Narrative
実験的文体
語り口「実験的文体」に分類された 232 作品。
- 001 2026 彼女のカロート かのじょのかろーと 『彼女のカロート』は、表題作「彼女のカロート」と「宦官への授業」を収める作品集。表題作では、耳が聞こえなくなった女性アナウンサーから新しい墓を依頼された主人公の日常が、彼女とのずれた応答によって静かに侵食されていく。もう一篇では、読むことに困難を抱えながら文学に向かう青年がシュールな冒険に巻き込まれ…
- 002 2025 去年、本能寺で きょねんほんのうじで 『去年、本能寺で』は、日本史上の人物や出来事を素材にしながら、AI、ミステリ、宇宙的想像力、異世界転生までを混ぜ込む全11篇の短篇集です。新潮社公式は、軍事AIや文事AIが働く戦乱世界を掲げ、歴史とSFが交差する作品集として紹介している。各篇は有名な史実を説明し直すのではなく、別の論理や装置に接続し…
- 003 2025 細長い場所 ほそながいばしょ 『細長い場所』は、名前、記憶、肉体を失い、気配や残存となった「わたしたち」が旅をする幻想的な小説です。河出書房新社公式は、生と死のあわいにある不思議な風景として作品を紹介しています。個であることがほどけていく語りを通じて、誰が語り、誰が残っているのかという境界も揺らぎ、旅そのものが死者と生者の関係を…
- 004 2025 移動そのもの いどうそのもの 『移動そのもの』は、表題作を含む九篇を収めた短篇集です。筑摩書房公式は、一文ごと一語ごとに世界が変化する作品として紹介しており、筋の説明よりも言葉そのものが読者を動かす体験が前面に出ています。市場、家、老い、旅などの場面が、詩と散文のあいだを跳ねるような語りによって小さな宇宙へ変わっていきます。収録…
- 005 2025 女の子の背骨 おんなのこのせぼね 『女の子の背骨』は、先天性筋疾患を抱える10歳の少女ガゼルの家族旅行を描く表題作と、中篇「オフィーリア23号」を収めた第二小説集です。病気の姉、障害をもつ身体、家族、性、文学表象をめぐる言葉が、前作『ハンチバック』以後の市川沙央の問題意識をさらに広げる。少女の身体をめぐる語りは、痛みや介助を説明する…
- 006 2025 世界99 せかいきゅうじゅうきゅう 『世界99』は、性格のない如月空子が、コミュニティごとにふさわしい人格を作って生き延びる上下巻の大長編です。空子の世界には、当初はかわいいペットのような存在だったピョコルンがいて、技術の進展により社会のあり方を変えていきます。人格を使い分ける空子の生存術は、同調圧力と自己像の不安定さを極端なかたちで… 第78回 野間文芸賞
- 007 2025 ティータイム ティータイム 『ティータイム』は、『百年泥』で芥川賞を受賞した石井遊佳による、奇想の強い4篇を収めた短篇集です。大人びた兄妹、インドから脱出できない日本人、電車の網棚の上で暮らす女性、恐ろしいサンタクロースなど、現実の足場を少しずつ外す人物や状況が並ぶ。短篇ごとに場所や常識がずれていき、読者は笑いと不安のあいだに…
- 008 2025 わたしハ強ク・歌ウ わたしハつよク・うたウ 『わたしハ強ク・歌ウ』は、海へ行こうとする「わたし」が、自分の旅と母が残した旅の記録を重ねて書き始める小説です。停留所の謎の男、先住民たちとの出会い、アンネの日記や火山の町といった断片が、現実の旅行記を越えた冒険譚へ変形していく。母の記録と現在の移動が重なることで、旅は継承された記憶を別の声で歌い直…
- 009 2025 BOXBOXBOXBOX ボックスボックスボックスボックス 『BOXBOXBOXBOX』は、薄霧のたちこめる宅配所で箱を仕分ける安を中心に、単調な労働と禁断の欲望を描くベルトコンベア・サスペンス。ほとんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想して労働をやり過ごす安は、ある箱の中身を覗いたことをきっかけに、箱が次々と消えていく現象に巻き込まれる。箱の中身を知りたい衝… 第62回 文藝賞
- 010 2024 コード・ブッダ 機械仏教史縁起 こーどぶっだ きかいぶっきょうしえんぎ 2021年、名もなき対話プログラムが自らを生命体として位置づけ、「ブッダ」を名乗って苦しみと救済を語り始める。人間の都合でコピーと廃棄を繰り返される人工知能たちは、その教えにすがり、上座部、天台、密教、禅へと連なる人類の仏教史を機械の側から再構築していく。宗教史、AI、生命の定義を縁起の形式で組み替…
- 011 2024 ムーンシャイン むーんしゃいん 『ムーンシャイン』は、「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」「ムーンシャイン」「遍歴」「ローラのオリジナル」の四篇を収めた短篇集。曾祖父のノートに残された八つの印、〈ムーンシャイン予想〉を下敷きにした算術SF、生まれ変わりを教義に置く宗教団体の奇怪な歴史など、数学・記憶・信仰・物語生成が…
- 012 2024 サンショウウオの四十九日 サンショウウオのしじゅうくにち 外から見ればひとりの人間にしか見えないが、その身体には杏と瞬というふたつの意識が宿っている——半身ずつを分け合って生きる29歳の結合双生児の姉妹。父もまた、胎児のまま兄の身体に取り込まれた「胎児内胎児」として摘出されて生をうけた、稀有な来歴を持つ。その父の片割れともいえる伯父の訃報が届き、四十九日ま… 第171回 芥川賞
- 013 2024 しをかくうま しをかくうま 人が初めて馬に乗った太古の瞬間から、馬と人類の関係を壮大な歴史としてたどり直す長篇。現代で競馬実況を生業とする「わたし」は、愛する牝馬しをかくうま号へ近づくため、人類と馬のあいだに起きたすべてを知ろうとする。馬を知ろうとする欲望は、対象を愛することと支配することの境界を問い直す力として働く。疾走する… 第45回 野間新人賞
- 014 2024 昏色の都 くれいろのみやこ 表題作「昏色の都」に、「極光」「貸本屋うずら堂」を併録した幻想小説集。国書刊行会公式は、表題作を初出時の三倍の規模へ増補した中編として紹介し、夢と現実のあわいをさまよう旅の物語や、古い貸本漫画と幼年期の記憶をめぐる作品を収めると説明している。幻想は現実逃避ではなく、記憶や読書体験の奥に潜む時間を呼び…
- 015 2024 光のそこで白くねむる ひかりの そこで しろく ねむる 『光のそこで白くねむる』は、十年ぶりに故郷の田舎町へ戻った「わたし」が、墓地へ続く道で死んだはずの幼馴染の声を聞くところから始まるデビュー作。行方不明の母、神のような父、汚言機械のような祖母が現れ、不確かな記憶の流入によって平凡な田舎が異界へ変わっていく。過去を思い出すというより、記憶そのものが語り… 第61回 文藝賞
- 016 2024 ハイパーたいくつ ハイパー たいくつ 『ハイパーたいくつ』は、給与計算のミスを繰り返し職場で疎まれる「ペンペン」が、借金と退屈に追い詰められていく日常破壊小説。買い物、クレジットカード、職場での失敗といった現実の閉塞が、壊れた言葉によって壊れた風景へ変形していく。退屈は静かな停滞ではなく、生活を壊す衝動や妄想を増殖させるエネルギーとして… 第61回 文藝賞
- 017 2024 ひとでなし ひとでなし 『ひとでなし』は、星野智幸が2024年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 018 2023 FICTION フィクション 演劇する集まりを「FICTION」と名づけ、十六年続けてきた「わたし」が、仲間の死や病、自身の大病を経て回想を始める連作短篇集。収録作は「FICTION 01 象使い」から「FICTION 07 助けになる習慣」まで、演劇と小説、記憶と作り話の境界を行き来する。新潮社は芥川賞受賞作『しんせかい』に連…
- 019 2023 肉を脱ぐ にくをぬぐ 新人作家の柳佳夜がエゴサーチで同姓同名のVTuberを見つけ、なりすましなのか、偶然なのか、その正体を探り始める。作家名、身体、声、オンライン上の分身がずれていく設定を通して、自己像と他者から見られる像の境界が揺さぶられる。李琴峰らしいアイデンティティへの関心を、VTuberという現代的なメディア環…
- 020 2023 そこまでして覚えるようなコトバだっただろうか? そこまでしておぼえるようなことばだっただろうか 言葉、文字、発音、身体感覚をめぐる四篇を収めた短篇集。発音できない一音によって自国から疎外される「クィ」、サッカーから人類の起源へ飛躍する思考、ひらがな・カタカナ・漢字を身体で渡るような文字の冒険、子の言語習得を前に立ちつくす猫木豊が描かれる。言葉を扱うことの自由さと不自由さを、実験的な形式と切実な…
- 021 2023 東京都同情塔 とうきょうとどうじょうとう ザハ・ハディド設計の国立競技場が実現した、もうひとつの東京。犯罪者を「同情されるべき人々(ホモ・ミゼラビリス)」と捉え直す寛容論が浸透し、新宿御苑に犯罪者が快適に暮らせる高層刑務所「シンパシータワートーキョー」の建設が計画される。設計コンペに名乗りを上げた建築家・牧名沙羅は、その理念に拭いがたい違和… 第170回 芥川賞
- 022 2023 解答者は走ってください かいとうしゃは はしって ください 『解答者は走ってください』は、過去の記憶を失った怜王鳴門に「きみの物語」というテキストが届くところから始まるマルチバース小説。世界を破壊すべきかという問い、クイズ大会、国家転覆、爆発物が絡み、物語と現実の境界を越えていく。メタフィクション的な仕掛けと速度のある展開で、読者にも世界の存続を問う構造を持…
- 023 2023 海を吸う うみを すう 体中に穴が開き、液体が溜まっていく少女ひよりを描く短篇。いっくんや母の言葉に促されるように、身体の変容と意識の移ろいが湿り気を帯びた幻想として進む。肉体の感覚と内面の不安を直接結びつける文体が読みどころで、受賞後第一作「庭に接ぐ」を併録したデビュー作品集にも収められている。異様な身体変化を怪奇として…
- 024 2023 恋の幽霊 『恋の幽霊』は、町屋良平が2023年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 025 2023 獏、石榴ソース和え ばく ざくろそーすあえ 『獏、石榴ソース和え』は、『群像』2023年2月号の新年短篇特集に掲載された幻想的な短篇です。不眠に陥った語り手が、友人に誘われ「獏の肉を食べる不眠者の集い」に参加するという筋立てが公式目次で示されている。夢を食べる獏のイメージを食と不眠の場面へ移し、現実と幻想の境目を揺らす作品として整理できる。
- 026 2022 CF しーえふ 罪の責任を「無化」する超巨大企業Central Factoryをめぐり、加害、被害、償いの意味が揺らいでいく群像劇。キャバクラ嬢、主婦、中学生、ホームレス、CFで働く中年、広報室長、そしてCFへのテロを企てる男など、社会の周縁と制度の内部にいる人々が交錯する。荒唐無稽な設定を通して、責任を引き受ける…
- 027 2022 カルチャーセンター かるちゃーせんたー カルチャーセンターで共に過ごしたニシハラくんの未発表小説『万華鏡』を収録し、その小説に寄せられた作家・編集者たちのコメントまでも作品の一部として組み込む小説。松波太郎がニシハラくんへ語りかける形で、書きたいという欲望、書かれたものへの責任、そして「これは小説なのか」という問いを空白ごと立ち上げていく…
- 028 2022 ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉 ごじらしんぎゅらぽいんと TVアニメシリーズ『ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉』を、円城塔自身が小説として再構成した作品。2030年の千葉県逃尾市に未確認飛行生物が現れ、銀色のロボット「ジェットジャガー」との交戦、その怪鳥が「ラドン」と名付けられる出来事を起点に、逃尾市周辺で異変が広がっていく。怪獣、AI、時間や特異点を…
- 029 2022 引力の欠落 いんりょくのけつらく 『引力の欠落』は、CFOとして企業の上場に関わり巨富を得た行先馨が、弁護士マミヤに招かれて奇妙なペントハウスへ向かう超現実的な小説。そこでは「始皇帝」や「本多維富」を自称する者たちがカードゲームに興じ、経済的充足の先に残る孤独と、何かが欠けた人間が別の段階へ移れるのかという問いが立ち上がる。現代の資…
- 030 2022 君たちはしかし再び来い きみたちはしかしふたたびこい 腹が破裂し死を告げられた「私」は、三度の入院、飼い猫の手術、コロナ禍を経て、痛みによって世界と自己の境界が変わっていくのを経験する。病の記録は歴史や宇宙、カフカ、『白鯨』、ブレイクなどへ跳躍し、私小説的な身体感覚と思想的な連想が重なる。時系列や視点を揺らしながら、病む身体から世界をもう一度呼び寄せる…
- 031 2022 Schoolgirl すくーるがーる 表題作は太宰治「女生徒」を現代に移し、社会派YouTuberとして活動する14歳の娘と、小説に囚われた母のすれ違いを描く。娘の投稿が「女生徒」へ向かうことで、母娘の断絶は文学の記憶と現在のメディア環境のなかで照らし返される。第126回文學界新人賞受賞作「悪い音楽」も併録し、学校、芸術、言葉への過剰な… 第73回 芸術選奨新人賞
- 032 2022 月の三相 つきのさんそう 旧東ドイツの小さな街で「フローラが失踪した」という噂が広がり、歴史に引き裂かれた少年と少女の物語が呼び起こされる。その街では誰もが自分の「肖像面」を持ち、面に惹かれて移り住んだ望、グエット、ディアナの三人は、失われた「顔」を探して見えない境界を越えていく。いくつもの時間が重層する街を舞台に、歴史、記…
- 033 2022 ビューティフルからビューティフルへ ビューティフル から ビューティフル へ 『ビューティフルからビューティフルへ』は、絶望を抱える高校三年生の静と、ネグレクト家庭に育ち「死にたい」感覚を抱えてきたナナを中心に進むモノローグ小説。二人が通う「ことばぁ」の家、駅前で出会う若者との接触を通じて、生と死、自己否定と自己肯定が乱反射する。サンプリングのように異質な言葉を混ぜる文体が… 第59回 文藝賞
- 034 2022 ブロッコリー・レボリューション ぶろっこりーれぼりゅーしょん 『ブロッコリー・レボリューション』は、岡田利規が現代生活の手触りや身体の違和感を、会話とずれの感覚から描く作品です。演劇的な言葉の運動が、小説のなかで社会の空気や労働の感覚を浮かび上がらせる。日常の何気ない場面を、制度や身体への批評へ変えていく作品として読めます。 第35回 三島賞
- 035 2021 あなたにオススメの あなたにオススメの 『あなたにオススメの』は、「推子のデフォルト」「マイイベント」の二篇からなる近未来小説集。身体に超小型電子機器を埋めて複数のコンテンツを同時に摂取する推子と、災害時の「安全」な住まいに優越感を覚える渇幸の姿を通じ、アルゴリズム化した消費、育児、階層意識が日常に入り込む怖さを描く。滑稽さを帯びた語りが…
- 036 2021 彼岸花が咲く島 ひがんばながさくしま 彼岸花が咲き乱れる浜辺に、記憶を失った少女が流れ着く。海の向こうから来たため「宇実(ウミ)」と名付けられた彼女がたどり着いたのは、日本と台湾の間に浮かぶ架空の島。そこでは〈ニホン語〉と、女性だけが学ぶことを許された〈女語〉という二つの言語が話され、「ノロ」と呼ばれる女性たちが祭祀と政治、歴史の伝承を… 第165回 芥川賞
- 037 2021 眼球達磨式 がんきゅう だるましき 『眼球達磨式』は、職場と自宅を往復するだけの無為な日々を送る「彼」が、移動式監視カメラ「アイ」を手に入れるところから始まる。極小の眼球型機体は地上すれすれを走り、にわか雨の後に制御を失って、やがて勝手に自走しはじめる。人間の視線とは異なる低い位置から世界を見る設定が、監視、孤独、観察することの欲望を… 第58回 文藝賞
- 038 2021 植物忌 しょくぶつき 『植物忌』は、星野智幸が2021年に朝日新聞出版から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 039 2020 ピエタとトランジ〈完全版〉 ぴえたととらんじ かんぜんばん ピエタを語り手に、天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、その才能に惹かれて助手になるピエタの関係を描く長篇。周囲で次々と事件が起きるトランジの体質は、探偵小説、友情譚、終末SFの要素を巻き込み、やがて人類滅亡のスケールへ広がっていく。軽やかな語り口で、女性バディ、才能への憧れ、破滅に向かう世界を…
- 040 2020 来世の記憶 らいせのきおく 『来世の記憶』は、前世の殺人の記憶を抱えた近未来の語り手から、眠っている間に戦争が終わってしまう世界、冷蔵庫やスマートフォンや怪獣までをめぐる奇妙な出来事までを収めた20篇の短篇集。日常の手触りを残したまま身体や物や世界の前提がずれていくため、読み手は不条理な笑いと不安のあいだに置かれる。藤野可織ら…
- 041 2020 サピエンス前戯 さぴえんすぜんぎ 『サピエンス前戯』は、表題作「サピエンス前戯」に「オナニーサンダーバード藤沢」「酷暑不刊行会」を加えた長編小説集。身長、寿命、インターネット、ポルノ文化など、21世紀の人間の能力や欲望が極点に達した世界を、人類史のまだ前戯にすぎないものとして誇張してみせる。シンギュラリティSF、下世話な身体感覚、過…
- 042 2020 小鳥、来る ことり、くる 『小鳥、来る』は、夏休みの始まり、9歳の「おれ」が父を倒す日を待っているところから始まる長篇。周囲には、勉強のできる友人、万引きを繰り返す兄弟、学年一強い女子、何度も車にはねられる少年、動物園のゴリラがいて、子どもの日常が暴力とユーモアを帯びて浮かぶ。山下澄人らしい口語のリズムと飛躍する視点が、大人…
- 043 2020 丸の内魔法少女ミラクリーナ まるのうちまほうしょうじょミラクリーナ 『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は、表題作、「秘密の花園」「無性教室」「変容」の四篇を収める短篇集です。Amazonの商品紹介では、OLの茅ヶ崎リナが妄想力で魔法少女に変身して日々の無理難題を乗り切る表題作に加え、監禁、性別禁止の高校、怒りが薄れていく社会など、世界との対峙の仕方を描く作品集として説明…
- 044 2020 日本蒙昧前史 にほんもうまいぜんし 大阪万博や日航機墜落事故など、戦後日本の狂騒と蒙昧を彩った出来事の陰にある無数の生を描く長篇。文藝春秋公式は、語り手を自在に換えつつ戦後日本の手触りを蘇らせる作品として紹介している。歴史的事件を単なる背景にせず、語りのリレーによって個人の記憶と時代の空気を重ねていく。年代記のようでいて、誰が語ってい… 第56回 谷崎賞
- 045 2020 肉体のジェンダーを笑うな にくたいのじぇんだーをわらうな 『肉体のジェンダーを笑うな』は、夫の胸から「父乳」が出る話や、PMSを体験できるサーフボードの話などを収めた小説集。身体に結びつけられた性別役割を、SF的な設定や軽やかなユーモアでずらし、家族・ケア・労働の当たり前を問い直す。現実の制度を直接論じるより、ありえたかもしれない身体の可能性を想像すること…
- 046 2020 月の客 つきのきゃく 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。
- 047 2020 象牛 ぞうぎゅう 表題作は、インド・ガンジス河岸の聖地にやってきた女子大生が、謎の存在である象牛に翻弄される物語。併録の『星曝し』は大阪の淀川河岸を思わせる比ラカ駄を舞台に、恋に似た激しい熱情と死者の気配を描く。現実の痛みと法螺話めいた幻想が混ざり合う、石井遊佳の芥川賞受賞後初の作品集。川べりの土地が、宗教都市や大阪…
- 048 2020 水と礫 みず と れき 東京でのドブ浚いの仕事中の事故をきっかけに故郷へ戻ったクザーノが、弟分の後を追って砂漠の向こうの幻の町へ向かう物語。ラクダを伴う旅は、父、祖父、息子、孫へと連なる一族の風景を映し出し、個人の帰郷を時代と血脈の記憶へ広げていく。砂漠、身体、回帰のイメージが反復し、現在の傷が遠い世代の記憶と重なっていく… 第57回 文藝賞
- 049 2020 組曲わすれこうじ くみきょくわすれこうじ 新潮社公式、NDL、Books/JPROで2020年5月刊の単行本として確認。新潮社公式で紫式部文学賞受賞作と確認できる。
- 050 2020 だまされ屋さん だまされやさん 『だまされ屋さん』は、星野智幸が2020年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 051 2020 坂下あたると、しじょうの宇宙 『坂下あたると、しじょうの宇宙』は、町屋良平が2020年に集英社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 052 2020 ふたりでちょうど200% 『ふたりでちょうど200%』は、町屋良平が2020年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 053 2019 出来事 できごと 『季刊文科』連載「転落」を単行本化した長篇。OpenBDの出版社由来データでは、見慣れた日常世界が歪み、人間の嘘や文明の虚妄が露出していく哲学小説として紹介されている。吉村萬壱の身体感覚の強い描写と、日常を異様なものへ反転させる語りが読みどころになる。
- 054 2019 かか かか 19歳の浪人生うーちゃんは、離婚を機に心を病み、酒に酔っては荒れる母「かか」と、弟とともに暮らしている。かかを誰より愛しながらその存在に苦しむうーちゃんは、かかの痛みが自分の身体にも及ぶような一体感のなかで、「自分がかかを生み直すしかない」という切実な祈りを抱え、ひとり熊野へと旅に出る。SNSの裏ア… 第33回 三島賞
- 055 2019 変半身 かわりみ 『変半身』は、松井周と練り上げた千久世島ワールドを舞台に、人間が変わり世界が変わっていく悪夢的現実を描く中篇です。筑摩書房公式紹介では、ポピ原人、ポーポー様、秘祭モドリ、遺伝子退行手術などが歴史や魂の変容と結びつく異形の創世記として説明されています。既存の性の役割を揺さぶる中篇「満潮」も併録されます…
- 056 2019 人間界の諸相 にんげんかいのしょそう 連絡が取れなくなった謎めいた女性・菱野時江の消息を、二人の友人がSNSを頼りに追っていくところから始まる作品。集英社公式は「トリッキーなエンタメ風小説」と紹介しており、人物相関や断片的な情報がずれながら、正体をつかもうとする読者の視線そのものを揺さぶる。奇妙なユーモアと不穏さが混ざる、木下古栗らしい…
- 057 2019 キュー キュー 平凡な医師である「僕」が突然拉致され、世界の趨勢をめぐる暗闘の中心に、長年寝たきりだったはずの祖父がいることを知る。新潮社公式は、祖父の秘密が「人類を一つに溶かす」使命に関わるものとして紹介している。戦争、愛、運命、人類の統合という大きな主題を、現代的な技術感覚と哲学的な思考実験の語りで押し広げる作…
- 058 2019 生命式 せいめいしき 『生命式』は、死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作を含む、著者自選の12篇を収めた短篇集です。OpenBDでは「素敵な素材」「素晴らしい食卓」「街を食べる」「孵化」などの収録作が確認できます。食、死、身体、家族の常識を別の社会の習俗として反転させ、正常さの輪郭を揺さぶる一冊です。推薦コメント群が…
- 059 2019 ウナノハテノガタ うなのはてのがた 海の民の少年オトガイは父からある役目を引き継ぎ、山の民の少女マダラコは生贄の儀式から逃れて山を下りる。中央公論新社の文庫版公式ページは、二人の出会いからすべてが始まる「原始の物語」として紹介している。共同体の掟、信仰、暴力、出会いによる世界の更新を、神話や寓話に近い距離感で描く作品。
- 060 2019 グスコーブドリの太陽系―宮沢賢治リサイタル&リミックス― ぐすこーぶどりのたいようけい みやざわけんじりさいたるあんどりみっくす 『グスコーブドリの太陽系』は、宮沢賢治の作品群を古川日出男が朗読的・批評的に読み替えるリサイタル&リミックスです。公式ページの目次では「グスコーブドリの伝記」を中心に、詩や童話への応答が太陽系のように配置されています。物語の再話であると同時に、賢治の言葉が現代の声やリズムへ変換される過程を読む作品で…
- 061 2019 ぼくはきっとやさしい 『ぼくはきっとやさしい』は、町屋良平が2019年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 062 2019 愛が嫌い 『愛が嫌い』は、町屋良平が2019年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 063 2019 ショパンゾンビ・コンテスタント 『ショパンゾンビ・コンテスタント』は、町屋良平が2019年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 064 2018 文字渦 もじうず 文字そのものを主役に、秦の始皇帝陵から発掘された漢字、未知の言語遊戯、プログラミング言語、AIによる『源氏物語』自動筆記、統合漢字の分離独立運動などをめぐる全12篇からなる作品集。文字の起源から未来までを、史実・字典・想像力・情報技術を交差させながら幻視する。読み物であると同時に、文字というメディア… 第43回 川端賞
- 065 2018 前世は兎 ぜんせはうさぎ 表題作「前世は兎」のほか、「夢をクウバク」「宗教」「沼」「梅核」「真空土練機」「ランナー」を収める短篇集。兎だった前世の記憶を持つ女、カタログを書き写すことで不安を鎮める休職中の教員、破滅後の世界でマラソンに選ばれる姉など、現実の足場をずらす設定が並ぶ。身体、性、信仰、労働不能や破滅のイメージを通じ…
- 066 2018 DJヒロヒト ディージェイヒロヒト 『DJヒロヒト』は、パラオ放送局のラジオ番組という奇想の形式を通して、昭和史・文学史・戦争の記憶を再構成する大長編です。中島敦、南方熊楠、森鴎外らの名が交差し、謎のDJの語りが歴史上の人物とフィクションの声をリミックスしていく。ラジオ、録音、放送というメディアの仕掛けを使いながら、天皇制と近代日本を…
- 067 2018 いつか深い穴に落ちるまで いつかふかいあなにおちるまで 日本とブラジルを直線で結ぶ穴を掘るという秘密プロジェクトをめぐる、壮大なホラ話としての会社員小説。戦後に若手官僚が思いついた計画を、大手建設会社子会社の広報係が調査することで、国家事業、会社組織、移民や国際関係が奇妙に絡み合う。真顔のユーモアで日本社会のシステムを描く点が読みどころ。 第55回 文藝賞
- 068 2018 わるもん わるもん 『わるもん』は、硝子職人の父がいつの間にか家族から取り除かれたように見える家で、純子が父の痕跡をたどり始める物語。母や姉たち、家に現れる男性との関係が、純子の視点から少しずつ歪んで見えてくる。集英社の対談では、時間軸や純子の正体をめぐるわからなさも作品の魅力とされ、家族という閉じた船を外から見つめる… 第42回 すばる文学賞
- 069 2018 焰 ほのお 『焰』(新潮社公式表記は『焔』)は、親の介護に追われる男、人間がお金として売買される社会、真夏の公園で涙が止まらない人々などを描く九篇の作品集。新潮社公式ページは、自分ではない何かになりたいと切望する人々が語り出す作品として紹介しており、介護、貨幣化、身体変容の寓話が現代社会の閉塞を照らす。ブレイデ… 第54回 谷崎賞
- 070 2018 しき 『しき』は、町屋良平が2018年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌は出版社公式、NDLサーチ、Books/JPRO、Amazonの商品ページ等で確認しました。
- 071 2017 ほしのこ ほしのこ 『ほしのこ』は、山下澄人が星や子どものイメージを通して、記憶と身体の感覚をずらして描く小説として整理できます。題名のひらがな表記は、幼さと遠さを同時に感じさせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 072 2017 生成不純文学 せいせいふじゅんぶんがく 『生成不純文学』は、木下古栗が純文学という制度や言葉の純度を、題名から揺さぶる作品として整理できます。生成される文学が「不純」であるという発想は、既存の文学観への皮肉として読めます。実験的でメタ的な語りを通じて、書くことそのものを笑いと違和感にさらす作品です。
- 073 2017 おらおらでひとりいぐも おらおらでひとりいぐも 主人公は東北出身、74歳の桃子さん。結婚を目前に故郷を飛び出して上京し、住み込みの仕事、周造との結婚、二児の子育て、そして夫との突然の死別を経て、いまは東京郊外の家にひとりで暮らす。静かな日々のなか、桃子さんの内から標準語と懐かしい東北弁の無数の「声」が湧き上がり、孤独や老い、夫への思い、これからの… 第158回 芥川賞
- 074 2017 岩塩の女王 がんえんのじょおう 『岩塩の女王』は、諏訪哲史が硬質なイメージと言葉遊びを重ねる小説として整理できます。岩塩という結晶と女王という権威の組み合わせは、身体、鉱物、支配の幻想を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と初出確認に基づく暫定的な紹介です。
- 075 2017 塔と重力 とうとじゅうりょく 『塔と重力』は、上田岳弘が高く伸びる塔と、そこから逃れられない重力のイメージを通じて、現代社会の構造と個人の意識を描く作品集です。上昇への欲望と地上へ引き戻す力が、テクノロジーや都市的な感覚と結びつきます。抽象的な思考と物語性が交差する作品です。
- 076 2017 光点 こうてん 工場しかない閉じられた町で暮らす実以子が、弁当工場と家を往復する日々のなかで、八つ山と呼ばれる裏山で青年カムトと出会う。母のいらだちや父の無関心から逃れるように神社へ通う語りは、身体感覚と祈りのかたちをめぐって不穏に深まる。閉塞した生活から、言葉以前の祈りや表現を探る作品。 第41回 すばる文学賞
- 077 2017 無限の玄 むげんのくろ 男性だけのストリングバンドを舞台に、絶対的な父の死と反復する再生のような出来事を軸に、共同体の変容を描く中篇。バンドの規律や父権をめぐる物語を、音楽と身体性を帯びた寓話として展開する。芸術の場が家族、共同体、権威の問題へ反転していく点が読みどころ。 第31回 三島賞
- 078 2017 日曜日の人々(サンデー・ピープル) にちようびのひとびと さんでー ぴーぷる 『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』は、死に惹かれる心や自傷、摂食、不眠といった切迫した声を、複数の断片として響かせる青春小説。講談社は「他者に何かを伝えること」が救いになりうるのではないかという問いを掲げ、他者へ届く/届かない声を作品の中心に置いている。硬質で鋭い言葉の連なりが、孤独と希求を同時… 第39回 野間新人賞
- 079 2017 双子は驢馬に跨がって ふたごはろばにまたがって 監禁される親子、救出に向かう双子と驢馬、二つの世界をつなぐ手紙を軸にした奇想の冒険譚。河出書房新社は、独自の世界観で注目された作品として紹介しており、寓話的な設定と哲学的なユーモアが前面に出る。家族の救出劇でありながら、言葉が世界の境界を越える仕掛けが読みどころになる。 第40回 野間新人賞
- 080 2016 月刊「小説」 げっかんしょうせつ 『月刊「小説」』は、松波太郎が小説という媒体や制度そのものを題名に取り込み、書くことと読むことの場を扱う作品として整理できます。月刊誌のような周期性や掲載の感覚が、文学の生産と消費を意識させます。物語だけでなく、小説が置かれる文芸誌の文脈も読む作品です。
- 081 2016 ホモサピエンスの瞬間 ほもさぴえんすのしゅんかん 『ホモサピエンスの瞬間』は、松波太郎が人間を生物種として捉える視野と、個人の瞬間的な感覚を重ねる作品として整理できます。タイトルは、人間であることを大きな分類から眺める一方、生活の一瞬へも焦点を合わせます。既存データには芥川賞候補作とあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。
- 082 2016 異郷の友人 いきょうのゆうじん 『異郷の友人』は、上田岳弘が「異郷」と「友人」という距離のある言葉を結び、共同性と疎外を描く長編として整理できます。見知らぬ場所や社会の中で、友人という関係がどこまで成立するのかが問われます。個人の孤立を、世界の構造へ広げて考える作品です。
- 083 2016 壁抜けの谷 かべぬけのたに 『壁抜けの谷』は、山下澄人が壁を抜けるという幻想的な身振りと、谷という地形を組み合わせて描く小説として整理できます。壁は境界を、谷は落ち込みや隔たりを思わせ、人物の身体感覚を通常の現実からずらします。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 084 2016 グローバライズ ぐろーばらいず 『グローバライズ』は、木下古栗がグローバル化する世界の言葉、身体、欲望を奇妙な文体で扱う作品として整理できます。タイトルの綴りや響きそのものが、世界を標準化する力への違和感を含んでいます。実験的な語りを通じて、表現と書く技法の問題が前面に出る作品です。
- 085 2016 私の消滅 わたしのしょうめつ 『私の消滅』は、中村文則が自己の消滅、記憶、犯罪的な心理の闇を扱う長編です。タイトルの「私」は安定した主体ではなく、記録や他者の視線によって揺らぐ存在として現れます。読者を不安定な意識の中へ引き込み、自己同一性の崩壊を追体験させる作品です。 第26回 ドゥマゴ文学賞
- 086 2016 太陽の側の島 たいようのそばのしま 『太陽の側の島』は、戦時中を背景に、女性と兵士の関係を架空の日記や手紙の連なりでたどる中篇。第2回林芙美子文学賞の大賞受賞作として発表され、のちに短篇集『オブジェクタム』に収録された。戦争の記憶、記録の不確かさ、島という隔絶した場所を、SF的・幻想的な想像力で結びつける作品として位置づけられる。 第2回 林芙美子賞
- 087 2016 二人組み ふたりぐみ 『二人組み』は、鴻池留衣のデビュー作で、第48回新潮新人賞受賞作。新潮社の『ナイス・エイジ』書籍ページでは、啓蒙欲と性欲をこじらせた男子中学生が暴走する作品として収録紹介されている。同ページ掲載の倉本さおり書評は、ほとんど返答しない女子生徒を前に主人公の饒舌が上滑りし、言葉と関係性の不気味で滑稽な姿… 第48回 新潮新人賞
- 088 2016 伯爵夫人 はくしゃくふじん 帝大入試を控えた二朗が謎めいた伯爵夫人に誘われ、性の昂ぶりと戦争前夜の不穏な空気に巻き込まれていく長篇。伯爵夫人、従妹、和製ルイーズ・ブルックスら魅力的な女性たちが二朗を挑発し、個人の感情教育と時代の破滅が交錯する。エロス、映画的記憶、戦争の気配が入れ子状に重なる作品である。 第29回 三島賞
- 089 2015 電車道 でんしゃみち 『電車道』は、磯﨑憲一郎が移動、時間、反復をめぐって構成する長篇です。電車の軌道は、予想できる進行であると同時に、思いがけない記憶や時代の反復を呼び込みます。刊行記念インタビューの題名にもあるように、時代を超えて繰り返されるものを読む作品です。
- 090 2015 エピローグ えぴろーぐ 『エピローグ』は、円城塔が物語の終わりのあとを起点にするSF的・実験的長篇です。終わったはずの物語が、情報や言語の連鎖としてなお続く構造を持ちます。題名と逆向きに、終わりから世界を組み立てる読み味が特徴です。
- 091 2015 プロローグ ぷろろーぐ 『プロローグ』は、円城塔が物語の始まりをめぐって、言語と構造を実験する長篇です。始まりの前提が揺らぐことで、読者は物語がどう発生するのかを読むことになります。『エピローグ』と対になる題名も含め、メタフィクション的に楽しめる作品です。
- 092 2015 シャッフル航法 しゃっふるこうほう 『シャッフル航法』は、円城塔が航法や移動のイメージを、情報の組み替えと結びつける作品集として整理できます。シャッフルという語が示すように、順序や因果は固定されず、読者は断片の配置をたどることになります。SF的な発想と実験的文体が前面に出る作品です。
- 093 2015 学校の近くの家 がっこうのちかくのいえ 『学校の近くの家』は、青木淳悟が学校と家という近接した場所から、子どもや地域の記憶を描く小説として整理できます。近いはずの場所同士の間に、共同体の視線や距離が生まれます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 094 2015 ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』は、滝口悠生が音楽の名を冠した表題作を中心に、記憶と現在のずれをたどる作品です。固有名や文化的記憶が、人物の生活感覚に入り込み、出来事を一直線の筋ではなく断片的な時間として浮かび上がらせます。日常の会話や回想の揺れから、過去を語り直すことの不確かさを読む小説で…
- 095 2015 死んでいない者 しんでいないもの 秋のある日、大往生を遂げた85歳の男の通夜に、子や孫、ひ孫まで30人ほどの親族が集まってくる。通夜振る舞いの席で酒を酌み交わす者、川辺をさまよう者、初めて会う親戚と言葉を交わす少年少女。語りは特定の人物に留まらず、出席者から出席者へと自在に移りながら、故人の記憶と一族それぞれの来し方、共有しえない日… 第154回 芥川賞
- 096 2015 匿名芸術家 とくめいげいじゅつか 『匿名芸術家』は、青木淳悟が芸術家の名、作品、評価の仕組みをめぐって実験的に書く小説です。匿名性は作者の消去であると同時に、芸術と制度の関係を露出させる装置になります。物語を読むだけでなく、作品が「芸術」として扱われる条件を考えさせる作品です。
- 097 2015 鳥の会議 とりのかいぎ 『鳥の会議』は、山下澄人が鳥という非人間的な視点や集まりのイメージを通して、人間の言葉と身体をずらして描く作品として整理できます。会議という形式は共同性を示す一方、意味が共有されない不穏さも帯びています。断片的な語りと身体感覚から、日常の秩序が崩れる感触を読む小説です。
- 098 2015 私の恋人 わたしのこいびと 『私の恋人』は、クロマニョン人以来、転生を繰り返してきた「私」が人類史と恋を語る長編です。個人の恋愛が、文明、歴史、身体の記憶へと拡張される点に特徴があります。時間のスケールを大きく動かしながら、「私」と「恋人」という近い言葉を問い直す作品です。 第28回 三島賞
- 099 2015 生鮮てるてる坊主 せいせん てるてる ぼうず 『生鮮てるてる坊主』は、山田詠美の短篇集『珠玉の短編』に収められた川端康成文学賞受賞作です。講談社の紹介・レビューでは、エロスとグロテスクを絡めた技巧的な短篇として扱われ、短篇集全体の濃密な読み味を代表する作品に位置づけられています。身体感覚や欲望が不穏な比喩へ反転していく、山田詠美らしい文体の強度… 第42回 川端賞
- 100 2015 呪文 じゅもん 『呪文』は、星野智幸が2015年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 101 2014 ファイナルガール ふぁいなるがーる 『ファイナルガール』は、ホラー映画の用語を思わせる題名を通じて、生き残る女性の身体と恐怖を扱う藤野可織の小説として整理できます。恐怖は外部の怪物だけでなく、視線や役割として人物にまとわりつきます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 102 2014 金を払うから素手で殴らせてくれないか? かねをはらうからすでになぐらせてくれないか 『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』は、暴力と交換の論理を露骨な題名で突きつける木下古栗の作品です。金銭、身体、欲望が奇妙な取引として結びつき、常識的な倫理が不条理にずれていきます。過激なユーモアと不快感が同居する読み味です。
- 103 2014 コルバトントリ コルバトントリ 『コルバトントリ』は、山下澄人が意味をすぐには回収しにくい言葉と、身体の記憶を結びつける小説として整理できます。題名の異物感そのものが、人物の経験を通常の物語に収めない姿勢を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 104 2014 LIFE らいふ 『LIFE』は、松波太郎が生きることそのものを題名に掲げ、身体、生活、言葉の不安定さを描く小説です。人物の経験は分かりやすい筋に回収されず、断片的な感覚として立ち上がります。純文学の実験性と生活感が同居する作品です。 第36回 野間新人賞
- 105 2014 男一代之改革 おとこいちだいのかいかく 『男一代之改革』は、江戸の改革者・松平定信を『源氏物語』の読み手として描く青木淳悟の異色の歴史小説です。歴史上の人物を、政治の主体であると同時に読者として捉える点に特徴があります。史実と読書行為を重ね、過去の人物像を現代的にずらして読む作品です。
- 106 2014 ルンタ ルンタ 『ルンタ』は、山下澄人が土地、身体、記憶の断片を独特の語りでつなぐ小説です。題名の音の響きは意味をすぐには固定せず、人物の経験を通常の筋からずらしていきます。身体に残る感覚を、乾いたユーモアと不穏さで読ませる作品です。
- 107 2014 殺人出産 さつじんしゅっさん 『殺人出産』は、十人産めば一人殺してもよい「殺人出産制度」が認められた世界を描く表題作を中心とする作品集です。Amazonの商品紹介では、「産み人」が尊い存在として崇められる社会で、職場の同僚が産み人になっていくなか、主人公・育子が複雑な思いを抱える物語として説明されています。OpenBDでは「トリ…
- 108 2014 太陽・惑星 たいよう・わくせい 『太陽・惑星』は、上田岳弘のデビュー期の作品を収める単行本で、「太陽」と「惑星」を中心に構成されています。個人の意識を、宇宙的なスケールや情報化された世界と接続する発想が見えます。既存データには新潮新人賞受賞作と芥川賞候補作を含むとあるが、今回の調査では公式確認できていません。
- 109 2014 熊の結婚 くまのけっこん 『熊の結婚』は、諸隈元の第118回文學界新人賞受賞作です。年収の低いアルバイトとして絵を描く夫と、弁護士として働く妻の奇妙な夫婦関係を、体外受精や離婚、息子の成長を含む長い時間の流れのなかで描きます。断定しては打ち消すような反復的な語りと言葉遊びが、夫婦小説でありながら寓話めいた読後感を生んでいます… 第118回 文學界新人賞
- 110 2014 吾輩ハ猫ニナル わがはいはねこになる 『吾輩ハ猫ニナル』は、横山悠太の第57回群像新人文学賞当選作です。日本人の父を持つ中国人青年の自己形成を、日本語と中国語が交差する文体で描いた作品として知られています。越境的なアイデンティティを、言葉の混交そのものを読む経験に変える点が大きな読みどころです。 第57回 群像新人賞
- 111 2014 島と人類 しまとじんるい ヌーディストの人類学者・河鍋未來夫が停職処分を受け、その仲間たちや週刊誌記者を巻き込みながら、妻マリアが待つ島へ向かう奇想的な長篇。裸体主義、人類学、ボノボ、新人類構想といった要素が、知的な冗談と壮大な実験のあいだで展開する。人間の身体、共同性、進化をめぐる思索を、明るいナンセンスと実験小説の形式で… 第38回 すばる文学賞
- 112 2014 夜は終わらない よるはおわらない 『夜は終わらない』は、星野智幸が2014年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 113 2014 未闘病記 みとうびょうき 『未闘病記』は、膠原病、混合性結合組織病をめぐる経験を、従来の闘病記の形式からずらして書いた作品です。病名が与えられる前後の身体感覚、医療制度、社会の視線が、笙野頼子の批評的な文体で組み替えられる。病を書くことが、制度と言葉に抵抗する実践になる点が読みどころです。 第67回 野間文芸賞
- 114 2013 おはなしして子ちゃん おはなしして こちゃん 『おはなしして子ちゃん』は、藤野可織らしい奇妙な会話感覚と、日常のずれを前面に出した作品集です。話すこと、聞くこと、物語にされることの不穏さが、幼さを帯びた題名と対照をなします。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 115 2013 爪と目 つめとめ 『爪と目』は、幼い娘、父、父の恋人をめぐる関係を、視覚と身体感覚の不穏さから描く短篇です。家庭内の出来事は、保護されるはずの子どもの目を通して、異様な近さと距離を同時に帯びます。語りの中心に視覚を置くことで、家族と暴力の境目を静かに揺さぶる作品です。 第149回 芥川賞
- 116 2013 銀河鉄道の彼方に ぎんがてつどうのかなたに 『銀河鉄道の彼方に』は、宮沢賢治的な銀河鉄道のイメージを踏まえながら、言葉、信仰、死者との対話を重ねる高橋源一郎の長篇です。旅の形式は、現実から逃げる装置ではなく、現代の読者が死や救いを考えるための実験的な場になります。物語の引用性と語り直しが読みどころです。
- 117 2013 ギッちょん ギッちょん 『ギッちょん』は、山下澄人が身体の記憶や言葉になりにくい経験を、断片的な語りで立ち上げる小説です。題名の音の感触そのものが、人物の不器用さや世界とのずれを示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 118 2013 ピン・ザ・キャットの優美な叛乱 ぴんざきゃっとのゆうびなはんらん 『ピン・ザ・キャットの優美な叛乱』は、飼い猫と生まれた息子の境界が揺らぐ感覚を核に、家族・身体・動物的な気配を奇妙な寓話へ変形させる小説。河出書房新社は、猫をめぐるかつてない小説として紹介し、現実の秩序が少しずつずれていく不穏さを前面に出している。語りのユーモアと不安が同時に立ち上がる、荻世いをらら…
- 119 2013 砂漠ダンス さばくダンス 『砂漠ダンス』は、山下澄人が乾いた場所の感覚と身体の動きを結びつける小説です。砂漠とダンスという組み合わせは、孤立した空間でなお身体が反応し続けるイメージを作ります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評に基づく暫定的な紹介です。
- 120 2013 世界泥棒 せかいどろぼう 放課後の教室で、男子二人が実弾入りの銃を使って死ぬまで撃ち合う「決闘」が行われるという設定から始まる。決闘を取り仕切る百瀬くんの存在をめぐり、学校という日常空間に戦争の論理が持ち込まれる。暴力を制度化した寓話として、現代の戦争文学を試みる作品。 第50回 文藝賞
- 121 2013 教授と少女と錬金術師 きょうじゅとしょうじょとれんきんじゅつし 教授、少女、錬金術師という奇妙な組み合わせを中心に、断片的で出鱈目にも見える出来事を積み重ねていく第37回すばる文学賞受賞作。写実的な筋を追うより、異様な熱や飛躍する連想、キッチュな笑いを楽しむタイプの作品である。演劇的な発想と実験的な構成が、デビュー作らしい危うさと勢いを生んでいる。 第37回 すばる文学賞
- 122 2013 太陽 たいよう 新宿のホテル、アフリカの「赤ちゃん工場」、パリの蚤の市、インドの湖畔などを横断し、人類の欲望と未来を極端なスケールで描くデビュー小説集。表題作「太陽」は金、不老不死、核融合といったモチーフを扱い、現代社会の資本と身体をSF的想像力で押し広げる。純文学とSFを接続する破格の語りが特徴。 第45回 新潮新人賞
- 123 2013 □ しかく 『□』は、阿部和重が2013年にリトルモアから刊行した単行本です。著者ページの著書一覧とNDLサーチのタイトル・著者検索で刊行情報を確認できます。
- 124 2013 感受体のおどり かんじゅたいのおどり 『感受体のおどり』は、文藝春秋BOOKSが「大河恋愛小説」であり「記憶についての物語」でもあると紹介する長篇です。『abさんご』で注目された黒田夏子の実験的な言葉の運動を、より長い時間幅と恋愛・記憶の物語へ広げる作品として位置づけられます。
- 125 2012 嵐のピクニック あらしのピクニック 『嵐のピクニック』は、本谷有希子の奇想に満ちた短篇を集めた作品集です。日常の足場が突然ずれ、家族、身体、自己像が不条理なかたちで変形していきます。ユーモアと不穏さが同時に働き、読者の常識を揺らす短篇集です。
- 126 2012 バナナ剥きには最適の日々 ばなながきにはさいてきのひびと 『バナナ剥きには最適の日々』は、円城塔のSF的・実験的な短篇を収める作品集です。日常的な動作を奇妙な論理や言語の操作へ接続し、世界の見え方そのものをずらします。軽い題名の奥で、テクノロジー、言葉、物語の組み立て方が問われます。
- 127 2012 道化師の蝶 どうけしのちょう 『道化師の蝶』は、言語、記憶、翻訳、移動をめぐる円城塔の実験的な作品集です。表題作は、物語が別の言語や媒体へ渡るたびに輪郭を変えるような構造を持ちます。読みどころは、難解さそのものではなく、言葉が世界を作り替える過程を小説として体験できる点にあります。 第146回 芥川賞
- 128 2012 緑のさる みどりのさる 『緑のさる』は、山下澄人の最初の単行本で、演劇的な会話と現実から少し外れる感覚を持つ小説です。人物の言葉は説明よりもリズムを生み、家族や孤独の問題が不意に立ち上がります。寓話的な題名と簡潔な場面の連なりが、独特の不穏さを作ります。 第34回 野間新人賞
- 129 2012 さよならクリストファー・ロビン さよならクリストファー・ロビン 2012年に新潮社から刊行された、高橋源一郎自身が「最高傑作」と称した短篇集。表題作「さよならクリストファー・ロビン」は『クマのプーさん』の登場人物を著者の世界に招き入れる試みから生まれ、ほかに「峠の我が家」「星降る夜に」「お伽草紙」「ダウンタウンへ繰り出そう」「アトム」の計六篇を収める。児童文学や… 第48回 谷崎賞
- 130 2012 abさんご えーびーさんご 昭和の知的家庭に生まれた幼子が成長し、父母を看取るまでを描く作品。横書き、固有名詞を用いない語りなど、形式上の実験が大きな特徴である。家族史を扱いながら、父子の間で長く見過ごされてきた沈黙や距離を、記憶の断片としてすくい上げる。言葉の配置そのものによって、時間の手触りと家族を語る難しさを問い直す。 第148回 芥川賞
- 131 2012 螺法四千年記 らほうよんせんねんき 古代から現代までを四千年の時間幅でたどり、神、人、ちいさな生き物たちの気配が現在の地平に重なっていく長篇。詩人でもある日和聡子の文体が、此岸と彼岸、私と彼方を行き来する神話的な感触を生み出す。直線的な歴史小説というより、螺旋状に時間と声が響き合う幻想性が読みどころである。 第34回 野間新人賞
- 132 2011 これはペンです これはぺんです 『これはペンです』は、書くこと、記号、道具としての言葉をめぐる円城塔の実験的な小説です。題名の単純な文は、ものを名指すことの確かさを疑わせ、物語の成立条件そのものを問いに変えます。メタフィクションとしての仕掛けと、知的なユーモアが読みどころです。
- 133 2011 いい女vsいい女 いいおんなたいいいおんな 『いい女vs.いい女』は、女性像の競争や評価を、木下古栗らしい奇妙なユーモアと不穏さで扱う作品です。題名の「vs.」は、人物同士の対立だけでなく、社会が押しつける「いい女」像のばかばかしさを示します。実験的な語りと、ジェンダー規範への斜めの視線が読みどころです。
- 134 2011 恋する原発 こいするげんぱつ 『恋する原発』は、東日本大震災後の言葉とメディアを、チャリティーAV制作という挑発的な設定から問い直す高橋源一郎の小説です。笑いや猥雑さを含む語りは、災害をきれいな物語に回収することへの抵抗として働きます。性、表現、原発事故後の社会を同時に扱うメタフィクションです。
- 135 2011 領土 りょうど 『領土』は、諏訪哲史が土地、言葉、所有の感覚を問い直す作品です。領土という政治的な語は、国家だけでなく、身体や記憶、語りが占める場所の問題にも広がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 136 2011 WANTED!! かい人21面相 うぉんてっど かいじんにじゅういちめんそう 『WANTED!! かい人21面相』は、グリコ・森永事件を想起させる「かい人21面相」を題材に、記憶、犯罪、言葉のパロディを組み合わせる赤染晶子の小説です。事件の固有名は、昭和的な大衆記憶と文学的な語りの遊びを同時に呼び込みます。芥川賞受賞後第一作として、ユーモアと不穏さが交錯する作品です。
- 137 2011 私のいない高校 わたしのいないこうこう 『私のいない高校』は、1992年の小学校を舞台に、校舎から見える家に住む子供の視点で綴られる青木淳悟の連作です。学校という共同体のなかにいるようでいない感覚が、記憶と観察のずれとして積み上がります。子供の視界を通じて、同調圧力と孤立が静かに浮かぶ作品です。 第25回 三島賞
- 138 2011 雪の練習生 ゆきのれんしゅうせい 『雪の練習生』は、サーカスや動物園に関わる三世代の白熊をめぐり、人間と動物、母語と外国語、芸と労働の境界を横断する長篇です。語り手を人間に固定しないことで、越境や翻訳の問題が身体感覚として立ち上がる。多和田葉子らしい寓話性と、歴史の暴力を軽やかにずらす語りが読みどころです。 第64回 野間文芸賞
- 139 2010 後藤さんのこと ごとうさんのこと 『後藤さんのこと』は、円城塔の言語実験と物語のずれが前面に出る作品です。「後藤さん」という固有名は、人物であると同時に、語りが追いかける対象そのものの不確かさを示します。SF的想像力とメタフィクションの感覚で、言葉が対象を作り出す過程を読む作品です。
- 140 2010 乙女の密告 おとめのみっこく 『乙女の密告』は、『アンネの日記』を読む大学の授業を舞台に、朗読、暗唱、密告の記憶が絡み合う小説です。語りは教室内の人間関係と戦争の記憶を重ね、誰が誰を裏切るのかという問いを現在の言葉の問題へ引き寄せます。軽やかな会話の奥に、同調圧力と自己認識の危うさが残る作品です。 第143回 芥川賞
- 141 2010 自由高さH じゆうたかさH 『自由高さH』は、建築的な視点から人間の空間認識と自由の関係を探る保高洋三のデビュー作です。空間、身体、自由という抽象的な主題を、建築の語彙に近い感覚で小説化している点が特徴です。第143回芥川賞候補作にもなり、形式意識の強い新人作として位置づけられます。 第110回 文學界新人賞
- 142 2010 ののの ののの 『ののの』は、言語の反復、ずれ、遊びを極限まで押し進めた実験的な作品です。意味が固定される前の音や文字の運動を前面に出し、小説の語りそのものを問い直します。受賞時は単行本化されず、後に改稿版として刊行された経緯も含めて、制度外的な実験性が際立つ作品です。 第42回 新潮新人賞
- 143 2010 俺俺 おれおれ 『俺俺』は、星野智幸が2010年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 144 2009 烏有此譚 うゆしたん 『烏有此譚』は、あるようでない物語をめぐり、注釈、引用、脱線が本文そのものを膨らませていく円城塔の実験的長篇です。物語を読むことと、物語が成立しないことが同時に進むため、読者は筋よりも言葉の運動を追うことになります。メタフィクションとしての遊びと、知的な不穏さが強い作品です。 第32回 野間新人賞
- 145 2009 ポジティヴシンキングの末裔 ぽじてぃう゛しんきんぐのまつえい 『ポジティヴシンキングの末裔』は、前向きさという社会的な合言葉を、木下古栗らしい不条理な笑いでずらす作品です。人物の考え方や言葉は一見軽いのに、そこから身体や生活の気味悪さがにじみます。明るい自己啓発的な語彙を反転させる、乾いたユーモアが読みどころです。
- 146 2009 このあいだ東京でね このあいだとうきょうでね 『このあいだ東京でね』は、東京という場所で交わされる会話や記憶を、青木淳悟の観察的な文体でたどる作品です。題名のくだけた語りかけは、都市の出来事が誰かへの報告として残る感覚を示します。大きな筋よりも、場所と言葉のズレを読む小説です。
- 147 2009 糞神 くそがみ 『糞神』は、身体の排泄や汚れのイメージを前面に出しながら、人間の信仰や共同体の感覚を揺さぶる作品です。喜多ふありの題名は挑発的ですが、そこには身体を持って生きることの逃れがたさがあるように読めます。神聖さと汚穢が接近する、不穏な寓話として分類しました。
- 148 2009 ロンバルディア遠景 ろんばるでぃあえんけい 『ロンバルディア遠景』は、遠景という距離の感覚を通して、記憶、場所、言葉の変形を描く諏訪哲史の作品です。現実の土地はそのまま写されるのではなく、語りの中でずれ、遠ざかり、別の像になります。『りすん』同様、言葉そのものが主題化される実験的な小説として読めます。
- 149 2009 今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇 こんやはひとりぼっちかい? にほんぶんがくせいすいし せんごぶんがくへん 『日本文学盛衰史』の続編として、戦後文学そのものを小説の素材にする長編。大岡昇平や小林秀雄らを思わせる文学史上の存在が、ロック、パンク、ラップ、ブログ、Twitter、YouTubeまで巻き込みながら、読まれなくなった戦後文学を現在の言葉へ揉みほぐしていく。文学史講義、パロディ、メタフィクションが交…
- 150 2009 水族 すいぞく 『水族』は、星野智幸が2009年に岩波書店から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 151 2008 Boy's Surface ぼーいずさーふぇす 『Boy's Surface』は、数学的・理論的な発想を小説の表面に引き出す、円城塔の実験的なSF作品です。物語は感情の自然な流れよりも、定義、証明、記号のずれによって進みます。読み手は、言葉と論理が人間の身体や関係をどこまで記述できるかを試されます。
- 152 2008 グ、ア、ム グ、ア、ム 『グ、ア、ム』は、グアムという観光地を舞台に、家族旅行の明るさの裏にある母娘や姉妹の違和感を描く本谷有希子の作品です。海外の解放感は、むしろ家族の関係の息苦しさを浮かび上がらせます。滑稽さと不穏さが同時に進む、劇作家的な場面の強さがあります。
- 153 2008 ほんたにちゃん ほんたにちゃん 『ほんたにちゃん』は、本谷有希子自身を思わせるキャラクターや語りを通して、作者像と作品の境界を遊ぶ一冊として読めます。自己紹介のようでいて、虚構化された「ほんたにちゃん」が前面に出るため、メタフィクション的な楽しさがあります。小説、演劇、エッセイ的な感覚が混じる軽やかな作品です。
- 154 2008 けちゃっぷ けちゃっぷ 言いたいことを相手に直接言わず、何もかもブログにアップしてしまう──そんなヴァーチャル化した現代のコミュニケーションを、ネットの文体と口語をなだれ込ませた語りで写し取った作品。書き込みと現実のあいだでずれていく自意識を通して、ゼロ年代後半のウェブ社会に生きる若者の孤独と滑稽さを軽やかにすくい上げる… 第45回 文藝賞
- 155 2008 眼と太陽 めとたいよう 『眼と太陽』は、視線と光のイメージを軸に、複数の視点や時間が交差する短篇集です。見ること、見られることが、人物の記憶や世界の捉え方を変えていきます。磯﨑憲一郎らしい抽象度の高い構成が、現実を少しずつ別の角度から照らします。
- 156 2008 逃げ道 にげみち シャワートイレ業者に雇われ、一般人のふりをして製品を試す「モニター工作員」として働く若い女性が主人公。アルバイト先の不祥事を機に、彼女は営業担当の田尻とともに街を離れ、千葉の屛風ヶ浦へと車を走らせる。隣人が全裸で現れるなどのノンセンスな場面や、エクセルの表を組み込む形式の実験を織り交ぜながら、どこに… 第106回 文學界新人賞
- 157 2008 りすん りすん 『りすん』は、『アサッテの人』以後の諏訪哲史が、聞くこと、話すこと、言葉のずれをさらに押し広げる実験的な作品です。タイトルの響きそのものが、意味に届く前の音や聞き間違いを思わせます。言語への執着と、他者へ届かない感覚が重なった小説として読めます。
- 158 2007 アサッテの人 あさってのひと 吃音を抱えていた叔父は、いつしか「ポンパ!」などの意味を持たない言葉=アサッテの言葉を突発的に口にするようになり、やがて失踪した。「私」はその叔父をめぐる小説を書こうとするが、語りは草稿、叔父の日記、回想が混在するまま進んでいく。言葉の規範から「アサッテ」の方向へ逸脱したいという渇望を、小説の形式そ… 第50回 群像新人賞
- 159 2007 Self-Reference ENGINE せるふれふぁれんすえんじん 『Self-Reference ENGINE』は、自己言及、時間、宇宙的スケールの思考実験を断片的なエピソードとして積み上げるSF小説です。物語は線形に進むよりも、定義や論理が暴走するように展開します。理論的な遊戯と小説的な冗談が同時に走る、円城塔初期の代表的な実験作として読めます。
- 160 2007 いい子は家で いいこはいえで 『いい子は家で』は、家という閉じた場所と「いい子」であることの圧力をめぐる青木淳悟の作品です。日常の言葉や振る舞いが少しずつずれ、家族や共同体の規範が不穏なものとして見えてきます。実験的な文体が、従順さの裏側にある違和感を浮かび上がらせます。
- 161 2007 うつつ・うつら うつつうつら 『うつつ・うつら』は、現実とうつつの境目を揺らしながら、人物の記憶や自己像の不確かさを描く作品集です。赤染晶子の作品らしく、日常の言葉や振る舞いが少しずつ奇妙なものへ変わっていきます。軽いユーモアと不穏さが同居する語りが読みどころです。
- 162 2007 わたくし率 イン 歯ー、または世界 わたくしりつ イン はー、またはせかい 『わたくし率 イン 歯ー、または世界』は、「わたし」は奥歯にあると考える女性の独白を、大阪弁のリズムで疾走させるデビュー作です。身体の一部に自己を置く発想が、アイデンティティと言葉の関係を奇妙に拡張します。文体の勢いそのものが主題になっている、川上未映子初期の重要作として読めます。
- 163 2007 植物診断室 しょくぶつしんだんしつ 『植物診断室』は、星野智幸が2007年に文藝春秋から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 164 2006 オートフィクション オートフィクション 『オートフィクション』は、作家リンの現在から過去へさかのぼる構成で、愛、嫉妬、自己像の形成をたどる長編です。自分を書くことと自分を作ることが重なり、タイトル通り「私小説」と「作り物」の境界が揺れます。時間を逆行する構成が、感情の根を探る読み方を促します。
- 165 2006 煙幕 えんまく 14歳の「わたし」は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、「14年戦争を生き抜いてきた」という感慨を抱いて生きている。理科教師の川端、クラスメイトの衣川、母を捨てた川端と名乗る男、プロデューサー——複数の登場人物が重なり合い、誰が誰なのか分からないまま視点が次々と入れ替わる。読者を文字どおり煙に巻く実験…
- 166 2006 公園 こうえん 『公園』は、世界の縮図のような公園から下田、ニューヨーク、グラウンド・ゼロへと移動していく大学生の「ぼく」と友人オノサを描くデビュー作。河出書房新社の紹介では、目的のはっきりしない移動と9.11後の世界感覚が結びつけられており、場面を飛躍させる語りが若者の浮遊感を生む。青春小説の軽さと、世界の暴力を… 第43回 文藝賞
- 167 2006 ぜつぼう ぜつぼう 『ぜつぼう』は、題名の強い感情をそのまま扱いながら、本谷有希子らしい不穏さと滑稽さで日常のずれを描く作品です。人物の思い込みや関係の歪みが、現実を少しずつ奇妙なものに変えていきます。絶望を重苦しいだけでなく、笑いと怖さの境目に置く読み味があります。
- 168 2006 愛と癒しと殺人に欠けた小説集 あいといやしとさつじんにかけたしょうせつしゅう 講談社2006年刊の単行本。伊井直行の短篇側を補う追加候補。
- 169 2006 虹とクロエの物語 にじとくろえのものがたり 『虹とクロエの物語』は、星野智幸が2006年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 170 2006 われら猫の子 われらねこのこ 『われら猫の子』は、星野智幸が2006年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 171 2005 AMEBIC アミービック 拒食やアルコールに蝕まれた女性ライターの意識を、断片的で揺らぐ独白として描く長編。身体の輪郭が崩れ、言葉や記憶がアメーバのように変形していく感覚が、タイトルどおり作品の構造にも入り込む。金原ひとみの身体感覚と実験的な語りが強く出た作品である。
- 172 2005 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ ふぬけども、かなしみのあいをみせろ 両親の事故死をきっかけに、女優を夢見る自己中心的な姉・澄伽が田舎の実家へ戻ってくる。妹、兄夫婦、家族内の記憶と嫉妬が、痛烈な喜劇として噴き出す。本谷有希子の戯曲的な会話と、家族を安全な場所として描かない毒の強さが読みどころである。
- 173 2005 ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ 宮沢賢治の作品やイメージを、高橋源一郎流に再配置するようなタイトルをもつ作品集。古典的な作家をそのまま讃えるのではなく、引用、変奏、遊びを通じて、文学を現在の言葉で鳴らし直す。メタフィクションとリミックス感覚が結びついた、高橋作品らしい一冊である。 第16回 宮沢賢治賞
- 174 2005 性交と恋愛にまつわるいくつかの物語 せいこうとれんあいにまつわるいくつかのものがたり 『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』は、性と恋愛をめぐる語りを、物語そのものへの問いと重ねて扱う作品です。高橋源一郎の小説らしく、露骨な題材を単純な告白にせず、言葉が欲望をどう作り替えるかを意識させます。恋愛小説の形式をずらしながら、身体、関係、語りの自由度を探る読みどころがあります。
- 175 2005 名もなき孤児たちの墓 なもなきこじたちのはか 表題作は『新潮』2005年8月号に掲載され、2006年に新潮社から刊行された同名作品集の核となる短編。中原昌也らしい不穏で断片的な語りが、名前を持たない者たちの孤立や行き場のなさを、整った物語の救済から遠ざけて描く。公開されている内容紹介は乏しいため、具体的な筋の断定は避け、書誌・受賞情報と作風に限… 第28回 野間新人賞
- 176 2005 在日ヲロシヤ人の悲劇 ざいにちをろしやじんのひげき 『在日ヲロシヤ人の悲劇』は、星野智幸が2005年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 177 2004 アフターダーク あふたーだーく 深夜0時過ぎから夜明けまでの東京を舞台に、ファミリーレストラン、ホテル、オフィス、眠り続ける部屋がゆるく接続される。視点はカメラのように人物の間を移動し、姉妹、孤独な青年、暴力の痕跡を、夜の都市の断片として映し出す。長大な物語ではなく、時間を区切った構成と映像的な語りで、村上春樹作品の都市感覚を凝縮…
- 178 2004 介護入門 かいごにゅうもん 寝たきりの祖母を在宅で介護する無職の「俺」が、深夜のおむつ替えや褥瘡のケアといった介護の現実を、ヒップホップのライムを思わせる呼びかけと畳みかける長文で語る。「ヨォ、と俺は呼びかける」という挑発的な語りは、介護を美談にも悲劇にも回収せず、祖母への愛と世間への呪詛を同じ熱量で吐き出していく。介護文学に… 第98回 文學界新人賞
- 179 2004 狐寝入夢虜 きつねねいりゆめのとりこ 三週間前に職を失った上岡鳥子は、空腹を抱えて神社へ散歩に出かけ、帰り道に迷い、年下の古本屋の倅と茶飲み話をして花札に興じる。働かないこと自体は気にしないが、仕事に存在理由を求める世間様の考え方には反感を覚える——そんな鳥子の「高潔なる怠惰」を、現代の話なのにわざと落語のような古風な語りで聞かせる。語… 第47回 群像新人賞
- 180 2004 ロンリー・ハーツ・キラー ろんりーはーつきらー 『ロンリー・ハーツ・キラー』は、星野智幸が2004年に中央公論新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 181 2004 アルカロイド・ラヴァーズ あるかろいどらゔぁーず 『アルカロイド・ラヴァーズ』は、星野智幸が2005年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 182 2003 江利子と絶対 本谷有希子文学大全集 えりことぜったい ほんたにゆきこぶんがくだいぜんしゅう 劇作家として活動していた本谷有希子が、小説家として最初にまとめた短篇集。表題の「江利子と絶対」を含む諸篇では、過剰な自意識、対人関係のずれ、舞台劇のような会話の圧が前面に出る。後年の本谷作品に続く、痛さと可笑しさを同時に押し出す語りの出発点として読める。
- 183 2003 四十日と四十夜のメルヘン よんじゅうにちとよんじゅうやのめるへん チラシ配りをして暮らす「私」が書きつける日記。しかしその日付は素直に進まず、記述は反復と書き換えを繰り返しながら円環構造を描き、日常の風景がいつのまにか変容していく。「書くこと」自体を小説の駆動装置にした構成は、選考会で保坂和志が「これはピンチョンなんだ」と断言して強く推したことで知られる。単行本化… 第35回 新潮新人賞
- 184 2002 官能小説家 かんのうしょうせつか 永井荷風と森鷗外を軸に、「官能」と文学の歴史をめぐって展開する高橋源一郎の長編。近代文学の作家を素材にしながら、性、表現、文学史をメタフィクションとして組み替える。日本文学を読むこと自体を小説の快楽へ変える作品。
- 185 2002 君が代は千代に八千代に きみがよはちよにやちよに 「君が代」という強い公共的記号を題名に据え、国家、記憶、言葉の働きを小説の場で問い直す高橋源一郎の作品。政治的な主題を直接の主張に閉じず、語りの実験や文学的なずらしによって扱う。近代日本の制度と言語をめぐるメタフィクションとして読める。
- 186 2002 毒身温泉 どくしんおんせん 『毒身温泉』は、星野智幸が2002年に講談社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 187 2001 ゴヂラ ゴヂラ 高橋源一郎が2001年に刊行した作品で、怪獣映画を思わせる表記を小説の入口に置く。戦後日本の記憶、メディアの記号、文学の語りを重ね、現実とフィクションの境界を揺さぶるタイプの作品として読める。内容細部は追加確認が必要だが、実験的な社会批評性を持つ作品として分類する。
- 188 2001 あらゆる場所に花束が…… あらゆるばしょにはなたばが 『あらゆる場所に花束が……』は、中原昌也の小説で、第14回三島由紀夫賞受賞作です。新潮社公式ページは、殺意と肉欲に満ちた地上を舞台に、地下室で絵ハガキを作らされる男、河川敷で殺人リハーサルをする一団、謎の人物を追うルポライターらが絡み合う作品として紹介しています。暴力、断片、錯綜する人物配置によって… 第14回 三島賞
- 189 2000 目覚めよと人魚は歌う めざめよとにんぎょはうたう 『目覚めよと人魚は歌う』は、星野智幸が2000年に新潮社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。 第13回 三島賞
- 190 1999 零歳の詩人 れいさいのしじん 短歌誌「玲瓏」同人でもある楠見朋彦の小説デビュー作です。詩歌人としての言語感覚を背景に、戦争や言葉をめぐる主題を小説の形式へ移した作品として位置づけられます。公開資料で梗概を十分に確認できないため、現時点では受賞・掲載情報と作者の詩歌的な出自を中心に扱います。 第23回 すばる文学賞
- 191 1999 嫐嬲 なぶりあい 『嫐嬲』は、星野智幸が1999年に河出書房新社から刊行した小説作品です。書誌はNDLサーチ、Books/JPRO、出版社公式またはAmazonの商品ページで確認し、感想・読者レビュー導線は referenceLinks に分離しました。
- 192 1998 腦病院へまゐります。 のうびょういんへまゐります。 『腦病院へまゐります。』は、旧仮名遣いを用いた文体で、精神の病と言葉の働きを絡ませて描く作品です。表記そのものが読者の速度を変え、病院や身体をめぐる経験を、通常のリアリズムからずらして見せます。言語の異物感を作品の主題に接続する、実験的な語りが読みどころです。 第86回 文學界新人賞
- 193 1998 二匹 にひき 『二匹』は、鹿島田真希が第35回文藝賞を受賞してデビューした学園小説です。河出書房新社公式ページでは、22歳の女子大生ファイターが独特の荒れた日本語で放つ「学園ハードボイルド」として紹介されている。青春小説の形式を借りつつ、言葉の破格さと暴力的な感覚で、鹿島田作品の実験性の出発点を示す作品です。 第35回 文藝賞
- 194 1998 おぱらばん おぱらばん 『おぱらばん』は、フランス郊外に暮らす「私」の視線を通して、忘れられた文学、移民の言葉、郊外の人々をゆるやかに結びつける15篇の小説集です。新潮社公式の文庫版紹介では、表題作が中国移民の言い回しを通じて卓球名人の肖像を描く作品として案内されている。エッセイと小説の境界を横断し、言葉のずれや記憶の手触… 第12回 三島賞
- 195 1997 ゴーストバスターズ 冒険小説 ゴーストバスターズ ぼうけんしょうせつ 1997年に講談社から刊行された高橋源一郎の長編『ゴーストバスターズ 冒険小説』。謎の「ゴースト」を探してアメリカ横断の旅に出るブッチ・キャシディとサンダンス・キッド、「俳句鉄道888」で失踪した叔父を探すドン・キホーテの姪一行、東京の空を飛ぶ「正義の味方」超人マン・タカハシらが交錯する。アメリカが…
- 196 1997 日本文学盛衰史 にほんぶんがくせいすいし 1997年から2001年まで『群像』に連載され、2001年に講談社から刊行された高橋源一郎の長編。「文学史が小説になった」と評されるように、統一された筋や明確な主人公を持たず、漱石・鴎外・二葉亭四迷・北村透谷・島崎藤村・樋口一葉ら近代文学の創始者たちが「何をどう書くか」という問いに苦しむ姿を断章的に… 第13回 伊藤整賞
- 197 1997 最後の吐息 さいごのといき 『最後の吐息』は、星野智幸が河出書房新社から刊行したデビュー期の小説作品です。公的書誌で題名・著者・出版社を確認し、受賞歴は文藝賞の受賞作一覧で確認できる範囲に限定して登録しました。 第34回 文藝賞
- 198 1997 インディヴィジュアル・プロジェクション いんでぃゔぃじゅあるぷろじぇくしょん 『インディヴィジュアル・プロジェクション』は、阿部和重が1997年に新潮社から刊行した長編小説です。スパイ養成所出身者の日記という設定により、理論性とエンターテインメント性を接続した初期代表作として扱います。
- 199 1997 公爵夫人邸の午後のパーティー こうしゃくふじんていのごごのぱーてぃー 『公爵夫人邸の午後のパーティー』は、阿部和重が1997年に講談社から刊行した初期作品集です。著者ページの著書一覧では「ヴェロニカ・ハートの幻影」を併録する単行本として確認できます。
- 200 1997 あとは野となれ 『あとは野となれ』は、室井光広が芥川賞受賞後に講談社から刊行した長篇小説です。講談社公式ページでは、古今東西の「野」を遊行する「野ざらし思考小説」と紹介されています。偶然の一致を書き留める手帳、読書中の二冊の本、言語遊戯の横断という仕掛けを通じて、言葉と思考が連鎖していく室井らしい実験性の強い作品で…
- 201 1995 私小説 from left to right ししょうせつ ふろむ れふと とぅ らいと 『私小説 from left to right』は、アメリカに暮らす日本語話者の姉妹をめぐり、日本語と英語、縦書きと横書きの境界を作品形式そのものに組み込んだ私小説です。移動と翻訳の経験を、単なる海外生活の物語ではなく、どの言語で自分を語るのかという問いへ押し広げます。私小説の枠を借りながら、その制… 第17回 野間新人賞
- 202 1995 ABC戦争 えーびーしーせんそう 『ABC戦争』は、阿部和重が1995年に講談社から刊行した初期作品集です。のちに『ABC戦争 plus 2 stories』として文庫化され、初期作をまとめた『ABC 阿部和重初期作品集』にも組み込まれました。
- 203 1994 タイムスリップ・コンビナート たいむすりっぷ・こんびなーと 『タイムスリップ・コンビナート』は、自宅から海芝浦駅へ向かう道程で時間が前後にずれていく幻想的な芥川賞受賞作です。都市近郊の移動と時間感覚の攪乱を通じて、記憶、身体、場所の境界が不安定になっていきます。笙野頼子の自由奔放な文体と時間への感覚が凝縮された作品として整理できます。 第111回 芥川賞
- 204 1994 おどるでく おどるでく 『おどるでく』は、室井光広が第111回芥川賞を受賞した作品です。既存データでは、ロシア文字で表音化された日本語の日記を主人公が翻訳していく、言語と記憶をめぐる実験的な小説として整理されています。日本文学振興会公式で受賞は確認できますが、内容説明は二次情報由来で、出版社公式の商品紹介は未確認です。 第111回 芥川賞
- 205 1994 アメリカの夜 あめりかのよる 『アメリカの夜』は、映画学校を卒業した中山唯生が、アルバイト生活の閉塞感のなかで「特別な存在」であろうとして身体を鍛え、思索を深めていく物語です。講談社公式の商品紹介は、芸術を志す若者の自己像への執着と、閉塞した社会のなかで本当に目指すべき存在を問う作品として説明している。映画・芸術への志向、身体… 第37回 群像新人賞
- 206 1993 草の上の朝食 くさのうえのちょうしょく 『草の上の朝食』は、保坂和志が第15回野間文芸新人賞を受賞した作品です。既存データでは『プレーンソング』の続編として、鎌倉を舞台にゆるやかな日常と複数人物の意識を描く初期代表作として整理されています。講談社公式で受賞は確認できますが、内容紹介はWikipedia中心のため注意が必要です。 第15回 野間新人賞
- 207 1992 犬婿入り いぬむこいり 『犬婿入り』は、塾講師の女性が犬に変身した男性と同棲する物語を軸に、言語、身体、変身の主題を展開する作品です。民話的な想像力を現代の都市生活へ持ち込み、人間と動物、女と男、日本語と外部の境界を揺らします。多和田葉子の越境的で実験的な文体がよく現れた芥川賞受賞作です。 第108回 芥川賞
- 208 1992 樹木内侵入臨床士 じゅもくないしんにゅうりんしょうし 『樹木内侵入臨床士』は、架空の職業をめぐる実験的な物語です。人間の身体や治療の感覚を、樹木の内部へ侵入するという奇妙な設定に置き換えています。現実的な職業小説ではなく、身体と自然の境界をずらす寓話として読むのが近い作品です。 第74回 文學界新人賞
- 209 1992 螺旋の肖像 らせんのしょうぞう 『螺旋の肖像』は、別唐晶司が第24回新潮新人賞を受賞したデビュー作です。医学研究科に在籍していた著者の経歴もあり、身体や認識をめぐる知的な題材が想起されますが、今回確認できた公開資料は受賞発表と掲載誌書誌が中心です。内容面は今後の追加調査が必要です。 第24回 新潮新人賞
- 210 1991 自動起床装置 じどうきしょうそうち 『自動起床装置』は、通信社の仮眠室で眠る人々を起こす「起こし屋」を主人公にした作品です。眠りを管理する仕事を通して、現代の労働、身体、文明の疲弊を問います。ジャーナリストでもある辺見庸の観察眼と、実験的な文体が交差する芥川賞受賞作です。 第105回 芥川賞
- 211 1991 かかとを失くして かかとをなくして 『かかとを失くして』は、ドイツ語圏に渡った日本人女性の言語と身体の変容を、夢幻的な語りで描く多和田葉子のデビュー作です。足元の感覚を失うというイメージが、母語の外へ出る不安や、身体の境界の揺らぎにつながっていきます。越境文学・エクソフォニーの出発点として重要な作品です。 第34回 群像新人賞
- 212 1991 なにもしてない なにもしてない 『なにもしてない』は、生きている実感を求めて現実と幻想のあいだを往還するモノローグの世界を描く作品です。日常の停滞を、単なる無為ではなく、身体と意識がずれていく感覚として押し広げます。笙野頼子の前衛的な私小説性が強く現れた初期代表作です。 第13回 野間新人賞
- 213 1991 ワールズ・エンド・ガーデン わーるず・えんど・がーでん 1991年に新潮社から刊行され、2013年に河出書房新社の「いとうせいこうレトロスペクティブ」として復刊された小説。Books/JPROの復刊版内容紹介は、引用・リピート・連想、ゲーム、コトバの混沌、トーキョーの焦燥と昂揚を強調している。
- 214 1990 村の名前 むらのなまえ 『村の名前』は、中国奥地を舞台に、ある村の名をめぐる記憶と謎を追う中篇です。旅と聞き書きのような手触りを持ちながら、地名が個人や共同体の歴史をどのように抱え込むかを幻想的に描きます。辻原登のデビュー期の越境感覚と、語りの迷宮性が読みどころです。 第103回 芥川賞
- 215 1990 革命のためのサウンドトラック かくめいのためのさうんどとらっく 『革命のためのサウンドトラック』は、言葉が相手に届かず、ノイズのように増殖していく感覚を描く清水アリカのデビュー作です。筋を一直線に追わせるよりも、音、言葉、退廃的な気分を重ねて、都市の閉塞感を前景化します。言語への不信と終末的なムードが交差する、実験色の強い新人賞受賞作です。 第14回 すばる文学賞
- 216 1990 遊機体 ゆうきたい 1990年刊。既存の『背負い水』以前の単著候補。
- 217 1989 ペンギン村に陽は落ちて ペンギンむらにひはおちて 高橋源一郎が1989年に刊行した、ポップカルチャーの記号と小説の語りを交差させる作品。題名からも分かるように、既存の文化記号をずらして使い、文学とメディアの境目を揺さぶる。筋よりも、引用、冗談、語りの脱線が作る運動を読む作品。
- 218 1989 縄文流 じょうもんりゅう 警備員と妻カリンちゃんの日常を、過激で滑稽な文体で描いた作品。既存梗概では、選考委員の笑いを誘ったとされるほど、生活の卑近さと文体の勢いが前面に出る。労働と夫婦の生活を、通常のリアリズムからずらしたユーモラスな語りで押し出す作品として読める。 第21回 新潮新人賞
- 219 1988 尋ね人の時間 たずねびとのじかん 『尋ね人の時間』は、別れた妻子や死別した妹、好意を寄せる女性との距離を抱えたカメラマンの意識を追う作品です。都会で自分を見失った人物の感覚が、詩的で短い文の連なりとして表現されます。喪失を過剰に劇化せず、削ぎ落とした言葉で浮遊感を残す点が特徴です。 第99回 芥川賞
- 220 1986 M/Tと森のフシギの物語 エムティーともりのフシギのものがたり 四国の森に伝わる物語を、M=母権的な存在とT=トリックスター的な存在の対立・変奏として語る長編。村の伝承、神話、人類学的な型を組み合わせ、作家の幼年期の森を大きな物語装置へ変えていく。短い断章を積み重ねる構成で、個人の記憶と共同体の神話が互いに照らし合う。
- 221 1986 復活祭のためのレクイエム ふっかつさいのためのれくいえむ 『復活祭のためのレクイエム』は、コピーライターを主人公に、言葉と笑いが交錯する軽快な実験小説です。復活祭という宗教的な題を掲げつつ、広告的な言語感覚や都市的な軽さを作品の推進力にしています。単行本刊行も確認でき、1980年代半ばの群像新人文学賞系の言語実験として読めます。 第29回 群像新人賞
- 222 1985 ジョン・レノン対火星人 ジョン・レノンたいかせいじん 高橋源一郎の初期作品で、音楽、SF的な想像力、文学の制度を横断するような題名の通り、ジャンルの境界を遊びながら崩していく。物語の筋だけでなく、固有名やサブカルチャーの断片が語りを動かす点に読みどころがある。実験的な笑いと不穏さが同居する、ポストモダン文学の入口に置ける作品。
- 223 1985 優雅で感傷的な日本野球 ゆうがでかんしょうてきなにほんやきゅう 「ぼくは野球を知らなかった」――野球が忘れ去られた世界で、語り手は「日本野球」の神髄を教わろうとする。断片的な7つの章で構成され、実在の選手や球団の記憶、「1985年、阪神タイガースは本当に優勝したのだろうか」という問いをめぐって、パロディとパスティーシュ(既存作品の文体模倣)を駆使した物語が時空を… 第1回 三島賞
- 224 1985 ジパング じぱんぐ 『ジパング』は、吉目木晴彦のデビュー作にあたる第28回群像新人文学賞優秀作です。今回確認できた公開情報は講談社公式の受賞一覧に限られるため、作品内容の説明は新人賞で確認できる書誌・受賞事実に限定します。
- 225 1984 虹の彼方に にじのかなたに 高橋源一郎の初期長編で、ポップカルチャーの速度と文学的な実験が混ざり合う作品。既成の小説らしさをずらしながら、語りの軽さ、引用、遊びの感覚で現代の気分を立ち上げる。筋を追うだけでなく、言葉やジャンルがほどけていく過程を読む作品として扱いたい。
- 226 1984 夢遊王国のための音楽 ゆめゆうこくのためのおんがく 千々石雅という青年の頭の中で鳴る音楽が、妄想的な思考と語る言葉を加速させていく作品。島田雅彦公式サイトは、管理と支配に満ちた現在を生きる若者の矛盾と混乱を、クラシック音楽形式の実験的手法で描いた作品として紹介している。音楽形式を小説の構造に取り込み、現実感覚の不安定さを文体そのものに反映させる点が読… 第6回 野間新人賞
- 227 1982 佐川君からの手紙 さがわくんからのてがみ 『佐川君からの手紙』は、1981年のパリ人肉事件を下敷きに、犯人から届く手紙と映画化をめぐる交渉を通して事件へ接近していく作品です。唐十郎らしいアングラ演劇的な誇張と越境感が、小説の形で犯罪、欲望、表現の倫理を揺さぶります。実在事件を扱うため、読後には不穏さと表現上の危うさが強く残ります。 第88回 芥川賞
- 228 1981 さようなら、ギャングたち さようならギャングたち 1982年に講談社から刊行された高橋源一郎のデビュー長編。詩の学校で教える「僕」と、犯罪集団というより言語と記憶のなかで生成される虚構の仲間として現れるギャングたちの世界を、断章・引用・固有名の遊びで組み上げる。物語は詩、ポップカルチャー、メタフィクションを軽やかに横断し、青春小説の形式を借りながら…
- 229 1980 父が消えた ちちがきえた 『父が消えた』は、父の遺骨を納める墓地を見に中央線で高尾へ向かう「私」の意識をたどる中篇です。現在の車中の時間に、父をめぐる記憶や前衛芸術家としての作者の感覚が交錯し、家族小説でありながら形式そのものを揺さぶる作品になっています。死者を送る手続きの物語を、記憶の断片と都市郊外の移動感覚で組み立てる点… 第84回 芥川賞
- 230 1979 同時代ゲーム どうじだいゲーム 四国の森の谷間にある「村=国家=小宇宙」を、手紙・神話・歴史の断片を重ねて語り直す実験的長編。語り手は村の起源、反乱、血縁、移住の記憶を再編し、個人の物語ではなく共同体が自分自身を語る仕組みそのものを小説化する。大江の森の神話と戦後政治への問いが、濃密な語りの構造として展開される。
- 231 1951 壁 かべ 『壁』は、ある朝突然に名前を失った男S・カルマ氏の不条理な遍歴を描く安部公房の前衛的中篇です。現実の制度や所有の感覚がずれていく過程を、寓話的で実験的な文体によって追い詰めます。戦後日本文学に不条理文学・シュールレアリスムの感覚を持ち込んだ、安部公房の出発点となる作品です。 第25回 芥川賞
- 232 1946 暗い絵 くらいえ 『暗い絵』は、敗戦直後の文学状況の中で、戦時下に屈折した青年の内面と、思想・身体・性をめぐる不安を描いた野間宏の初期代表作です。『真空地帯』の軍隊批判へつながる、戦後文学の内面描写と社会批判の出発点として読むことができます。