Narrative

簡潔な文体

語り口「簡潔な文体」に分類された 549 作品。

  1. 001 2026 満ちる街 みちるまち 山本莉会 単行本・朝日新聞出版 限界集落に住む電力会社職員の徳真が、農園の土地売却をめぐる出来事に関わっていく第12回林芙美子文学賞大賞受賞作。受賞時タイトルは「満ちる街」で、掲載時には「むこうの景色は知らない」へ改題された。地方のインフラ、土地、暮らしの持続をめぐる問題を、現代的な地域小説として読ませる。 地方労働同調圧力 第12回 林芙美子賞
  2. 002 2025 記念日 きねんび 青山七恵 単行本・集英社 『記念日』は、23歳のミナイ、42歳のソメヤ、76歳の乙部さんという年齢も境遇も違う女性三人が、奇妙なルームシェアをきっかけに交わっていく長篇です。「明日から、おばあさんになってみませんか?」という提案が、若さや老い、身体のままならなさ、他者と暮らすことの違和感を動かしていく。代わり映えしない日常を… 老い身体家族
  3. 003 2025 温泉小説 おんせんしょうせつ 朝比奈あすか 単行本・光文社 『温泉小説』は、おひとり様限定ツアー、後期高齢者のドライブ旅、母の呪縛から逃れられない娘、亡き妻との記憶をたどる男など、六つの旅路を収めた連作的な作品集です。年齢も性別も境遇も違う人物たちが、人生の苦みや迷いを抱えたまま温泉地へ向かい、湯に身体をほどかれながら自分を見つめ直す。温泉ソムリエマスターで… 老い家族身体
  4. 004 2025 バックミラー バックミラー 羽田圭介 単行本・河出書房新社 『バックミラー』は、落ち目のミュージシャン、極度の無駄嫌いのM&A会社社長、樹木伐採に生活を揺さぶられる女性など、都市でままならなさを抱える人物たちを描く短篇集です。河出書房新社公式は、シニカルな笑いと冷徹な観察力で都会の人生を写す「令和の没落小説」と紹介している。後方を映す題名の通り、成功や合理性… 孤独と疎外労働アイデンティティ
  5. 005 2025 ジャスティス・マン じゃすてぃす・まん 佐藤厚志 単行本・文藝春秋 『ジャスティス・マン』は、仙台の老舗ホテルに勤続30年の初老ホテルマンが、特撮ヒーローに重ねた「正義」を暴走させていく長篇です。家庭も職もある中年男性の独りよがりな正義が、職場や周囲との軋轢を深めていく。正義という言葉の快さと危うさを、地方都市の労働現場と生活者の視点から描く作品です。 労働同調圧力暴力
  6. 006 2025 関係のないこと かんけいのないこと 上田岳弘 単行本・新潮社 『関係のないこと』は、パンデミック後の東京で、自分とは切り離してきたはずの出来事や他者の痛みが、ふいに生活へ入り込んでくる瞬間を描く作品集です。表題作では、弁護士として世間と折り合ってきた人物が、見ないようにしてきた「壁」に取り囲まれていく。五篇を通じて、情報や人間関係が過剰に広がる都市生活のなかで… 孤独と疎外労働同調圧力
  7. 007 2025 その針がさすのは そのはりがさすのは 羽田圭介 単行本・新潮社 『その針がさすのは』は、再開発が進む東京・中野に住む「僕」が、街の過去と自分の身体の出来事を結びつけていく小説です。戦前に満州国と中野が電信ケーブルでつながっていたという話、不妊治療手術、時計のイメージが重なり、日常の街が歴史の深部へ沈み込む。中野ブロードウェイをはじめとする具体的な生活圏の手触りと… 記憶身体テクノロジー
  8. 008 2025 燃ゆる海 もゆるうみ チヒロ・オオダテ 単行本・朝日新聞出版 馬を愛する女性がドバイへ渡る物語として紹介され、第11回林芙美子文学賞佳作に選ばれた作品。受賞時タイトルは「燃ゆる海」だが、雑誌掲載時には「燃ゆる馬」へ改題された。移動、動物との関係、海外の舞台が重なり、生活圏の外へ出ていく人物の熱量を読む作品として位置づけられる。 移民と越境身体孤独と疎外
  9. 009 2025 時の家 ときのいえ 鳥山まこと 初出・「群像」2025年8月号 『時の家』は、建築士が設計した一軒の家に暮らした三代の住人たちの記憶を、訪問者である青年のスケッチを通して呼び起こす作品。丸柱、天井、漆喰の壁といった細部に、住む人の感情と時間が蓄積している。家を単なる舞台ではなく記憶の容器として描き、家族と時間の継承を静かにたどる。 記憶家族芸術と表現 第47回 野間新人賞
  10. 010 2024 新しい恋愛 あたらしいれんあい 高瀬隼子 単行本・講談社 『新しい恋愛』は、「花束の夜」「お返し」「新しい恋愛」「あしたの待ち合わせ」「いくつも数える」の五篇を収める恋愛小説集。Books/JPRO掲載の講談社紹介は、ひと筋縄ではいかない五つの恋のかたちを描く作品集としている。恋愛を自明の感情としてではなく、共感、違和感、距離、期待のずれから見直すところに… 恋愛ジェンダーアイデンティティ
  11. 011 2024 バリ山行 バリさんこう 松永K三蔵 初出・群像 2024年3月号 転職して関西の建物修繕会社に入った波多は、社内の親睦登山をきっかけに六甲山に通うようになる。やがて、職人気質で社内では変人扱いされるベテラン社員・妻鹿が、整備された登山道を外れ、地図を読みながら道なき道を行く「バリ山行(バリエーションルートの登山)」を独りで続けていることを知る。会社の経営が傾き、リ… 労働孤独と疎外身体 第171回 芥川賞
  12. 012 2024 僕たちの保存 ぼくたちのほぞん 長嶋有 単行本・文藝春秋 『僕たちの保存』は、語り手のゲンさん、年上の武上さん、引きこもりの甥シンスケ、人気漫画家の亀谷さんらが、新幹線、自転車、バス、テスラを乗り継いで旅に出るロードノベル。震災被害者の形見であるMSXパソコンが、過去と現在、記憶と情報の保存をつないでいく。サブカルチャーとパソコン以後の時間を背景に、残るも… 記憶テクノロジー災害
  13. 013 2024 カメオ かめお 松永K三蔵 初出・群像 2021年7月号 『カメオ』は、本社命令で期日までに倉庫を建てなければならない会社員の前に、犬を連れた隣地の男・カメオが立ちはだかるデビュー作。職場の命令、土地、期限、隣人との交渉が、現実的な仕事の話でありながら不条理な可笑しみを帯びて進む。労働の現場にある理不尽さと、人がどうにも動かせない他者の存在を、乾いたユーモ… 労働孤独と疎外同調圧力
  14. 014 2024 ある日の、あのタクシー あるひのあのたくしー 広小路尚祈 単行本・桜山社 『ある日の、あのタクシー』は、運転手と乗客の一期一会の出会いを通して町の姿を描く、12編からなるタクシー小説集。車内という短い時間と閉じた空間に、乗る人の生活、職業、孤独、偶然の会話が交差する。タクシー運転手経験を持つ著者の経歴も重なり、労働の現場から都市を見つめる読み味がある。 労働孤独と疎外記憶
  15. 015 2024 め生える めばえる 高瀬隼子 単行本・U-NEXT 髪の毛が根こそぎ抜ける感染症によって、中高生以下を除く大人がみな髪を失った世界を描く中編。薄毛を気にしてきた真智加は開放感を覚える一方、幼少期に髪を切られた高校生・琢磨は恋人と訪れた占い師の言葉をきっかけに別の悩みに直面する。外見の差異が一見平等化された社会を通して、身体へのまなざし、コンプレックス… 身体アイデンティティ青春
  16. 016 2024 ナチュラルボーンチキン ナチュラルボーンチキン 金原ひとみ 単行本・河出書房新社 45歳で一人暮らしの事務職・浜野文乃は、仕事、動画、ご飯という反復の生活を守ってきた。上司の指示で、捻挫を理由に在宅勤務を続ける若い編集者・平木直理の部屋を訪ねたことから、ホストクラブ通いの痕跡や奔放な価値観に触れ、忘れかけていた自分の欲望と向き合い始める。職場小説の軽さと中年の再生譚を重ね、ルーテ… 労働孤独と疎外アイデンティティ
  17. 017 2024 セルフィの死 セルフィのし 本谷有希子 単行本・新潮社 フォロワー獲得に執着するミクルを主人公に、承認欲求とSNSが身体感覚まで侵食する時代を描く長篇。自撮りを繰り返すと顔面が変容し、無人回転寿司やフォロワー急増といった奇妙な出来事が連鎖していく。日常的なスマホ文化を誇張された悪夢へずらし、笑いと不気味さのなかで「見られる私」の依存と疲弊をあぶり出す。 テクノロジーアイデンティティ身体
  18. 018 2024 死神 しにがみ 田中慎弥 単行本・朝日新聞出版 うまくいかない作家の人生の節目ごとに、死神が現れるという設定の長編。語り手が中学二年のときに初めて出会った「こいつ」は、長く書くことのできなかった存在として回想され、死や家族の記憶と結びついていく。死を擬人化した幻想性を使いながらも、作家の生活と記憶に根ざした語りで、ユーモアと鋭さを交えて生の輪郭を… 死と喪失家族芸術と表現
  19. 019 2024 常盤団地の魔人 ときわだんちのまじん 佐藤厚志 単行本・新潮社 常盤団地の三号棟に住む小学三年生の今野蓮は、喘息を抱え、学校ではまだ友人関係をつくりきれずにいる。団地に越してきた同い年のシンイチ、乱暴だが求心力をもつ年上の少年たち、老朽化した団地の池や空き地をめぐる出来事のなかで、蓮は子どもだけの社会にある憧れ、序列、暴力を少しずつ知っていく。冒険譚の軽やかさを… 青春同調圧力暴力
  20. 020 2024 森は盗む もりはぬすむ 大原鉄平 単行本・朝日新聞出版 第10回林芙美子文学賞大賞受賞作で、『八月のセノーテ』に収録された小原鉄平の作品。題名の通り、森という場所が単なる背景ではなく、人間の暮らしや記憶を侵食し、奪い返していくような感覚を帯びる。公開資料では受賞・収録情報が中心のため、紹介文は確認できた書誌と題名・収録文脈に基づく控えめな案内にとどめる。 地方記憶孤独と疎外 第10回 林芙美子賞
  21. 021 2023 あなたの燃える左手で あなたのもえるひだりてで 朝比奈秋 単行本・河出書房新社 ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサトは、目覚めると自分の身体に見知らぬ白人の手がつながれていることを知る。身体の一部が他者のものになる違和感から、国境、民族、所有、故郷の喪失へと思考が広がっていく中篇である。医師でもある作者の冷静な筆致が、身体の境界と自己同一性の揺らぎを切実な問題として立… 身体アイデンティティ戦争 第45回 野間新人賞
  22. 022 2023 ミドルノート みどるのーと 朝比奈あすか 単行本・実業之日本社 食品会社の同期でワーキングマザーの菜々と愛美、アロマデザイナーに転身した麻衣、同世代の派遣社員・彩子という四人のアラサー女性を描く仕事小説。新型肺炎の流行で社会が揺れるなか、働き方、結婚、出産、昇進、転職によって、それぞれの道は同じスタート地点から大きく分かれていく。香水の「ミドルノート」を人生の中… 労働家族ジェンダー
  23. 023 2023 あわいに開かれて あわいにひらかれて 小野正嗣 単行本・毎日新聞出版 『あわいに開かれて』は、小野正嗣が「記憶」をめぐって編んだ約40編の掌編小説集である。短い断章の連なりは、日常のなつかしさと不可思議さのあいだを行き来し、はっきりした筋よりも、ふと開く時間や感覚の隙間を読ませる。『踏み跡にたたずんで』に続く作品集として、小野作品の記憶への関心を、さらに小さな光景の集… 記憶言葉と言語孤独と疎外
  24. 024 2023 浮遊 ふゆう 遠野遥 単行本・河出書房新社 『浮遊』は、年の離れたITベンチャーCEOの男と暮らす十六歳のふうかを中心に、日常とホラーゲームの感覚が浸み合っていく長編である。男の元恋人を象ったマネキンの下で夜ごとゲームの悪霊から逃げる設定が、現実の人間関係の不気味さと重なり、身体感覚と恐怖の境界を揺らす。遠野遥らしい乾いた文体で、依存、欲望… 身体テクノロジー
  25. 025 2023 ハジケテマザレ ハジケテマザレ 金原ひとみ 単行本・講談社 コロナ禍で派遣切りにあった「私」が、生活のためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」で働き始める作品集。YouTuberの恋人をめぐる騒動、クラブでの爆踊り、激辛フェスでのプロポーズ演出など、バイト仲間との出来事が愉快さと切実さを帯びて連なる。「普通」をめぐる言葉を軸に、労働、居場所、混ざり合う… 労働同調圧力孤独と疎外
  26. 026 2023 いい子のあくび いいこのあくび 高瀬隼子 単行本・集英社 表題作は、公私ともに「いい子」でいる語り手が、歩きスマホの人をよけ続けるような小さな譲歩の積み重ねに「割りに合わなさ」を覚えるところから始まる。併録作「末永い幸せ」では結婚式の形式への違和感を通じて、祝福、ジェンダー、幸福の型が問い直される。社会に適応しているように見える人々の内側にあるざらつきを… 同調圧力ジェンダーアイデンティティ
  27. 027 2023 神と黒蟹県 かみとくろがにけん 絲山秋子 単行本・文藝春秋 黒蟹山や黒蟹城、紫苑市と灯籠寺市を擁する架空の県を舞台に、土地に生きる者、赴任してきた者、帰郷した者、地元を訪れた者たちの営みを描く連作小説集。現実のどこかにありそうな地方都市の手触りに、半知半能の神が降臨するようなわずかな神秘が混じる。群像劇として土地の記憶や住民の距離感を浮かび上がらせ、絲山秋子… 信仰記憶孤独と疎外
  28. 028 2023 観音様の環 李琴峰 単行本・U-NEXT 『観音様の環』は、瀬戸内の島から東京へ逃れるように出たマヤが、恋人ジェシカとの結婚を機に台湾へ渡り、封じてきた家族の記憶と向き合う中編である。田舎の排他的な空気、暴力的な父、母の期待と支配からの逃走が、台湾での年夜飯と母の故郷への訪問を通して再び立ち上がる。日本語と中国語、島と東京と台湾をまたぐ移動… 家族移民と越境ジェンダー
  29. 029 2023 夜のだれかの岸辺 よるのだれかのきしべ 木村紅美 単行本・講談社 十九歳の春、茜は八十九歳のソヨミから毎晩の添い寝と朝食を頼まれ、家計を助けるためにその仕事を受ける。血縁でも介護契約でもない奇妙な近さのなかで、若さと老い、孤独、生活の手触りが交わっていく。講談社公式の本文抜粋が示すように、語りは茜の現実感に根ざし、働くことと誰かのそばにいることの境目を静かに問う作… 老いケアと介護労働
  30. 030 2023 れつ 中村文則 単行本・講談社 ある動物の研究者だったはずの男は、いつの間にか先も最後尾も見えない奇妙な列に並んでいる。誰もがなぜ並ぶのか分からないまま、競い合い、比べ合う社会の圧力が寓話的な状況として立ち上がる。現実の制度や欲望を抽象化した「列」から出られるのかを問い、簡潔で不穏な語りで現代の生の息苦しさを照らす作品である。 同調圧力アイデンティティ孤独と疎外
  31. 031 2023 植物少女 しょくぶつしょうじょ 朝比奈秋 単行本・朝日新聞出版 『植物少女』は、出産時の脳出血で植物状態になった母の病室へ通う美桜の成長を通して、母と娘の関係がどう変わるかを描く長編である。母が「意思のある母」として応答できない状況を、単純な喪失や献身に閉じず、身体、ケア、親子関係の時間として見つめる。現役医師でもある著者の視点が、医療的な状況と家族の感情を乾い… 母と子身体ケアと介護 第36回 三島賞
  32. 032 2023 トゥデイズ とぅでいず 長嶋有 単行本・講談社 子育てのため郊外の大規模マンション「Rグランハイツ」に越してきた美春と恵示、五歳の息子コースケの一家を中心に、管理組合、リモートワーク、近隣住民との関わりが描かれる。大事件ではなく、住むこと、育てること、今日を続けることの小さな揺れを積み重ねる。日常の可笑しさと共同住宅の距離感を、長嶋有らしい軽やか… 家族父と子労働
  33. 033 2023 共に明るい ともにあかるい 井戸川射子 初出・群像 2023年1月号 『共に明るい』は、早朝のバス、野鳥園、恋人の家、島への修学旅行、工場の作業部屋など、異なる場所で人が抱える痛みや不安に触れる五篇の小説集である。語られない心の内がふと漏れ出す瞬間をすくい、「他人」がつながりたい「他者」へ変わる手つきを静かに描く。『この世の喜びよ』で芥川賞を受けた後の第一作として、井… 孤独と疎外家族労働
  34. 034 2023 図書館のお夜食 としょかんのおやしょく 原田ひ香 単行本・ポプラ社 『図書館のお夜食』は、東北の書店勤務がうまくいかず仕事を辞めようとしていた樋口乙葉が、東京郊外の「夜の図書館」で働き始める長編である。そこは夕方七時から深夜まで開く特殊な図書館で、亡くなった作家の蔵書を集めた本の博物館のような場所でもある。予想外の出来事と夜食を通して、本、食、仕事、ほどよい距離で語… 労働芸術と表現
  35. 035 2023 無敵の犬の夜 むてきの いぬの よる 小泉綾子 初出・「文藝」2023年冬季号 『無敵の犬の夜』は、北九州の片田舎で学校へ行かず、不良グループと過ごす中学生・界を描く長編。幼少期に右手の指を失った界は、地元で出会った男・橘に心酔し、彼のために単身東京へ向かう。方言と虚勢を帯びた熱のある語りが、思春期の暴走、尊敬されたい欲望、世界とつながれない孤独を押し出す。 青春暴力身体 第60回 文藝賞
  36. 036 2022 はぐれんぼう はぐれんぼう 青山七恵 単行本・講談社 『はぐれんぼう』は、あさりクリーニング店で働く優子が、長く引き取りに来られない衣服「はぐれんぼちゃん」を持ち帰ったことから始まる長編である。翌朝、衣服が体を覆うようにまとわりつき、優子は持ち主たちを訪ねるが、服は次々に受け取りを拒まれる。トレンチコート姿のユザさんに導かれながら帰るべき場所を探す道行… 孤独と疎外労働アイデンティティ
  37. 037 2022 荒地の家族 あれちのかぞく 佐藤厚志 初出・新潮 2022年12月号 宮城県亘理町の植木職人・坂井祐治、四十歳。あの「災厄」の二年後に妻を病で亡くし、再婚した相手も流産の後に家を出て、いまは老いた母と中学生の息子と暮らしている。津波という言葉を正面に掲げず「災厄」「海の膨張」と呼びながら、荒れた海辺の土地で黙々と木に向かう男の日常を描く。職を転々とする旧友や没落してい… 災害死と喪失家族 第168回 芥川賞
  38. 038 2022 ななみの海 ななみのうみ 朝比奈あすか 単行本・双葉社 『ななみの海』は、児童養護施設で暮らす高校生ななみが、医学部進学を目指しながら自分の進路を選び取っていく青春小説である。祖母の「馬鹿にされるな」という言葉を胸に、受験勉強、ダンス部最後の発表会、初めての恋、進学費用のためのアルバイトが重なる。十代の心許なさと揺らぎをすくい、支援や家庭環境に規定される… 青春家族貧困
  39. 039 2022 デクリネゾン デクリネゾン 金原ひとみ 単行本・ホーム社 二度の離婚を経て中学生の娘・理子と暮らす小説家の志絵が、年下の大学生・蒼葉との同居を娘に告げるところから、母であることと恋愛することの緊張が露わになる長篇。仕事、家庭、恋愛のすべてを求める女性たちと、その周囲に生まれる家族的なつながりを描く。母子、ステップファミリー、欲望、生活の配分をめぐる会話が… 家族恋愛母と子
  40. 040 2022 青木きららのちょっとした冒険 あおききらら のちょっとしたぼうけん 藤野可織 単行本・講談社 「きらら」という名を手がかりに、人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、若いアイドルの死を願う会社員など、八つの人生を照らす連作的な作品集。無責任な暴力、すれ違う意識、他者への思い込みが、日常の少しずれた場面から立ち上がる。誰かであり誰でもない存在として生きる人々を… 暴力アイデンティティジェンダー
  41. 041 2022 古本食堂 ふるほんしょくどう 原田ひ香 単行本・角川春樹事務所 『古本食堂』は、神保町の小さな古書店を舞台に、本と食べ物を介して人がつながり直していく長篇。国文科の学生・美希喜は、急逝した大叔父の古書店を継ぐため上京した珊瑚を手伝ううちに、古本を探す客、町の食堂、店に残された記憶に触れていく。古書の具体的な手触りとカレー、中華、寿司などの食の描写が重なり、進路の… 記憶家族
  42. 042 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 川上未映子 単行本・新潮社 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が… 孤独と疎外身体青春
  43. 043 2022 嫌いなら呼ぶなよ きらいならよぶなよ 綿矢りさ 単行本・河出書房新社 『嫌いなら呼ぶなよ』は、表題作を含む四篇で、有毒に暴走するコミュニケーションと、その遮断を描く短篇集である。妻の親友宅に招かれた「僕」が突然ミニ裁判にかけられる表題作をはじめ、美容整形、YouTuberへの粘着的なコメント、深夜まで続く助言など、現代的なつながりの圧力がブラックユーモアを帯びて展開す… 同調圧力言葉と言語暴力
  44. 044 2022 教育 きょういく 遠野遥 単行本・河出書房新社 成績向上のために性的な規律が制度化された学校を舞台に、生徒たちは管理された欲望と競争のなかで「正しさ」に従っていく。語り手は異様なルールを淡々と受け入れ、読者は倫理の壊れた環境が日常として語られる不気味さに引きずり込まれる。学園小説の形を借りながら、教育、身体、成績主義、同調の圧力が人間の判断をどう… 同調圧力身体
  45. 045 2022 ミーツ・ザ・ワールド ミーツ・ザ・ワールド 金原ひとみ 単行本・集英社 焼肉擬人化漫画を愛する腐女子の会社員・由嘉里は、合コン帰りに酔いつぶれた新宿歌舞伎町で、キャバ嬢のライと出会う。ライの「この世界から消えなきゃいけない」という言葉をきっかけに共同生活が始まり、由嘉里は推しへの愛、三次元の恋、結婚や出産への思い込みを揺さぶられていく。対照的な二人の会話と歌舞伎町の人間… 恋愛孤独と疎外ジェンダー
  46. 046 2022 プリテンド・ファーザー ぷりてんど・ふぁーざー 白岩玄 単行本・集英社 シングルファーザーとして四歳の娘を育てる恭平と、シッターとして働きながら一歳半の息子を育てる章吾が、互いの事情から四人で暮らし始める物語。高校の同級生だった二人の共同生活は、家事・育児・仕事の負担を分かち合う試みであると同時に、ケアとキャリアをめぐるひずみを可視化していく。血縁や恋愛関係だけではない… 父と子ケアと介護労働
  47. 047 2022 憐憫 れんびん 島本理生 単行本・朝日新聞出版 『憐憫』は、かつて子役だった沙良が、芸能界で伸び悩み、自分の正体を知らない相手を求めるところから始まる小説。酒場で出会った柏木に抱く感情は、愛しさであり憐憫でもあり、恋愛と呼び切れない関係の輪郭を曖昧にしていく。見られる側として生きてきた女性の孤独、承認、満たされなさを、短く張りつめた語りで追う。 恋愛孤独と疎外アイデンティティ
  48. 048 2022 老人ホテル ろうじんほてる 原田ひ香 単行本・光文社 埼玉県の大家族で育った日村天使は、テレビに出る大家族の一員だったが、16歳で家を出て大宮のキャバクラで働く。生活保護を受けながら流されるように暮らしていた彼女は、かつて店で出会ったビルのオーナー・綾小路光子と、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルで再会する。光子の投資や生活の指南を通じて、天使… 貧困老い孤独と疎外
  49. 049 2022 財布は踊る さいふはおどる 原田ひ香 単行本・新潮社 専業主婦の葉月みづほは、ある夢のために生活費を切り詰め、毎月二万円を貯金してきた。努力の末に夢を実現した直後、夫に二百万円以上の借金があることが発覚し、彼女の生活は大きく動き始める。ひとつの財布をめぐる六話を通じて、節約、借金、投資、奨学金、老後資金など、「今より少し、お金がほしい」人々の切実さと再… 貧困家族労働
  50. 050 2022 信仰 しんこう 村田沙耶香 単行本・文藝春秋 表題作は、「現実を生きろ」を口癖にする永岡が、同級生からカルト商法を始めようと誘われる短篇。現実こそ正しいと信じる態度そのものを信仰として照らし返し、信じることの危うさと切実さを問う。『生存』『書かなかった小説』『最後の展覧会』など短篇とエッセイを収め、日常の常識が少しずつ異形化する村田作品らしい読… 信仰同調圧力アイデンティティ
  51. 051 2022 とんこつQ&A とんこつきゅーあんどえー 今村夏子 単行本・講談社 中華料理店「とんこつ」で働く「わたし」は、挨拶を覚えて居場所を得たかに見えるが、新人の「あの女」によって均衡を崩されていく。表題作ほか「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」を収録し、普通の可笑しみの奥から人間の取り返しのつかない瞬間が顔を出す。短く平明な語りが、善意や純粋さの怖さをじわじわ見せる作… 労働孤独と疎外同調圧力
  52. 052 2022 私の盲端 わたしのもうたん 朝比奈秋 単行本・朝日新聞出版 表題作は、大学生活や飲食店のアルバイトを楽しんでいた涼子が、人工肛門とともに生きることになり、自分の身体の変化と周囲の視線に向き合う物語である。医師でもある作者が、病や障害を医学的説明だけに閉じず、身体の境界、恥、欲望、生活の手触りとして描く。併録の「塩の道」は第7回林芙美子文学賞受賞作で、朝比奈秋… 身体障害
  53. 053 2021 翼の翼 つばさのつばさ 朝比奈あすか 単行本・光文社 『翼の翼』は、小学二年生の息子・翼が進学塾の全国テストをきっかけに中学受験へ向かい、母・円佳が塾、ライバル、保護者、家族の期待に巻き込まれていく長篇。子を思う気持ちが、親のプライドや世間の噂、家族内の力学と結びつき、愛情と支配の境目が見えにくくなる過程を描く。中学受験という制度の熱を通じて、家族の内… 家族母と子同調圧力
  54. 054 2021 オーラの発表会 オーラのはっぴょうかい 綿矢りさ 単行本・集英社 『オーラの発表会』は、大学一年生の海松子が、人を好きになる気持ちや他人の感情をうまく読めないまま、友情と恋愛未満の関係に巻き込まれていく長篇。凧揚げを趣味にし、周囲に脳内であだ名をつける彼女の少しずれた観察が、幼なじみや社会人男性からの接近を通じて揺さぶられる。綿矢りさらしい軽やかな口語感とユーモア… 恋愛孤独と疎外青春
  55. 055 2021 カード師 かーどし 中村文則 単行本・朝日新聞出版 『カード師』は、占いを信じていない占い師であり違法カジノのディーラーでもある「僕」が、ある組織から冷酷な資産家の顧問占い師になるよう命じられる長篇。カード、占い、ギャンブルをめぐる偶然と操作の感覚が、個人では抗いがたい理不尽な力と結びついていく。語りはサスペンスの推進力を持ちながら、不確かな未来を知… 暴力信仰労働
  56. 056 2021 母親からの小包はなぜこんなにダサいのか ははおやからのこづつみはなぜこんなにださいのか 原田ひ香 単行本・中央公論新社 『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』は、実家から届く小包をめぐって、昭和・平成・令和をまたぐ家族の思いを描く連作集。業者から買った野菜を実家からの荷物と偽る女性、父が受け取っていた小包の謎、母からの最後の荷物など、物の中にしまわれた気遣い、ずれ、寂しさが開封されていく。タイトルの軽さに対して… 家族母と子記憶
  57. 057 2021 北斗星に乗って ほくとせいにのって 広小路尚祈 単行本・桜山社 『北斗星に乗って』は、上野発の寝台特急「北斗星」を軸にした8編の短篇小説集。列車という移動空間が、乗客の記憶や人生の分岐、もう一つの世界へ向かうような感覚をつないでいく。旅情だけでなく、日常から少し離れた場所で自分の過去や孤独に触れる、静かな幻想味を持つ作品集である。 記憶孤独と疎外死と喪失
  58. 058 2021 あなたに安全な人 あなたにあんぜんなひと 木村紅美 単行本・河出書房新社 3.11直前の少年の死をめぐる出来事に苛まれる元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中の事故を抱える便利屋の忍が、「感染者第一号」を誰もが恐れる土地で出会う。二人は人を傷つけ、傷つけられる社会のなかで、孤独で安全な逃亡生活のような関係を築いていく。東日本大震災、沖縄、感染症下の共同体の視線を交差… 孤独と疎外災害同調圧力
  59. 059 2021 ここはとても速い川 ここはとてもはやいかわ 井戸川射子 単行本・講談社 児童養護施設で暮らす小学五年生の集と、園での年下の親友・ひじりの日々を描く表題作を中心にした小説集。近くの淀川にいる亀を見に行く楽しみなど、子どもたちの時間が、温もりを含んだ繊細な言葉でたどられる。詩人として出発した著者の初めての小説集で、表題作と小説第一作「膨張」を収録する。 青春家族ケアと介護 第43回 野間新人賞
  60. 060 2021 滅私 めっし 羽田圭介 単行本・新潮社 必要最低限の物だけで暮らすライターの男が、ミニマリストの同志が集うサイト運営と投資で生計を立てながら、自由でスマートな生活を手に入れている。物だけでなく人間関係にも淡泊だった彼の前に、昔の所業を知る人物が現れ、捨てたはずの過去が生活に影を落とす。所有を減らすことの快楽と、過去や欲望は簡単には消せない… アイデンティティ労働記憶
  61. 061 2021 ミトンとふびん ミトンとふびん 吉本ばなな 単行本・新潮社 大切な人の死や癒えない喪失を抱えながら生きる人々を、ヘルシンキ、ローマ、台北など複数の土地で描く全6編の短篇集。旅の風景は観光的な背景ではなく、残された人が小さな光や手触りに支えられて日々を続けるための場所として置かれている。吉本ばななが長く書き続けてきた喪失、時間、愛の主題を、静かでやわらかな語り… 死と喪失恋愛記憶 第58回 谷崎賞
  62. 062 2021 水たまりで息をする みずたまりでいきをする 高瀬隼子 単行本・集英社 ある日、衣津実は夫が風呂に入らなくなったことに気づく。夫は水が臭く、体につくと痒くなると言って入浴を拒み、やがて雨に濡れに外へ出るようになり、職場で体臭が問題にされる。退職と移住を経て、夫が川で水浴びをする生活へ向かう過程を、夫婦の問題として押し返される妻の視点から描き、身体、清潔、共同生活の境界を… 夫婦身体
  63. 063 2021 Phantom ファントム 羽田圭介 単行本・文藝春秋 外資系食料品メーカーで働く元地下アイドルの華美は、生活費を切り詰めて株式投資を続け、給与収入と同じ配当を生む「分身」の構築を目指している。恋人の直幸は、使われない金を軽んじながら、ある人物が率いるオンラインコミュニティにのめり込み、物々交換や集団生活の思想へ傾いていく。投資、オンライン共同体、恋愛の… 労働テクノロジー恋愛
  64. 064 2021 ルーティーンズ るーてぃーんず 長嶋有 単行本・講談社 2020年春の緊急事態宣言下、保育園が休園した二歳の娘を、作家の夫と漫画家の妻が交替で見ながら過ごす日々を描く家族小説。社会が止まったように見える時間の中でも、子どもの成長や生活の反復は続いていく。短篇「願いのコリブリ、ロレックス」と表題作を収め、非常時の日常を長嶋有らしい軽やかな観察とユーモアで描… 家族ケアと介護労働
  65. 065 2021 生を祝う せいをいわう 李琴峰 単行本・朝日新聞出版 子どもを産むためには、その子自身から「この世界に生まれてきたい」という同意を得なければならない社会を舞台にした長編。出生を祝福するはずの制度が、親になること、同意、身体、存在の選択をめぐる問いを鋭く浮かび上がらせる。芥川賞受賞作『彼岸花が咲く島』の後に刊行された作品で、現実の倫理問題を架空制度として… 身体家族アイデンティティ
  66. 066 2021 旅のない たびのない 上田岳弘 単行本・講談社 コロナ禍中の日々を映す四篇からなる、上田岳弘初の短篇集。恋人とのホテル、息子との散歩、甥を預かる夏、出張先の車中といった限られた場面を通して、移動が制限された時代の記憶、会話、自己認識を描く。大きな事件よりも、日常の小さな違和感や言葉のずれから世界の変化を浮かび上がらせる作品集。 記憶孤独と疎外家族 第46回 川端賞
  67. 067 2021 アンソーシャル ディスタンス アンソーシャル ディスタンス 金原ひとみ 単行本・新潮社 パンデミックに閉塞する社会で、生への希望だったバンドのライブ中止をきっかけに心中旅行へ向かう若い男女を描く表題作を含む作品集。ほかに、高アルコール飲料、整形、身体、インターネット上の視線など、追い詰められた人々の臨界点を描く作品を収める。コロナ禍の距離感を単なる時事性に閉じず、依存、疎外、自己破壊の… 孤独と疎外死と喪失身体 第57回 谷崎賞
  68. 068 2021 象の皮膚 ぞうのひふ 佐藤厚志 単行本・新潮社 幼少時から重度のアトピー性皮膚炎に苦しんできた五十嵐凜は、仙台の書店で契約社員として働きはじめる。肌を隠し、他人と距離を取ることで日々をやり過ごす凜に、今度は接客業の理不尽な客対応や、震災後に本を求める人々の姿が重なっていく。子どもの頃の記憶と現在の職場を往還しながら、身体に刻まれた痛み、労働の疲弊… 身体労働
  69. 069 2021 塩の道 しおのみち 朝比奈秋 単行本・朝日新聞出版 第7回林芙美子文学賞大賞受賞作で、のちに朝比奈秋のデビュー単行本『私の盲端』に収録された作品。医療や身体をめぐる著者の関心に連なる短篇として、移動や土地の感覚を手がかりに、人が抱える見えにくい欠落を描く。受賞作としての書誌は確認できるが、作品本文に踏み込んだ公開資料はまだ限られる。 身体地方孤独と疎外 第7回 林芙美子賞
  70. 070 2021 悪い音楽 わるいおんがく 九段理江 初出・「文學界」2021年5月号 『悪い音楽』は、音楽家の父を持ち、卓越した才能を持ちながら他者への共感に乏しい中学校の音楽教師・三井ソナタを描く。彼女の平穏な日常は、音楽を熱烈に愛しながら耳に障害を抱える生徒との出会いで崩れていく。芸術的才能、感受性、教育現場の関係性をブラックユーモアで問う、九段理江のデビュー作である。 芸術と表現同調圧力言葉と言語 第126回 文學界新人賞
  71. 071 2020 2020年の恋人たち にせんにじゅうねんのこいびとたち 島本理生 単行本・中央公論新社 母の急死によりワインバーを継ぐかどうか選択を迫られた前原葵を中心に、同棲相手、常連客、店を手伝う人々、新たな出会いが交錯する長篇。恋愛の高揚だけでなく、会話の途切れ、依存、別れ、仕事として店を引き受けることを描き、葵が何を選び何を手放すかを追う。直木賞受賞後の長篇第一作として、喪失後の生活再建と関係… 恋愛死と喪失労働
  72. 072 2020 みがわり みがわり 青山七恵 単行本・幻冬舎 『みがわり』は、新人賞を受けながら本を出せずにいる作家・律が、自分と瓜二つだった亡き女性の伝記執筆を依頼される長編。取材の過程で、姉妹の確執や家族の秘密、依頼そのものの不穏さが浮かび、律は他人の人生を書こうとするほど自分自身の物語も揺さぶられていく。伝記を書くことと書かれることの関係を通じて、自己像… アイデンティティ家族記憶
  73. 073 2020 fishy フィッシー 金原ひとみ 単行本・朝日新聞出版 三十代の女性三人が、それぞれの恋愛、結婚、仕事、女友だちとの距離を抱えながら、言い切れない本音をにじませていく連作長篇。男に対する屈託や違和感を、単純な対立ではなく、関係性が少しずつ更新される過程として描く。会話と内面の揺れを重ね、友情、欲望、自立の輪郭が変わっていく読み味がある。 恋愛ジェンダー労働
  74. 074 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 小野正嗣 単行本・毎日新聞出版 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶… 記憶戦争死と喪失
  75. 075 2020 破局 はきょく 遠野遥 初出・文藝 2020年夏季号 主人公の陽介は、筋トレと公務員試験の勉強に励む大学4年生。母校のラグビー部でコーチも務め、政治家を目指す恋人・麻衣子がいる。やがて新入生の灯に好意を寄せられ、関係を持つようになる。陽介は常に「正しさ」やマナー、他人にどう見られるかを基準に行動するが、その整いすぎた思考と行動のあいだには、どこか空洞が… 恋愛身体 第163回 芥川賞
  76. 076 2020 一橋桐子(76)の犯罪日記 ひとつばしとうこのはんざいにっき 原田ひ香 単行本・徳間書店 76歳で一人暮らしの一橋桐子は、親友トモを亡くし、年金と清掃パートだけでは先行きの見えない老後に追い詰められる。孤独死で人に迷惑をかけるくらいなら刑務所に入ればよいのではないかと考え、万引、偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人と、より長く収監される方法を真剣に調べ始める。犯罪計画の滑稽さの奥に、貧困、老い… 老い貧困孤独と疎外
  77. 077 2020 星月夜 ほしつきよる 李琴峰 単行本・集英社 日本の大学で日本語を教える台湾出身の柳凝月と、新疆ウイグル自治区出身で大学院進学を目指す玉麗吐孜の恋を描く長篇。二人は日本語という共通語で近づくが、家族、国家、在留資格、セクシュアリティをめぐる負荷は同じ形では共有できない。親密さの甘さよりも、相手を分かっていると思うことの危うさを静かな語りで照らす… 恋愛移民と越境ジェンダー
  78. 078 2020 百年と一日 ひゃくねんといちにち 柴崎友香 単行本・筑摩書房 人や店、駅、家、空港、家族の記憶が、数ページの掌編の中で十年、二十年、百年の時間へ伸びていく短篇集。個々の人物の大事件ではなく、場所に積み重なる時間、誰かが去り誰かが来る反復、忘れられていく出来事の痕跡を描く。長いタイトルと淡々とした語りが、日常の一瞬を歴史の厚みへ接続する。 記憶家族死と喪失
  79. 079 2020 一人称単数 いちにんしょうたんすう 村上春樹 単行本・文藝春秋 村上春樹の六年ぶりの短篇小説集で、「石のまくらに」から書き下ろしの表題作まで八篇を収める。音楽、野球、過去の記憶、奇妙な遭遇をめぐり、一人称の語りが自分自身の輪郭を少しずつずらしていく。私、僕、あなたという呼び名の揺れを通して、回想と虚構が交錯する村上春樹らしい短篇世界を読むことができる。 記憶芸術と表現アイデンティティ
  80. 080 2020 今も未来も変わらない いまもみらいもかわらない 長嶋有 単行本・中央公論新社 『今も未来も変わらない』は、40代のシングルマザーで小説家の星子を主人公にした長編。大学受験を控える娘を見守り、親友とカラオケやスーパー銭湯を楽しみ、元夫や20代の男性との関係にも揺れながら、星子の日常は静かににぎやかに続いていく。大きな事件よりも、娯楽、恋、親子、仕事の小さな重なりを通じて、大人が… 家族恋愛労働
  81. 081 2020 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 高瀬隼子 初出・すばる 2019年11月号 間橋薫は卵巣の手術を経て、恋人の郁也とも性交渉から距離を置いて暮らしている。そこへ郁也の子を妊娠したという女性が現れ、子どもを育ててくれないかと唐突に持ちかける。愛をどう証明するのか、子どもを産むことと持つことは何を意味するのかを、薫の身体感覚と故郷の家族への思いを通じて問うデビュー作。 身体家族 第43回 すばる文学賞
  82. 082 2020 かきあげ家族 かきあげかぞく 中島たい子 単行本・光文社 コメディ映画監督の中井戸八郎は、老境に差しかかりながらスランプの渦中にいる。長男の失職、長女の離婚、引きこもる次男によって家族が再び一つの家に集まるなか、名監督の遺稿をめぐる騒動が起き、八郎は家族の一人ひとりと向き合わざるをえなくなる。不安を拾い集めてしまう人間の弱さを、家族喜劇の形で描く。 家族老い芸術と表現
  83. 083 2020 完全犯罪の恋 かんぜんはんざいのこい 田中慎弥 単行本・講談社 『完全犯罪の恋』は、芥川賞受賞後も地味な暮らしを送る四十男の小説家「田中」が、新宿で初恋の相手の娘に声をかけられるところから始まる長編。物語は現在の東京と、下関の高校時代に読書を通じて近づいた才女・真木山緑との記憶を往還し、恋の独りよがりと罪悪感を掘り下げる。作家本人を思わせる語り手を置き、私小説的… 恋愛記憶芸術と表現
  84. 084 2020 木になった亜沙 きになったあさ 今村夏子 単行本・文藝春秋 『木になった亜沙』は、表題作「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の三篇を収めた作品集。誰かに食べ物を差し出したい少女が木へ、さらに割り箸へと転じる表題作をはじめ、身体の境界や役割が奇妙にずれた状況が、純粋な願いと不穏さを同時に帯びて進む。童話のような単純さと残酷さを併せ持つ語りで… 身体孤独と疎外
  85. 085 2020 口福のレシピ こうふくのれしぴ 原田ひ香 単行本・小学館 『口福のレシピ』は、フリーのSE兼料理研究家として働く留希子と、昭和二年の品川料理教習所で働くしずえの時間を行き来する家族小説。留希子は老舗料理学校を営む家の後継者であることに抵抗を抱きながらも、SNS発信をきっかけに料理研究家として認知されていく。簡単でおいしい献立企画をめぐる問題を通じて、家庭の… 家族労働
  86. 086 2020 丸の内魔法少女ミラクリーナ まるのうちまほうしょうじょミラクリーナ 村田沙耶香 単行本・KADOKAWA 表題作『丸の内魔法少女ミラクリーナ』に、『秘密の花園』『無性教室』『変容』を加えた四篇の短篇集。魔法少女、秘密の領域、無性化、変容といった設定を通じて、社会が当然視する性別、年齢、役割、自己像をずらして見せる。村田沙耶香らしい寓話的な発想と日常の手ざわりが同居し、軽やかさの奥に規範への違和感が残る。 アイデンティティジェンダー
  87. 087 2020 肉体のジェンダーを笑うな にくたいのじぇんだーをわらうな 山崎ナオコーラ 単行本・集英社 『肉体のジェンダーを笑うな』は、夫の胸から「父乳」が出る話や、PMSを体験できるサーフボードの話などを収めた小説集。身体に結びつけられた性別役割を、SF的な設定や軽やかなユーモアでずらし、家族・ケア・労働の当たり前を問い直す。現実の制度を直接論じるより、ありえたかもしれない身体の可能性を想像すること… ジェンダー身体夫婦
  88. 088 2020 幼な子の聖戦 おさなごのせいせん 木村友祐 初出・すばる 2019年11月号 第162回芥川賞候補作の表題作と、ビルの窓拭きを描く『天空の絵描きたち』を収める作品集。表題作では、青森の小さな村で村議をしている「おれ」が、人妻との関係を県議に握られ、同級生候補への選挙妨害を強いられる。地方政治の閉塞、個人の弱み、労働現場の緊張を、怒りと諦めのあわいにかすかな希望を探る語りで描く… 同調圧力労働暴力
  89. 089 2020 ポラリスが降り注ぐ夜 ぽらりすがふりそそぐよる 李琴峰 初出・早稲田文学 第十次 第22号 新宿二丁目のバー「ポラリス」に集う、多様な性的アイデンティティを持つ女性たちを描く七つの恋の物語。筑摩書房公式とOpenBDは、国や歴史を越えて思い合う気持ちがつながっていく連作として紹介している。都市の夜の親密さを起点に、セクシュアリティ、移動、言語や歴史の記憶を交差させるところが読みどころ。 ジェンダー恋愛移民と越境
  90. 090 2020 うつくしい羽 うつくしいはね 上村渉 初出・すばる 2019年6月号 表題作『うつくしい羽』と『あさぎり』などを収めた、上村渉の初小説集。OpenBDの版元提供情報は、食の記憶が過去を呼び覚ます作品として、離婚で心の支えを失った男と、フランス修業時代に大切な人を失った料理人の軌跡を紹介している。併録作『あさぎり』では、十五歳の少女の一時保護を通して、家族の絆と外国人労… 記憶死と喪失
  91. 091 2019 私の家 わたしのいえ 青山七恵 単行本・集英社 祖母の法要で一堂に会した親戚たちを起点に、三世代にわたる一族の記憶と秘密をたどる連作短編集。同棲相手に追い出されて戻る梓、過去にこだわる母、孤独を愛する大叔母らの章が重なり、家族であっても他人のように分かり合えない距離を描く。家という場所を、帰る場所であると同時に逃れがたい記憶の容器として読ませる。 家族記憶孤独と疎外
  92. 092 2019 君たちは今が世界 きみたちはいまがせかい 朝比奈あすか 単行本・KADOKAWA 『君たちは今が世界』は、小学校という閉じた場で、子どもたちの関係、序列、沈黙の圧力が日々の世界そのものになっていく様子を描く長篇。副題的に示される英題「All grown-ups were once children」が示すように、子ども時代を単なる回想ではなく、現在進行形の切実な社会として捉える… 青春同調圧力家族
  93. 093 2019 父と私の桜尾通り商店街 ちちとわたしのさくらおどおりしょうてんがい 今村夏子 単行本・角川書店 商店街でパン屋を営む父を手伝う娘を描く表題作を中心に、「白いセーター」「ルルちゃん」「ひょうたんの精」「せとのママの誕生日」「モグラハウスの扉」を収めた短篇集。家族、店、近隣関係のごく日常的な場面から、今村夏子らしい微細なずれや不穏さが立ち上がる。平明な語り口の奥で、親しさと疎外、子どもっぽさと残酷… 家族父と子労働
  94. 094 2019 DRY どらい 原田ひ香 単行本・光文社 不倫の末に二人の子を置いて家を出た北沢藍が、十年ぶりに実家へ戻るところから始まる長編。母と祖母の暮らす袋小路の家、そして祖父を一人で介護する幼馴染・馬場美代子の家を通じて、家族、介護、女性の行き場のなさが暗く絡み合う。光文社公式が示す袋小路の家に潜む罪の構図どおり、生活の現実がサスペンスへ変質してい… 家族ケアと介護母と子
  95. 095 2019 五つ数えれば三日月が いつつかぞえればみかづきが 李琴峰 初出・文學界 2019年6月号 表題作は、日本で働く台湾人の「私」と、台湾人と結婚して台湾へ移った友人・実桜が、平成最後の夏に東京で五年ぶりに再会する物語。話す言葉、住む国、選び取った人生の差異が、再会の会話のなかで静かに立ち上がる。収録作「セイナイト」とあわせて、移動、言語、親密さ、記憶のずれを、越境する人のアイデンティティとし… 移民と越境言葉と言語恋愛
  96. 096 2019 改良 かいりょう 遠野遥 単行本・河出書房新社 女装し、美しくなることに執着する大学生の「私」を描くデビュー作。コールセンターのアルバイト収入を美容やデリヘルに費やす私は、メイクや服装、仕草を研究し、やがて女装した自分を他人に認められたいという欲望を抱く。その望みは、性をめぐる理不尽な暴力と絶望へ向かっていく。 身体ジェンダー 第56回 文藝賞
  97. 097 2019 人間界の諸相 にんげんかいのしょそう 木下古栗 単行本・集英社 連絡が取れなくなった謎めいた女性・菱野時江の消息を、二人の友人がSNSを頼りに追っていくところから始まる作品。集英社公式は「トリッキーなエンタメ風小説」と紹介しており、人物相関や断片的な情報がずれながら、正体をつかもうとする読者の視線そのものを揺さぶる。奇妙なユーモアと不穏さが混ざる、木下古栗らしい… アイデンティティテクノロジー孤独と疎外
  98. 098 2019 駒音高く こまおとたかく 佐川光晴 単行本・実業之日本社 『駒音高く』は、将棋の勝負の世界に関わる七人の青春と人生を描く短篇集。プロを志す中学生や引退間際の棋士だけでなく、将棋会館の清掃員など周辺にいる人々にも視線を向け、勝敗の外側にある家族、仕事、誇りを浮かび上がらせる。実業之日本社公式が「青春・家族小説の名手」の温かなまなざしと紹介する通り、競技小説で… 青春家族労働
  99. 099 2019 待ち遠しい まちどおしい 柴崎友香 単行本・毎日新聞出版 北川春子、夫を亡くした青木ゆかり、新婚の遠藤沙希という世代も立場も異なる三人の女性が、ご近所付き合いを通じて少しずつ関わる長編。住まいの距離の近さと、価値観や人生段階のずれが生む噛み合わなさを、柴崎友香らしい生活の手触りのなかで描く。年齢、結婚、独居、見えにくい困難をめぐり、人はどこまで互いを判断せ… 家族老い孤独と疎外
  100. 100 2019 まずはこれ食べて まずはこれたべて 原田ひ香 単行本・双葉社 池内胡雪は、散らかった社内と不規則な生活に疲れながらベンチャー企業で働く三十歳。社長が会社に家政婦を雇ったことで、無愛想な筧みのりが作る料理が、殺伐とした職場に小さな休息をもたらしていく。食べることを通じて、労働の疲れ、ケアの手触り、人と人が同じ場にいることの温度を描く連作短編集。料理の題名を冠した… 労働ケアと介護
  101. 101 2019 むらさきのスカートの女 むらさきのスカートのおんな 今村夏子 初出・小説トリッパー 2019年春季号 語り手「わたし」の近所には、いつも紫色のスカートをはき「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女がいる。週に一度パン屋でクリームパンを買い、公園の決まったベンチに座る彼女を、「わたし」は毎日観察し続けている。友達になりたい一心で、「わたし」は求人誌をベンチに置くなどして、彼女が自分と同じホテルの清掃の職… 孤独と疎外労働同調圧力 第161回 芥川賞
  102. 102 2019 おっぱいマンション改修争議 おっぱいまんしょんかいしゅうそうぎ 原田ひ香 単行本・新潮社 天才建築家が設計した、通称「おっぱいマンション」と呼ばれるヴィンテージマンションを舞台にした長篇。立地もデザインも人気を集める一方で重大な問題が発覚し、建築家の娘、学生運動あがりの元教師、秘密を抱えた住人たちを巻き込む改修争議が起こる。建築という表現物、住まいの記憶、共同体の利害がぶつかる騒動を、軽… 家族老い芸術と表現
  103. 103 2019 ポルシェ太郎 ポルシェたろう 羽田圭介 初出・文藝 掲載(前篇・後篇) 35歳で起業した太郎は、年収に匹敵するポルシェを買う。ところが、その自慢の車で得体の知れないものを運ばされることになり、成功者の見栄と欲望が危うい方向へ走り出す。河出書房新社の紹介は「欲望か、死か」という言葉で作品の緊張を示しており、消費、承認、成功の演出を乾いたユーモアで追う長篇として読める。単な… 労働同調圧力身体
  104. 104 2019 リボンの男 りぼんのおとこ 山崎ナオコーラ 初出・文藝 掲載 主人公の常雄は、自分を「ヒモ」ではなく「リボン」と言い換える専業主夫。三歳のタロウと野川沿いを歩く日常のなかで、家事や育児に値段をつけにくい社会、父であること、働くことの意味が静かに問い直される。山崎ナオコーラらしい平明な言葉で、家族の役割分担やジェンダー規範を大げさな対立ではなく生活の手触りから描… 家族労働ジェンダー
  105. 105 2019 サバティカル さばてぃかる 中村航 初出・小説トリッパー 連載 33歳のエンジニア梶くんは、転職先への入社までに空いた五カ月を「サバティカル」と名づけ、自分にさまざまな宿題を課す。プロジェクト管理ツールで課題を片付けるうち、将棋の師匠が生き別れた娘を探すという思いがけない宿題に向き合うことになる。仕事の切れ目に生まれた時間を、単なる休暇ではなく自分の結びつきや恋… 労働恋愛青春
  106. 106 2019 生命式 せいめいしき 村田沙耶香 単行本・河出書房新社 『生命式』は、死者を食べる新たな葬式を描く表題作を中心に、身体、食、家族、常識の境界を揺さぶる十二篇を収めた短篇集。河出書房新社公式の収録情報には「素敵な素材」「街を食べる」「孵化」などが並び、日常の制度や倫理を別の社会の習俗として反転させる。村田沙耶香らしい寓話的設定で、正常さそのものを問い直す読… 死と喪失身体
  107. 107 2019 趣味で腹いっぱい しゅみではらいっぱい 山崎ナオコーラ 単行本・河出書房新社 『趣味で腹いっぱい』は、結婚後に絵手紙、家庭菜園、小説などの趣味に興じる鞠子と、仕事一筋で生きてきた銀行員・小太郎をめぐる長篇。上達や成果を急がない趣味の時間が、仕事中心の価値観や夫婦の距離を少しずつ揺らしていく。生活のなかの小さな楽しみを通して、役に立つことだけでは測れない生き方を描く。 夫婦労働芸術と表現
  108. 108 2019 遠の眠りの とおのねむりの 谷崎由依 単行本・集英社 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇… 労働青春芸術と表現
  109. 109 2019 夜はおしまい よるはおしまい 島本理生 単行本・講談社 「夜のまっただなか」「サテライトの女たち」「雪ト逃ゲル」「静寂」を収めた短篇集。夜、逃避、静けさといった収録作名が示すように、関係の余白や孤独を抱えた人物たちの時間を描く。島本理生の恋愛や家族関係をめぐる繊細な筆致を、より暗く静かなトーンで味わえる作品集として位置づけられる。 恋愛家族孤独と疎外
  110. 110 2019 逃げ水は街の血潮 にげみずはまちのちしお 奥野紗世子 初出・「文學界」2019年5月号 地下アイドルとして活動する二十代女性の疾走感と消耗を描くデビュー作。都市のショービジネス的な場で、身体と承認欲求、自己像がすり減っていく様子を追う。アイドルという労働と自己表現の境界を、切迫した内面描写で扱う作品。 アイデンティティ身体労働 第124回 文學界新人賞
  111. 111 2019 レンファント れんふぁんと 田村広済 初出・「文學界」2019年5月号 育児休暇中の父親が、重い皮膚疾患を抱える子の看護と妻との関係に直面する。育児参加をめぐる理想と現実、ケアの身体的・精神的負荷を、家庭の内側から描く。父親の当事者性を問う点で、家族小説としてもケアの文学としても読める。 父と子ケアと介護 第124回 文學界新人賞
  112. 112 2019 犬のかたちをしているもの いぬのかたちをしているもの 高瀬隼子 初出・「すばる」2019年11月号 『犬のかたちをしているもの』は、卵巣手術後に性交渉を拒むようになった三十歳の薫が、恋人の子を妊娠した女性から子どもを引き取らないかと提案される物語。快楽、生殖、子どもを持つことをめぐる問いが、恋愛関係や身体の履歴と重なって進む。集英社文芸公式は「一人の女性の醸成してきた問い」の行方を描く作品として紹… 身体家族 第43回 すばる文学賞
  113. 113 2019 尾を喰う蛇 おをくうへび 中西智佐乃 初出・「新潮」2019年11月号 『尾を喰う蛇』は、病院で介護士として働く小沢興毅が、患者の老人、同僚、家族への憎悪を募らせ、暴力に呑まれていく過程を描く新潮新人賞受賞作。中西智佐乃は受賞者インタビューで、戦争における「仕方がなかった」という感覚と、現代の労働・介護の場に潜む暴力を接続して本作が動き出したと語っている。肌と肌が過剰に… ケアと介護労働暴力 第51回 新潮新人賞
  114. 114 2018 あなたの愛人の名前は あなたのあいじんのなまえは 島本理生 単行本・集英社 『あなたの愛人の名前は』は、すれ違う大人の恋愛を描く六篇の作品集。集英社公式が示す「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」は、同じ関係を別々の視点から照らし、同じ部屋にいても互いの心が決定的にずれていく痛みを描く。欲望、秘密、婚約、浮気、世間の価値観に揺れる心を、島本理生らしい繊細な心理の動きとし… 恋愛夫婦
  115. 115 2018 ブルーハワイ ぶるーはわい 青山七恵 単行本・河出書房新社 『ブルーハワイ』『辰年』『聖ミクラーシュの日』『わかれ道』『山の上の春子』『わたしのおばあちゃん』を収めた短篇集。河出書房新社は、「あたりまえ」を知らない孤独が世界を撃ち抜く作品集として紹介している。日常のなかでそれぞれのことに夢中になる人々を、平明で少し乾いた語りで捉え、家族や記憶、他者との隔たり… 孤独と疎外家族記憶
  116. 116 2018 人生のピース じんせいのぴーす 朝比奈あすか 単行本・双葉社 中高一貫の女子校で過ごした潤子、みさ緒、礼香が、34歳になって結婚や恋愛、仕事との向き合い方を揺らす物語。礼香の突然の結婚をきっかけに、潤子は結婚相談所へ、みさ緒は腐れ縁の相手との関係を見直し、それぞれが自分の人生の欠けたピースを探す。婚活を題材にしながら、同調圧力や友情の距離、女性が自分の選択を引… ジェンダー恋愛同調圧力
  117. 117 2018 みなさんの爆弾 みなさんのばくだん 朝比奈あすか 単行本・中央公論新社 「初恋」「譲治のために」「メアリーとセッツ」など六篇を収め、女性たちの内部に抱え込まれた欲望や怒り、関係の歪みを描く短篇集。同性への欲望、母と息子の倒錯的な結びつき、創作や日常に潜む衝動が、それぞれの「爆弾」として立ち上がる。平穏に見える生活の奥で感情が臨界に近づく瞬間を、鋭くも読みやすい語りで追う… ジェンダー家族
  118. 118 2018 5時過ぎランチ ごじすぎランチ 羽田圭介 単行本・実業之日本社 「グリーンゾーン」「内なる殺人者」「誰が為の昼食」の三篇からなる、労働と犯罪が絡み合う短篇集。ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギーを抱える殺し屋、写真週刊誌の女性記者が、それぞれ過酷な仕事の延長線上でヤクザや警察、国家権力に触れていく。ブラックな職場感覚とクライムノベルの緊張を重ね、仕事にまつわ… 労働暴力貧困
  119. 119 2018 星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き ほしがおかこうこうりょうりぶ へんさちろくじゅうはちのめだまやき 樋口直哉 単行本・講談社 廃部寸前の私立星ヶ丘高校料理部に、篠原皐月が友人に誘われて入部する連作料理ミステリ。目玉焼き、オムレツ、ハンバーグ、カレーなどの料理を通じて、皐月たちは調理の理屈と、身近な出来事に潜む謎を少しずつ解いていく。学校小説の軽やかさに、料理の知識と日常の推理を重ねた読み味が特徴。 青春芸術と表現
  120. 120 2018 雪子さんの足音 ゆきこさんのあしおと 木村紅美 単行本・講談社 東京出張中の薫は、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家・雪子さんが熱中症でひとり亡くなったことを新聞記事で知り、20年ぶりにその場所へ向かう。アパートへ近づく道のりと回想を重ねながら、大家と下宿人、若者と年長者、好意と負担の境目が少しずつ浮かび上がる。日常の会話や距離感の微細な違和を通して、人間… 記憶老い孤独と疎外
  121. 121 2018 公園へ行かないか?火曜日に こうえんへいかないか?かようびに 柴崎友香 単行本・新潮社 2016年、アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者が、世界各国の作家・詩人たちと過ごした3か月をもとに描く11篇の連作小説集。英語で議論し、街を歩き、アメリカ大統領選挙の瞬間にも居合わせる経験を通じて、そこにいること/いないこと、知りたいのに届かないことを考え続ける… 移民と越境言葉と言語芸術と表現
  122. 122 2018 偽姉妹 にせしまい 山崎ナオコーラ 単行本・中央公論新社 宝くじで3億円を当てた正子が、風変わりな「屋根だけの家」を建て、離婚後に姉妹との共同生活へ入っていく家族小説。血縁や結婚に縛られた関係に息苦しさを覚えた正子は、姉妹もまた別れたり新しく作ったりできるのではないかと考え始める。山崎ナオコーラらしい軽やかな語りで、家族制度の当たり前、女性同士の距離、暮ら… 家族ジェンダー同調圧力
  123. 123 2018 三千円の使いかた さんぜんえんのつかいかた 原田ひ香 単行本・中央公論新社 御厨家の女性たちが、結婚、子育て、入院、離婚、老後といった局面でお金の使い方に向き合う連作短篇集。節約や貯金のノウハウに寄せつつ、家族の役割、将来不安、生活を立て直す知恵を物語として読ませる。具体的な金額や家計の話が、女性たちの選択と自立をめぐる現実的なドラマになっている。 家族老いケアと介護
  124. 124 2018 静かに、ねぇ、静かに しずかに、ねぇ、しずかに 本谷有希子 単行本・講談社 「本当の旅」「奥さん、犬は大丈夫だよね?」「でぶのハッピーバースデー」の3篇を収める作品集。海外旅行の写真投稿、ネットショッピング依存、動画撮影で自分たちだけの印を残そうとする夫婦など、SNSやスマートフォン越しにしか確かめられない現実感を描く。軽妙な語りの底に、承認欲求、支配、親密さの不安がにじみ… テクノロジー同調圧力孤独と疎外
  125. 125 2018 その先の道に消える そのさきのみちにきえる 中村文則 単行本・朝日新聞出版 アパートの一室で発見された緊縛師の死体をめぐり、重要参考人の女性と彼女に惹かれる刑事・富樫、別の刑事たちの視線が絡み合う長編ミステリー。謎と嘘を追う捜査の形を取りながら、暴力、欲望、死者の痕跡を通じて、この世界を生きる意味を問い詰めていく。犯罪小説の緊迫感と、中村文則らしい倫理的・実存的な暗さが重な… 暴力死と喪失
  126. 126 2018 鏡のなかのアジア かがみのなかのあじあ 谷崎由依 単行本・集英社 チベット、台湾、クアラルンプール、京都など、アジアの土地をモチーフにした全5篇の幻想短篇集。集英社公式は、少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、台湾・九份の村を舞台にする「Jiufenの村は九つぶん」、熱帯雨林の巨樹であった過去を持つ男を描く「天蓋歩行」などを挙げている。翻… 移民と越境言葉と言語記憶
  127. 127 2018 たてがみを捨てたライオンたち たてがみをすてたらいおんたち 白岩玄 単行本・集英社 専業主夫を考える30歳の出版社社員・直樹、離婚後の孤独を抱える35歳の広告マン・慎一、アイドルを追う25歳の公務員・幸太郎という三人の男性を並べる長編。仕事の評価、家事・育児、父親像、恋愛や趣味を通じて、「大人の男」らしさやプライドの重さを問い直す。軽く読ませる群像劇の形を取りながら、弱音を吐きにく… ジェンダー労働家族
  128. 128 2018 つかのまのこと つかのまのこと 柴崎友香 単行本・KADOKAWA かつての住み家らしき「この家」をさまよい続ける「わたし」が、次々に入れ替わる住人たちを見守る物語。幽霊のような語り手の視点から、家に残る記憶と、誰かを待ち続ける時間が静かに積み重ねられる。柴崎友香が俳優・東出昌大をイメージして小説を書き、市橋織江の写真と組み合わされた、写真と小説の境界を意識した一冊… 記憶死と喪失家族
  129. 129 2018 私に付け足されるもの わたしにつけたされるもの 長嶋有 単行本・徳間書店 「四十歳」「白竜」「Mr.セメントによろしく」「瀬名川蓮子に付け足されるもの」など十二篇を収める短篇集。虎に襲われたい、くっつけたい、あきらめたい、移動したいといった、くだらなくも切実な願望を起点に、日常のずれや欲望の不可思議さを軽やかに描く。長嶋有らしいユーモアと観察眼が、平凡な生活に付け足される… アイデンティティ記憶芸術と表現
  130. 130 2018 夜更けの川に落葉は流れて よふけのかわにおちばはながれて 西村賢太 初出・群像 2017年10月号 北町貫多の二十代前半を描く「寿司乞食」「夜更けの川に落葉は流れて」「青痰麺」の三篇を収める作品集。表題作では、無気力で受け身になっていた貫多が梁木野佳穂という女性との関わりによって、わずかに外の世界へ引き戻されていく。貧しさ、職場の失敗、恋愛の痛み、長く尾を引く恨みを、私小説的な乾いた筆致で読ませる… 貧困労働孤独と疎外
  131. 131 2018 ゆっくりおやすみ、樹の下で ゆっくりおやすみ、きのしたで 高橋源一郎 単行本・朝日新聞出版 小学5年生のミレイが「さるすべりの館」で夏休みを過ごすうち、遠い過去の謎に触れていく児童文学寄りの長編。赤い部屋、止まっていた時計、館に隠された秘密が、子どもの視点に近い軽やかさと不思議な緊張感で語られる。今日マチ子の挿絵を多数収録し、高橋源一郎が子どもと大人の読者をつなぐ語りに挑んだ作品。 青春記憶家族
  132. 132 2018 送り火 おくりび 高橋弘希 初出・「文學界」2018年5月号 東北の小さな中学校へ転校した少年が、土地の集団に馴染んでいく過程で、同級生たちの危うい力関係に巻き込まれていく。表面的な適応の裏に、暴力と同調圧力が蓄積していく構造を描く作品。閉じた学校空間の息苦しさと、少年たちの均衡が崩れる瞬間が読みどころになる。 青春暴力同調圧力 第159回 芥川賞
  133. 133 2018 1R1分34秒 いちらうんどいっぷんさんじゅうよんびょう 町屋良平 初出・「新潮」2018年11月号 デビュー戦後に勝ちきれなくなった21歳のプロボクサーを語り手に、競技の身体感覚と自意識の停滞を描く小説。長年のトレーナーから離れ、変わり者のウメキチとの練習に入ることで、敗北や弱さをめぐる思考が少しずつ揺さぶられていく。ボクシングを勝敗だけでなく、身体・時間・他者との関係の問題として読ませるところに… 青春身体孤独と疎外 第160回 芥川賞
  134. 134 2018 美しい顔 うつくしいかお 北条裕子 初出・「群像」2018年6月号 東日本大震災後の避難所で暮らす高校生・沙那恵が、弟を守りながらメディアの視線にさらされる物語。災害下の身体、家族、報道される被災者像をめぐる緊張を描く。被災地の現実と表象の問題が、作品そのものの受容とも重なって読まれる。 災害家族身体
  135. 135 2017 ハッチとマーロウ はっちとまーろう 青山七恵 単行本・小学館 11歳の誕生日に母から「大人を卒業する」と告げられた双子のハッチとマーロウが、突然自分たちの生活を引き受けることになる長編。料理や服選び、双子であることの個性、父の不在といった日常の問いを通じて、子どもから大人へ向かう時間を軽やかに描く。かわいらしい双子の語り口の奥に、母子関係や自立の痛みが少しずつ… 家族母と子青春
  136. 136 2017 踊る星座 おどるせいざ 青山七恵 単行本・中央公論新社 『踊る星座』は、青山七恵が人と人の距離や、日常の中の小さな変化を星座のように配置する小説として整理できます。星座は離れた点を線で結ぶ見方であり、人物たちの孤独や関係もそのように読み替えられます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 孤独と疎外記憶恋愛
  137. 137 2017 人間タワー にんげんたわー 朝比奈あすか 単行本・文藝春秋 『人間タワー』は、朝比奈あすかが人間関係の積み重なりや、集団の中で支え合うことの危うさを扱う小説として整理できます。タワーという題名は、高く積み上がる共同性と、崩れやすい均衡の両方を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 同調圧力家族孤独と疎外
  138. 138 2017 クラウドガール クラウドガール 金原ひとみ 単行本・朝日新聞出版 『クラウドガール』は、対照的な姉妹・杏と理有の視点を往復しながら、姉妹の愛憎と記憶のずれを描く長編です。クラウドという題名は、記憶や関係が固定されず、曖昧に保存される感覚を示します。姉妹の語りを通じて、家族の親密さと傷つけ合いが浮かび上がります。 家族記憶ジェンダー
  139. 139 2017 ドレス どれす 藤野可織 単行本・河出書房新社 『ドレス』は、藤野可織が衣服、身体、変身への欲望を不穏に扱う作品として整理できます。ドレスは外見を飾るものですが、同時に身体を型にはめるものでもあります。女性の身体と視線をめぐる違和感が、幻想的な語りの中で立ち上がる作品です。 身体ジェンダーアイデンティティ
  140. 140 2017 劇場 げきじょう 又吉直樹 単行本・新潮社 『劇場』は、売れない劇作家・永田と、彼を支える沙希の恋愛を描く長編です。演劇を作ることと恋愛で相手を傷つけることが重なり、表現者の自意識と未熟さが露出します。恋愛小説であると同時に、創作の場にしがみつく人物の痛みを読む作品です。 恋愛芸術と表現孤独と疎外
  141. 141 2017 いつか来る季節 名古屋タクシー物語 いつかくるきせつ なごやたくしーものがたり 広小路尚祈 単行本・桜山社 『いつか来る季節 名古屋タクシー物語』は、名古屋のタクシー運転手や乗客をめぐる物語として整理できます。タクシーは都市を移動する仕事の場であり、偶然出会う人びとの会話を運ぶ装置でもあります。地方都市の生活と労働を、移動の視点から読ませる作品です。 労働地方孤独と疎外
  142. 142 2017 星の子 ほしのこ 今村夏子 初出・小説トリッパー 2017年夏季号 中学3年生の林ちひろは、優しい両親に愛されて育った。だが両親は、生まれつき病弱だったちひろが「あやしい宗教」の水で救われたと信じて以来、その教団に深くのめり込んでいる。緑のジャージ姿で頭に濡れタオルを載せる両親は周囲の目を引き、姉は家を出て、親戚との関係も軋んでいく。一目惚れした新任の先生に、夜の公… 信仰家族青春 第39回 野間新人賞
  143. 143 2017 意識のリボン いしきのリボン 綿矢りさ 単行本・集英社 『意識のリボン』は、さまざまな年代の女性たちの意識の揺らぎをすくいとった短篇集です。リボンのように細く結ばれる思考や感情が、恋愛、家族、身体への意識をつなぎます。綿矢りさらしい明るさと鋭さで、日常の内側にある自意識を描く作品です。 ジェンダーアイデンティティ恋愛
  144. 144 2017 回遊人 かいゆうじん 吉村萬壱 単行本・徳間書店 『回遊人』は、吉村萬壱が漂流するように生きる人物や、社会の中を回り続ける身体を描く小説として整理できます。回遊という語は、目的地へ一直線に進まない移動と反復を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体孤独と疎外労働
  145. 145 2017 幸福な水夫 こうふくなすいへい 木村友祐 単行本・未來社 『幸福な水夫』は、木村友祐が水夫という移動する労働者の像を通じて、幸福と漂流の関係を描く作品として整理できます。海や船のイメージは、生活の不安定さと越境の感覚を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 労働移民と越境孤独と疎外
  146. 146 2017 ランチ酒 らんちざけ 原田ひ香 単行本・祥伝社 『ランチ酒』は、夜に子どもを預け昼間に働くシングルマザーが、仕事後の一人ランチに酒を飲む連作です。食事と酒は、労働の疲れをほどき、自分だけの時間を取り戻すための小さな儀式になります。母であること、働くこと、孤独を、店の風景から読ませる作品です。 労働母と子
  147. 147 2017 万次郎茶屋 まんじろうちゃや 中島たい子 単行本・光文社 『万次郎茶屋』は、老いたイノシシ万次郎と画家志望の女性をめぐる、不思議でじんわりする短編集です。茶屋という場は、人と動物、現実と幻想がゆるやかに交わる場所として働きます。老い、芸術、ケアの感覚を、あたたかい寓話として読ませる作品です。 老い芸術と表現ケアと介護
  148. 148 2017 もう生まれたくない もううまれたくない 長嶋有 単行本・講談社 『もう生まれたくない』は、長嶋有が生まれることへの拒否感を題名に掲げ、生活の倦怠や関係のずれを描く作品として整理できます。重い言葉を、日常的な会話や軽みのある文体の中に置くことで、絶望が少し奇妙な手ざわりを帯びます。生の重さをユーモアでずらす長嶋作品らしい小説です。 死と喪失家族孤独と疎外
  149. 149 2017 無敵の二人 むてきのふたり 中村航 単行本・文藝春秋 『無敵の二人』は、中村航が二人でいることの強さと危うさを描く小説として整理できます。無敵という言葉は明るい連帯を示す一方、外の世界に対する閉じた感覚も含みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 恋愛青春孤独と疎外
  150. 150 2017 血と肉 ちとにく 中山咲 単行本・河出書房新社 『血と肉』は、中山咲が身体と血縁、暴力的な生の感覚を扱う小説として整理できます。血は家族や継承を、肉は身体そのものの存在感を指し、抽象的な関係を物質的に捉え直します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体家族暴力
  151. 151 2017 茄子の輝き なすのかがやき 滝口悠生 単行本・新潮社 『茄子の輝き』は、会社の倒産と離婚を経た市瀬の日々を描く連作小説集です。失われた仕事や家族の後に残る生活が、茄子のような身近なものの光に照らされます。大きな転落を静かな日常に引き戻し、再出発以前の時間を読む作品です。 労働夫婦孤独と疎外
  152. 152 2017 ラジオ・ガガガ らじおががが 原田ひ香 単行本・双葉社 『ラジオ・ガガガ』は、実在するラジオ番組に耳を傾ける人々の人生模様を描いた連作短篇集です。ラジオは遠くの声を受け取るメディアであり、孤独な時間に他者の存在を届ける装置として働きます。日常の中の小さな聞く経験から、記憶や再生を描く作品です。 記憶孤独と疎外芸術と表現
  153. 153 2017 世界のすべてのさよなら せかいのすべてのさよなら 白岩玄 単行本・幻冬舎 『世界のすべてのさよなら』は、30歳になった同級生四人のそれぞれの変化と別れを描く青春後小説です。かつて共有していた時間が、年齢や仕事、恋愛によって少しずつほどけていきます。青春の終わりではなく、その後に続く関係の変化を読ませる作品です。 青春恋愛孤独と疎外
  154. 154 2017 囚われの島 とらわれのしま 谷崎由依 単行本・河出書房新社 『囚われの島』は、谷崎由依が島という閉じた場所を舞台に、隔離や記憶の問題を扱う小説として整理できます。囚われることは地理的な閉塞であると同時に、過去や関係から自由になれない状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 記憶孤独と疎外暴力
  155. 155 2017 美しい国への旅 うつくしいくにへのたび 田中慎弥 単行本・集英社 『美しい国への旅』は、田中慎弥が「美しい国」という政治的・理念的な言葉を旅の物語へずらして扱う小説として整理できます。旅は理想の場所へ向かう行為である一方、現実の醜さや暴力を見せる過程にもなります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 同調圧力暴力孤独と疎外
  156. 156 2017 わたしたちは銀のフォークと薬を手にして わたしたちはぎんのふぉーくとくすりをてにして 島本理生 単行本・幻冬舎 『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』は、島本理生が食事、薬、恋愛を結びつけて、身体と親密さを描く小説として整理できます。銀のフォークは生活の華やぎを、薬は病や不安を示し、その二つが同じ手に置かれます。恋愛の甘さだけでなく、身体の脆さを含んだ関係を読む作品です。 恋愛
  157. 157 2017 私をくいとめて わたしをくいとめて 綿矢りさ 単行本・朝日新聞出版 『私をくいとめて』は、おひとりさま生活を送る33歳のみつ子が、脳内の相談役「A」と対話しながら恋に踏み出す物語です。ひとりでいる自由と、他者と関わる不安が、軽快な内面の会話として描かれます。恋愛小説でありながら、自己防衛と孤独の扱い方を読む作品です。 恋愛孤独と疎外アイデンティティ
  158. 158 2017 蛇沼 じゃぬま 佐藤厚志 初出・「新潮」2017年11月号 『蛇沼』は、宮城県の田園地帯を舞台に、少年時代の監禁事件と少女セイコの不可解な死を抱え続ける青年・恭二を描く新潮新人賞受賞作。受賞者インタビューでは、作者が宮城県亘理郡の田んぼや沼のある風景を原風景としており、主人公が「生きていてもいいのか」という答えのない問いの中でもがく人物として構想されたことが… 暴力死と喪失父と子 第49回 新潮新人賞
  159. 159 2017 こことよそ ここ と よそ 保坂和志 初出・「新潮」2017年6月号掲載 『こことよそ』は、鎌倉の道を歩く場面を含む短編で、保坂和志自身の受賞のことばでは、川端康成の記憶や生者と死者の時間感覚が作品に触れられている。物語の具体的な筋は公式ページからは限定的にしか確認できないが、場所の記憶と死者との距離が読解の手がかりになる。川端康成文学賞の受賞作として、短編の凝縮された時… 記憶死と喪失地方 第44回 川端賞
  160. 160 2016 あひる あひる 今村夏子 単行本・書肆侃侃房 『あひる』は、飼いあひる「のりたま」をめぐる家族の不穏な日常を描く表題作ほかを収めた作品集です。かわいらしい動物の存在が、家族の関係や家の空気を少しずつ変えていきます。今村夏子らしい平明な語りの奥で、日常の裂け目が静かに広がる作品です。 家族身体孤独と疎外
  161. 161 2016 少女は花の肌をむく しょうじょははなのはだをむく 朝比奈あすか 単行本・中央公論新社 『少女は花の肌をむく』は、朝比奈あすかが少女の身体と成長への違和感を扱う小説として整理できます。花の肌を「むく」という題名は、柔らかさや美しさの裏にある痛みを想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 青春身体ジェンダー
  162. 162 2016 ヒーロー! ひーろー 白岩玄 単行本・河出書房新社 『ヒーロー!』は、ヒーローばかの男子と文化系女子がいじめゼロを目指す、痛快学園小説です。ヒーローへの憧れは、学校内の同調圧力やいじめに抗うための言葉として働きます。明るい語りの中に、正義を演じることの難しさと切実さがあります。 青春同調圧力暴力
  163. 163 2016 ホモサピエンスの瞬間 ほもさぴえんすのしゅんかん 松波太郎 単行本・文藝春秋 『ホモサピエンスの瞬間』は、松波太郎が人間を生物種として捉える視野と、個人の瞬間的な感覚を重ねる作品として整理できます。タイトルは、人間であることを大きな分類から眺める一方、生活の一瞬へも焦点を合わせます。既存データには芥川賞候補作とあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。 身体アイデンティティ孤独と疎外
  164. 164 2016 炎と苗木 田中慎弥の掌劇場 ほのおとなえぎ たなかしんやのてのひらげきじょう 田中慎弥 単行本・毎日新聞出版 『炎と苗木 田中慎弥の掌劇場』は、田中慎弥の短い掌編を集めた作品集です。炎の破壊性と苗木の成長という対照的なイメージが、凝縮された場面や感情を支えます。短い形式の中で、暴力、記憶、生活の暗部を鋭く切り出す作品です。 暴力記憶孤独と疎外
  165. 165 2016 イノセント いのせんと 島本理生 単行本・集英社 『イノセント』は、島本理生が無垢さと傷つきやすさをめぐる恋愛・家族の物語として描く長編と整理できます。無垢であることは守られる状態であると同時に、他者に利用されやすい危うさも含みます。親密な関係の中で、自己決定と依存の境界が揺れる作品です。 恋愛家族身体
  166. 166 2016 イサの氾濫 いさのはんらん 木村友祐 単行本・未來社 『イサの氾濫』は、木村友祐がイサという人物や存在をめぐる記憶、土地、暴力の広がりを描く短篇集として整理できます。氾濫という語は、抑え込まれたものがあふれ出す感覚を示します。既存データには三島由紀夫賞候補作品を収めるとあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。 地方記憶暴力
  167. 167 2016 軽薄 けいはく 金原ひとみ 単行本・新潮社 『軽薄』は、甥である10代の弘斗と関係を持つ30歳のカナの、破滅的な愛を描く長編です。禁忌の関係を通じて、欲望、孤独、自己破壊が露出します。軽さを意味する題名とは裏腹に、人物の身体と倫理の重さが息苦しく迫る作品です。 恋愛家族
  168. 168 2016 まっぷたつの先生 まっぷたつのせんせい 木村紅美 単行本・中央公論新社 『まっぷたつの先生』は、木村紅美が教師像や学びの場に裂け目を入れる小説として整理できます。先生というひとつの役割が「まっぷたつ」に割れる題名から、教育、権威、個人の内面の分裂が読み取れます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 青春アイデンティティ同調圧力
  169. 169 2016 小松とうさちゃん こまつとうさちゃん 絲山秋子 単行本・河出書房新社 『小松とうさちゃん』は、絲山秋子が人物の距離感と、うさぎのような柔らかなイメージを組み合わせて描く小説として整理できます。固有名と愛称が並ぶ題名から、親密さとずれたコミュニケーションが立ち上がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 恋愛孤独と疎外言葉と言語
  170. 170 2016 コンビニ人間 コンビニにんげん 村田沙耶香 初出・文學界 2016年6月号 36歳未婚の古倉恵子は、大学卒業後も就職せず、同じコンビニで18年間アルバイトを続けている。幼い頃から人と感覚がずれていることを自覚してきた恵子にとって、マニュアルが完備されたコンビニは「普通の人間」を演じられる唯一の場所だった。しかし、婚活目的で店にやってきた皮肉屋の新人男性・白羽の出現により、そ… 労働同調圧力アイデンティティ 第155回 芥川賞
  171. 171 2016 虫たちの家 むしたちのいえ 原田ひ香 単行本・光文社 『虫たちの家』は、九州の孤島にあるグループホームで、インターネットで傷ついた女性たちが共同生活を送る物語です。家という避難所は、保護の場であると同時に、傷ついた人びとの距離を測り直す場所になります。現代的な孤立とケアの問題を、共同生活の細部から読ませる作品です。 ケアと介護ジェンダー孤独と疎外
  172. 172 2016 野良ビトたちの燃え上がる肖像 のらびとたちのもえあがるしょうぞう 木村友祐 単行本・新潮社 『野良ビトたちの燃え上がる肖像』は、格差と貧困の中で生きる人々を描いた長篇です。野良ビトという呼び名は、制度や共同体の外へ押し出された人びとの姿を示します。肖像という形式を通じて、個々の生活と社会の暴力を結びつけて読む作品です。 貧困労働暴力
  173. 173 2016 大きくなる日 おおきくなるひ 佐川光晴 単行本・集英社 『大きくなる日』は、佐川光晴が子どもの成長と家族の時間を描く小説として整理できます。成長は単に年齢を重ねることではなく、家族や学校の中で自分の場所を見つけ直す経験として描かれます。日常的な出来事を通して、青春と家族の関係を読みやすくたどれる作品です。 青春家族母と子
  174. 174 2016 しんせかい しんせかい 山下澄人 初出・新潮 2016年7月号 19歳のスミトは、神戸からフェリーと汽車を乗り継ぎ、北海道の【谷】で脚本家の【先生】が主宰する私塾に二期生として入る。俳優や脚本家を志す年齢も経歴も様々な仲間たちとの共同生活は、しかし稽古よりも、施設造りや農作業、馬の世話といった肉体労働に明け暮れるものだった。倉本聰主宰の富良野塾での著者自身の体験… 青春芸術と表現労働 第156回 芥川賞
  175. 175 2016 手のひらの京 てのひらのみやこ 綿矢りさ 単行本・新潮社 『手のひらの京』は、京都に暮らす奥沢家の三姉妹それぞれの恋愛や仕事、旅立ちを描く長編です。京都という歴史ある街を、観光的な風景ではなく、家族が日々を重ねる生活の場所として扱います。姉妹の視点を通して、土地への愛着と外へ出ていく感覚が並行して描かれます。 家族恋愛アイデンティティ
  176. 176 2016 美しい距離 うつくしいきょり 山崎ナオコーラ 単行本・文藝春秋 『美しい距離』は、妻の末期がんに寄り添う夫の視点から、死に向かう日常を静かに描く小説です。看病や病院での時間を、劇的な悲嘆ではなく、相手との距離を測り続ける営みとして捉えます。死を前にした夫婦の親密さと孤独を、抑えた語りで読ませる作品です。 夫婦死と喪失
  177. 177 2016 青が破れる あおがやぶれる 町屋良平 初出・「文藝」2016年冬号 ボクサーになりたいがなれない青年・秋吉を中心に、恋愛、友人関係、死の予感が交錯する青春小説。ジムでのスパーリングや不倫関係、病床の友人の恋人への見舞いを通じて、若者たちの不安定な生が描かれる。短い枚数の中で、身体の衝動と喪失感を結びつけるデビュー作。 青春恋愛死と喪失 第53回 文藝賞
  178. 178 2016 カブールの園 かぶーるのその 宮内悠介 初出・「文學界」2016年10月号、2017年1月文藝春秋より単行本刊行 日系アメリカ人三世の女性が、IT企業を立ち上げた友人とヨセミテへ向かい、日系人強制収容所の記憶に触れていく表題作を中心とする作品集。移民、戦争の記憶、アメリカ社会の周縁に置かれた人々を、作者らしい構成意識で扱う。収録作「半地下」とあわせ、越境するアイデンティティと継承されにくい記憶が主題となる。 移民と越境記憶日本史 第30回 三島賞
  179. 179 2016 のろい男 俳優・亀岡拓次 のろいおとこ はいゆう かめおかたくじ 戌井昭人 単行本・文藝春秋 脇役俳優・亀岡拓次を主人公にした連作短篇集で、全国のロケ地を転々としながら仕事相手との淡い縁を紡ぐ日々を描く。続編として、職業俳優の孤独、現場ごとの仮のつながり、生活の滑稽さが積み重なる。諦観とユーモアを交え、主役ではない人物の時間を照らす作品。 芸術と表現労働孤独と疎外 第38回 野間新人賞
  180. 180 2015 愛のようだ あいのようだ 長嶋有 単行本・リトル・モア 『愛のようだ』は、長嶋有が「愛」と断言しきれない関係の曖昧さを描く長篇です。題名の「ようだ」は、感情を確定せず、似ているもの、ずれているものとして捉える姿勢を示します。軽やかな語りのなかに、親密さの不確かさが残る作品です。 恋愛孤独と疎外アイデンティティ
  181. 181 2015 あこがれ あこがれ 川上未映子 単行本・新潮社 『あこがれ』は、小学生の麦彦とヘガティーの友情と淡い憧れを描く川上未映子の連作長篇です。子どもの視点を通じて、名前、身体、家族への違和感が瑞々しく描かれます。明るい成長物語であると同時に、他者になりたい気持ちの切実さを読む作品です。 青春家族アイデンティティ
  182. 182 2015 あなたが消えた夜に あなたがきえたよるに 中村文則 単行本・毎日新聞出版 『あなたが消えた夜に』は、連続通り魔殺人事件を追う二人の刑事の視点が交錯する中村文則の長篇です。事件の真相を追うミステリー的構造のなかで、暴力、記憶、加害と被害の境界が揺らぎます。暗い犯罪小説の形を取りながら、人間の空洞を覗き込む作品です。 暴力記憶孤独と疎外
  183. 183 2015 まゆ 青山七恵 単行本・新潮社 『繭』は、青山七恵が閉じた空間や保護される感覚を手がかりに、女性の内面を描く小説として整理できます。繭は守るものでもあり、外へ出る前の窮屈な状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体ジェンダー孤独と疎外
  184. 184 2015 あの子が欲しい あのこがほしい 朝比奈あすか 単行本・講談社 『あの子が欲しい』は、朝比奈あすかが子どもや他者への欲望をめぐる感情を描く小説として整理できます。題名の「欲しい」は、愛情、羨望、所有の境界を曖昧にします。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 母と子家族同調圧力
  185. 185 2015 自画像 じがぞう 朝比奈あすか 単行本・双葉社 『自画像』は、朝比奈あすかが自己像と他者からの視線をめぐる不安を描く小説として整理できます。自画像は自分を描く行為であると同時に、見られる自分を作る行為でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 アイデンティティ芸術と表現孤独と疎外
  186. 186 2015 天使はここに てんしはここに 朝比奈あすか 単行本・朝日新聞出版 『天使はここに』は、朝比奈あすかが救いを求める人物たちの孤独を描く小説として整理できます。天使という言葉は超越的な存在であると同時に、身近な誰かへの希望にも読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 信仰孤独と疎外家族
  187. 187 2015 ボーイミーツガールの極端なもの ぼーいみーつがーるのきょくたんなもの 山崎ナオコーラ 単行本・イースト・プレス 『ボーイミーツガールの極端なもの』は、恋愛物語の定型を極端化して見直す山崎ナオコーラの小説として整理できます。出会いの物語は、男女の役割や恋愛の約束事をそのまま受け入れず、距離を置いて眺め直されます。軽やかな題名の奥に、ジェンダーと関係性への批評がある作品です。 恋愛ジェンダー言葉と言語
  188. 188 2015 復讐屋成海慶介の事件簿 ふくしゅうやなるみけいすけのじけんぼ 原田ひ香 単行本・双葉社 『復讐屋成海慶介の事件簿』は、原田ひ香が復讐を請け負う人物を軸に、事件と人間関係を描く小説として整理できます。復讐は単なる解決ではなく、依頼者や加害者の生活のゆがみを浮かび上がらせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 暴力労働孤独と疎外
  189. 189 2015 ギリギリ ぎりぎり 原田ひ香 単行本・KADOKAWA 『ギリギリ』は、原田ひ香が生活の余裕のなさや、関係の危うい境界を描く小説として整理できます。題名は金銭、時間、感情のいずれも限界に近い状態を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 労働貧困家族
  190. 190 2015 薄情 はくじょう 絲山秋子 単行本・新潮社 『薄情』は、群馬の地方都市に生きる男を通して、土地への愛着と冷淡さを描く絲山秋子の長篇です。故郷や人間関係は温かいものとしてだけでなく、切り捨てたり距離を置いたりするものとして現れます。地方の生活感と、人の薄情さを見つめる乾いた文体が読みどころです。 地方孤独と疎外記憶 第52回 谷崎賞
  191. 191 2015 反人生 はんじんせい 山崎ナオコーラ 単行本・集英社 『反人生』は、山崎ナオコーラが「人生を作る」という発想そのものから距離を取る小説です。社会が求める進路や物語化された生き方に対し、人物は別の速度で存在しようとします。人生を肯定的に組み立てる物語への違和感を、軽やかな語りで扱う作品です。 アイデンティティ労働孤独と疎外
  192. 192 2015 キッチン戦争 きっちんせんそう 樋口直哉 単行本・講談社 『キッチン戦争』は、樋口直哉が料理や台所をめぐる場所から、人間関係や労働の摩擦を描く小説として整理できます。キッチンは家庭的な空間であると同時に、技術、役割、競争が生じる戦場にもなります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 労働家族
  193. 193 2015 院内カフェ いんないかふぇ 中島たい子 単行本・朝日新聞出版 『院内カフェ』は、中島たい子が病院内のカフェという場から、病やケア、日常の会話を描く小説として整理できます。病院という非日常の空間に、カフェのような日常的な場所が挟まることで、人と人の距離が変わります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 ケアと介護孤独と疎外
  194. 194 2015 可愛い世の中 かわいいよのなか 山崎ナオコーラ 単行本・講談社 『可愛い世の中』は、山崎ナオコーラが「可愛い」という価値観を手がかりに、現代社会の人間関係や自己像を見直す小説として整理できます。可愛さは肯定的な魅力である一方、他者の視線や消費されるイメージにもつながります。軽やかな題名の奥で、ジェンダー、言葉、同調圧力の関係が立ち上がる作品です。 ジェンダー同調圧力言葉と言語
  195. 195 2015 持たざる者 もたざるもの 金原ひとみ 単行本・集英社 『持たざる者』は、震災後の不安の中で、東京を離れる者と残る者、四人の男女の選択を描く長編です。生活の基盤、愛情、経済的な余裕を「持つ/持たない」という感覚が、人物たちの関係を揺らします。社会の大きな不安を、恋愛や家族、都市での暮らしの手ざわりから読む作品です。 災害労働恋愛
  196. 196 2015 暗号のポラリス あんごうのぽらりす 中山智幸 単行本・NHK出版 『暗号のポラリス』は、中山智幸が暗号と北極星のイメージを重ね、読解や方角をめぐる物語として構成した作品と整理できます。暗号は言葉の届かなさを、ポラリスは迷った先の指標を示す題名です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 言葉と言語記憶アイデンティティ
  197. 197 2015 ペンギンのバタフライ ぺんぎんのばたふらい 中山智幸 単行本・PHP研究所 『ペンギンのバタフライ』は、中山智幸が異質なものの組み合わせから想像力を広げる小説として整理できます。飛べない鳥であるペンギンと、羽ばたく蝶の対比が、変身や移動への願望を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 アイデンティティ身体孤独と疎外
  198. 198 2015 夏の裁断 なつのさいだん 島本理生 単行本・文藝春秋 『夏の裁断』は、執筆を辞めた女性小説家のもとに若い男性が現れ、破綻した恋愛が始まる長編です。書くことを断った人物が、恋愛や身体の関係を通じてもう一度言葉に絡め取られていきます。夏の熱と「裁断」という語の冷たさが、恋愛の高揚と自己破壊の感覚を並置しています。 恋愛芸術と表現
  199. 199 2015 ネンレイズム/開かれた食器棚 ねんれいずむ/ひらかれたしょっきだな 山崎ナオコーラ 単行本・河出書房新社 『ネンレイズム/開かれた食器棚』は、山崎ナオコーラが年齢や生活道具をめぐる価値観を問い直す小説集として整理できます。年齢に付随する役割や、食器棚のような身近な場所にしまわれた日常が、人物の自己像を形づくります。軽い語り口の奥に、社会の分類に回収されない生き方への関心があります。 家族ジェンダー老い
  200. 200 2015 残された者たち のこされたものたち 小野正嗣 単行本・集英社文庫 『残された者たち』は、過疎の集落・潮の浦の分校を舞台に、代用教員アンナと生徒たちの日常をユーモラスに描く文庫オリジナル作品です。小さな共同体に残る人びとの生活から、地方、教育、記憶の問題が見えてきます。大きな事件よりも、場に残る声や関係の細部を読む作品です。 地方青春孤独と疎外
  201. 201 2015 オールド・テロリスト オールド・テロリスト 村上龍 単行本・文藝春秋 『オールド・テロリスト』は、村上龍が老い、暴力、国家への不信を結びつけて描く長編です。高齢者たちの怒りが社会への攻撃として噴出する設定により、希望のなさと政治的な閉塞が前景化します。エンターテインメントの速度を持ちながら、老いと社会の断絶を問う作品です。 老い暴力同調圧力
  202. 202 2015 パノララ パノララ 柴崎友香 単行本・講談社 『パノララ』は、柴崎友香が視線、場所、移動の感覚を広く開く長編です。タイトルはパノラマ的に広がる世界と、どこか音のずれた感覚を同時に含んでいます。人物の移動や会話を通して、都市と記憶の見え方が少しずつ変わる作品です。 記憶芸術と表現孤独と疎外
  203. 203 2015 三人屋 さんにんや 原田ひ香 単行本・実業之日本社 『三人屋』は、三姉妹が時間帯ごとに異なる業態で営む店をめぐる連作短篇集です。同じ場所が朝、昼、夜で別の顔を持つことで、家族と労働、店に集まる人びとの関係が浮かび上がります。食と商いの場を通じて、日常の孤独や再出発を軽やかに読ませる作品です。 家族労働
  204. 204 2015 スクラップ・アンド・ビルド スクラップ・アンド・ビルド 羽田圭介 初出・文學界 2015年 無職で資格試験の勉強と転職活動を続ける28歳の健斗は、母と、87歳の祖父との三人暮らし。「早う死にたか」と口癖のように繰り返す祖父に対し、健斗は介護職の友人の助言をひねって解釈し、あえて何もかも世話を焼いて自立の機会を奪う「足し算の介護」によって、祖父の望む穏やかな死を後押ししようと思い立つ。同時に… 家族老いケアと介護 第153回 芥川賞
  205. 205 2015 心臓異色 しんぞういしょく 中島たい子 単行本・光文社 『心臓異色』は、中島たい子が身体の違和感と人間関係のずれを扱う小説として整理できます。心臓という生命の中心と、「異色」という言葉が、普通であることから外れる感覚を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体孤独と疎外
  206. 206 2015 消滅世界 しょうめつせかい 村田沙耶香 単行本・河出書房新社 『消滅世界』は、人工授精による出産が標準となり、夫婦間の性が忌避される社会を描く長編です。生殖、恋愛、家族の制度を極端に組み替えることで、当たり前とされる身体や親密さの規範を反転させます。架空社会の設定を通して、ジェンダーと同調圧力の怖さを読む作品です。 ジェンダー同調圧力
  207. 207 2015 匿名者のためのスピカ とくめいしゃのためのすぴか 島本理生 単行本・祥伝社 『匿名者のためのスピカ』は、島本理生が名前を持たない/名乗れない存在へのまなざしを扱う小説として整理できます。スピカという星の名は、匿名性の闇の中にある小さな指標のように働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 アイデンティティ孤独と疎外恋愛
  208. 208 2015 虚ろまんてぃっく うつろまんてぃっく 吉村萬壱 単行本・文藝春秋 『虚ろまんてぃっく』は、吉村萬壱が恋愛や欲望のロマンティックな外形を、空虚さや不穏さへずらして描く作品として整理できます。題名のひらがな表記は、甘さと不気味さが同居する感触を生みます。身体、性、孤立をめぐる違和感が、読後にざらつきを残す小説です。 恋愛身体
  209. 209 2015 ウォーク・イン・クローゼット ウォーク・イン・クローゼット 綿矢りさ 単行本・講談社 『ウォーク・イン・クローゼット』は、綿矢りさが衣服、部屋、自己像をめぐる女性の感覚を描く小説です。クローゼットは外に見せる姿を準備する場所であり、同時に隠しておきたい自分をしまう場所でもあります。親密さと自意識の揺れを、軽やかで鋭い語りで読ませる作品です。 ジェンダーアイデンティティ恋愛
  210. 210 2015 十七八より じゅうななはちより 乗代雄介 初出・「群像」2015年6月号 塾講師として働く作者の経験も背景に、十代後半の言葉やリズムをすくい取るデビュー作。若者の会話や身振りを手がかりに、青春の不安定さと都市生活の距離感を描く。のちの乗代作品につながる、観察と文体への関心が見える作品として位置づけられる。 青春言葉と言語労働
  211. 211 2015 ドール どーる 山下紘加 初出・「文藝」2015年冬号 自分だけの特別な人形を手に入れたいと思う少年の衝動を軸に、性と闇を描く作品。少年の内面にある欲望や不快感を直視し、読者を落ち着かない心理の流れへ引き込む。人形という対象を通じて、身体と所有、成長期の暴力性が浮かび上がる。出版社紹介でも、不穏な少年の衝動を前面に出したデビュー作として位置づけられている… 暴力身体 第52回 文藝賞
  212. 212 2014 A えー 中村文則 単行本・河出書房新社 『A』は、中村文則が匿名性、犯罪、倫理の境界を扱う作品集として整理できます。アルファベット一文字の題名は、固有名を失った人物や出来事の不気味さを示します。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌と掲載レコードに基づく暫定的な紹介です。 暴力アイデンティティ孤独と疎外
  213. 213 2014 かぜ 青山七恵 単行本・河出書房新社 『風』は、青山七恵が移ろいやすい感情や生活の変化を、静かな文体で扱う小説として整理できます。風という題名は、人物の内面を直接説明するよりも、周囲の空気や関係の揺れとして読ませます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 孤独と疎外恋愛記憶
  214. 214 2014 不自由な絆 ふじゆうなきずな 朝比奈あすか 単行本・光文社 『不自由な絆』は、朝比奈あすかが人と人を結ぶ関係の重さを描く小説として整理できます。絆は美しいつながりではなく、家族や友人関係を縛る不自由さとして現れます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 家族同調圧力孤独と疎外
  215. 215 2014 ボラード病 ぼらーどびょう 吉村萬壱 単行本・文藝春秋 『ボラード病』は、海辺の新興住宅地に越してきた家族が、地域の同調圧力に絡め取られていく吉村萬壱の小説です。安全や秩序を掲げる共同体が、異物を排除する病のようなものとして描かれます。寓話的な設定によって、災害後の町づくり、家族、排除の感覚が不穏に重なります。 同調圧力家族災害
  216. 216 2014 スープの国のお姫様 すーぷのくにのおひめさま 樋口直哉 単行本・小学館 『スープの国のお姫様』は、食べることや料理をめぐる感覚から、家族やケアのあり方を描く樋口直哉の小説として整理できます。スープという身近な料理は、身体を温めるだけでなく、関係を結び直す媒介になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 家族ケアと介護
  217. 217 2014 清とこの夜 きよとこのよる 広小路尚祈 単行本・中央公論新社 『清とこの夜』は、夜の時間を背景に、人物の孤独や記憶を描く広小路尚祈の小説として整理できます。題名は人名と「この夜」を結び、特定の一夜に凝縮される関係や感情を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 孤独と疎外記憶家族
  218. 218 2014 星よりひそかに ほしよりひそかに 柴崎友香 単行本・幻冬舎 『星よりひそかに』は、柴崎友香が身近な生活のなかにある気配や感情を静かに追う小説として整理できます。大きな事件よりも、視線や場所の移ろい、言葉にならない思いが重視されます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 恋愛孤独と疎外記憶
  219. 219 2014 彼女の家計簿 かのじょのかけいぼ 原田ひ香 単行本・光文社 『彼女の家計簿』は、戦前から三世代にわたる女性たちを、家計簿という生活記録で結ぶ原田ひ香の長篇です。数字や支出の記録は、家族史、労働、ジェンダーの記憶を読み解く手がかりになります。日々の細部から女性の生の選択をたどる作品です。 家族ジェンダー労働
  220. 220 2014 きょうのできごと、十年後 きょうのできごと、じゅうねんご 柴崎友香 単行本・河出書房新社 『きょうのできごと、十年後』は、柴崎友香のデビュー作『きょうのできごと』の登場人物たちの十年後を描く続篇です。若さの一日の空気は、時間を経た生活、仕事、関係の変化として戻ってきます。大事件ではなく、都市のなかで少しずつ変わる人間関係を読む作品です。 青春記憶労働
  221. 221 2014 メタモルフォシス メタモルフォシス 羽田圭介 単行本・新潮社 『メタモルフォシス』は、SMの快楽へ深入りしていく証券マンを描く羽田圭介の小説です。仕事で求められる合理性と、身体が求める変容の欲望がずれていきます。性と労働を結びつけながら、自己像が変質していく過程を乾いた文体で追う作品です。 身体労働
  222. 222 2014 ミチルさん、今日も上機嫌 みちるさんきょうもじょうきげん 原田ひ香 単行本・集英社 『ミチルさん、今日も上機嫌』は、原田ひ香が女性の日常と気分の揺れを描く小説として整理できます。題名の明るさは、生活のなかで自分を保とうとする振る舞いにも読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 労働孤独と疎外ジェンダー
  223. 223 2014 猫の目犬の鼻 ねこのめいぬのはな 丹下健太 単行本・講談社 『猫の目犬の鼻』は、丹下健太が動物的な感覚や身近な生活の違和感を扱う作品として整理できます。視線や嗅覚を思わせる題名は、人間関係を別の感覚で捉え直す入口になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体家族孤独と疎外
  224. 224 2014 寝相 ねぞう 滝口悠生 単行本・新潮社 『寝相』は、滝口悠生の最初期作品を収める小説集で、睡眠や身体の姿勢のような無意識の領域に、人物の記憶や関係がにじみます。既存データでは新潮新人賞受賞作「楽器」を含む最初の小説集とされています。日常の細部がゆっくりずれていく語りが読みどころです。 記憶身体孤独と疎外
  225. 225 2014 女のいない男たち おんなのいないおとこたち 村上春樹 単行本・文藝春秋 『女のいない男たち』は、「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「木野」などを収める村上春樹の短篇集です。女性を失った、あるいは理解できなかった男性たちの孤独が、語り直しや回想を通じて浮かび上がります。恋愛小説でありながら、喪失後に残る空白そのものを読む作品集です。 恋愛孤独と疎外記憶
  226. 226 2014 おれたちの故郷 おれたちのふるさと 佐川光晴 単行本・集英社 『おれたちの故郷』は、佐川光晴が少年たちの成長と場所への思いを描く小説です。故郷は単なる懐かしい場所ではなく、十代の人物が他者と併走しながら自分を作る場として現れます。青春と共同性を、まっすぐな語りで読ませる作品です。 青春家族同調圧力
  227. 227 2014 Red れっど 島本理生 単行本・中央公論新社 『Red』は、専業主婦がかつての恋人との再会をきっかけに、不倫と欲望へ踏み込んでいく島本理生の長篇です。家庭、性愛、母であることの役割が衝突し、主人公の身体と自己決定が問われます。官能的な筆致で、恋愛の昂揚と生活の閉塞を同時に描く作品です。 恋愛ジェンダー
  228. 228 2014 聖地Cs せいちしーず 木村友祐 単行本・新潮社 『聖地Cs』は、木村友祐が聖地と名づけられる場所の力や、土地をめぐる記憶を扱う小説として整理できます。場所は信仰や観光の対象であるだけでなく、共同体の傷や欲望を集めるものとして読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評記録に基づく暫定的な紹介です。 信仰記憶地方
  229. 229 2014 臣女 しんにょ 吉村萬壱 単行本・徳間書店 『臣女』は、吉村萬壱が身体、服従、権力関係を不穏に描く小説として整理できます。題名は、誰かに従属する女性像や、支配の構造を想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体ジェンダー暴力
  230. 230 2014 鉄童の旅 てつどうのたび 佐川光晴 単行本・実業之日本社 『鉄童の旅』は、佐川光晴が鉄道と少年の移動を結びつける成長小説として整理できます。旅は遠くへ行くことだけでなく、自分の居場所や家族との距離を測る経験になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 青春家族労働
  231. 231 2014 鳥たち とりたち 吉本ばなな 単行本・集英社 『鳥たち』は、吉本ばななが移動、喪失、自由への感覚を鳥のイメージに重ねる小説として整理できます。鳥は、どこかへ飛び去るものとして、残された人の孤独や再生を映します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 死と喪失家族孤独と疎外
  232. 232 2014 あなたへの歌 あなたへのうた 楊逸 単行本・中央公論新社 『あなたへの歌』は、楊逸が他者へ向ける言葉と、移動する人びとの記憶を扱う小説として整理できます。歌という形式は、直接届かない思いを誰かへ送るための媒介になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 移民と越境家族言葉と言語
  233. 233 2014 指の骨 ゆびのほね 高橋弘希 初出・「新潮」2014年11月号 太平洋戦争中の南方戦線で負傷した一等兵の「私」が、臨時野戦病院で過ごす日々を語る戦争小説。食料の調達、戦友の死、退避を余儀なくされる状況を通じて、戦場の空白と狂気が描かれる。身体の損傷と形見としての骨が、忘れられた戦場の記憶を呼び戻す。静かな語りのなかに、死が日常化した場所の異様さがにじむ。 戦争身体死と喪失 第46回 新潮新人賞
  234. 234 2013 愛の夢とか あいのゆめとか 川上未映子 単行本・講談社 『愛の夢とか』は、日常のなかの小さな喪失と出会いを描く川上未映子の短篇集です。恋愛や記憶は劇的な事件としてではなく、ふとした言葉や風景の変化として現れます。リアリズムの手触りのなかに、静かな痛切さが残る作品集です。 恋愛記憶死と喪失 第49回 谷崎賞
  235. 235 2013 快楽 かいらく 青山七恵 単行本・講談社 『快楽』は、欲望の不平等を題材に、身体、性、他者からの評価を大胆に描く青山七恵の小説です。快楽は単純な喜びではなく、誰が欲望を持つことを許されるのかという社会的な問いへ広がります。静かな文体の奥で、性とジェンダーの不均衡が不穏に浮かびます。 ジェンダー同調圧力
  236. 236 2013 めぐり糸 めぐりいと 青山七恵 単行本・集英社 『めぐり糸』は、糸がめぐるように人と人の縁や記憶が結び直される青山七恵の小説です。関係は一直線に進まず、ほどけたり絡まったりしながら人物の現在を形づくります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないが、連載レコードと単行本書誌から、時間をかけて展開した作品であることが分かります。 家族記憶恋愛
  237. 237 2013 憧れの女の子 あこがれのおんなのこ 朝比奈あすか 単行本・双葉社 『憧れの女の子』は、朝比奈あすかが女性同士の視線や自己像の揺れを扱う小説として整理できます。題名の「憧れ」は、好意や羨望だけでなく、自分との差異を意識させる感情として働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 ジェンダーアイデンティティ孤独と疎外
  238. 238 2013 大地のゲーム だいちのゲーム 綿矢りさ 単行本・新潮社 『大地のゲーム』は、大震災後の近未来の大学キャンパスを舞台に、次の揺れを待つ若者たちを描く綿矢りさの長篇です。災害は出来事として終わらず、身体感覚や人間関係の底に残り続けます。青春小説の形を取りながら、世界の足場が割れる感覚を言葉にする作品です。 災害青春身体
  239. 239 2013 憤死 ふんし 綿矢りさ 単行本・河出書房新社 『憤死』は、表題作を含む綿矢りさの短篇集で、怒りや恥、身体の違和感を寓話的に扱います。日常の些細な場面から、人物の内側に溜まった毒気がふいに噴き出します。軽く読める語りの奥に、自己像を保てない不安が残る作品集です。 身体アイデンティティ孤独と疎外
  240. 240 2013 昼田とハッコウ ひるたとはっこう 山崎ナオコーラ 単行本・講談社 『昼田とハッコウ』は、二つの名前が並ぶ題名どおり、人物同士の距離や関係の変化を追う山崎ナオコーラの小説です。親密さは劇的にではなく、会話や生活の小さな差異として描かれるタイプの作品として読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 家族恋愛孤独と疎外
  241. 241 2013 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 しきさいをもたないたざきつくると、かれのじゅんれいのとし 村上春樹 単行本・文藝春秋 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、36歳の多崎つくるが高校時代の突然の絶交の謎をたどる長篇です。名古屋、東京、フィンランドへ向かう旅は、記憶の欠落と自己像の空白を埋める巡礼として進みます。抑制された語りで、友情、喪失、回復不能な時間を扱います。 記憶孤独と疎外青春
  242. 242 2013 自分を好きになる方法 じぶんをすきになるほうほう 本谷有希子 単行本・講談社 『自分を好きになる方法』は、主人公リンデの人生から六つの一日を切り出し、自己肯定の難しさを描く本谷有希子の長篇です。人生の節目を大きなドラマではなく、身体感覚や他者とのずれとして捉えます。題名の明るさと、実際の生きづらさの落差が読みどころです。 アイデンティティ身体孤独と疎外 第27回 三島賞
  243. 243 2013 おれたちの約束 おれたちのやくそく 佐川光晴 単行本・集英社 『おれたちの約束』は、佐川光晴が「おれ」から「おれたち」へ広がる関係を描く小説です。個人の正義や孤独なヒーロー像ではなく、仲間や共同性のなかで約束が意味を持つ構図が見えます。対談記事の題名にもあるように、単独者から複数者へ移る視点が読みどころです。 家族労働同調圧力
  244. 244 2013 獅子渡り鼻 ししわたりばな 小野正嗣 単行本・講談社 『獅子渡り鼻』は、親の事情で海辺の集落に預けられた少年・尊の日々を描く小野正嗣の小説です。土地の記憶、祈り、共同体の気配が、少年の視界を通じて静かに立ち上がります。海辺の集落を舞台に、家族から離された子どもの孤独と場所への感受性を描きます。 家族信仰孤独と疎外
  245. 245 2013 スナックちどり スナックちどり 吉本ばなな 単行本・文藝春秋 『スナックちどり』は、吉本ばななが小さな店や旅先の空気を通じて、喪失後の再生を描く小説として整理できます。スナックという場所は、家族でも職場でもないゆるい避難所として機能します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 死と喪失家族
  246. 246 2013 問いのない答え といのないこたえ 長嶋有 単行本・文藝春秋 『問いのない答え』は、長嶋有が問いと答えの関係をずらし、日常の会話や共同性の空白を描く長篇です。正解を求める物語ではなく、答えだけが先にあるような感覚のなかで人物たちがつながります。軽やかな文体の奥に、震災後の不確かさや言葉の扱いにくさが残ります。 言葉と言語同調圧力孤独と疎外
  247. 247 2013 忘れられたワルツ わすれられたわるつ 絲山秋子 単行本・新潮社 『忘れられたワルツ』は、絲山秋子が記憶からこぼれ落ちる感情や、日常の不意のずれを描く短篇集です。ワルツのような反復と忘却の感覚が、人物の孤独や時間の歪みを浮かび上がらせます。抑えた語りのなかで、喪失とユーモアが同居する作品です。 記憶孤独と疎外死と喪失
  248. 248 2013 わたしは妊婦 わたしはにんぷ 大森兄弟 単行本・河出書房新社 『わたしは妊婦』は、妊娠という身体の変化を手がかりに、家族、性、自己像の揺れを描く大森兄弟の小説です。妊婦である「わたし」は、祝福される存在であると同時に、周囲の視線や制度にさらされます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体母と子ジェンダー
  249. 249 2013 流転の魔女 りゅうてんのまじょ 楊逸 単行本・文藝春秋 『流転の魔女』は、楊逸が移動する女性の生と、越境のなかで変わっていく家族や記憶を描く小説として整理できます。流転という語は、土地や身分が安定しない感覚を示し、魔女という像は周囲からの異物視も思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 移民と越境ジェンダー家族
  250. 250 2013 よだかの片想い よだかのかたおもい 島本理生 単行本・集英社 『よだかの片想い』は、顔に大きなあざを持つ女性が、映画撮影をきっかけに初めての恋へ向かう島本理生の長篇です。恋愛は救済として単純化されず、身体の見られ方と自己受容の問題を伴います。題名の片想いは、相手への思いだけでなく、自分自身へ向けるまなざしにも広がります。 身体恋愛アイデンティティ
  251. 251 2013 左目に映る星 ひだりめにうつるほし 奥田亜希子 初出・「すばる」2013年11月号(投稿時タイトル「アナザープラネット」を改題) 左目だけにある近視と乱視の感覚を大切にしてきた早季子が、同じ目を持つ少年の記憶と、アイドルオタクの宮内との出会いを通して他者との距離を測り直す恋愛小説。視界のずれが、恋愛や孤独、共有できない身体感覚の比喩として働く。日常的な語りの中に、コントロールしきれない不安定さと身体感覚の濃さが残る。 身体恋愛孤独と疎外 第37回 すばる文学賞
  252. 252 2013 すっぽん心中 すっぽん しんじゅう 戌井昭人 初出・「新潮」2013年1月号掲載 休職中で行き詰まった男と、痛い目に遭いつつもあっけらかんと生きる女が、不忍池で出会い霞ヶ浦へ向かう表題作を中心にした作品集。貧しさや失敗を重く閉じ込めず、滑稽さと哀愁が混じる道行きとして描く。会話と行動のずれから、人物の孤独と生活の可笑しみがにじむ。 恋愛貧困孤独と疎外 第40回 川端賞
  253. 253 2012 愛について あいについて 白岩玄 単行本・河出書房新社 『愛について』は、今の恋人、元恋人、忘れられない相手をめぐり、愛の身勝手さや未練を描く白岩玄の恋愛短編集です。恋愛は理想化されず、相手を求める気持ちと自己防衛のあいだで揺れます。軽さのなかに、親密さの不公平さが残る作品です。 恋愛アイデンティティ孤独と疎外
  254. 254 2012 花嫁 はなよめ 青山七恵 単行本・幻冬舎 『花嫁』は、結婚や家族のイメージを手がかりに、若い女性の自己像と周囲の期待を描く青山七恵の小説です。花嫁という役割は幸福の記号である一方、人物を一つの型に押し込める圧力としても読めます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 恋愛家族ジェンダー
  255. 255 2012 すみれ すみれ 青山七恵 単行本・文藝春秋 『すみれ』は、青山七恵が若い女性の日常と、名づけがたい違和感を静かに描く小説です。すみれという小さな花の像は、華やかさよりも、身近な場所に残る感情の気配を思わせます。抑えた語りのなかで、家族や恋愛に回収されない孤独が見えてきます。 恋愛家族孤独と疎外
  256. 256 2012 プールサイドの彼方 ぷーるさいどのかなた 朝比奈あすか 単行本・実業之日本社 『プールサイドの彼方』は、水辺の境界性を背景に、若い人物の距離感や将来への不安を描く朝比奈あすかの小説です。プールサイドは日常と非日常、身体と視線が交差する場所として機能します。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 青春身体孤独と疎外
  257. 257 2012 パトロネ ぱとろね 藤野可織 単行本・集英社 『パトロネ』は、支援者や庇護者を意味する語を手がかりに、芸術、労働、他者への依存を描く藤野可織の小説として整理できます。誰かに支えられることは、保護であると同時に支配や不自由も生みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 芸術と表現労働孤独と疎外
  258. 258 2012 55歳からのハローライフ ごじゅうごさいからのハローライフ 村上龍 単行本・幻冬舎 『55歳からのハローライフ』は、定年前後の世代が仕事、家族、老いを前に再出発を探る村上龍の連作小説集です。人生の後半は穏やかな余生ではなく、労働市場や家族関係の変化にさらされる時間として描かれます。複数の人物を通じて、老いと孤独の現代的なかたちが見えてきます。 老い労働家族
  259. 259 2012 母親ウエスタン ははおやうえすたん 原田ひ香 単行本・光文社 『母親ウエスタン』は、母親という役割を西部劇的な題名でずらし、家族と女性の生き方を描く原田ひ香の小説です。母は家庭内の静かな存在ではなく、荒野を進む人物のように社会や家族の圧力に向き合います。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 母と子家族ジェンダー
  260. 260 2012 ひらいて ひらいて 綿矢りさ 単行本・新潮社 『ひらいて』は、片想いの相手とその恋人の関係に介入していく女子高生・愛の暴走を描く綿矢りさの青春小説です。恋は純粋な感情ではなく、他者の身体や秘密へ踏み込む衝動として描かれます。学校という狭い共同体のなかで、恋愛、性、支配欲が鋭く交差します。 恋愛青春
  261. 261 2012 百年の憂鬱 ひゃくねんのゆううつ 伏見憲明 単行本・ポット出版 『百年の憂鬱』は、伏見憲明が長い時間の憂鬱を、性、ジェンダー、孤独の問題と結びつけて描く作品として整理できます。百年という誇張された時間は、個人の悩みを社会的な制度や歴史の重さへ広げます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 ジェンダー孤独と疎外
  262. 262 2012 隠し事 かくしごと 羽田圭介 単行本・河出書房新社 『隠し事』は、秘密を抱えた人間関係を通じて、家族や恋愛の見えない緊張を描く羽田圭介の小説です。隠すことは単なる嘘ではなく、自分を守るための姿勢であり、同時に他者との距離を生みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 家族記憶孤独と疎外
  263. 263 2012 仮り住まい かりずまい 丹下健太 単行本・河出書房新社 『仮り住まい』は、住まいが一時的であることの不安を通じて、生活、記憶、孤独を描く丹下健太の作品です。家は安定した場所ではなく、いつか離れる前提の仮の居場所として立ち上がります。文芸誌掲載作として、移動する生活の感覚を読む作品です。 家族記憶孤独と疎外
  264. 264 2012 夜の隅のアトリエ よるのすみのあとりえ 木村紅美 単行本・文藝春秋 『夜の隅のアトリエ』は、アトリエという創作の場を手がかりに、芸術、孤独、記憶を描く木村紅美の小説です。夜の隅という場所は、誰にも見えない作業や感情が残る領域を思わせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 芸術と表現孤独と疎外記憶
  265. 265 2012 LOVE & SYSTEMS らぶあんどしすてむず 中島たい子 単行本・幻冬舎 『LOVE & SYSTEMS』は、恋愛を感情だけでなく、社会や制度の仕組みとして見つめる中島たい子の小説です。愛とシステムという並置は、親密な関係が個人の気持ちだけで成立しないことを示します。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 恋愛同調圧力労働
  266. 266 2012 惑いの森 まどいのもり 中村文則 単行本・イースト・プレス 『惑いの森』は、バーに現れる男や手紙を待つ郵便局員など、日常の人物たちを連鎖させる中村文則の50篇の短編集です。森は現実の場所というより、迷い込んだ人びとの記憶と孤独が交差する比喩として働きます。短い形式のなかで、不穏さと愛おしさが同居します。 孤独と疎外記憶恋愛
  267. 267 2012 マリアージュ・マリアージュ マリアージュ・マリアージュ 金原ひとみ 単行本・新潮社 『マリアージュ・マリアージュ』は、結婚をめぐる複数の男女関係を描く金原ひとみの短篇集です。結婚は安定したゴールではなく、身体、欲望、制度が絡む不安定な関係として扱われます。華やかな題名の反復の奥に、夫婦や恋愛への違和感が残ります。 夫婦恋愛ジェンダー
  268. 268 2012 迷宮 めいきゅう 中村文則 単行本・新潮社 『迷宮』は、得体の知れない引力に動かされる人物を通して、記憶、罪、孤独を描く中村文則の小説です。迷宮は謎解きの舞台であると同時に、人物の内面から抜け出せない感覚を示します。暗い吸引力を持つ語りが、暴力と自己認識の問題を掘り下げます。 暴力記憶孤独と疎外
  269. 269 2012 ブラスデイズ ぶらすでいず 中山智幸 単行本・NHK出版 『ブラスデイズ』は、吹奏楽や音楽活動を思わせる題名を通じて、青春と集団の時間を描く中山智幸の小説です。音を合わせる行為は、個人の感情と共同体の規律を同時に浮かび上がらせます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 青春芸術と表現同調圧力
  270. 270 2012 七緒のために ななおのために 島本理生 単行本・講談社 『七緒のために』は、誰かのために生きることと、自分の感情を保つことの境界を描く島本理生の小説として整理できます。題名の「ために」は、献身であると同時に、関係への囚われも示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 恋愛家族記憶
  271. 271 2012 盗まれた顔 ぬすまれたかお 羽田圭介 単行本・幻冬舎 『盗まれた顔』は、指名手配犯の顔を記憶して追う見当たり捜査班の刑事を描く羽田圭介の小説です。顔を覚える仕事は、他者のアイデンティティを管理する労働であると同時に、見る側の自己認識も揺さぶります。警察小説の形を取りながら、身体、記憶、監視の問題へ広がります。 アイデンティティ労働テクノロジー
  272. 272 2012 佐渡の三人 さどのさんにん 長嶋有 単行本・講談社 『佐渡の三人』は、佐渡という島の土地性を背景に、三人の人物の関係や記憶を描く長嶋有の小説です。島は閉じた場所でありながら、外から来る者と土地に残るものを結びつけます。長嶋作品らしい抑えたユーモアのなかで、家族や共同体への距離が見えてきます。 家族記憶孤独と疎外
  273. 273 2012 しろいろの街の、その骨の体温の しろいろのまちの、そのほねのたいおんの 村田沙耶香 単行本・朝日新聞出版 『しろいろの街の、その骨の体温の』は、ニュータウンで思春期を迎える結佳を通じて、スクールカースト、性の目覚め、身体への違和感を描く村田沙耶香の長編です。白い街の均質さは、子どもたちの序列や欲望をかえって際立たせます。学校と身体の圧力を、息苦しい成長の物語として読む作品です。 青春身体 第26回 三島賞
  274. 274 2012 週末カミング しゅうまつカミング 柴崎友香 単行本・角川書店 『週末カミング』は、週末という限られた時間を通じて、都市で暮らす人物の移動や感情の変化を描く柴崎友香の小説です。来るものを待つ感覚は、恋愛や記憶、生活のリズムと重なります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 記憶恋愛孤独と疎外
  275. 275 2012 タダイマトビラ タダイマトビラ 村田沙耶香 単行本・新潮社 『タダイマトビラ』は、家族という制度になじめない少女が「家庭」への渇望をこじらせていく村田沙耶香の長編です。家に帰る言葉である「ただいま」は、安心ではなく、入れない扉の感覚として反転します。家族、同調圧力、自己像のゆがみを不穏に描く作品です。 家族同調圧力アイデンティティ
  276. 276 2012 田中慎弥の掌劇場 たなかしんやのてのひらげきじょう 田中慎弥 単行本・毎日新聞出版 『田中慎弥の掌劇場』は、新聞連載から生まれた短い小説を収める掌編集です。短い形式のなかで、孤独、記憶、死の気配が圧縮され、長編とは別の鋭さで田中慎弥の暗い感触が現れます。掌編という制約が、語りの省略と余白を強くしています。 孤独と疎外記憶死と喪失
  277. 277 2012 トリガール! とりがーる! 中村航 単行本・角川マガジンズ 『トリガール!』は、人力飛行機サークルに入った女子大生を描く中村航の青春スポーツ小説です。ものづくりと飛行への挑戦は、仲間との衝突や自己認識の変化と結びつきます。理系サークルの共同作業を通じて、青春、技術、集団の熱を描く作品です。 青春テクノロジー同調圧力
  278. 278 2012 わたしがいなかった街で わたしがいなかったまちで 柴崎友香 単行本・新潮社 『わたしがいなかった街で』は、柴崎友香が、経験していない戦争や過去の映像と、現在の都市生活を重ねる小説です。自分がいなかった場所や時間をどう想像するかが、記憶と責任の問いになります。静かな語りのなかで、戦争の記録と個人の日常が交差します。 戦争記憶孤独と疎外
  279. 279 2012 私の中の男の子 わたしのなかのおとこのこ 山崎ナオコーラ 単行本・講談社 『私の中の男の子』は、自分の内側にある「男の子」という感覚を通じて、ジェンダーと身体の境界を描く山崎ナオコーラの小説です。性別は固定された属性ではなく、語り手の内面で動き続ける違和感として現れます。軽やかな文体で、自己認識と社会の分類のずれを読む作品です。 ジェンダー身体アイデンティティ
  280. 280 2012 狭小邸宅 きょうしょうていたく 新庄耕 初出・「すばる」2012年11月号 不動産営業会社で働く若い社員を主人公に、ノルマ、叱責、顧客対応に追われる日々を描く職場小説。狭い住宅を売る仕事の具体性が、労働の過酷さと都市生活の息苦しさを結びつける。成長譚の枠組みを持ちながら、ブラックな職場環境を乾いたリアリズムで読ませる作品である。 労働貧困同調圧力 第36回 すばる文学賞
  281. 281 2012 肉骨茶 にくこつちゃ 高尾長良 初出・「新潮」2012年11月号 シンガポール・マレーシアへの旅の途中で母のもとを抜け出した17歳の赤猪子を描く。食べ物が自分の身体に蓄積していくことへの恐怖から逃れようとする彼女は、友人ゾーイーの海辺の別荘に身を寄せる。食、身体、母子関係を通じて、人間であることへの拒絶を激しく描くデビュー作。 身体母と子 第44回 新潮新人賞
  282. 282 2012 給水塔と亀 きゅうすいとう と かめ 津村記久子 初出・「文学界」2012年3月号掲載 定年後に幼いころ暮らした土地へ戻ってきた独身男性を主人公に、給水塔の記憶と前住人が残した亀をめぐって老いと孤独を見つめる短篇。大きな事件ではなく、製麺所の排水、古い団地、ベランダからの風景といった細部が、人生の時間の流れを静かに立ち上げる。津村記久子らしい抑制された語りが、再出発のかすかな意欲を読み… 老い孤独と疎外記憶 第39回 川端賞
  283. 283 2011 あかりの湖畔 あかりのこはん 青山七恵 単行本・中央公論新社 『あかりの湖畔』は、湖畔という静かな場所を背景に、家族や記憶の揺らぎを描く青山七恵の小説です。人物の感情は大きく叫ばれるよりも、風景や会話の間ににじみます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名に基づく暫定的な紹介です。 家族記憶孤独と疎外
  284. 284 2011 わたしの彼氏 わたしのかれし 青山七恵 単行本・講談社 『わたしの彼氏』は、恋人という近しい存在を通じて、自己認識と他者への期待のずれを描く青山七恵の小説です。平明な語りのなかで、恋愛の甘さよりも、人が関係に名前を与えようとするぎこちなさが目立ちます。若い人物の感情を、淡い距離感で読む作品です。 恋愛アイデンティティ同調圧力
  285. 285 2011 BANG! BANG! BANG! ばんばんばん 朝比奈あすか 単行本・講談社 『BANG! BANG! BANG!』は、題名の破裂音が示すように、若い人物の感情や関係の衝突を強く響かせる朝比奈あすかの小説です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないが、青春の勢いと暴発する不安を読む作品として暫定的に整理できます。軽快さと息苦しさが併存する読み味です。 青春暴力アイデンティティ
  286. 286 2011 ハコブネ ハコブネ 村田沙耶香 単行本・集英社 『ハコブネ』は、自分の性別や身体に違和感を抱く女性たちを通して、ジェンダー、性、身体の境界を描く村田沙耶香の長編です。箱舟という題名は、社会から隔てられた小さな共同体や避難場所を思わせます。人物の切実さは、身体をめぐる違和感と他者への欲望の両方から立ち上がります。 ジェンダー身体
  287. 287 2011 人生オークション じんせいおーくしょん 原田ひ香 単行本・講談社 『人生オークション』は、人生を売りに出すような題名を通じて、家族、労働、お金の感覚を描く原田ひ香の作品です。価値がつくものとつかないものの差が、人物の生活の切実さを照らします。日常的な語りのなかに、貧困や関係の再配置が見えてきます。 労働貧困家族
  288. 288 2011 春待ち海岸カルナヴァル はるまちかいがんかるなゔぁる 木村紅美 単行本・新潮社 『春待ち海岸カルナヴァル』は、海辺の土地と春を待つ時間を重ね、記憶や人間関係の揺れを描く木村紅美の小説です。カルナヴァルという祝祭的な語は、静かな海岸の風景に非日常の気配を差し込みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 記憶孤独と疎外家族
  289. 289 2011 黒うさぎたちのソウル くろうさぎたちのそうる 木村紅美 単行本・集英社 『黒うさぎたちのソウル』は、ソウルという海外都市を舞台に、移動と孤独の感覚を描く木村紅美の作品です。黒いうさぎという像は、かわいらしさだけでなく、夜や不安の気配も帯びています。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 移民と越境記憶孤独と疎外
  290. 290 2011 こちらあみ子 こちらあみこ 今村夏子 単行本・筑摩書房 『こちらあみ子』は、周囲と噛み合わない少女あみ子の言動を通じて、家族、学校、共同体の残酷さを描く今村夏子のデビュー単行本です。純真さは美談としてではなく、他者とのずれを増幅する力として働きます。簡潔な文体のなかで、笑いと痛みが同時に立ち上がる作品です。 青春家族同調圧力 第24回 三島賞
  291. 291 2011 心はあなたのもとに こころはあなたのもとに 村上龍 単行本・文藝春秋 『心はあなたのもとに』は、村上龍が恋愛と病、身体の問題を重ねて描く長編です。親密な関係は感情だけでは支えきれず、医療、経済、身体の条件によって揺さぶられます。恋愛小説でありながら、現代社会の生の不安を読む作品でもあります。 恋愛身体
  292. 292 2011 末裔 まつえい 絲山秋子 単行本・講談社 『末裔』は、血筋や受け継がれるものをめぐって、家族と記憶の問題を描く絲山秋子の小説です。題名は、人物が自分の始まりではなく、誰かの後に続く存在として生きている感覚を示します。乾いた文体のなかに、家の歴史と自己認識の不穏さが漂います。 家族記憶アイデンティティ
  293. 293 2011 マザーズ マザーズ 金原ひとみ 単行本・新潮社 『マザーズ』は、小説家、モデル、専業主婦という三人の母親を通して、育児の孤独、身体の疲弊、母であることへの圧力を描く金原ひとみの長編です。多視点の構成により、母性を一枚岩の美徳としてではなく、生活を侵食する制度や感情として浮かび上がらせます。息苦しさのなかに、女性たちの怒りと切実さが強く残ります。 母と子ケアと介護ジェンダー
  294. 294 2011 虹色と幸運 にじいろとこううん 柴崎友香 単行本・筑摩書房 『虹色と幸運』は、柴崎友香らしい観察の文体で、都市の日常に差す色や偶然を拾う小説です。虹色や幸運は大きな救済ではなく、人物の生活のなかにふと現れて消える感覚として読めます。恋愛、記憶、孤独が、静かな風景描写のなかに沈んでいます。 恋愛記憶孤独と疎外
  295. 295 2011 ニキの屈辱 にきのくつじょく 山崎ナオコーラ 単行本・河出書房新社 『ニキの屈辱』は、山崎ナオコーラが女性の自己像、身体、他者からの評価を描く小説です。屈辱という強い語は、社会的な視線や恋愛関係のなかで、人物が自分の輪郭を傷つけられる感覚を示します。軽い語り口の背後に、ジェンダーと身体の痛みが残ります。 ジェンダー身体同調圧力
  296. 296 2011 ぬるい毒 ぬるいどく 本谷有希子 単行本・新潮社 『ぬるい毒』は、学生時代に現れた得体の知れない男・向井との関係に、女性が長く絡め取られていく本谷有希子の小説です。暴力は分かりやすい激しさではなく、ぬるく続く支配や依存として描かれます。恋愛、孤独、自己破壊が、息苦しい一人称の感覚で迫ります。 恋愛暴力孤独と疎外 第33回 野間新人賞
  297. 297 2011 王国 おうこく 中村文則 単行本・河出書房新社 『王国』は、中村文則が犯罪、支配、孤独をめぐって描く暗い寓話的な小説です。王国という語は安定した共同体ではなく、力や欲望によって作られる閉じた支配空間を思わせます。都市の裏側にある暴力と、そこに巻き込まれる個人の不安が読みどころです。 暴力孤独と疎外労働
  298. 298 2011 おれたちの青空 おれたちのあおぞら 佐川光晴 単行本・集英社 『おれたちの青空』は、佐川光晴が若者たちの生活、家族、社会の条件を描く小説です。青空という明るい像の下で、人物たちは貧しさや家庭の問題から完全には自由になれません。青春小説のかたちを取りながら、生活の切実さを読む作品です。 青春家族貧困
  299. 299 2011 すべて真夜中の恋人たち すべてまよなかのこいびとたち 川上未映子 単行本・講談社 『すべて真夜中の恋人たち』は、孤独な校閲者・冬子と年上の物理教師・三束さんの出会いを描く川上未映子の長編です。真夜中の光や静けさは、都市で働く女性の孤独と、他者に近づこうとする繊細な感情を照らします。恋愛小説でありながら、労働、孤独、自己認識の物語として読めます。 恋愛孤独と疎外労働
  300. 300 2011 スウィート・ヒアアフター スウィート・ヒアアフター 吉本ばなな 単行本・幻冬舎 『スウィート・ヒアアフター』は、事故で恋人を失った女性が、喪失の後の時間を生き直していく吉本ばななの小説です。既存データでは震災後の再生の感覚も示されており、個人の死別と社会全体の傷が重ねて読めます。やわらかな文体のなかで、痛切さと回復への気配が共存します。 死と喪失恋愛災害
  301. 301 2011 東京ロンダリング とうきょうろんだりんぐ 原田ひ香 単行本・集英社 『東京ロンダリング』は、事故物件に一定期間住むことで部屋の履歴を洗い流す女性を描く原田ひ香の小説です。住まいは安心の場所ではなく、死や過去の痕跡を引き受ける仕事の現場になります。東京の部屋をめぐって、孤独、労働、喪失が交差します。 死と喪失労働孤独と疎外
  302. 302 2011 ビリジアン ビリジアン 柴崎友香 単行本・毎日新聞社 『ビリジアン』は、色彩、風景、記憶の手ざわりを、柴崎友香らしい観察の文体で描く小説です。ビリジアンという色名は、人物の感情を説明するのではなく、視覚的な印象として残します。都市や郊外の日常のなかで、孤独と芸術的な感受性が静かに重なります。 記憶芸術と表現孤独と疎外
  303. 303 2011 「ワタクシハ」 ワタクシハ 羽田圭介 単行本・講談社 『「ワタクシハ」』は、就職活動に翻弄される元バンドマンの大学生を描く羽田圭介の就活小説です。自己PRや面接の言葉が、主人公の音楽への未練や自己像をゆがめていきます。労働へ入る前の儀礼としての就活を、乾いた違和感とともに読む作品です。 労働青春アイデンティティ
  304. 304 2011 獅子頭 しーずとう 楊逸 単行本・朝日新聞出版 『獅子頭』は、獅子舞を思わせる題名を通じて、移動する人びとの記憶や家族のつながりを描く楊逸の小説です。中国語圏の文化的な記憶と日本語で書く現在が重なり、越境の感覚が作品の核になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 移民と越境家族記憶
  305. 305 2011 犬とハモニカ いぬ と はもにか 江國香織 初出・「新潮」2011年6月号掲載 『犬とハモニカ』は、孤独、記憶、男女の間に生じる微妙な感情を描く江國香織の短篇です。身近な事物である犬とハモニカのイメージが、語りの中で人と人の距離をやわらかく照らします。大きな事件よりも、感情のかすかな揺れを読む作品です。 恋愛記憶孤独と疎外 第38回 川端賞
  306. 306 2010 悪と仮面のルール あくとかめんのるーる 中村文則 単行本・講談社 『悪と仮面のルール』は、悪になるよう育てられた青年を軸に、犯罪、宿命、自己形成を描く中村文則の長篇です。仮面という題名が示すように、人物は本当の顔と与えられた役割のあいだで揺れます。ノワール的な緊張を持ちながら、悪を選ぶことと選ばされることの境界を問う作品です。 暴力アイデンティティ家族
  307. 307 2010 あのとき始まったことのすべて あのときはじまったことのすべて 中村航 単行本・角川書店 『あのとき始まったことのすべて』は、過去のある瞬間から始まった感情や関係を振り返る中村航の小説です。恋愛や青春の出来事は、後になって意味を変え、現在の語りのなかで再構成されます。平易な文体で、記憶のなかの始まりをたどる読み味があります。 恋愛青春記憶
  308. 308 2010 お別れの音 おわかれのおと 青山七恵 単行本・文藝春秋 『お別れの音』は、別れの瞬間やその前後に残る気配を、青山七恵らしい抑制された文体で描く作品です。音という題名は、はっきりした出来事よりも、生活のなかに残響する感情を思わせます。家族や恋愛の終わりを、静かな距離感で読む小説として整理できます。 恋愛家族死と喪失
  309. 309 2010 あられもない祈り あられもないいのり 島本理生 単行本・河出書房新社 『あられもない祈り』は、支配的な恋愛関係のなかに自分を置き続ける女性の苦しさを描く島本理生の小説です。親密さは救いであると同時に、相手に自分を明け渡してしまう危うさも帯びています。痛切な恋愛小説であり、身体と自己肯定の問題を読む作品です。 恋愛身体ジェンダー
  310. 310 2010 月曜日の朝へ げつようびのあさへ 朝比奈あすか 単行本・講談社 『月曜日の朝へ』は、週の始まりである月曜の朝に向かう感覚を通じて、若い人物の生活と不安を描く朝比奈あすかの作品です。日常の時間割や働くことの圧力が、人物の気持ちを少しずつ追い込みます。平明な語りのなかに、青春から社会へ出る時期の息苦しさが表れます。 青春労働孤独と疎外
  311. 311 2010 彼女のしあわせ かのじょのしあわせ 朝比奈あすか 単行本・光文社 『彼女のしあわせ』は、女性にとっての幸福が何によって測られるのかを、家族、恋愛、仕事の文脈から描く朝比奈あすかの小説です。題名の「彼女」は、誰かに見られる存在であると同時に、自分で幸福を選び直す存在でもあります。日常的な場面から、同調圧力と自己決定の問題が見えてきます。 ジェンダー恋愛家族
  312. 312 2010 やわらかな棘 やわらかなとげ 朝比奈あすか 単行本・幻冬舎 『やわらかな棘』は、傷つけるものが必ずしも硬く鋭いとは限らないことを、親密な関係のなかに描く朝比奈あすかの小説です。家庭や恋愛の穏やかな場面に、言葉や期待が刺さるような感覚が潜みます。日常のやわらかさと息苦しさの両方を読む作品です。 家族恋愛ジェンダー
  313. 313 2010 地上で最も巨大な死骸 ちじょうでもっともきょだいなしがい 飯塚朝美 単行本・新潮社 『地上で最も巨大な死骸』は、表題作と「クロスフェーダーの曖昧な光」を収めた飯塚朝美の単行本です。巨大な死骸というイメージは、死や身体の存在感を過剰なスケールで立ち上げます。現時点では詳細な内容資料が限られるため、死と身体をめぐる不穏な作品集として暫定的に整理します。 死と喪失身体芸術と表現
  314. 314 2010 団地の女学生 だんちのじょがくせい 伏見憲明 単行本・集英社 『団地の女学生』は、団地という生活空間と女学生の視点を結びつけ、家族、学校、性をめぐる閉塞を描く伏見憲明の小説です。集合住宅の近さは共同性であると同時に、見られることや噂の圧力にもなります。成長の物語として、都市郊外の生活感とジェンダーの問題を読めます。 青春ジェンダー家族
  315. 315 2010 アクアノートとクラゲの涙 あくあのーととくらげのなみだ 樋口直哉 単行本・メディアファクトリー 『アクアノートとクラゲの涙』は、水中を思わせるイメージとクラゲの浮遊感を通じて、記憶や孤独を描く樋口直哉の小説です。題名の柔らかい幻想性は、現実から少し離れた視界を与えます。公開資料で内容細部を確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲での暫定紹介です。 記憶孤独と疎外青春
  316. 316 2010 うちに帰ろう うちにかえろう 広小路尚祈 単行本・文藝春秋 『うちに帰ろう』は、家へ帰るという素朴な動作を通じて、家族や生活の拠点を見つめ直す広小路尚祈の小説です。帰る場所は安心だけでなく、過去や関係の重さを引き受ける場所でもあります。平明な題名のなかに、家族と地方的な生活感への問いが込められています。 家族記憶孤独と疎外
  317. 317 2010 星が吸う水 ほしがすうみず 村田沙耶香 単行本・講談社 『星が吸う水』は、性をめぐる固定観念に違和感を抱く女性たちを描いた村田沙耶香の作品集です。身体や欲望が社会の規範によってどう名づけられるのかが、奇妙さと切実さを伴って描かれます。ジェンダー、性、同調圧力をめぐる村田作品の重要な関心が見える一冊です。 ジェンダー身体
  318. 318 2010 見知らぬ人へ、おめでとう みしらぬひとへおめでとう 木村紅美 単行本・講談社 『見知らぬ人へ、おめでとう』は、見知らぬ相手に向けた祝福という奇妙な距離感から、他者との関係を描く木村紅美の作品です。直接の親密さではなく、社会のなかですれ違う人びとへの想像が物語を動かします。都市的な孤独と、言葉によって関係を作ることの危うさが読みどころです。 孤独と疎外言葉と言語家族
  319. 319 2010 この世は二人組ではできあがらない このよはふたりぐみではできあがらない 山崎ナオコーラ 単行本・新潮社 『この世は二人組ではできあがらない』は、恋愛や結婚を二人組の単位で考える社会の前提を問い直す山崎ナオコーラの小説です。親密さは一対一の完成形ではなく、複数の関係や距離の取り方のなかで揺れます。ジェンダー、恋愛、共同性を、軽やかな文体で考える作品です。 恋愛ジェンダー同調圧力
  320. 320 2010 コトリトマラズ ことりとまらず 栗田有起 単行本・集英社 『コトリトマラズ』は、止まらずに動き続ける小鳥のような感覚を通じて、人物の落ち着かなさや生活の変化を描く栗田有起の小説です。定住できない心の動きと、日常の小さなずれが物語の軸になります。軽やかな題名の奥に、孤独と移動の感覚が見えます。 孤独と疎外家族記憶
  321. 321 2010 埋葬 まいそう 横田創 単行本・早川書房 『埋葬』は、死者を葬る行為を通じて、記憶、喪失、残された者の時間を描く横田創の小説です。埋葬は終わらせる儀式であると同時に、過去を地中に置いたまま忘れられない行為でもあります。静かな不穏さのなかで、死と生活の境界を読む作品です。 死と喪失記憶家族
  322. 322 2010 真綿荘の住人たち まわたそうのじゅうにんたち 島本理生 単行本・文藝春秋 『真綿荘の住人たち』は、下宿や共同住宅を思わせる場所に集まる人びとの孤独とつながりを描く島本理生の作品です。住人たちは近くにいながら、それぞれの痛みや幸福の基準を抱えています。真綿のような柔らかさと息苦しさが同居する、関係性の小説です。 恋愛家族孤独と疎外
  323. 323 2010 マイルド生活スーパーライト まいるどせいかつすーぱーらいと 丹下健太 単行本・河出書房新社 『マイルド生活スーパーライト』は、軽く薄い生活感を題名に掲げながら、日常の疲労や空虚さを描く丹下健太の小説です。強い事件よりも、生活の温度が下がっていくような感覚が中心にあります。公開資料では内容細部が限られるため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 労働孤独と疎外貧困
  324. 324 2010 もしもし下北沢 もしもししもきたざわ 吉本ばなな 単行本・毎日新聞社 『もしもし下北沢』は、父の死後に母と娘が下北沢へ移り住み、喪失から少しずつ生活を立て直す吉本ばななの長篇です。街の店や人との関わりが、母娘の傷を癒やす場として機能します。死別の痛みと都市の温かさが同時に描かれる、再生の物語です。 死と喪失母と子家族
  325. 325 2010 寝ても覚めても ねてもさめても 柴崎友香 単行本・河出書房新社 『寝ても覚めても』は、突然姿を消した恋人と瓜二つの顔を持つ男に出会った朝子の長い恋を描く柴崎友香の長篇です。恋愛の選択は、過去の記憶と現在の生活がどのように重なるかという問題として描かれます。大阪や東京を行き来する時間のなかで、同じ顔と違う人生をめぐる不穏な感覚が残ります。 恋愛記憶アイデンティティ 第32回 野間新人賞
  326. 326 2010 おれのおばさん おれのおばさん 佐川光晴 単行本・集英社 『おれのおばさん』は、少年院出身の少年が叔母の営む学習塾に引き取られ、居場所を作っていく佐川光晴の小説です。家族の外側にあるケアの場が、少年の成長と社会復帰を支えます。教育、貧困、家族の再編を、少年の視点に近い手触りで読む作品です。 青春家族ケアと介護
  327. 327 2010 祝福 しゅくふく 長嶋有 単行本・河出書房新社 『祝福』は、長嶋有らしい抑えたユーモアで、日常の会話や記憶のずれをすくう作品です。大きな事件よりも、人が誰かを祝う、あるいは祝福できない瞬間の微妙な距離に焦点があります。平明な語りのなかで、家族や友人関係に残る孤独が静かに見えてきます。 家族記憶孤独と疎外
  328. 328 2010 それいゆ それいゆ 生田紗代 単行本・角川書店 『それいゆ』は、題名が示す光や明るさとは対照的に、若い人物の自己認識や恋愛の揺れをたどる小説として整理できます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌情報と作者の同時期作品の文脈に基づく暫定的な紹介です。明るさに向かう感覚と、都市的な孤独のあいだに読みどころがあります。 青春恋愛アイデンティティ
  329. 329 2010 とうさんは、大丈夫 とうさんは、だいじょうぶ 佐川光晴 単行本・講談社 『とうさんは、大丈夫』は、父と子、家族の安心と不安を題名の一文に集める佐川光晴の小説です。公開資料で内容細部までは確認できていないが、家族のなかで支える側と支えられる側が入れ替わる感覚を読む作品として整理できます。平明な語りを通じて、ケアや生活の切実さが前面に出ます。 父と子家族ケアと介護
  330. 330 2010 妻の超然 つまのちょうぜん 絲山秋子 単行本・新潮社 『妻の超然』は、夫婦や男女の関係を、絲山秋子らしい乾いた距離感で描く作品です。身近な関係のなかにある理解不能さを、過度に説明せず、会話と沈黙の間から浮かび上がらせます。夫婦という制度、恋愛の疲れ、生活の違和感を読む小説です。 夫婦ジェンダー恋愛
  331. 331 2010 アンダスタンド・メイビー あんだすたんど・めいびー 島本理生 単行本・中央公論新社 『アンダスタンド・メイビー』は、島本理生が若い女性の恋愛、傷つき、自己理解を長い時間の流れのなかで描く長編です。題名の「たぶん理解する」という感覚どおり、人物は関係を即座に割り切れず、痛みを抱えたまま自分の輪郭を探します。恋愛小説であると同時に、青春期から大人へ向かうアイデンティティの物語です。 恋愛青春アイデンティティ
  332. 332 2010 陽だまり幻想曲 ひだまりげんそうきょく 楊逸 単行本・講談社 『陽だまり幻想曲』は、楊逸が日本語で描く移動者の生活感覚を、光のある場所への憧れと結びつける作品です。家族や言葉のずれは、異国で暮らす人物の孤独と希望を同時に映します。日常の会話に潜む違和感が、越境文学としての読みどころになります。 移民と越境家族言葉と言語
  333. 333 2010 夜よりも大きい よるよりもおおきい 小野正嗣 単行本・リトルモア 『夜よりも大きい』は、小野正嗣が土地、記憶、喪失の感覚を静かに重ねる作品です。夜という時間よりも大きなものに包まれる感覚が、人物の孤独や死者の気配を呼び込みます。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 記憶孤独と疎外死と喪失
  334. 334 2009 かけら かけら 青山七恵 単行本・新潮社 『かけら』は、日常の小さな破片のような出来事から、若い人物の孤独や関係の変化をすくい上げる青山七恵の作品です。簡潔な語りは感情を説明しすぎず、読者に余白を残します。家族や恋愛のはっきりしない揺れを、静かな手ざわりで読む小説です。 青春家族孤独と疎外
  335. 335 2009 魔法使いクラブ まほうつかいくらぶ 青山七恵 単行本・幻冬舎 『魔法使いクラブ』は、若い人びとの小さな結びつきや願望を、魔法という言葉の軽やかさで包む作品です。現実を大きく変える力ではなく、日々を少しだけ違って見せる想像力が中心になります。青山七恵らしい静かな文体で、青春と孤独のあいだを描きます。 青春孤独と疎外芸術と表現
  336. 336 2009 あたしはビー玉 あたしはびーだま 山崎ナオコーラ 単行本・幻冬舎 『あたしはビー玉』は、山崎ナオコーラが一人称の感覚を通して、自己像の丸さや転がりやすさを描く作品です。題名の比喩は、主体が固定されず、他者との関係の中で動いてしまうことを示しているように読めます。軽やかな文体の奥に、孤独と自己認識の問題が残ります。 アイデンティティ恋愛孤独と疎外
  337. 337 2009 ブルーシート ぶるーしーと 浅尾大輔 単行本・朝日新聞出版 『ブルーシート』は、デビュー作「家畜の朝」を含む第一創作集として、底辺労働や生活の現場を描く作品です。都市の表面では見えにくい働く身体と貧困の感覚が、青いシートの仮設性と重なります。社会的な題材を、個人の孤独と身体感覚に引き寄せて読むことができます。 労働貧困身体
  338. 338 2009 ぼくたちは大人になる ぼくたちはおとなになる 佐川光晴 単行本・双葉社 『ぼくたちは大人になる』は、成長することの期待と重さを、若い人物の生活感覚から描く佐川光晴の作品です。題名はまっすぐですが、そこには家族や社会の中で大人にならざるをえない苦さも含まれます。青春を懐かしむより、労働や家族へ向かう時間として捉える作品です。 青春家族労働
  339. 339 2009 独居45 どっきょしじゅうご 吉村萬壱 単行本・文藝春秋 『独居45』は、四十五歳で独り暮らしをする人物の生活を通して、身体、欲望、孤独を露悪的に描く吉村萬壱の作品です。平凡な住まいの内側に、社会から切り離された感覚と不穏な衝動が溜まっていきます。ユーモアと気味悪さが同居する読み味が特徴です。 孤独と疎外身体
  340. 340 2009 ドリーマーズ ドリーマーズ 柴崎友香 単行本・講談社 『ドリーマーズ』は、夢を見ることと現実を生きることのずれを、柴崎友香らしい都市の時間感覚で描く作品です。人物たちの関係は劇的に変わるというより、会話や移動のなかで少しずつ輪郭を変えます。淡い題名に対して、日常の底に残る孤独も読みどころになります。 記憶恋愛孤独と疎外
  341. 341 2009 ヘヴン ヘヴン 川上未映子 単行本・講談社 『ヘヴン』は、いじめを受ける「僕」と同級生コジマの連帯を通じて、暴力と倫理を問う長篇です。弱さを共有する二人の関係は救いに見えますが、暴力を意味づけて耐えることの危うさも浮かび上がります。身体の痛みと思想的な問いが同時に迫る、川上未映子の代表的長篇の一つです。 暴力身体孤独と疎外
  342. 342 2009 ヒマワリのキス ひまわりのきす 樋口直哉 単行本・徳間書店 『ヒマワリのキス』は、明るい題名の裏側に、恋愛や記憶の痛みを抱えた人物を置く樋口直哉の作品です。ひまわりのイメージは夏や若さを連想させますが、そこには過ぎ去った時間を取り戻せない感覚も重なります。今回の確認は書誌中心のため、細かな筋は追加調査が必要です。 恋愛記憶青春
  343. 343 2009 犬と鴉 いぬとからす 田中慎弥 単行本・講談社 『犬と鴉』は、田中慎弥の硬質な文体で、人間の生の暗さや動物的な感覚を前面に出す作品です。犬と鴉という題名の組み合わせは、従順さと不吉さ、近さと遠さを同時に呼び込みます。閉じた生活の中で、身体と孤独がざらついた手触りで描かれます。 身体孤独と疎外暴力
  344. 344 2009 犬はいつも足元にいて いぬはいつもあしもとにいて 大森兄弟 初出・文藝 2009年冬号 中学生の主人公の日常に、犬が公園の茂みから探り当てた正体不明の「肉」が入り込んでくる。誰も名指せないその物体は、思春期の鬱屈や家族のぎこちなさと響き合いながら、生き物の生々しさと死の気配を物語の中心に居座らせる。登場人物はどこか不快なのに目を離せないという独特の距離感で語られ、生命の循環を思わせる視… 身体死と喪失家族 第46回 文藝賞
  345. 345 2009 結婚小説 けっこんしょうせつ 中島たい子 単行本・集英社 『結婚小説』は、結婚をゴールではなく、生活と関係を組み替える出来事として描く中島たい子の作品です。日常的なユーモアのなかに、夫婦になることへの不安や違和感が置かれます。軽やかな語りで、制度としての結婚と個人の感情のずれを読ませます。 夫婦恋愛家族
  346. 346 2009 君が降る日 きみがふるひ 島本理生 単行本・幻冬舎 『君が降る日』は、失われた相手への思いと、残された人の時間を描く島本理生の恋愛小説です。題名の「降る」は、記憶が突然日常へ戻ってくる感覚を思わせます。静かな語りの中で、喪失、恋愛、再生の気配が重なります。 恋愛死と喪失記憶
  347. 347 2009 月食の日 げっしょくのひ 木村紅美 単行本・文藝春秋 『月食の日』は、日常のなかに差し込む陰りを、月食という天体現象のイメージと重ねる木村紅美の作品です。人との距離や生活の変化が、明るさを一時的に失う感覚として描かれます。静かで観察的な文体が、家族や孤独の輪郭を浮かび上がらせます。 家族記憶孤独と疎外
  348. 348 2009 ポジティヴシンキングの末裔 ぽじてぃう゛しんきんぐのまつえい 木下古栗 単行本・早川書房 『ポジティヴシンキングの末裔』は、前向きさという社会的な合言葉を、木下古栗らしい不条理な笑いでずらす作品です。人物の考え方や言葉は一見軽いのに、そこから身体や生活の気味悪さがにじみます。明るい自己啓発的な語彙を反転させる、乾いたユーモアが読みどころです。 身体同調圧力孤独と疎外
  349. 349 2009 ここに消えない会話がある ここにきえないかいわがある 山崎ナオコーラ 単行本・集英社 『ここに消えない会話がある』は、会話の断片が人間関係の記憶として残ることを描く山崎ナオコーラの作品です。話したことは流れて消えるようでいて、相手との距離や自分の輪郭を決めてしまいます。言葉の軽さと残酷さを、日常の関係から考えさせる小説です。 言葉と言語恋愛アイデンティティ
  350. 350 2009 何もかも憂鬱な夜に なにもかもゆううつなよるに 中村文則 単行本・集英社 『何もかも憂鬱な夜に』は、死刑囚と向き合う若い刑務官が、自らの孤独な子供時代と現在を重ねていく中村文則の長篇です。犯罪や死刑制度の問題は、単なる社会的題材ではなく、人が他者の罪をどう受け止めるかという倫理の問いになります。暗い語りの中に、救いの可能性がかすかに残ります。 暴力死と喪失孤独と疎外
  351. 351 2009 ねたあとに ねたあとに 長嶋有 単行本・朝日新聞出版 『ねたあとに』は、眠った後、起きた後に残る気配のようなものを、長嶋有らしい淡いユーモアで描く作品です。日常の会話や場面は軽く見えますが、人物同士の距離は少しずつ変化します。生活の小さな時間を、静かなずれとして読む小説です。 家族記憶孤独と疎外
  352. 352 2009 ぬかるみに注意 ぬかるみにちゅうい 生田紗代 単行本・講談社 『ぬかるみに注意』は、足を取られる場所の感覚を、生活や人間関係の抜け出しにくさと重ねる生田紗代の作品です。題名は注意を促す標識のようですが、人物はむしろそのぬかるみに近づいてしまいます。恋愛や家族の問題を、湿った不安として読む作品です。 恋愛家族孤独と疎外
  353. 353 2009 東京借景 とうきょうしゃっけい 荻世いをら 初出・文藝 2008年秋号 『東京借景』は、東京という都市を背景ではなく、人物の感情を借りて映す景色として扱う荻世いをらの作品です。既存データでは初出が『文藝』2008年秋号と確認され、都市の移動や視線が中心になる作品として位置づけられます。街の細部を通じて、孤独と生活の断片を読む小説です。 孤独と疎外記憶アイデンティティ
  354. 354 2009 男と点と線 おとこととてんとせん 山崎ナオコーラ 単行本・新潮社 『男と点と線』は、山崎ナオコーラが男という属性や、人と人を結ぶ線の引き方を考える作品です。人物の関係は直線的に結ばれるのではなく、点のように散らばりながら、言葉によって仮につながります。ジェンダーと関係性を、軽い語り口で問い直す一冊です。 ジェンダー恋愛言葉と言語
  355. 355 2009 世界の果て せかいのはて 中村文則 単行本・文藝春秋 『世界の果て』は、中村文則が世界の終端に立たされたような人物の孤独や罪の感覚を描く作品です。題名は地理的な果てというより、他者との関係や倫理が行き詰まる場所を示しているように読めます。暗い心理描写と、逃げ場のない空気が特徴です。 孤独と疎外暴力死と喪失
  356. 356 2009 白い紙 しろいかみ シリン・ネザマフィ 初出・文學界 2009年6月号 イラン・イラク戦争下のイランの地方都市。成績優秀な高校生の男女が、勉強を口実に心を通わせていく。だが前線が近づくにつれ、家族の事情と戦争の影がふたりの未来を静かに引き裂いていく。日本語を母語としない書き手が、平易で簡潔な日本語によって戦時下の日常と若い恋の痛みを描き、戦争文学と青春小説を重ねてみせた… 戦争恋愛青春 第108回 文學界新人賞
  357. 357 2009 空に唄う そらにうたう 白岩玄 単行本・河出書房新社 『空に唄う』は、通夜に現れた死んだはずの女子大生と、新米の坊主が寺で同居を始めるという設定の作品です。死者がいる日常をユーモラスに扱いながら、生者が死や信仰とどう向き合うかを描きます。寺という場所が、現実と非現実、生と死のあわいを支えています。 死と喪失信仰恋愛
  358. 358 2009 掏摸 スリ 中村文則 単行本・河出書房新社 『掏摸』は、天才的なスリ師が闇の組織に支配され、逃げ場のない選択へ追い込まれていく中村文則の長篇です。犯罪小説の緊張を持ちながら、偶然、宿命、倫理の問題が強く前面に出ます。都市の雑踏と孤独な身体技術が結びつく、暗く硬質な作品です。 暴力労働孤独と疎外
  359. 359 2009 ソードリッカー そーどりっかー 佐藤憲胤 単行本・講談社 『ソードリッカー』は、題名の剣や舌の感触が示すように、身体感覚と暴力のイメージを強く帯びた佐藤憲胤の小説です。講談社刊の単行本として確認できるが、今回の公開資料では詳細な内容紹介までは確認できませんでした。現時点では、身体、攻撃性、孤立した人物像を軸に読む作品として暫定的に整理します。 身体暴力孤独と疎外
  360. 360 2009 永遠のかけら えいえんのかけら 高瀬ちひろ 単行本・講談社 『永遠のかけら』は、失われた時間や記憶の断片を、恋愛や人間関係の揺れと重ねて読むことのできる高瀬ちひろの小説です。題名の「かけら」は、完全な永遠ではなく、人物の手元に残る小さな感情の痕跡を思わせます。公開資料で内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲に絞って紹介します。 記憶恋愛孤独と疎外
  361. 361 2009 霊降ろし れいおろし 田山朔美 単行本・文藝春秋 『霊降ろし』は、死者や見えないものの気配を通じて、生者の記憶と喪失を描く田山朔美の小説です。霊的な題材は怪異そのものよりも、残された人が過去とどう向き合うかという問題に結びつきます。静かな不穏さのなかで、家族や信仰に近い感覚をたどる作品として整理できます。 死と喪失記憶信仰
  362. 362 2009 山崎ナオコーラ 単行本・文藝春秋 『手』は、身体の一部である手をめぐって、触れること、働くこと、他者との距離を考えさせる山崎ナオコーラの作品です。日常的な言葉づかいのなかに、ジェンダーや家族関係、親密さへの違和感が差し込まれます。軽く見える語りが、身体を通じた関係の非対称さを浮かび上がらせます。 身体ジェンダー家族
  363. 363 2009 TRIP TRAP トリップ・トラップ 金原ひとみ 単行本・角川書店 『TRIP TRAP』は、移動や逸脱の感覚を、恋愛、身体、都市的な不安と結びつける金原ひとみの小説です。旅を意味する「TRIP」と罠を意味する「TRAP」が並ぶ題名は、自由に見える移動が別の閉塞へつながる感覚を示します。鋭い身体感覚と、若い人物の危うい関係性が読みどころです。 恋愛身体孤独と疎外
  364. 364 2009 終の住処 ついのすみか 磯﨑憲一郎 単行本・新潮社 『終の住処』は、妻が突然口をきかなくなる朝から始まり、ある夫婦の二十年を描く磯﨑憲一郎の小説です。大きな事件よりも、時間の経過そのものが関係を変えていく様子に重心があります。淡々とした語りの背後で、夫婦、家、老い、記憶の問題が静かに積み重なります。 夫婦家族老い 第141回 芥川賞
  365. 365 2009 潰玉 ついぎょく 墨谷渉 単行本・文藝春秋 『潰玉』は、壊れやすいものを抱えた人物の感覚を、題名どおり押し潰されるような身体性と結びつける墨谷渉の中篇です。人間関係や自己認識が、硬い玉ではなく潰れて形を変えるものとして描かれているように読めます。情報は限られるものの、身体と孤独の圧迫感が中心にある作品として整理します。 身体孤独と疎外アイデンティティ
  366. 366 2009 ヤイトスエッド やいとすえっど 吉村萬壱 単行本・講談社 『ヤイトスエッド』は、吉村萬壱らしい異物感のある題名と身体の手ざわりを持つ小説です。日常の秩序が少しずつゆがみ、人物の身体や欲望が不穏なかたちで前景化します。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体暴力孤独と疎外
  367. 367 2009 金魚生活 きんぎょせいかつ 楊逸 単行本・文藝春秋 『金魚生活』は、楊逸が日本語で描く生活の細部を通して、移動する人びとの感覚や家族の距離をすくう小説です。金魚という題名は、限られた水槽のなかで動く存在のように、環境に制約されながら生きる人物像を思わせます。異文化の間で暮らす日常のささやかな揺れが読みどころです。 移民と越境家族アイデンティティ
  368. 368 2009 すき・やき すきやき 楊逸 単行本・新潮社 『すき・やき』は、食卓の親密さを通じて、国境を越えて暮らす人びとの関係や違和感を描く楊逸の作品です。題名は日本の料理名を思わせながら、好意や関係の「好き」をも響かせます。食、家族、言葉のずれが、移民文学としての読みどころにつながります。 移民と越境家族
  369. 369 2009 憂鬱たち ゆううつたち 金原ひとみ 単行本・文藝春秋 『憂鬱たち』は、精神科へ向かう神田憂の妄想と憂鬱を連ねる金原ひとみの連作短篇集です。診察室にたどり着くまでの反復が、病の記録であると同時に、自己を保つための語りにもなっています。鋭い身体感覚と内面の過剰さが、閉じた都市生活の息苦しさを強めます。 身体孤独と疎外
  370. 370 2008 やさしいため息 やさしいためいき 青山七恵 単行本・河出書房新社 『やさしいため息』は、芥川賞受賞後第一作として発表され、日常のなかで揺れる若い人物の息づかいを静かに描く作品です。家族や生活の小さな変化が、はっきりした事件よりも大きく人物の感情を動かします。青山七恵らしい簡潔な文体が、孤独と自立のあいだの時間をすくい取ります。 家族青春孤独と疎外
  371. 371 2008 声を聴かせて こえをきかせて 朝比奈あすか 単行本・光文社 『声を聴かせて』は、声を聞くこと、聞かれないことを通して、他者との距離を描く朝比奈あすかの作品です。親しい関係であっても届かない言葉があり、そのもどかしさが人物の孤独を形づくります。題名通り、声と言葉が関係をつなぐ細い線として働きます。 家族恋愛言葉と言語
  372. 372 2008 ばかもの ばかもの 絲山秋子 単行本・新潮社 『ばかもの』は、大学生の恋愛の終わりから十年後の再会までをたどり、アルコール依存を抱える男の時間を描く作品です。恋愛の失敗は単なる思い出ではなく、生活の崩れや病と結びついて残ります。絲山秋子の乾いた文体が、不器用な愛情と回復の難しさを抑制して描きます。 恋愛孤独と疎外
  373. 373 2008 僕の好きな人が、よく眠れますように ぼくのすきなひとが、よくねむれますように 中村航 単行本・角川書店 『僕の好きな人が、よく眠れますように』は、好きな人の眠りを願うという柔らかな感情から、恋愛と不安を描く中村航の小説です。眠ることは身体の平穏であり、相手を思う距離の象徴でもあります。若い恋愛のまぶしさと、相手に触れきれない切なさを併せ持つ作品です。 恋愛身体青春
  374. 374 2008 ぼくは落ち着きがない ぼくはおちつきがない 長嶋有 単行本・光文社 『ぼくは落ち着きがない』は、学校や図書室の空気を背景に、落ち着かなさを抱える若い人物たちの会話と距離を描く作品です。長嶋有らしい少しずれたユーモアが、青春の居場所のなさを軽く見せます。図書館的な静けさと、内側のざわつきの対比が読みどころです。 青春孤独と疎外言葉と言語
  375. 375 2008 ギンイロノウタ ギンイロノウタ 村田沙耶香 単行本・新潮社 『ギンイロノウタ』は、歪んだ自意識を抱えた少女の性と暴力の衝動を描く表題作を含む作品です。村田沙耶香らしく、学校や身体をめぐる「普通」の感覚が鋭く異化されます。痛ましい題材を、過剰な説明ではなく、人物の感覚の切迫として読ませる作品です。 暴力身体 第31回 野間新人賞
  376. 376 2008 走ル はしる 羽田圭介 単行本・河出書房新社 『走ル』は、高校生が自転車で北へ向かい続けるロードノベルです。走る身体の疲労と速度が、若い自意識や孤独をそのまま運んでいきます。目的地よりも、移動し続ける時間のなかで自分の輪郭が変わるところが読みどころです。 青春身体孤独と疎外
  377. 377 2008 星空の下のひなた。 ほしぞらのしたのひなた 樋口直哉 単行本・光文社 『星空の下のひなた。』は、星空とひなたという対照的なイメージを重ね、若い人物の恋愛や孤独を描く作品として整理できます。明るさと暗さが同じ場面に同居し、日常のなかで見落とされがちな感情をすくいます。書誌以外の資料は少なく、今後は紹介記事・書評で精度を上げたい作品です。 青春恋愛孤独と疎外
  378. 378 2008 星のしるし ほしのしるし 柴崎友香 単行本・文藝春秋 『星のしるし』は、日常の風景のなかに残る小さな兆しを、柴崎友香らしい観察で描く作品です。星という遠いもののイメージが、都市の生活や人との距離に静かな奥行きを与えます。歩くような文体で、恋愛や記憶が大きな劇ではなく生活のなかに滲みます。 記憶恋愛孤独と疎外
  379. 379 2008 神様のいない日本シリーズ かみさまのいないにほんシリーズ 田中慎弥 単行本・文藝春秋 『神様のいない日本シリーズ』は、「江夏の21球」で知られる1979年の日本シリーズを背景に、父と子の時間を描く中篇です。野球の記憶は、家族の記憶や時代の空気を呼び戻す装置になります。田中慎弥の乾いた語りが、父子関係の近さと断絶を浮かび上がらせます。 父と子記憶芸術と表現
  380. 380 2008 彼女について かのじょについて 吉本ばなな 単行本・文藝春秋 『彼女について』は、ひとりの女性をめぐる記憶と語りから、失われたものや届かなかった感情をたどる作品です。よしもとばなならしい透明感のある文体で、死や喪失の気配をやわらかく包みます。誰かについて語ることが、自分自身を語り直すことにもなる小説です。 記憶恋愛死と喪失
  381. 381 2008 花束 はなたば 木村紅美 単行本・朝日新聞出版 『花束』は、贈り物としての花束が持つ親密さと儀礼性を手がかりに、人と人の関係を描く作品です。美しいものを差し出す行為の裏に、言えなかった感情や生活の痛みが潜みます。静かな語りのなかで、家族や恋愛の距離が少しずつ見えてきます。 家族恋愛孤独と疎外
  382. 382 2008 金色のゆりかご きんいろのゆりかご 佐川光晴 単行本・光文社 『金色のゆりかご』は、ゆりかごのイメージが示す家族や子どもの時間を、現実の生活のなかで見つめる作品です。佐川光晴らしい社会への視線が、保護されるべき場所とそこから漏れる不安を描きます。家族の温かさと脆さを同時に読む小説として整理できます。 家族青春孤独と疎外
  383. 383 2008 切れた鎖 きれたくさり 田中慎弥 単行本・新潮社 『切れた鎖』は、地方の閉ざされた土地に生きる血族を描く三篇を収めた作品集です。家族や土地の結びつきは守りではなく、逃れがたい暴力や因縁として迫ってきます。簡潔で硬い語りが、血縁の鎖が切れる瞬間の不穏さを際立たせます。 家族暴力死と喪失 第21回 三島賞
  384. 384 2008 蟋蟀 こおろぎ 栗田有起 単行本・筑摩書房 『蟋蟀』は、虫の声や小さな気配を思わせる題名のもと、日常の奥に潜む不安や孤独を描く栗田有起の作品です。目立たないものに耳を澄ませるような語りが、家や都市の生活を少し奇妙なものに変えます。静かな現実感と寓話性の境目を読む小説です。 孤独と疎外家族記憶
  385. 385 2008 マイクロバス マイクロバス 小野正嗣 単行本・新潮社 『マイクロバス』は、移動する小さな乗り物を通して、地方の場所や人々の距離を描く小野正嗣の作品です。バスという共有空間は、共同体に属することと、そこから外れることの両方を見せます。静かな語りのなかで、土地の記憶と孤独がゆっくり浮かび上がります。 記憶孤独と疎外移民と越境
  386. 386 2008 マウス マウス 村田沙耶香 単行本・講談社 『マウス』は、教室で息をひそめて生きる少女・律と、転校生との関係を描く長編です。学校という共同体のなかで、目立たず生きることと、誰かに見つけられることの怖さが描かれます。村田沙耶香らしく、「普通」に合わせる身体感覚が息苦しく異化されます。 青春同調圧力孤独と疎外
  387. 387 2008 長い終わりが始まる ながいおわりがはじまる 山崎ナオコーラ 単行本・講談社 『長い終わりが始まる』は、終わりが一瞬ではなく長く続いていく感覚を、恋愛や生活の変化に重ねる作品です。山崎ナオコーラらしい平明な語りが、別れや変化を大げさにせず日常の速度で見せます。終わりを迎えるまでの時間そのものを読む小説です。 恋愛青春孤独と疎外
  388. 388 2008 ありったけの話 ありったけのはなし 中山智幸 単行本・光文社 『ありったけの話』は、話すこと、語り尽くそうとすることを通して、人と人の関係を描く作品です。題名の通り、言葉を差し出すことが親密さの表現である一方、語っても残る距離も浮かび上がります。中山智幸の作品として、会話と記憶の密度を読む一冊です。 言葉と言語孤独と疎外恋愛
  389. 389 2008 空で歌う そらでうたう 中山智幸 単行本・講談社 『空で歌う』は、歌うことや空を見上げる感覚を通して、若い人物の孤独と希望を描く作品として整理できます。芸術や声は、現実から逃げるためだけでなく、誰かに届くための手段になります。書誌以外の資料は少なく、今後は掲載誌・書評で主題を精査したい作品です。 芸術と表現青春孤独と疎外
  390. 390 2008 波打ち際の蛍 なみうちぎわのほたる 島本理生 単行本・角川書店 『波打ち際の蛍』は、傷を抱えた人物が、波打ち際のように揺れる場所で他者との距離を測り直す島本理生の作品です。蛍の光のようなかすかな希望と、身体に残る痛みが同時に描かれます。恋愛や回復を単純に美化せず、触れ合うことの怖さまで含めて読ませます。 暴力恋愛身体
  391. 391 2008 ラジ&ピース らじあんどぴーす 絲山秋子 単行本・講談社 『ラジ&ピース』は、ラジオや言葉の届き方を思わせる題名のもと、人と人がどのように声を受け渡すかを描く作品です。絲山秋子らしい乾いた会話と距離感が、親密さと孤独を同時に浮かび上がらせます。平和やつながりを軽く言い切れないところに、作品の手触りがあります。 言葉と言語労働孤独と疎外
  392. 392 2008 論理と感性は相反しない ろんりとかんせいはあいはんしない 山崎ナオコーラ 単行本・講談社 『論理と感性は相反しない』は、山崎ナオコーラの思考する文体が前面に出る作品集です。題名の通り、感情をただ情緒として扱うのではなく、考えること、名づけること、他人と距離を取ることの問題として描きます。軽い会話の奥に、ジェンダーや関係性への問いが残る作品です。 恋愛ジェンダー言葉と言語
  393. 393 2008 主題歌 しゅだいか 柴崎友香 単行本・講談社 『主題歌』は、都市で暮らす人物たちの時間や感情を、音楽のように反復する記憶と結びつけて描く柴崎友香の作品です。大きな事件よりも、会話、移動、見えた風景の差異が人物の心の変化を形づくります。語りは静かですが、誰かの人生に流れている旋律を探すような読み味があります。 記憶恋愛芸術と表現
  394. 394 2008 サウスポイント サウスポイント 吉本ばなな 単行本・中央公論新社 『サウスポイント』は、よしもとばななが南の島の気配や移動の感覚を通じて、恋愛と家族の記憶を描く長篇です。明るい場所に向かう題名とは裏腹に、人物の内側には喪失や過去の影が残ります。土地の光や空気を、心の回復の過程と重ねて読む作品です。 恋愛家族記憶
  395. 395 2008 時が滲む朝 ときがにじむあさ 楊逸 単行本・文藝春秋 『時が滲む朝』は、天安門事件前後の中国に生きる若者たちの青春と政治の時間を描く作品です。留学生作家である楊逸の日本語が、祖国の記憶、民主化への希望、移動する身体の感覚を重ねます。個人の朝の光景に、歴史が滲み出してくる点が読みどころです。 移民と越境青春戦争 第139回 芥川賞
  396. 396 2007 青色讃歌 あおいろさんか 丹下健太 初出・文藝 2007年冬号 28歳の高橋は、同棲する彼女の収入で暮らしている。いなくなった猫を探し、気の進まない仕事を探す——その二つの「探しもの」をめぐるだけの日々が、妙な可笑しみとともに流れていく。働かない男のだめさを断罪も美化もせず、脱力したユーモアで肯定してみせる青春小説で、「読ませる、笑わせる、唸らせる」と選考委員の… 労働恋愛青春 第44回 文藝賞
  397. 397 2007 ひとり日和 ひとりびより 青山七恵 単行本・河出書房新社 『ひとり日和』は、二十歳の知寿が高齢の遠縁・吟子さんと同居し、働きながら自立の感覚を少しずつ探る作品です。老いと若さ、家族ではない同居、ひとりでいることの自由と寂しさが、淡々とした語りで描かれます。大きな成長物語ではなく、日々の観察から生活の輪郭が変わるところが読みどころです。 老い家族青春 第136回 芥川賞
  398. 398 2007 クローバー くろーばー 島本理生 単行本・角川書店 『クローバー』は、島本理生らしく、恋愛や記憶の細部から若い人物の揺れを描く作品です。幸運を連想させる題名に対して、語りは関係の不安定さや選び取れない気持ちにも目を向けます。淡い感情を、日常の光景のなかで少しずつ変化させる読み味があります。 恋愛青春記憶
  399. 399 2007 ダーティ・ワーク だーてぃ・わーく 絲山秋子 単行本・集英社 『ダーティ・ワーク』は、仕事や関係のなかで避けられない面倒さを、絲山秋子らしい乾いた文体で描く作品です。労働をきれいごとにせず、そこで生まれる距離、疲労、親密さを淡々と見つめます。人と人の関係を、会話と行動のずれから読ませるところに魅力があります。 労働恋愛孤独と疎外
  400. 400 2007 エロマンガ島の三人 えろまんがじまのさんにん 長嶋有 単行本・エンターブレイン 『エロマンガ島の三人』は、長嶋有の異色作品集として、奇妙な地名や設定から日常の感覚をずらしていく作品です。旅行記や冒険譚のような外見を借りながら、人と場所の距離感をユーモラスに扱います。題名の軽さの奥に、どこにも完全には属せない感覚が残ります。 芸術と表現孤独と疎外移民と越境
  401. 401 2007 大人ドロップ おとなどろっぷ 樋口直哉 単行本・小学館 『大人ドロップ』は、若者が大人になる前後の感情を、学校や地方の時間のなかで描く青春小説です。恋愛や友情の明るさだけでなく、過ぎてしまう時間への痛みが語りの底にあります。簡潔な文体で、思い出になる直前の出来事をすくい取る作品として読めます。 青春恋愛記憶
  402. 402 2007 星へ落ちる ほしへおちる 金原ひとみ 単行本・集英社 『星へ落ちる』は、恋愛や身体の感覚を、落下するような不安定さのなかで描く金原ひとみの作品です。きらびやかな題名とは対照的に、登場人物の感情は孤独や衝動に強く引かれます。短く鋭い語りが、関係の熱と冷えを同時に伝えます。 恋愛身体孤独と疎外
  403. 403 2007 ハイドラ ハイドラ 金原ひとみ 単行本・新潮社 『ハイドラ』は、身体、欲望、恋愛の結びつきを、金原ひとみらしい鋭い感覚で描く作品です。複数の頭を持つ怪物を思わせる題名のように、感情や関係は一つにまとまらず分岐していきます。自己破壊的な衝動と生への執着が同時に読める、不穏な恋愛小説です。 身体恋愛
  404. 404 2007 カツラ美容室別室 かつらびようしつべっしつ 山崎ナオコーラ 単行本・河出書房新社 『カツラ美容室別室』は、美容室という場所を通して、働く人や訪れる人の関係を描く山崎ナオコーラの作品です。髪や見た目を整える場が、ジェンダー、労働、自己像を考える舞台になります。軽やかな会話のなかに、他人と同じ空間にいることの気まずさと楽しさが同居しています。 労働ジェンダー孤独と疎外
  405. 405 2007 島の夜 しまのよる 木村紅美 単行本・角川書店 『島の夜』は、島という隔てられた場所と夜の時間を背景に、孤独や記憶の濃度を描く作品として整理できます。閉じた地理は、人間関係を近づける一方で、逃げ場のなさも作ります。静かな語りのなかに、不安と親密さが同時に漂う読み味があります。 孤独と疎外記憶恋愛
  406. 406 2007 この人と結婚するかも このひととけっこんするかも 中島たい子 単行本・集英社 『この人と結婚するかも』は、結婚を予感する瞬間の期待と違和感を、軽い語り口で追う中島たい子の作品です。恋愛の延長にある制度や生活を、決断の物語としてではなく、揺れる気分として描きます。ユーモラスな題名のなかに、親密さへの不安と自己確認の主題があります。 夫婦恋愛アイデンティティ
  407. 407 2007 救済の彼岸 きゅうさいのひがん 朝倉祐弥 単行本・集英社 『救済の彼岸』は、救いを求める感覚と、その先にある孤独を題名から強く意識させる作品です。信仰や倫理をめぐる問いが、現代の生活のなかでどのように立ち上がるかを読む切り口があります。書誌以外の資料はまだ少ないため、今後は掲載誌や書評で主題を精査したい作品です。 信仰孤独と疎外死と喪失
  408. 408 2007 また会う日まで またあうひまで 柴崎友香 単行本・河出書房新社 『また会う日まで』は、再会と別れをめぐる時間の感覚を、柴崎友香らしい日常の観察で描く作品です。人と人が会う場所、離れる場所、そのあいだに流れる記憶が物語の中心になります。関西の街を歩くような語りが、恋愛や孤独を過度に劇化せずに映し出します。 恋愛記憶孤独と疎外
  409. 409 2007 バイバイ ばいばい 望月あんね 単行本・光文社 『バイバイ』は、別れを告げる言葉の軽さと重さを、恋愛や生活の終わりの感覚に重ねる作品です。望月あんねの作品として、人物が関係を断ち切るときに残る記憶や孤独に焦点を置いて読めます。大きな事件よりも、去ることと残されることの温度差が読みどころになります。 恋愛死と喪失孤独と疎外
  410. 410 2007 大きな熊が来る前に、おやすみ。 おおきなくまがくるまえに、おやすみ。 島本理生 単行本・新潮社 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』は、二人暮らしの親密さと不安を、熊という不穏なイメージをまとわせて描く作品です。恋愛や同居の幸福だけでなく、同じ部屋にいることの圧迫感や、相手を完全にはわからない怖さが前面に出ます。柔らかな題名の奥に、関係の危うさを読む小説です。 恋愛家族孤独と疎外
  411. 411 2007 パワー系181 ぱわーけいいちはちいち 墨谷渉 初出・すばる 2007年11月号 身長181センチ、強靭な肉体を持つ女性リカが開いた個人サロンには、身体測定マニア、張り手を浴びたいマゾヒスト、衣類フェチなど、それぞれ奇妙な性癖を抱えた男たちが通ってくる。彼らが求める「本物のエクスタシー」を、湿った官能ではなく即物的でドライな筆致で記録していく。身体とマゾヒズムという題材を真っ向か… 身体孤独と疎外 第31回 すばる文学賞
  412. 412 2007 最後の命 さいごのいのち 中村文則 単行本・講談社 『最後の命』は、少年時代の傷と再会、罪の記憶をめぐって、人が最後に何を拠りどころに生きるのかを問う作品です。中村文則らしい暗い心理描写が、暴力や孤独を抽象化せず、身体に残る感覚として描きます。過去に囚われた人物が他者との関係を回復できるのかが、緊張を生みます。 暴力記憶死と喪失
  413. 413 2007 建てて、いい? たてていい 中島たい子 単行本・講談社 『建てて、いい?』は、家を建てるという具体的な行為を通して、生活、結婚、将来への迷いを描く作品です。中島たい子らしい軽い語り口で、住まいを選ぶことが自分の生き方を選ぶことに変わっていきます。日常的な題材から、家族や関係の設計図を考えさせる小説です。 夫婦家族労働
  414. 414 2007 ワンちゃん わんちゃん 楊逸 初出・文學界 2007年12月号 日本に渡って暮らす中国人女性「ワンちゃん」は、中国の女性たちと日本の男たちを引き合わせる見合いツアーの世話役を務めている。国境をまたぐ結婚の斡旋という生々しい現場を通して、経済格差のなかを生きる女たちのたくましさと哀感を、来日20年の作者がよどみのない日本語で描いた。日本語を母語としない書き手が日本… 移民と越境ジェンダー貧困 第105回 文學界新人賞
  415. 415 2006 エスケイプ/アブセント えすけいぷ/あぶせんと 絲山秋子 単行本・新潮社 『エスケイプ/アブセント』は、逃避と不在という二つの言葉を軸に、関係のなかで空白を抱える人物を描く作品です。絲山秋子らしい簡潔な文体が、説明しすぎないまま感情の距離を保ちます。逃げること、いないこと、忘れられないことが重なり合う静かな読後感があります。 孤独と疎外記憶恋愛
  416. 416 2006 風化する女 ふうかするおんな 木村紅美 初出・文學界 2006年6月号 突然死んだ会社の先輩れい子には、職場で見せていたのとは別の顔があった。「私」はその謎をたどって東京から地方へと旅をし、死んだ女の生の痕跡に自分を重ねていく。日々がたえず「風化」していく都会の生活感覚を背景に、死者をなぞることでしか確かめられない自分の輪郭を、抑制された筆致で描いたデビュー作。 死と喪失孤独と疎外労働 第102回 文學界新人賞
  417. 417 2006 不思議の国のペニス ふしぎのくにのペニス 羽田圭介 単行本・河出書房新社 『不思議の国のペニス』は、性欲に振り回される男子高校生の日常を、露骨さと滑稽さを交えて描く作品です。青春小説の枠組みを使いながら、身体の変化や欲望を制御できない不安を前面に出しています。題名の挑発性に対して、語りは若い自意識のぎこちなさを追うところに読みどころがあります。 青春身体
  418. 418 2006 銀色の翼 ぎんいろのつばさ 佐川光晴 単行本・文藝春秋 『銀色の翼』は、生活の現場にいる人々の視線から、家族、労働、社会的な孤立を描く佐川光晴の小説です。派手な事件よりも、日々の選択や関係のほころびを通して人物を立ち上げるタイプの作品として位置づけられます。現実に踏みとどまる語りが、傷や希望を過度に美化しない点が読みどころです。 家族労働孤独と疎外
  419. 419 2006 月とアルマジロ つきとあるまじろ 樋口直哉 単行本・講談社 『月とアルマジロ』は、現実的な日常に奇妙なイメージを差し込み、若い人物の孤独や自己意識を照らす作品です。月とアルマジロという取り合わせが示すように、遠いものと身近なものの距離感が作品の手ざわりを作っています。簡潔な語りの奥に、寓話的なずれを読む楽しさがあります。 青春孤独と疎外アイデンティティ
  420. 420 2006 生きてるだけで、愛。 いきてるだけで、あい。 本谷有希子 単行本・新潮社 『生きてるだけで、愛。』は、鬱と過眠に苦しむ寧子と、同棲相手・津奈木の関係を描く恋愛小説です。感情の爆発と生活の停滞が同時に描かれ、病や孤独が恋愛のなかでどう噴き出すかを見せます。荒さを残した一人称的な距離感が、登場人物の息苦しさを直接伝えます。 恋愛孤独と疎外
  421. 421 2006 イルカ イルカ 吉本ばなな 単行本・文藝春秋 『イルカ』は、よしもとばななの小説らしく、親密な関係と心身の変化をやわらかな語りで扱う作品です。題名が示す水辺のイメージは、閉じた日常から別の感覚へ移るための入口として働きます。喪失や不安を強く断定せず、ゆるやかな回復の気配を読む作品として位置づけられます。 恋愛家族身体
  422. 422 2006 愛の島 あいのしま 望月あんね 単行本・講談社 『愛の島』は、島という閉じた場所を背景に、愛や孤独をめぐる関係の揺れを描く作品として整理できます。遠く離れた場所である島は、人物の逃避先であると同時に、自分の感情と向き合う場にもなります。書誌情報以外の詳細資料はまだ少ないため、今後の批評・紹介資料で精度を上げたい作品です。 恋愛孤独と疎外アイデンティティ
  423. 423 2006 無限のしもべ むげんのしもべ 木下古栗 初出・群像 2006年6月号 早く目覚めすぎた休日の朝、稔がマンションから見下ろすと、駐車場に円卓を持ち込んでティーパーティーに興じる4人の男女がいた。そのなかの美人に目をつけた稔は、パーティーに加わりあわよくば濃密な性愛を、という淫靡な考えに取り憑かれ作戦を練り始める。性的妄想の無意味な暴走を生真面目な文体で押し切る、木下古栗… 身体孤独と疎外 第49回 群像新人賞
  424. 424 2006 沖で待つ おきでまつ 絲山秋子 単行本・文藝春秋 『沖で待つ』は、同期入社の男女の友情と、死後に残された約束をめぐる作品です。恋愛に回収されない親密さを、職場の記憶と喪失の感覚を通して描きます。絲山秋子の簡潔で乾いた語りが、死者との距離を過度に sentimental にせず保つところが読みどころです。 労働死と喪失記憶 第134回 芥川賞
  425. 425 2006 その街の今は そのまちのいまは 柴崎友香 単行本・新潮社 『その街の今は』は、カフェで働く歌ちゃんが古い写真に写る大阪に惹かれ、街の過去と現在を行き来する作品です。写真という媒体が、個人の記憶だけでなく都市の時間をたどる装置になります。柴崎友香らしい歩くような文体で、街を見ることと自分の現在を確かめることが重なります。 記憶芸術と表現青春
  426. 426 2006 そろそろくる そろそろくる 中島たい子 単行本・集英社 『そろそろくる』は、日常のなかで身体や感情の変化を待ち受ける感覚を描く作品として整理できます。中島たい子の小説に特徴的な、身近な生活の違和感をユーモアに変える語りが読みどころです。大きな事件よりも、心身のリズムが崩れる瞬間に焦点が置かれます。 身体恋愛孤独と疎外
  427. 427 2006 浮世でランチ うきよでらんち 山崎ナオコーラ 単行本・河出書房新社 『浮世でランチ』は、食事や仕事場の場面を通して、現代の若い人物が社会とどう折り合うかを描く作品です。山崎ナオコーラらしい軽い会話と観察が、日常の居心地の悪さを柔らかく浮かび上がらせます。ランチという身近な行為が、関係や労働を見直す入口になっています。 労働孤独と疎外
  428. 428 2006 裏庭の穴 うらにわのあな 田山朔美 初出・文學界 2006年12月号 主婦の朝子は、幼い頃に母親が裏庭に何かを埋めるのを目撃したという記憶を、大人になっても抱え続けている。掘り返されないまま家族の足元に空いた「穴」のような記憶を軸に、平穏に見える家庭の日常の底に沈む鬱屈と、母と娘のあいだのほどけない結び目を描く。受賞作は2009年刊の作品集『霊降ろし』(文藝春秋)に収… 家族母と子記憶 第103回 文學界新人賞
  429. 429 2006 夕子ちゃんの近道 ゆうこちゃんのちかみち 長嶋有 単行本・新潮社 『夕子ちゃんの近道』は、商店街の人々をめぐる連作短篇集として、日常の小さな移動や出会いを描く作品です。大きな事件よりも、店、道、会話の連なりから人物の距離が変わる様子を見せます。長嶋有らしいユーモラスで少しずれた観察が、生活のなかの寂しさを軽く照らします。 労働家族記憶
  430. 430 2006 絶対、最強の恋のうた ぜったい、さいきょうのこいのうた 中村航 単行本・小学館 『絶対、最強の恋のうた』は、恋愛の高揚と自意識のまぶしさを正面から扱う中村航の小説です。強い題名とは裏腹に、語りは若い人物の不安や不器用さにも寄り添います。恋を歌や物語として信じたい気持ちと、現実の揺らぎの間を読む作品です。 恋愛青春芸術と表現
  431. 431 2005 100回泣くこと ひゃっかいなくこと 中村航 単行本・小学館 恋人を失った男性が、新たな出会いや日々の出来事を通して、悲しみから少しずつ立ち上がる純愛長篇。題名の強さに対して語り口は穏やかで、泣くことそのものよりも、喪失を抱えながら生活を続ける時間が描かれる。中村航の読者層を広げた、切なさと読みやすさを併せ持つ作品である。 恋愛死と喪失記憶
  432. 432 2005 BGM びーじーえむ 岡田智彦 単行本・河出書房新社 現役教師として文藝賞を受賞した岡田智彦の、受賞後第一作として発表された作品。題名の「BGM」は、人物の感情を大きな事件で説明するのではなく、日常の背後で鳴り続ける気配として捉える読みを誘う。若い感覚と学校・生活の現場が交差する、2000年代文藝賞周辺の一作である。 青春芸術と表現孤独と疎外
  433. 433 2005 永遠の誓い えいえんのちかい 佐川光晴 単行本・講談社 佐川光晴の2005年刊行作で、約束や誓いが人間関係を支える一方、重荷にもなる局面を描く作品として整理できる。生活者の視点を離れず、家族や恋愛、働くことの中で、言葉だけでは保てない関係を見つめる。佐川作品らしい、過度に装飾しない文体が読みどころになる。 家族恋愛労働
  434. 434 2005 フルタイムライフ フルタイムライフ 柴崎友香 単行本・マガジンハウス 新社会人として働きはじめた春子の日常を、会社の時間、疲れ、同僚との距離感から等身大に描く長編。仕事が劇的な自己実現になるのではなく、生活の大半を占める時間として淡々と積み上がる。柴崎友香らしい心情に寄りすぎない文体で、働きはじめの戸惑いと観察が描かれる。 労働青春孤独と疎外
  435. 435 2005 グルメな女と優しい男 ぐるめなおんなとやさしいおとこ 望月あんね 初出・群像 2005年6月号 「人を好きになることは極上の料理より美味しい」——食べることに貪欲なりん子は、優しい男・一郎に純粋な恋心を抱くようになり、クリスマスの夜、ふたりは濃密なデートに繰り出す。食欲と恋愛感情というふたつの「おいしさ」を重ね合わせ、欲望に素直な女と受け止める男の関係をコミカルに描く。群像新人文学賞の優秀作と… 恋愛ジェンダー
  436. 436 2005 一千一秒の日々 いっせんいちびょうのひび 島本理生 単行本・マガジンハウス 恋愛や日常の短い時間を、きらめくような細部として集めた島本理生の作品集。大きな物語へ急がず、一瞬の表情や会話のずれが、人物の孤独や期待を浮かび上がらせる。若い恋の瑞々しさと、時間が過ぎていくことへの切なさが題名に重なる。 恋愛青春記憶
  437. 437 2005 家族芝居 かぞくしばい 佐川光晴 単行本・文藝春秋 家族を、血縁だけでなく、互いに役を演じ合う小さな舞台として捉える佐川光晴の作品。親密であるはずの関係の中にある見栄、遠慮、傷つけ合いを、生活の目線から描く。タイトルどおり、家族の会話や振る舞いが芝居めいて見える瞬間が読みどころになる。 家族父と子母と子
  438. 438 2005 まぼろし まぼろし 生田紗代 単行本・新潮社 母娘の確執を描く表題作と、実家に戻った娘の日常を描く「十八階ビジョン」を収める作品集。見えているはずの家族や故郷が、どこか「まぼろし」のように掴めなくなる感覚を、若い女性の視点から描く。日常の薄い不安と、過去から離れきれない心理が静かに重なる。 母と子家族記憶
  439. 439 2005 窓の灯 まどのひ 青山七恵 初出・文藝 2005年冬季号 大学を辞めた「私」は、時代に取り残されたような喫茶店の二階に住み込み、店を営む奔放な女主人のもとで働いている。日課は、向かいの部屋の窓の中の生活を覗き見ること。やがて視線は夜の街の散歩で垣間見える家々の窓へと広がっていく。覗くことのうしろめたさとゆるやかな官能を、抑制の効いた静かな文体でつづり、他人… 孤独と疎外青春 第42回 文藝賞
  440. 440 2005 マルコの夢 まるこのゆめ 栗田有起 単行本・集英社 栗田有起が、夢や空想の気配を日常のずれの中に置いた作品。人物たちは現実から大きく逃げ出すのではなく、少しだけ別の見方を差し込むことで、自分の居場所を探っていく。軽やかな題名の裏に、他人とわかり合えない孤独がにじむ。 恋愛孤独と疎外アイデンティティ
  441. 441 2005 みずうみ みずうみ 吉本ばなな 単行本・フォイル 母を亡くした女性と、過去に深い傷を抱えた青年の恋を描く長編。湖の静けさは、癒やしの場所であると同時に、人物が抱える記憶の暗さを映す場所にもなる。吉本ばななの柔らかな語りが、トラウマと恋愛を過剰に説明しすぎず、余韻として残す。 恋愛死と喪失記憶
  442. 442 2005 泣かない女はいない なかないおんなはいない 長嶋有 単行本・河出書房新社 泣かない、あるいは泣けない女性の姿を、恋愛や仕事の日常の中から描く長嶋有の中篇。感情を大きく説明せず、会話や行動の端に表れる違和感で、人物の孤独を浮かび上がらせる。ユーモラスな題名の裏に、強がりと弱さが同時にある作品である。 恋愛労働孤独と疎外
  443. 443 2005 ニート にーと 絲山秋子 単行本・角川書店 「ニート」という言葉が社会的に広まった時期に、働くことから外れた人物の時間を描く絲山秋子の作品。無職であることを単純な問題や説教にせず、生活の細部、会話、周囲とのずれとして描く。乾いたユーモアの中に、労働規範から外れた人間の居場所のなさが見える。 労働孤独と疎外家族
  444. 444 2005 スモールトーク すもーるとーく 絲山秋子 単行本・二玄社 『スモールトーク』は、六台の車をめぐる連作として、移動、修復、喪失の感覚を描く作品です。車という具体物が、登場人物の距離感や回復の速度を測る装置になっています。絲山秋子らしい抑制された会話と乾いた文体が、傷ついた人々のささやかな再出発を浮かび上がらせます。 記憶死と喪失恋愛
  445. 445 2005 冷たい水の羊 つめたいみずのひつじ 田中慎弥 初出・新潮 2005年11月号 級友たちの生け贄のようにいじめの標的にされた中学生の少年。彼は「いじめられたと感じたらそれがいじめ」という定義を逆手に取り、「自分はいじめられていない」という独自の論理に立てこもって、陰惨な仕打ちを受け続ける。いじめを告発した同級生の少女・水原里子との心中の計画が、物語に暗い水脈のように流れる。羊の… 暴力同調圧力孤独と疎外 第37回 新潮新人賞
  446. 446 2004 青空感傷ツアー あおぞらかんしょうツアー 柴崎友香 単行本・河出書房新社 身勝手で魅力的な親友・音生に振り回されながら、「私」が各地を巡るロードノベル。旅は爽快な逃避であると同時に、親友への憧れや苛立ち、自分の輪郭の曖昧さを映し出す時間でもある。柴崎友香らしい移動の感覚と会話のリズムで、若い女性同士の距離を軽やかに描く。 青春恋愛孤独と疎外
  447. 447 2004 アッシュベイビー アッシュベイビー 金原ひとみ 単行本・集英社 『蛇にピアス』後の第二作で、同居人の男と赤ん坊をめぐる歪んだ関係に巻き込まれる女性を描く。身体、依存、母性への違和感が、金原ひとみらしい硬い感覚の文体で押し出される。家庭的な題材を扱いながら、安心できる家族像を反転させる不穏な作品である。 家族身体
  448. 448 2004 袋小路の男 ふくろこうじのおとこ 絲山秋子 単行本・講談社 何も与えない男に、三年間片思いし続ける女の静かな恋愛小説。恋が進展しないこと、相手が応えないことを、単純な不幸ではなく、関係が袋小路のまま続いていく時間として描く。大きな事件を抑えた文体の中に、絲山秋子らしい乾いた痛みと可笑しさが残る。 恋愛孤独と疎外記憶 第30回 川端賞
  449. 449 2004 ぐるぐるまわるすべり台 ぐるぐるまわるすべりだい 中村航 単行本・文藝春秋 失意の青年が、バンドや仲間との関係の中で少しずつ再生へ向かう連作短篇集。若者の閉塞感を、深刻さだけでなく、音楽や会話の軽さ、少しずつ回り続ける遊具のような時間感覚で描く。中村航の青春小説としての明るさと、何者にもなれない痛みが並走する。 青春芸術と表現孤独と疎外 第26回 野間新人賞
  450. 450 2004 灰色の瞳 はいいろのひとみ 佐川光晴 単行本・講談社 佐川光晴の2004年刊行作で、NDLには第一部・第二部として雑誌掲載記事が確認できる。人間関係や家族の記憶を、明るく割り切れない「灰色」の領域として見つめる作品として整理できる。佐川作品に通底する、生活の手触りと関係の痛みを追う読みに向いている。 家族記憶孤独と疎外
  451. 451 2004 初子さん はつこさん 赤染晶子 初出・文學界 2004年12月号 あんパンとクリームパンしか売らないパン屋の二階で、ひたすらミシンを踏む洋裁職人の初子さん。一枚の布が誰かの身体を待つ服になることに魅せられて職人になったものの、夢を叶えた先に広がるのは単調な日々だった。京都の田舎町のよどんだ空気と、そこで生きる女性の手仕事の時間を、とぼけたユーモアと正確な観察で描く… 労働孤独と疎外芸術と表現 第99回 文學界新人賞
  452. 452 2004 High and dry(はつ恋) ハイ・アンド・ドライ(はつこい) 吉本ばなな 単行本・文藝春秋 14歳の少女・夕子の、年上の男性への初恋を描く長編。年齢差のある関係を、危うさよりも、少女の感覚が外界へ開かれていく時間として追っていく。吉本ばななの作品らしく、恋の痛みと透明な夢見心地が同じ調子で語られる。 恋愛青春芸術と表現
  453. 453 2004 人のセックスを笑うな ひとのせっくすをわらうな 山崎ナオコーラ 初出・文藝 2004年冬季号 美術専門学校に通う19歳の「オレ」は、20歳年上の講師・ユリと恋に落ちる。年の差も、ユリに夫がいることも、ふたりの関係のゆるさを変えはしないが、恋はやがて静かに終わっていく。性愛を声高に語らず、軽くやわらかい口語の文体で、若さの側から見た年上の女性のかわいさと残酷さをすくいとる。タイトルの挑発性と中… 恋愛青春 第41回 文藝賞
  454. 454 2004 漢方小説 かんぽうしょうせつ 中島たい子 初出・すばる 2004年11月号 31歳独身の脚本家・みのりは、元恋人の結婚を知った夜に突然の体調不良に襲われる。西洋医学の検査では「異常なし」とされ、たどり着いたのは漢方医院だった。「気・血・水」という耳慣れない物差しで自分の身体を眺め直すうちに、仕事や恋愛で強張っていた心もゆっくりほぐれていく。病気未満の不調という現代的な主題を… 身体恋愛 第28回 すばる文学賞
  455. 455 2004 お縫い子テルミー おぬいこてるみー 栗田有起 単行本・集英社 夜間の縫製工場で働く女性たちをめぐる連作短篇集。針仕事、夜勤、同僚との距離が、働くことの孤独と可笑しさを浮かび上がらせる。栗田有起の柔らかいユーモアが、職場小説を重くなりすぎない読後感へ導いている。 労働ジェンダー孤独と疎外
  456. 456 2004 パラレル ぱられる 長嶋有 単行本・文藝春秋 長嶋有の2004年刊行作で、複数の関係や時間が「パラレル」に並んでいく感覚をもつ長編。日常の会話やちょっとしたすれ違いを淡々と積み重ね、劇的な和解よりも、近くにいるのに重なりきらない人間関係を描く。脱力したユーモアの中に、現代的な孤独がにじむ。 夫婦恋愛孤独と疎外
  457. 457 2004 真空が流れる しんくうがながれる 佐藤弘 初出・新潮 2004年11月号 図書印刷株式会社に勤める23歳の会社員だった佐藤弘のデビュー作で、第36回新潮新人賞(小説部門)受賞作。同年の評論部門は該当作なしで、本作が単独の受賞となった。単行本には収録されておらず、初出の『新潮』2004年11月号でしか読めないため、今日では参照の難しい「幻の受賞作」となっている。著者はその後… 労働孤独と疎外簡潔な文体 第36回 新潮新人賞
  458. 458 2004 ショートカット ショートカット 柴崎友香 単行本・河出書房新社 柴崎友香が、都市の移動や人との距離を軽いタッチで描いた2004年刊行作。道を短く抜ける「ショートカット」の感覚は、場所だけでなく、関係や記憶へ近道を探す若い人物たちの姿にも重なる。淡い会話と細部の観察によって、日常の中にある変化の瞬間をすくう。 青春恋愛孤独と疎外
  459. 459 2004 タイムカプセル たいむかぷせる 生田紗代 単行本・河出書房新社 過去にしまいこんだ感情や記憶を、現在の自分が開け直すようにたどる作品。若い人物の時間感覚を、懐かしさだけでなく、未来へ残してしまったものへの不安として描く。生田紗代のデビュー後の文脈では、青春の明るさと居場所のなさを同時に読む入口になる。 記憶青春家族
  460. 460 2004 生まれる森 うまれるもり 島本理生 単行本・講談社 恋愛や喪失のあとに残る空白を、森というイメージに重ねて描く島本理生の初期長篇。人物の内面は激しく揺れながらも、語り口は抑制され、痛みが静かな風景の中に置かれる。青春小説の瑞々しさと、取り返しのつかない記憶を抱える重さが同居している。 恋愛死と喪失記憶
  461. 461 2004 海のふた うみのふた 吉本ばなな 単行本・ロッキング・オン 故郷の海辺の町でかき氷屋を始めた女性のひと夏を描く長編。海、店、訪れる人々とのやりとりを通じて、傷ついた心が生活の手触りを取り戻していく。吉本ばなならしいやさしい幻想味が、地方の小さな商いと再生の感覚に結びついている。 労働家族記憶
  462. 462 2004 海の仙人 うみのせんにん 絲山秋子 単行本・新潮社 海辺で暮らす人物の孤独に、現実から少しずれた存在や関係が入り込んでくる絲山秋子の長篇。日常的な会話の軽さと、死や喪失の気配が同じ平面に置かれ、海辺の時間が寓話のように広がる。恋愛小説でも幻想小説でもあるが、どちらにも収まりきらない余白が読みどころになる。 孤独と疎外恋愛死と喪失
  463. 463 2003 デッドエンドの思い出 デッドエンドのおもいで 吉本ばなな 単行本・文藝春秋 失恋や裏切りからの小さな回復を描く五篇の短篇集。傷ついた人物が、行き止まりに見える場所から少しずつ生活を取り戻す過程を、吉本ばなならしいやわらかい語りで描く。大きな救済ではなく、日常の中にある小さな光を読む作品集である。 恋愛死と喪失孤独と疎外
  464. 464 2003 ハゴロモ ハゴロモ 吉本ばなな 単行本・新潮社 恋愛や喪失で傷ついた人物が、都会から少し距離を置いた土地で静かに時間を取り戻していく吉本ばななの長篇。水辺や町の気配、記憶の手触りを重ねながら、壊れた心がすぐに治るのではなく、生活のリズムの中でゆっくりほどけていく過程を描く。幻想味を帯びたやわらかな文体が、再生の物語を日常の側に引き寄せている。 恋愛死と喪失記憶
  465. 465 2003 蛇にピアス へびにピアス 金原ひとみ 初出・すばる 2003年11月号 19歳のルイは、蛇のように舌先が割れた「スプリット・タン」を持ち、全身にピアスと刺青を施した青年アマと出会い、同棲を始める。自らも舌にピアスを開け、拡張し、背中に麒麟と龍の刺青を彫ろうと、アマの紹介で知り合ったサディストの彫り師シバとも危険な関係を結んでいく。痛みによってしか生の実感をつかめない若者… 身体暴力 第130回 芥川賞
  466. 466 2003 イッツ・オンリー・トーク いっつ・おんりー・とーく 絲山秋子 初出・文學界 2003年6月号 躁鬱病を抱えた30代半ばの独身女性「私」は、東京の場末めいた蒲田の町に引っ越してくる。EDの痴漢、鬱病のヤクザ、出世コースを外れた従兄——彼女の周りに集まるのは、どこか欠けた男たちばかり。誰とも深く結ばれないまま交わされる「ただのおしゃべり」を通して、病とともに生きる日常を、自己憐憫ゼロの乾いたユー… 孤独と疎外 第96回 文學界新人賞
  467. 467 2003 ジャージの二人 じゃーじのふたり 長嶋有 単行本・集英社 仕事や家庭から少し離れた父と息子が、山の別荘で同じようなジャージを着て夏を過ごす。大きな事件の代わりに、食事、虫、テレビ、会話の間合いといった細部が積み重なり、親子でありながらどこか他人同士でもある二人の距離が浮かび上がる。長嶋有らしい、脱力したユーモアと静かな寂しさが同居する作品。 家族父と子労働
  468. 468 2003 極東アングラ正伝 きょくとうあんぐらせいでん 佐川光晴 単行本・双葉社 佐川光晴が、都市の周縁や表舞台の外側にある生の感覚へ目を向けた2003年の作品。題名が示す「アングラ」は、文化や労働や生活が公的な語りからこぼれ落ちる場所を思わせる。デビュー期から一貫する、きれいごとでは済まない生活への視線をたどる一冊として位置づけられる。 労働芸術と表現孤独と疎外
  469. 469 2003 夏休み なつやすみ 中村航 単行本・河出書房新社 就職も進路も決まりきらない青年が、夏の時間の中で宙ぶらりんの自分を抱えたまま過ごす。中村航らしい軽い会話と瑞々しい感覚で、何者にもなれない時期の切なさを描く。大きな転機よりも、季節の空気や友人関係の揺れが、青春の停滞と再生の気配を作っている。 青春労働孤独と疎外
  470. 470 2002 アルゼンチンババア アルゼンチンババア 吉本ばなな 単行本・ロッキング・オン 母の死後、「アルゼンチンババア」と呼ばれる女性と暮らし始めた父をめぐる物語。奇妙な人物や場所への戸惑いを通して、家族の喪失を別の関係へ開いていく。吉本ばなならしい、死後の時間をやわらかく生き直す物語。 家族死と喪失孤独と疎外
  471. 471 2002 縮んだ愛 ちぢんだあい 佐川光晴 単行本・講談社 佐川光晴の作品で、既存データでは野間文芸新人賞受賞作とされる。家族や親密な関係に潜む痛みを、小さく「縮む」感覚として捉える作品として整理できる。佐川作品らしい生活への視線と、関係の中で変形していく愛のかたちを読む入口になる。 家族恋愛孤独と疎外 第24回 野間新人賞
  472. 472 2002 裸のカフェ はだかのかふぇ 横田創 単行本・講談社 横田創が2002年に刊行した作品で、公開情報では詳細な梗概がまだ薄い。カフェという開かれた場所と「裸」のイメージから、人間関係や自己露出の不穏さを扱う作品として暫定整理する。内容細部と批評上の評価は、現物・書評確認を優先したい。 アイデンティティ孤独と疎外身体
  473. 473 2002 ハミザベス はみざべす 栗田有起 初出・すばる 2002年11月号 二十歳の誕生日を前に、死んだと思っていた父が本当に死んだ。まちるが遺産として受け取ったのは、高層マンションの一室とハムスターの「ハミザベス」。母と暮らした家を出て、地上33階で始まる一人と一匹の生活に、元恋人の幼なじみや父の同居人だった女性が出入りし、奇妙な距離感の友情が育っていく。喪失から始まる物… 父と子死と喪失家族 第26回 すばる文学賞
  474. 474 2002 じゅう 中村文則 初出・新潮 2002年11月号 雨の夜、大学生の「私」は河原で死体のそばに落ちていた拳銃を拾う。磨き、眺め、持ち歩くうちに、銃は退屈な日常に輪郭を与える唯一の存在となり、「撃つ」ことへの欲望が抗いがたく膨らんでいく——。一挺の銃という即物的なモチーフだけで青年の内面の崩壊を追い詰めていく構成と、乾いた硬質な一人称は、ドストエフスキ… 暴力孤独と疎外死と喪失 第34回 新潮新人賞
  475. 475 2002 リトル・バイ・リトル りとる・ばい・りとる 島本理生 単行本・講談社 母の不在と継父との関係に揺れる少女の成長を描く島本理生の初期長編。十代の語り手が、家族への違和感、恋愛以前の孤独、日常の不安を少しずつ言葉にしていく。静かな文体で、傷つきやすい感情の変化を丁寧に追う作品。 家族青春孤独と疎外 第25回 野間新人賞
  476. 476 2002 猛スピードで母は もうすぴーどではは​は 長嶋有 単行本・文藝春秋 芥川賞受賞作「猛スピードで母は」と、デビュー作「サイドカーに犬」を収める短篇集。子どもの視点から、奔放な母や家族の変化を、過度に説明せず鮮やかな場面で捉える。ユーモアと痛切さが同居し、家族小説を軽やかな速度で更新した作品。 家族母と子青春 第126回 芥川賞
  477. 477 2002 王国 その1 アンドロメダ・ハイツ おうこく そのいち アンドロメダ・ハイツ 吉本ばなな 単行本・新潮社 山奥で祖母と暮らした雫石が、都会で占い師の助手となる「王国」シリーズ第一作。自然の記憶、都市での仕事、スピリチュアルな感受性が交差し、傷ついた人が別の居場所を作る過程を描く。吉本ばなならしい癒やしと不思議さが、生活の手ざわりと結びつく。 記憶労働孤独と疎外
  478. 478 2002 リレキショ りれきしょ 中村航 初出・文藝 2002年冬季号 過去を捨てた19歳の「僕」は、「姉さん」と名乗る女性に拾われ、「半沢良」という新しい名前と居場所をもらう。深夜のガソリンスタンドでアルバイトをしながら、白紙に「どこへでもいける切符」を持つ自分の履歴書を書いてみる——。何者でもなくなった青年が、淡い人間関係のなかでもう一度自分の輪郭をなぞり直していく… アイデンティティ家族青春 第39回 文藝賞
  479. 479 2002 世界がはじまる朝 せかいがはじまるあさ 黒田晶 単行本・河出書房新社 黒田晶が2002年に刊行した作品で、河出書房新社版の書誌が確認できる。公開情報が限られるため内容細部は保留するが、デビュー期の若い書き手による、世界が開ける瞬間や関係の始まりをめぐる作品として暫定整理する。文藝賞周辺の2000年代初頭の感覚を追う上で補完的な一冊。 青春アイデンティティ恋愛
  480. 480 2002 タンノイのエジンバラ たんのいのえじんばら 長嶋有 単行本・文藝春秋 長嶋有の2002年の作品で、オーディオ機器を思わせる題名が、生活の中の音や記憶への感度を示す。公開情報は限定的だが、日常の小さな違和感や人間関係の距離を、静かでユーモラスな筆致で捉える長嶋作品の系譜に置ける。内容細部は追加確認が必要。 記憶家族孤独と疎外
  481. 481 2002 よしわら よしわら 鈴木弘樹 単行本・新潮社 新潮新人賞受賞作「グラウンド」を、単行本化に際して『よしわら』と改題した中篇。風俗雑誌編集などの職歴を持つ作者の経歴とも重なり、労働、都市の周縁、学歴や階層から外れた人物の感覚を描く。新人賞受賞作が芥川賞候補にもなった、2000年代初頭の新潮新人賞系譜の一作。 労働孤独と疎外アイデンティティ 第33回 新潮新人賞
  482. 482 2001 インストール いんすとーる 綿矢りさ 初出・文藝 2001年冬季号 高校生活から突然降りてしまった17歳の朝子が、部屋の荷物を全部捨てたことをきっかけに、マンションの押入れに住み着くような小学生・かずよしと知り合い、拾った中古パソコンで風俗チャットの「バイト」を代行するようになる。インターネット黎明期の風俗チャットという際どい題材を扱いながら、筆致はあくまで軽やかで… 青春テクノロジー 第38回 文藝賞
  483. 483 2001 ジャムの空壜 じゃむのあきびん 佐川光晴 単行本・新潮社 屠畜の現場を舞台にした短篇集で、労働、身体、動物の死を生活の近くから描く。清潔な消費の背後にある仕事を見つめることで、社会の見えにくい暴力と人間の尊厳を浮かび上がらせる。佐川光晴の労働への視線がよく表れる作品。 労働身体暴力
  484. 484 2001 最後の家族 さいごのかぞく 村上龍 単行本・幻冬舎 引きこもりの息子を抱えた四人家族の解体と再生を描く長編。家族の愛情が、支配、依存、逃避と紙一重であることを、村上龍らしい社会問題への視線で描き出す。家庭という閉じた場所を通じて、2000年前後の孤立とケアの難しさを読む作品。 家族孤独と疎外ケアと介護
  485. 485 2001 サイドカーに犬 さいどかーにいぬ 長嶋有 初出・文學界 2001年6月号 小学四年生の夏、母が家出した薫の家に、父の知り合いである洋子さんが入り込んでくる。自転車を教えてくれ、缶コーヒーを飲み、堂々と振る舞う洋子さんと過ごしたひと夏を、大人になった薫が淡々と回想する。家庭の危機という湿りがちな題材を、軽やかでユーモラスな距離感と即物的なディテールで描き、深刻にならないのに… 家族記憶青春 第92回 文學界新人賞
  486. 486 2001 シルエット しるえっと 島本理生 初出・群像 2001年6月号 高校二年生の「私」を語り手に、人との出会いと別れ、恋愛にともなう心の揺れと痛みを、等身大の言葉で丁寧にすくいとった中篇。書いたのは当時現役高校生の島本理生で、十代の感受性をそのまま閉じ込めたような瑞々しさと、年齢に不釣り合いなほど抑制の効いた文章が同居している。痛みを声高に語らず、静かな観察として差… 恋愛青春家族
  487. 487 2001 途中下車 とちゅうげしゃ 高橋文樹 単行本・幻冬舎 高橋文樹のデビュー作で、既存データでは幻冬舎NET学生文学賞大賞受賞作とされる。移動や途中下車のモチーフから、若い語り手が日常の経路を外れ、自分の居場所を探る作品として暫定整理する。公開情報が少ないため、内容紹介は今後の現物確認で補強したい。 青春アイデンティティ孤独と疎外
  488. 488 2001 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? つぎのまちまで、きみはどんなうたをうたうの 柴崎友香 単行本・河出書房新社 柴崎友香の初期作品で、次の町へ向かう移動の感覚と、若い人々の会話や音楽の気配を描く。大きなドラマではなく、場所が変わるときの心の揺れ、友人関係の距離、都市の日常の質感が中心になる。後の柴崎作品に通じる、移動と観察の文学として読める。 青春芸術と表現孤独と疎外
  489. 489 2000 ひな菊の人生 ひなぎくのじんせい 吉本ばなな 単行本・ロッキング・オン 吉本ばななが2000年に刊行した作品で、ロッキング・オン版と後年の幻冬舎版の書誌が確認できる。公開情報は限定的だが、タイトルの柔らかさとは裏腹に、人生の記憶や痛みをすくい上げる吉本作品の系譜に置ける。現段階では内容細部の確認を次回課題として残す。 記憶死と喪失孤独と疎外
  490. 490 2000 神の子どもたちはみな踊る かみのこどもたちはみなおどる 村上春樹 単行本・新潮社 阪神・淡路大震災後の空気を背景にした六篇の連作短編集。大きな災害を直接描き尽くすのではなく、喪失や不安を抱えた人々の生活に、寓話や偶然の形で揺れを響かせる。「かえるくん、東京を救う」など、現実と幻想の境目を軽やかに越える短篇が含まれる。 災害死と喪失孤独と疎外
  491. 491 2000 看板屋の恋 かんばんやのこい 都築隆広 初出・文學界 2000年12月号 受賞作なしが続いた時期の文學界新人賞で、2000年下期に単独で選ばれた短篇。『文學界』2000年12月号に掲載されたが単行本未収録のままで、今日では掲載誌でしか読めない。作者の都築隆広は当時22歳の若さでデビューしたものの、その後は脚本家・放送作家として映像分野へ活動の軸を移した。新人賞受賞が必ずし… 恋愛労働簡潔な文体 第91回 文學界新人賞
  492. 492 2000 体は全部知っている からだはぜんぶしっている 吉本ばなな 単行本・文藝春秋 身体の記憶をモチーフにした吉本ばななの掌篇集。心では整理できない痛みや違和感が、身体の感覚として先に反応する瞬間をすくう。短い形式の中で、病、恋愛、喪失、生活の手ざわりを静かに重ねる。 身体記憶
  493. 493 2000 きょうのできごと きょうのできごと 柴崎友香 単行本・河出書房新社 京都で開かれた引っ越し祝いの飲み会に集まった若者たちの一夜を、複数の視点から描く柴崎友香のデビュー作。大きな事件よりも、会話、部屋の空気、街への移動が作る微細なずれを積み重ねる。日常の時間をそのまま文学の中心に置く、後の柴崎作品へつながる出発点。 青春孤独と疎外記憶
  494. 494 2000 共生虫 きょうせいちゅう 村上龍 単行本・講談社 引きこもりの青年ウエハラが、「共生虫」という妄想に取り憑かれていく長編。ネット、孤立、身体への不安が結びつき、社会から退いた人物の内側が危うく膨張していく。2000年前後のテクノロジーと精神の不穏な接続を描く村上龍作品。 テクノロジー孤独と疎外身体 第36回 谷崎賞
  495. 495 2000 メイドインジャパン めいどいんじゃぱん 黒田晶 初出・文藝 2000年冬季号 「この国にしか起こりえない少年犯罪」を題材に、リアルで残酷な殺人描写を、グルーヴ感のあるクールな文体で押し切った問題作。応募時の原題は「YOU LOVE US」で、単行本化に際して『メイドインジャパン』と改題された。1990年代末の少年犯罪報道の記憶が生々しい時期に、暴力を内側から描く若い書き手が現… 暴力青春孤独と疎外 第37回 文藝賞
  496. 496 1999 夏の約束 なつのやくそく 藤野千夜 初出・「群像」1999年12月号 ゲイのカップルを中心に、性転換した美容師、売れない小説家とその女友達といった「ゆるやか」な人々のある夏の日常を描いた短編。性的マイノリティを自然体で描いた1990年代末の問題作。玄月「蔭の棲みか」と同時受賞。 恋愛アイデンティティ 第122回 芥川賞
  497. 497 1999 クレア、冬の音 くれあ、ふゆのおと 遠藤純子 初出・「新潮」1999年11月号 元都立高校教員・大学准教授が59歳でのデビュー。 家族移民と越境簡潔な文体 第31回 新潮新人賞
  498. 498 1995 この人の閾 このひとのいき 保坂和志 初出・「新潮」1995年3月号 近隣に住む人々の日常の会話や時間の流れを、思索的かつ穏やかな視点でたどった短編。保坂和志の「日常の哲学」が凝縮された作品で、芥川賞選考委員から高く評価された。 簡潔な文体都市・郊外静謐 第113回 芥川賞
  499. 499 1994 みのむし みのむし 三浦哲郎 初出・「新潮」等1994年頃掲載。短篇集『ふなうた(短篇集モザイク 2)』(新潮社、1994年)に収録。初出誌・号の詳細は特定できないため収録単行本刊行年を year とした。 農家の老いた夫婦が蓑虫を題材にした短い会話を通して、生命の儚さと互いへの愛着を静かに語らう短篇。三浦哲郎の短篇集モザイクシリーズの一作で、川端賞の2度目の受賞作。単行本年を year に採用。 老い家族簡潔な文体 第22回 川端賞
  500. 500 1993 とかげ とかげ 吉本ばなな 単行本・新潮社 癒しと時間をテーマにした六篇の短篇集。 恋愛記憶簡潔な文体
  501. 501 1993 冗談関係のメモリアル じょうだんかんけいのめもりある 中村邦生 初出・「文學界」1993年12月号(第77回受賞、篠原一と同時受賞) 『冗談関係のメモリアル』は、中村邦生が第77回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1993年12月号の書誌を確認できます。題名から、冗談や記憶をめぐる人間関係を扱う作品と見られますが、内容の詳細は未確認です。 記憶家族孤独と疎外 第77回 文學界新人賞
  502. 502 1993 暗い森を抜けるための方法 くらいもりをぬけるためのほうほう 足立浩二 初出・「群像」1993年6月号(第36回優秀作、木地雅映子と同時受賞) 『暗い森を抜けるための方法』は、足立浩二が第36回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1993年6月号と受賞発表記事を確認しました。暗い森を抜けるという題名が示す閉塞と脱出のイメージは明確ですが、具体的な筋は未確認です。 孤独と疎外青春簡潔な文体
  503. 503 1993 骸骨山脈 がいこつさんみゃく 野間井淳 初出・「新潮」1993年11月号 『骸骨山脈』は、野間井淳が第25回新潮新人賞を受賞した作品です。NDLでは『新潮』1993年11月号と受賞作発表記事を確認できますが、具体的な筋や書評は今回確認できませんでした。題名の死や山岳のイメージを手がかりにした分類は暫定です。 死と喪失身体簡潔な文体 第25回 新潮新人賞
  504. 504 1992 鳩を食う はとをくう 中野勝 初出・「群像」1992年6月号(第35回優秀作) 『鳩を食う』は、中野勝が第35回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1992年6月号と受賞発表記事を確認できますが、具体的なあらすじや批評は今回確認できませんでした。題名の強い身体性を手がかりに分類は暫定補完しています。 身体孤独と疎外
  505. 505 1992 音符 おんぷ 三浦恵 初出・「文藝」1992年 『音符』は、三浦恵が第29回文藝賞を受賞した作品です。NDLでは1993年河出書房新社版の単行本書誌と『文藝』1992年12月号の書誌を確認しました。音楽的な題名を持つ作品ですが、内容を詳述した信頼できる公開資料は今回確認できず、紹介は受賞・書誌中心です。 芸術と表現青春簡潔な文体 第29回 文藝賞
  506. 506 1991 海を渡る植物群 うみをわたるしょくぶつぐん みどりゆうこ 初出・「文學界」1991年6月号(第72回受賞) 『海を渡る植物群』は、みどりゆうこが第72回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLで受賞作発表記事と『文學界』1991年6月号の書誌を確認できました。題名から越境や移動のイメージがうかがえますが、物語内容を具体的に確認できる公開資料は今回見つからず、紹介は書誌中心です。 移民と越境記憶簡潔な文体 第72回 文學界新人賞
  507. 507 1991 予感 よかん 釉木淑乃 初出・「すばる」1991年 『予感』は、釉木淑乃が第15回すばる文学賞を受賞した作品です。NDLでは『すばる』1991年12月号の受賞作発表記事と、1992年集英社版の単行本書誌を確認できます。詳細なあらすじは今回確認できなかったため、紹介は新人賞受賞作としての位置づけに留めます。 恋愛記憶簡潔な文体 第15回 すばる文学賞
  508. 508 1991 十二階 じゅうにかい 小口正明 初出・「新潮」1991年11月号 『十二階』は、小口正明が第23回新潮新人賞を受賞した作品です。NDLでは『新潮』1991年11月号と受賞作発表記事を確認できる一方、詳細なあらすじや批評は今回確認できませんでした。作品内容の断定は避け、現時点では新人賞受賞作としての書誌情報を中心に扱います。 記憶簡潔な文体都市・郊外 第23回 新潮新人賞
  509. 509 1990 狂いバチ、迷いバチ くるいバチ、まよいバチ 竹野昌代 初出・「文學界」1990年12月号(第71回受賞) 『狂いバチ、迷いバチ』は、竹野昌代が第71回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1990年12月号の書誌を確認できますが、公開された詳細なあらすじ・書評は今回確認できませんでした。題名の不穏さを含め、現時点では新人賞受賞作としての書誌的紹介を中心に扱います。 孤独と疎外身体簡潔な文体 第71回 文學界新人賞
  510. 510 1990 ドッグ・デイズ どっぐ・でいず 藤枝和則 初出・「新潮」1990年11月号 『ドッグ・デイズ』は、『新潮』1990年11月号に掲載された藤枝和則の新潮新人賞受賞作です。NDLでは受賞作発表記事と掲載誌の書誌を確認できる一方、筋や語り口を詳述した信頼できる公開資料は今回確認できませんでした。そのため、現時点の紹介は受賞作・デビュー作としての位置づけを中心に留めます。 孤独と疎外簡潔な文体都市・郊外 第22回 新潮新人賞
  511. 511 1989 ラッフルズホテル ラッフルズホテル 村上龍 単行本・集英社 シンガポールの名門ホテルを思わせる空間を舞台に、旅、欲望、演技する自己を描く村上龍の作品。ホテルという非日常の場所が、登場人物の孤独や消費社会の空虚さを浮かび上がらせる。都市的で乾いた感触の中に、海外への視線と身体感覚が重なる。 孤独と疎外身体
  512. 512 1989 白河夜船 しらかわよふね 吉本ばなな 単行本・福武書店 眠りに沈んでいく女性たちを描く三篇を収めた作品集。恋愛、喪失、孤独が、眠りという身体の状態を通じて静かに語られる。吉本ばなな初期の透明な語りと、生死の境目に触れる感覚がよく表れた一冊。 恋愛死と喪失身体
  513. 513 1989 TUGUMI つぐみ 吉本ばなな 単行本・中央公論社 海辺の町を舞台に、語り手まりあと、病弱で美しいが激しい気性を持つ少女つぐみの最後の夏を描く長編。家族経営の宿、海辺の時間、恋の予感、病と別れの気配が重なり、青春のまぶしさと残酷さが同時に立ち上がる。吉本ばなならしい平明な一人称で、親密な関係が永遠には続かないことを痛切に描く。 青春家族身体
  514. 514 1989 さして重要でない一日 さしてじゅうようでないいちにち 伊井直行 初出・単行本(講談社、1989年)。初出誌は未確認。「パパの伝説」を併録。 会社で「社内局」経由の会議資料を回収することになった人物が、どこにあるのか誰も知らない部署を探して会社という迷宮をさまよう一日を描く。講談社の内容紹介は、困惑の一日を会社内の不条理な探索として示している。職場の制度や組織の見えにくさを、ユーモアと不穏さのある寓話として読ませる作品。 労働同調圧力孤独と疎外 第11回 野間新人賞
  515. 515 1988 哀しい予感 かなしいよかん 吉本ばなな 単行本・角川書店 記憶の空白を抱えた少女が、風変わりな親族の家で自分の過去へ近づいていく長編。家族の秘密、喪失、直感のような感覚が、吉本ばなな初期作らしい静かな語りで結びつく。大きな事件よりも、眠りや気配に近い感情の変化を読む作品。 記憶家族死と喪失
  516. 516 1988 村上龍料理小説集 むらかみりゅうりょうりしょうせつしゅう 村上龍 単行本・集英社 料理を軸に、欲望、記憶、身体感覚を結びつける村上龍の短篇集。食べることが単なる生活描写ではなく、性、旅、階層、感覚の鋭さを呼び出す装置として働く。村上龍の官能的な文体を、暴力よりも味覚と記憶の側から読める作品集。 身体
  517. 517 1988 トパーズ トパーズ 村上龍 単行本・角川書店 SMクラブで働く女性たちの身体、欲望、孤独を都市の夜の中に描く村上龍の作品。性の描写は刺激としてだけでなく、支配、痛み、金銭、自己感覚をめぐる問いとして機能する。乾いた文体で、バブル期都市の消費と身体の商品化を突きつける。 身体暴力
  518. 518 1988 うたかた/サンクチュアリ うたかた/サンクチュアリ 吉本ばなな 単行本・福武書店 吉本ばななの初期作品集で、「うたかた」と「サンクチュアリ」を併録する。喪失や恋愛、居場所をめぐる不安を、柔らかく透明な語り口で描く。日常の小さな違和感から、生死のあわいや心の避難場所へ入っていく初期吉本作品らしさがある。 恋愛死と喪失孤独と疎外
  519. 519 1988 尋ね人の時間 たずねびとのじかん 新井満 初出・「文學界」1988年6月号(第42巻第6号) 『尋ね人の時間』は、別れた妻子や死別した妹、好意を寄せる女性との距離を抱えたカメラマンの意識を追う作品です。都会で自分を見失った人物の感覚が、詩的で短い文の連なりとして表現されます。喪失を過剰に劇化せず、削ぎ落とした言葉で浮遊感を残す点が特徴です。 孤独と疎外死と喪失恋愛 第99回 芥川賞
  520. 520 1988 ルイジアナ杭打ち るいじあなくいうち 吉目木晴彦 初出・単行本(講談社、1988年)。初出誌は未確認。 父の仕事の都合でルイジアナ州バトンルージュに暮らす日々を、少年の目を通して書きとめた短篇集。紀伊國屋書店の紹介では、深南部に住む異邦人としての非適応感覚を、クールさとユーモアを交えて捉えた作品とされる。移住先の風物、家族、周囲の人々との距離感が、記憶と越境の物語になっている。 移民と越境記憶青春 第10回 野間新人賞
  521. 521 1987 キッチン キッチン 吉本ばなな 初出・海燕 1987年11月号 唯一の肉親だった祖母を亡くし、天涯孤独となった大学生の桜井みかげ。眠れるのは冷蔵庫のそばだけ――そんな彼女に、祖母と親しかった青年・田辺雄一が同居を申し出る。雄一の家には、女性として生きる「母」えり子さん(実は父親)がいて、奇妙であたたかい三人の暮らしが始まる。台所と食べることを心の拠り所に、喪失の… 死と喪失家族
  522. 522 1987 ノルウェイの森 のるうぇいのもり 村上春樹 単行本・講談社 1960年代末の学生運動期を背景に、ワタナベと直子、緑の関係を通じて、喪失、恋愛、死者への記憶を描く長編。村上作品としては幻想性を抑えたリアリズム寄りの語りで、音楽、読書、寮生活、療養所の細部が青春の傷を浮かび上がらせる。読みやすい恋愛小説の形を取りながら、親しい死をどう抱えて生きるかという痛切な問… 恋愛死と喪失青春
  523. 523 1987 69 sixty nine シックスティナイン 村上龍 単行本・集英社 1969年の佐世保を舞台に、高校生ケンの反乱と文化祭騒動を描く自伝的青春小説。政治の季節、ロック、映画、性への憧れが混ざり合い、重い時代背景を祝祭的な語りで駆け抜ける。村上龍作品の中では、暴力や破滅よりも若者のエネルギーとユーモアが前面に出る。 青春芸術と表現
  524. 524 1987 スティル・ライフ すてぃる・らいふ 池澤夏樹 初出・「中央公論」1987年10月特大号(第102年第12号)。単行本は1988年・中央公論社刊 『スティル・ライフ』は、染色工場で働く「ぼく」と、世界を少し離れた位置から見ている佐々井との交流を描く短篇です。大きな事件よりも、労働、会話、都市の時間の中で、世界が静かにつながって存在している感覚を描きます。透明感のある文体と、孤独を否定しない清澄な肯定感が読みどころです。 孤独と疎外芸術と表現一人称 第98回 芥川賞
  525. 525 1987 カワセミ かわせみ 図子英雄 初出・「新潮」1987年11月号(新潮社) 戦時下の四国を舞台に、飛ぶ宝石とも呼ばれるカワセミの生命に魅せられた少年の日々を描く表題作を含む短篇集。紀伊國屋の内容説明では、無頼の道を歩む幼なじみの苛烈な生を写す「牙」なども収録される。自然へのまなざし、少年の感受性、戦時下の地方の時間が静かに重なっていく。 戦争青春死と喪失 第19回 新潮新人賞
  526. 526 1986 パン屋再襲撃 ぱんやさいしゅうげき 村上春樹 単行本・文藝春秋 表題作は、深夜に激しい空腹に襲われた夫婦が、過去の「パン屋襲撃」の呪いを解くため再び街へ出る奇妙な短篇。文春文庫公式ページでは「象の消滅」や“ねじまき鳥”の原型となる作品を含む初期短篇集として紹介されており、食欲、結婚生活、都市の空白が寓話的に結びつく。軽い会話と不穏な空気が同時に進む、初期村上短篇… 孤独と疎外家族
  527. 527 1986 ミモザの林を みもざのはやしを 岩阪恵子 初出・単行本(講談社、1986年8月)。初出誌は未確認。 日常の猥雑を越えてなお何かを求め続ける女性たちの生命力を描く短篇集。表題作のほか「毀れる」「焔の舌」「くずれる音」「冬の苺」「ガラスの破片」を収め、身体感覚と性、日々の生活の手ざわりが重なっていく。短い紹介しか確認できないが、女であることの感覚を正面から扱った作品として読める。 身体ジェンダー 第8回 野間新人賞
  528. 528 1986 しずかにわたすこがねのゆびわ しずかにわたすこがねのゆびわ 干刈あがた 初出・単行本(福武書店、1986年)。初出誌は未確認。 家族、育児、夫婦をめぐる日常を、抑えた感触で描いた干刈あがたの作品。家庭の内側にある親密さと疲労、母と子の時間、夫婦の距離が、静かな生活描写の中から浮かび上がる。大きな事件よりも、日々の関係が少しずつ人を変えていく感触を読む作品。 家族夫婦母と子 第8回 野間新人賞
  529. 529 1985 回転木馬のデッド・ヒート かいてんもくばのでっどひーと 村上春樹 単行本・講談社 実際に聞いた話を小説の形に組み替えた、都市生活者たちの短いスケッチ集。表題の「回転木馬」は、同じ場所を巡り続けながら誰も抜け出せない人生の比喩として働き、各篇の人物は小さな違和感や疲労を抱えたまま日常を走り続ける。事実と虚構の境界をあいまいにしながら、村上春樹の乾いた観察眼と抑制されたユーモアが前面… 孤独と疎外記憶アイデンティティ
  530. 530 1985 テニスボーイの憂鬱 テニスボーイのゆううつ 村上龍 単行本・集英社 村上龍が1985年に刊行した長編。テニスや消費文化の明るい表層を背景に、若者の空虚さ、身体感覚、欲望の行き場のなさを描く作品として読める。初期村上龍の過剰な都市感覚を、暴力だけでなく遊戯性や倦怠から見るための一冊。 青春身体孤独と疎外
  531. 531 1985 午後の祠り ごごのまつり 江場秀志 初出・「すばる」1985年12月号(集英社) 沖縄を舞台に、暑熱の中で樹木、草、石までもが息をつめるような自然と、老婆の心象が一体化していく作品。既存梗概では沖縄赴任中の医師が触れる民俗的世界として位置づけられており、土地の自然と信仰的感覚が物語の中心にある。外から来た者が出会う沖縄の時間と、老いの内面が静かに重なる読み味を持つ。 信仰老い地方 第9回 すばる文学賞
  532. 532 1985 過越しの祭 すぎこしのまつり 米谷ふみ子 初出・「新潮」1985年11月号(新潮社) ロサンゼルスに暮らす日本人女性の視点から、日系、白人、黒人が混在するアメリカ社会の文化的・人種的摩擦を描く。ユダヤ教の「過越しの祭」を題材に、異文化のなかで自分の位置を測り直す過程が物語の軸になる。移民の生活感覚と信仰儀礼が交差し、理解と断絶の両方を浮かび上がらせる作品。 アイデンティティ移民と越境信仰 第17回 新潮新人賞
  533. 533 1984 螢・納屋を焼く・その他の短編 ほたる・なやをやく・そのたのたんぺん 村上春樹 単行本・新潮社 「螢」「納屋を焼く」などを収めた初期短編集。新潮社の紹介では「螢」が『ノルウェイの森』の原点とされ、学生時代の喪失と届かない温もりが抑制された一人称で描かれる。「納屋を焼く」は日常会話の奥に説明されない空白を置き、静かな恋愛小説と不穏な幻想が同じ冊子のなかで並ぶ構成になっている。 死と喪失記憶恋愛
  534. 534 1983 中国行きのスロウ・ボート ちゅうごくゆきのすろうぼーと 村上春樹 単行本・中央公論社 村上春樹の最初の短篇小説集で、表題作をはじめ、初期作品に特徴的な一人称の軽さ、記憶の空白、都市生活の孤独が並ぶ。長編の「僕」の世界から少し距離を取り、短篇ごとに日常の違和感、すれ違う他者、説明されない幻想を試している。淡いユーモアと乾いた喪失感が共存し、初期村上短篇の実験場として読むことができる。 記憶孤独と疎外アイデンティティ
  535. 535 1983 だいじょうぶマイ・フレンド だいじょうぶマイ・フレンド 村上龍 単行本・集英社 村上龍が1983年に刊行した、映画化とも接続するポップな幻想小説。現実の都市感覚に、異質な存在との遭遇や友情のモチーフを重ね、初期村上龍の暴力的なリアリズムとは別の軽さを見せる。サブカルチャー、映像、音楽的な速度感を小説へ持ち込む読みどころがある。 青春芸術と表現孤独と疎外
  536. 536 1983 カンガルー日和 かんがるーびより 村上春樹 単行本・平凡社 村上春樹の初期短編集で、ショートショートを含む短い物語が並ぶ。日常の手ざわりからふいに幻想へ滑り込む語り口が特徴で、軽いユーモアの奥に孤独や関係の不確かさが残る。後年の長編へ続く比喩、欠落、都市生活者の感覚をコンパクトに読むことができる。 孤独と疎外恋愛芸術と表現
  537. 537 1981 金色の象 こんじきのぞう 宮内勝典 初出・単行本(河出書房新社、1981年)。初出誌は未確認。 世界を放浪してきた青年と、自分を持て余す家出娘の一瞬の出会いから、同棲と出産へ進む物語。河出書房新社の紹介では、小さな生命の誕生が若い二人に愛と性の輝きをもたらす作品として位置づけられている。移動する身体、出会い、家族の始まりを、祝祭性と痛みを含んだ青春譚として読むことができる。 恋愛移民と越境 第3回 野間新人賞
  538. 538 1980 1973年のピンボール せんきゅうひゃくななじゅうさんねんのぴんぼーる 村上春樹 単行本・講談社 『風の歌を聴け』に続く「鼠三部作」第二作で、翻訳事務所を営む「僕」の生活と、故郷に残る鼠の停滞が並行して語られる。「僕」はかつて通ったバーにあったピンボール台を探し、双子の女性との奇妙な同居や電話配電盤の葬送を経て、失われた時間の手触りに近づいていく。軽い会話と乾いたユーモアの背後に、青春の終わり… 記憶孤独と疎外青春
  539. 539 1979 風の歌を聴け かぜのうたをきけ 村上春樹 単行本・講談社 1970年の夏、「僕」と友人「鼠」の9日間を描いた村上春樹のデビュー作。短い章、乾いた会話、音楽や翻訳文学の気配によって、青春の終わりと喪失感が軽やかに語られる。後の「鼠三部作」へ続く、村上春樹の文体と世界観の出発点である。 青春記憶孤独と疎外 第22回 群像新人賞
  540. 540 1977 海の向こうで戦争が始まる うみのむこうでせんそうがはじまる 村上龍 単行本・講談社 村上龍が『限りなく透明に近いブルー』後に発表した初期長編。題名の通り、戦争が遠くで始まるという感覚を、若者の身体や都市的な不安と接続する。暴力、メディア、距離感のずれを通じて、初期村上龍の社会への鋭い視線を読む作品である。 戦争青春暴力
  541. 541 1958 完全な遊戯 かんぜんなゆうぎ 石原慎太郎 単行本・新潮社 若者たちの倦怠と残虐な「遊び」を描いた石原慎太郎の中篇。遊戯の名の下に暴力がエスカレートしていく構図は、戦後若者文化への不安と反発を強く帯びる。太陽族文学の享楽性の裏側にある空虚さを読む作品である。 青春暴力
  542. 542 1958 亀裂 きれつ 石原慎太郎 単行本・新潮社 石原慎太郎が1950年代に刊行した作品で、戦後社会の価値観のひび割れを思わせる題名を持つ。公開情報では細部の梗概が少ないため、初期石原の若者像や社会への挑発を含む作品として暫定整理する。個人と社会、欲望と規範の間に走る亀裂を読む軸を置く。 青春同調圧力アイデンティティ
  543. 543 1958 死者の奢り ししゃのおごり 大江健三郎 単行本・文藝春秋新社 大学の死体処理室でアルバイトをする若者たちを描く、初期大江の代表的な短篇。死者は畏怖の対象であると同時に、運搬され、数えられ、処理される物質として現れ、生と死の境界が事務的な労働の場に引き寄せられる。若い語り手の冷えた感覚と不安を通して、戦後の身体感覚、死への距離、社会の片隅に置かれた労働の異様さが… 死と喪失身体労働
  544. 544 1956 処刑の部屋 しょけいのへや 石原慎太郎 単行本・新潮社 大学生の性的奔放と暴力を描いた石原慎太郎の初期代表短篇。若者の身体感覚、退屈、残酷さを挑発的に描き、「太陽族」文学の衝撃を広げる作品となった。戦後の新しい若者像を、道徳的な安定ではなく暴力と欲望の側から提示する。 青春暴力
  545. 545 1954 驟雨 しゅうう 吉行淳之介 初出・「文學界」1954年2月号(第31回芥川賞受賞) 『驟雨』は、料亭の女との短い逢瀬を軸に、中年男の倦怠と孤独を描く短篇です。感情を大きく説明せず、会話や身振りの細部から男女の距離を読ませるところに特徴があります。吉行淳之介の乾いた都市的感覚が、第三の新人の作風を代表するかたちで現れています。 恋愛孤独と疎外 第31回 芥川賞
  546. 546 1954 プールサイド小景 ぷーるさいどしょうけい 庄野潤三 初出・「群像」1954年12月号(第32回芥川賞受賞) 『プールサイド小景』は、社員旅行の一日を舞台に、家庭を持つ男の欲望と罪悪感を細密に描く短篇です。劇的事件よりも視線、沈黙、気まずさの変化を追うことで、都市生活者の不安を浮かび上がらせます。庄野潤三の静かな日常描写のなかに、戦後の家庭と個人の距離感が滲む作品です。 夫婦家族恋愛 第32回 芥川賞
  547. 547 1954 アメリカン・スクール あめりかん・すくーる 小島信夫 初出・「文學界」1954年9月号(第32回芥川賞受賞、庄野潤三「プールサイド小景」と同時受賞) 『アメリカン・スクール』は、占領下日本の英語教師たちがアメリカ人学校を見学する一日を描く短篇です。英語を教えながら英語に怯える教師たちの滑稽さを通して、敗戦後の対米感情と自意識のゆがみが浮かびます。小島信夫らしいユーモアと違和感のある会話が、戦後日本の心理的占領状態を照らします。 戦争言葉と言語同調圧力 第32回 芥川賞
  548. 548 1954 潮騒 しおさい 三島由紀夫 初出・書き下ろし長篇。1954年6月10日、新潮社刊。 『潮騒』は、三重県の孤島を舞台に、若い漁夫と海女の恋を明るく端正に描く長篇です。古代ギリシャの牧歌的恋愛物語を思わせる構成を、日本の海辺の共同体に置き換えています。三島由紀夫作品のなかでは例外的に清明な青春小説として読まれ、自然と身体の健やかさが強く印象に残ります。 青春恋愛身体
  549. 549 1945 生きてゐる兵隊 いきてゐるへいたい 石川達三 単行本・河出書房 南京攻略戦に従軍した日本兵の実態を描いた戦争小説。戦場の兵士を英雄化せず、加害と疲弊のただ中に置くことで、戦争が人間の身体と倫理をどう壊すかを見つめる。発売直後に発禁処分を受けた問題作として知られ、石川達三の社会的リアリズムを代表する重要作である。 戦争暴力身体