設で暮らす小学五年生の集と、園での年下の親友・ひじりの日々を描く表題作を中心にした小説集。二人が近くの淀川へ亀を見に行く時間など、子どもたちの生活の細部が温もりを含んだ言葉でたどられる。中原中也賞受賞詩人として注目された著者の初小説集で、表題作と小説第一作「膨張」を収録する。子どもの語彙や… 第43回 野間新人賞
- 064 2021 ミトンとふびん ミトンとふびん 大切な人の死や癒えない喪失を抱えながら生きる人々を、ヘルシンキ、ローマ、台北など複数の土地で描く全6編の短篇集。旅の風景は観光的な背景ではなく、残された人が小さな光や手触りに支えられて日々を続けるための場所として置かれている。吉本ばななが長く書き続けてきた喪失、時間、愛の主題を、静かでやわらかな語り… 第58回 谷崎賞
- 065 2021 長い一日 ながいいちにち 小説家の夫と妻が、住み慣れた家からの引っ越しを考え始めるところから、長くつきあってきた友人たち、日々の暮らし、失ってから気づく愛着や記憶が交差していく長編。出来事を大きな劇に仕立てるよりも、生活の中でふと立ち上がる静かな感情と、時間の伸び縮みをすくい取る。日記と小説のあわいを思わせる形式で、夫婦と住…
- 066 2021 ルーティーンズ るーてぃーんず 2020年春の緊急事態宣言下、保育園が休園した二歳の娘を、作家の夫と漫画家の妻が交替で見ながら過ごす日々を描く家族小説。社会が止まったように見える時間の中でも、子どもの成長や生活の反復は続いていく。短篇「願いのコリブリ、ロレックス」と表題作を収め、非常時の日常を長嶋有らしい軽やかな観察とユーモアで描…
- 067 2021 旅のない たびのない コロナ禍中の日々を映す四篇からなる、上田岳弘初の短篇集。恋人とのホテル、息子との散歩、甥を預かる夏、出張先の車中といった限られた場面を通して、移動が制限された時代の記憶、会話、自己認識を描く。大きな事件よりも、日常の小さな違和感や言葉のずれから世界の変化を浮かび上がらせる作品集。短い時間に人生の全体… 第46回 川端賞
- 068 2021 塩の道 しおのみち 『塩の道』は、第7回林芙美子文学賞大賞受賞作で、のちに朝比奈秋のデビュー単行本『私の盲端』に収録された作品です。受賞・収録情報から、著者初期の重要作として位置づけられます。医療や身体をめぐる著者の関心に連なる作品として整理できますが、公開資料では本文に踏み込んだ梗概が限られるため、細部の断定は避けて… 第7回 林芙美子賞
- 069 2021 姉の島 『姉の島』は、村田喜代子が2021年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 070 2020 2020年の恋人たち にせんにじゅうねんのこいびとたち 母の急死によりワインバーを継ぐかどうか選択を迫られた前原葵を中心に、同棲相手、常連客、店を手伝う人々、新たな出会いが交錯する長篇。恋愛の高揚だけでなく、会話の途切れ、依存、別れ、仕事として店を引き受けることを描き、葵が何を選び何を手放すかを追う。直木賞受賞後の長篇第一作として、喪失後の生活再建と関係…
- 071 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶…
- 072 2020 星月夜 ほしつきよる 日本の大学で日本語を教える台湾出身の柳凝月と、新疆ウイグル自治区出身で大学院進学を目指す玉麗吐孜の恋を描く長篇。二人は日本語という共通語で近づくが、家族、国家、在留資格、セクシュアリティをめぐる負荷は同じ形では共有できない。親密さの甘さよりも、相手を分かっていると思うことの危うさを静かな語りで照らす…
- 073 2020 百年と一日 ひゃくねんといちにち 人や店、駅、家、空港、家族の記憶が、数ページの掌編の中で十年、二十年、百年の時間へ伸びていく短篇集。個々の人物の大事件ではなく、場所に積み重なる時間、誰かが去り誰かが来る反復、忘れられていく出来事の痕跡を描く。長いタイトルと淡々とした語りが、日常の一瞬を歴史の厚みへ接続する。33篇のあらすじ付き掌編…
- 074 2020 一人称単数 いちにんしょうたんすう 村上春樹の六年ぶりの短篇小説集で、「石のまくらに」から書き下ろしの表題作まで八篇を収める。音楽、野球、過去の記憶、奇妙な遭遇をめぐり、一人称の語りが自分自身の輪郭を少しずつずらしていく。公式紹介が掲げる「単眼」と「複眼」の比喩のように、私、僕、あなたという呼び名の揺れが、回想と虚構の境目を曖昧にする…
- 075 2020 今も未来も変わらない いまもみらいもかわらない 『今も未来も変わらない』は、40代のシングルマザーで小説家の星子を主人公にした長編。大学受験を控える娘を見守り、親友とカラオケやスーパー銭湯を楽しみ、元夫や20代の男性との関係にも揺れながら、星子の日常は静かににぎやかに続いていく。大きな事件よりも、娯楽、恋、親子、仕事の小さな重なりを通じて、大人が…
- 076 2020 口福のレシピ こうふくのれしぴ 『口福のレシピ』は、フリーのSE兼料理研究家として働く留希子と、昭和二年の品川料理教習所で働くしずえの時間を行き来する家族小説。留希子は老舗料理学校を営む家の後継者であることに抵抗を抱きながらも、SNS発信をきっかけに料理研究家として認知されていく。簡単でおいしい献立企画をめぐる問題を通じて、家庭の…
- 077 2020 MISSING 失われているもの ミッシング うしなわれているもの 『MISSING 失われているもの』は、制御しがたい抑うつや不眠を抱える小説家の「わたし」が、謎めいた女優や母の声に導かれて、混乱と不安に満ちた迷宮的な世界を彷徨う長篇。章題には成瀬巳喜男映画の題名が並び、現在と過去、現実と幻想、記憶と自己分析が重なり合う。村上龍が自らの創作の源泉や老い、母の記憶に…
- 078 2020 ポラリスが降り注ぐ夜 ぽらりすがふりそそぐよる 新宿二丁目のバー「ポラリス」に集う、多様な性的アイデンティティを持つ女性たちを描く七つの恋の物語。筑摩書房公式は、魂と身体の触れあいを求めて二丁目を訪れる女性たちの物語として紹介している。都市の夜の親密さを起点に、セクシュアリティ、移動、言語、歴史の記憶が国境を越えて響き合う。連作の形を通して、個々…
- 079 2020 うつくしい羽 うつくしいはね 表題作『うつくしい羽』と『あさぎり』などを収めた、上村渉の初小説集。OpenBDの版元提供情報は、食の記憶が過去を呼び覚ます作品として、離婚で心の支えを失った男と、フランス修業時代に大切な人を失った料理人の軌跡を紹介している。併録作『あさぎり』では、十五歳の少女の一時保護を通して、家族の絆と外国人労…
- 080 2020 裸婦 らふ 『裸婦』は、小暮夕紀子が「文學界」2020年9月号に発表した作品です。NDLサーチで掲載誌・巻号・ページ範囲と責任表示を確認できます。『タイガー理髪店心中』単行本刊行後にも文芸誌で作品発表を続けていたことを示す一作として収録します。
- 081 2020 アウア・エイジ あうあえいじ 『アウア・エイジ』は、岡本学が『群像』2020年2月号に発表し、同年に講談社から刊行された小説です。大学教師の「私」が、学生時代にアルバイトしていた映画館からの招待状を受け取り、映写室に残る写真をきっかけに20年前の記憶をたどります。講談社公式は、塔を探す誘い、生き迷う男、謎を残して死んだ女という要…
- 082 2020 小説 しょうせつ 『小説』は、増田みず子が田畑書店から2020年に刊行した小説作品です。Books出版書誌データベースの内容紹介では、真っ直ぐな言葉の連なりが織り成す微妙な色合い、読むほどに人と人との間の心の綾が身に沁みる作品として紹介されています。長い沈黙を経た作家が、小説とは何かという問いを題名そのものに引き受け…
- 083 2020 首里の馬 しゅりのうま 『首里の馬』は、沖縄の私設資料館で資料整理をする未名子を通して、保存される記憶とこぼれ落ちる歴史のあわいを描く中篇です。オンライン通話でクイズを出す仕事、資料の撮影、台風後に現れる馬の世話が、孤独な人々の記憶と土地の時間を結びつけます。土地の固有性とアーカイブの問題を、宮古馬との幻想的な出会いを介し… 第163回 芥川賞
- 084 2020 明日香さんの霊異記 『明日香さんの霊異記』は、高樹のぶ子が2020年に潮出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 085 2020 業平 『業平』は、高樹のぶ子が2020年に日経BP日本経済新聞出版本部から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 086 2019 私の家 わたしのいえ 祖母の法要で一堂に会した親戚たちを起点に、三世代にわたる一族の記憶と秘密をたどる連作短編集。同棲相手に追い出されて戻る梓、過去にこだわる母、孤独を愛する大叔母らの章が重なり、家族であっても他人のように分かり合えない距離を描く。家という場所を、帰る場所であると同時に逃れがたい記憶の容器として読ませる。
- 087 2019 五つ数えれば三日月が いつつかぞえればみかづきが 表題作は、日本で働く台湾人の「私」と、台湾人と結婚して台湾へ移った友人・実桜が、平成最後の夏に東京で五年ぶりに再会する物語。話す言葉、住む国、選び取った人生の差異が、再会の会話のなかで静かに立ち上がる。収録作「セイナイト」とあわせて、移動、言語、親密さ、記憶のずれを、越境する人のアイデンティティとし…
- 088 2019 駒音高く こまおとたかく 『駒音高く』は、将棋の勝負の世界に関わる七人の青春と人生を描く短篇集。プロを志す中学生や引退間際の棋士だけでなく、将棋会館の清掃員など周辺にいる人々にも視線を向け、勝敗の外側にある家族、仕事、誇りを浮かび上がらせる。実業之日本社公式が「青春・家族小説の名手」の温かなまなざしと紹介する通り、競技小説で…
- 089 2019 待ち遠しい まちどおしい 北川春子、夫を亡くした青木ゆかり、新婚の遠藤沙希という世代も立場も異なる三人の女性が、ご近所付き合いを通じて少しずつ関わる長編。住まいの距離の近さと、価値観や人生段階のずれが生む噛み合わなさを、柴崎友香らしい生活の手触りのなかで描く。年齢、結婚、独居、見えにくい困難をめぐり、人はどこまで互いを判断せ…
- 090 2019 まずはこれ食べて まずはこれたべて 池内胡雪は、散らかった社内と不規則な生活に疲れながらベンチャー企業で働く三十歳。社長が会社に家政婦を雇ったことで、無愛想な筧みのりが作る料理が、殺伐とした職場に小さな休息をもたらしていく。食べることを通じて、労働の疲れ、ケアの手触り、人と人が同じ場にいることの温度を描く連作短編集。料理の題名を冠した…
- 091 2019 リボンの男 りぼんのおとこ 主人公の常雄は、自分を「ヒモ」ではなく「リボン」と言い換える専業主夫。三歳のタロウと野川沿いを歩く日常のなかで、家事や育児に値段をつけにくい社会、父であること、働くことの意味が静かに問い直される。山崎ナオコーラらしい平明な言葉で、家族の役割分担やジェンダー規範を大げさな対立ではなく生活の手触りから描…
- 092 2019 サバティカル さばてぃかる 33歳のエンジニア梶くんは、転職先への入社までに空いた五カ月を「サバティカル」と名づけ、自分にさまざまな宿題を課す。プロジェクト管理ツールで課題を片付けるうち、将棋の師匠が生き別れた娘を探すという思いがけない宿題に向き合うことになる。仕事の切れ目に生まれた時間を、単なる休暇ではなく自分の結びつきや恋…
- 093 2019 趣味で腹いっぱい しゅみではらいっぱい 『趣味で腹いっぱい』は、結婚後に絵手紙、家庭菜園、小説などの趣味に興じる鞠子と、仕事一筋で生きてきた銀行員・小太郎をめぐる長篇。上達や成果を急がない趣味の時間が、仕事中心の価値観や夫婦の距離を少しずつ揺らしていく。生活のなかの小さな楽しみを通して、役に立つことだけでは測れない生き方を描く。
- 094 2019 遠の眠りの とおのねむりの 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇…
- 095 2019 藁の王 わらのおう 小説家として一冊だけ本を出した語り手が、巨大私立大学で創作を教えることになり、学生たちの苦悩と自身の行き詰まりに向き合う表題作を含む作品集。新潮社公式は、文学の迷宮や小説の樹海を彷徨う人々を描く作品集として紹介している。書くこと、読むこと、他者の言葉に侵されることの怖さを、静かな幻想性と記憶の反復で…
- 096 2019 夜はおしまい よるはおしまい 「夜のまっただなか」「サテライトの女たち」「雪ト逃ゲル」「静寂」を収めた短篇集。夜、逃避、静けさといった収録作名が示すように、関係の余白や孤独を抱えた人物たちの時間を描く。島本理生の恋愛や家族関係をめぐる繊細な筆致を、より暗く静かなトーンで味わえる作品集として位置づけられる。短篇ごとの状況を急いで説…
- 097 2019 夢も見ずに眠った。 ゆめもみずにねむった 『夢も見ずに眠った。』は、夫を熊谷に残して札幌へ単身赴任した沙和子が、夫婦のすれ違いと離別を経て、新しい愛と信頼の形へ向かう長篇。岡山、札幌、熊谷など土地の記憶や物語が、二人の関係の変化と響き合う。移動する生活のなかで、結婚や家族の安定ではなく、相手を信じ直す距離を探るところが読みどころになる。
- 098 2019 背高泡立草 せいたかあわだちそう 草に覆われた納屋をめぐる作業を起点に、土地に積もった記憶と家族史が立ち上がる作品。島の一族をめぐる複数の声や時間が重なり、目の前の草刈りが過去を掘り起こす行為へと変わっていく。方言や多層的な語りによって、地方の生活と歴史が静かに接続される。人の営みが途絶えても草木が残り続ける感覚が、一族の記憶を土地… 第162回 芥川賞
- 099 2019 格闘 『格闘』は、高樹のぶ子が2019年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 100 2019 小箱 こばこ 『小箱』は、箱という小さな器に託された記憶や喪失の気配を、静かな筆致でたどる長篇です。小川洋子らしい抑制された語りのなかで、見えないもの、しまわれたもの、失われたものが少しずつ存在感を帯びる。大きな事件よりも、手触りと沈黙の蓄積によって読む作品です。 第73回 野間文芸賞
- 101 2018 あなたの愛人の名前は あなたのあいじんのなまえは 『あなたの愛人の名前は』は、すれ違う大人の恋愛を描く六篇の作品集。集英社公式が示す「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」は、同じ関係を別々の視点から照らし、同じ部屋にいても互いの心が決定的にずれていく痛みを描く。欲望、秘密、婚約、浮気、世間の価値観に揺れる心を、島本理生らしい繊細な心理の動きとし…
- 102 2018 ブルーハワイ ぶるーはわい 『ブルーハワイ』『辰年』『聖ミクラーシュの日』『わかれ道』『山の上の春子』『わたしのおばあちゃん』を収めた短篇集。河出書房新社は、「あたりまえ」を知らない孤独が世界を撃ち抜く作品集として紹介している。日常のなかでそれぞれのことに夢中になる人々を、平明で少し乾いた語りで捉え、家族や記憶、他者との隔たり…
- 103 2018 日の出 ひので 明治の終わり、13歳の清作は徴兵から逃れて故郷を飛び出し、北陸から九州、横浜へ移りながら鍛冶職人として生きる。もう一つの軸として、清作を曾祖父にもつ現代の女子大生・あさひが、教職免許取得のために学ぶ姿が置かれる。時代を隔てた二人を並行させ、労働、逃走、家系の記憶、希望の継承を描く長編。
- 104 2018 星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き ほしがおかこうこうりょうりぶ へんさちろくじゅうはちのめだまやき 廃部寸前の私立星ヶ丘高校料理部に、篠原皐月が友人に誘われて入部する連作料理ミステリ。目玉焼き、オムレツ、ハンバーグ、カレーなどの料理を通じて、皐月たちは調理の理屈と、身近な出来事に潜む謎を少しずつ解いていく。学校小説の軽やかさに、料理の知識と日常の推理を重ねた読み味が特徴。
- 105 2018 雪子さんの足音 ゆきこさんのあしおと 東京出張中の薫は、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家・雪子さんが熱中症でひとり亡くなったことを新聞記事で知り、20年ぶりにその場所へ向かう。アパートへ近づく道のりと回想を重ねながら、大家と下宿人、若者と年長者、好意と負担の境目が少しずつ浮かび上がる。日常の会話や距離感の微細な違和を通して、人間…
- 106 2018 公園へ行かないか?火曜日に こうえんへいかないか?かようびに 2016年、アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者が、世界各国の作家・詩人たちと過ごした3か月をもとに描く11篇の連作小説集。英語で議論し、街を歩き、アメリカ大統領選挙の瞬間にも居合わせる経験を通じて、そこにいること/いないこと、知りたいのに届かないことを考え続ける…
- 107 2018 三千円の使いかた さんぜんえんのつかいかた 御厨家の女性たちが、結婚、子育て、入院、離婚、老後といった局面でお金の使い方に向き合う連作短篇集。節約や貯金のノウハウに寄せつつ、家族の役割、将来不安、生活を立て直す知恵を物語として読ませる。具体的な金額や家計の話が、女性たちの選択と自立をめぐる現実的なドラマになっている。
- 108 2018 鏡のなかのアジア かがみのなかのあじあ チベット、台湾、クアラルンプール、京都など、アジアの土地をモチーフにした全5篇の幻想短篇集。集英社公式は、少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、台湾・九份の村を舞台にする「Jiufenの村は九つぶん」、熱帯雨林の巨樹であった過去を持つ男を描く「天蓋歩行」などを挙げている。翻…
- 109 2018 つかのまのこと つかのまのこと かつての住み家らしき「この家」をさまよい続ける「わたし」が、次々に入れ替わる住人たちを見守る物語。幽霊のような語り手の視点から、家に残る記憶と、誰かを待ち続ける時間が静かに積み重ねられる。柴崎友香が俳優・東出昌大をイメージして小説を書き、市橋織江の写真と組み合わされた、写真と小説の境界を意識した一冊…
- 110 2018 私に付け足されるもの わたしにつけたされるもの 「四十歳」「白竜」「Mr.セメントによろしく」「瀬名川蓮子に付け足されるもの」など十二篇を収める短篇集。虎に襲われたい、くっつけたい、あきらめたい、移動したいといった、くだらなくも切実な願望を起点に、日常のずれや欲望の不可思議さを軽やかに描く。長嶋有らしいユーモアと観察眼が、平凡な生活に付け足される…
- 111 2018 ウィステリアと三人の女たち ウィステリアとさんにんのおんなたち 「彼女と彼女の記憶について」「シャンデリア」「マリーの愛の証明」「ウィステリアと三人の女たち」の4篇を収める短篇集。同窓会、デパート、女子寮、廃墟となった屋敷を舞台に、女性たちが不確かな記憶と死の気配に触れていく。記憶、死、救済、自己同一性が幻想的な気配で重なり、なだらかな散文がいつのまにか現実の足…
- 112 2018 光路 こうろ 北九州市立文学館の公式発表で、第4回林芙美子文学賞佳作として確認できる短編。公式ページでは作品名、作者名、最終選考会、同回の大賞・佳作の結果を確認できるが、作品内容の紹介は掲載されていない。現時点では題名から主題や舞台を推測せず、受賞記録として扱う。
- 113 2018 TIMELESS たいむれす 『TIMELESS』は、恋愛感情も性関係もないまま結婚したうみとアミを軸に、高校時代、広島への修学旅行、六本木の現在、四百年前の麻布が原の記憶、そして2035年の息子アオの旅を重ねる長篇です。恋愛、結婚、生殖、家族という近代的な制度をほどきながら、人間の身体が歴史や土地、死者の時間へつながっていく感…
- 114 2018 文字の消息 もじのしょうそく 『文字の消息』は、澤西祐典の第2単行本にあたる幻想小説集です。表題作では、どこからともなく現れる文字が家や街を覆い、日常の足場を侵食していきます。併録の「砂糖で満ちてゆく」では母の身体が砂糖へ変わっていく状況を介護する娘の視点から描き、「災厄の船」では入り江に現れた巨大な船が街に不穏な影を落とします…
- 115 2018 雪の階 ゆきのきざはし 『雪の階』は、奥泉光が2018年に中央公論新社から刊行した長編小説です。代表作の一つとして著者ページに挙げられ、毎日出版文化賞と柴田錬三郎賞を受賞した作品として確認できます。
- 116 2018 オブジェクタム おぶじぇくたむ 『オブジェクタム』は、高山羽根子の作品集です。表題作では、大人になった主人公が祖父の壁新聞や記憶の断片を追い、事件と祖父の真相のかかわりを探ります。資料、記憶、家族史をめぐる探索に、収録作「太陽の側の島」などの幻想的な想像力が響き合う一冊として整理できます。
- 117 2018 エリザベスの友達 『エリザベスの友達』は、村田喜代子が2018年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 118 2018 火環 : 八幡炎炎記 完結編 『火環 : 八幡炎炎記 完結編』は、村田喜代子が2018年に平凡社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 119 2017 踊る星座 おどるせいざ 『踊る星座』は、青山七恵が人と人の距離や、日常の中の小さな変化を星座のように配置する小説として整理できます。星座は離れた点を線で結ぶ見方であり、人物たちの孤独や関係もそのように読み替えられます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 120 2017 鳥獣戯画 ちょうじゅうぎが 『鳥獣戯画』は、磯﨑憲一郎が古典的な絵巻の名を借り、人間と動物、現実と表象の境目を揺らす作品として整理できます。鳥獣のイメージは、人間社会を戯画化する視点として働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と『群像』掲載候補に基づく暫定的な紹介です。
- 121 2017 影裏 えいり 会社の出向で岩手に移り住んだ今野は、釣り仲間となった同僚・日浅にだけ心を許していた。二人で川に通った日々はやがて途絶え、日浅は何も告げずに会社を去る。そして東日本大震災の後、今野は日浅の行方を追ううちに、親しいと思っていた男のもう一つの顔に触れることになる。北国の自然や釣りの場面を丹念に描きながら… 第157回 芥川賞
- 122 2017 吹上奇譚 第一話 ミミとこだち ふきあげきたん だいいちわ ミミとこだち 『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』は、不思議な町・吹上町を舞台にした双子の姉妹の物語で、シリーズ第一作にあたります。町そのものが現実と幻想の境目に置かれ、家族や記憶の問題が奇譚として語られます。吉本ばなならしいやわらかな語りの中に、喪失と再生の感覚があります。
- 123 2017 いつか来る季節 名古屋タクシー物語 いつかくるきせつ なごやたくしーものがたり 『いつか来る季節 名古屋タクシー物語』は、名古屋のタクシー運転手や乗客をめぐる物語として整理できます。タクシーは都市を移動する仕事の場であり、偶然出会う人びとの会話を運ぶ装置でもあります。地方都市の生活と労働を、移動の視点から読ませる作品です。
- 124 2017 星の子 ほしのこ 中学3年生の林ちひろは、優しい両親に愛されて育った。だが両親は、生まれつき病弱だったちひろが「あやしい宗教」の水で救われたと信じて以来、その教団に深くのめり込んでいる。緑のジャージ姿で頭に濡れタオルを載せる両親は周囲の目を引き、姉は家を出て、親戚との関係も軋んでいく。一目惚れした新任の先生に、夜の公… 第39回 野間新人賞
- 125 2017 ほしのこ ほしのこ 『ほしのこ』は、山下澄人が星や子どものイメージを通して、記憶と身体の感覚をずらして描く小説として整理できます。題名のひらがな表記は、幼さと遠さを同時に感じさせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 126 2017 かわうそ堀怪談見習い かわうそぼりかいだんみならい 『かわうそ堀怪談見習い』は、「窓」「台所の窓」「雪の朝」「蜘蛛」「古戦場」「幽霊マンション」「宮竹さん」「写真」など多数の小篇を収める怪談集です。OpenBDで収録作と2017年2月刊行の書誌を確認でき、NDLでは単行本と2020年版の書誌を確認できます。日常的な場所や物の名を掲げる短い題名が連なり…
- 127 2017 騎士団長殺し きしだんちょうごろし 『騎士団長殺し』は、肖像画家の「私」が小田原の山荘で謎の絵と「イデア」に遭遇する長編二部作です。絵画、地下空間、戦争の記憶が重なり、現実と寓話の境界がゆっくり崩れていきます。村上春樹の長編らしく、喪失と創作、歴史の暗部が大きな物語として展開します。
- 128 2017 幸福な水夫 こうふくなすいへい 『幸福な水夫』は、木村友祐が水夫という移動する労働者の像を通じて、幸福と漂流の関係を描く作品として整理できます。海や船のイメージは、生活の不安定さと越境の感覚を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 129 2017 高架線 こうかせん 『高架線』は、東京の古いアパートの住人たちの来歴を、語り手を替えながらたどる長編です。高架線の下や周辺にある生活圏が、移動する都市とそこに留まる人びとの時間を結びます。複数の語りが重なり、場所に蓄積する記憶を立体的に読む作品です。
- 130 2017 ランチ酒 らんちざけ 『ランチ酒』は、夜に子どもを預け昼間に働くシングルマザーが、仕事後の一人ランチに酒を飲む連作です。食事と酒は、労働の疲れをほどき、自分だけの時間を取り戻すための小さな儀式になります。母であること、働くこと、孤独を、店の風景から読ませる作品です。
- 131 2017 茄子の輝き なすのかがやき 『茄子の輝き』は、「お茶の時間」「わすれない顔」「高田馬場の馬鹿」「茄子の輝き」などを収める連作短篇集です。Books/JPROの紹介では、別れた妻の面影、震災後の不安、同僚との会話など、不確かな記憶をめぐる場面を扱う作品として示されています。大きな事件よりも、日常の会話や街の断片に残る熱を拾い、滝…
- 132 2017 ラジオ・ガガガ らじおががが 『ラジオ・ガガガ』は、「三匹の子豚たち」「アブラヤシのプランテーションで」「リトルプリンセス二号」「音にならないラジオ」など6篇を収める短篇集です。題名が示すラジオ的な声や音の感覚を軸に、家族、親族、仕事や生活のつながりを短篇ごとにずらして描く作品として整理できます。OpenBDで収録作は確認できる…
- 133 2017 千の扉 せんのとびら 『千の扉』は、三千戸規模の都営団地を舞台に、永尾千歳と夫・一俊、一俊の祖父・日野勝男らの時間をたどる長篇です。骨折で入院した勝男に人探しを頼まれた千歳は、いるのかどうかも定かでない人物を探して巨大な団地を歩きます。団地に住む人々、喫茶店、女子中学生、家族の記憶が重なり、都市の住宅空間を土地と生活史の…
- 134 2017 ゆっくりおやすみ、樹の下で ゆっくりおやすみ、きのしたで 小学5年生のミレイが「さるすべりの館」で夏休みを過ごすうち、遠い過去の謎に触れていく児童文学寄りの長編。赤い部屋、止まっていた時計、館に隠された秘密が、子どもの視点に近い軽やかさと不思議な緊張感で語られる。今日マチ子の挿絵を多数収録し、高橋源一郎が子どもと大人の読者をつなぐ語りに挑んだ作品。
- 135 2017 紅い海 あかいうみ 『紅い海』は、高倉やえが2017年12月に刊行した短篇集です。Books.or.jpの内容紹介では、文明の衝突によって息子を喪った夫婦の苦悩と祈りを描く表題作「紅い海」、二人の女の墓碑をめぐる「行方」、自立を選んだ母と娘の歳月を綴る「夢の先の色」の三篇を収める作品集として紹介されています。通訳者とし…
- 136 2017 深く、 ふかく、 『深く、』は、第3回林芙美子文学賞佳作として『小説トリッパー』に掲載されたなかにしさとみの作品。NDLサーチで掲載誌とページ範囲を確認でき、既存の文学賞データベースでも同回佳作として確認できる。公開資料では内容紹介が乏しいため、現時点では受賞・掲載情報を中心に扱う。
- 137 2017 遊ぶ幽霊 あそぶゆうれい 『遊ぶ幽霊』は、第41回すばる文学賞佳作として『すばる』2017年11月号に掲載された兎束まいこの作品。NDLサーチで受賞区分、掲載誌、ページ範囲を確認できる。既存の梗概では幽霊を通じた生死の境界が示されているが、公式の詳細紹介は確認できていないため、内容面の記述は限定している。
- 138 2017 こことよそ ここ と よそ 『こことよそ』は、鎌倉の道を歩く場面を含む短編で、保坂和志自身の受賞のことばでは、川端康成の記憶や生者と死者の時間感覚が作品に触れられている。物語の具体的な筋は公式ページからは限定的にしか確認できないが、場所の記憶と死者との距離が読解の手がかりになる。川端康成文学賞の受賞作として、短編の凝縮された時… 第44回 川端賞
- 139 2017 月の満ち欠け つきのみちかけ 『月の満ち欠け』は、三人の男と一人の少女の三十余年におよぶ人生が交錯する長篇です。岩波書店の内容紹介では、生まれ変わりの記憶をめぐる「数奇なる愛の軌跡」として紹介されており、時間をまたぐ愛と喪失の物語として整理できます。
- 140 2017 白磁海岸 『白磁海岸』は、高樹のぶ子が2017年に小学館から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 141 2016 あひる あひる 『あひる』は、文学ムック『たべるのがおそい』創刊号に掲載された表題作に、書き下ろしの「おばあちゃんの家」「森の兄妹」を加えた三篇の作品集です。表題作では、あひるを飼うことになった家族と、学校帰りに集まってくる子どもたちのいる日常が描かれます。何気ない暮らしの安堵に差し込む影や、淡々とした語りの中で露…
- 142 2016 小松とうさちゃん こまつとうさちゃん 『小松とうさちゃん』は、絲山秋子が人物の距離感と、うさぎのような柔らかなイメージを組み合わせて描く小説として整理できます。固有名と愛称が並ぶ題名から、親密さとずれたコミュニケーションが立ち上がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 143 2016 虫たちの家 むしたちのいえ 『虫たちの家』は、九州の孤島にあるグループホームで、インターネットで傷ついた女性たちが共同生活を送る物語です。家という避難所は、保護の場であると同時に、傷ついた人びとの距離を測り直す場所になります。現代的な孤立とケアの問題を、共同生活の細部から読ませる作品です。
- 144 2016 三の隣は五号室 さんのとなりはごごうしつ 『三の隣は五号室』は、ひとつのアパートの部屋に住んだ人々の時間を描く連作長篇です。部屋という固定された場所を軸に、入居者の生活、恋愛、仕事、記憶が時代をまたいで入れ替わります。個人よりも場所の記憶を前に出す構成が読みどころで、淡々とした語りの中に時間の厚みがあります。 第52回 谷崎賞
- 145 2016 手のひらの京 てのひらのみやこ 『手のひらの京』は、京都に暮らす奥沢家の三姉妹それぞれの恋愛や仕事、旅立ちを描く長編です。京都という歴史ある街を、観光的な風景ではなく、家族が日々を重ねる生活の場所として扱います。姉妹の視点を通して、土地への愛着と外へ出ていく感覚が並行して描かれます。
- 146 2016 美しい距離 うつくしいきょり 『美しい距離』は、妻の末期がんに寄り添う夫の視点から、死に向かう日常を静かに描く小説です。看病や病院での時間を、劇的な悲嘆ではなく、相手との距離を測り続ける営みとして捉えます。死を前にした夫婦の親密さと孤独を、抑えた語りで読ませる作品です。
- 147 2016 夏ならば なつならば 『夏ならば』は、志馬さち子が「早稲田文学」第十次15号(2016年夏)に発表した短篇です。NDLサーチで掲載誌・号数・ページ範囲と責任表示を確認できます。既存収録作『うつむく朝』は文学賞データベースで受賞情報を確認した作品ですが、本作は公的書誌で作者名と掲載媒体を確認できる文芸誌掲載作として収録しま…
- 148 2016 太陽の側の島 たいようのそばのしま 『太陽の側の島』は、戦時中を背景に、女性と兵士の関係を架空の日記や手紙の連なりでたどる中篇。第2回林芙美子文学賞の大賞受賞作として発表され、のちに短篇集『オブジェクタム』に収録された。戦争の記憶、記録の不確かさ、島という隔絶した場所を、SF的・幻想的な想像力で結びつける作品として位置づけられる。 第2回 林芙美子賞
- 149 2016 かがやき かがやき 『かがやき』は、馳平啓樹が『文學界』2016年1月号に発表した作品で、2019年刊の初作品集の表題作です。Books出版書誌データベースでは、2011年に文學界新人賞を受賞し、兼業作家として創作活動を続けてきた馳平の初作品集として紹介されています。単行本には表題作のほか「梨の味」「クチナシ」「きんの…
- 150 2016 人生のアルバム じんせいのあるばむ 『人生のアルバム』は、『文學界』2016年5月号に第121回文學界新人賞受賞作として掲載された渡辺勝也のデビュー作。人生をアルバムのような記録として捉える既存梗概に沿い、記憶と現在の関係を扱う作品として整理した。公式・公的書誌では受賞と掲載情報は確認できるが、本文内容や選評本文の詳細は未確認である。 第121回 文學界新人賞
- 151 2016 そういう生き物 そういういきもの 薬剤師の千景とスナック勤めのまゆ子は、高校の同級生として10年ぶりに再会し、思いがけず一緒に暮らし始めます。二人が心に秘めてきた過去を軸に、愛と性、心と体が思いどおりにならない感覚を描く作品です。再会と共同生活の静かな場面から、親密さの難しさと身体の記憶が浮かび上がります。 第40回 すばる文学賞
- 152 2016 えん えん 『えん』は、第40回すばる文学賞佳作として『すばる』2016年11月号に掲載されたふくだももこの作品。既存梗概では、人と人のつながりを主題に、映画監督志望の著者らしい映像的な感性が文体に表れたデビュー作として整理されている。NDLサーチで受賞区分・掲載誌・ページ範囲は確認できるが、公式の詳細梗概や選…
- 153 2016 縫わんばならん ぬわんばならん 九州長崎の漁村の島を舞台に、一族をめぐる四世代の来歴を女性の語りで編む作品。ほころびていく意識から湧き出る声を拾い、記憶の断片を縫い合わせるように家族史を立ち上げる。方言と声の流れが、過去・記憶・語り継ぎの主題を支えている。島の生活と老いの身体感覚が、個人史を超えた時間の厚みを生む。 第48回 新潮新人賞
- 154 2016 カブールの園 かぶーるのその 日系アメリカ人三世の女性が、IT企業を立ち上げた友人とヨセミテへ向かい、日系人強制収容所の記憶に触れていく表題作を中心とする作品集。移民、戦争の記憶、アメリカ社会の周縁に置かれた人々を、作者らしい構成意識で扱う。収録作「半地下」とあわせ、越境するアイデンティティと継承されにくい記憶が主題となる。 第30回 三島賞
- 155 2016 模範郷 もはんきょう Books/JPROは「故郷」という日本語を知らなかった語り手が、半世紀ぶりに故郷・台湾を訪れる時の旅人の物語として紹介している。NDLで2016年集英社単行本、2019年集英社文庫版をNDC 913.6として確認。
- 156 2016 オライオン飛行 『オライオン飛行』は、高樹のぶ子が2016年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 157 2016 人の樹 『人の樹』は、村田喜代子が2016年に潮出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 158 2016 焼野まで 『焼野まで』は、村田喜代子が2016年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 159 2016 その姿の消し方 そのすがたのけしかた 『その姿の消し方』は、詩や書物をめぐる記憶を追いながら、誰かの姿が時間のなかへ消えていく過程を静かにたどる作品です。堀江敏幸らしい精密な文体で、風景、読書、翻訳的な感覚が重なり合う。筋の強さよりも、痕跡を見つめるまなざしと文章の陰影が読みどころです。 第69回 野間文芸賞
- 160 2015 繭 まゆ 『繭』は、青山七恵が閉じた空間や保護される感覚を手がかりに、女性の内面を描く小説として整理できます。繭は守るものでもあり、外へ出る前の窮屈な状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 161 2015 自画像 じがぞう 『自画像』は、朝比奈あすかが自己像と他者からの視線をめぐる不安を描く小説として整理できます。自画像は自分を描く行為であると同時に、見られる自分を作る行為でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 162 2015 天使はここに てんしはここに 『天使はここに』は、朝比奈あすかが救いを求める人物たちの孤独を描く小説として整理できます。天使という言葉は超越的な存在であると同時に、身近な誰かへの希望にも読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 163 2015 電車道 でんしゃみち 『電車道』は、磯﨑憲一郎が移動、時間、反復をめぐって構成する長篇です。電車の軌道は、予想できる進行であると同時に、思いがけない記憶や時代の反復を呼び込みます。刊行記念インタビューの題名にもあるように、時代を超えて繰り返されるものを読む作品です。
- 164 2015 学校の近くの家 がっこうのちかくのいえ 『学校の近くの家』は、青木淳悟が学校と家という近接した場所から、子どもや地域の記憶を描く小説として整理できます。近いはずの場所同士の間に、共同体の視線や距離が生まれます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 165 2015 院内カフェ いんないかふぇ 『院内カフェ』は、中島たい子が病院内のカフェという場から、病やケア、日常の会話を描く小説として整理できます。病院という非日常の空間に、カフェのような日常的な場所が挟まることで、人と人の距離が変わります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 166 2015 ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』は、滝口悠生が音楽の名を冠した表題作を中心に、記憶と現在のずれをたどる作品です。固有名や文化的記憶が、人物の生活感覚に入り込み、出来事を一直線の筋ではなく断片的な時間として浮かび上がらせます。日常の会話や回想の揺れから、過去を語り直すことの不確かさを読む小説で…
- 167 2015 暗号のポラリス あんごうのぽらりす 『暗号のポラリス』は、中山智幸が暗号と北極星のイメージを重ね、読解や方角をめぐる物語として構成した作品と整理できます。暗号は言葉の届かなさを、ポラリスは迷った先の指標を示す題名です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 168 2015 ペンギンのバタフライ ぺんぎんのばたふらい 『ペンギンのバタフライ』は、中山智幸が異質なものの組み合わせから想像力を広げる小説として整理できます。飛べない鳥であるペンギンと、羽ばたく蝶の対比が、変身や移動への願望を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 169 2015 残された者たち のこされたものたち 『残された者たち』は、過疎の集落・潮の浦の分校を舞台に、代用教員アンナと生徒たちの日常をユーモラスに描く文庫オリジナル作品です。小さな共同体に残る人びとの生活から、地方、教育、記憶の問題が見えてきます。大きな事件よりも、場に残る声や関係の細部を読む作品です。
- 170 2015 パノララ パノララ 『パノララ』は、柴崎友香が視線、場所、移動の感覚を広く開く長編です。タイトルはパノラマ的に広がる世界と、どこか音のずれた感覚を同時に含んでいます。人物の移動や会話を通して、都市と記憶の見え方が少しずつ変わる作品です。
- 171 2015 死んでいない者 しんでいないもの 秋のある日、大往生を遂げた85歳の男の通夜に、子や孫、ひ孫まで30人ほどの親族が集まってくる。通夜振る舞いの席で酒を酌み交わす者、川辺をさまよう者、初めて会う親戚と言葉を交わす少年少女。語りは特定の人物に留まらず、出席者から出席者へと自在に移りながら、故人の記憶と一族それぞれの来し方、共有しえない日… 第154回 芥川賞
- 172 2015 水死人の帰還 すいしにんのきかん 『水死人の帰還』は、小野正嗣が死者、記憶、土地の声をめぐって描く小説として整理できます。水死人という存在は、失われたものが共同体へ戻ってくる不穏な気配を帯びています。生と死の境目を揺らしながら、地方の場所に残る記憶を読む作品です。
- 173 2015 匿名者のためのスピカ とくめいしゃのためのすぴか 『匿名者のためのスピカ』は、島本理生が名前を持たない/名乗れない存在へのまなざしを扱う小説として整理できます。スピカという星の名は、匿名性の闇の中にある小さな指標のように働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 174 2015 次ぎの人 つぎのひと 『次ぎの人』は、第1回林芙美子文学賞受賞作として『婦人公論』に掲載された井岡道子の作品。NDLサーチで掲載誌・ページ範囲を確認でき、同じ検索結果から井岡が2025年に『麝香豌豆』を刊行していることも確認できる。公開資料では内容紹介が乏しいため、現時点では受賞・掲載情報を中心に扱う。 第1回 林芙美子賞
- 175 2015 うつむく朝 うつむくあさ 『うつむく朝』は、嶋幸子が第1回林芙美子文学賞で佳作に選ばれた作品です。現時点で確認できるウェブ資料は賞一覧データに限られ、単行本化や初出本文、梗概は確認できません。作品内容を推測せず、林芙美子文学賞の初回選考で評価された短篇として記録します。
- 176 2015 ものかげの雨 ものかげのあめ 『ものかげの雨』は、第1回林芙美子文学賞佳作の表題作を含む高倉やえの短篇集です。Books.or.jpの内容紹介では、老いを底に置きながら、人の悲喜や心の機微を、ときにユーモラスに、ときに官能的に描く作品集として紹介されている。通訳者としての経歴を持つ著者の晩年デビュー作として、人生経験の陰影を短篇…
- 177 2015 雪の朝 ユキ ノ アサ 角川文化振興財団から2015年に刊行された高倉やえの未収録単著。
- 178 2015 地の底の記憶 ちのそこのきおく 電波塔に見守られる架空の町を舞台に、百年を超える時間をたどる壮大なデビュー作。ラピス・ラズリ、電波、川の流れといったモチーフが、町と人物の記憶を深い層へ導く。現実と非現実、過去と現在が交錯する長い時間の物語として読むことができる。架空の町の歴史を掘り下げる構成が、記憶そのものの地層を読む感覚を生む。 第52回 文藝賞
- 179 2015 悲しみと無のあいだ かなしみとむのあいだ 2015年7月に文藝春秋から刊行された作品集。NDLで収録作「愛撫、不和、和解、愛撫の日々」「悲しみと無のあいだ」を確認できる。
- 180 2015 八幡炎炎記 『八幡炎炎記』は、村田喜代子が2015年に平凡社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 181 2015 冥途あり めいどあり 『冥途あり』は、家族の記憶や土地の感触を手がかりに、生者と死者の距離を静かにたどる長篇です。長野まゆみの幻想性は、派手な異界ではなく、日常のすぐ隣にある冥界の気配として現れる。言葉の選び方と空気の薄さが、死と記憶の主題を繊細に支えています。 第68回 野間文芸賞
- 182 2014 風 かぜ 『風』は、青山七恵が移ろいやすい感情や生活の変化を、静かな文体で扱う小説として整理できます。風という題名は、人物の内面を直接説明するよりも、周囲の空気や関係の揺れとして読ませます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 183 2014 春の庭 はるのにわ 離婚を機に世田谷の取り壊し予定のアパートに越してきた太郎は、隣に建つ水色の洋館を熱心に観察する住人の女・西と知り合う。漫画家の西は、高校時代に魅了された写真集『春の庭』の舞台がその家であることを知り、この場所へ引っ越してきたのだった。二人は次第にその水色の家への接近を試みるようになる。再開発で消えて… 第151回 芥川賞
- 184 2014 スープの国のお姫様 すーぷのくにのおひめさま 『スープの国のお姫様』は、食べることや料理をめぐる感覚から、家族やケアのあり方を描く樋口直哉の小説として整理できます。スープという身近な料理は、身体を温めるだけでなく、関係を結び直す媒介になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 185 2014 清とこの夜 きよとこのよる 『清とこの夜』は、夜の時間を背景に、人物の孤独や記憶を描く広小路尚祈の小説として整理できます。題名は人名と「この夜」を結び、特定の一夜に凝縮される関係や感情を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 186 2014 星よりひそかに ほしよりひそかに 『星よりひそかに』は、柴崎友香が身近な生活のなかにある気配や感情を静かに追う小説として整理できます。大きな事件よりも、視線や場所の移ろい、言葉にならない思いが重視されます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 187 2014 彼女の家計簿 かのじょのかけいぼ 『彼女の家計簿』は、戦前から三世代にわたる女性たちを、家計簿という生活記録で結ぶ原田ひ香の長篇です。数字や支出の記録は、家族史、労働、ジェンダーの記憶を読み解く手がかりになります。日々の細部から女性の生の選択をたどる作品です。
- 188 2014 九年前の祈り くねんまえのいのり 35歳のさなえは、カナダ人の夫に去られたあと、激しい癇癪を起こす幼い息子・希敏を連れて、故郷である大分の海辺の小さな集落に帰ってくる。育児に疲弊する彼女の脳裏には、九年前、集落の女たちとカナダを旅した際、世話役の「みっちゃん姉」が異国の教会で見せた祈りの姿が繰り返し蘇る。そのみっちゃん姉の息子がいま… 第152回 芥川賞
- 189 2014 きょうのできごと、十年後 きょうのできごと、じゅうねんご 『きょうのできごと、十年後』は、柴崎友香のデビュー作『きょうのできごと』の登場人物たちの十年後を描く続篇です。若さの一日の空気は、時間を経た生活、仕事、関係の変化として戻ってきます。大事件ではなく、都市のなかで少しずつ変わる人間関係を読む作品です。
- 190 2014 寝相 ねぞう 『寝相』は、滝口悠生の最初期作品を収める小説集で、睡眠や身体の姿勢のような無意識の領域に、人物の記憶や関係がにじみます。既存データでは新潮新人賞受賞作「楽器」を含む最初の小説集とされています。日常の細部がゆっくりずれていく語りが読みどころです。
- 191 2014 女のいない男たち おんなのいないおとこたち 『女のいない男たち』は、「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「木野」などを収める村上春樹の短篇集です。女性を失った、あるいは理解できなかった男性たちの孤独が、語り直しや回想を通じて浮かび上がります。恋愛小説でありながら、喪失後に残る空白そのものを読む作品集です。
- 192 2014 離陸 りりく 『離陸』は、絲山秋子が時間と空間を大きく動かしながら、人の移動と記憶を描く長篇です。タイトルどおり、地上の生活から浮き上がるように物語が進み、現実の距離感が変わっていきます。旅や移動の小説であると同時に、記憶の重力をめぐる作品です。
- 193 2014 聖地Cs せいちしーず 『聖地Cs』は、木村友祐が聖地と名づけられる場所の力や、土地をめぐる記憶を扱う小説として整理できます。場所は信仰や観光の対象であるだけでなく、共同体の傷や欲望を集めるものとして読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評記録に基づく暫定的な紹介です。
- 194 2014 鳥たち とりたち 『鳥たち』は、吉本ばななが移動、喪失、自由への感覚を鳥のイメージに重ねる小説として整理できます。鳥は、どこかへ飛び去るものとして、残された人の孤独や再生を映します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 195 2014 あなたへの歌 あなたへのうた 『あなたへの歌』は、楊逸が他者へ向ける言葉と、移動する人びとの記憶を扱う小説として整理できます。歌という形式は、直接届かない思いを誰かへ送るための媒介になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 196 2014 みずうみのほうへ みずうみのほうへ 七歳の誕生日旅行で父を失った「ぼく」が、湖のある町で育ち、二十代の終わりに父との記憶に結びつく「サイモン」に似た人物と出会う。港町、水産物加工場、アイスホッケー観戦といった生活の細部が、喪失の記憶と幻想的な再会をゆっくり結びつけていく。静かな語りの中で、父の死の謎と過去への引力が持続する作品である。 第38回 すばる文学賞
- 197 2014 ヤモリ、カエル、シジミチョウ やもり かえる しじみちょう 『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』は、江國香織による長編小説で、第51回谷崎潤一郎賞受賞作です。小学生の男の子の視点を軸に、家族と子どもたちの世界を繊細な感覚でたどる作品として整理しました。大きな事件よりも、家庭や身近な生き物をめぐる細部から、子どもの時間の不思議さを浮かび上がらせる点が読みどころです… 第51回 谷崎賞
- 198 2014 レールの向こう れーる の むこう 沖縄に生きて創作を続けてきた老年の作家が、妻の入院をきっかけに日常と記憶を往還する作品集。表題作では、病院や家族との現在の生活と、レールの向こうにある創作の記憶が重ねられる。老いと死を含む生活を慈しみながら、作家として切り捨てられない不穏な領域を見つめる。 第41回 川端賞
- 199 2014 少女霊異記 『少女霊異記』は、高樹のぶ子が2014年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 200 2014 屋根屋 『屋根屋』は、村田喜代子が2014年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 201 2013 愛の夢とか あいのゆめとか 『愛の夢とか』は、日常のなかの小さな喪失と出会いを描く川上未映子の短篇集です。恋愛や記憶は劇的な事件としてではなく、ふとした言葉や風景の変化として現れます。リアリズムの手触りのなかに、静かな痛切さが残る作品集です。 第49回 谷崎賞
- 202 2013 めぐり糸 めぐりいと 『めぐり糸』は、糸がめぐるように人と人の縁や記憶が結び直される青山七恵の小説です。関係は一直線に進まず、ほどけたり絡まったりしながら人物の現在を形づくります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないが、連載レコードと単行本書誌から、時間をかけて展開した作品であることが分かります。
- 203 2013 憧れの女の子 あこがれのおんなのこ 『憧れの女の子』は、朝比奈あすかが女性同士の視線や自己像の揺れを扱う小説として整理できます。題名の「憧れ」は、好意や羨望だけでなく、自分との差異を意識させる感情として働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 204 2013 晩年様式集(イン・レイト・スタイル) ばんねんようしきしゅう 『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』は、東日本大震災後に書き継がれた大江健三郎晩年の長篇です。老いた作家の自己検証、家族、死者の記憶が重なり、作品を書くことそのものが喪失への応答として描かれます。大江の後期小説群を締めくくるように、長い息の文体で過去と現在を往還します。
- 205 2013 銀河鉄道の彼方に ぎんがてつどうのかなたに 『銀河鉄道の彼方に』は、宮沢賢治的な銀河鉄道のイメージを踏まえながら、言葉、信仰、死者との対話を重ねる高橋源一郎の長篇です。旅の形式は、現実から逃げる装置ではなく、現代の読者が死や救いを考えるための実験的な場になります。物語の引用性と語り直しが読みどころです。
- 206 2013 昼田とハッコウ ひるたとはっこう 『昼田とハッコウ』は、二つの名前が並ぶ題名どおり、人物同士の距離や関係の変化を追う山崎ナオコーラの小説です。親密さは劇的にではなく、会話や生活の小さな差異として描かれるタイプの作品として読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 207 2013 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 しきさいをもたないたざきつくると、かれのじゅんれいのとし 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、36歳の多崎つくるが高校時代の突然の絶交の謎をたどる長篇です。名古屋、東京、フィンランドへ向かう旅は、記憶の欠落と自己像の空白を埋める巡礼として進みます。抑制された語りで、友情、喪失、回復不能な時間を扱います。
- 208 2013 往古来今 おうこらいこん 『往古来今』は、古代から現代までを貫く時間と生命の往還を描く磯﨑憲一郎の長篇です。個人の人生より大きな時間の流れのなかで、記憶や土地、身体が結び直されます。題名どおり、過去と現在を同じ地平で読む感覚が作品の核になります。
- 209 2013 獅子渡り鼻 ししわたりばな 『獅子渡り鼻』は、親の事情で海辺の集落に預けられた少年・尊の日々を描く小野正嗣の小説です。土地の記憶、祈り、共同体の気配が、少年の視界を通じて静かに立ち上がります。海辺の集落を舞台に、家族から離された子どもの孤独と場所への感受性を描きます。
- 210 2013 スナックちどり スナックちどり 『スナックちどり』は、吉本ばななが小さな店や旅先の空気を通じて、喪失後の再生を描く小説として整理できます。スナックという場所は、家族でも職場でもないゆるい避難所として機能します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 211 2013 忘れられたワルツ わすれられたわるつ 『忘れられたワルツ』は、絲山秋子が記憶からこぼれ落ちる感情や、日常の不意のずれを描く短篇集です。ワルツのような反復と忘却の感覚が、人物の孤独や時間の歪みを浮かび上がらせます。抑えた語りのなかで、喪失とユーモアが同居する作品です。
- 212 2013 星月夜 ホシズクヨ 角川書店から2013年に刊行された高倉やえの未収録単著。
- 213 2013 想像ラジオ そうぞうらじお 海沿いの町で高い杉の木のてっぺんに引っかかっているDJアークが、想像の電波を使ってリスナーに語りかける小説。届くメールやリクエストを読み上げながら、どうしても聞きたいひとつの声へ向かっていく。震災後の死者と生者、声と想像力をめぐる、ラジオ番組形式の物語である。 第35回 野間新人賞
- 214 2013 還れぬ家 カエレヌ イエ 2013年に新潮社から刊行された佐伯一麦の単著図書。家族・家・土地の主題で既登録作を補う候補。
- 215 2013 感受体のおどり かんじゅたいのおどり 『感受体のおどり』は、文藝春秋BOOKSが「大河恋愛小説」であり「記憶についての物語」でもあると紹介する長篇です。『abさんご』で注目された黒田夏子の実験的な言葉の運動を、より長い時間幅と恋愛・記憶の物語へ広げる作品として位置づけられます。
- 216 2013 香夜 『香夜』は、高樹のぶ子が2013年に集英社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 217 2013 ゆうじょこう 『ゆうじょこう』は、村田喜代子が2013年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 218 2012 関東平野 かんとうへいや 『関東平野』は、第106回文學界新人賞受賞作『逃げ道』の作者・北野道夫が「文學界」2012年9月号に発表した短篇です。NDLサーチで掲載誌・巻号・ページを確認でき、芥川賞候補作家の群像では第148回芥川賞候補作として整理されています。今回確認できた公開情報では単行本化は見当たらず、書誌と候補歴を中心…
- 219 2012 花嫁 はなよめ 『花嫁』は、結婚や家族のイメージを手がかりに、若い女性の自己像と周囲の期待を描く青山七恵の小説です。花嫁という役割は幸福の記号である一方、人物を一つの型に押し込める圧力としても読めます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 220 2012 すみれ すみれ 『すみれ』は、青山七恵が若い女性の日常と、名づけがたい違和感を静かに描く小説です。すみれという小さな花の像は、華やかさよりも、身近な場所に残る感情の気配を思わせます。抑えた語りのなかで、家族や恋愛に回収されない孤独が見えてきます。
- 221 2012 プールサイドの彼方 ぷーるさいどのかなた 『プールサイドの彼方』は、水辺の境界性を背景に、若い人物の距離感や将来への不安を描く朝比奈あすかの小説です。プールサイドは日常と非日常、身体と視線が交差する場所として機能します。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 222 2012 仮り住まい かりずまい 『仮り住まい』は、住まいが一時的であることの不安を通じて、生活、記憶、孤独を描く丹下健太の作品です。家は安定した場所ではなく、いつか離れる前提の仮の居場所として立ち上がります。文芸誌掲載作として、移動する生活の感覚を読む作品です。
- 223 2012 夜の隅のアトリエ よるのすみのあとりえ 『夜の隅のアトリエ』は、アトリエという創作の場を手がかりに、芸術、孤独、記憶を描く木村紅美の小説です。夜の隅という場所は、誰にも見えない作業や感情が残る領域を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 224 2012 惑いの森 まどいのもり 『惑いの森』は、バーに現れる男や手紙を待つ郵便局員など、日常の人物たちを連鎖させる中村文則の50篇の短編集です。森は現実の場所というより、迷い込んだ人びとの記憶と孤独が交差する比喩として働きます。短い形式のなかで、不穏さと愛おしさが同居します。
- 225 2012 七緒のために ななおのために 『七緒のために』は、誰かのために生きることと、自分の感情を保つことの境界を描く島本理生の小説として整理できます。題名の「ために」は、献身であると同時に、関係への囚われも示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 226 2012 佐渡の三人 さどのさんにん 『佐渡の三人』は、佐渡という島の土地性を背景に、三人の人物の関係や記憶を描く長嶋有の小説です。島は閉じた場所でありながら、外から来る者と土地に残るものを結びつけます。長嶋作品らしい抑えたユーモアのなかで、家族や共同体への距離が見えてきます。
- 227 2012 週末カミング しゅうまつカミング 『週末カミング』は、週末という限られた時間を通じて、都市で暮らす人物の移動や感情の変化を描く柴崎友香の小説です。来るものを待つ感覚は、恋愛や記憶、生活のリズムと重なります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 228 2012 わたしがいなかった街で わたしがいなかったまちで 『わたしがいなかった街で』は、柴崎友香が、経験していない戦争や過去の映像と、現在の都市生活を重ねる小説です。自分がいなかった場所や時間をどう想像するかが、記憶と責任の問いになります。静かな語りのなかで、戦争の記録と個人の日常が交差します。
- 229 2012 abさんご えーびーさんご 昭和の知的家庭に生まれた幼子が成長し、父母を看取るまでを描く作品。横書き、固有名詞を用いない語りなど、形式上の実験が大きな特徴である。家族史を扱いながら、父子の間で長く見過ごされてきた沈黙や距離を、記憶の断片としてすくい上げる。言葉の配置そのものによって、時間の手触りと家族を語る難しさを問い直す。 第148回 芥川賞
- 230 2012 隙間 すきま 『隙間』は、人と人の間にある見えない距離を主題にした森山忍のデビュー作です。具体的な筋は限られていますが、題名どおり、関係の裂け目や沈黙の余白を読む作品として整理できます。親密さの中にある距離感を、静かな語りで描く作品です。 第115回 文學界新人賞
- 231 2012 螺法四千年記 らほうよんせんねんき 古代から現代までを四千年の時間幅でたどり、神、人、ちいさな生き物たちの気配が現在の地平に重なっていく長篇。詩人でもある日和聡子の文体が、此岸と彼岸、私と彼方を行き来する神話的な感触を生み出す。直線的な歴史小説というより、螺旋状に時間と声が響き合う幻想性が読みどころである。 第34回 野間新人賞
- 232 2012 給水塔と亀 きゅうすいとう と かめ 定年後に幼いころ暮らした土地へ戻ってきた独身男性を主人公に、給水塔の記憶と前住人が残した亀をめぐって老いと孤独を見つめる短篇。大きな事件ではなく、製麺所の排水、古い団地、ベランダからの風景といった細部が、人生の時間の流れを静かに立ち上げる。津村記久子らしい抑制された語りが、再出発のかすかな意欲を読み… 第39回 川端賞
- 233 2012 千のキス せんのきす 安達千夏の2010年代単行本候補。既存収録作と重複しない。
- 234 2012 ことり ことり NDLサーチで2012年11月刊の朝日新聞出版版単行本と2016年文庫版を確認できる。
- 235 2012 光線 『光線』は、村田喜代子が2012年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 236 2011 あかりの湖畔 あかりのこはん 『あかりの湖畔』は、湖畔という静かな場所を背景に、家族や記憶の揺らぎを描く青山七恵の小説です。人物の感情は大きく叫ばれるよりも、風景や会話の間ににじみます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名に基づく暫定的な紹介です。
- 237 2011 春待ち海岸カルナヴァル はるまちかいがんかるなゔぁる 『春待ち海岸カルナヴァル』は、海辺の土地と春を待つ時間を重ね、記憶や人間関係の揺れを描く木村紅美の小説です。カルナヴァルという祝祭的な語は、静かな海岸の風景に非日常の気配を差し込みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 238 2011 黒うさぎたちのソウル くろうさぎたちのそうる 『黒うさぎたちのソウル』は、ソウルという海外都市を舞台に、移動と孤独の感覚を描く木村紅美の作品です。黒いうさぎという像は、かわいらしさだけでなく、夜や不安の気配も帯びています。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 239 2011 末裔 まつえい 『末裔』は、血筋や受け継がれるものをめぐって、家族と記憶の問題を描く絲山秋子の小説です。題名は、人物が自分の始まりではなく、誰かの後に続く存在として生きている感覚を示します。乾いた文体のなかに、家の歴史と自己認識の不穏さが漂います。
- 240 2011 虹色と幸運 にじいろとこううん 『虹色と幸運』は、柴崎友香らしい観察の文体で、都市の日常に差す色や偶然を拾う小説です。虹色や幸運は大きな救済ではなく、人物の生活のなかにふと現れて消える感覚として読めます。恋愛、記憶、孤独が、静かな風景描写のなかに沈んでいます。
- 241 2011 すべて真夜中の恋人たち すべてまよなかのこいびとたち 『すべて真夜中の恋人たち』は、孤独な校閲者・冬子と年上の物理教師・三束さんの出会いを描く川上未映子の長編です。真夜中の光や静けさは、都市で働く女性の孤独と、他者に近づこうとする繊細な感情を照らします。恋愛小説でありながら、労働、孤独、自己認識の物語として読めます。
- 242 2011 ビリジアン ビリジアン 『ビリジアン』は、色彩、風景、記憶の手ざわりを、柴崎友香らしい観察の文体で描く小説です。ビリジアンという色名は、人物の感情を説明するのではなく、視覚的な印象として残します。都市や郊外の日常のなかで、孤独と芸術的な感受性が静かに重なります。
- 243 2011 私のいない高校 わたしのいないこうこう 『私のいない高校』は、1992年の小学校を舞台に、校舎から見える家に住む子供の視点で綴られる青木淳悟の連作です。学校という共同体のなかにいるようでいない感覚が、記憶と観察のずれとして積み上がります。子供の視界を通じて、同調圧力と孤立が静かに浮かぶ作品です。 第25回 三島賞
- 244 2011 獅子頭 しーずとう 『獅子頭』は、獅子舞を思わせる題名を通じて、移動する人びとの記憶や家族のつながりを描く楊逸の小説です。中国語圏の文化的な記憶と日本語で書く現在が重なり、越境の感覚が作品の核になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 245 2011 きんのじ きんのじ 『きんのじ』は、大阪文学学校在籍中に書かれた長谷原宏己のデビュー作です。製造業で働く人物の日常と内面を静かな文体で描く作品として整理されています。労働の反復の中にある孤独や尊厳を、派手な事件ではなく生活の手触りから読む作品です。 第113回 文學界新人賞
- 246 2011 楽器 がっき 『楽器』は、記憶と語りの重なりを繊細に扱った滝口悠生のデビュー短篇です。音や楽器のイメージを通じて、過去の出来事や人の声が現在の語りに響きます。のちに芥川賞・野間文芸新人賞を受賞する作者の、時間感覚と語りの特徴を示す出発点です。 第43回 新潮新人賞
- 247 2011 半島へ はんとうへ 『半島へ』は、伊勢志摩の半島地帯を舞台に、衰えゆく自然と人間の静かな対話を描く散文詩的長編です。土地の風景と老い、移ろう自然の気配が、ゆるやかな時間の中で重なります。半島という外縁の場所から、生と死の境目を見つめる作品です。 第47回 谷崎賞
- 248 2011 異郷 いきょう 『異郷』は、津村節子が夫・吉村昭の死後の喪失と生者の日常を静かに描いた短篇です。身近な死を経た後の生活を、過剰な感傷ではなく抑制された語りで見つめます。配偶者の不在を抱えて生きる時間を、静謐な読み味で描く作品です。 第37回 川端賞
- 249 2011 犬とハモニカ いぬ と はもにか 『犬とハモニカ』は、孤独、記憶、男女の間に生じる微妙な感情を描く江國香織の短篇です。身近な事物である犬とハモニカのイメージが、語りの中で人と人の距離をやわらかく照らします。大きな事件よりも、感情のかすかな揺れを読む作品です。 第38回 川端賞
- 250 2011 ワーカーズ・ダイジェスト わーかーず・だいじぇすと 『ワーカーズ・ダイジェスト』は、東京で働くデザイナーの奈加子と、大阪で働く重信という二人の会社員を描く作品です。同じ名字を持つ二人の生活は大きく交差しないまま、仕事の疲れ、移動、職場の人間関係、日々の小さな不調を通して響き合います。働く人の時間を、劇的な成功や破局ではなく、淡々とした持続として捉える… 第28回 織田作之助賞
- 251 2010 手のひらに微熱 てのひらにびねつ 『手のひらに微熱』は、藤代泉が『ボーダー&レス』で第46回文藝賞を受賞した後に発表した受賞第一作です。NDLサーチでは「文藝賞受賞第一作」として記録され、CiNii Researchで『文藝』49巻3号、2010年、88-145ページ掲載の書誌を確認できます。『ボーダー&レス』以後の藤代泉の初期展開…
- 252 2010 深海 しんかい 『深海』は、『カメレオン狂のための戦争学習帳』で第52回群像新人文学賞を受けた丸岡大介が「群像」2010年4月号に発表した短篇です。NDLサーチでは「特集 新鋭8人短篇競作」の一篇として、掲載誌・巻号・ページ範囲を確認できます。同名の医学・工学系著者資料が検索結果に混在するため、責任表示・掲載誌・N…
- 253 2010 拍動 はくどう 『拍動』は、シリン・ネザマフィが第108回文學界新人賞受賞後に発表した小説です。NDLサーチでは「文學界新人賞受賞第一作」と副題が付され、『文學界』2010年6月号、98-137ページ掲載の記事として確認できます。日本語を母語としない書き手によるデビュー後の展開をたどるうえで、『白い紙』と並べて参照…
- 254 2010 あのとき始まったことのすべて あのときはじまったことのすべて 『あのとき始まったことのすべて』は、過去のある瞬間から始まった感情や関係を振り返る中村航の小説です。恋愛や青春の出来事は、後になって意味を変え、現在の語りのなかで再構成されます。平易な文体で、記憶のなかの始まりをたどる読み味があります。
- 255 2010 お別れの音 おわかれのおと 『お別れの音』は、別れの瞬間やその前後に残る気配を、青山七恵らしい抑制された文体で描く作品です。音という題名は、はっきりした出来事よりも、生活のなかに残響する感情を思わせます。家族や恋愛の終わりを、静かな距離感で読む小説として整理できます。
- 256 2010 彼女のしあわせ かのじょのしあわせ 『彼女のしあわせ』は、女性にとっての幸福が何によって測られるのかを、家族、恋愛、仕事の文脈から描く朝比奈あすかの小説です。題名の「彼女」は、誰かに見られる存在であると同時に、自分で幸福を選び直す存在でもあります。日常的な場面から、同調圧力と自己決定の問題が見えてきます。
- 257 2010 アクアノートとクラゲの涙 あくあのーととくらげのなみだ 『アクアノートとクラゲの涙』は、水中を思わせるイメージとクラゲの浮遊感を通じて、記憶や孤独を描く樋口直哉の小説です。題名の柔らかい幻想性は、現実から少し離れた視界を与えます。公開資料で内容細部を確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲での暫定紹介です。
- 258 2010 うちに帰ろう うちにかえろう 『うちに帰ろう』は、家へ帰るという素朴な動作を通じて、家族や生活の拠点を見つめ直す広小路尚祈の小説です。帰る場所は安心だけでなく、過去や関係の重さを引き受ける場所でもあります。平明な題名のなかに、家族と地方的な生活感への問いが込められています。
- 259 2010 見知らぬ人へ、おめでとう みしらぬひとへおめでとう 『見知らぬ人へ、おめでとう』は、見知らぬ相手に向けた祝福という奇妙な距離感から、他者との関係を描く木村紅美の作品です。直接の親密さではなく、社会のなかですれ違う人びとへの想像が物語を動かします。都市的な孤独と、言葉によって関係を作ることの危うさが読みどころです。
- 260 2010 コトリトマラズ ことりとまらず 『コトリトマラズ』は、止まらずに動き続ける小鳥のような感覚を通じて、人物の落ち着かなさや生活の変化を描く栗田有起の小説です。定住できない心の動きと、日常の小さなずれが物語の軸になります。軽やかな題名の奥に、孤独と移動の感覚が見えます。
- 261 2010 埋葬 まいそう 『埋葬』は、死者を葬る行為を通じて、記憶、喪失、残された者の時間を描く横田創の小説です。埋葬は終わらせる儀式であると同時に、過去を地中に置いたまま忘れられない行為でもあります。静かな不穏さのなかで、死と生活の境界を読む作品です。
- 262 2010 真綿荘の住人たち まわたそうのじゅうにんたち 『真綿荘の住人たち』は、下宿や共同住宅を思わせる場所に集まる人びとの孤独とつながりを描く島本理生の作品です。住人たちは近くにいながら、それぞれの痛みや幸福の基準を抱えています。真綿のような柔らかさと息苦しさが同居する、関係性の小説です。
- 263 2010 寝ても覚めても ねてもさめても 『寝ても覚めても』は、突然姿を消した恋人と瓜二つの顔を持つ男に出会った朝子の長い恋を描く柴崎友香の長篇です。恋愛の選択は、過去の記憶と現在の生活がどのように重なるかという問題として描かれます。大阪や東京を行き来する時間のなかで、同じ顔と違う人生をめぐる不穏な感覚が残ります。 第32回 野間新人賞
- 264 2010 祝福 しゅくふく 『祝福』は、長嶋有らしい抑えたユーモアで、日常の会話や記憶のずれをすくう作品です。大きな事件よりも、人が誰かを祝う、あるいは祝福できない瞬間の微妙な距離に焦点があります。平明な語りのなかで、家族や友人関係に残る孤独が静かに見えてきます。
- 265 2010 それいゆ それいゆ 『それいゆ』は、題名が示す光や明るさとは対照的に、若い人物の自己認識や恋愛の揺れをたどる小説として整理できます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌情報と作者の同時期作品の文脈に基づく暫定的な紹介です。明るさに向かう感覚と、都市的な孤独のあいだに読みどころがあります。
- 266 2010 陽だまり幻想曲 ひだまりげんそうきょく 『陽だまり幻想曲』は、楊逸が日本語で描く移動者の生活感覚を、光のある場所への憧れと結びつける作品です。家族や言葉のずれは、異国で暮らす人物の孤独と希望を同時に映します。日常の会話に潜む違和感が、越境文学としての読みどころになります。
- 267 2010 夜よりも大きい よるよりもおおきい 『夜よりも大きい』は、小野正嗣が土地、記憶、喪失の感覚を静かに重ねる作品です。夜という時間よりも大きなものに包まれる感覚が、人物の孤独や死者の気配を呼び込みます。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 268 2010 家路 いえじ 『家路』は、朝吹真理子が「流跡」の後に「群像」2010年4月号で発表した初期短篇です。詳細な梗概は今回の確認範囲では未確定ですが、デビュー直後から『きことわ』へ向かう時期の文芸誌掲載作として位置づけました。
- 269 2010 きことわ きことわ 『きことわ』は、葉山の高台にある別荘で幼い夏をともに過ごした貴子と永遠子が、二十五年後、別荘の解体を前に再会する作品です。現在の時間のなかに幼年時代の記憶や夢がふいに現れ、途切れた親密さが静かに流れ直します。大きな事件よりも、夢・記憶・現実の境界と、積み重なる時間の層を繊細な文体で読む小説です。 第144回 芥川賞
- 270 2010 野川 のがわ 『野川』は、長野まゆみが2010年7月に河出書房新社から刊行した長篇小説です。両親の離婚を機に転校した音和が、野川の近くで父と二人暮らしを始め、中学校の新聞部で伝書鳩を育てる仲間たちと出会います。変わり者の教師の言葉に導かれ、鳥の目で世界を見たいと願う少年の感受性を、川辺の風景と飛翔のイメージのなか…
- 271 2010 ショパン奇蹟の一瞬 『ショパン奇蹟の一瞬』は、高樹のぶ子が2010年にPHP研究所から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 272 2010 故郷のわが家 『故郷のわが家』は、村田喜代子が2010年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。 第63回 野間文芸賞
- 273 2009 約束の夜に やくそくのよるに 『約束の夜に』は、『子守唄しか聞こえない』で第51回群像新人文学賞を受けた松尾依子が「群像」2009年5月号に発表した短篇です。NDLサーチでは「特集 新鋭15人短篇競作」の一篇として、掲載誌・巻号・ページ範囲を確認できます。今回確認できた公開情報は書誌事項に限られるため、内容紹介は掲載形態と発表時…
- 274 2009 かけら かけら 『かけら』は、日常の小さな破片のような出来事から、若い人物の孤独や関係の変化をすくい上げる青山七恵の作品です。簡潔な語りは感情を説明しすぎず、読者に余白を残します。家族や恋愛のはっきりしない揺れを、静かな手ざわりで読む小説です。
- 275 2009 魔法使いクラブ まほうつかいくらぶ 『魔法使いクラブ』は、若い人びとの小さな結びつきや願望を、魔法という言葉の軽やかさで包む作品です。現実を大きく変える力ではなく、日々を少しだけ違って見せる想像力が中心になります。青山七恵らしい静かな文体で、青春と孤独のあいだを描きます。
- 276 2009 ドリーマーズ ドリーマーズ 『ドリーマーズ』は、夢を見ることと現実を生きることのずれを、柴崎友香らしい都市の時間感覚で描く作品です。人物たちの関係は劇的に変わるというより、会話や移動のなかで少しずつ輪郭を変えます。淡い題名に対して、日常の底に残る孤独も読みどころになります。
- 277 2009 君が降る日 きみがふるひ 『君が降る日』は、失われた相手への思いと、残された人の時間を描く島本理生の恋愛小説です。題名の「降る」は、記憶が突然日常へ戻ってくる感覚を思わせます。静かな語りの中で、喪失、恋愛、再生の気配が重なります。
- 278 2009 月食の日 げっしょくのひ 『月食の日』は、日常のなかに差し込む陰りを、月食という天体現象のイメージと重ねる木村紅美の作品です。人との距離や生活の変化が、明るさを一時的に失う感覚として描かれます。静かで観察的な文体が、家族や孤独の輪郭を浮かび上がらせます。
- 279 2009 ねたあとに ねたあとに 『ねたあとに』は、眠った後、起きた後に残る気配のようなものを、長嶋有らしい淡いユーモアで描く作品です。日常の会話や場面は軽く見えますが、人物同士の距離は少しずつ変化します。生活の小さな時間を、静かなずれとして読む小説です。
- 280 2009 東京借景 とうきょうしゃっけい 『東京借景』は、恩師らしき男、義眼の隣人、巨大な友人Qなど、距離の取りにくい人物たちとの関係を東京の風景に重ねる作品。河出書房新社は、いらだちを誘う相手との距離を描く「文藝賞受賞第一作」として紹介している。都市を単なる背景ではなく、他者への違和感や孤独を映し出す借景として扱うところに読みどころがある…
- 281 2009 世紀の発見 せいきのはっけん 『世紀の発見』は、巨大な機関車と大きな鯉の記憶、そして消えた友人をめぐって語りが展開する長篇です。現実の出来事と記憶の像が入り混じり、世界の見え方そのものが少しずつ変わっていきます。磯﨑憲一郎らしい、夢のようで乾いた語りの運動が読みどころです。
- 282 2009 線路と川と母のまじわるところ せんろとかわとははのまじわるところ 『線路と川と母のまじわるところ』は、線路と川という移動のイメージを、母の記憶や土地の感覚と重ねる小野正嗣の作品です。場所の記憶は個人の家族史と結びつき、語りは土地をたどるように進みます。母と子、故郷、移動の主題を静かに読む小説です。
- 283 2009 白い紙 しろいかみ イラン・イラク戦争下のイランの地方都市。成績優秀な高校生の男女が、勉強を口実に心を通わせていく。だが前線が近づくにつれ、家族の事情と戦争の影がふたりの未来を静かに引き裂いていく。日本語を母語としない書き手が、平易で簡潔な日本語によって戦時下の日常と若い恋の痛みを描き、戦争文学と青春小説を重ねてみせた… 第108回 文學界新人賞
- 284 2009 空に唄う そらにうたう 『空に唄う』は、通夜に現れた死んだはずの女子大生と、新米の坊主が寺で同居を始めるという設定の作品です。死者がいる日常をユーモラスに扱いながら、生者が死や信仰とどう向き合うかを描きます。寺という場所が、現実と非現実、生と死のあわいを支えています。
- 285 2009 水死 すいし 『水死』は、父の死の記憶と「水死小説」の構想をめぐる、大江健三郎晩年の古義人もの長篇です。家族史、戦後史、文学を書くことが複層的に絡み、個人の記憶は国家や天皇制の問題にも接続します。長い息の文体で、作家自身の過去を再検討する作品です。
- 286 2009 ロンバルディア遠景 ろんばるでぃあえんけい 『ロンバルディア遠景』は、遠景という距離の感覚を通して、記憶、場所、言葉の変形を描く諏訪哲史の作品です。現実の土地はそのまま写されるのではなく、語りの中でずれ、遠ざかり、別の像になります。『りすん』同様、言葉そのものが主題化される実験的な小説として読めます。
- 287 2009 永遠のかけら えいえんのかけら 『永遠のかけら』は、失われた時間や記憶の断片を、恋愛や人間関係の揺れと重ねて読むことのできる高瀬ちひろの小説です。題名の「かけら」は、完全な永遠ではなく、人物の手元に残る小さな感情の痕跡を思わせます。公開資料で内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲に絞って紹介します。
- 288 2009 霊降ろし れいおろし 『霊降ろし』は、死者や見えないものの気配を通じて、生者の記憶と喪失を描く田山朔美の小説です。霊的な題材は怪異そのものよりも、残された人が過去とどう向き合うかという問題に結びつきます。静かな不穏さのなかで、家族や信仰に近い感覚をたどる作品として整理できます。
- 289 2009 終の住処 ついのすみか 『終の住処』は、妻が突然口をきかなくなる朝から始まり、ある夫婦の二十年を描く磯﨑憲一郎の小説です。大きな事件よりも、時間の経過そのものが関係を変えていく様子に重心があります。淡々とした語りの背後で、夫婦、家、老い、記憶の問題が静かに積み重なります。 第141回 芥川賞
- 290 2009 金魚生活 きんぎょせいかつ 『金魚生活』は、楊逸が日本語で描く生活の細部を通して、移動する人びとの感覚や家族の距離をすくう小説です。金魚という題名は、限られた水槽のなかで動く存在のように、環境に制約されながら生きる人物像を思わせます。異文化の間で暮らす日常のささやかな揺れが読みどころです。
- 291 2009 流跡 りゅうせき 『流跡』は、朝吹真理子のデビュー作です。闇夜の川を進む舟頭、雨あがりを家へ向かう会社員、波止場で船を待つ女など、人物や場面が水の流れのように変化しながら連なります。筋の明快さよりも、言葉が残す跡、身体や性差の輪郭がほどける感覚、時間がたまりとして残る手ざわりを読む作品です。 第20回 ドゥマゴ文学賞
- 292 2009 かれん かれん 既存収録の『あなたがほしい』『おはなしの日』に続く、2000年代後半の単行本候補。
- 293 2009 恋の蛍 山崎富栄と太宰治 こいのほたる やまざきとみえとだざいおさむ 『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』は、山崎富栄を「太宰治の最後の相手」という一面的な像から救い出し、職業婦人としての歩み、家族史、戦時下の生活、太宰との関係を重ねて描く評伝小説です。スキャンダルとして語られてきた玉川上水心中を、富栄側の生の厚みから読み直す作品です。
- 294 2009 甘苦上海 『甘苦上海』は、高樹のぶ子が2009年に日本経済新聞出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 295 2009 あなたと共に逝きましょう 『あなたと共に逝きましょう』は、村田喜代子が2009年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 296 2009 ドンナ・マサヨの悪魔 『ドンナ・マサヨの悪魔』は、村田喜代子が2009年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 297 2008 やさしいため息 やさしいためいき 『やさしいため息』は、芥川賞受賞後第一作として発表され、日常のなかで揺れる若い人物の息づかいを静かに描く作品です。家族や生活の小さな変化が、はっきりした事件よりも大きく人物の感情を動かします。青山七恵らしい簡潔な文体が、孤独と自立のあいだの時間をすくい取ります。
- 298 2008 声を聴かせて こえをきかせて 『声を聴かせて』は、声を聞くこと、聞かれないことを通して、他者との距離を描く朝比奈あすかの作品です。親しい関係であっても届かない言葉があり、そのもどかしさが人物の孤独を形づくります。題名通り、声と言葉が関係をつなぐ細い線として働きます。
- 299 2008 僕の好きな人が、よく眠れますように ぼくのすきなひとが、よくねむれますように 『僕の好きな人が、よく眠れますように』は、好きな人の眠りを願うという柔らかな感情から、恋愛と不安を描く中村航の小説です。眠ることは身体の平穏であり、相手を思う距離の象徴でもあります。若い恋愛のまぶしさと、相手に触れきれない切なさを併せ持つ作品です。
- 300 2008 星空の下のひなた。 ほしぞらのしたのひなた 『星空の下のひなた。』は、星空とひなたという対照的なイメージを重ね、若い人物の恋愛や孤独を描く作品として整理できます。明るさと暗さが同じ場面に同居し、日常のなかで見落とされがちな感情をすくいます。書誌以外の資料は少なく、今後は紹介記事・書評で精度を上げたい作品です。
- 301 2008 星のしるし ほしのしるし 『星のしるし』は、日常の風景のなかに残る小さな兆しを、柴崎友香らしい観察で描く作品です。星という遠いもののイメージが、都市の生活や人との距離に静かな奥行きを与えます。歩くような文体で、恋愛や記憶が大きな劇ではなく生活のなかに滲みます。
- 302 2008 彼女について かのじょについて 『彼女について』は、ひとりの女性をめぐる記憶と語りから、失われたものや届かなかった感情をたどる作品です。よしもとばなならしい透明感のある文体で、死や喪失の気配をやわらかく包みます。誰かについて語ることが、自分自身を語り直すことにもなる小説です。
- 303 2008 花束 はなたば 『花束』は、贈り物としての花束が持つ親密さと儀礼性を手がかりに、人と人の関係を描く作品です。美しいものを差し出す行為の裏に、言えなかった感情や生活の痛みが潜みます。静かな語りのなかで、家族や恋愛の距離が少しずつ見えてきます。
- 304 2008 イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集 いぎりすかいがん いーはとーう たんぺんしゅう 『イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集』は、宮沢賢治のイーハトーヴを思わせる場所の記憶や文学的想像力を、短篇のかたちでたどる作品集です。実在の土地と架空の地名が重なり、読むこと、訪ねること、思い出すことがひとつにつながります。静かな幻想性と地方の手触りが読みどころです。
- 305 2008 金色のゆりかご きんいろのゆりかご 『金色のゆりかご』は、ゆりかごのイメージが示す家族や子どもの時間を、現実の生活のなかで見つめる作品です。佐川光晴らしい社会への視線が、保護されるべき場所とそこから漏れる不安を描きます。家族の温かさと脆さを同時に読む小説として整理できます。
- 306 2008 蟋蟀 こおろぎ 『蟋蟀』は、虫の声や小さな気配を思わせる題名のもと、日常の奥に潜む不安や孤独を描く栗田有起の作品です。目立たないものに耳を澄ませるような語りが、家や都市の生活を少し奇妙なものに変えます。静かな現実感と寓話性の境目を読む小説です。
- 307 2008 マイクロバス マイクロバス 『マイクロバス』は、移動する小さな乗り物を通して、地方の場所や人々の距離を描く小野正嗣の作品です。バスという共有空間は、共同体に属することと、そこから外れることの両方を見せます。静かな語りのなかで、土地の記憶と孤独がゆっくり浮かび上がります。
- 308 2008 長い終わりが始まる ながいおわりがはじまる 『長い終わりが始まる』は、終わりが一瞬ではなく長く続いていく感覚を、恋愛や生活の変化に重ねる作品です。山崎ナオコーラらしい平明な語りが、別れや変化を大げさにせず日常の速度で見せます。終わりを迎えるまでの時間そのものを読む小説です。
- 309 2008 ありったけの話 ありったけのはなし 『ありったけの話』は、話すこと、語り尽くそうとすることを通して、人と人の関係を描く作品です。題名の通り、言葉を差し出すことが親密さの表現である一方、語っても残る距離も浮かび上がります。中山智幸の作品として、会話と記憶の密度を読む一冊です。
- 310 2008 波打ち際の蛍 なみうちぎわのほたる 『波打ち際の蛍』は、傷を抱えた人物が、波打ち際のように揺れる場所で他者との距離を測り直す島本理生の作品です。蛍の光のようなかすかな希望と、身体に残る痛みが同時に描かれます。恋愛や回復を単純に美化せず、触れ合うことの怖さまで含めて読ませます。
- 311 2008 主題歌 しゅだいか 『主題歌』は、都市で暮らす人物たちの時間や感情を、音楽のように反復する記憶と結びつけて描く柴崎友香の作品です。大きな事件よりも、会話、移動、見えた風景の差異が人物の心の変化を形づくります。語りは静かですが、誰かの人生に流れている旋律を探すような読み味があります。
- 312 2008 サウスポイント サウスポイント 『サウスポイント』は、よしもとばななが南の島の気配や移動の感覚を通じて、恋愛と家族の記憶を描く長篇です。明るい場所に向かう題名とは裏腹に、人物の内側には喪失や過去の影が残ります。土地の光や空気を、心の回復の過程と重ねて読む作品です。
- 313 2008 ポトスライムの舟 ぽとすらいむのふね 『ポトスライムの舟』は、工場で働きながら生活費を切り詰めるナガセを主人公にした中篇です。世界一周クルーズの費用が自分の年収とほぼ同じだと知ったナガセは、その金額を一年で貯めようとします。非正規労働、家計の細さ、友人や母との関係、ポトスライムを育てる日々が重なり、生活を続けることの苦しさと粘りが描かれ… 第140回 芥川賞
- 314 2008 イラコ岬 いらこみさき 『イラコ岬』は、「すばる」2008年6月号に掲載された茅野裕城子の小説です。NDLサーチとCiNii Researchで掲載誌とページ範囲を確認できます。公開Webで詳細な梗概は確認できないため、内容紹介は書誌情報に限定します。
- 315 2008 うまくいかないのが恋 『うまくいかないのが恋』は、高樹のぶ子が2008年に幻冬舎から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 316 2007 ひとり日和 ひとりびより 『ひとり日和』は、二十歳の知寿が高齢の遠縁・吟子さんと同居し、働きながら自立の感覚を少しずつ探る作品です。老いと若さ、家族ではない同居、ひとりでいることの自由と寂しさが、淡々とした語りで描かれます。大きな成長物語ではなく、日々の観察から生活の輪郭が変わるところが読みどころです。 第136回 芥川賞
- 317 2007 クローバー くろーばー 『クローバー』は、島本理生らしく、恋愛や記憶の細部から若い人物の揺れを描く作品です。幸運を連想させる題名に対して、語りは関係の不安定さや選び取れない気持ちにも目を向けます。淡い感情を、日常の光景のなかで少しずつ変化させる読み味があります。
- 318 2007 肝心の子供 かんじんのこども 出家して悟りを開く前のブッダ、その息子のラーフラ、さらにその子へ——インドを舞台に親子三代の生をたどる。偉人の伝記ではなく、川の流れや樹木、身体の感覚といった即物的な描写を長い呼吸の文体で積み重ね、人の一生を超えて流れる時間そのものを小説に写し取ろうとする。商社マンとして働きながら書かれた42歳の遅… 第44回 文藝賞
- 319 2007 島の夜 しまのよる 『島の夜』は、島という隔てられた場所と夜の時間を背景に、孤独や記憶の濃度を描く作品として整理できます。閉じた地理は、人間関係を近づける一方で、逃げ場のなさも作ります。静かな語りのなかに、不安と親密さが同時に漂う読み味があります。
- 320 2007 舞い落ちる村 まいおちるむら 生まれ育った女系の村では、時間の進み方や年齢の重ね方が定まらず、ものの数も曖昧で、人々は個々の名前すらめったに持たない。「わたし」はその「言葉を信じない」村のあり方に違和感を抱き、村と大学のある街とを行き来するうち、言葉を信じ言葉で武装した人物に強く惹かれていく。土俗的な幻想と言語への意識を重ね合わ… 第104回 文學界新人賞
- 321 2007 また会う日まで またあうひまで 『また会う日まで』は、再会と別れをめぐる時間の感覚を、柴崎友香らしい日常の観察で描く作品です。人と人が会う場所、離れる場所、そのあいだに流れる記憶が物語の中心になります。関西の街を歩くような語りが、恋愛や孤独を過度に劇化せずに映し出します。
- 322 2007 バイバイ ばいばい 『バイバイ』は、別れを告げる言葉の軽さと重さを、恋愛や生活の終わりの感覚に重ねる作品です。望月あんねの作品として、人物が関係を断ち切るときに残る記憶や孤独に焦点を置いて読めます。大きな事件よりも、去ることと残されることの温度差が読みどころになります。
- 323 2007 父のグッド・バイ ちちのぐっどばい 『父のグッド・バイ』は、井岡道子が2007年に刊行した作品です。Books出版書誌データベースの内容紹介では、癌を宣告された父を看取るまでの四か月間を、故郷・宇和島の風光とともに描いた一編とされています。家族の別れ、看取り、故郷の記憶を結びつける作品として登録します。
- 324 2007 道元禅師 どうげんぜんじ 『道元禅師』は、立松和平が曹洞宗の祖・道元を題材に書いた長篇小説です。東京書籍版は上巻『大宋国の空』・下巻『永平寺への道』として2007年に刊行され、2010年には新潮文庫で上・中・下巻に分かれて刊行されました。『遠雷』で見える農村と土地の作家像に加え、仏教者の歩みと思想へ向かった立松和平の晩年の大…
- 325 2007 おのごろじま 『おのごろじま』は、詩人としても活動する日和聡子の小説作品です。古事記的な響きを帯びる題名のもと、島、土地、生成、記憶の感触を、散文と詩の境界に近い文体で立ち上げます。物語の筋よりも、言葉の音楽性と神話的なイメージが前景化する作品です。
- 326 2007 海辺の博覧会 うみべのはくらんかい 既存収録の『青春デンデケデケデケ』『雨鶏』と重複しない、ポプラ社刊の単行本。
- 327 2007 カワセミの森で かわせみのもりで 理論社版を初出単行本として追加候補にする。再刊情報もNDLで追跡可能。
- 328 2006 エスケイプ/アブセント えすけいぷ/あぶせんと 『エスケイプ/アブセント』は、逃避と不在という二つの言葉を軸に、関係のなかで空白を抱える人物を描く作品です。絲山秋子らしい簡潔な文体が、説明しすぎないまま感情の距離を保ちます。逃げること、いないこと、忘れられないことが重なり合う静かな読後感があります。
- 329 2006 風化する女 ふうかするおんな 突然死んだ会社の先輩れい子には、職場で見せていたのとは別の顔があった。「私」はその謎をたどって東京から地方へと旅をし、死んだ女の生の痕跡に自分を重ねていく。日々がたえず「風化」していく都会の生活感覚を背景に、死者をなぞることでしか確かめられない自分の輪郭を、抑制された筆致で描いたデビュー作。 第102回 文學界新人賞
- 330 2006 銀色の翼 ぎんいろのつばさ 『銀色の翼』は、生活の現場にいる人々の視線から、家族、労働、社会的な孤立を描く佐川光晴の小説です。派手な事件よりも、日々の選択や関係のほころびを通して人物を立ち上げるタイプの作品として位置づけられます。現実に踏みとどまる語りが、傷や希望を過度に美化しない点が読みどころです。
- 331 2006 ヘンリエッタ へんりえった みーさん、あきえさん、そして「わたし」。女3人は「ヘンリエッタ」に守られながら、ちょっと奇妙な共同生活を送っている。血縁とも友情ともつかない女たちの暮らしのディテールを、幼さの残るまっすぐな言葉でつづり、閉じた生活圏のやわらかさと危うさを同時に感じさせる。高校在学中の17歳が書いたデビュー作として注… 第43回 文藝賞
- 332 2006 イルカ イルカ 『イルカ』は、よしもとばななの小説らしく、親密な関係と心身の変化をやわらかな語りで扱う作品です。題名が示す水辺のイメージは、閉じた日常から別の感覚へ移るための入口として働きます。喪失や不安を強く断定せず、ゆるやかな回復の気配を読む作品として位置づけられます。
- 333 2006 幻をなぐる まぼろしをなぐる 失恋の痛手を抱えた女性が、相手を忘れるために身体を鍛え、欲望と妄執を抱え込んでいく。集英社側の紹介では、痛みをただ感傷として描くのではなく、生々しさとピュアさをあわせ持つ「現代の失恋」の物語として打ち出されている。恋愛の喪失を身体の運動や執着の問題として描く点に読みどころがある、第30回すばる文学賞… 第30回 すばる文学賞
- 334 2006 愛の島 あいのしま 『愛の島』は、島という閉じた場所を背景に、愛や孤独をめぐる関係の揺れを描く作品として整理できます。遠く離れた場所である島は、人物の逃避先であると同時に、自分の感情と向き合う場にもなります。書誌情報以外の詳細資料はまだ少ないため、今後の批評・紹介資料で精度を上げたい作品です。
- 335 2006 森のはずれで もりのはずれで 『森のはずれで』は、共同体の中心ではなく「はずれ」に立つ人物の感覚を、小野正嗣らしい静かな語りで描く作品です。森や周縁の場所は、記憶、土地、言葉の違いを考えるための舞台になります。中心から外れた場所で人がどう他者と出会うかを読む作品として位置づけられます。
- 336 2006 沖で待つ おきでまつ 『沖で待つ』は、同期入社の男女の友情と、死後に残された約束をめぐる作品です。恋愛に回収されない親密さを、職場の記憶と喪失の感覚を通して描きます。絲山秋子の簡潔で乾いた語りが、死者との距離を過度に sentimental にせず保つところが読みどころです。 第134回 芥川賞
- 337 2006 ポータブル・パレード ぽーたぶる・ぱれーど 第38回新潮新人賞の小説部門受賞作として、『新潮』2006年11月号に掲載された作品。NDLサーチでは「小説部門受賞作」としての雑誌掲載情報を確認できるが、出版社公式の単行本紹介や内容紹介は今回確認できなかった。内容細部は公開情報が少ないため、現時点では受賞・掲載情報を中心にした暫定紹介にとどめる。 第38回 新潮新人賞
- 338 2006 その街の今は そのまちのいまは 『その街の今は』は、カフェで働く歌ちゃんが古い写真に写る大阪に惹かれ、街の過去と現在を行き来する作品です。写真という媒体が、個人の記憶だけでなく都市の時間をたどる装置になります。柴崎友香らしい歩くような文体で、街を見ることと自分の現在を確かめることが重なります。
- 339 2006 裏庭の穴 うらにわのあな 主婦の朝子は、幼い頃に母親が裏庭に何かを埋めるのを目撃したという記憶を、大人になっても抱え続けている。掘り返されないまま家族の足元に空いた「穴」のような記憶を軸に、平穏に見える家庭の日常の底に沈む鬱屈と、母と娘のあいだのほどけない結び目を描く。受賞作は2009年刊の作品集『霊降ろし』(文藝春秋)に収… 第103回 文學界新人賞
- 340 2006 夕子ちゃんの近道 ゆうこちゃんのちかみち 『夕子ちゃんの近道』は、商店街の人々をめぐる連作短篇集として、日常の小さな移動や出会いを描く作品です。大きな事件よりも、店、道、会話の連なりから人物の距離が変わる様子を見せます。長嶋有らしいユーモラスで少しずれた観察が、生活のなかの寂しさを軽く照らします。
- 341 2006 掘るひと ホル ヒト 2000年代の小説作品として、既収録『雨のち雨?』以後の展開を補う候補。
- 342 2006 残光 ざんこう NDLサーチで「新潮」2006年2月号掲載書誌、2006年5月刊の新潮社版単行本、水声社『小島信夫長篇集成』収録を確認できる。
- 343 2006 海洞 : アフンルパロの物語 かいどう あふんるぱろのものがたり 『海洞 : アフンルパロの物語』は、三浦清宏が2006年に文藝春秋から刊行した長篇小説です。NDLサーチでは、文藝春秋2006年9月刊、604ページ、ISBN 4-16-325230-4の単行本として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出誌は確認できなかったため、紹介は書誌情報を中心に整…
- 344 2006 せつないカモメたち 『せつないカモメたち』は、高樹のぶ子が2006年に朝日新聞社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 345 2006 鯉浄土 『鯉浄土』は、村田喜代子が2006年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 346 2005 BGM びーじーえむ 現役教師として文藝賞を受賞した岡田智彦の、受賞後第一作として発表された作品。題名の「BGM」は、人物の感情を大きな事件で説明するのではなく、日常の背後で鳴り続ける気配として捉える読みを誘う。若い感覚と学校・生活の現場が交差する、2000年代文藝賞周辺の一作である。
- 347 2005 永遠の誓い えいえんのちかい 佐川光晴の2005年刊行作で、約束や誓いが人間関係を支える一方、重荷にもなる局面を描く作品として整理できる。生活者の視点を離れず、家族や恋愛、働くことの中で、言葉だけでは保てない関係を見つめる。佐川作品らしい、過度に装飾しない文体が読みどころになる。
- 348 2005 一千一秒の日々 いっせんいちびょうのひび 恋愛や日常の短い時間を、きらめくような細部として集めた島本理生の作品集。大きな物語へ急がず、一瞬の表情や会話のずれが、人物の孤独や期待を浮かび上がらせる。若い恋の瑞々しさと、時間が過ぎていくことへの切なさが題名に重なる。
- 349 2005 まぼろし まぼろし 母娘の確執を描く表題作と、実家に戻った娘の日常を描く「十八階ビジョン」を収める作品集。見えているはずの家族や故郷が、どこか「まぼろし」のように掴めなくなる感覚を、若い女性の視点から描く。日常の薄い不安と、過去から離れきれない心理が静かに重なる。
- 350 2005 窓の灯 まどのひ 大学を辞めた「私」は、時代に取り残されたような喫茶店で働きながら、向かいの部屋の窓の中を覗くことを日課にしている。やがて視線は夜の街の散歩で垣間見える家々の窓へと広がり、他人の生活の灯に惹かれる気配がゆるやかに濃くなっていく。覗くことのうしろめたさと官能を、抑制の効いた一人称で描く第42回文藝賞受賞… 第42回 文藝賞
- 351 2005 みずうみ みずうみ 母を亡くした女性と、過去に深い傷を抱えた青年の恋を描く長編。湖の静けさは、癒やしの場所であると同時に、人物が抱える記憶の暗さを映す場所にもなる。吉本ばななの柔らかな語りが、トラウマと恋愛を過剰に説明しすぎず、余韻として残す。
- 352 2005 泣かない女はいない なかないおんなはいない 泣かない、あるいは泣けない女性の姿を、恋愛や仕事の日常の中から描く長嶋有の中篇。感情を大きく説明せず、会話や行動の端に表れる違和感で、人物の孤独を浮かび上がらせる。ユーモラスな題名の裏に、強がりと弱さが同時にある作品である。
- 353 2005 ナラタージュ ならたーじゅ かつての恩師への思いを断ち切れない女子大生が、過去の記憶と現在の恋の間で揺れる長篇。恋愛の美しさよりも、戻れない時間に縛られる痛みが中心に置かれている。語りは静かだが、人物の未練や罪悪感が長く尾を引き、島本理生の代表的な恋愛小説として読まれてきた。
- 354 2005 踊るナマズ おどるなまず ナマズにまつわる伝説が息づく土地で、幼い二人の恋心と民話的な想像力が交差する恋愛奇談。弥生が過去の記憶を語り直す構成を通じて、土地に残る言い伝えと性、生命の連なりが重ねられる。現実の成長譚を土俗的なイメージへ開いていくところに、すばる文学賞受賞作らしい新鮮さがある。 第29回 すばる文学賞
- 355 2005 オテルモル おてるもる 『オテルモル』は、奇妙なホテルをめぐる幻想的な設定を手がかりに、旅先で宙づりになる感覚や、日常から少し外れた場所にいる人の孤独を描く作品です。栗田有起らしい軽やかな導入の奥に、記憶や帰属の揺らぎが潜む読み味があります。舞台の閉じた空間が、登場人物の不安と期待を増幅する点が読みどころです。
- 356 2005 スモールトーク すもーるとーく 『スモールトーク』は、六台の車をめぐる連作として、移動、修復、喪失の感覚を描く作品です。車という具体物が、登場人物の距離感や回復の速度を測る装置になっています。絲山秋子らしい抑制された会話と乾いた文体が、傷ついた人々のささやかな再出発を浮かび上がらせます。
- 357 2005 東京奇譚集 とうきょうきたんしゅう 『東京奇譚集』は、「偶然の旅人」などを収め、都市の日常にふと入り込む不可思議な出来事を描く短編集です。村上春樹の抑制された語りが、偶然、喪失、記憶のずれを静かに増幅します。東京という現実的な地名を持ちながら、物語は現実の向こう側に開く寓話性を帯びています。
- 358 2005 ミーナの行進 みーなのこうしん NDLサーチで2006年4月刊の中央公論新社版単行本と2009年中公文庫版を確認できる。谷崎潤一郎賞公式一覧で第42回受賞作として確認できる。 第42回 谷崎賞
- 359 2005 環流 かんりゅう NDLサーチで2005年8月刊、講談社、ISBN 4-06-213054-8の単行本として確認できる。
- 360 2004 アフターダーク あふたーだーく 深夜0時過ぎから夜明けまでの東京を舞台に、ファミリーレストラン、ホテル、オフィス、眠り続ける部屋がゆるく接続される。視点はカメラのように人物の間を移動し、姉妹、孤独な青年、暴力の痕跡を、夜の都市の断片として映し出す。長大な物語ではなく、時間を区切った構成と映像的な語りで、村上春樹作品の都市感覚を凝縮…
- 361 2004 袋小路の男 ふくろこうじのおとこ 何も与えない男に、三年間片思いし続ける女の静かな恋愛小説。恋が進展しないこと、相手が応えないことを、単純な不幸ではなく、関係が袋小路のまま続いていく時間として描く。大きな事件を抑えた文体の中に、絲山秋子らしい乾いた痛みと可笑しさが残る。 第30回 川端賞
- 362 2004 灰色の瞳 はいいろのひとみ 佐川光晴の2004年刊行作で、NDLには第一部・第二部として雑誌掲載記事が確認できる。人間関係や家族の記憶を、明るく割り切れない「灰色」の領域として見つめる作品として整理できる。佐川作品に通底する、生活の手触りと関係の痛みを追う読みに向いている。
- 363 2004 初子さん はつこさん あんパンとクリームパンしか売らないパン屋の二階で、ひたすらミシンを踏む洋裁職人の初子さん。一枚の布が誰かの身体を待つ服になることに魅せられて職人になったものの、夢を叶えた先に広がるのは単調な日々だった。京都の田舎町のよどんだ空気と、そこで生きる女性の手仕事の時間を、とぼけたユーモアと正確な観察で描く… 第99回 文學界新人賞
- 364 2004 High and dry(はつ恋) ハイ・アンド・ドライ(はつこい) 14歳の少女・夕子の、年上の男性への初恋を描く長編。年齢差のある関係を、危うさよりも、少女の感覚が外界へ開かれていく時間として追っていく。吉本ばななの作品らしく、恋の痛みと透明な夢見心地が同じ調子で語られる。
- 365 2004 人のセックスを笑うな ひとのせっくすをわらうな 美術専門学校に通う19歳の「オレ」は、20歳年上の講師・ユリと恋に落ちる。年の差も、ユリに夫がいることも、ふたりの関係のゆるさを変えはしないが、恋はやがて静かに終わっていく。性愛を声高に語らず、軽くやわらかい口語の文体で、若さの側から見た年上の女性のかわいさと残酷さをすくいとる。タイトルの挑発性と中… 第41回 文藝賞
- 366 2004 パラレル ぱられる 長嶋有の2004年刊行作で、複数の関係や時間が「パラレル」に並んでいく感覚をもつ長編。日常の会話やちょっとしたすれ違いを淡々と積み重ね、劇的な和解よりも、近くにいるのに重なりきらない人間関係を描く。脱力したユーモアの中に、現代的な孤独がにじむ。
- 367 2004 ショートカット ショートカット 柴崎友香が、都市の移動や人との距離を軽いタッチで描いた2004年刊行作。道を短く抜ける「ショートカット」の感覚は、場所だけでなく、関係や記憶へ近道を探す若い人物たちの姿にも重なる。淡い会話と細部の観察によって、日常の中にある変化の瞬間をすくう。
- 368 2004 タイムカプセル たいむかぷせる 過去にしまいこんだ感情や記憶を、現在の自分が開け直すようにたどる作品。若い人物の時間感覚を、懐かしさだけでなく、未来へ残してしまったものへの不安として描く。生田紗代のデビュー後の文脈では、青春の明るさと居場所のなさを同時に読む入口になる。
- 369 2004 生まれる森 うまれるもり 恋愛や喪失のあとに残る空白を、森というイメージに重ねて描く島本理生の初期長篇。人物の内面は激しく揺れながらも、語り口は抑制され、痛みが静かな風景の中に置かれる。青春小説の瑞々しさと、取り返しのつかない記憶を抱える重さが同居している。
- 370 2004 海のふた うみのふた 故郷の海辺の町でかき氷屋を始めた女性のひと夏を描く長編。海、店、訪れる人々とのやりとりを通じて、傷ついた心が生活の手触りを取り戻していく。吉本ばなならしいやさしい幻想味が、地方の小さな商いと再生の感覚に結びついている。
- 371 2004 海の仙人 うみのせんにん 海辺で暮らす人物の孤独に、現実から少しずれた存在や関係が入り込んでくる絲山秋子の長篇。日常的な会話の軽さと、死や喪失の気配が同じ平面に置かれ、海辺の時間が寓話のように広がる。恋愛小説でも幻想小説でもあるが、どちらにも収まりきらない余白が読みどころになる。
- 372 2004 西安の柘榴 セイアン ノ ザクロ 『韓素音の月』以後の中国・越境モチーフに連なる単行本候補。集英社刊、192ページ。
- 373 2004 鉄塔家族 テットウ カゾク 2004年に日本経済新聞社から刊行された単著図書。佐伯一麦の家族・土地をめぐる作品として追加候補になる。
- 374 2004 月の川を渡る 『月の川を渡る』は、中村邦生の小説集です。NDLサーチでは2004年6月に作品社から刊行された266ページの図書、NDC9 913.6として確認できます。収録作は「ドッグ・ウォーカー」「月の川を渡る」「夜に誘われて」です。
- 375 2004 百年佳約 『百年佳約』は、村田喜代子が2004年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 376 2003 デッドエンドの思い出 デッドエンドのおもいで 失恋や裏切りからの小さな回復を描く五篇の短篇集。傷ついた人物が、行き止まりに見える場所から少しずつ生活を取り戻す過程を、吉本ばなならしいやわらかい語りで描く。大きな救済ではなく、日常の中にある小さな光を読む作品集である。
- 377 2003 ハゴロモ ハゴロモ 恋愛や喪失で傷ついた人物が、都会から少し距離を置いた土地で静かに時間を取り戻していく吉本ばななの長篇。水辺や町の気配、記憶の手触りを重ねながら、壊れた心がすぐに治るのではなく、生活のリズムの中でゆっくりほどけていく過程を描く。幻想味を帯びたやわらかな文体が、再生の物語を日常の側に引き寄せている。
- 378 2003 ジャージの二人 じゃーじのふたり 仕事や家庭から少し離れた父と息子が、山の別荘で同じようなジャージを着て夏を過ごす。大きな事件の代わりに、食事、虫、テレビ、会話の間合いといった細部が積み重なり、親子でありながらどこか他人同士でもある二人の距離が浮かび上がる。長嶋有らしい、脱力したユーモアと静かな寂しさが同居する作品。
- 379 2003 夏休み なつやすみ 就職も進路も決まりきらない青年が、夏の時間の中で宙ぶらりんの自分を抱えたまま過ごす。中村航らしい軽い会話と瑞々しい感覚で、何者にもなれない時期の切なさを描く。大きな転機よりも、季節の空気や友人関係の揺れが、青春の停滞と再生の気配を作っている。
- 380 2003 四十日と四十夜のメルヘン よんじゅうにちとよんじゅうやのめるへん チラシ配りをして暮らす「私」が書きつける日記。しかしその日付は素直に進まず、記述は反復と書き換えを繰り返しながら円環構造を描き、日常の風景がいつのまにか変容していく。「書くこと」自体を小説の駆動装置にした構成は、選考会で保坂和志が「これはピンチョンなんだ」と断言して強く推したことで知られる。単行本化… 第35回 新潮新人賞
- 381 2003 おはなしの日 おはなしのひ 『おはなしの日』は、「すばる」2003年12月号に掲載され、2004年9月に集英社から単行本化された安達千夏の小説です。NDLサーチで雑誌初出と単行本書誌、CiNii Researchで関連レコードを確認できます。公開Webで詳細な内容紹介は確認できないため、書誌情報を中心に登録します。
- 382 2003 博士の愛した数式 はかせのあいしたすうしき 『博士の愛した数式』は、事故の後遺症で新しい記憶を80分しか保てない数学者と、彼の家で働く家政婦、その息子の関係を描く長篇です。素数、友愛数、完全数などの数学的な美しさが、他者を思いやる言葉やふるまいと重ねられます。
- 383 2003 海をわたる月 うみをわたるつき 『海をわたる月』は、図子英雄が2003年に創風社出版から刊行した小説です。NDLサーチで、創風社出版刊、ISBN 4-86037-030-9、NDC 913.6の単行本として確認できます。公開Webで信頼できる梗概や初出誌を確認できなかったため、作品内容の説明は書誌情報に限定します。
- 384 2003 罪花 『罪花』は、高樹のぶ子が2003年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 385 2003 ナポリ魔の風 『ナポリ魔の風』は、高樹のぶ子が2003年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 386 2002 アルゼンチンババア アルゼンチンババア 母の死後、「アルゼンチンババア」と呼ばれる女性と暮らし始めた父をめぐる物語。奇妙な人物や場所への戸惑いを通して、家族の喪失を別の関係へ開いていく。吉本ばなならしい、死後の時間をやわらかく生き直す物語。
- 387 2002 リトル・バイ・リトル りとる・ばい・りとる 母の不在と継父との関係に揺れる少女の成長を描く島本理生の初期長編。十代の語り手が、家族への違和感、恋愛以前の孤独、日常の不安を少しずつ言葉にしていく。静かな文体で、傷つきやすい感情の変化を丁寧に追う作品。 第25回 野間新人賞
- 388 2002 にぎやかな湾に背負われた船 にぎやかなわんにせおわれたふね 九州の海辺の集落「浦」を舞台に、土地の人々の記憶と語りを紡ぐ長編。個人の物語が、海辺の共同体、死者、土地の歴史と重なり合う。小野正嗣らしい、声の重なりと土地の記憶を読む作品。 第15回 三島賞
- 389 2002 王国 その1 アンドロメダ・ハイツ おうこく そのいち アンドロメダ・ハイツ 山奥で祖母と暮らした雫石が、都会で占い師の助手となる「王国」シリーズ第一作。自然の記憶、都市での仕事、スピリチュアルな感受性が交差し、傷ついた人が別の居場所を作る過程を描く。吉本ばなならしい癒やしと不思議さが、生活の手ざわりと結びつく。
- 390 2002 リレキショ りれきしょ 過去を捨てた19歳の「僕」は、「姉さん」と名乗る女性に拾われ、「半沢良」という新しい名前と居場所をもらう。深夜のガソリンスタンドでアルバイトをしながら、白紙に「どこへでもいける切符」を持つ自分の履歴書を書いてみる——。何者でもなくなった青年が、淡い人間関係のなかでもう一度自分の輪郭をなぞり直していく… 第39回 文藝賞
- 391 2002 死せる魂の幻想 しせるたましいのげんそう お節介な祖母と二人暮らしで、アパートと大学を往復するだけの真面目な女子大生・千明。女友達はいても恋人はいない彼女の日常に潜む孤独感と、他者との関係への切実な渇望を描く。後半、奇妙な雨宿りの場面で物語は一変し、卑近な日常が途方もない神々しさへと接続される。現役京大生だった22歳の作者によるデビュー作で… 第45回 群像新人賞
- 392 2002 タンノイのエジンバラ たんのいのえじんばら 長嶋有の2002年の作品で、オーディオ機器を思わせる題名が、生活の中の音や記憶への感度を示す。公開情報は限定的だが、日常の小さな違和感や人間関係の距離を、静かでユーモラスな筆致で捉える長嶋作品の系譜に置ける。内容細部は追加確認が必要。
- 393 2002 海辺のカフカ うみべのかふか 15歳の少年・田村カフカと老人ナカタの物語が並行して進む長編。家出、父と子、予言、暴力、異界的な出来事が絡み合い、現実と神話が重なる場所へ読者を導く。村上春樹の長編の中でも、寓話性と物語性が大きく広がった作品である。
- 394 2002 憂い顔の童子 うれいがおのどうじ 大江健三郎の「おかしな二人組」三部作に連なる後期長編。作家・古義人を中心に、家族史、過去の暴力、共同体の記憶が重なり合う。晩年の大江が、自身の文学的記憶と死者との対話を小説化していく流れの中で読む作品である。
- 395 2002 半島 はんとう NDLサーチで「文學界」2002年1月号掲載書誌、2004年7月刊の文藝春秋版単行本、2022年講談社文芸文庫版を確認できる。
- 396 2002 パーク・ライフ ぱーくらいふ 『パーク・ライフ』は、東京の公園を横切る日常の時間を、会話と観察の細部で捉える作品です。大きな事件よりも、見知らぬ他者との距離や、都市のなかでふと生まれる親密さの手前を描くところに特徴があります。 第127回 芥川賞
- 397 2002 エフェソス白恋 『エフェソス白恋』は、高樹のぶ子が2002年に文化出版局から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 398 2002 雲南の妻 『雲南の妻』は、村田喜代子が2002年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 399 2001 水に埋もれる墓 みずにうもれるはか 小野正嗣のデビュー作で、既存データでは朝日新人文学賞受賞作とされる。水や墓のイメージが示すように、土地、記憶、死者との関係をめぐる作品として位置づけられる。後の小野作品に続く、共同体の記憶と語りへの関心の出発点として読みたい。
- 400 2001 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? つぎのまちまで、きみはどんなうたをうたうの 柴崎友香の初期作品で、次の町へ向かう移動の感覚と、若い人々の会話や音楽の気配を描く。大きなドラマではなく、場所が変わるときの心の揺れ、友人関係の距離、都市の日常の質感が中心になる。後の柴崎作品に通じる、移動と観察の文学として読める。
- 401 2001 水の匂い みずのにおい 『水の匂い』は、「文學界」2001年6月号に掲載された羽根田康美の小説です。NDLサーチとCiNii Researchで掲載誌とページ範囲を確認できます。公開Webで詳細な内容紹介は確認できないため、主題分類は題名と掲載媒体からの暫定整理です。
- 402 2001 世界の中心で、愛をさけぶ せかいのちゅうしんであいをさけぶ 『世界の中心で、愛をさけぶ』は、地方都市の高校生・朔太郎とアキの恋を、アキの死から始まる喪失感と回想によって描く恋愛長篇です。Books出版書誌データベースの内容紹介では、出会い、放課後のデート、無人島への旅、発病と入院、空港での死、十数年後の再訪までが、魂の再生の物語として整理されています。
- 403 2001 センセイの鞄 せんせいのかばん 『センセイの鞄』は、元教師と元教え子の再会から始まる恋愛小説です。居酒屋でのやりとり、季節の食べ物、散歩や旅の場面を積み重ねながら、二人の距離が急がずに変化していきます。川上弘美らしい淡いユーモアと寂しさが同居する代表作です。 第37回 谷崎賞
- 404 2001 アイリーン 『アイリーン』は、篠原一の小説単行本です。NDLサーチでは2001年9月に作品社から刊行された141ページの図書、NDC9 913.6として確認できます。出版書誌データベースでも、ISBN 9784878934278、B6判、141ページ、2001年9月刊行の書誌が確認できます。
- 405 2001 場所 ばしょ 『場所』は、瀬戸内寂聴が八十歳を前に、父母の故郷、出奔の記憶が残る名古屋駅、作家としての出発点となった三鷹下連雀、長年の出家願望を成就させた本郷壱岐坂など、自身の人生を形づくった土地を訪ね直す私小説です。新潮社公式では、過去への旅が結実した作品として紹介され、第54回野間文芸賞受賞作であることを確認… 第54回 野間文芸賞
- 406 2001 妖しい風景 『妖しい風景』は、高樹のぶ子が2001年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 407 2001 人が見たら蛙に化れ 『人が見たら蛙に化れ』は、村田喜代子が2001年に朝日新聞社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 408 2000 ひな菊の人生 ひなぎくのじんせい 吉本ばななが2000年に刊行した作品で、ロッキング・オン版と後年の幻冬舎版の書誌が確認できる。公開情報は限定的だが、タイトルの柔らかさとは裏腹に、人生の記憶や痛みをすくい上げる吉本作品の系譜に置ける。現段階では内容細部の確認を次回課題として残す。
- 409 2000 神の子どもたちはみな踊る かみのこどもたちはみなおどる 阪神・淡路大震災後の空気を背景にした六篇の連作短編集。大きな災害を直接描き尽くすのではなく、喪失や不安を抱えた人々の生活に、寓話や偶然の形で揺れを響かせる。「かえるくん、東京を救う」など、現実と幻想の境目を軽やかに越える短篇が含まれる。
- 410 2000 体は全部知っている からだはぜんぶしっている 身体の記憶をモチーフにした吉本ばななの掌篇集。心では整理できない痛みや違和感が、身体の感覚として先に反応する瞬間をすくう。短い形式の中で、病、恋愛、喪失、生活の手ざわりを静かに重ねる。
- 411 2000 きょうのできごと きょうのできごと 京都で開かれた引っ越し祝いの飲み会に集まった若者たちの一夜を、複数の視点から描く柴崎友香のデビュー作。大きな事件よりも、会話、部屋の空気、街への移動が作る微細なずれを積み重ねる。日常の時間をそのまま文学の中心に置く、後の柴崎作品へつながる出発点。
- 412 2000 肉触 にくしょく 『肉触』は、第37回文藝賞優秀作として『文藝』2000年冬季号に掲載され、2001年1月に河出書房新社から単行本化された佐藤智加の作品です。河出書房新社公式ページでは、精神と肉体をめぐる冒頭の問い、姉の追憶に支えられた詩的な内面世界の崩壊、17歳の高校生による早熟な表現が紹介されています。物語の細部…
- 413 2000 取り替え子(チェンジリング) とりかえこ 義兄・吾良の自死をきっかけに、作家・古義人が過去の謎をたどる長編。録音された声や記憶を通して死者と対話し、家族史、映画、芸術、自己の来歴が絡み合う。大江後期の「おかしな二人組」三部作へつながる、喪失と再生の作品。
- 414 2000 雨のち雨? あめのちあめ 『雨のち雨?』は、岩阪恵子が第26回川端康成文学賞を受賞した短篇です。NDLサーチでは『新潮』2000年6月号掲載の受賞作記事として確認でき、同年6月には新潮社から単行本『雨のち雨?』が刊行されています。公開Webで詳細な梗概は確認できなかったため、作品説明は初出・刊行・受賞情報を中心に整理していま… 第26回 川端賞
- 415 2000 熊の敷石 くまのしきいし 『熊の敷石』は、旅先の記憶や友人との対話を通じて、遠く離れた土地と言葉の感触を細やかに描く作品です。堀江敏幸らしい抑制された文体で、出来事の輪郭よりも記憶の手触りや時間の層が前面に出ます。 第124回 芥川賞
- 416 2000 聖水 せいすい 『聖水』は、長崎の宗教的・歴史的な記憶を背景に、人の生と死、土地に残る記憶を静かに掘り下げる作品です。既収録の「ジェロニモの十字架」と同じ単行本に収められ、青来有一の初期作品世界を代表する一篇です。 第124回 芥川賞
- 417 2000 猫の喪中 ネコ ノ モチュウ 2000年に集英社から刊行された佐藤洋二郎の単著図書。NDL、Books/JPRO、Amazonで書誌を確認した。
- 418 2000 夜のヴィーナス 『夜のヴィーナス』は、村田喜代子が2000年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 419 1999 ハードボイルド/ハードラック ハードボイルド/ハードラック 「ハードボイルド」と「ハードラック」の二篇を収める短編集です。死んだ女友だち、入院中の姉という喪失の影を起点にしながら、残された人の心が少しずつ動き出す時間を描きます。よしもとばなならしい静かな語りで、痛みと回復が同じ場面の中に置かれるところが読みどころです。
- 420 1999 蔭の棲みか かげのすみか 『蔭の棲みか』は、大阪の在日朝鮮人集落を舞台に、最古参の住人ソバンの人生と共同体の日常を描く作品です。戦争で手首を失ったソバンの記憶、家族と集落の関係、事件の気配が重なり、個人史と地域史が交差します。在日文学の系譜に連なりつつ、生活の場の細部から重い歴史を立ち上げる点が読みどころです。 第122回 芥川賞
- 421 1999 クレア、冬の音 くれあ、ふゆのおと 外国人花嫁を迎えた家庭をめぐる物語として紹介されている新潮新人賞受賞作です。家族の内側に入ってくる異文化の存在を通じて、家庭、言葉、距離の問題を扱う作品と読めます。公開資料で詳細な梗概や選評本文は確認できないため、現時点では受賞・掲載・単行本情報を中心に扱います。 第31回 新潮新人賞
- 422 1999 ワニを抱く夜 : 作品集 『ワニを抱く夜 : 作品集』は、村田喜代子が1999年に葦書房から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 423 1999 X電車にのって : 作品集 『X電車にのって : 作品集』は、村田喜代子が1999年に葦書房から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 424 1998 大陸游民 タイリク ユウミン 既収録の『韓素音の月』と同じ集英社刊の単行本で、著者の中国・越境テーマを補える候補。
- 425 1998 げつようびのこども げつようびのこども 『げつようびのこども』は、1998年3月に集英社から刊行された広谷鏡子の単行本です。NDLサーチで単行本書誌を確認できます。今回確認できた公開情報は書誌に限られるため、内容面の説明は控えめに登録します。
- 426 1998 おぱらばん おぱらばん 『おぱらばん』は、フランス郊外に暮らす「私」の視線を通して、忘れられた文学、移民の言葉、郊外の人々をゆるやかに結びつける15篇の小説集です。新潮社公式の文庫版紹介では、表題作が中国移民の言い回しを通じて卓球名人の肖像を描く作品として案内されている。エッセイと小説の境界を横断し、言葉のずれや記憶の手触… 第12回 三島賞
- 427 1998 望潮 もちしお 『望潮』は、潮の満ち引きに呼応するように、老年期の女性の意識と記憶が揺れ動く短篇です。海辺の時間感覚と身体の衰えが重なり、現実の風景の中に幻視的な層が立ち上がります。村田喜代子らしい土地の感覚と、老いをめぐる静かな緊張が読みどころです。 第25回 川端賞
- 428 1998 岬の蛍 みさきのほたる 『岬の蛍』は、佐藤洋二郎が1998年に集英社から刊行した作品集です。出版書誌データベースの内容紹介では、墓の移設工事の音をきっかけに老婆の封印された過去が甦る表題作を軸に、男と女たちが積み重ねた歳月を映す作品集として紹介されています。NDLサーチでは集英社1998年7月刊の図書書誌を確認できます。 第49回 芸術選奨新人賞
- 429 1998 イスタンブールの闇 『イスタンブールの闇』は、高樹のぶ子が1998年に中央公論社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 430 1998 龍秘御天歌 『龍秘御天歌』は、村田喜代子が1998年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 431 1997 ハネムーン ハネムーン 『ハネムーン』は、若くして結婚したまなかと幼なじみの裕志が、喪失や孤独を抱えたまま互いを支え合い、旅立ちへ向かう長編です。中央公論新社の中公文庫ページでは、二人がどこにいても家を見いだす恋人たちの物語として紹介されている。恋愛小説でありながら、夫婦、家、死者の記憶、癒えにくい過去を静かに見つめるよし…
- 432 1997 叶えられた祈り かなえられたいのり 『叶えられた祈り』は、萱野葵のデビュー作にあたる新潮新人賞受賞作です。既存情報では、後に映画化される『段ボールハウス・ガール』へつながる作者の出発点として整理されています。祈りという題名が示す願望と現実のずれを軸に、都市的な孤独を読む作品として位置づけました。 第29回 新潮新人賞
- 433 1997 あした、旅人の木の下で 『あした、旅人の木の下で』は、芥川賞受賞後の松村栄子が発表した長篇小説です。旅人の木という題名上の象徴を手がかりに、移動する者の視線、記憶、他者との出会いを静かに描きます。現実の生活感と、どこか遠くへ向かう感覚が重なり合う作品です。
- 434 1997 こうのとりを放つ日 『こうのとりを放つ日』は、みどりゆうこの単行本小説です。NDLサーチでは1997年6月に集英社から刊行された189ページの図書、NDC9 913.6として確認できます。出版書誌データベースではISBN 9784087742725、4-6判、192ページ、Thema分類 FB(小説)、1FPJ(日本)…
- 435 1997 彩月 『彩月』は、高樹のぶ子が1997年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 436 1997 お化けだぞう 『お化けだぞう』は、村田喜代子が1997年に潮出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 437 1996 落下する夕方 ラッカスル ユウガタ 角川書店から1996年に刊行された江國香織の単著長篇。
- 438 1996 季節の記憶 きせつのきおく 『季節の記憶』は、鎌倉・稲村ヶ崎を舞台に、父と息子が過ごす初秋から冬の日々を断片的に描く長篇です。大きな事件よりも、日々の会話、意識の流れ、季節の移り変わりそのものを小説の中心に置く点に保坂和志らしさがあります。既存梗概では保坂文学の代表作として整理されていますが、内容細部は出版社公式では未確認です… 第33回 谷崎賞
- 439 1996 赤い満月 あかいまんげつ 『赤い満月』は、大庭みな子が第23回川端康成文学賞を受けた短篇です。『文學界』1995年1月号に掲載され、同年刊の作品集『もってのほか』に収録されたことを、文学賞データとNDLサーチで確認できます。公開情報では具体的な筋や舞台の紹介は限られるため、身体、記憶、寓話・幻想の既存分類を手がかりにしつつ… 第23回 川端賞
- 440 1996 台所 だいどころ 『台所』は、坂上弘の第24回川端康成文学賞受賞作です。『新潮』1996年9月号掲載、1997年新潮社刊の同名単行本への収録を、文学賞データとNDLで確認できます。作品内容の詳しい公開梗概は未確認ですが、既存分類では家、日常、家族、記憶を静かな文体でたどる短篇として整理しています。 第24回 川端賞
- 441 1996 木山さん、捷平さん キヤマサン ショウヘイサン 小説以外の文学的散文・作家論寄りの候補。岩阪の文学的関心を補う。
- 442 1996 硫黄谷心中 『硫黄谷心中』は、村田喜代子が1996年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 443 1996 蟹女 『蟹女』は、村田喜代子が1996年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 444 1995 この人の閾 このひとのいき 『この人の閾』は、近隣に住む人々との会話や移ろう時間を、事件性よりも意識の動きとして追う保坂和志の短篇です。登場人物の関係や日常の場面は淡く保たれ、その隙間に考えること、感じることの閾が浮かび上がります。平明な文体でありながら、何げない生活の中に哲学的な問いを置く点が読みどころです。 第113回 芥川賞
- 445 1995 母への尋問 ははへのじんもん 『母への尋問 : 昭和二十年、夏』は、大村麻梨子の単行本です。NDLサーチで1995年7月刊、253ページ、20cmの書誌を確認できます。公開情報では詳細な梗概を確認できなかったため、作品紹介は副題と書誌情報に限定します。
- 446 1995 路地 ろじ 『路地』は、鎌倉の路地と古書肆を舞台に、廃業した店、老いた人々、去りゆく時間を描く連作短篇集です。大きな事件ではなく、町の細部や人の記憶に残る光景を積み重ねることで、失われていく生活の手触りを浮かび上がらせます。鎌倉という土地を、懐旧だけでなく老いと時間の問題として読むことができる作品です。 第33回 谷崎賞
- 447 1995 億夜 『億夜』は、高樹のぶ子が1995年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 448 1995 花弁を光に透かして 『花弁を光に透かして』は、高樹のぶ子が1995年に朝日新聞社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 449 1995 水脈 『水脈』は、高樹のぶ子が1995年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 450 1995 12のトイレ 『12のトイレ』は、村田喜代子が1995年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 451 1994 緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道 みどりいろのにごったおちゃあるいはこうふくのさんぽみち 『緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道』は、山本昌代が第8回三島由紀夫賞を受賞した作品です。既存データでは、難病で下半身が不自由な鱈子と家族の日常を淡々と描く中編として整理されています。新潮社公式で受賞は確認できますが、内容紹介はWikipedia中心のため低確信です。 第8回 三島賞
- 452 1994 虹の岬 にじのみさき 『虹の岬』は、大企業の要職を辞した男と京都大学教授夫人との長い情愛を描く恋愛長篇です。加賀平野の鶴来を主な舞台に、二十五年に及ぶ関係、人生の決断、喪失の感覚が静かな文体で重ねられます。中央公論新社公式で谷崎潤一郎賞受賞は確認できますが、内容説明は既存梗概と二次情報に依拠しています。 第30回 谷崎賞
- 453 1994 みのむし みのむし 『みのむし』は、農家の老いた夫婦が蓑虫を題材にした短い会話を交わす中で、生命の儚さと互いへの愛着を浮かび上がらせる短篇です。三浦哲郎の短篇集モザイクシリーズの一作として登録され、日常の小さな対象から老いと家族の時間を静かに描きます。内容説明は既存梗概に依拠しており、出版社公式の作品紹介は今回確認でき… 第22回 川端賞
- 454 1994 密やかな結晶 ひそやかなけっしょう NDLサーチで1994年1月刊の講談社版単行本、1999年講談社文庫版、2020年刊行版を確認できる。既登録の初期芥川賞作と代表的ベストセラーの間を補う候補。
- 455 1994 夢見る貝の伝記 ゆめみるかいのでんき 『夢見る貝の伝記』は、吉目木晴彦が1994年に講談社から刊行した小説作品です。講談社公式、Books/JPRO、NDLサーチ、Amazonの商品ページで書誌を確認しました。
- 456 1994 熱 『熱』は、高樹のぶ子が1994年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 457 1994 蔦燃 『蔦燃』は、高樹のぶ子が1994年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 458 1994 蕨野行 『蕨野行』は、村田喜代子が1994年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 459 1993 とかげ とかげ 『とかげ』は、吉本ばななが1993年に新潮社から刊行した短篇集です。既存データの通り、癒しや時間、記憶をめぐる六篇を収め、日常の中の傷や回復の気配を平明な文体で扱います。短い作品群を通して、恋愛や喪失のあとに残る身体感覚と静かな再生を読むことができます。
- 460 1993 冗談関係のメモリアル じょうだんかんけいのめもりある 『冗談関係のメモリアル』は、中村邦生が第77回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1993年12月号の書誌を確認できます。題名から、冗談や記憶をめぐる人間関係を扱う作品と見られますが、内容の詳細は未確認です。 第77回 文學界新人賞
- 461 1993 日本の家郷 にほんのかきょう 『日本の家郷』は、福田和也が第6回三島由紀夫賞を受賞した評論集です。既存データでは、近代日本の精神史・文化史を保守主義的視座から読み解く論考として整理されています。新潮社公式で三島賞受賞は確認できますが、内容紹介は主に二次情報由来です。 第6回 三島賞
- 462 1993 草の上の朝食 くさのうえのちょうしょく 『草の上の朝食』は、保坂和志が第15回野間文芸新人賞を受賞した作品です。既存データでは『プレーンソング』の続編として、鎌倉を舞台にゆるやかな日常と複数人物の意識を描く初期代表作として整理されています。講談社公式で受賞は確認できますが、内容紹介はWikipedia中心のため注意が必要です。 第15回 野間新人賞
- 463 1993 セミの追憶 せみのついおく 『セミの追憶』は、古山高麗雄が第21回川端康成文学賞を受賞した短編です。既存データでは、戦時の記憶とセミの声を結びつけ、従軍体験を持つ作家が生き残った者の記憶と罪責感を描く作品として整理されています。今回確認できた出典は受賞・初出情報が中心で、内容紹介は既存調査由来として扱います。 第21回 川端賞
- 464 1993 淀川にちかい町から ヨドガワ ニ チカイ マチ カラ 土地・記憶・生活感覚を扱う作品として、既収録作品の地域性を補う候補。
- 465 1993 湖底の森 『湖底の森』は、高樹のぶ子が1993年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 466 1993 銀河の雫 『銀河の雫』は、高樹のぶ子が1993年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 467 1993 花野 『花野』は、村田喜代子が1993年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 468 1992 花に問え はなにとえ 『花に問え』は、念仏聖・一遍の生涯を追いながら、彼に出会った一人の女性の視点から信仰と無常を描く宗教小説です。歴史上の宗教者を題材にしつつ、信仰へ向かう心の揺れを抒情的にたどります。瀬戸内寂聴の宗教的主題と物語性が結びついた作品です。 第28回 谷崎賞
- 469 1992 田園風景 でんえんふうけい 『田園風景』は、坂上弘が1992年に講談社から刊行した短篇集の表題作です。NDLサーチでは、単行本に『短い一年』『巡回授業』『田園風景』『夏野』『こなゆき』『コネティカットの女』『寒桜』『向かいて聞く』『土手の秋』の9篇が収録されていることを確認できます。2008年には講談社文芸文庫で再刊され、同じ…
- 470 1992 これは懺悔ではなく 『これは懺悔ではなく』は、高樹のぶ子が1992年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 471 1992 彩雲の峰 『彩雲の峰』は、高樹のぶ子が1992年に福武書店から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 472 1992 白い光の午後 『白い光の午後』は、高樹のぶ子が1992年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 473 1992 慶応わっふる日記 『慶応わっふる日記』は、村田喜代子が1992年に潮出版社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 474 1991 至高聖所(アバトーン) しこうせいしょ あばとーん 『至高聖所(アバトーン)』は、大学生活と若者の精神的な苦闘を叙情的に描く松村栄子の芥川賞受賞作です。親密な関係と孤独、学びの場での息苦しさを、若い語りの感覚で立ち上げます。『海燕』掲載作として芥川賞を受けた点でも、1990年代初頭の文芸誌環境を示す作品です。 第106回 芥川賞
- 475 1991 海を渡る植物群 うみをわたるしょくぶつぐん 『海を渡る植物群』は、みどりゆうこが第72回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLで受賞作発表記事と『文學界』1991年6月号の書誌を確認できました。題名から越境や移動のイメージがうかがえますが、物語内容を具体的に確認できる公開資料は今回見つからず、紹介は書誌中心です。 第72回 文學界新人賞
- 476 1991 予感 よかん 『予感』は、釉木淑乃が第15回すばる文学賞を受賞した作品です。NDLでは『すばる』1991年12月号の受賞作発表記事と、1992年集英社版の単行本書誌を確認できます。詳細なあらすじは今回確認できなかったため、紹介は新人賞受賞作としての位置づけに留めます。 第15回 すばる文学賞
- 477 1991 やすらかに今はねむり給え やすらかにいまはねむりたまえ 『やすらかに今はねむり給え』は、長崎、上海、アメリカを背景に、被爆者としての記憶と海外体験を重ねる短篇集です。戦争の傷を大きな声で告発するだけでなく、戦後を生き続ける人物の静かな時間に沈めて描きます。林京子の原爆文学の系譜にあり、移動と記憶が響き合う一冊です。 第26回 谷崎賞
- 478 1991 西行花伝 さいぎょうかでん 『西行花伝』は、平安末期の歌人・西行の生涯を、架空の弟子・藤原秋実の視点から描く大作歴史小説です。出家の謎、和歌、信仰、絶対美への希求が、貴族社会の精緻な描写の中で重なっていきます。歴史小説でありながら、芸術とは何かを問う思索小説として読めます。 第31回 谷崎賞
- 479 1991 伯父の墓地 おじのぼち 『伯父の墓地』は、亡くなった伯父の墓参を題材に、生と死、記憶の連鎖を老境から見つめる短篇です。大きな事件を置かず、親族の記憶と墓地という場所から、時間の堆積を静かに浮かび上がらせます。安岡章太郎晩年の私小説的な成熟が感じられる作品です。 第18回 川端賞
- 480 1991 優しい碇泊地 ヤサシイ テイハクチ 1991年に福武書店から刊行された坂上弘の単著図書。NDL、Books/JPRO、Amazonで書誌を確認した。
- 481 1991 誇り高き人々 ほこりたかきひとびと 『誇り高き人々』は、吉目木晴彦が1991年に講談社から刊行した小説作品です。講談社公式、Books/JPRO、NDLサーチ、Amazonの商品ページで書誌を確認しました。
- 482 1991 哀歌は流れる 『哀歌は流れる』は、高樹のぶ子が1991年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 483 1991 サザンスコール 『サザンスコール』は、高樹のぶ子が1991年に日本経済新聞社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 484 1991 耳納山交歓 『耳納山交歓』は、村田喜代子が1991年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 485 1991 真夜中の自転車 : 作品集 『真夜中の自転車 : 作品集』は、村田喜代子が1991年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 486 1990 静かな生活 しずかなせいかつ 『静かな生活』は、父の不在中、障害を持つ兄イーヨーと妹マーちゃんが暮らす日々を描く連作です。家族のケア、創作、日常の小さな秩序が、妹の視点を通して穏やかに語られます。大江健三郎の家族をめぐる作品群のなかでも、家庭内の静けさと緊張を同時に感じさせる一冊です。
- 487 1990 じねんじょ じねんじょ 『じねんじょ』は、老いた農夫が山芋を掘る日常を通じて、土地への愛着と家族の距離を描く短篇です。大きな事件ではなく、手仕事と沈黙のなかに人生の時間を滲ませるところに味わいがあります。三浦哲郎らしい地方の生活感覚と、老いの静けさが凝縮されています。 第17回 川端賞
- 488 1990 時を青く染めて 『時を青く染めて』は、高樹のぶ子が1990年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 489 1990 霧の子午線 『霧の子午線』は、高樹のぶ子が1990年に中央公論社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 490 1990 白い山 : 作品集 『白い山 : 作品集』は、村田喜代子が1990年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 491 1989 人生の親戚 じんせいのしんせき 二人の息子を失った女性まり恵の苦難と魂の遍歴を描く大江健三郎の長編。喪失を抱えた人物が、宗教的・共同体的な問いに触れながら生を組み替えていく。大江後期の、家族の痛みと救済への希求が結びつく作品として読める。
- 492 1989 白河夜船 しらかわよふね 眠りに沈んでいく女性たちを描く三篇を収めた作品集。恋愛、喪失、孤独が、眠りという身体の状態を通じて静かに語られる。吉本ばなな初期の透明な語りと、生死の境目に触れる感覚がよく表れた一冊。
- 493 1989 ネコババのいる町で ねこばばのいるまちで 『ネコババのいる町で』は、ロサンゼルスから一人で日本に送られた少女・恵里子が、祖母と叔母のもとで育つ姿を描く作品です。場面緘黙症を抱える少女にとって、隣家の猫たちとの関係が、言葉にならない孤独の受け皿になっていきます。移動、家族、言語化できない傷を、子どもの視界に近い静けさで描く点が読みどころです。 第69回 文學界新人賞
- 494 1989 ルームメイト 『ルームメイト』は、村田喜代子が1989年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 495 1988 哀しい予感 かなしいよかん 記憶の空白を抱えた少女が、風変わりな親族の家で自分の過去へ近づいていく長編。家族の秘密、喪失、直感のような感覚が、吉本ばなな初期作らしい静かな語りで結びつく。大きな事件よりも、眠りや気配に近い感情の変化を読む作品。
- 496 1988 うたかた/サンクチュアリ うたかた/サンクチュアリ 吉本ばななの初期作品集で、「うたかた」と「サンクチュアリ」を併録する。喪失や恋愛、居場所をめぐる不安を、柔らかく透明な語り口で描く。日常の小さな違和感から、生死のあわいや心の避難場所へ入っていく初期吉本作品らしさがある。
- 497 1988 尋ね人の時間 たずねびとのじかん 『尋ね人の時間』は、別れた妻子や死別した妹、好意を寄せる女性との距離を抱えたカメラマンの意識を追う作品です。都会で自分を見失った人物の感覚が、詩的で短い文の連なりとして表現されます。喪失を過剰に劇化せず、削ぎ落とした言葉で浮遊感を残す点が特徴です。 第99回 芥川賞
- 498 1988 ダイヤモンドダスト だいやもんどだすと 『ダイヤモンドダスト』は、信州の病院に勤務する医師が末期患者の死と向き合う日々を描く短篇です。医療現場の現実を過度に説明せず、死のそばにある静けさや、凍った水蒸気が光る表題のイメージを重ねていきます。病と死を扱いながら、情緒に流されない抑制された文体が印象に残ります。 第100回 芥川賞
- 499 1988 虹の交響 『虹の交響』は、高樹のぶ子が1988年に講談社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 500 1987 キッチン キッチン 唯一の肉親だった祖母を亡くし、天涯孤独となった大学生の桜井みかげ。眠れるのは冷蔵庫のそばだけ――そんな彼女に、祖母と親しかった青年・田辺雄一が同居を申し出る。雄一の家には、女性として生きる「母」えり子さん(実は父親)がいて、奇妙であたたかい三人の暮らしが始まる。台所と食べることを心の拠り所に、喪失の…
- 501 1987 懐かしい年への手紙 なつかしいとしへのてがみ 語り手が導き手である「ギー兄さん」との関係をたどりながら、自分の文学的半生と故郷の森の記憶を再構成する自伝的長編。私小説の形式を借りながら、実際には作家自身と架空の人物をずらし、記憶・読書・共同体の物語を重ねていく。ダンテを媒介に、帰郷できない作家が森の村と文学の場所を問い直す。
- 502 1987 ノルウェイの森 のるうぇいのもり 1960年代末の学生運動期を背景に、ワタナベと直子、緑の関係を通じて、喪失、恋愛、死者への記憶を描く長編。村上作品としては幻想性を抑えたリアリズム寄りの語りで、音楽、読書、寮生活、療養所の細部が青春の傷を浮かび上がらせる。読みやすい恋愛小説の形を取りながら、親しい死をどう抱えて生きるかという痛切な問…
- 503 1987 スティル・ライフ すてぃる・らいふ 『スティル・ライフ』は、染色工場で働く「ぼく」と、世界を少し離れた位置から見ている佐々井との交流を描く短篇です。大きな事件よりも、労働、会話、都市の時間の中で、世界が静かにつながって存在している感覚を描きます。透明感のある文体と、孤独を否定しない清澄な肯定感が読みどころです。 第98回 芥川賞
- 504 1987 遠方より えんぽうより 『遠方より』は、谷口哲秋のデビュー作にあたる第65回文學界新人賞受賞作です。遠くから届くもの、遠くへ向かう視線を題名に持つ作品として、距離と記憶を主題化する初期作として整理しました。後に芥川賞候補にもなっており、文學界新人賞から純文学の選考圏へ進んだ作品です。 第65回 文學界新人賞
- 505 1987 自然連祷 しぜんれんとう 文藝春秋から1987年1月に刊行され、2008年に未知谷から『加藤幸子短篇集』としても刊行された未登録単行本。
- 506 1987 カワセミ かわせみ 戦時下の四国を舞台に、飛ぶ宝石とも呼ばれるカワセミの生命に魅せられた少年の日々を描く表題作を含む短篇集。紀伊國屋の内容説明では、無頼の道を歩む幼なじみの苛烈な生を写す「牙」なども収録される。自然へのまなざし、少年の感受性、戦時下の地方の時間が静かに重なっていく。 第19回 新潮新人賞
- 507 1987 ホーム・パーティー ホーム パーティー 新潮社刊の単行本で、家庭小説・女性の生活をめぐる作品として追加候補になる。
- 508 1986 M/Tと森のフシギの物語 エムティーともりのフシギのものがたり 四国の森に伝わる物語を、M=母権的な存在とT=トリックスター的な存在の対立・変奏として語る長編。村の伝承、神話、人類学的な型を組み合わせ、作家の幼年期の森を大きな物語装置へ変えていく。短い断章を積み重ねる構成で、個人の記憶と共同体の神話が互いに照らし合う。
- 509 1986 しずかにわたすこがねのゆびわ しずかにわたすこがねのゆびわ 家族、育児、夫婦をめぐる日常を、抑えた感触で描いた干刈あがたの作品。家庭の内側にある親密さと疲労、母と子の時間、夫婦の距離が、静かな生活描写の中から浮かび上がる。大きな事件よりも、日々の関係が少しずつ人を変えていく感触を読む作品。 第8回 野間新人賞
- 510 1986 星夜に帆をあげて 『星夜に帆をあげて』は、高樹のぶ子が1986年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 511 1985 回転木馬のデッド・ヒート かいてんもくばのでっどひーと 実際に聞いた話を小説の形に組み替えた、都市生活者たちの短いスケッチ集。表題の「回転木馬」は、同じ場所を巡り続けながら誰も抜け出せない人生の比喩として働き、各篇の人物は小さな違和感や疲労を抱えたまま日常を走り続ける。事実と虚構の境界をあいまいにしながら、村上春樹の乾いた観察眼と抑制されたユーモアが前面…
- 512 1985 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド せかいのおわりとハードボイルド・ワンダーランド 二つの物語が交互に進む40章構成の長編。〔ハードボイルド・ワンダーランド〕では、老科学者によって意識の核に特殊な思考回路を組み込まれた計算士の「私」が、地下の闇に潜む「やみくろ」や組織の抗争に巻き込まれながら、回路に隠された秘密を追う。〔世界の終り〕では、高い壁に囲まれた静かな街で、「僕」が一角獣の… 第21回 谷崎賞
- 513 1985 ワンルーム ワンルーム 母子・家庭だけでなく都市生活の孤独を補える候補。福武書店刊、のち再刊あり。
- 514 1985 波光きらめく果て 『波光きらめく果て』は、高樹のぶ子が1985年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 515 1984 螢・納屋を焼く・その他の短編 ほたる・なやをやく・そのたのたんぺん 「螢」「納屋を焼く」などを収めた初期短編集。新潮社の紹介では「螢」が『ノルウェイの森』の原点とされ、学生時代の喪失と届かない温もりが抑制された一人称で描かれる。「納屋を焼く」は日常会話の奥に説明されない空白を置き、静かな恋愛小説と不穏な幻想が同じ冊子のなかで並ぶ構成になっている。
- 516 1984 ウホッホ探険隊 うほっほたんけんたい 『ウホッホ探険隊』は、離婚をきっかけに夫、妻、小学生の二人の息子たちが、新しい家族のかたちを探っていく干刈あがたの長篇小説です。河出書房新社公式は、離婚という未知の領域を探険するために家族それぞれが役を担う作品として紹介しています。家庭の再編を、子どもを含む複数の立場からやわらかく、しかし痛みを伴っ…
- 517 1984 寒雷のように 『寒雷のように』は、高樹のぶ子が1984年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 518 1983 新しい人よ眼ざめよ あたらしいひとよめざめよ 障害を持つ息子イーヨーとの日常を、ウィリアム・ブレイクの詩を媒介に見つめ直す連作小説。語り手は息子の成長、死や性への問い、家族のなかの不安を受け止めながら、文学の言葉が現実のケアとどのように結びつくかを探る。私小説的な素材を思想的な読解と重ねることで、父と子の関係を閉じた家族の物語にせず、他者と共に…
- 519 1983 樹下の家族 ジュカ ノ カゾク 『ウホッホ探険隊』以前の家族小説として登録優先度が高い候補。
- 520 1983 いつもと同じ春 いつもとおなじはる 『いつもと同じ春』は、辻井喬が1983年に河出書房新社から刊行した長篇小説です。NDLサーチでは、1983年5月刊の単行本と、2009年10月刊の中公文庫版を確認できます。公開Webで詳細な内容紹介や初出誌は確認できなかったため、紹介は書誌・再刊情報を中心に整理しています。
- 521 1983 その細き道 『その細き道』は、高樹のぶ子が1983年に文芸春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 522 1982 羊をめぐる冒険 ひつじをめぐるぼうけん 広告代理店で働く「僕」は、耳に星形の斑紋を持つ謎の羊を探すよう依頼され、ガールフレンドとともに北海道へ向かう。右派の大物、秘書、羊男、そして姿を消した鼠の痕跡が重なり、探偵小説めいた筋立ては次第に幻想と喪失の物語へ変質していく。初期の軽やかな一人称の語りを保ちながら、政治的な力、戦後の記憶、個人の空… 第4回 野間新人賞
- 523 1982 「雨の木」を聴く女たち 「レイン・ツリー」をきくおんなたち 「雨の木」という象徴的なイメージを核に、死者の記憶、喪失、救いの可能性をめぐる連作短篇集。マルカム・ラウリーなど西洋文学への参照と、樹木・音・女性たちの声が重なり、現実の痛みを神話的な想像力へ押し広げていく。大江健三郎の1980年代の作品群のなかでも、個人的な死生観と文学的引用が静かに響き合う作品と…
- 524 1982 夢の壁 ゆめのかべ 『夢の壁』は、北京での幼少期の記憶を背景に、異文化の中で形成された自己感覚と現在のまなざしを重ねる作品です。人間と自然、記憶と現実の境目を探る語りには、生態学的な観察と越境の感覚が混ざっています。歴史や国境を大きく語るより、個人の記憶の層から世界を見直すところに読みどころがあります。 第88回 芥川賞
- 525 1981 星空 ほしぞら 石川達三が1981年に刊行した後期作品。公開データでは梗概・批評の確認が薄く、まずは新潮社刊行作としての書誌を押さえる段階にある。作家後期の視点から、記憶や老い、社会の中での孤立を読む軸を仮に与えておく。
- 526 1981 小さな貴婦人 ちいさなきふじん 『小さな貴婦人』は、死んだ猫〈雲〉への愛惜を抱える女性と老いた女流詩人Gの対話を中心に、喪失と幻想の境界を静かに描く作品です。猫という身近な存在を媒介に、孤独、死者への執着、言葉では届ききらない感情が詩的に立ち上がります。現実の事件よりも、声や気配が醸す幻想性を読む作品です。 第85回 芥川賞
- 527 1981 蝉の声がして セミ ノ コエ ガ シテ 既収録『ミモザの林を』以前の初期作品で、作家像の起点を補う候補。
- 528 1980 1973年のピンボール せんきゅうひゃくななじゅうさんねんのぴんぼーる 『風の歌を聴け』に続く「鼠三部作」第二作で、翻訳事務所を営む「僕」の生活と、故郷に残る鼠の停滞が並行して語られる。「僕」はかつて通ったバーにあったピンボール台を探し、双子の女性との奇妙な同居や電話配電盤の葬送を経て、失われた時間の手触りに近づいていく。軽い会話と乾いたユーモアの背後に、青春の終わり…
- 529 1978 夕暮まで ユウグレ マデ 後期の代表的長篇候補。既収録『暗室』後の吉行文学を補える。
- 530 1977 独りきりの世界 ひとりきりのせかい 石川達三が1970年代後半に刊行した作品。題名が示す孤独を中心に、社会や家族から切り離された人物の世界を描く作品として暫定整理する。公開情報が少ないため、内容細部は未確認だが、後期石川の個人の孤立への関心を読む候補作である。
- 531 1975 祭りの場 まつりのば 『祭りの場』は、林京子が『群像』に発表し、1975年に講談社から刊行された芥川賞受賞作です。長崎で被爆した作者自身の経験を背景に、新聞記事、記録、証言、記憶を重ねながら、1945年8月9日の「場」を二十数年後から見つめ直します。被爆文学の重要作であり、林京子の出発点となった作品です。 第73回 芥川賞
- 532 1974 その最後の世界 そのさいごのせかい 石川達三が1970年代に刊行した後期作品。題名は終末や閉ざされた世界を想起させ、社会の行き詰まりと個人の孤独を読む手がかりになる。公開情報が限られるため、後期石川の社会観・人生観を示す作品として暫定紹介する。
- 533 1973 鶸 ひわ 『鶸』は、三木卓が1973年上半期の第69回芥川龍之介賞を受けた短篇です。日本文学振興会公式の受賞者一覧では掲載誌を『すばる』として確認できます。NDLサーチでは、『文芸春秋』1973年9月号の芥川賞決定発表記事、および集英社文庫『砲撃のあとで』への収録が確認できます。 第69回 芥川賞
- 534 1971 解放された世界 かいほうされたせかい 石川達三が1971年に刊行した作品で、新潮社版の書誌が確認できる。「解放」という語が示す自由への期待と、その後に残る孤独や責任を読む軸がある。公開梗概が薄いため、戦後社会の価値観の変化を扱う作品として暫定的に分類する。
- 535 1971 絵合せ えあわせ NDLサーチで1971年刊の講談社版単行本、および1977年版を確認できる。
- 536 1970 プレオー8の夜明け ぷれおーゆいっとのよあけ 『プレオー8の夜明け』は、古山高麗雄が第63回芥川龍之介賞を受けた戦争短篇です。日本文学振興会公式の受賞者一覧では、1970年上半期の受賞作、掲載誌『文藝』として確認できます。NDLサーチでは、文藝春秋2001年刊『二十三の戦争短編小説』および小学館P+D BOOKS版『プレオー8(ユイット)の夜明… 第63回 芥川賞
- 537 1969 愉しかりし年月 たのしかりしとしつき 石川達三が1969年に刊行した作品で、新潮社版の書誌が確認できる。題名は過ぎ去った年月への回想を示し、記憶と老い、生活の時間を扱う作品として読める。公開情報が限られるため、後期へ向かう石川の回想的な小説として暫定整理する。
- 538 1969 暗室 あんしつ 『暗室』は、男女関係の親密さと断絶、欲望と倦怠を、吉行淳之介らしい冷ややかな観察で描く長篇です。明るい恋愛小説ではなく、関係の内部にある孤独や自己欺瞞を見つめる作品として、第三の新人以後の心理小説の系譜に置くことができます。 第5回 谷崎賞
- 539 1965 夕べの雲 ゆうべのくも 『夕べの雲』は、郊外の家庭生活を大きな事件ではなく、家族の会話、子どもの成長、季節の変化の積み重ねとして描く庄野潤三の代表的長篇です。日常の細部を丁寧に見ることで、戦後の家庭小説に独自の静けさをもたらしています。
- 540 1965 玩具 がんぐ 『玩具』は、津村節子が芥川賞を受けた初期代表作です。家庭や女性の身体をめぐる感覚を、抑制された筆致で描き出し、戦後女性文学の流れの中でも重要な位置を占める作品として読まれています。 第53回 芥川賞
- 541 1964 海の虹 うみのにじ 『海の虹』は、1964年に学習研究社の芥川賞作家シリーズとして刊行された近藤啓太郎の作品集。NDLサーチで表題作のほか、第35回芥川賞受賞作「海人舟」、「飛魚」「黒南風」などを収録する書誌として確認できる。公開Web上で確認できた内容紹介は限られるため、詳細な筋は推測せず、近藤の海辺・漁業をめぐる作…
- 542 1963 廻廊にて かいろうにて 『廻廊にて』は、辻邦生の初期長篇です。NDLサーチの原本書誌では、新潮社から1963年に刊行された208ページの単行本として確認できます。NDLサーチ連携のDAISY資料では、愛を失い、結婚に破れ、芸術の空しさを抱えながら、生と芸術の意味を模索し続ける亡命ロシア人女流画家マーシャの生涯を描く作品とし…
- 543 1960 あした晴れるか アシタ ハレルカ 戦争文学以外の初期小説を補う候補。NDLの書誌では「長編小説」。
- 544 1960 風がめざめる カゼ ガ メザメル 『雨に似ている』後の初期小説として、純文学寄りの補完候補。
- 545 1959 雨に似ている あめににている 『雨に似ている』は、菊村到が『硫黄島』で第37回芥川賞を受賞した後、1959年に雪華社から刊行した単行本です。NDLサーチでは261ページの図書として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出情報を確認できなかったため、内容は推測せず、菊村の初期作品を示す書誌として記録します。
- 546 1959 山塔 さんとう 『山塔』は、斯波四郎が第41回芥川賞を受賞した短篇集の表題作です。公開資料で詳しい筋を確認できる範囲は限られますが、生活の厚みと人間の時間を描く作品として評価されました。既存調査にある選評の要点からは、技巧よりも「人生」が感じられる点が評価されたことがわかります。 第41回 芥川賞
- 547 1959 檸檬・ブラックの死 れもん・ぶらっくのし 『檸檬・ブラックの死』は、斯波四郎が第41回芥川賞受賞作『山塔』と同じ1959年に講談社から刊行した単行本です。NDLサーチでは270ページの図書として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出情報を確認できなかったため、内容は推測せず、斯波の初期作品を示す書誌として記録します。
- 548 1956 海人舟 かいとぶね 『海人舟』は、千葉・鴨川の海辺を背景に、漁師たちの労働と土地に根ざした生活を描く短篇です。近藤啓太郎自身の漁業体験に近い素材を、海と身体の感覚を伴うリアリズムで扱っています。都市の内面劇とは違う、海辺の共同体と労働の重さが読みどころです。 第35回 芥川賞
- 549 1954 驟雨 しゅうう 『驟雨』は、料亭の女との短い逢瀬を軸に、中年男の倦怠と孤独を描く短篇です。感情を大きく説明せず、会話や身振りの細部から男女の距離を読ませるところに特徴があります。吉行淳之介の乾いた都市的感覚が、第三の新人の作風を代表するかたちで現れています。 第31回 芥川賞
- 550 1954 プールサイド小景 ぷーるさいどしょうけい 『プールサイド小景』は、社員旅行の一日を舞台に、家庭を持つ男の欲望と罪悪感を細密に描く短篇です。劇的事件よりも視線、沈黙、気まずさの変化を追うことで、都市生活者の不安を浮かび上がらせます。庄野潤三の静かな日常描写のなかに、戦後の家庭と個人の距離感が滲む作品です。 第32回 芥川賞
- 551 1952 或る「小倉日記」伝 あるこくらにっきでん 『或る「小倉日記」伝』は、森鷗外の小倉時代を記録することに生涯を傾けた人物を主人公にする短篇です。文学史の周縁にいる無名の調査者の執念をたどり、資料を追う行為そのものを物語化しています。史実と想像を接続する構成が、のちの松本清張の記録性・推理性を予告します。 第28回 芥川賞
- 552 1951 春の草 はるのくさ 『春の草』は、石川利光が第25回芥川賞を安部公房『壁』と同時受賞した作品です。詳しい筋を確認できる公開資料は少ないものの、戦後まもない文学場で、生活の手触りと内面の揺れを描くリアリズム系の短篇として受け止められました。現時点では、書誌・受賞情報を中心に紹介しています。 第25回 芥川賞
- 553 1949 山の音 やまのおと 『山の音』は、鎌倉に暮らす老齢の会社重役・信吾を中心に、家族の崩れと老いの気配を見つめる連作長篇です。嫁の菊子への静かな愛着、息子夫婦の不和、死の予感が、抑制された三人称の語りで重なっていきます。戦後の家庭小説でありながら、川端康成らしい感覚的な細部が、老いと記憶の陰影を際立たせます。 第7回 野間文芸賞
- 554 1935 雪国 ゆきぐに 『雪国』は、雪深い温泉地を訪れる島村と芸者駒子、葉子をめぐる関係を、抒情と余白の多い文体で描く中篇です。自然描写、身体感覚、叶わない関係の気配が重なり、川端康成の美意識を代表する作品として広く読まれてきました。