Mood
痛切
読み味「痛切」に分類された 420 作品。
- 001 2026 舞う砂も道の実り まうすなもみちのみのり 孤児として育ったワオスリ、大家族の移住先を探すイフン、離れ離れになった子を探すダエが、ともに旅へ出るロードノベル。時代も場所も定かでない土地をたどり、町々での出会いと別れを通して、三人はそれぞれの喪失や人生の意味に向き合っていく。旅は目的地へ進む筋であると同時に、血縁ではない者同士が一時的な家族のよ…
- 002 2026 私的応答 してきおうとう 『私的応答』は、1995年の震災を経験した銅子と、母、娘の厚美を軸に、母娘三代の時間をたどる長編です。倒れたミシン、避難所の体育館、梅田で浴びたシャワーといった記憶が、年月を隔てても日常の奥で反響し続けます。震災の経験を大きな出来事としてだけでなく、家族の会話、沈黙、許しがたさの中に残るものとして描…
- 003 2025 温泉小説 おんせんしょうせつ 年齢も性別も境遇も異なる人びとが温泉地へ向かう六篇の連作的短篇集。おひとり様限定の温泉バスツアー、免許返納を迫られる後期高齢者、母の呪縛から逃れられない44歳の娘、亡き妻との記憶をたどる初老の男、50歳女性の一人旅、婚約者と別れて南の島で再出発を試みる若者など、人生の苦みや迷いを抱えた人物たちを描く…
- 004 2025 激しく煌めく短い命 はげしくきらめくみじかいいのち 『激しく煌めく短い命』は、中学校の入学式で出会った久乃と綸が、周囲の偏見のなかで愛を育み、やがて決定的に引き裂かれるまでを描く恋愛小説です。十数年後、東京で働く久乃が綸と再会する構成により、青春の瞬間的な激しさと、時間を経ても消えない感情の持続が重ねられる。長い時間を隔てた再会は、失われた恋の回復で…
- 005 2025 彼の左手は蛇 かれのひだりてはへび 『彼の左手は蛇』は、仕事を辞め、女性と別れて、蛇信仰の残る土地に来た男が「この手記」を書くところから展開する小説です。白蛇を祀る神社、毒蛇狩り、議員の死、刑事、謎めいた人物たちが絡み、蛇のイメージが信仰・恐怖・罪悪感・暴力の記憶を結びつけていく。地方の伝承と個人の過去が重なり、現実の捜査譚と幻想的な…
- 006 2025 熊はどこにいるの くまはどこにいるの 『熊はどこにいるの』は、震災から7年後の地で、ショッピングモールで保護された身元不明の幼子と、暴力から逃れて山奥の家に暮らす女たちをめぐる小説です。リツ、アイ、サキ、ヒロらの視点が交錯し、保護と加害、避難場所と閉ざされた共同体の危うさを同時に浮かび上がらせる。安全な場所を作ろうとする営みが、別の支配… 第61回 谷崎賞
- 007 2025 女の子の背骨 おんなのこのせぼね 『女の子の背骨』は、先天性筋疾患を抱える10歳の少女ガゼルの家族旅行を描く表題作と、中篇「オフィーリア23号」を収めた第二小説集です。病気の姉、障害をもつ身体、家族、性、文学表象をめぐる言葉が、前作『ハンチバック』以後の市川沙央の問題意識をさらに広げる。少女の身体をめぐる語りは、痛みや介助を説明する…
- 008 2025 百日と無限の夜 ひゃくにちとむげんのよる 『百日と無限の夜』は、第一子の妊娠中に切迫早産で入院した「わたし」が、横たわる時間のなかで出産と生命をめぐる幻視の旅へ入っていく長篇です。能『隅田川』の女物狂いを案内人に、中世の京、駆け込み寺、若狭のお水送り、海辺の産小屋へと時空を越えて進む構成が、病室の身体感覚と神話的な想像力を結びつける。動けな… 第42回 織田作之助賞
- 009 2025 受け手のいない祈り うけてのいないいのり 『受け手のいない祈り』は、感染症拡大で地域の救急医療が逼迫するなか、患者を受け入れ続ける病院で働く青年医師・公河を描く長篇です。長時間勤務と極度の疲労が、死、狂気、使命感、食欲や時間感覚の乱れをひとつの身体に押し寄せさせる。医療現場の切迫を記録的に扱うだけでなく、祈りや責任の向かう先が失われる感覚を…
- 010 2025 携帯遺産 けいたいいさん 「携帯遺産」は、人気ファンタジー作家・舟暮按が自伝小説の執筆を依頼され、自分の人生の記録を探索していく長編。実家の焼失、震災、父の失踪を背景に、作家が自らの人生を小説にすることの意味と、生き別れた父への接近が重ねられる。携帯端末や残された記録は、過去を保存する道具であると同時に、語り手が失われた家族…
- 011 2025 アナグマ あなぐま 『アナグマ』は、葬祭会社に出向した五十代の女性を語り手に、新しい職場での死との接触と、母の介護や看取りの記憶が重なるさまを描く作品です。死を扱う労働の現場と、家族内のケアの記憶が交差し、中年期の孤独と責任を静かな語りで見つめます。葬祭と介護という二つの場面を通じて、他者の死を手続きとして扱わざるをえ… 第11回 林芙美子賞
- 012 2025 橘の家 たちばなのいえ 『橘の家』は、中西智佐乃が『新潮』2025年3月号に発表し、同年6月に新潮社から刊行した小説です。幼い頃に2階から落ちたものの庭の橘の木のおかげで助かった恵実は、木の力を媒介する存在だという噂によって、子どもを望む人々から頼られるようになります。家に伝わる力への期待は、恵実の身体と役割を周囲の欲望に… 第38回 三島賞
- 013 2025 美土里倶楽部 『美土里倶楽部』は、夫を亡くした美土里と三人の女友達を中心に、死別後の暮らしを一年の時間で追う長篇です。中央公論新社公式ページは、夫の不在、墓、供養の問題に向き合う「未亡人倶楽部」の物語として紹介している。悲嘆を一方向に沈ませるのではなく、女友達どうしの会話や思案を通して、死者を抱えた生活の手触りを…
- 014 2024 普通の子 ふつうのこ 小学5年生の晴翔が教室のベランダから転落して骨折し、理由を語らないところから始まる長篇。母の佐久間美保は、夫の和弥との日常を続けながら、いじめの可能性を疑って真相を探る。その過程で、自身の小学生時代のいじめに関わる記憶がよみがえり、現在の親子と学校の問題、過去の記憶が交錯していく。『普通の子』という…
- 015 2024 K+ICO ウーバーイーツ配達員のKと、TikTokerとして活動する女子大生ICOが、巨大な「システム」のなかで交錯していく長篇。ギグワーク、SNS、インターネットによる偶然の接続を現代的な意匠として扱いながら、カフカ『城』を象徴的な参照点にして、資本主義の抽象的な力と個人の孤独を重ねる。KとICO、それぞれ…
- 016 2024 言霊の幸う国で ことだまのさきわうくにで 芥川賞受賞後のLこと柳千慧が、ストーカー、女性差別、外国人差別、同性愛差別、トランス差別など、いくつもの災厄に襲われる大長篇。筑摩書房公式は、本作を「あらゆる差別に抗して生き延びるために言葉を紡ぐ」闘争と再生の書として紹介している。語りは被害の列挙に留まらず、言葉によって傷つけられる経験を、言葉で書…
- 017 2024 みんなのお墓 みんなのおはか 「内藤家之墓」に引き寄せられる人々を描く、共同墓地を軸にした群像劇。裸になる快感を追う主婦、「真理」がわからない小学生たち、夜のコンビニだけを日課にする引きこもり男性、宗教的な合宿に向かう若者、潔癖症の妻を持つ中年など、ばらばらの人物が悩みを抱えながら生きている。死者の場所である墓を、生きる者の傷や…
- 018 2024 無形 むけい 立ち退き勧告が進む海辺の団地を舞台に、年老い病を患う祖父と孫娘、親が失踪した姉弟、夫に先立たれた老女、友情以上の感情を育む少女たちなどの生活が重なっていく長編。形には残らない生活の喜びや悲しみを、団地に流れる季節と記憶のなかに描く。取り壊される場所の記憶を、誰か一人の所有物ではなく、複数の生活が交差…
- 019 2024 死神 しにがみ うまくいかない作家の人生の節目ごとに、死神が現れるという設定の長編。語り手が中学二年のときに初めて出会った「こいつ」は、長く書くことのできなかった存在として回想され、死や家族の記憶と結びついていく。幻想的な相棒のようにも見える死神は、恐怖だけでなく、書くことから逃れられない作家の自意識を映す。死を擬…
- 020 2024 常盤団地の魔人 ときわだんちのまじん 常盤団地の三号棟に住む小学三年生の今野蓮は、喘息を抱え、学校ではまだ友人関係をつくりきれずにいる。団地に越してきた同い年のシンイチ、乱暴だが求心力をもつ年上の少年たち、老朽化した団地の池や空き地をめぐる出来事のなかで、蓮は子どもだけの社会にある憧れ、序列、暴力を少しずつ知っていく。冒険譚の軽やかさを…
- 021 2024 ひとでなし ひとでなし 『ひとでなし』は、星野智幸が2024年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 022 2023 あなたの燃える左手で あなたのもえるひだりてで ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサトは、目覚めると自分の身体に見知らぬ白人の手がつながれていることを知る。身体の一部が他者のものになる違和感から、国境、民族、所有、故郷の喪失へと思考が広がっていく中篇である。移植された手は単なる医療上の異物ではなく、歴史や政治の境界線が身体の内部に入り込む… 第45回 野間新人賞
- 023 2023 FICTION フィクション 演劇する集まりを「FICTION」と名づけ、十六年続けてきた「わたし」が、仲間の死や病、自身の大病を経て回想を始める連作短篇集。収録作は「FICTION 01 象使い」から「FICTION 07 助けになる習慣」まで、演劇と小説、記憶と作り話の境界を行き来する。新潮社は芥川賞受賞作『しんせかい』に連…
- 024 2023 ハジケテマザレ ハジケテマザレ コロナ禍で派遣切りにあった「私」が、生活のためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」で働き始める作品集。YouTuberの恋人をめぐる騒動、クラブでの爆踊り、激辛フェスでのプロポーズ演出など、バイト仲間との出来事が愉快さと切実さを帯びて連なる。「普通」をめぐる言葉を軸に、労働、居場所、混ざり合う…
- 025 2023 ハンチバック ハンチバック 重度の先天性ミオチュブラー・ミオパチーのため人工呼吸器と電動車椅子を使い、両親が遺したグループホームで暮らす井沢釈華。背骨がS字に湾曲した彼女は、通信制大学で学び、ウェブにコタツ記事や性的な小説を書き、匿名アカウントで「妊娠と中絶がしてみたい」と挑発的な呟きを放つ。その呟きを、彼女の書いたものをすべ… 第169回 芥川賞
- 026 2023 かっかどるどるどぅ かっかどるどるどぅ 仕事、介護、家族、お金などの問題を抱え、孤立しながら生きる人々が、従来とは別のかたちで「共に生きる」道を探す群像劇。夢を捨てきれない60代の悦子、介護に明け暮れてきた芳江、非正規雇用を転々とする理恵、自死を考える保らが、食事をふるまう片倉吉野の古いアパートへ集まっていく。東北弁を含む声の響きと食卓の…
- 027 2023 観音様の環 『観音様の環』は、瀬戸内の島から東京へ逃れるように出たマヤが、恋人ジェシカとの結婚を機に台湾へ渡り、封じてきた家族の記憶と向き合う中編である。田舎の排他的な空気、暴力的な父、母の期待と支配からの逃走が、台湾での年夜飯と母の故郷への訪問を通して再び立ち上がる。日本語と中国語、島と東京と台湾をまたぐ移動…
- 028 2023 夜のだれかの岸辺 よるのだれかのきしべ 十九歳の春、茜は八十九歳のソヨミから毎晩の添い寝と朝食を頼まれ、家計を助けるためにその仕事を受ける。血縁でも介護契約でもない奇妙な近さのなかで、若さと老い、孤独、生活の手触りが交わっていく。講談社公式の本文抜粋が示すように、語りは茜の現実感に根ざし、働くことと誰かのそばにいることの境目を静かに問う作…
- 029 2023 蝙蝠か燕か こうもりかつばめか 2022年2月に急逝した西村賢太の未刊行小説集で、完結作としては最後の表題作を含む三篇を収める。北町貫多が藤澤清造資料の調査や書簡の額装をめぐって動く「廻雪出航」「黄ばんだ手蹟」と、死の前年の貫多を描く「蝙蝠か燕か」によって、師への執着と自分の文学を問い直す。私小説的な分身を通じ、歿後弟子としての覚…
- 030 2023 流れる島と海の怪物 ながれるしまとうみのかいぶつ 母に連れられて行った屋敷で、「俺」は朱音と朱里という二人の姉妹に出会う。母がなぜ二人に会わせたのかという謎は、伯母から聞く出生の秘密と、姉妹の母の故郷である「流れる島」の神話へつながっていく。下関という土地、家族と血の記憶、少年と少女の出会いを、現実と神話が絡む濃密な語りで描いた長編である。『共喰い…
- 031 2023 最愛の さいあいの 『最愛の』は、学生時代に手紙を交わした望未を忘れられない久島が、彼女の「忘れて」という願いに向き合い、自分のためだけの文章を書き始める恋愛長編である。情報や欲望を処理する現代的な主体と、手紙という遅い言葉の形式が対置され、恋愛を記憶・忘却・書くことの問題として掘り下げる。上田岳弘が繰り返し描いてきた…
- 032 2023 植物少女 しょくぶつしょうじょ 『植物少女』は、出産時の脳出血で植物状態になった母の病室へ通う美桜の成長を通して、母と娘の関係がどう変わるかを描く長編である。母が「意思のある母」として応答できない状況を、単純な喪失や献身に閉じず、身体、ケア、親子関係の時間として見つめる。現役医師でもある著者の視点が、医療的な状況と家族の感情を乾い… 第36回 三島賞
- 033 2023 続きと始まり つづきとはじまり 二つの大きな地震と未知の感染症が時間の背景に置かれ、別々の場所で暮らす三人の日常が並行して描かれる。出来事の後にも生活は続き、過去の記憶や喪失は現在の手触りの中に戻ってくる。災害やパンデミックを直接の劇的事件としてではなく、長く蓄積する時間と人々の生活感覚として捉える長篇。大きな歴史の区切りよりも… 第60回 谷崎賞
- 034 2023 ユーチューバー ユーチューバー 『ユーチューバー』は、二十代半ばでデビューし七十歳になった作家・矢崎健介が、ユーチューバーに誘われて語り始める連作小説である。矢崎は「自由である人間」について、そして半世紀にわたって出会い、消えていった女性たちについて回想する。YouTubeという現代的な語りの場を借りながら、恋愛、老い、創作の源泉…
- 035 2023 無敵の犬の夜 むてきの いぬの よる 『無敵の犬の夜』は、北九州の片田舎で学校へ行かず、不良グループと過ごす中学生・界を描く長編。幼少期に右手の指を失った界は、地元で出会った男・橘に心酔し、彼のために単身東京へ向かう。方言と虚勢を帯びた熱のある語りが、思春期の暴走、尊敬されたい欲望、世界とつながれない孤独を押し出す。地方と東京を往復する… 第60回 文藝賞
- 036 2023 何食わぬきみたちへ なにくわぬきみたちへ 『何食わぬきみたちへ』は、新胡桃が「文藝」2022年夏季号に発表し、2023年に河出書房新社から刊行した小説です。出版社公式の内容紹介では、いじめを見て見ぬふりした自分への嫌悪を抱える伏見と、障がいのある兄と暮らす敦子を中心に、世界への違和感に抗う高校生たちの物語として示されています。
- 037 2023 恋の幽霊 『恋の幽霊』は、町屋良平が2023年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 038 2023 叩く 『叩く』は、闇バイトに近い強盗事件の現場から始まる表題作を中心に、日常に潜む暴力や取り返しのつかなさを描く短篇集です。新潮社公式ページは、表題作のほか、妻に去られた夫、海に消えた父を待つ娘など「隣の人生」を浮かび上がらせる作品集として紹介している。さえない人物の煩悶、地方や開発の影、震災後の喪失が並…
- 039 2022 はぐれんぼう はぐれんぼう 『はぐれんぼう』は、あさりクリーニング店で働く優子が、長く引き取りに来られない衣服「はぐれんぼちゃん」を持ち帰ったことから始まる長編である。翌朝、衣服が体を覆うようにまとわりつき、優子は持ち主たちを訪ねるが、服は次々に受け取りを拒まれる。トレンチコート姿のユザさんに導かれながら帰るべき場所を探す道行…
- 040 2022 荒地の家族 あれちのかぞく 宮城県亘理町の植木職人・坂井祐治、四十歳。あの「災厄」の二年後に妻を病で亡くし、再婚した相手も流産の後に家を出て、いまは老いた母と中学生の息子と暮らしている。津波という言葉を正面に掲げず「災厄」「海の膨張」と呼びながら、荒れた海辺の土地で黙々と木に向かう男の日常を描く。職を転々とする旧友や没落してい… 第168回 芥川賞
- 041 2022 ななみの海 ななみのうみ 『ななみの海』は、児童養護施設で暮らす高校生ななみが、医学部進学を目指しながら自分の進路を選び取っていく青春小説である。祖母の「馬鹿にされるな」という言葉を胸に、受験勉強、ダンス部最後の発表会、初めての恋、進学費用のためのアルバイトが重なる。十代の心許なさと揺らぎをすくい、支援や家庭環境に規定される…
- 042 2022 カルチャーセンター かるちゃーせんたー カルチャーセンターで共に過ごしたニシハラくんの未発表小説『万華鏡』を収録し、その小説に寄せられた作家・編集者たちのコメントまでも作品の一部として組み込む小説。松波太郎がニシハラくんへ語りかける形で、書きたいという欲望、書かれたものへの責任、そして「これは小説なのか」という問いを空白ごと立ち上げていく…
- 043 2022 デクリネゾン デクリネゾン 二度の離婚を経て中学生の娘・理子と暮らす小説家の志絵が、年下の大学生・蒼葉との同居を娘に告げるところから、母であることと恋愛することの緊張が露わになる長篇。仕事、家庭、恋愛のすべてを求める女性たちと、その周囲に生まれる家族的なつながりを描く。母子、ステップファミリー、欲望、生活の配分をめぐる会話が…
- 044 2022 青木きららのちょっとした冒険 あおききらら のちょっとしたぼうけん 「きらら」という名を手がかりに、人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、若いアイドルの死を願う会社員など、八つの人生を照らす連作的な作品集。無責任な暴力、すれ違う意識、他者への思い込みが、日常の少しずれた場面から立ち上がる。誰かであり誰でもない存在として生きる人々を…
- 045 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が…
- 046 2022 君たちはしかし再び来い きみたちはしかしふたたびこい 腹が破裂し死を告げられた「私」は、三度の入院、飼い猫の手術、コロナ禍を経て、痛みによって世界と自己の境界が変わっていくのを経験する。病の記録は歴史や宇宙、カフカ、『白鯨』、ブレイクなどへ跳躍し、私小説的な身体感覚と思想的な連想が重なる。時系列や視点を揺らしながら、病む身体から世界をもう一度呼び寄せる…
- 047 2022 くるまの娘 くるまのむすめ 17歳のかんこは、家族とともに車中泊をしながら祖母の葬儀へ向かう。狭い車内と旅先の景色は、父母と子のあいだに積み重なった暴力、依存、愛着を逃げ場なく浮かび上がらせる。少女の身体感覚に寄り添う濃密な語りが、家族を単純な加害と被害に分けられないものとして描き、読者に「救うなら誰を救うのか」という問いを突…
- 048 2022 まっとうな人生 まっとうなじんせい 『逃亡くそたわけ』から十数年後、花ちゃんとなごやんは富山で偶然再会する。かつて精神病院を抜け出して九州を旅した二人は、それぞれ家族を持ち、コロナ禍の同時代を生きる人として再び向き合う。富山の地名、食文化、方言、スーパーの細部までを織り込みながら、家庭を守ろうともがく花ちゃんの怒りや不安を、土地に根ざ…
- 049 2022 ミーツ・ザ・ワールド ミーツ・ザ・ワールド 焼肉擬人化漫画を愛する腐女子の会社員・由嘉里は、合コン帰りに酔いつぶれた新宿歌舞伎町で、キャバ嬢のライと出会う。ライの「この世界から消えなきゃいけない」という言葉をきっかけに共同生活が始まり、由嘉里は推しへの愛、三次元の恋、結婚や出産への思い込みを揺さぶられていく。対照的な二人の会話と歌舞伎町の人間…
- 050 2022 プリテンド・ファーザー ぷりてんど・ふぁーざー シングルファーザーとして四歳の娘を育てる恭平と、シッターとして働きながら一歳半の息子を育てる章吾が、互いの事情から四人で暮らし始める物語。高校の同級生だった二人の共同生活は、家事・育児・仕事の負担を分かち合う試みであると同時に、ケアとキャリアをめぐるひずみを可視化していく。血縁や恋愛関係だけではない…
- 051 2022 憐憫 れんびん 『憐憫』は、かつて子役だった沙良が、芸能界で伸び悩み、自分の正体を知らない相手を求めるところから始まる小説。酒場で出会った柏木に抱く感情は、愛しさであり憐憫でもあり、恋愛と呼び切れない関係の輪郭を曖昧にしていく。見られる側として生きてきた女性の孤独、承認、満たされなさを、短く張りつめた語りで追う。芸…
- 052 2022 老人ホテル ろうじんほてる 埼玉県の大家族で育った日村天使は、テレビに出る大家族の一員だったが、16歳で家を出て大宮のキャバクラで働く。生活保護を受けながら流されるように暮らしていた彼女は、かつて店で出会ったビルのオーナー・綾小路光子と、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルで再会する。光子の投資や生活の指南を通じて、天使…
- 053 2022 財布は踊る さいふはおどる 専業主婦の葉月みづほは、ある夢のために生活費を切り詰め、毎月二万円を貯金してきた。努力の末に夢を実現した直後、夫に二百万円以上の借金があることが発覚し、彼女の生活は大きく動き始める。ひとつの財布をめぐる六話を通じて、節約、借金、投資、奨学金、老後資金など、「今より少し、お金がほしい」人々の切実さと再…
- 054 2022 水平線 すいへいせん 硫黄島を墓参したことのある妹に見知らぬ男から電話がかかり、兄は不思議なメールに導かれて船に乗る。祖父母世代の疎開、激戦地に残された人々、現在の兄妹の時間が交差し、死者の言葉が海を越えて現在へ届く。視点や人称を変えながら、戦争の記憶と島の隆起する時間を重ねる長篇。戦争を記録として遠ざけず、死者が生者へ…
- 055 2022 月の三相 つきのさんそう 旧東ドイツの小さな街で「フローラが失踪した」という噂が広がり、歴史に引き裂かれた少年と少女の物語が呼び起こされる。その街では誰もが自分の「肖像面」を持ち、面に惹かれて移り住んだ望、グエット、ディアナの三人は、失われた「顔」を探して見えない境界を越えていく。いくつもの時間が重層する街を舞台に、歴史、記…
- 056 2022 雨滴は続く うてきはつづく 2004年、北町貫多は同人誌発表作「けがれなき酒のへど」が同人雑誌優秀作に選ばれ、純文学誌に転載されたことで文壇デビューを果たす。藤澤清造の歿後弟子であろうとする執念、純文学誌への執筆、恋情と自尊心の揺れが、貫多らしい苛立ちと滑稽さを伴って進む。完成直前で未完となった遺作長篇であり、作家になる以前の…
- 057 2022 私の盲端 わたしのもうたん 表題作は、大学生活や飲食店のアルバイトを楽しんでいた涼子が、人工肛門とともに生きることになり、自分の身体の変化と周囲の視線に向き合う物語である。医師でもある作者が、病や障害を医学的説明だけに閉じず、身体の境界、恥、欲望、生活の手触りとして描く。併録の「塩の道」は第7回林芙美子文学賞受賞作で、朝比奈秋…
- 058 2022 カプチーノ・コースト かぷちーのこーすと 『カプチーノ・コースト』は、片瀬チヲルが『群像』2022年10月号に発表し、同年12月に講談社から刊行された小説です。会社を休職中の26歳の早柚が、地元の海岸でゴミ拾いを始めるひと月を通じて、自分を見つめ直していきます。講談社公式の内容紹介は、しんどいときほど周囲に頼れない感覚を冒頭に置き、休職、地…
- 059 2022 あくてえ あくてえ 『あくてえ』は、山下紘加が『文藝』61巻2号に発表し、2022年7月に河出書房新社から刊行した小説です。小説家志望の19歳・ゆめは、90歳の祖母と母との3人暮らしの中で、ままならない日常を悪態に変えながら、自分の人生がこれから始まるという感覚へ向かいます。河出書房新社公式ページとBooks出版書誌デ…
- 060 2021 翼の翼 つばさのつばさ 『翼の翼』は、小学二年生の息子・翼が進学塾の全国テストをきっかけに中学受験へ向かい、母・円佳が塾、ライバル、保護者、家族の期待に巻き込まれていく長篇。子を思う気持ちが、親のプライドや世間の噂、家族内の力学と結びつき、愛情と支配の境目が見えにくくなる過程を描く。中学受験という制度の熱を通じて、家族の内…
- 061 2021 母親からの小包はなぜこんなにダサいのか ははおやからのこづつみはなぜこんなにださいのか 『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』は、実家から届く小包をめぐって、昭和・平成・令和をまたぐ家族の思いを描く連作集。業者から買った野菜を実家からの荷物と偽る女性、父が受け取っていた小包の謎、母からの最後の荷物など、物の中にしまわれた気遣い、ずれ、寂しさが開封されていく。タイトルの軽さに対して…
- 062 2021 北斗星に乗って ほくとせいにのって 『北斗星に乗って』は、上野発の寝台特急「北斗星」を軸にした8編の短篇小説集。列車という移動空間が、乗客の記憶や人生の分岐、もう一つの世界へ向かうような感覚をつないでいく。旅情だけでなく、日常から少し離れた場所で自分の過去や孤独に触れる、静かな幻想味を持つ作品集である。寝台特急の個室性と移動性を使い…
- 063 2021 星のように離れて雨のように散った ほしのようにはなれてあめのようにちった 『星のように離れて雨のように散った』は、行方不明の父、未完の『銀河鉄道の夜』、書きかけの小説という三つの「未完」をめぐる長篇です。人生の岐路に立つ女子大学院生の語り手が、宮沢賢治作品の影や父の残した手紙を手がかりに、自分自身の物語を探していきます。父の不在を単なる謎解きにせず、失われたものを言葉で追…
- 064 2021 ここはとても速い川 ここはとてもはやいかわ 児童養護施設で暮らす小学五年生の集と、園での年下の親友・ひじりの日々を描く表題作を中心にした小説集。二人が近くの淀川へ亀を見に行く時間など、子どもたちの生活の細部が温もりを含んだ言葉でたどられる。中原中也賞受賞詩人として注目された著者の初小説集で、表題作と小説第一作「膨張」を収録する。子どもの語彙や… 第43回 野間新人賞
- 065 2021 満天の花 まんてんのはな 幕末の長崎・出島に生まれ、青い目を隠して育った花が、勝海舟との出会いを経て通詞として外交の渦中に入る歴史長篇。咸臨丸、ロシア艦、大政奉還、江戸無血開城へと続く時代の転換点を、女性通訳の視点からたどる。西欧列強、幕府、身分秩序に抗し、言葉と意思で生きる人物像が読みどころになる。幕末史を英雄中心ではなく…
- 066 2021 ミトンとふびん ミトンとふびん 大切な人の死や癒えない喪失を抱えながら生きる人々を、ヘルシンキ、ローマ、台北など複数の土地で描く全6編の短篇集。旅の風景は観光的な背景ではなく、残された人が小さな光や手触りに支えられて日々を続けるための場所として置かれている。吉本ばななが長く書き続けてきた喪失、時間、愛の主題を、静かでやわらかな語り… 第58回 谷崎賞
- 067 2021 水たまりで息をする みずたまりでいきをする ある日、衣津実は夫が風呂に入らなくなったことに気づく。夫は水が臭く、体につくと痒くなると言って入浴を拒み、やがて雨に濡れに外へ出るようになり、職場で体臭が問題にされる。退職と移住を経て、夫が川で水浴びをする生活へ向かう過程を、夫婦の問題として押し返される妻の視点から描き、身体、清潔、共同生活の境界を…
- 068 2021 長い一日 ながいいちにち 小説家の夫と妻が、住み慣れた家からの引っ越しを考え始めるところから、長くつきあってきた友人たち、日々の暮らし、失ってから気づく愛着や記憶が交差していく長編。出来事を大きな劇に仕立てるよりも、生活の中でふと立ち上がる静かな感情と、時間の伸び縮みをすくい取る。日記と小説のあわいを思わせる形式で、夫婦と住…
- 069 2021 アンソーシャル ディスタンス アンソーシャル ディスタンス パンデミックに閉塞する社会で、生への希望だったバンドのライブ中止をきっかけに心中旅行へ向かう若い男女を描く表題作を含む作品集。ほかに、高アルコール飲料、整形、身体、インターネット上の視線など、追い詰められた人々の臨界点を描く作品を収める。コロナ禍の距離感を単なる時事性に閉じず、依存、疎外、自己破壊の… 第57回 谷崎賞
- 070 2021 象の皮膚 ぞうのひふ 幼少時から重度のアトピー性皮膚炎に苦しんできた五十嵐凜は、仙台の書店で契約社員として働きはじめる。肌を隠し、他人と距離を取ることで日々をやり過ごす凜に、今度は接客業の理不尽な客対応や、震災後に本を求める人々の姿が重なっていく。子どもの頃の記憶と現在の職場を往還しながら、身体に刻まれた痛み、労働の疲弊…
- 071 2021 間隙を縫う、埋める、挟まる かんげきをぬううめるはさまる 岩手県沿岸の「赤街」を舞台に、仕事のない憲正が近所の老人たちの買物代行を始めたことから、地域の人間関係が予期しない方向へ動いていく中篇。被災経験の有無によって分かれる視線や、生活の足場が不安定になる感覚を、日常の小さな仕事を通して描く。
- 072 2021 黒い水/穀雨 河林満作品集 『黒い水/穀雨 河林満作品集』は、河林満の小説を没後にまとめた作品集です。インパクト出版会公式ページでは、二度芥川賞候補になりながら受賞を逃し、57歳で亡くなった作家の復活として紹介されています。表題作「黒い水」「穀雨」のほか、「月明りのなかで」「ある執行」「塵芥のさなぎ」「黒手夢譚」「ナムナムナマ…
- 073 2021 植物忌 しょくぶつき 『植物忌』は、星野智幸が2021年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 074 2020 2020年の恋人たち にせんにじゅうねんのこいびとたち 母の急死によりワインバーを継ぐかどうか選択を迫られた前原葵を中心に、同棲相手、常連客、店を手伝う人々、新たな出会いが交錯する長篇。恋愛の高揚だけでなく、会話の途切れ、依存、別れ、仕事として店を引き受けることを描き、葵が何を選び何を手放すかを追う。直木賞受賞後の長篇第一作として、喪失後の生活再建と関係…
- 075 2020 みがわり みがわり 『みがわり』は、新人賞を受けながら本を出せずにいる作家・律が、自分と瓜二つだった亡き女性の伝記執筆を依頼される長編。取材の過程で、姉妹の確執や家族の秘密、依頼そのものの不穏さが浮かび、律は他人の人生を書こうとするほど自分自身の物語も揺さぶられていく。伝記を書くことと書かれることの関係を通じて、自己像…
- 076 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶…
- 077 2020 一橋桐子(76)の犯罪日記 ひとつばしとうこのはんざいにっき 76歳で一人暮らしの一橋桐子は、親友トモを亡くし、年金と清掃パートだけでは先行きの見えない老後に追い詰められる。孤独死で人に迷惑をかけるくらいなら刑務所に入ればよいのではないかと考え、万引、偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人と、より長く収監される方法を真剣に調べ始める。犯罪計画の滑稽さの奥に、貧困、老い…
- 078 2020 星月夜 ほしつきよる 日本の大学で日本語を教える台湾出身の柳凝月と、新疆ウイグル自治区出身で大学院進学を目指す玉麗吐孜の恋を描く長篇。二人は日本語という共通語で近づくが、家族、国家、在留資格、セクシュアリティをめぐる負荷は同じ形では共有できない。親密さの甘さよりも、相手を分かっていると思うことの危うさを静かな語りで照らす…
- 079 2020 百年と一日 ひゃくねんといちにち 人や店、駅、家、空港、家族の記憶が、数ページの掌編の中で十年、二十年、百年の時間へ伸びていく短篇集。個々の人物の大事件ではなく、場所に積み重なる時間、誰かが去り誰かが来る反復、忘れられていく出来事の痕跡を描く。長いタイトルと淡々とした語りが、日常の一瞬を歴史の厚みへ接続する。33篇のあらすじ付き掌編…
- 080 2020 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 間橋薫は卵巣の手術を経て、恋人の郁也とも性交渉から距離を置いて暮らしている。そこへ郁也の子を妊娠したという女性が現れ、子どもを育ててくれないかと唐突に持ちかける。集英社公式の紹介が示す「愛を証明する」問いは、恋人同士の倫理だけでなく、出産、身体、家族の期待へ広がっていく。薫の身体感覚と故郷の家族への… 第43回 すばる文学賞
- 081 2020 木になった亜沙 きになったあさ 『木になった亜沙』は、表題作「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の三篇を収めた作品集。誰かに食べ物を差し出したい少女が木へ、さらに割り箸へと転じる表題作をはじめ、身体の境界や役割が奇妙にずれた状況が、純粋な願いと不穏さを同時に帯びて進む。童話のような単純さと残酷さを併せ持つ語りで…
- 082 2020 口福のレシピ こうふくのれしぴ 『口福のレシピ』は、フリーのSE兼料理研究家として働く留希子と、昭和二年の品川料理教習所で働くしずえの時間を行き来する家族小説。留希子は老舗料理学校を営む家の後継者であることに抵抗を抱きながらも、SNS発信をきっかけに料理研究家として認知されていく。簡単でおいしい献立企画をめぐる問題を通じて、家庭の…
- 083 2020 日本蒙昧前史 にほんもうまいぜんし 大阪万博や日航機墜落事故など、戦後日本の狂騒と蒙昧を彩った出来事の陰にある無数の生を描く長篇。文藝春秋公式は、語り手を自在に換えつつ戦後日本の手触りを蘇らせる作品として紹介している。歴史的事件を単なる背景にせず、語りのリレーによって個人の記憶と時代の空気を重ねていく。年代記のようでいて、誰が語ってい… 第56回 谷崎賞
- 084 2020 幼な子の聖戦 おさなごのせいせん 第162回芥川賞候補作の表題作と、ビルの窓拭きを描く『天空の絵描きたち』を収める作品集。表題作では、青森の小さな村で村議をしている「おれ」が、人妻との関係を県議に握られ、同級生候補への選挙妨害を強いられる。地方政治の閉塞、個人の弱み、労働現場の緊張を、怒りと諦めのあわいにかすかな希望を探る語りで描く…
- 085 2020 推し、燃ゆ おし、もゆ 「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」という一文から始まる。高校生のあかりは、学校でも家庭でも周囲の求める「普通」をうまくこなせず、アイドルグループの一員である「推し」上野真幸を解釈し応援することだけを生活の軸、自らの「背骨」として生きている。推しの炎上をきっかけに、彼の芸能活動もあかりの日常も少… 第164回 芥川賞
- 086 2020 ポラリスが降り注ぐ夜 ぽらりすがふりそそぐよる 新宿二丁目のバー「ポラリス」に集う、多様な性的アイデンティティを持つ女性たちを描く七つの恋の物語。筑摩書房公式は、魂と身体の触れあいを求めて二丁目を訪れる女性たちの物語として紹介している。都市の夜の親密さを起点に、セクシュアリティ、移動、言語、歴史の記憶が国境を越えて響き合う。連作の形を通して、個々…
- 087 2020 月の客 つきのきゃく 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。
- 088 2020 うつくしい羽 うつくしいはね 表題作『うつくしい羽』と『あさぎり』などを収めた、上村渉の初小説集。OpenBDの版元提供情報は、食の記憶が過去を呼び覚ます作品として、離婚で心の支えを失った男と、フランス修業時代に大切な人を失った料理人の軌跡を紹介している。併録作『あさぎり』では、十五歳の少女の一時保護を通して、家族の絆と外国人労…
- 089 2020 象牛 ぞうぎゅう 表題作は、インド・ガンジス河岸の聖地にやってきた女子大生が、謎の存在である象牛に翻弄される物語。併録の『星曝し』は大阪の淀川河岸を思わせる比ラカ駄を舞台に、恋に似た激しい熱情と死者の気配を描く。現実の痛みと法螺話めいた幻想が混ざり合う、石井遊佳の芥川賞受賞後初の作品集。川べりの土地が、宗教都市や大阪…
- 090 2020 pray human ぷれいひゅーまん 『pray human』は、崔実が『群像』2020年3月号に発表し、同年9月に講談社から刊行した小説です。創作が芥川賞候補になった「わたし」は、17歳で入院した精神科で出会った安城さんからの電話を受け、精神病棟での日々、救えなかった親友、子供時代の傷を語り始めます。講談社公式は、少女たちのレジスタン…
- 091 2020 だまされ屋さん だまされやさん 『だまされ屋さん』は、星野智幸が2020年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 092 2020 坂下あたると、しじょうの宇宙 『坂下あたると、しじょうの宇宙』は、町屋良平が2020年に集英社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 093 2020 ふたりでちょうど200% 『ふたりでちょうど200%』は、町屋良平が2020年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 094 2019 私の家 わたしのいえ 祖母の法要で一堂に会した親戚たちを起点に、三世代にわたる一族の記憶と秘密をたどる連作短編集。同棲相手に追い出されて戻る梓、過去にこだわる母、孤独を愛する大叔母らの章が重なり、家族であっても他人のように分かり合えない距離を描く。家という場所を、帰る場所であると同時に逃れがたい記憶の容器として読ませる。
- 095 2019 君たちは今が世界 きみたちはいまがせかい 『君たちは今が世界』は、小学校という閉じた場で、子どもたちの関係、序列、沈黙の圧力が日々の世界そのものになっていく様子を描く長篇。副題的に示される英題「All grown-ups were once children」が示すように、子ども時代を単なる回想ではなく、現在進行形の切実な社会として捉える…
- 096 2019 アタラクシア アタラクシア 結婚生活の苦しさや不倫、家庭内の苛立ちを抱える複数の男女を描く群像長編。翻訳者の由依、シェフの瑛人、パティシエの英美、作家の桂らの視点を通じて、望んで結婚したはずなのに救われない人々の孤独と愛情への渇望が交錯する。倫理や制度では割り切れない親密さの痛みを、金原ひとみらしい熱量で描く。結婚を安定した到…
- 097 2019 瓦礫の死角 がれきのしかく 『瓦礫の死角』は、父の性犯罪によって解体した家族の記憶と、服役を終えようとする「あの人」の影を描く表題作を中心にした短篇集。講談社公式は、十七歳で無職の北町貫多が、刑期を終えようとする父、復讐に怯える母、消息不明の姉を抱えた家族の瓦礫に向き合う物語として紹介している。「病院裏に埋める」と表裏をなす不…
- 098 2019 ひよこ太陽 ひよこたいよう 一緒に住んでいた女に去られ、切り詰めた生活のなかで小説を書こうとする40代の男を描く連作小説集。書けない日々と死への誘惑に取り憑かれた語り手は、母から頼まれた人探しをきっかけに、現実と幻想の境界が揺らぐ世界へ入っていく。書けなさ、不在、生活の索漠さを見つめる私小説的な作品。
- 099 2019 五つ数えれば三日月が いつつかぞえればみかづきが 表題作は、日本で働く台湾人の「私」と、台湾人と結婚して台湾へ移った友人・実桜が、平成最後の夏に東京で五年ぶりに再会する物語。話す言葉、住む国、選び取った人生の差異が、再会の会話のなかで静かに立ち上がる。収録作「セイナイト」とあわせて、移動、言語、親密さ、記憶のずれを、越境する人のアイデンティティとし…
- 100 2019 かか かか 19歳の浪人生うーちゃんは、離婚を機に心を病み、酒に酔っては荒れる母「かか」と、弟とともに暮らしている。かかを誰より愛しながらその存在に苦しむうーちゃんは、かかの痛みが自分の身体にも及ぶような一体感のなかで、「自分がかかを生み直すしかない」という切実な祈りを抱え、ひとり熊野へと旅に出る。SNSの裏ア… 第33回 三島賞
- 101 2019 生のみ生のままで きのみきのままで 『生のみ生のままで』は、逢衣が恋人との旅行先で彩夏と出会い、東京に戻ってから急速に惹かれていく上下巻の恋愛長篇。互いに男性の恋人がいる状況から、彩夏の告白と身体的な引力をきっかけに、二人は恋と生活を選び直していく。女性同士の恋愛を、社会的な枠組みや世間体、身体の感覚をはぎ取るように正面から描く。
- 102 2019 待ち遠しい まちどおしい 北川春子、夫を亡くした青木ゆかり、新婚の遠藤沙希という世代も立場も異なる三人の女性が、ご近所付き合いを通じて少しずつ関わる長編。住まいの距離の近さと、価値観や人生段階のずれが生む噛み合わなさを、柴崎友香らしい生活の手触りのなかで描く。年齢、結婚、独居、見えにくい困難をめぐり、人はどこまで互いを判断せ…
- 103 2019 夏物語 なつものがたり 『乳と卵』の世界を引き継ぎ、作家となった夏子が、パートナーなしで妊娠・出産し子どもを持つ可能性を考え始める長篇。姉・巻子や姪・緑子の身体をめぐる物語を背後に、生まれること、産むこと、産まないこと、家族の形をめぐる声が重なっていく。文藝春秋公式が掲げる「生まれること」と「産むこと」の非対称性の問いを中…
- 104 2019 人間 にんげん 『人間』は、若い日に創作を志す者たちが集ったシェアハウスの記憶と、38歳になった「僕」の現在を往還する長篇。表現者になりたいという願い、仲間と暮らす時間の高揚、その後に残る成功や挫折の差が、自己像を問い直す物語として重なっていく。又吉直樹の初の長編として、芸術への憧れだけでなく、他者と比べながら生き…
- 105 2019 生命式 せいめいしき 『生命式』は、死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作を含む、著者自選の12篇を収めた短篇集です。OpenBDでは「素敵な素材」「素晴らしい食卓」「街を食べる」「孵化」などの収録作が確認できます。食、死、身体、家族の常識を別の社会の習俗として反転させ、正常さの輪郭を揺さぶる一冊です。推薦コメント群が…
- 106 2019 遠の眠りの とおのねむりの 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇…
- 107 2019 藁の王 わらのおう 小説家として一冊だけ本を出した語り手が、巨大私立大学で創作を教えることになり、学生たちの苦悩と自身の行き詰まりに向き合う表題作を含む作品集。新潮社公式は、文学の迷宮や小説の樹海を彷徨う人々を描く作品集として紹介している。書くこと、読むこと、他者の言葉に侵されることの怖さを、静かな幻想性と記憶の反復で…
- 108 2019 夜はおしまい よるはおしまい 「夜のまっただなか」「サテライトの女たち」「雪ト逃ゲル」「静寂」を収めた短篇集。夜、逃避、静けさといった収録作名が示すように、関係の余白や孤独を抱えた人物たちの時間を描く。島本理生の恋愛や家族関係をめぐる繊細な筆致を、より暗く静かなトーンで味わえる作品集として位置づけられる。短篇ごとの状況を急いで説…
- 109 2019 夢も見ずに眠った。 ゆめもみずにねむった 『夢も見ずに眠った。』は、夫を熊谷に残して札幌へ単身赴任した沙和子が、夫婦のすれ違いと離別を経て、新しい愛と信頼の形へ向かう長篇。岡山、札幌、熊谷など土地の記憶や物語が、二人の関係の変化と響き合う。移動する生活のなかで、結婚や家族の安定ではなく、相手を信じ直す距離を探るところが読みどころになる。
- 110 2019 レンファント れんふぁんと 『レンファント』は、育児休暇中の父親が、重い皮膚疾患を抱える子の看護と妻との関係に直面するデビュー作です。育児参加をめぐる理想と現実、ケアの身体的・精神的負荷を、家庭の内側から描きます。父親の当事者性を問う点で、家族小説としてもケアの文学としても読めます。 第124回 文學界新人賞
- 111 2019 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 『犬のかたちをしているもの』は、卵巣手術後に性交渉を拒むようになった三十歳の薫が、恋人の子を妊娠した女性から子どもを引き取らないかと提案される物語。快楽、生殖、子どもを持つことをめぐる問いが、恋愛関係や身体の履歴と重なって進む。集英社文芸公式は「一人の女性の醸成してきた問い」の行方を描く作品として紹… 第43回 すばる文学賞
- 112 2019 デッドライン でっどらいん 『デッドライン』は、2000年代初頭の東京を舞台に、修士論文の締切を抱える「僕」が、哲学、身体感覚、ゲイとしての欲望、家族とのずれのなかを生きるデビュー小説。新潮社は「ゲイであること、思考すること、生きること」を掲げ、夜の街を回遊する男たちと大学院生活を交差させる作品として紹介している。朝吹真理子の… 第41回 野間新人賞
- 113 2019 ぼくはきっとやさしい 『ぼくはきっとやさしい』は、町屋良平が2019年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 114 2019 愛が嫌い 『愛が嫌い』は、町屋良平が2019年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 115 2019 ショパンゾンビ・コンテスタント 『ショパンゾンビ・コンテスタント』は、町屋良平が2019年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 116 2018 あなたの愛人の名前は あなたのあいじんのなまえは 『あなたの愛人の名前は』は、すれ違う大人の恋愛を描く六篇の作品集。集英社公式が示す「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」は、同じ関係を別々の視点から照らし、同じ部屋にいても互いの心が決定的にずれていく痛みを描く。欲望、秘密、婚約、浮気、世間の価値観に揺れる心を、島本理生らしい繊細な心理の動きとし…
- 117 2018 ブルーハワイ ぶるーはわい 『ブルーハワイ』『辰年』『聖ミクラーシュの日』『わかれ道』『山の上の春子』『わたしのおばあちゃん』を収めた短篇集。河出書房新社は、「あたりまえ」を知らない孤独が世界を撃ち抜く作品集として紹介している。日常のなかでそれぞれのことに夢中になる人々を、平明で少し乾いた語りで捉え、家族や記憶、他者との隔たり…
- 118 2018 人生のピース じんせいのぴーす 中高一貫の女子校で過ごした潤子、みさ緒、礼香が、34歳になって結婚や恋愛、仕事との向き合い方を揺らす物語。礼香の突然の結婚をきっかけに、潤子は結婚相談所へ、みさ緒は腐れ縁の相手との関係を見直し、それぞれが自分の人生の欠けたピースを探す。婚活を題材にしながら、同調圧力や友情の距離、女性が自分の選択を引…
- 119 2018 みなさんの爆弾 みなさんのばくだん 「初恋」「譲治のために」「メアリーとセッツ」など六篇を収め、女性たちの内部に抱え込まれた欲望や怒り、関係の歪みを描く短篇集。同性への欲望、母と息子の倒錯的な結びつき、創作や日常に潜む衝動が、それぞれの「爆弾」として立ち上がる。平穏に見える生活の奥で感情が臨界に近づく瞬間を、鋭くも読みやすい語りで追う…
- 120 2018 地球星人 ちきゅうせいじん 『地球星人』は、恋愛、セックス、生殖を当然視する地球の仕組みを「人間工場」のように感じる語り手が、どう生き延びるかを問う長編です。新潮社公式紹介では、恋人と誓った魔法少女が世界と対峙する物語として位置づけられています。少女期の魔法少女的な自己像から、家族、性、生殖、暴力をめぐる社会の圧力へ進む、村田…
- 121 2018 ファーストラヴ ふぁーすとらぶ 就職活動中の女子大生・聖山環菜が父を刺殺した事件を、臨床心理士の真壁由紀がノンフィクション執筆のために追う長編。由紀は弁護士の庵野迦葉とともに面会を重ね、環菜の供述の揺れや家族関係の奥にあるものへ近づいていく。殺人事件の謎を追うミステリの緊張感と、家族という閉じた関係の迷宮を重ねた作品。
- 122 2018 日の出 ひので 明治の終わり、13歳の清作は徴兵から逃れて故郷を飛び出し、北陸から九州、横浜へ移りながら鍛冶職人として生きる。もう一つの軸として、清作を曾祖父にもつ現代の女子大生・あさひが、教職免許取得のために学ぶ姿が置かれる。時代を隔てた二人を並行させ、労働、逃走、家系の記憶、希望の継承を描く長編。
- 123 2018 独り舞 ひとりまい 台湾出身のレズビアン女性が、過去の痛みと孤独を抱えながら日本で生き直そうとするデビュー作。著者公式プロフィールでは、李琴峰が第二言語である日本語で初めて書いた小説とされており、移動と言語のずれ、性的マイノリティとしての孤立、自己回復の時間が重なる。内面に寄り添う一人称の語りが、越境する身体と言葉の不…
- 124 2018 雪子さんの足音 ゆきこさんのあしおと 東京出張中の薫は、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家・雪子さんが熱中症でひとり亡くなったことを新聞記事で知り、20年ぶりにその場所へ向かう。アパートへ近づく道のりと回想を重ねながら、大家と下宿人、若者と年長者、好意と負担の境目が少しずつ浮かび上がる。日常の会話や距離感の微細な違和を通して、人間…
- 125 2018 羅針盤は壊れても らしんばんはこわれても 西村賢太の分身的主人公・北町貫多が、二十三歳を迎え、日雇い暮らしのなかで人生の敗北感を濃くしていく小説集。田中英光や藤澤清造の私小説に救いを求める貫多が、自らも私小説を書き始めようとする姿を軸に、貧困、文学への執着、自己嫌悪が泥臭く絡み合う。表題作に加え「陋劣夜曲」などを収め、惨めさと不屈さが同時に…
- 126 2018 つかのまのこと つかのまのこと かつての住み家らしき「この家」をさまよい続ける「わたし」が、次々に入れ替わる住人たちを見守る物語。幽霊のような語り手の視点から、家に残る記憶と、誰かを待ち続ける時間が静かに積み重ねられる。柴崎友香が俳優・東出昌大をイメージして小説を書き、市橋織江の写真と組み合わされた、写真と小説の境界を意識した一冊…
- 127 2018 ウィステリアと三人の女たち ウィステリアとさんにんのおんなたち 「彼女と彼女の記憶について」「シャンデリア」「マリーの愛の証明」「ウィステリアと三人の女たち」の4篇を収める短篇集。同窓会、デパート、女子寮、廃墟となった屋敷を舞台に、女性たちが不確かな記憶と死の気配に触れていく。記憶、死、救済、自己同一性が幻想的な気配で重なり、なだらかな散文がいつのまにか現実の足…
- 128 2018 夜更けの川に落葉は流れて よふけのかわにおちばはながれて 北町貫多の二十代前半を描く「寿司乞食」「夜更けの川に落葉は流れて」「青痰麺」の三篇を収める作品集。表題作では、無気力で受け身になっていた貫多が梁木野佳穂という女性との関わりによって、わずかに外の世界へ引き戻されていく。貧しさ、職場の失敗、恋愛の痛み、長く尾を引く恨みを、私小説的な乾いた筆致で読ませる…
- 129 2018 DJヒロヒト ディージェイヒロヒト 『DJヒロヒト』は、パラオ放送局のラジオ番組という奇想の形式を通して、昭和史・文学史・戦争の記憶を再構成する大長編です。中島敦、南方熊楠、森鴎外らの名が交差し、謎のDJの語りが歴史上の人物とフィクションの声をリミックスしていく。ラジオ、録音、放送というメディアの仕掛けを使いながら、天皇制と近代日本を…
- 130 2018 はんぷくするもの はんぷくするもの 東北沿岸の「赤街」を舞台に、仮設の商店で暮らす三十代の男・毅の日々を描く。津波ですべてを流された者と、被害を受けなかった者のあいだに生じる正義や負い目が、わずかなツケをめぐる攻防に凝縮される。小さな生活圏から、災害後の分断と諧謔を掘り起こす作品。十畳の仮設商店という狭い場所を舞台に、被災後の生活が持… 第55回 文藝賞
- 131 2018 焰 ほのお 『焰』(新潮社公式表記は『焔』)は、親の介護に追われる男、人間がお金として売買される社会、真夏の公園で涙が止まらない人々などを描く九篇の作品集。新潮社公式ページは、自分ではない何かになりたいと切望する人々が語り出す作品として紹介しており、介護、貨幣化、身体変容の寓話が現代社会の閉塞を照らす。ブレイデ… 第54回 谷崎賞
- 132 2018 しき 『しき』は、町屋良平が2018年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 133 2017 ハッチとマーロウ はっちとまーろう 11歳の誕生日に母から「大人を卒業する」と告げられた双子のハッチとマーロウが、突然自分たちの生活を引き受けることになる長編。料理や服選び、双子であることの個性、父の不在といった日常の問いを通じて、子どもから大人へ向かう時間を軽やかに描く。かわいらしい双子の語り口の奥に、母子関係や自立の痛みが少しずつ…
- 134 2017 人間タワー にんげんたわー 『人間タワー』は、朝比奈あすかが人間関係の積み重なりや、集団の中で支え合うことの危うさを扱う小説として整理できます。タワーという題名は、高く積み上がる共同性と、崩れやすい均衡の両方を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 135 2017 クラウドガール クラウドガール 『クラウドガール』は、対照的な姉妹・杏と理有の視点を往復しながら、姉妹の愛憎と記憶のずれを描く長編です。クラウドという題名は、記憶や関係が固定されず、曖昧に保存される感覚を示します。姉妹の語りを通じて、家族の親密さと傷つけ合いが浮かび上がります。
- 136 2017 劇場 げきじょう 『劇場』は、売れない劇作家・永田と、彼を支える沙希の恋愛を描く長編です。演劇を作ることと恋愛で相手を傷つけることが重なり、表現者の自意識と未熟さが露出します。恋愛小説であると同時に、創作の場にしがみつく人物の痛みを読む作品です。
- 137 2017 幸福な水夫 こうふくなすいへい 『幸福な水夫』は、木村友祐が水夫という移動する労働者の像を通じて、幸福と漂流の関係を描く作品として整理できます。海や船のイメージは、生活の不安定さと越境の感覚を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 138 2017 無敵の二人 むてきのふたり 『無敵の二人』は、中村航が二人でいることの強さと危うさを描く小説として整理できます。無敵という言葉は明るい連帯を示す一方、外の世界に対する閉じた感覚も含みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 139 2017 おらおらでひとりいぐも おらおらでひとりいぐも 主人公は東北出身、74歳の桃子さん。結婚を目前に故郷を飛び出して上京し、住み込みの仕事、周造との結婚、二児の子育て、そして夫との突然の死別を経て、いまは東京郊外の家にひとりで暮らす。静かな日々のなか、桃子さんの内から標準語と懐かしい東北弁の無数の「声」が湧き上がり、孤独や老い、夫への思い、これからの… 第158回 芥川賞
- 140 2017 世界のすべてのさよなら せかいのすべてのさよなら 『世界のすべてのさよなら』は、30歳になった同級生四人の関係と変化を描く長編です。幻冬舎公式は、会社員として生きる悠、恋愛に振り回される翠、画家を目指す竜平、体調を崩して人生を休む瑛一を置き、悠の結婚をきっかけにそれぞれの時間が動く物語として紹介しています。別れと後悔を終点にせず、失った時間や関係を…
- 141 2017 千の扉 せんのとびら 『千の扉』は、三千戸規模の都営団地を舞台に、永尾千歳と夫・一俊、一俊の祖父・日野勝男らの時間をたどる長篇です。骨折で入院した勝男に人探しを頼まれた千歳は、いるのかどうかも定かでない人物を探して巨大な団地を歩きます。団地に住む人々、喫茶店、女子中学生、家族の記憶が重なり、都市の住宅空間を土地と生活史の…
- 142 2017 わたしたちは銀のフォークと薬を手にして わたしたちはぎんのふぉーくとくすりをてにして 『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』は、島本理生が食事、薬、恋愛を結びつけて、身体と親密さを描く小説として整理できます。銀のフォークは生活の華やぎを、薬は病や不安を示し、その二つが同じ手に置かれます。恋愛の甘さだけでなく、身体の脆さを含んだ関係を読む作品です。
- 143 2017 紅い海 あかいうみ 『紅い海』は、高倉やえが2017年12月に刊行した短篇集です。Books.or.jpの内容紹介では、文明の衝突によって息子を喪った夫婦の苦悩と祈りを描く表題作「紅い海」、二人の女の墓碑をめぐる「行方」、自立を選んだ母と娘の歳月を綴る「夢の先の色」の三篇を収める作品集として紹介されています。通訳者とし…
- 144 2017 とぜね、かちゃくちゃね とぜね、かちゃくちゃね 『とぜね、かちゃくちゃね』は、第3回林芙美子文学賞の受賞作として『小説トリッパー』に掲載された工藤千尋の作品。NDLサーチで掲載誌とページ範囲を確認でき、既存の文学賞データベースでも同回受賞作として確認できる。公開資料では内容紹介が見つからないため、方言的な題名から語り口や舞台を推測することは避ける… 第3回 林芙美子賞
- 145 2017 光点 こうてん 工場しかない閉じられた町で暮らす実以子が、弁当工場と家を往復する日々のなかで、八つ山と呼ばれる裏山で青年カムトと出会う。母のいらだちや父の無関心から逃れるように神社へ通う語りは、身体感覚と祈りのかたちをめぐって不穏に深まる。閉塞した生活から、言葉以前の祈りや表現を探る作品。 第41回 すばる文学賞
- 146 2017 日曜日の人々(サンデー・ピープル) にちようびのひとびと さんでー ぴーぷる 『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』は、死に惹かれる心や自傷、摂食、不眠といった切迫した声を、複数の断片として響かせる青春小説。講談社は「他者に何かを伝えること」が救いになりうるのではないかという問いを掲げ、他者へ届く/届かない声を作品の中心に置いている。硬質で鋭い言葉の連なりが、孤独と希求を同時… 第39回 野間新人賞
- 147 2017 小指が燃える こゆびがもえる 2017年8月に文藝春秋から刊行された作品集。NDLで収録作「沈黙のなかの沈黙」「小指が燃える」を確認できる。
- 148 2017 スイミングスクール 『スイミングスクール』は、高橋弘希が2017年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 149 2016 少女は花の肌をむく しょうじょははなのはだをむく 『少女は花の肌をむく』は、朝比奈あすかが少女の身体と成長への違和感を扱う小説として整理できます。花の肌を「むく」という題名は、柔らかさや美しさの裏にある痛みを想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 150 2016 イノセント いのせんと 『イノセント』は、島本理生が無垢さと傷つきやすさをめぐる恋愛・家族の物語として描く長編と整理できます。無垢であることは守られる状態であると同時に、他者に利用されやすい危うさも含みます。親密な関係の中で、自己決定と依存の境界が揺れる作品です。
- 151 2016 イサの氾濫 いさのはんらん 『イサの氾濫』は、木村友祐がイサという人物や存在をめぐる記憶、土地、暴力の広がりを描く短篇集として整理できます。氾濫という語は、抑え込まれたものがあふれ出す感覚を示します。既存データには三島由紀夫賞候補作品を収めるとあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。
- 152 2016 軽薄 けいはく 『軽薄』は、甥である10代の弘斗と関係を持つ30歳のカナの、破滅的な愛を描く長編です。禁忌の関係を通じて、欲望、孤独、自己破壊が露出します。軽さを意味する題名とは裏腹に、人物の身体と倫理の重さが息苦しく迫る作品です。
- 153 2016 まっぷたつの先生 まっぷたつのせんせい 『まっぷたつの先生』は、木村紅美が教師像や学びの場に裂け目を入れる小説として整理できます。先生というひとつの役割が「まっぷたつ」に割れる題名から、教育、権威、個人の内面の分裂が読み取れます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 154 2016 虫たちの家 むしたちのいえ 『虫たちの家』は、九州の孤島にあるグループホームで、インターネットで傷ついた女性たちが共同生活を送る物語です。家という避難所は、保護の場であると同時に、傷ついた人びとの距離を測り直す場所になります。現代的な孤立とケアの問題を、共同生活の細部から読ませる作品です。
- 155 2016 野良ビトたちの燃え上がる肖像 のらびとたちのもえあがるしょうぞう 『野良ビトたちの燃え上がる肖像』は、格差と貧困の中で生きる人々を描いた長篇です。野良ビトという呼び名は、制度や共同体の外へ押し出された人びとの姿を示します。肖像という形式を通じて、個々の生活と社会の暴力を結びつけて読む作品です。
- 156 2016 大きくなる日 おおきくなるひ 『大きくなる日』は、佐川光晴が子どもの成長と家族の時間を描く小説として整理できます。成長は単に年齢を重ねることではなく、家族や学校の中で自分の場所を見つけ直す経験として描かれます。日常的な出来事を通して、青春と家族の関係を読みやすくたどれる作品です。
- 157 2016 しんせかい しんせかい 19歳のスミトは、神戸からフェリーと汽車を乗り継ぎ、北海道の【谷】で脚本家の【先生】が主宰する私塾に二期生として入る。俳優や脚本家を志す年齢も経歴も様々な仲間たちとの共同生活は、しかし稽古よりも、施設造りや農作業、馬の世話といった肉体労働に明け暮れるものだった。倉本聰主宰の富良野塾での著者自身の体験… 第156回 芥川賞
- 158 2016 美しい距離 うつくしいきょり 『美しい距離』は、妻の末期がんに寄り添う夫の視点から、死に向かう日常を静かに描く小説です。看病や病院での時間を、劇的な悲嘆ではなく、相手との距離を測り続ける営みとして捉えます。死を前にした夫婦の親密さと孤独を、抑えた語りで読ませる作品です。
- 159 2016 ジニのパズル じにのぱずる オレゴン州の高校を退学になりかけているジニは、ホームステイ先で出会ったステファニーに、5年前の東京で起きた出来事を語り始めます。日本の小学校から朝鮮学校へ移ったジニは、朝鮮語ができないまま居場所を探し、二つの言語と複数の帰属の間で自分の輪郭を問い続ける。1998年のテポドン発射翌日にチマ・チョゴリ姿… 第59回 群像新人賞
- 160 2016 青が破れる あおがやぶれる ボクサーになりたいがなれない青年・秋吉を中心に、恋愛、友人関係、死の予感が交錯する青春小説。ジムでのスパーリングや不倫関係、病床の友人の恋人への見舞いを通じて、若者たちの不安定な生が描かれる。短い枚数の中で、身体の衝動と喪失感を結びつけるデビュー作。 第53回 文藝賞
- 161 2016 そういう生き物 そういういきもの 薬剤師の千景とスナック勤めのまゆ子は、高校の同級生として10年ぶりに再会し、思いがけず一緒に暮らし始めます。二人が心に秘めてきた過去を軸に、愛と性、心と体が思いどおりにならない感覚を描く作品です。再会と共同生活の静かな場面から、親密さの難しさと身体の記憶が浮かび上がります。 第40回 すばる文学賞
- 162 2016 縫わんばならん ぬわんばならん 九州長崎の漁村の島を舞台に、一族をめぐる四世代の来歴を女性の語りで編む作品。ほころびていく意識から湧き出る声を拾い、記憶の断片を縫い合わせるように家族史を立ち上げる。方言と声の流れが、過去・記憶・語り継ぎの主題を支えている。島の生活と老いの身体感覚が、個人史を超えた時間の厚みを生む。 第48回 新潮新人賞
- 163 2016 カブールの園 かぶーるのその 日系アメリカ人三世の女性が、IT企業を立ち上げた友人とヨセミテへ向かい、日系人強制収容所の記憶に触れていく表題作を中心とする作品集。移民、戦争の記憶、アメリカ社会の周縁に置かれた人々を、作者らしい構成意識で扱う。収録作「半地下」とあわせ、越境するアイデンティティと継承されにくい記憶が主題となる。 第30回 三島賞
- 164 2015 あこがれ あこがれ 『あこがれ』は、小学生の麦彦とヘガティーの友情と淡い憧れを描く川上未映子の連作長篇です。子どもの視点を通じて、名前、身体、家族への違和感が瑞々しく描かれます。明るい成長物語であると同時に、他者になりたい気持ちの切実さを読む作品です。
- 165 2015 自画像 じがぞう 『自画像』は、朝比奈あすかが自己像と他者からの視線をめぐる不安を描く小説として整理できます。自画像は自分を描く行為であると同時に、見られる自分を作る行為でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 166 2015 天使はここに てんしはここに 『天使はここに』は、朝比奈あすかが救いを求める人物たちの孤独を描く小説として整理できます。天使という言葉は超越的な存在であると同時に、身近な誰かへの希望にも読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 167 2015 薄情 はくじょう 『薄情』は、群馬の地方都市に生きる男を通して、土地への愛着と冷淡さを描く絲山秋子の長篇です。故郷や人間関係は温かいものとしてだけでなく、切り捨てたり距離を置いたりするものとして現れます。地方の生活感と、人の薄情さを見つめる乾いた文体が読みどころです。 第52回 谷崎賞
- 168 2015 火花 ひばな 売れない若手漫才師の徳永は、熱海の花火大会の営業で出会った先輩芸人・神谷の才能と破天荒な生き方に惹かれ、弟子にしてほしいと申し出る。神谷の伝記を書くという条件で交流が始まり、二人は東京の街を飲み歩きながら笑いの本質をめぐる対話を重ねていく。やがて徳永のコンビは少しずつ世に出る一方、笑いに純粋すぎる神… 第153回 芥川賞
- 169 2015 持たざる者 もたざるもの 『持たざる者』は、震災後の不安の中で、東京を離れる者と残る者、四人の男女の選択を描く長編です。生活の基盤、愛情、経済的な余裕を「持つ/持たない」という感覚が、人物たちの関係を揺らします。社会の大きな不安を、恋愛や家族、都市での暮らしの手ざわりから読む作品です。
- 170 2015 夏の裁断 なつのさいだん 『夏の裁断』は、執筆を辞めた女性小説家のもとに若い男性が現れ、破綻した恋愛が始まる長編です。書くことを断った人物が、恋愛や身体の関係を通じてもう一度言葉に絡め取られていきます。夏の熱と「裁断」という語の冷たさが、恋愛の高揚と自己破壊の感覚を並置しています。
- 171 2015 匿名者のためのスピカ とくめいしゃのためのすぴか 『匿名者のためのスピカ』は、島本理生が名前を持たない/名乗れない存在へのまなざしを扱う小説として整理できます。スピカという星の名は、匿名性の闇の中にある小さな指標のように働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 172 2015 ウォーク・イン・クローゼット ウォーク・イン・クローゼット 『ウォーク・イン・クローゼット』は、綿矢りさが衣服、部屋、自己像をめぐる女性の感覚を描く小説です。クローゼットは外に見せる姿を準備する場所であり、同時に隠しておきたい自分をしまう場所でもあります。親密さと自意識の揺れを、軽やかで鋭い語りで読ませる作品です。
- 173 2015 地に満ちる ちにみちる 『地に満ちる』は、竹林美佳の第39回すばる文学賞佳作です。自らの過失で子を亡くしたカナが、離婚、不眠、睡眠セラピー、人工授精技師としての仕事を抱えながら生きる姿を描きます。喪失と生殖医療の精密な描写が交差し、壊れた内面と職能の冷静さが同居する点に緊張があります。
- 174 2015 悲しみと無のあいだ かなしみとむのあいだ 2015年7月に文藝春秋から刊行された作品集。NDLで収録作「愛撫、不和、和解、愛撫の日々」「悲しみと無のあいだ」を確認できる。
- 175 2015 呪文 じゅもん 『呪文』は、星野智幸が2015年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 176 2015 朝顔の日 『朝顔の日』は、高橋弘希が2015年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 177 2014 不自由な絆 ふじゆうなきずな 『不自由な絆』は、朝比奈あすかが人と人を結ぶ関係の重さを描く小説として整理できます。絆は美しいつながりではなく、家族や友人関係を縛る不自由さとして現れます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 178 2014 清とこの夜 きよとこのよる 『清とこの夜』は、夜の時間を背景に、人物の孤独や記憶を描く広小路尚祈の小説として整理できます。題名は人名と「この夜」を結び、特定の一夜に凝縮される関係や感情を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 179 2014 彼女の家計簿 かのじょのかけいぼ 『彼女の家計簿』は、戦前から三世代にわたる女性たちを、家計簿という生活記録で結ぶ原田ひ香の長篇です。数字や支出の記録は、家族史、労働、ジェンダーの記憶を読み解く手がかりになります。日々の細部から女性の生の選択をたどる作品です。
- 180 2014 九年前の祈り くねんまえのいのり 35歳のさなえは、カナダ人の夫に去られたあと、激しい癇癪を起こす幼い息子・希敏を連れて、故郷である大分の海辺の小さな集落に帰ってくる。育児に疲弊する彼女の脳裏には、九年前、集落の女たちとカナダを旅した際、世話役の「みっちゃん姉」が異国の教会で見せた祈りの姿が繰り返し蘇る。そのみっちゃん姉の息子がいま… 第152回 芥川賞
- 181 2014 LIFE らいふ 『LIFE』は、松波太郎が生きることそのものを題名に掲げ、身体、生活、言葉の不安定さを描く小説です。人物の経験は分かりやすい筋に回収されず、断片的な感覚として立ち上がります。純文学の実験性と生活感が同居する作品です。 第36回 野間新人賞
- 182 2014 女のいない男たち おんなのいないおとこたち 『女のいない男たち』は、「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「木野」などを収める村上春樹の短篇集です。女性を失った、あるいは理解できなかった男性たちの孤独が、語り直しや回想を通じて浮かび上がります。恋愛小説でありながら、喪失後に残る空白そのものを読む作品集です。
- 183 2014 おれたちの故郷 おれたちのふるさと 『おれたちの故郷』は、佐川光晴が少年たちの成長と場所への思いを描く小説です。故郷は単なる懐かしい場所ではなく、十代の人物が他者と併走しながら自分を作る場として現れます。青春と共同性を、まっすぐな語りで読ませる作品です。
- 184 2014 Red れっど 『Red』は、専業主婦がかつての恋人との再会をきっかけに、不倫と欲望へ踏み込んでいく島本理生の長篇です。家庭、性愛、母であることの役割が衝突し、主人公の身体と自己決定が問われます。官能的な筆致で、恋愛の昂揚と生活の閉塞を同時に描く作品です。
- 185 2014 離陸 りりく 『離陸』は、絲山秋子が時間と空間を大きく動かしながら、人の移動と記憶を描く長篇です。タイトルどおり、地上の生活から浮き上がるように物語が進み、現実の距離感が変わっていきます。旅や移動の小説であると同時に、記憶の重力をめぐる作品です。
- 186 2014 鉄童の旅 てつどうのたび 『鉄童の旅』は、佐川光晴が鉄道と少年の移動を結びつける成長小説として整理できます。旅は遠くへ行くことだけでなく、自分の居場所や家族との距離を測る経験になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 187 2014 あなたへの歌 あなたへのうた 『あなたへの歌』は、楊逸が他者へ向ける言葉と、移動する人びとの記憶を扱う小説として整理できます。歌という形式は、直接届かない思いを誰かへ送るための媒介になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 188 2014 指の骨 ゆびのほね 太平洋戦争中の南方戦線で負傷した一等兵の「私」が、臨時野戦病院で過ごす日々を語る戦争小説。食料の調達、戦友の死、退避を余儀なくされる状況を通じて、戦場の空白と狂気が描かれる。身体の損傷と形見としての骨が、忘れられた戦場の記憶を呼び戻す。静かな語りのなかに、死が日常化した場所の異様さがにじむ。 第46回 新潮新人賞
- 189 2014 レールの向こう れーる の むこう 沖縄に生きて創作を続けてきた老年の作家が、妻の入院をきっかけに日常と記憶を往還する作品集。表題作では、病院や家族との現在の生活と、レールの向こうにある創作の記憶が重ねられる。老いと死を含む生活を慈しみながら、作家として切り捨てられない不穏な領域を見つめる。 第41回 川端賞
- 190 2014 夜は終わらない よるはおわらない 『夜は終わらない』は、星野智幸が2014年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 191 2013 愛の夢とか あいのゆめとか 『愛の夢とか』は、日常のなかの小さな喪失と出会いを描く川上未映子の短篇集です。恋愛や記憶は劇的な事件としてではなく、ふとした言葉や風景の変化として現れます。リアリズムの手触りのなかに、静かな痛切さが残る作品集です。 第49回 谷崎賞
- 192 2013 憧れの女の子 あこがれのおんなのこ 『憧れの女の子』は、朝比奈あすかが女性同士の視線や自己像の揺れを扱う小説として整理できます。題名の「憧れ」は、好意や羨望だけでなく、自分との差異を意識させる感情として働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 193 2013 晩年様式集(イン・レイト・スタイル) ばんねんようしきしゅう 『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』は、東日本大震災後に書き継がれた大江健三郎晩年の長篇です。老いた作家の自己検証、家族、死者の記憶が重なり、作品を書くことそのものが喪失への応答として描かれます。大江の後期小説群を締めくくるように、長い息の文体で過去と現在を往還します。
- 194 2013 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 しきさいをもたないたざきつくると、かれのじゅんれいのとし 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、36歳の多崎つくるが高校時代の突然の絶交の謎をたどる長篇です。名古屋、東京、フィンランドへ向かう旅は、記憶の欠落と自己像の空白を埋める巡礼として進みます。抑制された語りで、友情、喪失、回復不能な時間を扱います。
- 195 2013 自分を好きになる方法 じぶんをすきになるほうほう 『自分を好きになる方法』は、主人公リンデの人生から六つの一日を切り出し、自己肯定の難しさを描く本谷有希子の長篇です。人生の節目を大きなドラマではなく、身体感覚や他者とのずれとして捉えます。題名の明るさと、実際の生きづらさの落差が読みどころです。 第27回 三島賞
- 196 2013 おれたちの約束 おれたちのやくそく 『おれたちの約束』は、佐川光晴が「おれ」から「おれたち」へ広がる関係を描く小説です。個人の正義や孤独なヒーロー像ではなく、仲間や共同性のなかで約束が意味を持つ構図が見えます。対談記事の題名にもあるように、単独者から複数者へ移る視点が読みどころです。
- 197 2013 獅子渡り鼻 ししわたりばな 『獅子渡り鼻』は、親の事情で海辺の集落に預けられた少年・尊の日々を描く小野正嗣の小説です。土地の記憶、祈り、共同体の気配が、少年の視界を通じて静かに立ち上がります。海辺の集落を舞台に、家族から離された子どもの孤独と場所への感受性を描きます。
- 198 2013 流転の魔女 りゅうてんのまじょ 『流転の魔女』は、楊逸が移動する女性の生と、越境のなかで変わっていく家族や記憶を描く小説として整理できます。流転という語は、土地や身分が安定しない感覚を示し、魔女という像は周囲からの異物視も思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 199 2013 よだかの片想い よだかのかたおもい 『よだかの片想い』は、顔に大きなあざを持つ女性が、映画撮影をきっかけに初めての恋へ向かう島本理生の長篇です。恋愛は救済として単純化されず、身体の見られ方と自己受容の問題を伴います。題名の片想いは、相手への思いだけでなく、自分自身へ向けるまなざしにも広がります。
- 200 2013 歪んだ忌日 ゆがんだきじつ 『歪んだ忌日』は、西村賢太が忌日と記憶をめぐる感情のねじれを描く私小説的作品です。故人への思いは清らかな追悼ではなく、怒り、屈辱、生活の停滞を含んだものとして現れます。乾いた語りで、喪失と執着の歪みを読ませます。
- 201 2013 想像ラジオ そうぞうらじお 海沿いの町で高い杉の木のてっぺんに引っかかっているDJアークが、想像の電波を使ってリスナーに語りかける小説。届くメールやリクエストを読み上げながら、どうしても聞きたいひとつの声へ向かっていく。震災後の死者と生者、声と想像力をめぐる、ラジオ番組形式の物語である。 第35回 野間新人賞
- 202 2013 すっぽん心中 すっぽん しんじゅう 休職中で行き詰まった男と、痛い目に遭いつつもあっけらかんと生きる女が、不忍池で出会い霞ヶ浦へ向かう表題作を中心にした作品集。貧しさや失敗を重く閉じ込めず、滑稽さと哀愁が混じる道行きとして描く。会話と行動のずれから、人物の孤独と生活の可笑しみがにじむ。 第40回 川端賞
- 203 2013 感受体のおどり かんじゅたいのおどり 『感受体のおどり』は、文藝春秋BOOKSが「大河恋愛小説」であり「記憶についての物語」でもあると紹介する長篇です。『abさんご』で注目された黒田夏子の実験的な言葉の運動を、より長い時間幅と恋愛・記憶の物語へ広げる作品として位置づけられます。
- 204 2012 すみれ すみれ 『すみれ』は、青山七恵が若い女性の日常と、名づけがたい違和感を静かに描く小説です。すみれという小さな花の像は、華やかさよりも、身近な場所に残る感情の気配を思わせます。抑えた語りのなかで、家族や恋愛に回収されない孤独が見えてきます。
- 205 2012 55歳からのハローライフ ごじゅうごさいからのハローライフ 『55歳からのハローライフ』は、定年前後の世代が仕事、家族、老いを前に再出発を探る村上龍の連作小説集です。人生の後半は穏やかな余生ではなく、労働市場や家族関係の変化にさらされる時間として描かれます。複数の人物を通じて、老いと孤独の現代的なかたちが見えてきます。
- 206 2012 母親ウエスタン ははおやうえすたん 『母親ウエスタン』は、母親という役割を西部劇的な題名でずらし、家族と女性の生き方を描く原田ひ香の小説です。母は家庭内の静かな存在ではなく、荒野を進む人物のように社会や家族の圧力に向き合います。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 207 2012 ひらいて ひらいて 『ひらいて』は、片想いの相手とその恋人の関係に介入していく女子高生・愛の暴走を描く綿矢りさの青春小説です。恋は純粋な感情ではなく、他者の身体や秘密へ踏み込む衝動として描かれます。学校という狭い共同体のなかで、恋愛、性、支配欲が鋭く交差します。
- 208 2012 ブラスデイズ ぶらすでいず 『ブラスデイズ』は、吹奏楽や音楽活動を思わせる題名を通じて、青春と集団の時間を描く中山智幸の小説です。音を合わせる行為は、個人の感情と共同体の規律を同時に浮かび上がらせます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 209 2012 七緒のために ななおのために 『七緒のために』は、誰かのために生きることと、自分の感情を保つことの境界を描く島本理生の小説として整理できます。題名の「ために」は、献身であると同時に、関係への囚われも示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 210 2012 さよならクリストファー・ロビン さよならクリストファー・ロビン 2012年に新潮社から刊行された、高橋源一郎自身が「最高傑作」と称した短篇集。表題作「さよならクリストファー・ロビン」は『クマのプーさん』の登場人物を著者の世界に招き入れる試みから生まれ、ほかに「峠の我が家」「星降る夜に」「お伽草紙」「ダウンタウンへ繰り出そう」「アトム」の計六篇を収める。児童文学や… 第48回 谷崎賞
- 211 2012 しろいろの街の、その骨の体温の しろいろのまちの、そのほねのたいおんの 『しろいろの街の、その骨の体温の』は、小学4年生の結佳が、女の子同士の複雑な友人関係をやり過ごしながら、伊吹雄太への恋愛とも支配ともつかない感情を強めていく長編です。Amazonの商品紹介では、女の子が少女へ変化する時間を切り取り、性や欲望を丹念に描く静かな衝撃作として説明されています。ニュータウン… 第26回 三島賞
- 212 2012 タダイマトビラ タダイマトビラ 『タダイマトビラ』は、子を愛せない母のもとで育った少女・恵奈が、満たされない「家族欲」を秘密の行為で処理しようとする長編です。新潮社公式紹介では、高校に入って年上の学生と同棲を始めても理想の家族への渇きが止まらず、世界が一変していく物語として説明されています。家族を自然な愛の場とみなす前提を疑い、家…
- 213 2012 わたしがいなかった街で わたしがいなかったまちで 『わたしがいなかった街で』は、柴崎友香が、経験していない戦争や過去の映像と、現在の都市生活を重ねる小説です。自分がいなかった場所や時間をどう想像するかが、記憶と責任の問いになります。静かな語りのなかで、戦争の記録と個人の日常が交差します。
- 214 2012 夜蜘蛛 よぐも 『夜蜘蛛』は、亡父の戦争の記憶をめぐる手紙の謎を描く田中慎弥の中篇です。父の過去は家族の内部に沈み込み、手紙という媒体を通じて遅れて現在に届きます。戦争、父子、記憶の問題を、不穏で乾いた語りで掘り下げます。
- 215 2012 冥土めぐり めいどめぐり 『冥土めぐり』は、家族に搾取され続けてきた奈津子が、脳の病を得て車椅子生活を送る夫・太一と一泊二日の旅に出る作品です。没落した家族の記憶と、夫との静かな絆が旅の時間の中で重なります。家族からの傷とケアの関係を、救済のあり方として問い直す作品です。 第147回 芥川賞
- 216 2012 泡をたたき割る人魚は あわをたたきわるにんぎょは ワニのような形をした島で、左半分に住む薫が「魚になりたい」と願い、脚と配達用の原付バイクと引き換えに人魚になる。童話的な変身譚を現代の島の生活へ移し、身体の違和感や孤独を寓話的に描く。人魚という異形の姿が、社会の中で生きることの痛みを照らす作品である。
- 217 2012 肉骨茶 にくこつちゃ シンガポール・マレーシアへの旅の途中で母のもとを抜け出した17歳の赤猪子を描く。食べ物が自分の身体に蓄積していくことへの恐怖から逃れようとする彼女は、友人ゾーイーの海辺の別荘に身を寄せる。食、身体、母子関係を通じて、人間であることへの拒絶を激しく描くデビュー作。 第44回 新潮新人賞
- 218 2011 ハコブネ ハコブネ 『ハコブネ』は、性をめぐる違和感を抱える三人の女性を描く長編です。Amazonの商品紹介では、自らの性別を脱ぎ捨てたセックスを求める里帆、女であることに固執する椿、肉体感覚を持てない千佳子という、交差しない三人の性の行方が示されています。女であること、身体を持つこと、他者と関係することの苦しさを描く…
- 219 2011 かわいそうだね? かわいそうだね 『かわいそうだね?』は、恋人が元恋人と同居を始めるという理不尽な状況に置かれた女性を描く綿矢りさの小説です。誰かを「かわいそう」と呼ぶ視線そのものが、恋愛、同情、優越感の複雑な関係をあぶり出します。口語的な軽さの奥で、女性同士の比較や自己防衛が痛切に響きます。
- 220 2011 こちらあみ子 こちらあみこ 『こちらあみ子』は、周囲と噛み合わない少女あみ子の言動を通じて、家族、学校、共同体の残酷さを描く今村夏子のデビュー単行本です。純真さは美談としてではなく、他者とのずれを増幅する力として働きます。簡潔な文体のなかで、笑いと痛みが同時に立ち上がる作品です。 第24回 三島賞
- 221 2011 心はあなたのもとに こころはあなたのもとに 『心はあなたのもとに』は、村上龍が恋愛と病、身体の問題を重ねて描く長編です。親密な関係は感情だけでは支えきれず、医療、経済、身体の条件によって揺さぶられます。恋愛小説でありながら、現代社会の生の不安を読む作品でもあります。
- 222 2011 マザーズ マザーズ 『マザーズ』は、小説家、モデル、専業主婦という三人の母親を通して、育児の孤独、身体の疲弊、母であることへの圧力を描く金原ひとみの長編です。多視点の構成により、母性を一枚岩の美徳としてではなく、生活を侵食する制度や感情として浮かび上がらせます。息苦しさのなかに、女性たちの怒りと切実さが強く残ります。 第22回 ドゥマゴ文学賞
- 223 2011 おれたちの青空 おれたちのあおぞら 『おれたちの青空』は、佐川光晴が若者たちの生活、家族、社会の条件を描く小説です。青空という明るい像の下で、人物たちは貧しさや家庭の問題から完全には自由になれません。青春小説のかたちを取りながら、生活の切実さを読む作品です。
- 224 2011 すべて真夜中の恋人たち すべてまよなかのこいびとたち 『すべて真夜中の恋人たち』は、孤独な校閲者・冬子と年上の物理教師・三束さんの出会いを描く川上未映子の長編です。真夜中の光や静けさは、都市で働く女性の孤独と、他者に近づこうとする繊細な感情を照らします。恋愛小説でありながら、労働、孤独、自己認識の物語として読めます。
- 225 2011 スウィート・ヒアアフター スウィート・ヒアアフター 『スウィート・ヒアアフター』は、事故で恋人を失った女性が、喪失の後の時間を生き直していく吉本ばななの小説です。既存データでは震災後の再生の感覚も示されており、個人の死別と社会全体の傷が重ねて読めます。やわらかな文体のなかで、痛切さと回復への気配が共存します。
- 226 2011 癌だましい がんだましい 『癌だましい』は、食道癌の患者の視点から、病と生をブラックユーモアを交えて描く山内令南のデビュー作です。看護経験を持つ作者ならではの距離感が、病を過度に美化せず、生のしぶとさとして描き出します。病院や身体の現実を、痛切さとユーモアの両方で読む作品です。 第112回 文學界新人賞
- 227 2011 癌ふるい がんふるい 『癌ふるい』は、山内令南が「癌だましい」で第112回文學界新人賞を受賞した後に発表した受賞第一作です。NDLサーチでは『文學界』2011年7月号、156~167ページ掲載の記事として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概を確認できなかったため、内容説明は掲載情報に限定します。
- 228 2011 馬たちよ、それでも光は無垢で うまたちよ、それでもひかりはむくで 『馬たちよ、それでも光は無垢で』は、東日本大震災後の福島を起点に、古川日出男自身の小説世界と現実の被災地が交差する作品です。新潮社公式紹介では、『聖家族』の人物・狗塚牛一郎の声を小説家が福島で聞くという導入が示されています。被災地、郷土、言葉、想像力をめぐる応答として書かれ、フィクションが現実へ届き…
- 229 2010 お別れの音 おわかれのおと 『お別れの音』は、別れの瞬間やその前後に残る気配を、青山七恵らしい抑制された文体で描く作品です。音という題名は、はっきりした出来事よりも、生活のなかに残響する感情を思わせます。家族や恋愛の終わりを、静かな距離感で読む小説として整理できます。
- 230 2010 あられもない祈り あられもないいのり 『あられもない祈り』は、支配的な恋愛関係のなかに自分を置き続ける女性の苦しさを描く島本理生の小説です。親密さは救いであると同時に、相手に自分を明け渡してしまう危うさも帯びています。痛切な恋愛小説であり、身体と自己肯定の問題を読む作品です。
- 231 2010 やわらかな棘 やわらかなとげ 『やわらかな棘』は、傷つけるものが必ずしも硬く鋭いとは限らないことを、親密な関係のなかに描く朝比奈あすかの小説です。家庭や恋愛の穏やかな場面に、言葉や期待が刺さるような感覚が潜みます。日常のやわらかさと息苦しさの両方を読む作品です。
- 232 2010 うちに帰ろう うちにかえろう 『うちに帰ろう』は、家へ帰るという素朴な動作を通じて、家族や生活の拠点を見つめ直す広小路尚祈の小説です。帰る場所は安心だけでなく、過去や関係の重さを引き受ける場所でもあります。平明な題名のなかに、家族と地方的な生活感への問いが込められています。
- 233 2010 星が吸う水 ほしがすうみず 『星が吸う水』は、「星が吸う水」と「ガマズミ航海」を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、野間文芸新人賞受賞後第一作として、女であることが遠ざかっていく感覚、精神が肉体をもてあます感覚を、男と女、女と女の対の構図で描く作品集とされています。性別、身体、欲望のずれをめぐる村田作品の関心が濃く出…
- 234 2010 勝手にふるえてろ かってにふるえてろ 『勝手にふるえてろ』は、脳内の初恋相手「イチ」と現実の求愛者「ニ」のあいだで揺れるOLヨシカを描く綿矢りさの恋愛小説です。内面の饒舌さと現実の人間関係のずれが、ユーモラスで痛い語りを生みます。恋愛の物語でありながら、自己像、妄想、孤独の問題が強く表れます。
- 235 2010 真綿荘の住人たち まわたそうのじゅうにんたち 『真綿荘の住人たち』は、下宿や共同住宅を思わせる場所に集まる人びとの孤独とつながりを描く島本理生の作品です。住人たちは近くにいながら、それぞれの痛みや幸福の基準を抱えています。真綿のような柔らかさと息苦しさが同居する、関係性の小説です。
- 236 2010 もしもし下北沢 もしもししもきたざわ 『もしもし下北沢』は、父の死後に母と娘が下北沢へ移り住み、喪失から少しずつ生活を立て直す吉本ばななの長篇です。街の店や人との関わりが、母娘の傷を癒やす場として機能します。死別の痛みと都市の温かさが同時に描かれる、再生の物語です。
- 237 2010 おれのおばさん おれのおばさん 『おれのおばさん』は、少年院出身の少年が叔母の営む学習塾に引き取られ、居場所を作っていく佐川光晴の小説です。家族の外側にあるケアの場が、少年の成長と社会復帰を支えます。教育、貧困、家族の再編を、少年の視点に近い手触りで読む作品です。
- 238 2010 乙女の密告 おとめのみっこく 『乙女の密告』は、『アンネの日記』を読む大学の授業を舞台に、朗読、暗唱、密告の記憶が絡み合う小説です。語りは教室内の人間関係と戦争の記憶を重ね、誰が誰を裏切るのかという問いを現在の言葉の問題へ引き寄せます。軽やかな会話の奥に、同調圧力と自己認識の危うさが残る作品です。 第143回 芥川賞
- 239 2010 とうさんは、大丈夫 とうさんは、だいじょうぶ 『とうさんは、大丈夫』は、父と子、家族の安心と不安を題名の一文に集める佐川光晴の小説です。公開資料で内容細部までは確認できていないが、家族のなかで支える側と支えられる側が入れ替わる感覚を読む作品として整理できます。平明な語りを通じて、ケアや生活の切実さが前面に出ます。
- 240 2010 アンダスタンド・メイビー あんだすたんど・めいびー 『アンダスタンド・メイビー』は、島本理生が若い女性の恋愛、傷つき、自己理解を長い時間の流れのなかで描く長編です。題名の「たぶん理解する」という感覚どおり、人物は関係を即座に割り切れず、痛みを抱えたまま自分の輪郭を探します。恋愛小説であると同時に、青春期から大人へ向かうアイデンティティの物語です。
- 241 2010 夜よりも大きい よるよりもおおきい 『夜よりも大きい』は、小野正嗣が土地、記憶、喪失の感覚を静かに重ねる作品です。夜という時間よりも大きなものに包まれる感覚が、人物の孤独や死者の気配を呼び込みます。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 242 2010 俺俺 おれおれ 『俺俺』は、星野智幸が2010年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 243 2009 1Q84 いちきゅうはちよん 『1Q84』は、1984年に似て非なる世界「1Q84」を舞台に、青豆と天吾の二つの視点が交差していく長篇です。宗教的共同体、暴力、物語を作ることへの問いが、並行世界の構造の中で結びつきます。恋愛小説でありながら、世界の成り立ちそのものを疑わせる大きな構成が特徴です。
- 244 2009 ブルーシート ぶるーしーと 『ブルーシート』は、デビュー作「家畜の朝」を含む第一創作集として、底辺労働や生活の現場を描く作品です。都市の表面では見えにくい働く身体と貧困の感覚が、青いシートの仮設性と重なります。社会的な題材を、個人の孤独と身体感覚に引き寄せて読むことができます。
- 245 2009 ぼくたちは大人になる ぼくたちはおとなになる 『ぼくたちは大人になる』は、成長することの期待と重さを、若い人物の生活感覚から描く佐川光晴の作品です。題名はまっすぐですが、そこには家族や社会の中で大人にならざるをえない苦さも含まれます。青春を懐かしむより、労働や家族へ向かう時間として捉える作品です。
- 246 2009 ボーダー&レス ぼーだーあんどれす 東京の大学を出て就職した新入社員・江口理倫は、独特の魅力を持つ在日コリアンの同期・趙成佑(ソンウ)と親しくなる。気の合う友人同士のはずのふたりのあいだにも、「在日」という歴史が刻んだ見えない溝が走っていることに、僕はやがて直面する。国籍や民族だけでなく、この世界のあらゆる場所にあるボーダーを、若い会… 第46回 文藝賞
- 247 2009 ヘヴン ヘヴン 『ヘヴン』は、いじめを受ける「僕」と同級生コジマの連帯を通じて、暴力と倫理を問う長篇です。弱さを共有する二人の関係は救いに見えますが、暴力を意味づけて耐えることの危うさも浮かび上がります。身体の痛みと思想的な問いが同時に迫る、川上未映子の代表的長篇の一つです。
- 248 2009 ヒマワリのキス ひまわりのきす 『ヒマワリのキス』は、明るい題名の裏側に、恋愛や記憶の痛みを抱えた人物を置く樋口直哉の作品です。ひまわりのイメージは夏や若さを連想させますが、そこには過ぎ去った時間を取り戻せない感覚も重なります。今回の確認は書誌中心のため、細かな筋は追加調査が必要です。
- 249 2009 君が降る日 きみがふるひ 『君が降る日』は、失われた相手への思いと、残された人の時間を描く島本理生の恋愛小説です。題名の「降る」は、記憶が突然日常へ戻ってくる感覚を思わせます。静かな語りの中で、喪失、恋愛、再生の気配が重なります。
- 250 2009 月食の日 げっしょくのひ 『月食の日』は、日常のなかに差し込む陰りを、月食という天体現象のイメージと重ねる木村紅美の作品です。人との距離や生活の変化が、明るさを一時的に失う感覚として描かれます。静かで観察的な文体が、家族や孤独の輪郭を浮かび上がらせます。
- 251 2009 何もかも憂鬱な夜に なにもかもゆううつなよるに 『何もかも憂鬱な夜に』は、死刑囚と向き合う若い刑務官が、自らの孤独な子供時代と現在を重ねていく中村文則の長篇です。犯罪や死刑制度の問題は、単なる社会的題材ではなく、人が他者の罪をどう受け止めるかという倫理の問いになります。暗い語りの中に、救いの可能性がかすかに残ります。
- 252 2009 線路と川と母のまじわるところ せんろとかわとははのまじわるところ 『線路と川と母のまじわるところ』は、線路と川という移動のイメージを、母の記憶や土地の感覚と重ねる小野正嗣の作品です。場所の記憶は個人の家族史と結びつき、語りは土地をたどるように進みます。母と子、故郷、移動の主題を静かに読む小説です。
- 253 2009 白い紙 しろいかみ イラン・イラク戦争下のイランの地方都市。成績優秀な高校生の男女が、勉強を口実に心を通わせていく。だが前線が近づくにつれ、家族の事情と戦争の影がふたりの未来を静かに引き裂いていく。日本語を母語としない書き手が、平易で簡潔な日本語によって戦時下の日常と若い恋の痛みを描き、戦争文学と青春小説を重ねてみせた… 第108回 文學界新人賞
- 254 2009 瘡瘢旅行 そうはんりょこう 『瘡瘢旅行』は、藤澤清造の墓参と女性との旅を描く、北町貫多ものの作品集です。私小説的な語りは、文学への執着、貧しさ、対人関係のこじれを隠さずに差し出します。旅の形を取りながら、過去の傷や屈辱を抱え直す作品として読めます。
- 255 2009 水死 すいし 『水死』は、父の死の記憶と「水死小説」の構想をめぐる、大江健三郎晩年の古義人もの長篇です。家族史、戦後史、文学を書くことが複層的に絡み、個人の記憶は国家や天皇制の問題にも接続します。長い息の文体で、作家自身の過去を再検討する作品です。
- 256 2009 永遠のかけら えいえんのかけら 『永遠のかけら』は、失われた時間や記憶の断片を、恋愛や人間関係の揺れと重ねて読むことのできる高瀬ちひろの小説です。題名の「かけら」は、完全な永遠ではなく、人物の手元に残る小さな感情の痕跡を思わせます。公開資料で内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲に絞って紹介します。
- 257 2009 TRIP TRAP トリップ・トラップ 『TRIP TRAP』は、移動や逸脱の感覚を、恋愛、身体、都市的な不安と結びつける金原ひとみの小説です。旅を意味する「TRIP」と罠を意味する「TRAP」が並ぶ題名は、自由に見える移動が別の閉塞へつながる感覚を示します。鋭い身体感覚と、若い人物の危うい関係性が読みどころです。
- 258 2009 海猫ツリーハウス うみねこつりーはうす 海猫の鳴き交わす青森県八戸。25歳の亮介は服飾デザイナーの夢を抱えつつ家業を手伝い、師匠のもとでツリーハウス作りに励んでいる。そこへ、自給自足の暮らしを求めて都会から人気者の兄・慎平が帰ってくると、田舎町の均衡は静かに乱れはじめる。標準語に回収されない南部弁の語りが土地の身体感覚をそのまま運び、地方… 第33回 すばる文学賞
- 259 2009 トモスイ ともすい 『トモスイ』は、タイ、バリ、韓国などアジア各地を舞台に、男女の密接な関係とエロスを描く短篇集です。旅先の空気、身体の距離、異文化の感触が、恋愛や性の場面に入り込みます。短篇ごとに土地の湿度や食、儀礼の気配が変わり、関係の親密さと不安定さを浮かび上がらせます。高樹のぶ子の官能性と越境感覚が、圧縮された… 第36回 川端賞
- 260 2009 水族 すいぞく 『水族』は、星野智幸が2009年に岩波書店から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 261 2008 声を聴かせて こえをきかせて 『声を聴かせて』は、声を聞くこと、聞かれないことを通して、他者との距離を描く朝比奈あすかの作品です。親しい関係であっても届かない言葉があり、そのもどかしさが人物の孤独を形づくります。題名通り、声と言葉が関係をつなぐ細い線として働きます。
- 262 2008 ばかもの ばかもの 『ばかもの』は、大学生の恋愛の終わりから十年後の再会までをたどり、アルコール依存を抱える男の時間を描く作品です。恋愛の失敗は単なる思い出ではなく、生活の崩れや病と結びついて残ります。絲山秋子の乾いた文体が、不器用な愛情と回復の難しさを抑制して描きます。
- 263 2008 ギンイロノウタ ギンイロノウタ 『ギンイロノウタ』は、表題作と「ひかりのあしおと」の二篇を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、無差別殺人衝動に襲われる内気な少女を描く表題作と、殺傷行為と恋愛感情が交差する女子大生の物語として説明されています。性、暴力、成熟への憧れが結びつき、村田作品の危うい身体感覚が前面に出た一冊です。 第31回 野間新人賞
- 264 2008 灰色猫のフィルム はいいろねこのふぃるむ 母親を殺した「僕」は、動機も経緯も語らないまま町を放浪する。公園での野宿を経てホームレスの「ハタさん」と出会い、河川敷の小屋でともに暮らしはじめるが、ハタさんが大切にしていた灰色の猫が殺される日まで、束の間の安らぎは続かない。公衆トイレなどの不潔で醜悪な細部が彷徨う心理を映し出す一方、動物や迷子の少… 第32回 すばる文学賞
- 265 2008 走ル はしる 『走ル』は、高校生が自転車で北へ向かい続けるロードノベルです。走る身体の疲労と速度が、若い自意識や孤独をそのまま運んでいきます。目的地よりも、移動し続ける時間のなかで自分の輪郭が変わるところが読みどころです。
- 266 2008 射手座 いてざ 日系ブラジル人の語り手が、妹ルシアに関わる謎めいた男・加賀芳明と向き合う。妹の万引きに関わった加賀は、やがて妹が遺棄した赤ん坊について語り出し、赤ん坊を運んで山道をひとりさまよう。語り手が加賀から聞いた話を伝聞のかたちで重ねていく重層的な構造により、何が真実かは最後まで曖昧なまま、登場人物の誰ひとり… 第107回 文學界新人賞
- 267 2008 いつかソウル・トレインに乗る日まで いつかソウル・トレインにのるひまで 高橋源一郎が「初の恋愛小説」と銘打って2008年に集英社から刊行した長編。20年ぶりにソウルを再訪した主人公ケンジが、かつての恋人の娘ファソンと出会い、二人が惹かれ合いながら純愛を探す3日間を追う。題名の「ソウル・トレイン」は、アメリカの黒人音楽番組『Soul Train』と、韓国のソウル(Seou…
- 268 2008 神様のいない日本シリーズ かみさまのいないにほんシリーズ 『神様のいない日本シリーズ』は、「江夏の21球」で知られる1979年の日本シリーズを背景に、父と子の時間を描く中篇です。野球の記憶は、家族の記憶や時代の空気を呼び戻す装置になります。田中慎弥の乾いた語りが、父子関係の近さと断絶を浮かび上がらせます。
- 269 2008 彼女について かのじょについて 『彼女について』は、ひとりの女性をめぐる記憶と語りから、失われたものや届かなかった感情をたどる作品です。よしもとばなならしい透明感のある文体で、死や喪失の気配をやわらかく包みます。誰かについて語ることが、自分自身を語り直すことにもなる小説です。
- 270 2008 花束 はなたば 『花束』は、贈り物としての花束が持つ親密さと儀礼性を手がかりに、人と人の関係を描く作品です。美しいものを差し出す行為の裏に、言えなかった感情や生活の痛みが潜みます。静かな語りのなかで、家族や恋愛の距離が少しずつ見えてきます。
- 271 2008 金色のゆりかご きんいろのゆりかご 『金色のゆりかご』は、ゆりかごのイメージが示す家族や子どもの時間を、現実の生活のなかで見つめる作品です。佐川光晴らしい社会への視線が、保護されるべき場所とそこから漏れる不安を描きます。家族の温かさと脆さを同時に読む小説として整理できます。
- 272 2008 マウス マウス 『マウス』は、少女たちが自分らしくあるための揺れを描く長編です。Amazonの商品紹介では、少女から女性へ、子どもから大人へと移る時間のなかで、女の子同士の好意、友情、いじわる、ライバル心を鮮明に描く作品とされています。教室内の関係性と成長の痛みを、村田作品らしい息苦しさで読ませる作品です。
- 273 2008 長い終わりが始まる ながいおわりがはじまる 『長い終わりが始まる』は、終わりが一瞬ではなく長く続いていく感覚を、恋愛や生活の変化に重ねる作品です。山崎ナオコーラらしい平明な語りが、別れや変化を大げさにせず日常の速度で見せます。終わりを迎えるまでの時間そのものを読む小説です。
- 274 2008 空で歌う そらでうたう 『空で歌う』は、歌うことや空を見上げる感覚を通して、若い人物の孤独と希望を描く作品として整理できます。芸術や声は、現実から逃げるためだけでなく、誰かに届くための手段になります。書誌以外の資料は少なく、今後は掲載誌・書評で主題を精査したい作品です。
- 275 2008 波打ち際の蛍 なみうちぎわのほたる 『波打ち際の蛍』は、傷を抱えた人物が、波打ち際のように揺れる場所で他者との距離を測り直す島本理生の作品です。蛍の光のようなかすかな希望と、身体に残る痛みが同時に描かれます。恋愛や回復を単純に美化せず、触れ合うことの怖さまで含めて読ませます。
- 276 2008 おひるのたびにさようなら おひるのたびにさようなら 会社の昼休み、外階段で繰り広げられる主人公・真司と先輩女子社員たちの秘密の遊び。真司の役目は、近くの病院で音声を消した昼ドラを眺め、想像で補った物語を先輩に報告することだ。見ることと聞くことのずれ、語り直された物語と現実の重なりを入れ子状に組み上げ、ささやかな昼の儀式の終わりをせつなく描く。メディア… 第45回 文藝賞
- 277 2008 時が滲む朝 ときがにじむあさ 『時が滲む朝』は、天安門事件前後の中国に生きる若者たちの青春と政治の時間を描く作品です。留学生作家である楊逸の日本語が、祖国の記憶、民主化への希望、移動する身体の感覚を重ねます。個人の朝の光景に、歴史が滲み出してくる点が読みどころです。 第139回 芥川賞
- 278 2008 ポトスライムの舟 ぽとすらいむのふね 『ポトスライムの舟』は、工場で働きながら生活費を切り詰めるナガセを主人公にした中篇です。世界一周クルーズの費用が自分の年収とほぼ同じだと知ったナガセは、その金額を一年で貯めようとします。非正規労働、家計の細さ、友人や母との関係、ポトスライムを育てる日々が重なり、生活を続けることの苦しさと粘りが描かれ… 第140回 芥川賞
- 279 2007 あなたの呼吸が止まるまで あなたのこきゅうがとまるまで 『あなたの呼吸が止まるまで』は、息をすること、生き延びること、他者と関わることを強い身体感覚で描く島本理生の小説です。恋愛や依存の感情が、相手の呼吸を意識するほど近い距離で語られます。親密さの美しさだけでなく、そこに潜む苦しさを読む作品です。
- 280 2007 アサッテの人 あさってのひと 吃音を抱えていた叔父は、いつしか「ポンパ!」などの意味を持たない言葉=アサッテの言葉を突発的に口にするようになり、やがて失踪した。「私」はその叔父をめぐる小説を書こうとするが、語りは草稿、叔父の日記、回想が混在するまま進んでいく。言葉の規範から「アサッテ」の方向へ逸脱したいという渇望を、小説の形式そ… 第50回 群像新人賞
- 281 2007 乳と卵 ちちとらん 東京で一人暮らしをする「わたし」のもとへ、大阪でホステスとして働く姉の巻子と、その娘で小学6年生の緑子が上京してくる。離婚後ひとりで娘を育ててきた巻子は豊胸手術を受けることに執拗にこだわり、初潮を迎える年頃の緑子は、自分の身体が変わっていくことへの違和感をノートに書きつけ、母とは筆談でしか口をきかな… 第138回 芥川賞
- 282 2007 大人ドロップ おとなどろっぷ 『大人ドロップ』は、若者が大人になる前後の感情を、学校や地方の時間のなかで描く青春小説です。恋愛や友情の明るさだけでなく、過ぎてしまう時間への痛みが語りの底にあります。簡潔な文体で、思い出になる直前の出来事をすくい取る作品として読めます。
- 283 2007 救済の彼岸 きゅうさいのひがん 『救済の彼岸』は、救いを求める感覚と、その先にある孤独を題名から強く意識させる作品です。信仰や倫理をめぐる問いが、現代の生活のなかでどのように立ち上がるかを読む切り口があります。書誌以外の資料はまだ少ないため、今後は掲載誌や書評で主題を精査したい作品です。
- 284 2007 バイバイ ばいばい 『バイバイ』は、別れを告げる言葉の軽さと重さを、恋愛や生活の終わりの感覚に重ねる作品です。望月あんねの作品として、人物が関係を断ち切るときに残る記憶や孤独に焦点を置いて読めます。大きな事件よりも、去ることと残されることの温度差が読みどころになります。
- 285 2007 二度はゆけぬ町の地図 にどはゆけぬまちのちず 『二度はゆけぬ町の地図』は、戻れない場所への執着と、貧しい生活の記憶を私小説的な語りでたどる作品です。西村賢太らしい露悪的な自己凝視が、地図に残る町と、もう行けない過去を重ねます。労働、金銭、孤独が乾いた笑いと屈辱の感覚で結びついています。
- 286 2007 大きな熊が来る前に、おやすみ。 おおきなくまがくるまえに、おやすみ。 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』は、二人暮らしの親密さと不安を、熊という不穏なイメージをまとわせて描く作品です。恋愛や同居の幸福だけでなく、同じ部屋にいることの圧迫感や、相手を完全にはわからない怖さが前面に出ます。柔らかな題名の奥に、関係の危うさを読む小説です。
- 287 2007 ワンちゃん わんちゃん 日本に渡って暮らす中国人女性「ワンちゃん」は、中国の女性たちと日本の男たちを引き合わせる見合いツアーの世話役を務めている。国境をまたぐ結婚の斡旋という生々しい現場を通して、経済格差のなかを生きる女たちのたくましさと哀感を、来日20年の作者がよどみのない日本語で描いた。日本語を母語としない書き手が日本… 第105回 文學界新人賞
- 288 2007 夢を与える ゆめをあたえる 『夢を与える』は、子役からCMタレントとして成長する少女・夕子の栄光と転落を描く長編です。芸能の世界が、家族、欲望、消費される身体を映す場所として機能します。若さや人気が商品化される過程を、綿矢りさらしい鋭い観察で追う作品です。
- 289 2007 父のグッド・バイ ちちのぐっどばい 『父のグッド・バイ』は、井岡道子が2007年に刊行した作品です。Books出版書誌データベースの内容紹介では、癌を宣告された父を看取るまでの四か月間を、故郷・宇和島の風光とともに描いた一編とされています。家族の別れ、看取り、故郷の記憶を結びつける作品として登録します。
- 290 2007 八日目の蝉 ようかめのせみ 中央公論新社から2007年3月に刊行された角田光代の未登録代表作。NDLで単行本書誌と中央公論文芸賞関連記事を確認。
- 291 2007 植物診断室 しょくぶつしんだんしつ 『植物診断室』は、星野智幸が2007年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 292 2006 銀色の翼 ぎんいろのつばさ 『銀色の翼』は、生活の現場にいる人々の視線から、家族、労働、社会的な孤立を描く佐川光晴の小説です。派手な事件よりも、日々の選択や関係のほころびを通して人物を立ち上げるタイプの作品として位置づけられます。現実に踏みとどまる語りが、傷や希望を過度に美化しない点が読みどころです。
- 293 2006 生きてるだけで、愛。 いきてるだけで、あい。 『生きてるだけで、愛。』は、鬱と過眠に苦しむ寧子と、同棲相手・津奈木の関係を描く恋愛小説です。感情の爆発と生活の停滞が同時に描かれ、病や孤独が恋愛のなかでどう噴き出すかを見せます。荒さを残した一人称的な距離感が、登場人物の息苦しさを直接伝えます。
- 294 2006 幻をなぐる まぼろしをなぐる 失恋の痛手を抱えた女性が、相手を忘れるために身体を鍛え、欲望と妄執を抱え込んでいく。集英社側の紹介では、痛みをただ感傷として描くのではなく、生々しさとピュアさをあわせ持つ「現代の失恋」の物語として打ち出されている。恋愛の喪失を身体の運動や執着の問題として描く点に読みどころがある、第30回すばる文学賞… 第30回 すばる文学賞
- 295 2006 愛の島 あいのしま 『愛の島』は、島という閉じた場所を背景に、愛や孤独をめぐる関係の揺れを描く作品として整理できます。遠く離れた場所である島は、人物の逃避先であると同時に、自分の感情と向き合う場にもなります。書誌情報以外の詳細資料はまだ少ないため、今後の批評・紹介資料で精度を上げたい作品です。
- 296 2006 沖で待つ おきでまつ 『沖で待つ』は、同期入社の男女の友情と、死後に残された約束をめぐる作品です。恋愛に回収されない親密さを、職場の記憶と喪失の感覚を通して描きます。絲山秋子の簡潔で乾いた語りが、死者との距離を過度に sentimental にせず保つところが読みどころです。 第134回 芥川賞
- 297 2006 憂鬱なハスビーン ゆううつなはすびーん 東大を卒業して外資系企業で順調に出世したのち、弁護士の夫との結婚を機に退職した29歳の凛子を描く。安定した結婚生活の中でも満たされず怒りを抱える彼女は、かつて神童と呼ばれた熊沢くんとの再会をきっかけに、自分や他者への期待、優越感と劣等感、社会的成功と自己評価の空洞に向き合っていく。has-beenと… 第49回 群像新人賞
- 298 2006 虹とクロエの物語 にじとくろえのものがたり 『虹とクロエの物語』は、星野智幸が2006年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 299 2006 われら猫の子 われらねこのこ 『われら猫の子』は、星野智幸が2006年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 300 2005 100回泣くこと ひゃっかいなくこと 恋人を失った男性が、新たな出会いや日々の出来事を通して、悲しみから少しずつ立ち上がる純愛長篇。題名の強さに対して語り口は穏やかで、泣くことそのものよりも、喪失を抱えながら生活を続ける時間が描かれる。中村航の読者層を広げた、切なさと読みやすさを併せ持つ作品である。
- 301 2005 永遠の誓い えいえんのちかい 佐川光晴の2005年刊行作で、約束や誓いが人間関係を支える一方、重荷にもなる局面を描く作品として整理できる。生活者の視点を離れず、家族や恋愛、働くことの中で、言葉だけでは保てない関係を見つめる。佐川作品らしい、過度に装飾しない文体が読みどころになる。
- 302 2005 平成マシンガンズ へいせいましんがんず 母は家を出て行き、家には横暴な父とその愛人。学校は戦場のようで、教室に居場所はない。逃げ場のない女子中学生の夢に死神が降臨し、マシンガンを手渡す——。現役中学生の書き手が、ローティーンの苛立ちと無力感を、撃ちまくるような言葉のスピードで叩きつけた。マシンガンという暴力的なイメージは実際の銃撃ではなく… 第42回 文藝賞
- 303 2005 家族芝居 かぞくしばい 家族を、血縁だけでなく、互いに役を演じ合う小さな舞台として捉える佐川光晴の作品。親密であるはずの関係の中にある見栄、遠慮、傷つけ合いを、生活の目線から描く。タイトルどおり、家族の会話や振る舞いが芝居めいて見える瞬間が読みどころになる。
- 304 2005 ナラタージュ ならたーじゅ かつての恩師への思いを断ち切れない女子大生が、過去の記憶と現在の恋の間で揺れる長篇。恋愛の美しさよりも、戻れない時間に縛られる痛みが中心に置かれている。語りは静かだが、人物の未練や罪悪感が長く尾を引き、島本理生の代表的な恋愛小説として読まれてきた。
- 305 2005 さりぎわの歩き方 さりぎわのあるきかた 29歳の「僕」は、青春の終わりを記念するかのように一泊の合コンに参加する。怪しげな新事業の話、旧友の転落と自殺——若さの賞味期限が切れかかった男たちの周りで起こる出来事を、「こういうのがお望みのドラマなんだろう?」と斜に構えた語りで突き放しながら、それでも去り際の身の処し方を探っていく。まっとうな成… 第101回 文學界新人賞
- 306 2005 さようなら、私の本よ! さようならわたしのほんよ 『さようなら、私の本よ!』は、老作家・長江古義人と建築家・塙吾良を軸に、文学、暴力、記憶の継承を問い直す長編です。作中人物と作者像が重なり合うメタフィクション的な構えのなかで、晩年の作家が自作と時代にどう別れを告げるかが描かれます。会話と回想を積み重ねる長い息の文体が、個人史と政治的記憶を結びつけて…
- 307 2005 スモールトーク すもーるとーく 『スモールトーク』は、六台の車をめぐる連作として、移動、修復、喪失の感覚を描く作品です。車という具体物が、登場人物の距離感や回復の速度を測る装置になっています。絲山秋子らしい抑制された会話と乾いた文体が、傷ついた人々のささやかな再出発を浮かび上がらせます。
- 308 2005 逃亡くそたわけ とうぼうくそたわけ 『逃亡くそたわけ』は、精神病院を抜け出した二人の若者が、博多から九州を北へ進む逃避行を描く小説です。方言を含む勢いのある語りが、病や孤立を重く固定せず、滑稽さと切実さの両方で走らせます。逃げることが同時に自分の輪郭を確かめることになる、青春ロードノベルとして読めます。
- 309 2005 冷たい水の羊 つめたいみずのひつじ 級友たちの生け贄のようにいじめの標的にされた中学生の少年。彼は「いじめられたと感じたらそれがいじめ」という定義を逆手に取り、「自分はいじめられていない」という独自の論理に立てこもって、陰惨な仕打ちを受け続ける。いじめを告発した同級生の少女・水原里子との心中の計画が、物語に暗い水脈のように流れる。羊の… 第37回 新潮新人賞
- 310 2005 君は永遠にそいつらより若い きみはえいえんにそいつらよりわかい 『君は永遠にそいつらより若い』は、大学卒業を間近に控えたホリガイの、バイト、学校、下宿、友人との日々を描く津村記久子のデビュー作です。だらだらした学生生活の表面の下に、暴力や悪意、見過ごされがちな哀しみが少しずつ顔を出します。日常の軽さを保ちながら、傷ついた人の存在を消さずに書く、津村文学の出発点で… 第21回 太宰治賞
- 311 2005 蟹と彼と私 『蟹と彼と私』は、荻野アンナが『すばる』連載を経て集英社から刊行した作品です。癌という重い題材を、病の記録だけに閉じず、語りの跳躍、言葉のずれ、奇妙なユーモアによって多層化しています。身体と死をめぐる切実さと、荻野作品らしいパロディ的な文体感覚が同居する一冊です。
- 312 2005 在日ヲロシヤ人の悲劇 ざいにちをろしやじんのひげき 『在日ヲロシヤ人の悲劇』は、星野智幸が2005年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 313 2004 袋小路の男 ふくろこうじのおとこ 何も与えない男に、三年間片思いし続ける女の静かな恋愛小説。恋が進展しないこと、相手が応えないことを、単純な不幸ではなく、関係が袋小路のまま続いていく時間として描く。大きな事件を抑えた文体の中に、絲山秋子らしい乾いた痛みと可笑しさが残る。 第30回 川端賞
- 314 2004 灰色の瞳 はいいろのひとみ 佐川光晴の2004年刊行作で、NDLには第一部・第二部として雑誌掲載記事が確認できる。人間関係や家族の記憶を、明るく割り切れない「灰色」の領域として見つめる作品として整理できる。佐川作品に通底する、生活の手触りと関係の痛みを追う読みに向いている。
- 315 2004 介護入門 かいごにゅうもん 寝たきりの祖母を在宅で介護する無職の「俺」が、深夜のおむつ替えや褥瘡のケアといった介護の現実を、ヒップホップのライムを思わせる呼びかけと畳みかける長文で語る。「ヨォ、と俺は呼びかける」という挑発的な語りは、介護を美談にも悲劇にも回収せず、祖母への愛と世間への呪詛を同じ熱量で吐き出していく。介護文学に… 第98回 文學界新人賞
- 316 2004 生まれる森 うまれるもり 恋愛や喪失のあとに残る空白を、森というイメージに重ねて描く島本理生の初期長篇。人物の内面は激しく揺れながらも、語り口は抑制され、痛みが静かな風景の中に置かれる。青春小説の瑞々しさと、取り返しのつかない記憶を抱える重さが同居している。
- 317 2004 グランド・フィナーレ ぐらんどふぃなーれ 『グランド・フィナーレ』は、阿部和重が2005年に講談社から刊行した作品集です。表題作のほか「馬小屋の乙女」「新宿ヨドバシカメラ」「20世紀」を収録し、第132回芥川賞受賞作として知られます。 第132回 芥川賞
- 318 2004 ロンリー・ハーツ・キラー ろんりーはーつきらー 『ロンリー・ハーツ・キラー』は、星野智幸が2004年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 319 2004 アルカロイド・ラヴァーズ あるかろいどらゔぁーず 『アルカロイド・ラヴァーズ』は、星野智幸が2005年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 320 2003 蛇にピアス へびにピアス 19歳のルイは、蛇のように舌先が割れた「スプリット・タン」を持ち、全身にピアスと刺青を施した青年アマと出会い、同棲を始める。自らも舌にピアスを開け、拡張し、背中に麒麟と龍の刺青を彫ろうと、アマの紹介で知り合ったサディストの彫り師シバとも危険な関係を結んでいく。痛みによってしか生の実感をつかめない若者… 第130回 芥川賞
- 321 2003 家畜の朝 かちくのあさ 中卒で道路工事などの日雇い仕事をしながら日銭を稼ぐ主人公と、その仲間たちのうだつの上がらない日々。労働と競艇と愚行で埋まる時間の隙間に、父親の自殺、学習障害、友人の堕胎といった出来事が断片として挟み込まれ、貧困が人と土地をどう蝕むかが一人称の語りで立ち上がる。労働運動の現場にいた作者が、「ワーキング… 第35回 新潮新人賞
- 322 2003 火薬と愛の星 かやくとあいのほし 女たらしの「おれ」は、さまざまな女性たちを渡り歩きながら何度も生を重ね、やがて一人の恋人に出会って初めて「ここで死のう」と思う——絵本『100万回生きたねこ』を下敷きに、軽薄な恋愛遍歴の語りの底へ、愛と死の寓話を沈めた一作。決定的なはずの「最後の恋人との出会い」をあえて正面から語らず、別のかたちで小… 第46回 群像新人賞
- 323 2003 魔女の息子 まじょのむすこ 40歳を目前にしたゲイのフリーライター・和紀。77歳の母が「老いらくの恋」に燃え始めたことで、亡き父との確執、ハッテン場の旅館で出会った男との関係、そして自分自身の来し方と否応なく向き合うことになる。ゲイ・ムーブメントの先頭に立ってきた評論家が、運動の言葉では掬えない母子の情愛と人間の弱さを、ユーモ… 第40回 文藝賞
- 324 2003 オアシス おあしす 愛用の青い自転車を盗まれたフリーターの「私」は、呆然としたままそれを探す日々を送る。家には家事を放棄してしまった母と、その母に「パラサイト」されているOLの姉・サキ。女三人の奇妙な家族の均衡が、自転車の喪失を起点に少しずつあらわになっていく。母を疎みながら捨てられない娘たちの姿は「現代の新種の姥捨て… 第40回 文藝賞
- 325 2003 モルヒネ もるひね 初版は祥伝社2003年刊。2008年・2009年の関連版もNDLで追跡できる。
- 326 2003 忌中 きちゅう NDLサーチで「文學界」2003年10月号掲載の同題作と、2003年11月刊の文藝春秋版単行本、2006年文春文庫版を確認できる。
- 327 2002 飴玉が三つ あめだまがみっつ アルコール依存症者の自助グループ「断酒会」に母と通う既婚の娘が、死を前に断酒を誓った医師の父との歳月を振り返る。父から受けた一度きりの暴力すら幸福の記憶として抱え込み、会で告白する他の依存症者を見下す主人公は、自身もまた高校時代から酒に頼ってきた。父への愛と自己への愛が分かちがたく絡まり、その呪縛か… 第94回 文學界新人賞
- 328 2002 縮んだ愛 ちぢんだあい 佐川光晴の作品で、既存データでは野間文芸新人賞受賞作とされる。家族や親密な関係に潜む痛みを、小さく「縮む」感覚として捉える作品として整理できる。佐川作品らしい生活への視線と、関係の中で変形していく愛のかたちを読む入口になる。 第24回 野間新人賞
- 329 2002 リトル・バイ・リトル りとる・ばい・りとる 母の不在と継父との関係に揺れる少女の成長を描く島本理生の初期長編。十代の語り手が、家族への違和感、恋愛以前の孤独、日常の不安を少しずつ言葉にしていく。静かな文体で、傷つきやすい感情の変化を丁寧に追う作品。 第25回 野間新人賞
- 330 2002 猛スピードで母は もうすぴーどでははは 芥川賞受賞作「猛スピードで母は」と、デビュー作「サイドカーに犬」を収める短篇集。子どもの視点から、奔放な母や家族の変化を、過度に説明せず鮮やかな場面で捉える。ユーモアと痛切さが同居し、家族小説を軽やかな速度で更新した作品。 第126回 芥川賞
- 331 2002 にぎやかな湾に背負われた船 にぎやかなわんにせおわれたふね 九州の海辺の集落「浦」を舞台に、土地の人々の記憶と語りを紡ぐ長編。個人の物語が、海辺の共同体、死者、土地の歴史と重なり合う。小野正嗣らしい、声の重なりと土地の記憶を読む作品。 第15回 三島賞
- 332 2002 スチール すちーる 男性客相手の風俗のアルバイトで日銭を得て、新宿の24時間営業のロッカールームで夜を過ごす17歳の高校生。ある日見かけた中年男性に惹かれ、彼が経営する倉庫で働き始めると、朗らかなパートの中年女性たちに囲まれて、少しずつ世の中との関わり方を学んでいく。だが、かつての「客」だった男が国語教師として学校に着… 第26回 すばる文学賞
- 333 2002 憂い顔の童子 うれいがおのどうじ 大江健三郎の「おかしな二人組」三部作に連なる後期長編。作家・古義人を中心に、家族史、過去の暴力、共同体の記憶が重なり合う。晩年の大江が、自身の文学的記憶と死者との対話を小説化していく流れの中で読む作品である。
- 334 2002 海馬の助走 かいばのじょそう 『海馬の助走』は、若合春侑による2002年刊の長編小説です。既存情報では、神道学や古典への関心を背景にした作品として位置づけられており、家族、父子、記憶をめぐる重い主題を扱う作品と読めます。出版社公式の詳しい紹介は今回確認できなかったため、内容説明は既存データとNDL書誌で確認できる範囲に限定してい… 第24回 野間新人賞
- 335 2002 毒身温泉 どくしんおんせん 『毒身温泉』は、星野智幸が2002年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 336 2001 ジャムの空壜 じゃむのあきびん 屠畜の現場を舞台にした短篇集で、労働、身体、動物の死を生活の近くから描く。清潔な消費の背後にある仕事を見つめることで、社会の見えにくい暴力と人間の尊厳を浮かび上がらせる。佐川光晴の労働への視線がよく表れる作品。
- 337 2001 水に埋もれる墓 みずにうもれるはか 小野正嗣のデビュー作で、既存データでは朝日新人文学賞受賞作とされる。水や墓のイメージが示すように、土地、記憶、死者との関係をめぐる作品として位置づけられる。後の小野作品に続く、共同体の記憶と語りへの関心の出発点として読みたい。
- 338 2001 最後の家族 さいごのかぞく 引きこもりの息子を抱えた四人家族の解体と再生を描く長編。家族の愛情が、支配、依存、逃避と紙一重であることを、村上龍らしい社会問題への視線で描き出す。家庭という閉じた場所を通じて、2000年前後の孤立とケアの難しさを読む作品。
- 339 2001 シルエット しるえっと 高校二年生の「私」を語り手に、人との出会いと別れ、恋愛にともなう心の揺れと痛みを、等身大の言葉で丁寧にすくいとった中篇。書いたのは当時現役高校生の島本理生で、十代の感受性をそのまま閉じ込めたような瑞々しさと、年齢に不釣り合いなほど抑制の効いた文章が同居している。痛みを声高に語らず、静かな観察として差…
- 340 2001 夜明けの音が聞こえる よあけのおとがきこえる 自ら声を封じ込めているうちに本当に声が出なくなってしまった「僕」が、治療者の勧めでホテルで働きはじめる。しかし職場に溶け込めず、ふとした誤解から従業員たちを敵に回し、執拗ないじめにさらされていく。語ることのできない主人公の内側に渦巻く苛立ちと怒りを、鮮烈な言葉の力で外へ撃ち出すような文章が特徴で、声… 第25回 すばる文学賞
- 341 2000 取り替え子(チェンジリング) とりかえこ 義兄・吾良の自死をきっかけに、作家・古義人が過去の謎をたどる長編。録音された声や記憶を通して死者と対話し、家族史、映画、芸術、自己の来歴が絡み合う。大江後期の「おかしな二人組」三部作へつながる、喪失と再生の作品。
- 342 2000 目覚めよと人魚は歌う めざめよとにんぎょはうたう 『目覚めよと人魚は歌う』は、星野智幸が2000年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。 第13回 三島賞
- 343 1999 ハードボイルド/ハードラック ハードボイルド/ハードラック 「ハードボイルド」と「ハードラック」の二篇を収める短編集です。死んだ女友だち、入院中の姉という喪失の影を起点にしながら、残された人の心が少しずつ動き出す時間を描きます。よしもとばなならしい静かな語りで、痛みと回復が同じ場面の中に置かれるところが読みどころです。
- 344 1999 ラニーニャ らにーにゃ カリフォルニアに暮らす日本人女性を中心に、異国での育児と日本にいる老親の介護が交差していく長篇です。母であること、娘であること、移動する身体を、詩人としての言語感覚を残した散文でたどります。生活の具体と身体感覚が強く、家族小説であると同時に越境文学としても読める作品です。 第21回 野間新人賞
- 345 1999 透光の樹 とうこうのき 加賀平野・鶴来を舞台に、テレビ業界で生きてきた中年男性と、老父の看護のために戻った女性が再会する恋愛長篇です。二十五年の時間を隔てた情愛を、老い、介護、土地の記憶と重ねて描きます。激しい恋愛を扱いながら、地方の風景と死の気配が作品全体を静かに支えている点が読みどころです。 第35回 谷崎賞
- 346 1999 フーコン戦記 ふーこんせんき 古山高麗雄晩年の戦争文学。2024年に小学館P+D BOOKSでも復刊。
- 347 1999 嫐嬲 なぶりあい 『嫐嬲』は、星野智幸が1999年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 348 1998 ブエノスアイレス午前零時 ぶえのすあいれすごぜんれいじ 『ブエノスアイレス午前零時』は、雪深い故郷へ戻った青年と、過去に横浜で生きてきた盲目の老女の出会いを描く短篇です。温泉旅館という閉じた場所に、タンゴと異国の都市への憧れが差し込むことで、老い、記憶、失われた時間が濃く浮かび上がります。抑えた筆致とハードボイルドな感触が、深夜の一場面に人生の余白を凝縮… 第119回 芥川賞
- 349 1998 赤目四十八瀧心中未遂 あかめしじゅうやたきしんじゅうみすい 『赤目四十八瀧心中未遂』は、車谷長吉の長篇小説です。文藝春秋公式ページでは、尼崎の四畳半のアパートでモツを串に刺し続ける語り手と、背中一面に迦陵頻伽の刺青を持つ女をめぐる作品として紹介されています。NDLサーチでは1998年1月に文藝春秋から刊行された272ページの図書、NDC9 913.6として確…
- 350 1997 皆月 『皆月』は、花村萬月が芥川賞受賞作『ゲルマニウムの夜』の前後に書いた長篇小説です。妻に金を持ち逃げされた中年男が、義弟や風俗で働く女性との関係のなかで、傷ついた生活を立て直していきます。暴力や性を含む花村作品らしい荒い手触りのなかに、再生の物語が置かれています。
- 351 1996 弟 おとうと 『弟』は、石原慎太郎が実弟・石原裕次郎の生涯を兄の視点からたどった伝記的長編です。スターとしての裕次郎像だけでなく、家族の記憶、戦後日本の大衆文化、兄弟関係の近さと距離を重ねて描きます。私的回想と公的な時代史が交差するところに読みどころがあり、作家・政治家としての石原慎太郎が身内を語る緊張も作品の核…
- 352 1996 「アボジ」を踏む あぼじをふむ 『「アボジ」を踏む』は、小田実の第24回川端康成文学賞受賞作です。『群像』1996年10月号掲載後、1998年刊の短篇集および講談社文芸文庫版で再刊されたことを確認できます。父を指す朝鮮語を題に含む作品として、父子、戦争、差別、越境の問題系に接続するが、公開資料で確認できる内容紹介は限定的なため、紹… 第24回 川端賞
- 353 1995 ジェロニモの十字架 じぇろにものじゅうじか 『ジェロニモの十字架』は、青来有一のデビュー期にあたる第80回文學界新人賞受賞作です。『文學界』掲載後、芥川賞受賞作を含む作品集『聖水』に収録されたことを、文学賞データ、NDL、文藝春秋公式ページで確認できます。収録書『聖水』の公式紹介は父と救済をめぐる物語性を示していますが、本作単独の梗概は公開情… 第80回 文學界新人賞
- 354 1995 夏至祭 なつしさい 『夏至祭』は、佐藤洋二郎が第17回野間文芸新人賞を受賞した作品です。既存データでは、九州の小さな漁港を舞台に、土地の祭りや共同体の記憶と個人の喪失を交錯させる長編として整理されています。講談社公式で受賞は確認できますが、出版社公式の梗概は未確認です。 第17回 野間新人賞
- 355 1994 ハチ公の最後の恋人 ハチこうのさいごのこいびと 『ハチ公の最後の恋人』は、祖母の予言通りに出会った青年ハチと、その「最後の恋人」となる語り手の恋を描く長編です。恋愛の高揚だけでなく、別れや死の予感を含む関係の時間が、吉本ばなならしい柔らかな一人称で語られます。NDL書誌では1994年のメタローグ版が初期刊行として確認でき、中央公論社版は1996年…
- 356 1994 虹の岬 にじのみさき 『虹の岬』は、大企業の要職を辞した男と京都大学教授夫人との長い情愛を描く恋愛長篇です。加賀平野の鶴来を主な舞台に、二十五年に及ぶ関係、人生の決断、喪失の感覚が静かな文体で重ねられます。中央公論新社公式で谷崎潤一郎賞受賞は確認できますが、内容説明は既存梗概と二次情報に依拠しています。 第30回 谷崎賞
- 357 1994 夢見る貝の伝記 ゆめみるかいのでんき 『夢見る貝の伝記』は、吉目木晴彦が1994年に講談社から刊行した小説作品です。講談社公式、Books/JPRO、NDLサーチ、Amazonの商品ページで書誌を確認しました。
- 358 1993 寂寥郊野 じゃくりょうこうや 『寂寥郊野』は、吉目木晴彦が第109回芥川賞を受賞した中編です。既存データでは、アメリカ在住の日本人女性がアルツハイマー症を発症し、当事者と家族の苦悩や愛情を描く作品として整理されています。日本文学振興会公式で受賞は確認できますが、内容説明は二次情報由来のため、細部は追加確認が必要です。 第109回 芥川賞
- 359 1993 骸骨山脈 がいこつさんみゃく 『骸骨山脈』は、野間井淳が第25回新潮新人賞を受賞した作品です。NDLでは『新潮』1993年11月号と受賞作発表記事を確認できますが、具体的な筋や書評は今回確認できませんでした。題名の死や山岳のイメージを手がかりにした分類は暫定です。 第25回 新潮新人賞
- 360 1992 鹽壺の匙 しおつぼのさじ 『鹽壺の匙』は、「なんまんだあ絵」「白桃」「愚か者」などを収める車谷長吉の短篇集です。料理人や下足番としての経験、一族の記憶、身近な死を、私小説的で陰影の濃い文体で描きます。生活の卑近さと死の感覚が近接する、車谷文学の出発点となる作品集です。 第6回 三島賞
- 361 1992 エンドレス・ワルツ 『エンドレス・ワルツ』は、ジャズ奏者・阿部薫と作家・鈴木いづみをモデルに、互いを傷つけながら激しく求め合う男女の軌跡を描く稲葉真弓の長篇です。音、速度、言葉、身体の破滅的な交錯を通して、芸術と恋愛の境界にある熱と痛みを描きます。
- 362 1991 母よ ははよ 1991年6月に講談社から刊行された本人単著。NDLのBooks系レコードおよび講談社文芸文庫版の書誌で確認できる。
- 363 1991 誇り高き人々 ほこりたかきひとびと 『誇り高き人々』は、吉目木晴彦が1991年に講談社から刊行した小説作品です。講談社公式、Books/JPRO、NDLサーチ、Amazonの商品ページで書誌を確認しました。
- 364 1989 人生の親戚 じんせいのしんせき 二人の息子を失った女性まり恵の苦難と魂の遍歴を描く大江健三郎の長編。喪失を抱えた人物が、宗教的・共同体的な問いに触れながら生を組み替えていく。大江後期の、家族の痛みと救済への希求が結びつく作品として読める。
- 365 1989 白河夜船 しらかわよふね 眠りに沈んでいく女性たちを描く三篇を収めた作品集。恋愛、喪失、孤独が、眠りという身体の状態を通じて静かに語られる。吉本ばなな初期の透明な語りと、生死の境目に触れる感覚がよく表れた一冊。
- 366 1989 TUGUMI つぐみ 海辺の町を舞台に、語り手まりあと、病弱で美しいが激しい気性を持つ少女つぐみの最後の夏を描く長編。家族経営の宿、海辺の時間、恋の予感、病と別れの気配が重なり、青春のまぶしさと残酷さが同時に立ち上がる。吉本ばなならしい平明な一人称で、親密な関係が永遠には続かないことを痛切に描く。
- 367 1989 流離譚 りゅうりたん 『流離譚』は、中村隆資のデビュー作にあたる第69回文學界新人賞受賞作です。題名が示すように、定住できない感覚や移動の経験を軸にした作品として整理できます。第102回芥川賞候補にもなり、1989年下半期の新人賞作品として注目されました。 第69回 文學界新人賞
- 368 1988 哀しい予感 かなしいよかん 記憶の空白を抱えた少女が、風変わりな親族の家で自分の過去へ近づいていく長編。家族の秘密、喪失、直感のような感覚が、吉本ばなな初期作らしい静かな語りで結びつく。大きな事件よりも、眠りや気配に近い感情の変化を読む作品。
- 369 1988 うたかた/サンクチュアリ うたかた/サンクチュアリ 吉本ばななの初期作品集で、「うたかた」と「サンクチュアリ」を併録する。喪失や恋愛、居場所をめぐる不安を、柔らかく透明な語り口で描く。日常の小さな違和感から、生死のあわいや心の避難場所へ入っていく初期吉本作品らしさがある。
- 370 1988 汝ふたたび故郷へ帰れず なんじふたたびこきょうへかえれず 『汝ふたたび故郷へ帰れず』は、飯嶋和一のデビュー作です。現代の苦境に置かれた人物を描く作品として整理され、後に歴史小説へ大きく展開する作家の初期の問題意識をうかがわせます。故郷への帰還不能という題が、喪失と自己の行き場のなさを強く示しています。 第25回 文藝賞
- 371 1987 懐かしい年への手紙 なつかしいとしへのてがみ 語り手が導き手である「ギー兄さん」との関係をたどりながら、自分の文学的半生と故郷の森の記憶を再構成する自伝的長編。私小説の形式を借りながら、実際には作家自身と架空の人物をずらし、記憶・読書・共同体の物語を重ねていく。ダンテを媒介に、帰郷できない作家が森の村と文学の場所を問い直す。
- 372 1987 ノルウェイの森 のるうぇいのもり 1960年代末の学生運動期を背景に、ワタナベと直子、緑の関係を通じて、喪失、恋愛、死者への記憶を描く長編。村上作品としては幻想性を抑えたリアリズム寄りの語りで、音楽、読書、寮生活、療養所の細部が青春の傷を浮かび上がらせる。読みやすい恋愛小説の形を取りながら、親しい死をどう抱えて生きるかという痛切な問…
- 373 1987 川べりの道 かわべりのみち 『川べりの道』は、鷺沢萠のデビュー作にあたる第64回文學界新人賞受賞作です。在日コリアン二世の少女の揺れを繊細に描いた作品として整理され、川べりという境界的な場所が、血筋や帰属の不安を映します。若年での受賞という話題性だけでなく、移民的な自己認識を扱う点でも重要です。 第64回 文學界新人賞
- 374 1985 河馬に嚙まれる かばにかまれる 連合赤軍事件の記憶や、その後を生きる人々の傷を背景にした連作短篇集。表題作では、政治的暴力の記憶と個人の身体感覚が奇妙に結びつき、過去を説明しきれないまま抱え続ける人間の多義性が浮かび上がる。寓話的な動物イメージと自己照射的な語りを通して、1970年代の事件の残響を1980年代の生へ引き寄せる。 第11回 川端賞
- 375 1985 ベッドタイムアイズ べっどたいむあいず 『ベッドタイムアイズ』は、黒人兵スプーンと日本人女性の激しい性愛を奔放な文体で描いた山田詠美のデビュー作です。恋愛や性を、社会的規範から外れた身体感覚として押し出し、当時の日本文学に強い衝撃を与えました。都市、身体、異文化の接触が、痛切で挑発的な読み味を作っています。 第22回 文藝賞
- 376 1984 青桐 あおぎり 『青桐』は、乳癌に冒されながら医療を拒む叔母を、姪・充江の視点から見つめる作品です。看取りの時間に、北陸の旧家、幼時の火傷、叔母との愛憎が重なり、家族の記憶と身体の傷がゆっくり露出していきます。死をめぐる静けさの奥に、親密さの暴力性を感じさせる点が読みどころです。 第92回 芥川賞
- 377 1983 新しい人よ眼ざめよ あたらしいひとよめざめよ 障害を持つ息子イーヨーとの日常を、ウィリアム・ブレイクの詩を媒介に見つめ直す連作小説。語り手は息子の成長、死や性への問い、家族のなかの不安を受け止めながら、文学の言葉が現実のケアとどのように結びつくかを探る。私小説的な素材を思想的な読解と重ねることで、父と子の関係を閉じた家族の物語にせず、他者と共に…
- 378 1983 若者たちの悲歌 わかものたちのひか 石川達三が1983年に刊行した作品。公開情報では詳細な梗概や批評が限定的なため、題名が示す若者像と悲劇性を手がかりに、世代の違和や社会との摩擦を扱う後期作として暫定整理する。内容の精査は現物・書評確認の優先候補として残す。
- 379 1983 海に夜を重ねて うみによるをかさねて 『海に夜を重ねて』は、ストリッパーと知的障害のある青年との愛を描く作品です。社会の周縁に置かれた二人の関係を通して、身体、欲望、ケアの境界を問う物語として整理できます。後に映画「メイク・アップ」の原作となり、映像化にも接続した作品です。 第20回 文藝賞
- 380 1982 「雨の木」を聴く女たち 「レイン・ツリー」をきくおんなたち 「雨の木」という象徴的なイメージを核に、死者の記憶、喪失、救いの可能性をめぐる連作短篇集。マルカム・ラウリーなど西洋文学への参照と、樹木・音・女性たちの声が重なり、現実の痛みを神話的な想像力へ押し広げていく。大江健三郎の1980年代の作品群のなかでも、個人的な死生観と文学的引用が静かに響き合う作品と…
- 381 1982 浮上 ふじょう 『浮上』は、医師・田野武裕のデビュー作にあたる第55回文學界新人賞受賞作です。既存梗概では、病や死を背景にした青春の痛みを扱う作品として整理されています。文學界新人賞から芥川賞候補へ進んだ作品で、1980年代前半の新人賞と芥川賞の接続を示す一作です。 第55回 文學界新人賞
- 382 1982 ナビ・タリョン なびたりょん 『ナビ・タリョン』は、李良枝の初期作品です。NDLサーチでは、『群像』1982年12月号の創作合評で同作が扱われていること、また2006年刊の〈在日〉文学全集第8巻『李良枝』に収録されていることを確認できます。公開資料で詳しい梗概は確認できないため、紹介は書誌・収録情報と、李良枝文学に通底する在日性…
- 383 1980 コインロッカー・ベイビーズ コインロッカー・ベイビーズ 1972年夏、コインロッカーに遺棄されたキクとハシは、施設と養家を経て、それぞれ異なるかたちで母の不在と都市への怒りを抱え込む。ハシは歌声とショービジネスに、キクはアネモネや毒物ダチュラをめぐる破壊衝動に引き寄せられ、東京は欲望と暴力が増殖する異様な空間として立ち上がる。棄児、身体、都市、音の記憶を… 第3回 野間新人賞
- 384 1980 遠雷 えんらい 『遠雷』は、栃木県の都市近郊で農業を営む若者・満夫を中心に、高度成長後の農村解体と家族の変化を描く長篇です。工業団地の建設、農地の喪失、ビニールハウス栽培の失敗、見合い結婚や祖母の死が重なり、地方の生活が変質していく過程が描かれます。労働と土地の問題を、若者の生活感覚から捉えた作品として読めます。 第2回 野間新人賞
- 385 1979 同時代ゲーム どうじだいゲーム 四国の森の谷間にある「村=国家=小宇宙」を、手紙・神話・歴史の断片を重ねて語り直す実験的長編。語り手は村の起源、反乱、血縁、移住の記憶を再編し、個人の物語ではなく共同体が自分自身を語る仕組みそのものを小説化する。大江の森の神話と戦後政治への問いが、濃密な語りの構造として展開される。
- 386 1976 ピンチランナー調書 ピンチランナーちょうしょ 大江健三郎が1976年に刊行した実験的長編。父子関係、身体、記録や調書の形式を通して、現実と幻想の境界を揺らす。障害のある子をめぐる大江の継続的主題が、メタフィクション的な構成と結びつく作品である。
- 387 1975 祭りの場 まつりのば 『祭りの場』は、林京子が『群像』に発表し、1975年に講談社から刊行された芥川賞受賞作です。長崎で被爆した作者自身の経験を背景に、新聞記事、記録、証言、記憶を重ねながら、1945年8月9日の「場」を二十数年後から見つめ直します。被爆文学の重要作であり、林京子の出発点となった作品です。 第73回 芥川賞
- 388 1974 その最後の世界 そのさいごのせかい 石川達三が1970年代に刊行した後期作品。題名は終末や閉ざされた世界を想起させ、社会の行き詰まりと個人の孤独を読む手がかりになる。公開情報が限られるため、後期石川の社会観・人生観を示す作品として暫定紹介する。
- 389 1973 洪水はわが魂に及び こうずいはわがたましいにおよび 核シェルターに籠る父子と「自由航海団」の若者たちの交流と破局を描く長編。核時代の不安、障害のある子との関係、共同体への希求が、大江らしい寓話的な構図で結びつく。個人の魂の危機を、世界的な破局の想像力へ接続する作品。 第26回 野間文芸賞
- 390 1972 みずから我が涙をぬぐいたまう日 みずからわがなみだをぬぐいたまうひ 大江健三郎の1970年代の作品で、個人的な記憶や家族の傷が、天皇制や戦後史への問いと重なっていく。題名の荘重さに対し、語りは自己の痛みを過剰なほど意識化する。大江の私的主題と政治的主題が強く結びつく作品である。
- 391 1969 われらの狂気を生き延びる道を教えよ われらのきょうきをいきのびるみちをおしえよ 父と障害のある息子、狂気や暴力にさらされた若者たちをめぐる中短篇を束ねた作品集。表題作では家族の内部にある痛みと外部世界の不穏が結びつき、個人的な危機が時代の狂気をどう生き延びるかという問いへ広がる。大江が1960年代に深めた身体・父性・責任の主題を、寓話性と切迫した心理描写で展開する。
- 392 1968 青春の蹉跌 せいしゅんのさてつ 夢を持つ青年が挫折と欲望に追い詰められていく過程を描いた長編。青春の理想が、社会的成功への欲望や恋愛、罪の意識によって崩れていく。ベストセラーとなり映画化もされた、石川達三の通俗性と社会批評が接続する作品である。
- 393 1968 若き日の詩人たちの肖像 わかきひのしじんたちのしょうぞう 『若き日の詩人たちの肖像』は、戦争へ向かう時代と敗戦後の転換期を背景に、若い知識人たちが文学や思想を拠り所にしながら自己を形成していく長篇です。堀田善衛が同時代史と個人の精神史を重ねる代表的な仕事として位置づけられます。
- 394 1967 万延元年のフットボール まんえんがんねんのフットボール 友人の死と家族の危機を抱えた蜜三郎が、弟の鷹四とともに四国の谷間の村へ戻り、百年前の一揆の記憶と向き合う長編。兄弟の対立、障害をもつ子の存在、共同体に残る暴力の記憶が、過去と現在を重ねる構成の中で展開する。閉ざされた村落を神話的な舞台として、個人史と共同体史、政治的熱狂と責任の問題を絡み合わせた大江… 第3回 谷崎賞
- 395 1967 約束された世界 やくそくされたせかい 石川達三が1967年に刊行した作品で、新潮社版の書誌が確認できる。題名は理想や未来への約束を示す一方、それが現実の社会で損なわれる可能性も含む。公開情報が少ないため、戦後社会の期待と挫折をめぐる作品として暫定紹介する。
- 396 1964 傷だらけの山河 きずだらけのさんが 石川達三が1960年代半ばに刊行した社会小説。題名の「山河」は個人だけでなく社会全体の傷を想起させ、戦後復興の陰にある矛盾や疲弊を読む軸を与える。公開梗概は薄いが、政治・経済・生活の歪みを扱う作品として暫定的に整理する。
- 397 1964 個人的な体験 こじんてきなたいけん 脳に重い障害をもつ子の誕生に直面した青年バードが、父になることへの恐怖と逃避願望に追い詰められていく長編。酒、性、アフリカへの空想に逃げ込むバードの混乱を追いながら、私的な出来事が責任、倫理、家族の問題へ変わっていく過程を描く。滑稽さと残酷さが同居する語り口で、父性を美談にせず、引き受けることの困難…
- 398 1964 出発は遂に訪れず しゅっぱつはついにおとずれず 『出発は遂に訪れず』は、島尾敏雄が特攻隊長として出撃直前に終戦を迎えた体験と深く結びつく、戦争小説系の代表作の一つです。NDLサーチでは1964年に新潮社から刊行された211ページの単行本として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出情報を十分に確認できなかったため、ここでは内容を断定しす…
- 399 1962 遅れてきた青年 おくれてきたせいねん 大江健三郎の初期長編で、「遅れてきた」若者の屈折した自己意識を描く作品。戦後の政治的・性的な不安を背景に、青年が自分の時代に乗り遅れた感覚を抱える。初期大江らしい、青春小説でありながら痛切で不穏な読み味を持つ。
- 400 1959 人間の壁 にんげんのかべ 教育現場を舞台に、教師たちの苦闘と理想を描いた石川達三の大河社会小説。学校という制度を通じて、戦後社会の矛盾、労働、政治的な圧力を広く描く。個人の善意だけでは越えられない「壁」を、複数の人物の視点で見せる作品である。
- 401 1959 山塔 さんとう 『山塔』は、斯波四郎が第41回芥川賞を受賞した短篇集の表題作です。公開資料で詳しい筋を確認できる範囲は限られますが、生活の厚みと人間の時間を描く作品として評価されました。既存調査にある選評の要点からは、技巧よりも「人生」が感じられる点が評価されたことがわかります。 第41回 芥川賞
- 402 1959 死の棘(初期連作) しのとげ(しょきれんさく) 『死の棘(初期連作)』は、妻の精神疾患と夫婦生活の崩壊を、逃げ場のない一人称で書き継いだ私小説的連作です。家庭という最も近い場所が病と疑念によって変質していく過程を、苛烈な自己凝視で描きます。のちに完結版へ至る島尾敏雄文学の中心的モチーフが、初期の連作段階からすでに現れています。
- 403 1959 海辺の光景 うみべのこうけい 講談社1959年刊の単行本。既存収録の初期芥川賞受賞作・晩年作の間を補う代表作。
- 404 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自…
- 405 1958 飼育 しいく 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 第39回 芥川賞
- 406 1958 あゝ江田島 アア エタジマ 既収録『硫黄島』と同じ戦争文学系の代表候補。後年『硫黄島・あゝ江田島』として合本再刊もある。
- 407 1957 硫黄島 いおうじま 『硫黄島』は、太平洋戦争末期の激戦地・硫黄島を題材にした戦争小説です。戦闘の記憶を扱いながら、兵士個人の生と死が国家や軍事の物語に回収されていく重さを描きます。公開出典から確認できる内容紹介は限られるため、ここでは受賞・書誌情報を中心に整理しています。 第37回 芥川賞
- 408 1956 四十八歳の抵抗 よんじゅうはっさいのていこう 中年男性が若い女性に惹かれ、家庭と欲望の間で揺れる姿を描いた長編。年齢、性、家庭内の役割が絡み合い、戦後の中産階級的生活の安定が揺らぐ。映画化もされた話題作で、石川達三が家族と欲望を社会的に描いた一作。
- 409 1956 ガラスの靴・愛玩 がらすのくつ・あいがん NDLで角川書店1956年刊『ガラスの靴・愛玩』を確認。後年の『ガラスの靴』単体版とは区別する。
- 410 1955 白い人 しろいひと 『白い人』は、ナチ占領下のフランスを舞台に、拷問と背徳を通して悪の問題を問う遠藤周作の中篇です。信仰の有無を単純に裁くのではなく、人間が悪へ傾く瞬間を内面から探ります。カトリック作家としての遠藤の問題意識が、以後の『沈黙』などへつながる出発点として読めます。 第33回 芥川賞
- 411 1952 或る「小倉日記」伝 あるこくらにっきでん 『或る「小倉日記」伝』は、森鷗外の小倉時代を記録することに生涯を傾けた人物を主人公にする短篇です。文学史の周縁にいる無名の調査者の執念をたどり、資料を追う行為そのものを物語化しています。史実と想像を接続する構成が、のちの松本清張の記録性・推理性を予告します。 第28回 芥川賞
- 412 1951 風にそよぐ葦 かぜにそよぐあし 戦後の混乱期を生き抜く民衆の姿を、新聞社を舞台に描いた長編社会小説。報道、政治、生活の不安が交差する場として新聞社を置き、戦後民主主義の理想と現実のずれを描く。複数の人物を通じて社会全体を見渡す、大河的な読み味がある。
- 413 1951 広場の孤独 ひろばのこどく 『広場の孤独』は、朝鮮戦争下の東京を舞台に、新聞社に勤める在日中国人の知識人が戦争と民族のあいだで引き裂かれていく姿を描く作品です。政治状況を背景にしながら、個人の倫理と所属の不安を前景化する点に読みどころがあります。戦後文学の中でも、国際政治と内面の孤独を同時に扱った作品として位置づけられます。 第26回 芥川賞
- 414 1951 悪い仲間・陰気な愉しみ わるいなかま・いんきなたのしみ 『悪い仲間・陰気な愉しみ』は、病と貧しさ、青年期の停滞を背景にした安岡章太郎の初期短篇群です。結核療養や日常の挫折をめぐる内省を、過剰な劇化を避けた私小説的な語りで描きます。第三の新人と呼ばれる世代の、戦後の日常感覚と弱さへのまなざしがよく出た作品です。 第29回 芥川賞
- 415 1949 異邦人 いほうじん 『異邦人』は、敗戦後の中国で中国共産党軍に徴用された日本人の体験を描く短篇です。異国の軍事・政治状況に投げ込まれた人物を通して、戦後直後の日本人が抱えた疎外感と帰属の不安を切り取ります。物語の細部については公開出典が限られるため、ここでは受賞作として確認できる範囲を中心に紹介します。 第23回 芥川賞
- 416 1949 山の音 やまのおと 『山の音』は、鎌倉に暮らす老齢の会社重役・信吾を中心に、家族の崩れと老いの気配を見つめる連作長篇です。嫁の菊子への静かな愛着、息子夫婦の不和、死の予感が、抑制された三人称の語りで重なっていきます。戦後の家庭小説でありながら、川端康成らしい感覚的な細部が、老いと記憶の陰影を際立たせます。 第7回 野間文芸賞
- 417 1947 望みなきに非ず のぞみなきにあらず 石川達三が戦後間もない時期に刊行した作品で、新潮社版などの書誌が確認できる。題名には敗戦後の絶望と、それでも残る可能性への視線が併存している。公開情報が少ないため、戦後社会を背景にした再出発と倫理の小説として暫定的に整理する。
- 418 1945 生きてゐる兵隊 いきてゐるへいたい 南京攻略戦に従軍した日本兵の実態を描いた戦争小説。戦場の兵士を英雄化せず、加害と疲弊のただ中に置くことで、戦争が人間の身体と倫理をどう壊すかを見つめる。発売直後に発禁処分を受けた問題作として知られ、石川達三の社会的リアリズムを代表する重要作である。
- 419 1940 転落の詩集 てんらくのしいしゅ 石川達三が戦前から戦後にかけて読まれた作品で、八雲書店版や作品集収録が確認できる。題名の「転落」が示すように、社会的な地位や精神の崩れをめぐる小説として位置づけられる。内容細部は追加確認が必要だが、社会派の視線で人間の弱さを追う作品として分類する。
- 420 1935 蒼氓 そうぼう 昭和初頭、国策としてブラジル移民に応じた人々を描く三部構成の群像劇。第一部では神戸の国立移民収容所で出港を待つ数日間が、東北の寒村から一家で海を渡ろうとする者たちを中心に描かれ、続いて移民船での45日間の航海、ブラジル到着後に過酷な労働へ踏み出す姿へと続く。貧しさゆえに故郷を棄てざるをえない名もなき… 第1回 芥川賞