ほねをなでる

骨を撫でる

三国美千子 2021 第43回 野間新人賞 候補

紹介 About

大阪南部の旧家に生まれた五十歳のふき子を中心に、分家、婿養子、老いた親、弟、病などが絡む家族の歪みを描く表題作。『いかれころ』と南河内・旧家・血縁の設定を共有しつつ、幼い視点ではなく中年女性と親族の関係から同じ因習を描き直す。土地と血縁から逃れきれない人間のしたたかさと弱さを、身体の衰えや骨の感触に結びつける。

評価 Reception

新潮2021年2月号の編集長コメントは、三島由紀夫賞受賞後の成長を示す作品として紹介している。単行本ページの書評は、『いかれころ』の続編ではなく視点を変えた並行世界的な描き直しとして読み、土地・家族に縛られる構造を問う一冊と評価している。第43回野間文芸新人賞候補は文学賞データベースで確認できるが、主催社ページ本文では確認できなかった。

出典 Sources

受賞・候補歴 Awards

候補 第43回 野間文芸新人賞 (2021年)

三国美千子のほかの収録作 More

  1. 001 2018 いかれころ いかれころ 初出・「新潮」2018年11月号 昭和58年頃の南大阪を舞台に、四歳の奈々子の視点と後年の回想を通して、分家の暮らし、本家との格差、両親の不和、叔母の縁談を描く。河内弁の題名は「踏んだり蹴ったり」に近い不運の感覚を含み、土地と血縁の因習が幼い語りの中に濃く立ち上がる。差別や結婚規範、家父長的な親族関係を、日常会話に潜む価値判断として… 家族同調圧力ジェンダー 第50回 新潮新人賞
  2. 002 2019 青いポポの果実 あおいぽぽのかじつ 初出・「新潮」2019年12月号 三島由紀夫賞受賞後第一作として『新潮』2019年12月号に150枚で掲載された短篇。十歳の少女ナナが、自分を「僕」と呼び、母や自らの女性性への拒否感を抱えながら、関西近郊の家族と奇妙な隣人の閉ざされた世界を見つめる。思春期前の身体感覚、性への嫌悪、生へのもがきを強い口語感とともに描く。のちに作品集『… 家族一人称関西
  3. 003 2020 お面 おめん 初出・「新潮」2020年12月号 『新潮』2020年12月号の「三島由紀夫 没後五十年」特集内、「創作・私の『仮面の告白』」の一篇として掲載された短篇。三島の代表作を、没後に生まれた作家たちが自由に換骨奪胎する企画の中で、三国美千子は「お面」を寄せている。公式に確認できる紹介は企画趣旨と掲載情報が中心で、本文内容の詳細紹介は確認でき… アイデンティティメタフィクション
  4. 004 2022 霊たち れいたち 初出・「新潮」2022年5月号 『霊たち』は、『新潮』2022年5月号掲載の短篇です。語り手である「私」と息子に、遠い実家の先祖が見えるという問いを出発点に、旧家や家系の暗がりが日常へ入り込みます。血縁や記憶が現在の生活に影を落とす感覚を、マジックリアリズム的な語りで立ち上げる作品です。見えるものが本当に霊なのか、家族史の中で語り… 家族記憶寓話・幻想
  5. 005 2025 ズッキーニ病 ずっきーにびょう 初出・「新潮」2025年4月号 『ズッキーニ病』は、『新潮』2025年4月号掲載の短篇です。特定の野菜に執着する母を、父の死以前から何かが変わっていたのではないかという回想的な視線で捉えます。食卓にあるはずの身近なものが、家族の記憶や母の変化を測る奇妙なしるしに変わり、日常の中で見過ごされてきた異変が少しずつ輪郭を持ちはじめる。家… 家族母と子老い
  6. 006 2026 姥皮 うばかわ 初出・「新潮」2026年4月号 『姥皮』は、『新潮』2026年4月号掲載の創作です。女系の強い家に、大叔母あけ美さんから譲られた「皮」があるという奇譚を起点にします。「皮」は身体の一部でありながら、家に伝わるもの、受け渡されるものとして語られ、血縁と欲望の境界を曖昧にします。皮膚というもっとも個人的なものが家系の持ち物になる設定に… 身体寓話・幻想