Themes
身体
主題「身体」に分類された 342 作品。
- 001 2026 吸血鬼 きゅうけつき 女性が中学生になると若さや美しさで十二等級に順位付けされ、社会的地位と財産のある男性に望まれれば十五歳で結婚を強いられる架空社会を描くディストピア長篇。拒否した女性は「へびつかい」と呼ばれ迫害される世界で、中学生の有紗は友人たちと学校生活を送りながら、美術館で出会ったアナウンサーの美優と開業医の白井…
- 002 2026 彼女のカロート かのじょのかろーと 『彼女のカロート』は、表題作「彼女のカロート」と「宦官への授業」を収める作品集。表題作では、耳が聞こえなくなった女性アナウンサーから新しい墓を依頼された主人公の日常が、彼女とのずれた応答によって静かに侵食されていく。もう一篇では、読むことに困難を抱えながら文学に向かう青年がシュールな冒険に巻き込まれ…
- 003 2026 姥皮 うばかわ 『姥皮』は、『新潮』2026年4月号掲載の創作です。女系の強い家に、大叔母あけ美さんから譲られた「皮」があるという奇譚を起点にします。「皮」は身体の一部でありながら、家に伝わるもの、受け渡されるものとして語られ、血縁と欲望の境界を曖昧にします。皮膚というもっとも個人的なものが家系の持ち物になる設定に…
- 004 2025 記念日 きねんび 『記念日』は、23歳のミナイ、42歳のソメヤ、76歳の乙部さんという年齢も境遇も違う女性三人が、奇妙なルームシェアをきっかけに交わっていく長篇です。「明日から、おばあさんになってみませんか?」という提案が、若さや老い、身体のままならなさ、他者と暮らすことの違和感を動かしていく。年齢や役割を一時的にず…
- 005 2025 温泉小説 おんせんしょうせつ 年齢も性別も境遇も異なる人びとが温泉地へ向かう六篇の連作的短篇集。おひとり様限定の温泉バスツアー、免許返納を迫られる後期高齢者、母の呪縛から逃れられない44歳の娘、亡き妻との記憶をたどる初老の男、50歳女性の一人旅、婚約者と別れて南の島で再出発を試みる若者など、人生の苦みや迷いを抱えた人物たちを描く…
- 006 2025 女の子の背骨 おんなのこのせぼね 『女の子の背骨』は、先天性筋疾患を抱える10歳の少女ガゼルの家族旅行を描く表題作と、中篇「オフィーリア23号」を収めた第二小説集です。病気の姉、障害をもつ身体、家族、性、文学表象をめぐる言葉が、前作『ハンチバック』以後の市川沙央の問題意識をさらに広げる。少女の身体をめぐる語りは、痛みや介助を説明する…
- 007 2025 世界99 せかいきゅうじゅうきゅう 『世界99』は、性格のない如月空子が、コミュニティごとにふさわしい人格を作って生き延びる上下巻の大長編です。空子の世界には、当初はかわいいペットのような存在だったピョコルンがいて、技術の進展により社会のあり方を変えていきます。人格を使い分ける空子の生存術は、同調圧力と自己像の不安定さを極端なかたちで… 第78回 野間文芸賞
- 008 2025 その針がさすのは そのはりがさすのは 『その針がさすのは』は、再開発が進む東京・中野に住む「僕」が、街の過去と自分の身体の出来事を結びつけていく小説です。戦前に満州国と中野が電信ケーブルでつながっていたという話、不妊治療手術、時計のイメージが重なり、日常の街が歴史の深部へ沈み込む。個人の身体の時間と都市の記憶が同じ針に触れられるように接…
- 009 2025 百日と無限の夜 ひゃくにちとむげんのよる 『百日と無限の夜』は、第一子の妊娠中に切迫早産で入院した「わたし」が、横たわる時間のなかで出産と生命をめぐる幻視の旅へ入っていく長篇です。能『隅田川』の女物狂いを案内人に、中世の京、駆け込み寺、若狭のお水送り、海辺の産小屋へと時空を越えて進む構成が、病室の身体感覚と神話的な想像力を結びつける。動けな… 第42回 織田作之助賞
- 010 2025 ティータイム ティータイム 『ティータイム』は、『百年泥』で芥川賞を受賞した石井遊佳による、奇想の強い4篇を収めた短篇集です。大人びた兄妹、インドから脱出できない日本人、電車の網棚の上で暮らす女性、恐ろしいサンタクロースなど、現実の足場を少しずつ外す人物や状況が並ぶ。短篇ごとに場所や常識がずれていき、読者は笑いと不安のあいだに…
- 011 2025 受け手のいない祈り うけてのいないいのり 『受け手のいない祈り』は、感染症拡大で地域の救急医療が逼迫するなか、患者を受け入れ続ける病院で働く青年医師・公河を描く長篇です。長時間勤務と極度の疲労が、死、狂気、使命感、食欲や時間感覚の乱れをひとつの身体に押し寄せさせる。医療現場の切迫を記録的に扱うだけでなく、祈りや責任の向かう先が失われる感覚を…
- 012 2025 燃ゆる海 もゆるうみ 馬を愛する女性がドバイへ渡る物語として紹介され、第11回林芙美子文学賞佳作に選ばれた作品。受賞時タイトルは「燃ゆる海」だが、雑誌掲載時には「燃ゆる馬」へ改題され、馬への愛着が異国への移動を導く力として前面に出る。馬は単なる趣味や対象ではなく、主人公の身体感覚、欲望、生活圏の外へ出ていく衝動を結びつけ…
- 013 2025 橘の家 たちばなのいえ 『橘の家』は、中西智佐乃が『新潮』2025年3月号に発表し、同年6月に新潮社から刊行した小説です。幼い頃に2階から落ちたものの庭の橘の木のおかげで助かった恵実は、木の力を媒介する存在だという噂によって、子どもを望む人々から頼られるようになります。家に伝わる力への期待は、恵実の身体と役割を周囲の欲望に… 第38回 三島賞
- 014 2025 ものごころ ものごころ 『ものごころ』は、植物、花、虫、生きものがあふれる子供の世界を、身体感覚ごと描く九篇の短篇集です。怪我をした犬を拾った少年たち、飲み込んだスモモの種をめぐる不安など、子供の視界に近い感受性から世界の手触りを探ります。子供の認識は無垢なものとして固定されず、身体の違和感や怖さ、周囲の大人との距離を含ん…
- 015 2025 庭に接ぐ にわに つぐ 『庭に接ぐ』は、才谷景が『海を吸う』で第60回文藝賞〈短篇部門〉優秀作となった後に発表した受賞第一作です。森へ続く〈庭〉のある家で暮らす父と娘を中心に、森から戻った父の変調と、二人きりの箱庭を侵食するものを描きます。2026年刊行のデビュー作品集『海を吸う/庭に接ぐ』に収録され、受賞作と並べて、身体…
- 016 2025 君の手が語ること きみのてがかたること Books/JPROは、還暦を迎えるベルギー人の国文学教授の「僕」と看護師の梓が手話を通じて出会い、デフリンピック会場で意外な展開を迎える物語として紹介している。
- 017 2025 生活 『生活』は、代官山の古い家で父と暮らす二十歳の椿を中心に、服、恋愛、労働、書道、猫との日々を描く長篇です。新潮社公式ページでは、日々の出来事が「生活」と言えるのかという問いと、予測不能な展開を持つ小説として紹介されている。町屋良平らしい身体への意識と、語られること自体への批評性が、若者の生活の手触り…
- 018 2024 バリ山行 バリさんこう 転職して関西の建物修繕会社に入った波多は、社内の親睦登山をきっかけに六甲山に通うようになる。やがて、職人気質で社内では変人扱いされるベテラン社員・妻鹿が、整備された登山道を外れ、地図を読みながら道なき道を行く「バリ山行(バリエーションルートの登山)」を独りで続けていることを知る。会社の経営が傾き、リ… 第171回 芥川賞
- 019 2024 め生える めばえる 髪の毛が根こそぎ抜ける感染症によって、中高生以下を除く大人がみな髪を失った世界を描く中編。薄毛を気にしてきた真智加は開放感を覚える一方、幼少期に髪を切られた高校生・琢磨は恋人と訪れた占い師の言葉をきっかけに別の悩みに直面する。髪が消えることで差異がなくなるように見えても、身体を評価する視線や劣等感は…
- 020 2024 みんなのお墓 みんなのおはか 「内藤家之墓」に引き寄せられる人々を描く、共同墓地を軸にした群像劇。裸になる快感を追う主婦、「真理」がわからない小学生たち、夜のコンビニだけを日課にする引きこもり男性、宗教的な合宿に向かう若者、潔癖症の妻を持つ中年など、ばらばらの人物が悩みを抱えながら生きている。死者の場所である墓を、生きる者の傷や…
- 021 2024 サンショウウオの四十九日 サンショウウオのしじゅうくにち 外から見ればひとりの人間にしか見えないが、その身体には杏と瞬というふたつの意識が宿っている——半身ずつを分け合って生きる29歳の結合双生児の姉妹。父もまた、胎児のまま兄の身体に取り込まれた「胎児内胎児」として摘出されて生をうけた、稀有な来歴を持つ。その父の片割れともいえる伯父の訃報が届き、四十九日ま… 第171回 芥川賞
- 022 2024 セルフィの死 セルフィのし 『セルフィの死』は、フォロワー獲得に執着するミクルを主人公に、承認欲求とSNSが身体感覚まで侵食する時代を描く長篇です。自撮りを繰り返すと顔面が変容し、無人回転寿司やフォロワー急増といった奇妙な出来事が連鎖していきます。自分を見せる行為が、自分を制御できなくなる感覚へ反転していく点が、本谷有希子らし…
- 023 2024 しをかくうま しをかくうま 人が初めて馬に乗った太古の瞬間から、馬と人類の関係を壮大な歴史としてたどり直す長篇。現代で競馬実況を生業とする「わたし」は、愛する牝馬しをかくうま号へ近づくため、人類と馬のあいだに起きたすべてを知ろうとする。馬を知ろうとする欲望は、対象を愛することと支配することの境界を問い直す力として働く。疾走する… 第45回 野間新人賞
- 024 2024 タブー・トラック タブー・トラック クリーンなイメージに押しつぶされそうな俳優、自分を管理しようとする脚本家、SNSで著名人を糾弾する会社員、整形と動画配信で稼ぐ女子高生など、タブーに縛られ、またタブーに惹かれる人々の人生が交錯する長篇。題名の「タブー・トラック」は、世間の目から離れて禁忌を犯せるプライベートスペースとして示される改造…
- 025 2024 最近 さいきん 『最近』は、パンデミック後の近い過去を背景に、平凡な夫婦と周囲の人々の生活を精密に追う連作長篇です。救急外来の待合室で想起される赤い猫の噂を入口に、家族、友人、病院、日々の手続きや会話が、不安と責任の曖昧さを呼び込みます。大きな事件ではなく、生活の中で少しずつ増えていく違和感や気配が連作のつながりを…
- 026 2024 ひとでなし ひとでなし 『ひとでなし』は、星野智幸が2024年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 027 2024 生きる演技 『生きる演技』は、元子役と炎上系俳優という対照的な高校一年生ふたりを中心にした長篇です。河出書房新社公式ページでは、文化祭で戦争の惨劇を演じる舞台を軸に、家族への憎しみや国家への違和感が交差する作品として紹介されている。演技することが、本音を隠す行為であると同時に生きる意味を問う方法にもなる点が読み…
- 028 2023 あなたの燃える左手で あなたのもえるひだりてで ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサトは、目覚めると自分の身体に見知らぬ白人の手がつながれていることを知る。身体の一部が他者のものになる違和感から、国境、民族、所有、故郷の喪失へと思考が広がっていく中篇である。移植された手は単なる医療上の異物ではなく、歴史や政治の境界線が身体の内部に入り込む… 第45回 野間新人賞
- 029 2023 FICTION フィクション 演劇する集まりを「FICTION」と名づけ、十六年続けてきた「わたし」が、仲間の死や病、自身の大病を経て回想を始める連作短篇集。収録作は「FICTION 01 象使い」から「FICTION 07 助けになる習慣」まで、演劇と小説、記憶と作り話の境界を行き来する。新潮社は芥川賞受賞作『しんせかい』に連…
- 030 2023 浮遊 ふゆう 高校生のふうかが、年上の会社経営者の男の家で暮らし、男の元恋人を象ったマネキンの下で夜ごとホラーゲームに没入する長篇。ゲーム内の悪霊から逃げる感覚と、現実の住まい、人間関係、身体へのまなざしが重なり、現実とゲームの境界が不穏に揺れる。ホラーゲームの逃走は娯楽であると同時に、現実の関係から抜け出せない…
- 031 2023 幻日/木山の話 げんじつ/きやまのはなし 『幻日/木山の話』は、コロナ禍を含む時間のなかで書き継がれた「木山」をめぐる連作小説集で、八つの短篇を収める。人、動植物、水や土や空気、社会が互いに影響し合う世界を、出来事の大きな起伏よりも時間の流れやまなざしの変化に沿って描く。孤独は閉じた心理ではなく、他者や自然へどう目を向けられるかという問いと…
- 032 2023 ハンチバック ハンチバック 重度の先天性ミオチュブラー・ミオパチーのため人工呼吸器と電動車椅子を使い、両親が遺したグループホームで暮らす井沢釈華。背骨がS字に湾曲した彼女は、通信制大学で学び、ウェブにコタツ記事や性的な小説を書き、匿名アカウントで「妊娠と中絶がしてみたい」と挑発的な呟きを放つ。その呟きを、彼女の書いたものをすべ… 第169回 芥川賞
- 033 2023 肉を脱ぐ にくをぬぐ 新人作家の柳佳夜がエゴサーチで同姓同名のVTuberを見つけ、なりすましなのか、偶然なのか、その正体を探り始める。作家名、身体、声、オンライン上の分身がずれていく設定を通して、自己像と他者から見られる像の境界が揺さぶられる。李琴峰らしいアイデンティティへの関心を、VTuberという現代的なメディア環…
- 034 2023 植物少女 しょくぶつしょうじょ 『植物少女』は、出産時の脳出血で植物状態になった母の病室へ通う美桜の成長を通して、母と娘の関係がどう変わるかを描く長編である。母が「意思のある母」として応答できない状況を、単純な喪失や献身に閉じず、身体、ケア、親子関係の時間として見つめる。現役医師でもある著者の視点が、医療的な状況と家族の感情を乾い… 第36回 三島賞
- 035 2023 そこまでして覚えるようなコトバだっただろうか? そこまでしておぼえるようなことばだっただろうか 言葉、文字、発音、身体感覚をめぐる四篇を収めた短篇集。発音できない一音によって自国から疎外される「クィ」、サッカーから人類の起源へ飛躍する思考、ひらがな・カタカナ・漢字を身体で渡るような文字の冒険、子の言語習得を前に立ちつくす猫木豊が描かれる。言葉を扱うことの自由さと不自由さを、実験的な形式と切実な…
- 036 2023 迷彩色の男 めいさいしょくのおとこ 『迷彩色の男』は、『ジャクソンひとり』でデビューした安堂ホセの文藝賞受賞第一作です。河出書房新社公式ページでは、都内のクルージングスポットで起きた暴行事件を起点に、ブラックボックス化した出来事、差別やヘイトを逆手に取る復讐劇、混沌を増す日常が疾走する作品として紹介されている。人種、セクシュアリティ…
- 037 2023 子宮の夢 しきゅうの ゆめ 女たちが「子宮投げ」に興じる町を舞台に、「私」と「時間」、そして母をめぐる一夜を描く短篇。身体の内部を外へ投げ出すような奇想を、母子関係と時間感覚のゆらぎに結びつける。寓話的な設定と強いイメージで、短い枚数の中に身体と生の不穏さを凝縮した作品。受賞時の年齢が話題になった作品だが、若さの話題性だけでな… 第60回 文藝賞
- 038 2023 奇跡のタッチ きせきのたっち Books/JPROは「日本文学史上初の足もみ小説」とし、日本で台湾式リフレクソロジーを学んで開業した黒人の主人公が、周囲を癒やしていく物語として紹介している。NDLでも2023年リベラル社刊、NDC 913.6として確認。
- 039 2023 モモ100% ももひゃくぱーせんと 『モモ100%』は、日比野コレコが「文藝」2023年秋季号に発表し、2023年に河出書房新社から刊行した小説です。出版社公式では、退屈な日常を送るモモの前に運命的な人物・星野が現れる物語として紹介され、文藝賞受賞第一作であることも確認できます。
- 040 2023 恋の幽霊 『恋の幽霊』は、町屋良平が2023年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 041 2023 トルソの手紙 とるそのてがみ 『トルソの手紙』は、『すばる』2023年5月号の特集「文学×アート 語りえぬものを創造する」に掲載された短篇です。集英社すばる公式バックナンバーで特集内掲載を確認できる。題名と特集から美術・身体・言葉をめぐる作品として整理しているが、公開ページ上で作品単独の公式梗概は確認できない。
- 042 2022 ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉 ごじらしんぎゅらぽいんと TVアニメシリーズ『ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉』を、円城塔自身が小説として再構成した作品。2030年の千葉県逃尾市に未確認飛行生物が現れ、銀色のロボット「ジェットジャガー」との交戦、その怪鳥が「ラドン」と名付けられる出来事を起点に、逃尾市周辺で異変が広がっていく。怪獣、AI、時間や特異点を…
- 043 2022 青木きららのちょっとした冒険 あおききらら のちょっとしたぼうけん 「きらら」という名を手がかりに、人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、若いアイドルの死を願う会社員など、八つの人生を照らす連作的な作品集。無責任な暴力、すれ違う意識、他者への思い込みが、日常の少しずれた場面から立ち上がる。誰かであり誰でもない存在として生きる人々を…
- 044 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が…
- 045 2022 君たちはしかし再び来い きみたちはしかしふたたびこい 腹が破裂し死を告げられた「私」は、三度の入院、飼い猫の手術、コロナ禍を経て、痛みによって世界と自己の境界が変わっていくのを経験する。病の記録は歴史や宇宙、カフカ、『白鯨』、ブレイクなどへ跳躍し、私小説的な身体感覚と思想的な連想が重なる。時系列や視点を揺らしながら、病む身体から世界をもう一度呼び寄せる…
- 046 2022 教育 きょういく 超能力の育成を掲げる学校を舞台に、成績向上のために性的ノルマ、身体鍛錬、勉学が制度化された長篇。成績で部屋のグレードが決まり、監視と規律のもとで生徒たちが「正しさ」に従っていく環境が、語り手の日常として淡々と提示される。学園小説、ディストピア、寓話の形式を交差させながら、教育と管理、身体、欲望、競争…
- 047 2022 憐憫 れんびん 『憐憫』は、かつて子役だった沙良が、芸能界で伸び悩み、自分の正体を知らない相手を求めるところから始まる小説。酒場で出会った柏木に抱く感情は、愛しさであり憐憫でもあり、恋愛と呼び切れない関係の輪郭を曖昧にしていく。見られる側として生きてきた女性の孤独、承認、満たされなさを、短く張りつめた語りで追う。芸…
- 048 2022 私の盲端 わたしのもうたん 表題作は、大学生活や飲食店のアルバイトを楽しんでいた涼子が、人工肛門とともに生きることになり、自分の身体の変化と周囲の視線に向き合う物語である。医師でもある作者が、病や障害を医学的説明だけに閉じず、身体の境界、恥、欲望、生活の手触りとして描く。併録の「塩の道」は第7回林芙美子文学賞受賞作で、朝比奈秋…
- 049 2022 彼方のアイドル かなたのアイドル 『彼方のアイドル』は、身体に起きる変化を通して、日常の見え方が少しずつ変わっていく瞬間を掬う短編集です。妊娠、ホクロ除去、中学生の息子の髭など、誰にも起こりうる身体の出来事を入口に、家族や生活の距離感をやわらかな眼差しで描きます。表題作を含む全五篇の構成をNDLサーチとBooks/JPRO由来の内容…
- 050 2022 マグノリアの手 まぐのりあのて 『マグノリアの手』は、『群像』2022年11月号に掲載された短篇です。講談社群像公式サイトでは、マグノリアの白い花が語り手の失われた白い左手の記憶を呼び起こす作品として紹介されている。花のイメージと身体の欠落を結び、記憶と喪失を詩的にたどる作品として整理できる。
- 051 2022 ブロッコリー・レボリューション ぶろっこりーれぼりゅーしょん 『ブロッコリー・レボリューション』は、岡田利規が現代生活の手触りや身体の違和感を、会話とずれの感覚から描く作品です。演劇的な言葉の運動が、小説のなかで社会の空気や労働の感覚を浮かび上がらせる。日常の何気ない場面を、制度や身体への批評へ変えていく作品として読めます。 第35回 三島賞
- 052 2021 水たまりで息をする みずたまりでいきをする ある日、衣津実は夫が風呂に入らなくなったことに気づく。夫は水が臭く、体につくと痒くなると言って入浴を拒み、やがて雨に濡れに外へ出るようになり、職場で体臭が問題にされる。退職と移住を経て、夫が川で水浴びをする生活へ向かう過程を、夫婦の問題として押し返される妻の視点から描き、身体、清潔、共同生活の境界を…
- 053 2021 生を祝う せいをいわう 子どもを産むためには、その子自身から「この世界に生まれてきたい」という同意を得なければならない社会を舞台にした長編。出生を祝福するはずの制度が、親になること、同意、身体、存在の選択をめぐる問いを鋭く浮かび上がらせる。芥川賞受賞作『彼岸花が咲く島』の後に刊行された作品で、現実の倫理問題を架空制度として…
- 054 2021 死者にこそふさわしいその場所 ししゃにこそふさわしいそのばしょ 折口山に暮らす奇妙でどこか壊れた人々が、町はずれの植物園へ引き寄せられていく連作短篇集。介護、欲望、病、善意の暴走といった日常の歪みを、グロテスクで滑稽な筆致で少しずつ現実からずらしていく。表題作を含む六篇を通じて、怖さと可笑しさが同居する吉村萬壱の寓話的な人間観察が前面に出る。植物園という場が、生…
- 055 2021 アンソーシャル ディスタンス アンソーシャル ディスタンス パンデミックに閉塞する社会で、生への希望だったバンドのライブ中止をきっかけに心中旅行へ向かう若い男女を描く表題作を含む作品集。ほかに、高アルコール飲料、整形、身体、インターネット上の視線など、追い詰められた人々の臨界点を描く作品を収める。コロナ禍の距離感を単なる時事性に閉じず、依存、疎外、自己破壊の… 第57回 谷崎賞
- 056 2021 象の皮膚 ぞうのひふ 幼少時から重度のアトピー性皮膚炎に苦しんできた五十嵐凜は、仙台の書店で契約社員として働きはじめる。肌を隠し、他人と距離を取ることで日々をやり過ごす凜に、今度は接客業の理不尽な客対応や、震災後に本を求める人々の姿が重なっていく。子どもの頃の記憶と現在の職場を往還しながら、身体に刻まれた痛み、労働の疲弊…
- 057 2021 塩の道 しおのみち 『塩の道』は、第7回林芙美子文学賞大賞受賞作で、のちに朝比奈秋のデビュー単行本『私の盲端』に収録された作品です。受賞・収録情報から、著者初期の重要作として位置づけられます。医療や身体をめぐる著者の関心に連なる作品として整理できますが、公開資料では本文に踏み込んだ梗概が限られるため、細部の断定は避けて… 第7回 林芙美子賞
- 058 2021 骨を撫でる ほねをなでる 大阪南部の旧家に生まれた五十歳のふき子を中心に、分家、婿養子、老いた親、弟、病などが絡む家族の歪みを描く表題作。『いかれころ』と南河内・旧家・血縁の設定を共有しつつ、幼い視点ではなく中年女性と親族の関係から同じ因習を描き直す。土地と血縁から逃れきれない人間のしたたかさと弱さを、身体の衰えや骨の感触に…
- 059 2021 オーバーヒート おーばーひーと 『オーバーヒート』は、関西へ移った哲学者の「僕」が、大学の仕事、年下の恋人への思慕、両親の言葉、失われた生家、バーやSNSの断片を重ねていく作品です。大きな事件よりも、記録と回想が日々の熱を少しずつ上げていく過程が中心になります。『デッドライン』の前史としても読める、思考と身体感覚の小説です。哲学的…
- 060 2021 ブラックボックス ぶらっくぼっくす 『ブラックボックス』は、自転車便メッセンジャーとして東京を走るサクマの身体感覚と、制御しきれない怒りの蓄積を描く中篇です。都市の道路、配達労働、速度、肉体の疲労が、主人公の内面の暴発と直結していきます。労働と暴力衝動を観念ではなく身体の運動として読ませる、切迫した文体が特徴です。社会の構造を説明する… 第166回 芥川賞
- 061 2021 植物忌 しょくぶつき 『植物忌』は、星野智幸が2021年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 062 2020 来世の記憶 らいせのきおく 『来世の記憶』は、前世の殺人の記憶を抱えた近未来の語り手から、眠っている間に戦争が終わってしまう世界、冷蔵庫やスマートフォンや怪獣までをめぐる奇妙な出来事までを収めた20篇の短篇集。日常の手触りを残したまま身体や物や世界の前提がずれていくため、読み手は不条理な笑いと不安のあいだに置かれる。藤野可織ら…
- 063 2020 破局 はきょく 主人公の陽介は、筋トレと公務員試験の勉強に励む大学4年生。母校のラグビー部でコーチも務め、政治家を目指す恋人・麻衣子がいる。やがて新入生の灯に好意を寄せられ、関係を持つようになる。陽介は常に「正しさ」やマナー、他人にどう見られるかを基準に行動するが、その整いすぎた思考と行動のあいだには、どこか空洞が… 第163回 芥川賞
- 064 2020 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 間橋薫は卵巣の手術を経て、恋人の郁也とも性交渉から距離を置いて暮らしている。そこへ郁也の子を妊娠したという女性が現れ、子どもを育ててくれないかと唐突に持ちかける。集英社公式の紹介が示す「愛を証明する」問いは、恋人同士の倫理だけでなく、出産、身体、家族の期待へ広がっていく。薫の身体感覚と故郷の家族への… 第43回 すばる文学賞
- 065 2020 木になった亜沙 きになったあさ 『木になった亜沙』は、表題作「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の三篇を収めた作品集。誰かに食べ物を差し出したい少女が木へ、さらに割り箸へと転じる表題作をはじめ、身体の境界や役割が奇妙にずれた状況が、純粋な願いと不穏さを同時に帯びて進む。童話のような単純さと残酷さを併せ持つ語りで…
- 066 2020 サピエンス前戯 さぴえんすぜんぎ 『サピエンス前戯』は、表題作「サピエンス前戯」に「オナニーサンダーバード藤沢」「酷暑不刊行会」を加えた長編小説集。身長、寿命、インターネット、ポルノ文化など、21世紀の人間の能力や欲望が極点に達した世界を、人類史のまだ前戯にすぎないものとして誇張してみせる。シンギュラリティSF、下世話な身体感覚、過…
- 067 2020 肉体のジェンダーを笑うな にくたいのじぇんだーをわらうな 『肉体のジェンダーを笑うな』は、夫の胸から「父乳」が出る話や、PMSを体験できるサーフボードの話などを収めた小説集。身体に結びつけられた性別役割を、SF的な設定や軽やかなユーモアでずらし、家族・ケア・労働の当たり前を問い直す。現実の制度を直接論じるより、ありえたかもしれない身体の可能性を想像すること…
- 068 2020 推し、燃ゆ おし、もゆ 「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」という一文から始まる。高校生のあかりは、学校でも家庭でも周囲の求める「普通」をうまくこなせず、アイドルグループの一員である「推し」上野真幸を解釈し応援することだけを生活の軸、自らの「背骨」として生きている。推しの炎上をきっかけに、彼の芸能活動もあかりの日常も少… 第164回 芥川賞
- 069 2020 流卵 りゅうらん 『流卵』は、中学2年の男子が性の目覚めとオカルト的な妄想に取りつかれ、自分を「選ばれた民」とみなして向こう側の世界へ進もうとする長篇。河出書房新社公式は、官能と陶酔を帯びた吉村萬壱版『金閣寺』として紹介している。母親に「ヘンタイ」と呼ばれる少年の半生をたどる書評もあり、性・信仰・自己神話が混ざる不穏…
- 070 2020 月の客 つきのきゃく 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。
- 071 2020 象牛 ぞうぎゅう 表題作は、インド・ガンジス河岸の聖地にやってきた女子大生が、謎の存在である象牛に翻弄される物語。併録の『星曝し』は大阪の淀川河岸を思わせる比ラカ駄を舞台に、恋に似た激しい熱情と死者の気配を描く。現実の痛みと法螺話めいた幻想が混ざり合う、石井遊佳の芥川賞受賞後初の作品集。川べりの土地が、宗教都市や大阪…
- 072 2020 裸婦 らふ 『裸婦』は、小暮夕紀子が「文學界」2020年9月号に発表した作品です。NDLサーチで掲載誌・巻号・ページ範囲と責任表示を確認できます。『タイガー理髪店心中』単行本刊行後にも文芸誌で作品発表を続けていたことを示す一作として収録します。
- 073 2020 クロス くろす 『クロス』は、異性装を入口に、身体の性、社会的な立場、恋愛の欲望がずれていく過程を一人称の近さで描く長篇です。河出書房新社公式ページでは、警備会社で働く二十八歳の「私」が、女性装によって新鮮な自由を得る一方、タケオとの出会いを通じて自己像を揺さぶられる物語として紹介されている。性の揺らぎだけを主題化…
- 074 2020 ほんのこども ほんのこども 元同級生あべくんから届いた文章を手がかりに、商業作家があべくんの人生を小説化しようとする長編。父による母殺傷事件、暴力とやさしさが絡み合う身体、物語に還ろうとする人生が、書くことそのものを巻き込みながら反復していく。講談社公式は、大人と子どもの境界線や成長の意味を問う作品として紹介している。家庭内の… 第44回 野間新人賞
- 075 2020 臆病な都市 オクビョウ ナ トシ 2020年に講談社から刊行された砂川文次の単著図書。既登録作『市街戦』『ブラックボックス』を補う候補。
- 076 2020 だまされ屋さん だまされやさん 『だまされ屋さん』は、星野智幸が2020年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 077 2020 坂下あたると、しじょうの宇宙 『坂下あたると、しじょうの宇宙』は、町屋良平が2020年に集英社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 078 2020 ふたりでちょうど200% 『ふたりでちょうど200%』は、町屋良平が2020年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 079 2019 出来事 できごと 『季刊文科』連載「転落」を単行本化した長篇。OpenBDの出版社由来データでは、見慣れた日常世界が歪み、人間の嘘や文明の虚妄が露出していく哲学小説として紹介されている。吉村萬壱の身体感覚の強い描写と、日常を異様なものへ反転させる語りが読みどころになる。
- 080 2019 改良 かいりょう 女装し、美しくなることへ執着する大学生の「私」を描くデビュー作。コールセンターで働く語り手は、メイクや服装、仕草を研究し、美容や風俗に金を費やしながら、女装した自分を他者に見てほしいという欲望を強めていく。美への希求が、性をめぐる暴力と絶望へ接続される過程を、乾いた一人称で描く。 第56回 文藝賞
- 081 2019 変半身 かわりみ 『変半身』は、松井周と練り上げた千久世島ワールドを舞台に、人間が変わり世界が変わっていく悪夢的現実を描く中篇です。筑摩書房公式紹介では、ポピ原人、ポーポー様、秘祭モドリ、遺伝子退行手術などが歴史や魂の変容と結びつく異形の創世記として説明されています。既存の性の役割を揺さぶる中篇「満潮」も併録されます…
- 082 2019 生のみ生のままで きのみきのままで 『生のみ生のままで』は、逢衣が恋人との旅行先で彩夏と出会い、東京に戻ってから急速に惹かれていく上下巻の恋愛長篇。互いに男性の恋人がいる状況から、彩夏の告白と身体的な引力をきっかけに、二人は恋と生活を選び直していく。女性同士の恋愛を、社会的な枠組みや世間体、身体の感覚をはぎ取るように正面から描く。
- 083 2019 キュー キュー 平凡な医師である「僕」が突然拉致され、世界の趨勢をめぐる暗闘の中心に、長年寝たきりだったはずの祖父がいることを知る。新潮社公式は、祖父の秘密が「人類を一つに溶かす」使命に関わるものとして紹介している。戦争、愛、運命、人類の統合という大きな主題を、現代的な技術感覚と哲学的な思考実験の語りで押し広げる作…
- 084 2019 夏物語 なつものがたり 『乳と卵』の世界を引き継ぎ、作家となった夏子が、パートナーなしで妊娠・出産し子どもを持つ可能性を考え始める長篇。姉・巻子や姪・緑子の身体をめぐる物語を背後に、生まれること、産むこと、産まないこと、家族の形をめぐる声が重なっていく。文藝春秋公式が掲げる「生まれること」と「産むこと」の非対称性の問いを中…
- 085 2019 ポルシェ太郎 ポルシェたろう 35歳で起業した太郎は、年収に匹敵するポルシェを買う。ところが、その自慢の車で得体の知れないものを運ばされることになり、成功者の見栄と欲望が危うい方向へ走り出す。河出書房新社の紹介は「欲望か、死か」という言葉で作品の緊張を示しており、消費、承認、成功の演出を乾いたユーモアで追う長篇として読める。単な…
- 086 2019 生命式 せいめいしき 『生命式』は、死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作を含む、著者自選の12篇を収めた短篇集です。OpenBDでは「素敵な素材」「素晴らしい食卓」「街を食べる」「孵化」などの収録作が確認できます。食、死、身体、家族の常識を別の社会の習俗として反転させ、正常さの輪郭を揺さぶる一冊です。推薦コメント群が…
- 087 2019 逃げ水は街の血潮 にげみずはまちのちしお 『逃げ水は街の血潮』は、地下アイドルとして活動する二十代女性の疾走感と消耗を描くデビュー作です。都市のショービジネス的な場で、身体と承認欲求、自己像がすり減っていく様子を追います。アイドルという労働と自己表現の境界を、切迫した内面描写と速度感のある語りで扱う作品です。 第124回 文學界新人賞
- 088 2019 おいしい家族 おいしいかぞく 『おいしい家族』は、「すばる」2019年8月号に掲載され、同年9月に集英社から単行本化されたふくだももこの小説です。母の三回忌に故郷の島へ帰った橙花が、母の服を着た父、義妹、見知らぬ人々が家族のように食卓を囲む場に向き合います。集英社公式の文庫版紹介では、性別、血縁、国籍を超えた新しい家族のかたちを…
- 089 2019 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 『犬のかたちをしているもの』は、卵巣手術後に性交渉を拒むようになった三十歳の薫が、恋人の子を妊娠した女性から子どもを引き取らないかと提案される物語。快楽、生殖、子どもを持つことをめぐる問いが、恋愛関係や身体の履歴と重なって進む。集英社文芸公式は「一人の女性の醸成してきた問い」の行方を描く作品として紹… 第43回 すばる文学賞
- 090 2019 デッドライン でっどらいん 『デッドライン』は、2000年代初頭の東京を舞台に、修士論文の締切を抱える「僕」が、哲学、身体感覚、ゲイとしての欲望、家族とのずれのなかを生きるデビュー小説。新潮社は「ゲイであること、思考すること、生きること」を掲げ、夜の街を回遊する男たちと大学院生活を交差させる作品として紹介している。朝吹真理子の… 第41回 野間新人賞
- 091 2019 飛族 ひぞく 『飛族』は、大分で魚料理店を営む六十五歳のウミ子が、長崎の国境離島を思わせる架空の島に住む九十二歳の母イオと八十八歳のソメ子を訪ねる長編。島には二人の元海女だけが残り、失われた漁師たちを鳥に重ねる「鳥踊り」や、国境離島の維持をめぐる現実的な緊張が、牧歌的な生活に不穏さを差し込む。著者インタビューでは… 第55回 谷崎賞
- 092 2019 Orga(ni)sm オーガニズム おーがにずむ 『Orga(ni)sm オーガニズム』は、阿部和重が2019年に文藝春秋から刊行した長編小説です。著者ページの著書一覧とNDLサーチのタイトル・著者検索で刊行情報を確認できます。
- 093 2019 カム・ギャザー・ラウンド・ピープル かむ・ぎゃざー・らうんど・ぴーぷる 『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』は、『すばる』2019年5月号に掲載され、同年7月に集英社から単行本化された中篇です。集英社公式ページでは、雨宿り先で出会ったイズミ、東京の記録、デモの群衆、かつての友人ニシダとの再会を通じて、敷き詰められた過去の記憶と渋谷の街を走る「私」を描く作品として紹介さ…
- 094 2019 ぼくはきっとやさしい 『ぼくはきっとやさしい』は、町屋良平が2019年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 095 2019 愛が嫌い 『愛が嫌い』は、町屋良平が2019年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 096 2019 ショパンゾンビ・コンテスタント 『ショパンゾンビ・コンテスタント』は、町屋良平が2019年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 097 2018 落としもの おとしもの 踏切のあいだに落ちていたバッグを「わたし」が落とし主より先に奪い取ってしまう表題作をはじめ、寝たきりの祖母と過ごす夏、バイト仲間との雑魚寝で身体に触れられる夜などを収める短編集。日常のすぐ脇にある他者との距離、善意と不安、死への衝動を、乾いた手触りの短篇として立ち上げる。単行本未収録だった6作品をま…
- 098 2018 ウィステリアと三人の女たち ウィステリアとさんにんのおんなたち 「彼女と彼女の記憶について」「シャンデリア」「マリーの愛の証明」「ウィステリアと三人の女たち」の4篇を収める短篇集。同窓会、デパート、女子寮、廃墟となった屋敷を舞台に、女性たちが不確かな記憶と死の気配に触れていく。記憶、死、救済、自己同一性が幻想的な気配で重なり、なだらかな散文がいつのまにか現実の足…
- 099 2018 前世は兎 ぜんせはうさぎ 表題作「前世は兎」のほか、「夢をクウバク」「宗教」「沼」「梅核」「真空土練機」「ランナー」を収める短篇集。兎だった前世の記憶を持つ女、カタログを書き写すことで不安を鎮める休職中の教員、破滅後の世界でマラソンに選ばれる姉など、現実の足場をずらす設定が並ぶ。身体、性、信仰、労働不能や破滅のイメージを通じ…
- 100 2018 TIMELESS たいむれす 『TIMELESS』は、恋愛感情も性関係もないまま結婚したうみとアミを軸に、高校時代、広島への修学旅行、六本木の現在、四百年前の麻布が原の記憶、そして2035年の息子アオの旅を重ねる長篇です。恋愛、結婚、生殖、家族という近代的な制度をほどきながら、人間の身体が歴史や土地、死者の時間へつながっていく感…
- 101 2018 1R1分34秒 いちらうんどいっぷんさんじゅうよんびょう デビュー戦後に勝ちきれなくなった21歳のプロボクサーを語り手に、競技の身体感覚と自意識の停滞を描く小説。長年のトレーナーから離れ、変わり者のウメキチとの練習に入ることで、敗北や弱さをめぐる思考が少しずつ揺さぶられていく。ボクシングを勝敗だけでなく、身体・時間・他者との関係の問題として読ませるところに… 第160回 芥川賞
- 102 2018 美しい顔 うつくしいかお 『美しい顔』は、東日本大震災後の避難所で暮らす高校生・沙那恵が、弟を守りながらメディアの視線にさらされる物語です。災害下の身体、家族、報道される被災者像をめぐる緊張を描きます。被災地の現実と表象の問題が、作品そのものの受容とも重なって読まれる第61回群像新人文学賞当選作です。 第61回 群像新人賞
- 103 2018 壺中に天あり獣あり こちゅうにてんありけものあり 『双子は驢馬に跨がって』後の単行本候補。群像掲載後、2019年に講談社から刊行。
- 104 2018 焰 ほのお 『焰』(新潮社公式表記は『焔』)は、親の介護に追われる男、人間がお金として売買される社会、真夏の公園で涙が止まらない人々などを描く九篇の作品集。新潮社公式ページは、自分ではない何かになりたいと切望する人々が語り出す作品として紹介しており、介護、貨幣化、身体変容の寓話が現代社会の閉塞を照らす。ブレイデ… 第54回 谷崎賞
- 105 2018 庭 にわ 『庭』は、虫、草花、動物、人間の暮らしが隣り合う十五篇からなる短篇集です。ふきのとう、彼岸花、どじょう、蟹、家グモなど身近なものが、暮らしの中の不条理や喜びを帯びて不可思議な世界を開きます。新潮社公式ページ掲載の書評が指摘するように、あっさりした題名と濃密な本文、現実と幻想の自然な共存が読みどころで…
- 106 2018 しき 『しき』は、町屋良平が2018年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 107 2017 鳥獣戯画 ちょうじゅうぎが 『鳥獣戯画』は、磯﨑憲一郎が古典的な絵巻の名を借り、人間と動物、現実と表象の境目を揺らす作品として整理できます。鳥獣のイメージは、人間社会を戯画化する視点として働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と『群像』掲載候補に基づく暫定的な紹介です。
- 108 2017 ドレス どれす 『ドレス』は、「テキサス、オクラホマ」「マイ・ハート・イズ・ユアーズ」「真夏の一日」「愛犬」「息子」「ドレス」「私はさみしかった」「静かな夜」を収める短篇集です。OpenBDで収録作と2017年11月刊行の書誌を確認でき、NDLでは単行本と『文芸』掲載レコードを照合できます。表題作を含む複数の短篇を…
- 109 2017 ほしのこ ほしのこ 『ほしのこ』は、山下澄人が星や子どものイメージを通して、記憶と身体の感覚をずらして描く小説として整理できます。題名のひらがな表記は、幼さと遠さを同時に感じさせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 110 2017 回遊人 かいゆうじん 『回遊人』は、吉村萬壱が漂流するように生きる人物や、社会の中を回り続ける身体を描く小説として整理できます。回遊という語は、目的地へ一直線に進まない移動と反復を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 111 2017 血と肉 ちとにく 『血と肉』は、中山咲が身体と血縁、暴力的な生の感覚を扱う小説として整理できます。血は家族や継承を、肉は身体そのものの存在感を指し、抽象的な関係を物質的に捉え直します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 112 2017 岩塩の女王 がんえんのじょおう 『岩塩の女王』は、諏訪哲史が硬質なイメージと言葉遊びを重ねる小説として整理できます。岩塩という結晶と女王という権威の組み合わせは、身体、鉱物、支配の幻想を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と初出確認に基づく暫定的な紹介です。
- 113 2017 日曜日の人々(サンデー・ピープル) にちようびのひとびと さんでー ぴーぷる 『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』は、死に惹かれる心や自傷、摂食、不眠といった切迫した声を、複数の断片として響かせる青春小説。講談社は「他者に何かを伝えること」が救いになりうるのではないかという問いを掲げ、他者へ届く/届かない声を作品の中心に置いている。硬質で鋭い言葉の連なりが、孤独と希求を同時… 第39回 野間新人賞
- 114 2017 小指が燃える こゆびがもえる 2017年8月に文藝春秋から刊行された作品集。NDLで収録作「沈黙のなかの沈黙」「小指が燃える」を確認できる。
- 115 2017 切腹考 せっぷくこう NDLサーチで2017年2月刊、文藝春秋、ISBN 978-4-16-390603-4の単行本として確認できる。
- 116 2016 あひる あひる 『あひる』は、文学ムック『たべるのがおそい』創刊号に掲載された表題作に、書き下ろしの「おばあちゃんの家」「森の兄妹」を加えた三篇の作品集です。表題作では、あひるを飼うことになった家族と、学校帰りに集まってくる子どもたちのいる日常が描かれます。何気ない暮らしの安堵に差し込む影や、淡々とした語りの中で露…
- 117 2016 少女は花の肌をむく しょうじょははなのはだをむく 『少女は花の肌をむく』は、朝比奈あすかが少女の身体と成長への違和感を扱う小説として整理できます。花の肌を「むく」という題名は、柔らかさや美しさの裏にある痛みを想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 118 2016 ホモサピエンスの瞬間 ほもさぴえんすのしゅんかん 『ホモサピエンスの瞬間』は、松波太郎が人間を生物種として捉える視野と、個人の瞬間的な感覚を重ねる作品として整理できます。タイトルは、人間であることを大きな分類から眺める一方、生活の一瞬へも焦点を合わせます。既存データには芥川賞候補作とあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。
- 119 2016 イノセント いのせんと 『イノセント』は、島本理生が無垢さと傷つきやすさをめぐる恋愛・家族の物語として描く長編と整理できます。無垢であることは守られる状態であると同時に、他者に利用されやすい危うさも含みます。親密な関係の中で、自己決定と依存の境界が揺れる作品です。
- 120 2016 壁抜けの谷 かべぬけのたに 『壁抜けの谷』は、山下澄人が壁を抜けるという幻想的な身振りと、谷という地形を組み合わせて描く小説として整理できます。壁は境界を、谷は落ち込みや隔たりを思わせ、人物の身体感覚を通常の現実からずらします。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 121 2016 グローバライズ ぐろーばらいず 『グローバライズ』は、木下古栗がグローバル化する世界の言葉、身体、欲望を奇妙な文体で扱う作品として整理できます。タイトルの綴りや響きそのものが、世界を標準化する力への違和感を含んでいます。実験的な語りを通じて、表現と書く技法の問題が前面に出る作品です。
- 122 2016 そういう生き物 そういういきもの 薬剤師の千景とスナック勤めのまゆ子は、高校の同級生として10年ぶりに再会し、思いがけず一緒に暮らし始めます。二人が心に秘めてきた過去を軸に、愛と性、心と体が思いどおりにならない感覚を描く作品です。再会と共同生活の静かな場面から、親密さの難しさと身体の記憶が浮かび上がります。 第40回 すばる文学賞
- 123 2015 繭 まゆ 『繭』は、青山七恵が閉じた空間や保護される感覚を手がかりに、女性の内面を描く小説として整理できます。繭は守るものでもあり、外へ出る前の窮屈な状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 124 2015 動物記 どうぶつき 『動物記』は、高橋源一郎が動物という他者を通じて、人間社会や言葉のあり方を問い直す小説として整理できます。動物はかわいらしい存在ではなく、人間中心の物語をずらす視点として現れます。寓話と批評が交差する作品です。
- 125 2015 ペンギンのバタフライ ぺんぎんのばたふらい 『ペンギンのバタフライ』は、中山智幸が異質なものの組み合わせから想像力を広げる小説として整理できます。飛べない鳥であるペンギンと、羽ばたく蝶の対比が、変身や移動への願望を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 126 2015 スクラップ・アンド・ビルド スクラップ・アンド・ビルド 無職で資格試験の勉強と転職活動を続ける28歳の健斗は、母と、87歳の祖父との三人暮らし。「早う死にたか」と口癖のように繰り返す祖父に対し、健斗は介護職の友人の助言をひねって解釈し、あえて何もかも世話を焼いて自立の機会を奪う「足し算の介護」によって、祖父の望む穏やかな死を後押ししようと思い立つ。同時に… 第153回 芥川賞
- 127 2015 心臓異色 しんぞういしょく 『心臓異色』は、中島たい子が身体の違和感と人間関係のずれを扱う小説として整理できます。心臓という生命の中心と、「異色」という言葉が、普通であることから外れる感覚を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 128 2015 消滅世界 しょうめつせかい 『消滅世界』は、人工授精が発達し、夫婦間のセックスが近親相姦のようにタブー視されるもう一つの日本を描く長編です。主人公・雨音は、父母の性行為によって生まれたことを抱えながら、セックスのない清潔な家族を作ろうとします。やがて夫の朔とともに実験都市「楽園」へ移り、家族によらない繁殖システムと向き合うこと…
- 129 2015 鳥の会議 とりのかいぎ 『鳥の会議』は、山下澄人が鳥という非人間的な視点や集まりのイメージを通して、人間の言葉と身体をずらして描く作品として整理できます。会議という形式は共同性を示す一方、意味が共有されない不穏さも帯びています。断片的な語りと身体感覚から、日常の秩序が崩れる感触を読む小説です。
- 130 2015 虚ろまんてぃっく うつろまんてぃっく 『虚ろまんてぃっく』は、吉村萬壱が恋愛や欲望のロマンティックな外形を、空虚さや不穏さへずらして描く作品として整理できます。題名のひらがな表記は、甘さと不気味さが同居する感触を生みます。身体、性、孤立をめぐる違和感が、読後にざらつきを残す小説です。
- 131 2015 ドール どーる 自分だけの特別な人形を手に入れたいと思う少年の衝動を軸に、性と闇を描く作品。少年の内面にある欲望や不快感を直視し、読者を落ち着かない心理の流れへ引き込む。人形という対象を通じて、身体と所有、成長期の暴力性が浮かび上がる。出版社紹介でも、不穏な少年の衝動を前面に出したデビュー作として位置づけられている… 第52回 文藝賞
- 132 2015 地に満ちる ちにみちる 『地に満ちる』は、竹林美佳の第39回すばる文学賞佳作です。自らの過失で子を亡くしたカナが、離婚、不眠、睡眠セラピー、人工授精技師としての仕事を抱えながら生きる姿を描きます。喪失と生殖医療の精密な描写が交差し、壊れた内面と職能の冷静さが同居する点に緊張があります。
- 133 2015 生鮮てるてる坊主 せいせん てるてる ぼうず 『生鮮てるてる坊主』は、山田詠美の短篇集『珠玉の短編』に収められた川端康成文学賞受賞作です。講談社の紹介・レビューでは、エロスとグロテスクを絡めた技巧的な短篇として扱われ、短篇集全体の濃密な読み味を代表する作品に位置づけられています。身体感覚や欲望が不穏な比喩へ反転していく、山田詠美らしい文体の強度… 第42回 川端賞
- 134 2015 呪文 じゅもん 『呪文』は、星野智幸が2015年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 135 2014 ファイナルガール ふぁいなるがーる 『ファイナルガール』は、ホラー映画の用語を思わせる題名を通じて、生き残る女性の身体と恐怖を扱う藤野可織の小説として整理できます。恐怖は外部の怪物だけでなく、視線や役割として人物にまとわりつきます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 136 2014 金を払うから素手で殴らせてくれないか? かねをはらうからすでになぐらせてくれないか 『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』は、暴力と交換の論理を露骨な題名で突きつける木下古栗の作品です。金銭、身体、欲望が奇妙な取引として結びつき、常識的な倫理が不条理にずれていきます。過激なユーモアと不快感が同居する読み味です。
- 137 2014 コルバトントリ コルバトントリ 『コルバトントリ』は、山下澄人が意味をすぐには回収しにくい言葉と、身体の記憶を結びつける小説として整理できます。題名の異物感そのものが、人物の経験を通常の物語に収めない姿勢を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 138 2014 LIFE らいふ 『LIFE』は、松波太郎が生きることそのものを題名に掲げ、身体、生活、言葉の不安定さを描く小説です。人物の経験は分かりやすい筋に回収されず、断片的な感覚として立ち上がります。純文学の実験性と生活感が同居する作品です。 第36回 野間新人賞
- 139 2014 メタモルフォシス メタモルフォシス 『メタモルフォシス』は、SMの快楽へ深入りしていく証券マンを描く羽田圭介の小説です。仕事で求められる合理性と、身体が求める変容の欲望がずれていきます。性と労働を結びつけながら、自己像が変質していく過程を乾いた文体で追う作品です。
- 140 2014 猫の目犬の鼻 ねこのめいぬのはな 『猫の目犬の鼻』は、丹下健太が動物的な感覚や身近な生活の違和感を扱う作品として整理できます。視線や嗅覚を思わせる題名は、人間関係を別の感覚で捉え直す入口になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 141 2014 寝相 ねぞう 『寝相』は、滝口悠生の最初期作品を収める小説集で、睡眠や身体の姿勢のような無意識の領域に、人物の記憶や関係がにじみます。既存データでは新潮新人賞受賞作「楽器」を含む最初の小説集とされています。日常の細部がゆっくりずれていく語りが読みどころです。
- 142 2014 ルンタ ルンタ 『ルンタ』は、山下澄人が土地、身体、記憶の断片を独特の語りでつなぐ小説です。題名の音の響きは意味をすぐには固定せず、人物の経験を通常の筋からずらしていきます。身体に残る感覚を、乾いたユーモアと不穏さで読ませる作品です。
- 143 2014 殺人出産 さつじんしゅっさん 『殺人出産』は、十人産めば一人殺してもよい「殺人出産制度」が認められた世界を描く表題作を中心とする作品集です。Amazonの商品紹介では、「産み人」が尊い存在として崇められる社会で、職場の同僚が産み人になっていくなか、主人公・育子が複雑な思いを抱える物語として説明されています。OpenBDでは「トリ…
- 144 2014 臣女 しんにょ 『臣女』は、吉村萬壱が身体、服従、権力関係を不穏に描く小説として整理できます。題名は、誰かに従属する女性像や、支配の構造を想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 145 2014 島と人類 しまとじんるい ヌーディストの人類学者・河鍋未來夫が停職処分を受け、その仲間たちや週刊誌記者を巻き込みながら、妻マリアが待つ島へ向かう奇想的な長篇。裸体主義、人類学、ボノボ、新人類構想といった要素が、知的な冗談と壮大な実験のあいだで展開する。人間の身体、共同性、進化をめぐる思索を、明るいナンセンスと実験小説の形式で… 第38回 すばる文学賞
- 146 2014 指の骨 ゆびのほね 太平洋戦争中の南方戦線で負傷した一等兵の「私」が、臨時野戦病院で過ごす日々を語る戦争小説。食料の調達、戦友の死、退避を余儀なくされる状況を通じて、戦場の空白と狂気が描かれる。身体の損傷と形見としての骨が、忘れられた戦場の記憶を呼び戻す。静かな語りのなかに、死が日常化した場所の異様さがにじむ。 第46回 新潮新人賞
- 147 2014 夜は終わらない よるはおわらない 『夜は終わらない』は、星野智幸が2014年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 148 2014 未闘病記 みとうびょうき 『未闘病記』は、膠原病、混合性結合組織病をめぐる経験を、従来の闘病記の形式からずらして書いた作品です。病名が与えられる前後の身体感覚、医療制度、社会の視線が、笙野頼子の批評的な文体で組み替えられる。病を書くことが、制度と言葉に抵抗する実践になる点が読みどころです。 第67回 野間文芸賞
- 149 2013 大地のゲーム だいちのゲーム 『大地のゲーム』は、大震災後の近未来の大学キャンパスを舞台に、次の揺れを待つ若者たちを描く綿矢りさの長篇です。災害は出来事として終わらず、身体感覚や人間関係の底に残り続けます。青春小説の形を取りながら、世界の足場が割れる感覚を言葉にする作品です。
- 150 2013 おはなしして子ちゃん おはなしして こちゃん 『おはなしして子ちゃん』は、藤野可織らしい奇妙な会話感覚と、日常のずれを前面に出した作品集です。話すこと、聞くこと、物語にされることの不穏さが、幼さを帯びた題名と対照をなします。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 151 2013 爪と目 つめとめ 『爪と目』は、幼い娘、父、父の恋人をめぐる関係を、視覚と身体感覚の不穏さから描く短篇です。家庭内の出来事は、保護されるはずの子どもの目を通して、異様な近さと距離を同時に帯びます。語りの中心に視覚を置くことで、家族と暴力の境目を静かに揺さぶる作品です。 第149回 芥川賞
- 152 2013 憤死 ふんし 『憤死』は、表題作を含む綿矢りさの短篇集で、怒りや恥、身体の違和感を寓話的に扱います。日常の些細な場面から、人物の内側に溜まった毒気がふいに噴き出します。軽く読める語りの奥に、自己像を保てない不安が残る作品集です。
- 153 2013 ギッちょん ギッちょん 『ギッちょん』は、山下澄人が身体の記憶や言葉になりにくい経験を、断片的な語りで立ち上げる小説です。題名の音の感触そのものが、人物の不器用さや世界とのずれを示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 154 2013 自分を好きになる方法 じぶんをすきになるほうほう 『自分を好きになる方法』は、主人公リンデの人生から六つの一日を切り出し、自己肯定の難しさを描く本谷有希子の長篇です。人生の節目を大きなドラマではなく、身体感覚や他者とのずれとして捉えます。題名の明るさと、実際の生きづらさの落差が読みどころです。 第27回 三島賞
- 155 2013 ピン・ザ・キャットの優美な叛乱 ぴんざきゃっとのゆうびなはんらん 『ピン・ザ・キャットの優美な叛乱』は、飼い猫と生まれた息子の境界が揺らぐ感覚を核に、家族・身体・動物的な気配を奇妙な寓話へ変形させる小説。河出書房新社は、猫をめぐるかつてない小説として紹介し、現実の秩序が少しずつずれていく不穏さを前面に出している。語りのユーモアと不安が同時に立ち上がる、荻世いをらら…
- 156 2013 往古来今 おうこらいこん 『往古来今』は、古代から現代までを貫く時間と生命の往還を描く磯﨑憲一郎の長篇です。個人の人生より大きな時間の流れのなかで、記憶や土地、身体が結び直されます。題名どおり、過去と現在を同じ地平で読む感覚が作品の核になります。
- 157 2013 砂漠ダンス さばくダンス 『砂漠ダンス』は、山下澄人が乾いた場所の感覚と身体の動きを結びつける小説です。砂漠とダンスという組み合わせは、孤立した空間でなお身体が反応し続けるイメージを作ります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評に基づく暫定的な紹介です。
- 158 2013 わたしは妊婦 わたしはにんぷ 『わたしは妊婦』は、妊娠という身体の変化を手がかりに、家族、性、自己像の揺れを描く大森兄弟の小説です。妊婦である「わたし」は、祝福される存在であると同時に、周囲の視線や制度にさらされます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 159 2013 よだかの片想い よだかのかたおもい 『よだかの片想い』は、顔に大きなあざを持つ女性が、映画撮影をきっかけに初めての恋へ向かう島本理生の長篇です。恋愛は救済として単純化されず、身体の見られ方と自己受容の問題を伴います。題名の片想いは、相手への思いだけでなく、自分自身へ向けるまなざしにも広がります。
- 160 2013 穴 あな 仕事を辞めて夫の田舎へ移った語り手が、黒い獣を追って土手の穴に落ちたことから、見慣れた日常が異界の気配を帯びていく。世羅さん、寡黙な義祖父、義兄を名乗る知らない男など、周囲の人物の奇妙さが郊外の夏を静かにゆがませる。表題作に加え、農村の古民家で新生活を始めた友人夫婦をめぐる作品を収める芥川賞受賞作。 第150回 芥川賞
- 161 2013 すなまわり すなまわり 『すなまわり』は、相撲好きの少年が自分の体格に見切りをつけ、行司の道を選ぶ青春小説です。文藝春秋公式ページでは、激しい稽古、間延びする自由時間、やめていく若手など、角界の裏方の生態を描く作品として紹介されています。元大相撲行司という鶴川健吉自身の経歴を背景にしながらも、作者は主人公との距離を意識した…
- 162 2013 左目に映る星 ひだりめにうつるほし 左目だけにある近視と乱視の感覚を大切にしてきた早季子が、同じ目を持つ少年の記憶と、アイドルオタクの宮内との出会いを通して他者との距離を測り直す恋愛小説。視界のずれが、恋愛や孤独、共有できない身体感覚の比喩として働く。日常的な語りの中に、コントロールしきれない不安定さと身体感覚の濃さが残る。 第37回 すばる文学賞
- 163 2013 太陽 たいよう 新宿のホテル、アフリカの「赤ちゃん工場」、パリの蚤の市、インドの湖畔などを横断し、人類の欲望と未来を極端なスケールで描くデビュー小説集。表題作「太陽」は金、不老不死、核融合といったモチーフを扱い、現代社会の資本と身体をSF的想像力で押し広げる。純文学とSFを接続する破格の語りが特徴。 第45回 新潮新人賞
- 164 2012 嵐のピクニック あらしのピクニック 『嵐のピクニック』は、本谷有希子の奇想に満ちた短篇を集めた作品集です。日常の足場が突然ずれ、家族、身体、自己像が不条理なかたちで変形していきます。ユーモアと不穏さが同時に働き、読者の常識を揺らす短篇集です。
- 165 2012 プールサイドの彼方 ぷーるさいどのかなた 『プールサイドの彼方』は、水辺の境界性を背景に、若い人物の距離感や将来への不安を描く朝比奈あすかの小説です。プールサイドは日常と非日常、身体と視線が交差する場所として機能します。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 166 2012 しろいろの街の、その骨の体温の しろいろのまちの、そのほねのたいおんの 『しろいろの街の、その骨の体温の』は、小学4年生の結佳が、女の子同士の複雑な友人関係をやり過ごしながら、伊吹雄太への恋愛とも支配ともつかない感情を強めていく長編です。Amazonの商品紹介では、女の子が少女へ変化する時間を切り取り、性や欲望を丹念に描く静かな衝撃作として説明されています。ニュータウン… 第26回 三島賞
- 167 2012 私の中の男の子 わたしのなかのおとこのこ 『私の中の男の子』は、自分の内側にある「男の子」という感覚を通じて、ジェンダーと身体の境界を描く山崎ナオコーラの小説です。性別は固定された属性ではなく、語り手の内面で動き続ける違和感として現れます。軽やかな文体で、自己認識と社会の分類のずれを読む作品です。
- 168 2012 河童日誌 かっぱにっし 『河童日誌』は、鈴木善徳が「髪魚」で第113回文學界新人賞を受賞した後に発表した短篇です。NDLサーチでは『文學界』2012年5月号、54-85ページ掲載の記事として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概を確認できなかったため、内容説明は掲載情報と文学賞候補歴に限定します。
- 169 2012 泡をたたき割る人魚は あわをたたきわるにんぎょは ワニのような形をした島で、左半分に住む薫が「魚になりたい」と願い、脚と配達用の原付バイクと引き換えに人魚になる。童話的な変身譚を現代の島の生活へ移し、身体の違和感や孤独を寓話的に描く。人魚という異形の姿が、社会の中で生きることの痛みを照らす作品である。
- 170 2012 肉骨茶 にくこつちゃ シンガポール・マレーシアへの旅の途中で母のもとを抜け出した17歳の赤猪子を描く。食べ物が自分の身体に蓄積していくことへの恐怖から逃れようとする彼女は、友人ゾーイーの海辺の別荘に身を寄せる。食、身体、母子関係を通じて、人間であることへの拒絶を激しく描くデビュー作。 第44回 新潮新人賞
- 171 2012 黙って喰え だまってくえ 食べることをめぐる欲望と暴力性を扱うデビュー短篇。身体的な行為としての食事を、人間関係や支配の感覚へ結びつける作品として登録されている。新潮新人賞公式ページで受賞事実は確認できるが、今回確認できた公式ページでは梗概までは示されていないため、内容紹介は既存梗概に基づく限定的な整理である。 第44回 新潮新人賞
- 172 2012 千のキス せんのきす 安達千夏の2010年代単行本候補。既存収録作と重複しない。
- 173 2012 昆虫の記憶による網膜貯蔵シェルター、及びアンテナ こんちゅうのきおくによるもうまくちょぞうしぇるたーおよびあんてな 2012年4月に月曜社から刊行された清水アリカの著作をNDLで確認。既存登録の『革命のためのサウンドトラック』『デッドシティ・レイディオ』とは別の単行本候補。
- 174 2012 沈黙のレシピエント ちんもくのれしぴえんと 2012年刊行。英題は NDL 上で Recipient of Silence と併記される。
- 175 2011 ハコブネ ハコブネ 『ハコブネ』は、性をめぐる違和感を抱える三人の女性を描く長編です。Amazonの商品紹介では、自らの性別を脱ぎ捨てたセックスを求める里帆、女であることに固執する椿、肉体感覚を持てない千佳子という、交差しない三人の性の行方が示されています。女であること、身体を持つこと、他者と関係することの苦しさを描く…
- 176 2011 心はあなたのもとに こころはあなたのもとに 『心はあなたのもとに』は、村上龍が恋愛と病、身体の問題を重ねて描く長編です。親密な関係は感情だけでは支えきれず、医療、経済、身体の条件によって揺さぶられます。恋愛小説でありながら、現代社会の生の不安を読む作品でもあります。
- 177 2011 マザーズ マザーズ 『マザーズ』は、小説家、モデル、専業主婦という三人の母親を通して、育児の孤独、身体の疲弊、母であることへの圧力を描く金原ひとみの長編です。多視点の構成により、母性を一枚岩の美徳としてではなく、生活を侵食する制度や感情として浮かび上がらせます。息苦しさのなかに、女性たちの怒りと切実さが強く残ります。 第22回 ドゥマゴ文学賞
- 178 2011 ニキの屈辱 にきのくつじょく 『ニキの屈辱』は、山崎ナオコーラが女性の自己像、身体、他者からの評価を描く小説です。屈辱という強い語は、社会的な視線や恋愛関係のなかで、人物が自分の輪郭を傷つけられる感覚を示します。軽い語り口の背後に、ジェンダーと身体の痛みが残ります。
- 179 2011 甘露 かんろ 『甘露』は、家と家族をめぐる不穏さを描く水原涼のデビュー作です。若い書き手による作品ながら、家族の内部に潜む圧力や不快な甘さを鋭く扱います。第145回芥川賞候補にもなり、デビュー時から筆力を注目された作品です。 第112回 文學界新人賞
- 180 2011 癌だましい がんだましい 『癌だましい』は、食道癌の患者の視点から、病と生をブラックユーモアを交えて描く山内令南のデビュー作です。看護経験を持つ作者ならではの距離感が、病を過度に美化せず、生のしぶとさとして描き出します。病院や身体の現実を、痛切さとユーモアの両方で読む作品です。 第112回 文學界新人賞
- 181 2011 癌ふるい がんふるい 『癌ふるい』は、山内令南が「癌だましい」で第112回文學界新人賞を受賞した後に発表した受賞第一作です。NDLサーチでは『文學界』2011年7月号、156~167ページ掲載の記事として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概を確認できなかったため、内容説明は掲載情報に限定します。
- 182 2011 髪魚 かみうお 『髪魚』は、人体と異形なるものの関係を独自の感覚で描く鈴木善徳のデビュー作です。髪と魚という異質なイメージを結びつけ、身体の境界が揺らぐ感覚を前面に出しています。後に芥川賞候補となる作者の、奇妙な身体感覚を示す出発点です。 第113回 文學界新人賞
- 183 2011 クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰 くりすたるう゛ぁりーにふりそそぐはい 『クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰』は、東京大学医学部に進む秀才と、スポーツ推薦で進学した同世代の若者たちが交錯する青春群像です。知性、身体、暴力、階層の断絶が鋭角的に描かれます。若者の成功と孤立を、制度や身体能力の違いから照らす作品です。 第48回 文藝賞
- 184 2011 フラミンゴの村 ふらみんごのむら 『フラミンゴの村』は、二十世紀初頭のベルギーの村で、ある日突然に妻がフラミンゴになるという奇妙な出来事をめぐる幻想小説です。変身譚のかたちを取りながら、共同体の視線や夫婦の距離を浮かび上がらせます。ヨーロッパ文学的な寓話性を帯びた作品として整理できます。 第35回 すばる文学賞
- 185 2010 手のひらに微熱 てのひらにびねつ 『手のひらに微熱』は、藤代泉が『ボーダー&レス』で第46回文藝賞を受賞した後に発表した受賞第一作です。NDLサーチでは「文藝賞受賞第一作」として記録され、CiNii Researchで『文藝』49巻3号、2010年、88-145ページ掲載の書誌を確認できます。『ボーダー&レス』以後の藤代泉の初期展開…
- 186 2010 拍動 はくどう 『拍動』は、シリン・ネザマフィが第108回文學界新人賞受賞後に発表した小説です。NDLサーチでは「文學界新人賞受賞第一作」と副題が付され、『文學界』2010年6月号、98-137ページ掲載の記事として確認できます。日本語を母語としない書き手によるデビュー後の展開をたどるうえで、『白い紙』と並べて参照…
- 187 2010 あられもない祈り あられもないいのり 『あられもない祈り』は、支配的な恋愛関係のなかに自分を置き続ける女性の苦しさを描く島本理生の小説です。親密さは救いであると同時に、相手に自分を明け渡してしまう危うさも帯びています。痛切な恋愛小説であり、身体と自己肯定の問題を読む作品です。
- 188 2010 地上で最も巨大な死骸 ちじょうでもっともきょだいなしがい 『地上で最も巨大な死骸』は、表題作と「クロスフェーダーの曖昧な光」を収めた飯塚朝美の単行本です。巨大な死骸というイメージは、死や身体の存在感を過剰なスケールで立ち上げます。現時点では詳細な内容資料が限られるため、死と身体をめぐる不穏な作品集として暫定的に整理します。
- 189 2010 御不浄バトル ごふじょうバトル 『御不浄バトル』は、ブラック企業で働く男がトイレを唯一の避難所として戦う、羽田圭介の職場小説です。労働の場で追い詰められた身体が、排泄の空間に逃げ込む構図がユーモラスで痛切です。職場、身体、屈辱の問題を、過剰な題名の勢いで読ませます。
- 190 2010 星が吸う水 ほしがすうみず 『星が吸う水』は、「星が吸う水」と「ガマズミ航海」を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、野間文芸新人賞受賞後第一作として、女であることが遠ざかっていく感覚、精神が肉体をもてあます感覚を、男と女、女と女の対の構図で描く作品集とされています。性別、身体、欲望のずれをめぐる村田作品の関心が濃く出…
- 191 2010 歌うクジラ うたうクジラ 『歌うクジラ』は、不死遺伝子が発見された未来の階層社会を、少年の旅として描く村上龍の長編です。SF的設定を使いながら、テクノロジーが身体、寿命、階級をどう変えるかを問います。寓話的な移動の物語として、未来社会の暴力と孤独が前景化します。
- 192 2010 自由高さH じゆうたかさH 『自由高さH』は、建築的な視点から人間の空間認識と自由の関係を探る保高洋三のデビュー作です。空間、身体、自由という抽象的な主題を、建築の語彙に近い感覚で小説化している点が特徴です。第143回芥川賞候補作にもなり、形式意識の強い新人作として位置づけられます。 第110回 文學界新人賞
- 193 2010 俺俺 おれおれ 『俺俺』は、星野智幸が2010年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 194 2009 ブルーシート ぶるーしーと 『ブルーシート』は、デビュー作「家畜の朝」を含む第一創作集として、底辺労働や生活の現場を描く作品です。都市の表面では見えにくい働く身体と貧困の感覚が、青いシートの仮設性と重なります。社会的な題材を、個人の孤独と身体感覚に引き寄せて読むことができます。
- 195 2009 独居45 どっきょしじゅうご 『独居45』は、四十五歳で独り暮らしをする人物の生活を通して、身体、欲望、孤独を露悪的に描く吉村萬壱の作品です。平凡な住まいの内側に、社会から切り離された感覚と不穏な衝動が溜まっていきます。ユーモアと気味悪さが同居する読み味が特徴です。
- 196 2009 ヘヴン ヘヴン 『ヘヴン』は、いじめを受ける「僕」と同級生コジマの連帯を通じて、暴力と倫理を問う長篇です。弱さを共有する二人の関係は救いに見えますが、暴力を意味づけて耐えることの危うさも浮かび上がります。身体の痛みと思想的な問いが同時に迫る、川上未映子の代表的長篇の一つです。
- 197 2009 犬と鴉 いぬとからす 『犬と鴉』は、田中慎弥の硬質な文体で、人間の生の暗さや動物的な感覚を前面に出す作品です。犬と鴉という題名の組み合わせは、従順さと不吉さ、近さと遠さを同時に呼び込みます。閉じた生活の中で、身体と孤独がざらついた手触りで描かれます。
- 198 2009 犬はいつも足元にいて いぬはいつもあしもとにいて 中学生の主人公の日常に、犬が公園の茂みから探り当てた正体不明の「肉」が入り込んでくる。誰も名指せないその物体は、思春期の鬱屈や家族のぎこちなさと響き合いながら、生き物の生々しさと死の気配を物語の中心に居座らせる。登場人物はどこか不快なのに目を離せないという独特の距離感で語られ、生命の循環を思わせる視… 第46回 文藝賞
- 199 2009 ポジティヴシンキングの末裔 ぽじてぃう゛しんきんぐのまつえい 『ポジティヴシンキングの末裔』は、前向きさという社会的な合言葉を、木下古栗らしい不条理な笑いでずらす作品です。人物の考え方や言葉は一見軽いのに、そこから身体や生活の気味悪さがにじみます。明るい自己啓発的な語彙を反転させる、乾いたユーモアが読みどころです。
- 200 2009 糞神 くそがみ 『糞神』は、身体の排泄や汚れのイメージを前面に出しながら、人間の信仰や共同体の感覚を揺さぶる作品です。喜多ふありの題名は挑発的ですが、そこには身体を持って生きることの逃れがたさがあるように読めます。神聖さと汚穢が接近する、不穏な寓話として分類しました。
- 201 2009 ソードリッカー そーどりっかー 『ソードリッカー』は、題名の剣や舌の感触が示すように、身体感覚と暴力のイメージを強く帯びた佐藤憲胤の小説です。講談社刊の単行本として確認できるが、今回の公開資料では詳細な内容紹介までは確認できませんでした。現時点では、身体、攻撃性、孤立した人物像を軸に読む作品として暫定的に整理します。
- 202 2009 手 て 『手』は、身体の一部である手をめぐって、触れること、働くこと、他者との距離を考えさせる山崎ナオコーラの作品です。日常的な言葉づかいのなかに、ジェンダーや家族関係、親密さへの違和感が差し込まれます。軽く見える語りが、身体を通じた関係の非対称さを浮かび上がらせます。
- 203 2009 TRIP TRAP トリップ・トラップ 『TRIP TRAP』は、移動や逸脱の感覚を、恋愛、身体、都市的な不安と結びつける金原ひとみの小説です。旅を意味する「TRIP」と罠を意味する「TRAP」が並ぶ題名は、自由に見える移動が別の閉塞へつながる感覚を示します。鋭い身体感覚と、若い人物の危うい関係性が読みどころです。
- 204 2009 潰玉 ついぎょく 『潰玉』は、壊れやすいものを抱えた人物の感覚を、題名どおり押し潰されるような身体性と結びつける墨谷渉の中篇です。人間関係や自己認識が、硬い玉ではなく潰れて形を変えるものとして描かれているように読めます。情報は限られるものの、身体と孤独の圧迫感が中心にある作品として整理します。
- 205 2009 ヤイトスエッド やいとすえっど 『ヤイトスエッド』は、吉村萬壱らしい異物感のある題名と身体の手ざわりを持つ小説です。日常の秩序が少しずつゆがみ、人物の身体や欲望が不穏なかたちで前景化します。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 206 2009 よもぎ学園高等学校蹴球部 よもぎがくえんこうとうがっこうしゅうきゅうぶ 『よもぎ学園高等学校蹴球部』は、高校サッカー部を題材に、競技、学校、青春の共同体を描く松波太郎の長篇です。勝敗だけでなく、集団のなかで身体を動かすこと、仲間や制度に巻き込まれることが主題になります。スポーツ小説の形を取りながら、若者の同調圧力や孤独も見えてくる作品です。
- 207 2009 憂鬱たち ゆううつたち 『憂鬱たち』は、精神科へ向かう神田憂の妄想と憂鬱を連ねる金原ひとみの連作短篇集です。診察室にたどり着くまでの反復が、病の記録であると同時に、自己を保つための語りにもなっています。鋭い身体感覚と内面の過剰さが、閉じた都市生活の息苦しさを強めます。
- 208 2009 流跡 りゅうせき 『流跡』は、朝吹真理子のデビュー作です。闇夜の川を進む舟頭、雨あがりを家へ向かう会社員、波止場で船を待つ女など、人物や場面が水の流れのように変化しながら連なります。筋の明快さよりも、言葉が残す跡、身体や性差の輪郭がほどける感覚、時間がたまりとして残る手ざわりを読む作品です。 第20回 ドゥマゴ文学賞
- 209 2009 殴る女 なぐるおんな 2009年刊。連載後に集英社から刊行されたとみられる。
- 210 2009 水族 すいぞく 『水族』は、星野智幸が2009年に岩波書店から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 211 2009 夏の水の半魚人 なつのみずのはんぎょじん 『夏の水の半魚人』は、少年たちの夏、水泳、身体の変化をめぐる感覚を、前田司郎らしいずれた会話と日常感で描く作品です。大きな事件よりも、子どもの身体が世界に触れる違和感やおかしみが前面に出る。劇作家としての会話の間合いが、小説の軽さと不穏さを同時に作っています。 第22回 三島賞
- 212 2008 ばかもの ばかもの 『ばかもの』は、大学生の恋愛の終わりから十年後の再会までをたどり、アルコール依存を抱える男の時間を描く作品です。恋愛の失敗は単なる思い出ではなく、生活の崩れや病と結びついて残ります。絲山秋子の乾いた文体が、不器用な愛情と回復の難しさを抑制して描きます。
- 213 2008 僕の好きな人が、よく眠れますように ぼくのすきなひとが、よくねむれますように 『僕の好きな人が、よく眠れますように』は、好きな人の眠りを願うという柔らかな感情から、恋愛と不安を描く中村航の小説です。眠ることは身体の平穏であり、相手を思う距離の象徴でもあります。若い恋愛のまぶしさと、相手に触れきれない切なさを併せ持つ作品です。
- 214 2008 ギンイロノウタ ギンイロノウタ 『ギンイロノウタ』は、表題作と「ひかりのあしおと」の二篇を収める作品集です。Amazonの商品紹介では、無差別殺人衝動に襲われる内気な少女を描く表題作と、殺傷行為と恋愛感情が交差する女子大生の物語として説明されています。性、暴力、成熟への憧れが結びつき、村田作品の危うい身体感覚が前面に出た一冊です。 第31回 野間新人賞
- 215 2008 走ル はしる 『走ル』は、高校生が自転車で北へ向かい続けるロードノベルです。走る身体の疲労と速度が、若い自意識や孤独をそのまま運んでいきます。目的地よりも、移動し続ける時間のなかで自分の輪郭が変わるところが読みどころです。
- 216 2008 波打ち際の蛍 なみうちぎわのほたる 『波打ち際の蛍』は、傷を抱えた人物が、波打ち際のように揺れる場所で他者との距離を測り直す島本理生の作品です。蛍の光のようなかすかな希望と、身体に残る痛みが同時に描かれます。恋愛や回復を単純に美化せず、触れ合うことの怖さまで含めて読ませます。
- 217 2008 逃げ道 にげみち シャワートイレ業者に雇われ、一般人のふりをして製品を試す「モニター工作員」として働く若い女性が主人公。アルバイト先の不祥事を機に、彼女は営業担当の田尻とともに街を離れ、千葉の屛風ヶ浦へと車を走らせる。隣人が全裸で現れるなどのノンセンスな場面や、エクセルの表を組み込む形式の実験を織り交ぜながら、どこに… 第106回 文學界新人賞
- 218 2007 あなたの呼吸が止まるまで あなたのこきゅうがとまるまで 『あなたの呼吸が止まるまで』は、息をすること、生き延びること、他者と関わることを強い身体感覚で描く島本理生の小説です。恋愛や依存の感情が、相手の呼吸を意識するほど近い距離で語られます。親密さの美しさだけでなく、そこに潜む苦しさを読む作品です。
- 219 2007 乳と卵 ちちとらん 東京で一人暮らしをする「わたし」のもとへ、大阪でホステスとして働く姉の巻子と、その娘で小学6年生の緑子が上京してくる。離婚後ひとりで娘を育ててきた巻子は豊胸手術を受けることに執拗にこだわり、初潮を迎える年頃の緑子は、自分の身体が変わっていくことへの違和感をノートに書きつけ、母とは筆談でしか口をきかな… 第138回 芥川賞
- 220 2007 星へ落ちる ほしへおちる 『星へ落ちる』は、恋愛や身体の感覚を、落下するような不安定さのなかで描く金原ひとみの作品です。きらびやかな題名とは対照的に、登場人物の感情は孤独や衝動に強く引かれます。短く鋭い語りが、関係の熱と冷えを同時に伝えます。
- 221 2007 ハイドラ ハイドラ 『ハイドラ』は、身体、欲望、恋愛の結びつきを、金原ひとみらしい鋭い感覚で描く作品です。複数の頭を持つ怪物を思わせる題名のように、感情や関係は一つにまとまらず分岐していきます。自己破壊的な衝動と生への執着が同時に読める、不穏な恋愛小説です。
- 222 2007 パワー系181 ぱわーけいいちはちいち 身長181センチ、強靭な肉体を持つ女性リカが開いた個人サロンには、身体測定マニア、張り手を浴びたいマゾヒスト、衣類フェチなど、それぞれ奇妙な性癖を抱えた男たちが通ってくる。彼らが求める「本物のエクスタシー」を、湿った官能ではなく即物的でドライな筆致で記録していく。身体とマゾヒズムという題材を真っ向か… 第31回 すばる文学賞
- 223 2007 わたくし率 イン 歯ー、または世界 わたくしりつ イン はー、またはせかい 『わたくし率 イン 歯ー、または世界』は、「わたし」は奥歯にあると考える女性の独白を、大阪弁のリズムで疾走させるデビュー作です。身体の一部に自己を置く発想が、アイデンティティと言葉の関係を奇妙に拡張します。文体の勢いそのものが主題になっている、川上未映子初期の重要作として読めます。
- 224 2007 とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起 とげぬき しんすがもじぞうえんぎ 『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』は、伊藤比呂美が『群像』に連載し、2007年に講談社から刊行した長篇詩的散文です。カリフォルニアと日本を行き来する語り手が、老いた父母の介護、身体の痛み、家族の変化、仏教的な死生観を、巣鴨地蔵への祈りや縁起譚のような声に重ねて語ります。詩と小説、私的記録と説話がほどけ合う…
- 225 2007 植物診断室 しょくぶつしんだんしつ 『植物診断室』は、星野智幸が2007年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 226 2006 煙幕 えんまく 14歳の「わたし」は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、「14年戦争を生き抜いてきた」という感慨を抱いて生きている。理科教師の川端、クラスメイトの衣川、母を捨てた川端と名乗る男、プロデューサー——複数の登場人物が重なり合い、誰が誰なのか分からないまま視点が次々と入れ替わる。読者を文字どおり煙に巻く実験…
- 227 2006 不思議の国のペニス ふしぎのくにのペニス 『不思議の国のペニス』は、性欲に振り回される男子高校生の日常を、露骨さと滑稽さを交えて描く作品です。青春小説の枠組みを使いながら、身体の変化や欲望を制御できない不安を前面に出しています。題名の挑発性に対して、語りは若い自意識のぎこちなさを追うところに読みどころがあります。
- 228 2006 生きてるだけで、愛。 いきてるだけで、あい。 『生きてるだけで、愛。』は、鬱と過眠に苦しむ寧子と、同棲相手・津奈木の関係を描く恋愛小説です。感情の爆発と生活の停滞が同時に描かれ、病や孤独が恋愛のなかでどう噴き出すかを見せます。荒さを残した一人称的な距離感が、登場人物の息苦しさを直接伝えます。
- 229 2006 イルカ イルカ 『イルカ』は、よしもとばななの小説らしく、親密な関係と心身の変化をやわらかな語りで扱う作品です。題名が示す水辺のイメージは、閉じた日常から別の感覚へ移るための入口として働きます。喪失や不安を強く断定せず、ゆるやかな回復の気配を読む作品として位置づけられます。
- 230 2006 いやしい鳥 いやしいとり 飲み会で初めて会った学生を家に連れ帰るはめになった非常勤の大学講師。その夜を発端に、男が鳥へと変身していく惨劇が起こる。講師の視点と隣に住む専業主婦の視点を交互に置き、時系列を少しずつずらす構成で、日常に走る裂け目をグロテスクな滑稽さとともに見せる。藤野の出発点となった変身譚で、奇想と冷静な観察眼の… 第103回 文學界新人賞
- 231 2006 幻をなぐる まぼろしをなぐる 失恋の痛手を抱えた女性が、相手を忘れるために身体を鍛え、欲望と妄執を抱え込んでいく。集英社側の紹介では、痛みをただ感傷として描くのではなく、生々しさとピュアさをあわせ持つ「現代の失恋」の物語として打ち出されている。恋愛の喪失を身体の運動や執着の問題として描く点に読みどころがある、第30回すばる文学賞… 第30回 すばる文学賞
- 232 2006 無限のしもべ むげんのしもべ 早く目覚めすぎた休日の朝、稔がマンションから見下ろすと、駐車場に円卓を持ち込んでティーパーティーに興じる4人の男女がいた。そのなかの美人に目をつけた稔は、パーティーに加わりあわよくば濃密な性愛を、という淫靡な考えに取り憑かれ作戦を練り始める。性的妄想の無意味な暴走を生真面目な文体で押し切る、木下古栗… 第49回 群像新人賞
- 233 2006 そろそろくる そろそろくる 『そろそろくる』は、日常のなかで身体や感情の変化を待ち受ける感覚を描く作品として整理できます。中島たい子の小説に特徴的な、身近な生活の違和感をユーモアに変える語りが読みどころです。大きな事件よりも、心身のリズムが崩れる瞬間に焦点が置かれます。
- 234 2006 虹とクロエの物語 にじとくろえのものがたり 『虹とクロエの物語』は、星野智幸が2006年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 235 2006 われら猫の子 われらねこのこ 『われら猫の子』は、星野智幸が2006年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 236 2005 AMEBIC アミービック 拒食やアルコールに蝕まれた女性ライターの意識を、断片的で揺らぐ独白として描く長編。身体の輪郭が崩れ、言葉や記憶がアメーバのように変形していく感覚が、タイトルどおり作品の構造にも入り込む。金原ひとみの身体感覚と実験的な語りが強く出た作品である。
- 237 2005 バースト・ゾーン 爆裂地区 ばーすと・ぞーん ばくれつちく 吉村萬壱が、暴力と管理の気配を強めた架空的な地区を描く長編。純文学の枠を越えて、SFやディストピア小説に近い想像力で、身体が制度や集団にさらされる状況を押し広げる。『ハリガネムシ』の閉じた暴力とは別方向に、社会全体が不穏化していく読み味がある。
- 238 2005 みずうみ みずうみ 母を亡くした女性と、過去に深い傷を抱えた青年の恋を描く長編。湖の静けさは、癒やしの場所であると同時に、人物が抱える記憶の暗さを映す場所にもなる。吉本ばななの柔らかな語りが、トラウマと恋愛を過剰に説明しすぎず、余韻として残す。
- 239 2005 土の中の子供 つちのなかのこども 『土の中の子供』は、幼少期の虐待の記憶を抱えた青年が、暴力と性のただなかで自分の生を測り直す作品です。語りは身体感覚に近く、外から説明するよりも、壊れた自己認識の内側から世界を見せます。暗い題材を扱いながら、傷の再演とそこからの微かな抵抗を描く点に緊張があります。 第133回 芥川賞
- 240 2005 焼身 しょうしん 集英社刊の2005年単行本。宮内勝典の宗教性・越境性・身体性が強く出る作品として追加候補。
- 241 2005 蟹と彼と私 『蟹と彼と私』は、荻野アンナが『すばる』連載を経て集英社から刊行した作品です。癌という重い題材を、病の記録だけに閉じず、語りの跳躍、言葉のずれ、奇妙なユーモアによって多層化しています。身体と死をめぐる切実さと、荻野作品らしいパロディ的な文体感覚が同居する一冊です。
- 242 2005 河原荒草 かわらあれくさ NDLサーチで2005年10月刊、思潮社、ISBN 4-7837-2101-7の単行本として確認できる。
- 243 2005 在日ヲロシヤ人の悲劇 ざいにちをろしやじんのひげき 『在日ヲロシヤ人の悲劇』は、星野智幸が2005年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 244 2004 女の子と病気の感染 おんなのことびょうきのかんせん 『女の子と病気の感染』は、第46回群像新人文学賞受賞作『火薬と愛の星』の作者・森健が2004年に角川書店から刊行した単行本です。NDLサーチで書名、著者、出版社、刊行年月、ページ数を確認できます。公開Webで梗概や本文内容を確認できないため、作品内容の説明は書誌情報に限定します。
- 245 2004 アフターダーク あふたーだーく 深夜0時過ぎから夜明けまでの東京を舞台に、ファミリーレストラン、ホテル、オフィス、眠り続ける部屋がゆるく接続される。視点はカメラのように人物の間を移動し、姉妹、孤独な青年、暴力の痕跡を、夜の都市の断片として映し出す。長大な物語ではなく、時間を区切った構成と映像的な語りで、村上春樹作品の都市感覚を凝縮…
- 246 2004 アッシュベイビー アッシュベイビー 『蛇にピアス』後の第二作で、同居人の男と赤ん坊をめぐる歪んだ関係に巻き込まれる女性を描く。身体、依存、母性への違和感が、金原ひとみらしい硬い感覚の文体で押し出される。家庭的な題材を扱いながら、安心できる家族像を反転させる不穏な作品である。
- 247 2004 漢方小説 かんぽうしょうせつ 31歳独身の脚本家・みのりは、元恋人の結婚を知った夜に突然の体調不良に襲われる。西洋医学の検査では「異常なし」とされ、たどり着いたのは漢方医院だった。「気・血・水」という耳慣れない物差しで自分の身体を眺め直すうちに、仕事や恋愛で強張っていた心もゆっくりほぐれていく。病気未満の不調という現代的な主題を… 第28回 すばる文学賞
- 248 2004 サージウスの死神 さーじうすのしにがみ 徹夜明けの帰り道、ビルから飛び降りてきた男と目が合い、その死を目撃した主人公は、同僚に誘われた地下カジノ「freeze」でルーレットにのめり込む。預金を失い借金を重ねるうち、「頭の中に数字を飼っている」という感覚が芽生え、精神の破滅と引き換えに当たりの数字が見えるようになっていく。賭博と死の観念を硬…
- 249 2004 ロンリー・ハーツ・キラー ろんりーはーつきらー 『ロンリー・ハーツ・キラー』は、星野智幸が2004年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 250 2004 アルカロイド・ラヴァーズ あるかろいどらゔぁーず 『アルカロイド・ラヴァーズ』は、星野智幸が2005年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 251 2003 ハリガネムシ はりがねむし 中学教師の男が、教え子の母親との関係をきっかけに、性と暴力の泥沼へ落ちていく芥川賞受賞作。語りは冷たく湿っており、主人公の欲望や嫌悪が、昆虫的・寄生的なイメージと重なって増殖していく。家族や学校という制度の薄い膜の下にある衝動を、読後感の悪さごと突きつける作品である。 第129回 芥川賞
- 252 2003 蛇にピアス へびにピアス 19歳のルイは、蛇のように舌先が割れた「スプリット・タン」を持ち、全身にピアスと刺青を施した青年アマと出会い、同棲を始める。自らも舌にピアスを開け、拡張し、背中に麒麟と龍の刺青を彫ろうと、アマの紹介で知り合ったサディストの彫り師シバとも危険な関係を結んでいく。痛みによってしか生の実感をつかめない若者… 第130回 芥川賞
- 253 2003 授乳 じゅにゅう 『授乳』は、第46回群像新人文学賞優秀作となった表題作を含む村田沙耶香の初作品集です。Amazonの商品紹介では「授乳」「コイビト」「御伽の部屋」の3篇を収め、日常の細部を新しい感受性で描くデビュー作として紹介されています。既存紹介の家庭教師との倒錯した関係という筋は作品理解として有用ですが、更新案…
- 254 2003 壊れるほど近くにある心臓 こわれるほどちかくにあるしんぞう 身体と精神の境界がゆるみ、恋愛の近さがそのまま危うさへ変わっていく第二作。親密さを求めるほど相手との距離が測れなくなる感覚を、肉体的なイメージと内面の揺れを重ねて描く。恋愛小説でありながら、愛の甘さよりも依存、痛み、自己の輪郭が崩れる怖さを読む作品である。
- 255 2003 鼠と肋骨 ねずみとろっこつ 第46回群像新人文学賞優秀作として『群像』2003年6月号に掲載された短編。NDLサーチでは掲載記事と掲載誌号を確認できるが、公開Web上で梗概や選評本文は確認できない。現時点では題名から主題や語りを推測せず、同賞優秀作としての掲載情報を中心に扱う。
- 256 2003 モルヒネ もるひね 初版は祥伝社2003年刊。2008年・2009年の関連版もNDLで追跡できる。
- 257 2003 彼が彼女の女だった頃 かれがかのじょのおんなだったころ 2003年7月に講談社から刊行された作品集。NDLで収録作「幻の軍隊」「旅をする者」「桃」「響き線」「僕が眠りにつくときに」「黄泉への道」「接続体」「原形質の甘い水」「彼が彼女の女だった頃」を確認できる。
- 258 2003 サウンドトラック さうんどとらっく 『サウンドトラック』は、音楽、都市、身体感覚を小説のリズムへ変換する古川日出男の長篇です。筋を静かに追うというより、若者たちの衝動や都市のノイズを高速の語りで積み重ねるところに読みどころがあります。今回確認できた出版社公式情報は集英社文庫上下巻の書誌が中心で、詳細な公式あらすじは未確認です。
- 259 2003 眼球の毛 : 特別書下ろし長篇 がんきゅうのけ 2003年12月に講談社から刊行された書き下ろし長篇をNDLで確認した。
- 260 2003 鬼ケーキ 『鬼ケーキ』は、安斎あざみが『文學界』2003年3月号に発表した作品です。NDLサーチでは、同誌57巻3号の128ページから156ページに掲載された記事・論文種別の文学作品として確認できます。内容紹介や選評は公開書誌から確認できないため、書誌情報を中心に収録します。
- 261 2003 泥人魚 どろにんぎょ 『泥人魚』は、唐十郎が『新潮』2003年4月号に発表した戯曲です。NDLサーチでは同号p.144-199掲載の「最新戯曲 泥人魚」として確認でき、2004年4月に新潮社から単行本化されています。唐十郎の後期戯曲を代表する一作として、アングラ演劇の過剰なイメージと言葉のうねりを受け継ぐ作品です。
- 262 2002 裸のカフェ はだかのかふぇ 横田創が2002年に刊行した作品で、公開情報では詳細な梗概がまだ薄い。カフェという開かれた場所と「裸」のイメージから、人間関係や自己露出の不穏さを扱う作品として暫定整理する。内容細部と批評上の評価は、現物・書評確認を優先したい。
- 263 2002 首鳴り姫 くびなりひめ 2002年刊。岡崎祥久著としてNDLで確認できる。
- 264 2002 ヤる女 ヤル オンナ 『段ボールハウスガール』周辺の都市的・身体的主題を補う候補。
- 265 2002 毒身温泉 どくしんおんせん 『毒身温泉』は、星野智幸が2002年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 266 2001 ジャムの空壜 じゃむのあきびん 屠畜の現場を舞台にした短篇集で、労働、身体、動物の死を生活の近くから描く。清潔な消費の背後にある仕事を見つめることで、社会の見えにくい暴力と人間の尊厳を浮かび上がらせる。佐川光晴の労働への視線がよく表れる作品。
- 267 2001 クチュクチュバーン くちゅくちゅばーん ある時から人間たちが異形のものへと変容しはじめ、世界そのものが崩壊へ向かう過程を、複数の人物のエピソードを束ねて描く黙示録的な中篇。グロテスクで生々しい身体描写を畳みかけながら、悲惨さの中に奇妙な可笑しさと祝祭性が同居するのが特徴で、「世界の破壊か、新しい人類の始まりか」という終末イメージを正面から… 第92回 文學界新人賞
- 268 2001 夜明けの音が聞こえる よあけのおとがきこえる 自ら声を封じ込めているうちに本当に声が出なくなってしまった「僕」が、治療者の勧めでホテルで働きはじめる。しかし職場に溶け込めず、ふとした誤解から従業員たちを敵に回し、執拗ないじめにさらされていく。語ることのできない主人公の内側に渦巻く苛立ちと怒りを、鮮烈な言葉の力で外へ撃ち出すような文章が特徴で、声… 第25回 すばる文学賞
- 269 2001 アイリーン 『アイリーン』は、篠原一の小説単行本です。NDLサーチでは2001年9月に作品社から刊行された141ページの図書、NDC9 913.6として確認できます。出版書誌データベースでも、ISBN 9784878934278、B6判、141ページ、2001年9月刊行の書誌が確認できます。
- 270 2000 体は全部知っている からだはぜんぶしっている 身体の記憶をモチーフにした吉本ばななの掌篇集。心では整理できない痛みや違和感が、身体の感覚として先に反応する瞬間をすくう。短い形式の中で、病、恋愛、喪失、生活の手ざわりを静かに重ねる。
- 271 2000 共生虫 きょうせいちゅう 引きこもりの青年ウエハラが、「共生虫」という妄想に取り憑かれていく長編。ネット、孤立、身体への不安が結びつき、社会から退いた人物の内側が危うく膨張していく。2000年前後のテクノロジーと精神の不穏な接続を描く村上龍作品。 第36回 谷崎賞
- 272 2000 肉触 にくしょく 『肉触』は、第37回文藝賞優秀作として『文藝』2000年冬季号に掲載され、2001年1月に河出書房新社から単行本化された佐藤智加の作品です。河出書房新社公式ページでは、精神と肉体をめぐる冒頭の問い、姉の追憶に支えられた詩的な内面世界の崩壊、17歳の高校生による早熟な表現が紹介されています。物語の細部…
- 273 2000 アレグリア あれぐりあ 『アレグリア』は、デビット・ゾペティの小説単行本です。出版書誌データベースでは、14歳でトロントへバレエ留学した陽子が、かつての英語教師で東京に住む米国人画家の「僕」に留学生活を語る作品として紹介されています。NDLサーチでは2000年6月に集英社から刊行された193ページの図書、NDC9 913…
- 274 2000 目覚めよと人魚は歌う めざめよとにんぎょはうたう 『目覚めよと人魚は歌う』は、星野智幸が2000年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。 第13回 三島賞
- 275 1999 あ・だ・る・と あ・だ・る・と 1999年に主婦と生活社から刊行された高橋源一郎の小説。「AVのゴダール」と呼ばれるAV監督・ピンを中心に、撮影現場の描写を主軸に置きながら、性と愛の問いを追う異色作。さまざまな女性を相手にAVを完成させようとするピンの現場を描き、エピローグでは業界から忽然と姿を消した先輩がインドから送ってきたフィ…
- 276 1999 ラニーニャ らにーにゃ カリフォルニアに暮らす日本人女性を中心に、異国での育児と日本にいる老親の介護が交差していく長篇です。母であること、娘であること、移動する身体を、詩人としての言語感覚を残した散文でたどります。生活の具体と身体感覚が強く、家族小説であると同時に越境文学としても読める作品です。 第21回 野間新人賞
- 277 1999 ミューズ みゅーず 十七歳の女子高生・美緒が、矯正歯科医への恋を通して自分の身体感覚と欲望に触れていく中篇です。恋愛の物語でありながら、歯列矯正という身体への介入を軸に、青春期の感覚の鋭さを前面に出している。赤坂真理の初期作品らしく、若い女性の内面と都市的な空気が近い距離で語られます。 第22回 野間新人賞
- 278 1999 ヴァイブレータ ヴぁいぶれーた 1999年1月に講談社から刊行された単行本。NDLで単行本、2003年講談社文庫版、2013年新装版を確認できる。
- 279 1999 コーリング こーりんぐ 1999年6月に河出書房新社から刊行された作品集。NDLで収録作「コーリング」「最大幅七ミリ」「起爆者」「フィギュアズ」「水の膚」「雨」を確認できる。
- 280 1999 嫐嬲 なぶりあい 『嫐嬲』は、星野智幸が1999年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 281 1998 二進法の犬 にしんほうのいぬ 光文社から1998年11月に刊行された長編小説。NDLで単行本と文庫版を確認。
- 282 1998 赤目四十八瀧心中未遂 あかめしじゅうやたきしんじゅうみすい 『赤目四十八瀧心中未遂』は、車谷長吉の長篇小説です。文藝春秋公式ページでは、尼崎の四畳半のアパートでモツを串に刺し続ける語り手と、背中一面に迦陵頻伽の刺青を持つ女をめぐる作品として紹介されています。NDLサーチでは1998年1月に文藝春秋から刊行された272ページの図書、NDC9 913.6として確…
- 283 1997 蝶の皮膚の下 ちょうのひふのした 1997年3月に河出書房新社から刊行された本人単著。NDLで単行本と1999年文庫版を確認できる。
- 284 1996 ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II ヒュウガ・ウイルス ごふんごのせかいツー 『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II』は、『五分後の世界』の続編として、別の時間軸の日本で発生した致死的な感染症を描く長編です。幻冬舎公式では、九州東南部の歓楽都市ビッグ・バンでウイルスが蔓延し、キャサリン・コウリーが日本国軍に同行する物語として紹介されています。戦争、感染、極限状況を重ねることで…
- 285 1996 蛇を踏む へびをふむ 『蛇を踏む』は、藪で蛇を踏んだ女性の前に、その蛇が女の姿で現れ、「蛇になれ」と迫ってくる芥川賞受賞作です。日常の手触りを残したまま異界が入り込み、現実と幻想の境界が曖昧になっていくところに読みどころがある。身体の変容、親密さへの恐れ、奇妙な同居感を、川上弘美の初期作らしい静かな不穏さで描く。 第115回 芥川賞
- 286 1996 マンモスの牙 まんもすのきば 『マンモスの牙』は、小山右人が第28回新潮新人賞を受賞した作品です。著者自身のnoteでは、映画化作品『牙の曲線』の原作小説として言及され、医学・アートを横断する視点を持つ作品として既存データに整理されています。新潮社公式で受賞事実は確認できますが、出版社公式の商品紹介は未確認のため、内容説明は低確… 第28回 新潮新人賞
- 287 1996 赤い満月 あかいまんげつ 『赤い満月』は、大庭みな子が第23回川端康成文学賞を受けた短篇です。『文學界』1995年1月号に掲載され、同年刊の作品集『もってのほか』に収録されたことを、文学賞データとNDLサーチで確認できます。公開情報では具体的な筋や舞台の紹介は限られるため、身体、記憶、寓話・幻想の既存分類を手がかりにしつつ… 第23回 川端賞
- 288 1996 漂流物 ひょうりゅうぶつ NDLサーチで1996年12月刊の新潮社版単行本、および1999年11月刊の新潮文庫版が確認できる。全集収録ではなく初刊単行本を根拠に、車谷長吉の私小説的な短篇集として候補化する。
- 289 1995 豚の報い ぶたのむくい 『豚の報い』は、沖縄のスナックに豚が乱入する出来事を起点に、厄落としのため離れ小島の御嶽へ向かう一行を描く芥川賞受賞作です。ファルス的な出来事の連鎖の中に、沖縄の霊的世界観、身体感覚、生の逞しさが重なります。方言・口語の感触と祝祭性を帯びた語りが読みどころです。 第114回 芥川賞
- 290 1995 紅栗 べにぐり 『紅栗』は、SF翻訳家としても活動した冬川亘の短編小説で、新潮新人賞受賞作として登録されています。既存情報では詳細な筋は限られますが、翻訳・SF的想像力を背景にした作家の純文学的実作として位置づけられます。題名の色彩感と身体的な質感から、幻想性を含む短篇として分類しました。 第27回 新潮新人賞
- 291 1995 声の娼婦 こえのしょうふ NDLサーチで1995年1月刊、講談社、ISBN 4-06-207362-5の単行本として確認できる。
- 292 1994 マリカの永い夜・バリ夢日記 マリカのながいよる・バリゆめにっき 『マリカの永い夜/バリ夢日記』は、多重人格を抱えるマリカと精神科医ジュンコのバリ島での物語に、著者自身のバリ旅行記を組み合わせた作品です。幻冬舎公式は、聖域としてのバリ島で起こる愛の物語と、多重人格の悲しみと希望を描く小説として紹介しています。小説と紀行が接続され、旅先の神秘性と身体・人格の揺らぎが…
- 293 1994 ピアッシング ピアッシング 『ピアッシング』は、強迫観念に駆られた男と、幼少期の傷を抱えた女性の一夜を描く心理サスペンスです。殺害計画という暴力的な筋立てを通じて、身体への衝動、虐待の記憶、他者との接触の危うさが前景化します。村上龍の作品群のなかでは、都市的な閉塞と身体感覚の異常な高まりを緊密に扱う長編として整理できます。
- 294 1994 食べる女 たべるおんな 1994年刊。食と女性を主題に含む可能性が高い。
- 295 1993 エクスタシー エクスタシー 『エクスタシー』は、ニューヨークで出会った謎めいた日本人ホームレスをきっかけに、主人公が快楽と暴力のゲームへ巻き込まれていく長編です。集英社公式は、ゴッホの耳をめぐる問いから始まる不思議な出会いと、果てしなく反復される「恍惚のゲーム」を紹介している。身体、性、ドラッグをめぐる過激な素材を、村上龍らし…
- 296 1993 壊音 KAI-ON かいおん 『壊音 KAI-ON』は、高校生の少女が自分の身体感覚の崩壊と再生をたどるデビュー作です。若い身体と精神の不安定さを、音や感覚の乱れとして捉える作品として整理できます。17歳で文學界新人賞を受賞した篠原一の初期代表作で、1995年に文藝春秋から単行本化されました。 第77回 文學界新人賞
- 297 1993 骸骨山脈 がいこつさんみゃく 『骸骨山脈』は、野間井淳が第25回新潮新人賞を受賞した作品です。NDLでは『新潮』1993年11月号と受賞作発表記事を確認できますが、具体的な筋や書評は今回確認できませんでした。題名の死や山岳のイメージを手がかりにした分類は暫定です。 第25回 新潮新人賞
- 298 1993 解体屋外伝 かいたいやがいでん 1993年に講談社から刊行、2013年に河出書房新社の「いとうせいこうレトロスペクティブ」として復刊。Books/JPROは「洗脳のプロ・洗濯屋」と「洗脳外しのプロ・解体屋」の闘いとして紹介している。
- 299 1992 樹木内侵入臨床士 じゅもくないしんにゅうりんしょうし 『樹木内侵入臨床士』は、架空の職業をめぐる実験的な物語です。人間の身体や治療の感覚を、樹木の内部へ侵入するという奇妙な設定に置き換えています。現実的な職業小説ではなく、身体と自然の境界をずらす寓話として読むのが近い作品です。 第74回 文學界新人賞
- 300 1992 螺旋の肖像 らせんのしょうぞう 『螺旋の肖像』は、別唐晶司が第24回新潮新人賞を受賞したデビュー作です。医学研究科に在籍していた著者の経歴もあり、身体や認識をめぐる知的な題材が想起されますが、今回確認できた公開資料は受賞発表と掲載誌書誌が中心です。内容面は今後の追加調査が必要です。 第24回 新潮新人賞
- 301 1992 犬(影について・その一) いぬ かげについて そのいち 『犬(影について・その一)』は、「影」というモチーフをめぐる連作の第一作です。犬を通して人間の存在の輪郭を問い直し、視覚的で幻想的なイメージを重ねます。画家・装丁家でもある司修の感覚が、寓話的な短篇の形に反映された作品です。 第20回 川端賞
- 302 1992 赤い橋の下のぬるい水 『赤い橋の下のぬるい水』は、辺見庸が文藝春秋から刊行した作品集です。表題作に加え、「ナイト・キャラバン」「ミュージック・ワイア」を収めます。身体性や欲望、社会の周縁にある人びとの気配を、現実の手触りと寓話的な濃さを行き来する文体で描いています。
- 303 1991 かかとを失くして かかとをなくして 『かかとを失くして』は、ドイツ語圏に渡った日本人女性の言語と身体の変容を、夢幻的な語りで描く多和田葉子のデビュー作です。足元の感覚を失うというイメージが、母語の外へ出る不安や、身体の境界の揺らぎにつながっていきます。越境文学・エクソフォニーの出発点として重要な作品です。 第34回 群像新人賞
- 304 1991 なにもしてない なにもしてない 『なにもしてない』は、生きている実感を求めて現実と幻想のあいだを往還するモノローグの世界を描く作品です。日常の停滞を、単なる無為ではなく、身体と意識がずれていく感覚として押し広げます。笙野頼子の前衛的な私小説性が強く現れた初期代表作です。 第13回 野間新人賞
- 305 1991 トラッシュ とらっしゅ 山田詠美の1990年代初頭の book-form work 候補。内容・受賞の詳細は候補段階では補強余地あり。
- 306 1990 妊娠カレンダー にんしんかれんだー 『妊娠カレンダー』は、妊娠した姉とその夫と同居する「私」が、妊娠の経過を日々観察していく短篇です。生命の誕生を祝福だけでなく、匂い、食べ物、身体への嫌悪や違和感として描く点が際立ちます。淡々とした一人称の記録が、家族の親密さの裏にある不穏さを増幅します。 第104回 芥川賞
- 307 1990 狂いバチ、迷いバチ くるいバチ、まよいバチ 『狂いバチ、迷いバチ』は、竹野昌代が第71回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1990年12月号の書誌を確認できますが、公開された詳細なあらすじ・書評は今回確認できませんでした。題名の不穏さを含め、現時点では新人賞受賞作としての書誌的紹介を中心に扱います。 第71回 文學界新人賞
- 308 1990 世紀末鯨鯢記 せいきまつ げいげいき 『世紀末鯨鯢記』は、南氷洋の捕鯨船を舞台に、悪夢と現実がせめぎ合う奇想の長篇です。白鯨のモチーフを思わせる巨大な生きものへの執着を通じて、バブル期の狂騒や身体感覚の不安を寓話的に浮かび上がらせます。海上の閉じた空間が、現実離れした不穏さを強めています。 第3回 三島賞
- 309 1990 遊機体 ゆうきたい 1990年刊。既存の『背負い水』以前の単著候補。
- 310 1989 ラッフルズホテル ラッフルズホテル シンガポールの名門ホテルを思わせる空間を舞台に、旅、欲望、演技する自己を描く村上龍の作品。ホテルという非日常の場所が、登場人物の孤独や消費社会の空虚さを浮かび上がらせる。都市的で乾いた感触の中に、海外への視線と身体感覚が重なる。
- 311 1989 白河夜船 しらかわよふね 眠りに沈んでいく女性たちを描く三篇を収めた作品集。恋愛、喪失、孤独が、眠りという身体の状態を通じて静かに語られる。吉本ばなな初期の透明な語りと、生死の境目に触れる感覚がよく表れた一冊。
- 312 1989 TUGUMI つぐみ 海辺の町を舞台に、語り手まりあと、病弱で美しいが激しい気性を持つ少女つぐみの最後の夏を描く長編。家族経営の宿、海辺の時間、恋の予感、病と別れの気配が重なり、青春のまぶしさと残酷さが同時に立ち上がる。吉本ばなならしい平明な一人称で、親密な関係が永遠には続かないことを痛切に描く。
- 313 1988 村上龍料理小説集 むらかみりゅうりょうりしょうせつしゅう 料理を軸に、欲望、記憶、身体感覚を結びつける村上龍の短篇集。食べることが単なる生活描写ではなく、性、旅、階層、感覚の鋭さを呼び出す装置として働く。村上龍の官能的な文体を、暴力よりも味覚と記憶の側から読める作品集。
- 314 1988 トパーズ トパーズ SMクラブで働く女性たちの身体、欲望、孤独を都市の夜の中に描く村上龍の作品。性の描写は刺激としてだけでなく、支配、痛み、金銭、自己感覚をめぐる問いとして機能する。乾いた文体で、バブル期都市の消費と身体の商品化を突きつける。
- 315 1988 汝ふたたび故郷へ帰れず なんじふたたびこきょうへかえれず 『汝ふたたび故郷へ帰れず』は、飯嶋和一のデビュー作です。現代の苦境に置かれた人物を描く作品として整理され、後に歴史小説へ大きく展開する作家の初期の問題意識をうかがわせます。故郷への帰還不能という題が、喪失と自己の行き場のなさを強く示しています。 第25回 文藝賞
- 316 1987 ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー そうるみゅーじっくらばーずおんりー 『ベッドタイムアイズ』後の初期山田詠美を代表する book-form work 候補。受賞情報は既存賞IDに直木賞がないため awards には登録しない。
- 317 1987 巨食症の明けない夜明け きょしょくしょうのあけないよあけ 『巨食症の明けない夜明け』は、摂食障害に苦しむ女子大生の不安と孤独を描く松本侑子のデビュー作です。当時まだ広く認知されていなかった過食症を正面から扱い、身体と心の切迫を小説の主題にしています。青春小説であると同時に、女性の身体をめぐる社会的圧力を読む作品です。 第11回 すばる文学賞
- 318 1987 ヴェクサシオン ヴェクサシオン 『ヴェクサシオン』は、CF演出家と難聴のピアニストを軸に、サティの音楽、恋愛、妊娠、都市の心象を結びつける長編です。文春文庫の出版社系ページでは、音楽と映像の感覚が交差する物語として紹介されており、芸術表現と身体感覚が主題の中心にあります。都会の生活を背景に、現代人の孤独や親密さの揺れを詩的に描く作… 第9回 野間新人賞
- 319 1986 ミモザの林を みもざのはやしを 日常の猥雑を越えてなお何かを求め続ける女性たちの生命力を描く短篇集。表題作のほか「毀れる」「焔の舌」「くずれる音」「冬の苺」「ガラスの破片」を収め、身体感覚と性、日々の生活の手ざわりが重なっていく。短い紹介しか確認できないが、女であることの感覚を正面から扱った作品として読める。 第8回 野間新人賞
- 320 1985 河馬に嚙まれる かばにかまれる 連合赤軍事件の記憶や、その後を生きる人々の傷を背景にした連作短篇集。表題作では、政治的暴力の記憶と個人の身体感覚が奇妙に結びつき、過去を説明しきれないまま抱え続ける人間の多義性が浮かび上がる。寓話的な動物イメージと自己照射的な語りを通して、1970年代の事件の残響を1980年代の生へ引き寄せる。 第11回 川端賞
- 321 1985 テニスボーイの憂鬱 テニスボーイのゆううつ 村上龍が1985年に刊行した長編。テニスや消費文化の明るい表層を背景に、若者の空虚さ、身体感覚、欲望の行き場のなさを描く作品として読める。初期村上龍の過剰な都市感覚を、暴力だけでなく遊戯性や倦怠から見るための一冊。
- 322 1985 ベッドタイムアイズ べっどたいむあいず 『ベッドタイムアイズ』は、黒人兵スプーンと日本人女性の激しい性愛を奔放な文体で描いた山田詠美のデビュー作です。恋愛や性を、社会的規範から外れた身体感覚として押し出し、当時の日本文学に強い衝撃を与えました。都市、身体、異文化の接触が、痛切で挑発的な読み味を作っています。 第22回 文藝賞
- 323 1985 水平線上にて すいへいせんじょうにて 『水平線上にて』は、大学生となった女性の性意識と体験を描き深めた中沢けいの作品です。講談社の文庫版紹介では、群像新人文学賞受賞作「海を感じる時」と並べて収録され、身体感覚と海のイメージが作品世界の核として示されています。若い女性の身体、性、自己認識を鋭い感覚で扱う作品として位置づけられます。 第7回 野間新人賞
- 324 1983 新しい人よ眼ざめよ あたらしいひとよめざめよ 障害を持つ息子イーヨーとの日常を、ウィリアム・ブレイクの詩を媒介に見つめ直す連作小説。語り手は息子の成長、死や性への問い、家族のなかの不安を受け止めながら、文学の言葉が現実のケアとどのように結びつくかを探る。私小説的な素材を思想的な読解と重ねることで、父と子の関係を閉じた家族の物語にせず、他者と共に…
- 325 1983 国旗が垂れる こっきがたれる 『国旗が垂れる』は、尾辻克彦が1983年に中央公論社から刊行した短篇集の表題作です。NDLサーチでは、同書に『国旗が垂れる』『やめる』『湯の花』『露地裏の紙幣』『風の吹く部屋』『殴られる男』『バーバー「肌ざわり」』の7篇が収録されていることを確認できます。公開Webで詳しい内容紹介や初出誌は確認でき…
- 326 1980 コインロッカー・ベイビーズ コインロッカー・ベイビーズ 1972年夏、コインロッカーに遺棄されたキクとハシは、施設と養家を経て、それぞれ異なるかたちで母の不在と都市への怒りを抱え込む。ハシは歌声とショービジネスに、キクはアネモネや毒物ダチュラをめぐる破壊衝動に引き寄せられ、東京は欲望と暴力が増殖する異様な空間として立ち上がる。棄児、身体、都市、音の記憶を… 第3回 野間新人賞
- 327 1976 限りなく透明に近いブルー かぎりなくとうめいにちかいブルー 米軍基地の街・福生のハウスを舞台に、19歳のリュウとその仲間たちの日々を描く。ドラッグとロック、黒人兵たちとの乱痴気騒ぎ、セックスと暴力に明け暮れる若者たちの退廃を、感傷を排した即物的な描写と、ガラスの破片や雨に濡れた滑走路といった鮮烈なイメージの連なりで定着させる。荒廃の只中にいながらどこか透明な… 第75回 芥川賞
- 328 1976 ピンチランナー調書 ピンチランナーちょうしょ 大江健三郎が1976年に刊行した実験的長編。父子関係、身体、記録や調書の形式を通して、現実と幻想の境界を揺らす。障害のある子をめぐる大江の継続的主題が、メタフィクション的な構成と結びつく作品である。
- 329 1969 われらの狂気を生き延びる道を教えよ われらのきょうきをいきのびるみちをおしえよ 父と障害のある息子、狂気や暴力にさらされた若者たちをめぐる中短篇を束ねた作品集。表題作では家族の内部にある痛みと外部世界の不穏が結びつき、個人的な危機が時代の狂気をどう生き延びるかという問いへ広がる。大江が1960年代に深めた身体・父性・責任の主題を、寓話性と切迫した心理描写で展開する。
- 330 1965 玩具 がんぐ 『玩具』は、津村節子が芥川賞を受けた初期代表作です。家庭や女性の身体をめぐる感覚を、抑制された筆致で描き出し、戦後女性文学の流れの中でも重要な位置を占める作品として読まれています。 第53回 芥川賞
- 331 1964 個人的な体験 こじんてきなたいけん 脳に重い障害をもつ子の誕生に直面した青年バードが、父になることへの恐怖と逃避願望に追い詰められていく長編。酒、性、アフリカへの空想に逃げ込むバードの混乱を追いながら、私的な出来事が責任、倫理、家族の問題へ変わっていく過程を描く。滑稽さと残酷さが同居する語り口で、父性を美談にせず、引き受けることの困難…
- 332 1964 他人の顔 たにんのかお 単行本初刊は講談社、現行新潮文庫ページとNDLで確認可能。既存収録の『壁』『砂の女』を補う中核作。
- 333 1963 性的人間 せいてきにんげん 大江健三郎が性と人間存在を正面から扱った初期作品。性を単なる欲望としてではなく、身体、羞恥、孤独、社会への反抗が交差する場として描く。初期大江の挑発的な主題設定と、重くねじれた文体を読む作品である。
- 334 1962 砂の女 すなのおんな 『砂の女』は、昆虫採集に来た男が砂丘の穴の底にある家へ閉じ込められ、女とともに砂を掻き出す生活を強いられる長篇です。脱出への執着と、砂の生活に適応していく感覚が交錯し、自由とは何か、労働とは何かを不条理な寓話として問い直します。
- 335 1958 死者の奢り ししゃのおごり 大学の死体処理室でアルバイトをする若者たちを描く、初期大江の代表的な短篇。死者は畏怖の対象であると同時に、運搬され、数えられ、処理される物質として現れ、生と死の境界が事務的な労働の場に引き寄せられる。若い語り手の冷えた感覚と不安を通して、戦後の身体感覚、死への距離、社会の片隅に置かれた労働の異様さが…
- 336 1958 海と毒薬 うみとどくやく 『海と毒薬』は、戦争末期の大学病院で行われた米軍捕虜の生体解剖事件を題材に、医師や学生たちがなぜ残虐行為に加担していくのかを描く長篇です。遠藤周作が繰り返し問う、罪、良心、信仰の不在を、日本の戦争責任と結びつけて考える作品です。
- 337 1956 海人舟 かいとぶね 『海人舟』は、千葉・鴨川の海辺を背景に、漁師たちの労働と土地に根ざした生活を描く短篇です。近藤啓太郎自身の漁業体験に近い素材を、海と身体の感覚を伴うリアリズムで扱っています。都市の内面劇とは違う、海辺の共同体と労働の重さが読みどころです。 第35回 芥川賞
- 338 1956 金閣寺 きんかくじ 『金閣寺』は、1950年の金閣寺放火事件に着想を得て、吃音と自己嫌悪を抱える若い僧が美に囚われていく過程を描く長篇です。金閣の絶対的な美が主人公の現実感を侵食し、破壊衝動へ変わるまでを緊密な心理描写で追います。三島由紀夫の美意識とニヒリズムが最も鋭く結びついた戦後文学の代表作です。
- 339 1954 潮騒 しおさい 『潮騒』は、三重県の孤島を舞台に、若い漁夫と海女の恋を明るく端正に描く長篇です。古代ギリシャの牧歌的恋愛物語を思わせる構成を、日本の海辺の共同体に置き換えています。三島由紀夫作品のなかでは例外的に清明な青春小説として読まれ、自然と身体の健やかさが強く印象に残ります。
- 340 1949 仮面の告白 カメン ノ コクハク 三島由紀夫の代表的長篇。既登録の『潮騒』『金閣寺』より前の重要作として追加候補になる。
- 341 1946 暗い絵 くらいえ 『暗い絵』は、敗戦直後の文学状況の中で、戦時下に屈折した青年の内面と、思想・身体・性をめぐる不安を描いた野間宏の初期代表作です。『真空地帯』の軍隊批判へつながる、戦後文学の内面描写と社会批判の出発点として読むことができます。
- 342 1945 生きてゐる兵隊 いきてゐるへいたい 南京攻略戦に従軍した日本兵の実態を描いた戦争小説。戦場の兵士を英雄化せず、加害と疲弊のただ中に置くことで、戦争が人間の身体と倫理をどう壊すかを見つめる。発売直後に発禁処分を受けた問題作として知られ、石川達三の社会的リアリズムを代表する重要作である。