さいきん

最近

小山田浩子 2024

紹介 About

『最近』は、パンデミック後の近い過去を背景に、平凡な夫婦と周囲の人々の生活を精密に追う連作長篇です。救急外来の待合室で想起される赤い猫の噂を入口に、家族、友人、病院、日々の手続きや会話が、不安と責任の曖昧さを呼び込みます。大きな事件ではなく、生活の中で少しずつ増えていく違和感や気配が連作のつながりを作ります。感覚と思考を細かく書き込む文体が、日常の外側へ読者を連れていく作品です。

評価 Reception

新潮社公式ページ掲載のマライ・メントラインによる書評は、生活の感覚器官から生じる思念を徹底的に書く連作として本作を捉え、コロナ禍の生活感覚や社会問題の断面が浮かぶ点を評価している。受賞・候補歴は今回の調査範囲では確認できなかった。

出典 Sources

小山田浩子のほかの収録作 More

  1. 001 2010 工場 こうじょう 初出・「新潮」2010年11月号 何を作っているのか判然としない巨大工場を舞台に、三人の従業員の視点から、働くことと生きることの不条理を描く作品集。表題作に加え、熱帯魚飼育に没頭する家と若い妻をめぐる「ディスカス忌」、心身の不調と虫の幻視を描く「いこぼれのむし」を収める。工場内の謎の動物や過剰な細部が、職場の日常を寓話的な生態系へ変… 労働孤独と疎外三人称・多視点 第42回 新潮新人賞
  2. 002 2013 あな 初出・「新潮」2013年5月号 仕事を辞めて夫の田舎へ移った語り手が、黒い獣を追って土手の穴に落ちたことから、見慣れた日常が異界の気配を帯びていく。世羅さん、寡黙な義祖父、義兄を名乗る知らない男など、周囲の人物の奇妙さが郊外の夏を静かにゆがませる。表題作に加え、農村の古民家で新生活を始めた友人夫婦をめぐる作品を収める芥川賞受賞作。 身体一人称 第150回 芥川賞
  3. 003 2018 にわ 単行本・新潮社 『庭』は、虫、草花、動物、人間の暮らしが隣り合う十五篇からなる短篇集です。ふきのとう、彼岸花、どじょう、蟹、家グモなど身近なものが、暮らしの中の不条理や喜びを帯びて不可思議な世界を開きます。新潮社公式ページ掲載の書評が指摘するように、あっさりした題名と濃密な本文、現実と幻想の自然な共存が読みどころで… 身体寓話・幻想
  4. 004 2021 小島 こじま 単行本・新潮社 豪雨災害後の農村、自宅、保育園などを舞台に、何気ない出来事が世界をかすかに震わせる中短篇集。花の世話をする女性、生きものとの遭遇、広島カープをめぐる奇談連作などを通じて、日常の時間や記憶が別の相へ滑り出す。身近な風景の観察が、災害後の生活感覚や家族のずれを浮かび上がらせる。虫や鳥、犬、植物などの生き… 孤独と疎外寓話・幻想地方
  5. 005 2025 ものごころ ものごころ 単行本・文藝春秋 『ものごころ』は、植物、花、虫、生きものがあふれる子供の世界を、身体感覚ごと描く九篇の短篇集です。怪我をした犬を拾った少年たち、飲み込んだスモモの種をめぐる不安など、子供の視界に近い感受性から世界の手触りを探ります。子供の認識は無垢なものとして固定されず、身体の違和感や怖さ、周囲の大人との距離を含ん… 身体母と子寓話・幻想