Themes
青春
主題「青春」に分類された 215 作品。
- 001 2025 激しく煌めく短い命 はげしくきらめくみじかいいのち 『激しく煌めく短い命』は、中学校の入学式で出会った久乃と綸が、周囲の偏見のなかで愛を育み、やがて決定的に引き裂かれるまでを描く恋愛小説です。十数年後、東京で働く久乃が綸と再会する構成により、青春の瞬間的な激しさと、時間を経ても消えない感情の持続が重ねられる。文藝春秋公式は、京都と東京を舞台に女性同士…
- 002 2025 曇りなく常に良く くもりなくつねによく 『曇りなく常に良く』は、同じ高校に通う五人の少女たちの一年間を追う青春群像劇です。よく似た声が混ざり合うという公式紹介の言葉が示すように、個々の輪郭と集団の空気が重なり、友情や同調、来年も一緒にいるだろうという予感が揺れていく。大事件よりも、学校生活の時間の流れと会話の重なりから、少女たちの関係が変…
- 003 2024 いつか、あの博物館で。 いつかあのはくぶつかんで 『いつか、あの博物館で。』は、ロボット博物館への校外学習で同じ班になった中学一年生四人を描く群像劇。美しいアンドロイドの気象予報士との出会いをきっかけに、彼らはロボットと人間の違い、自分だけの心、他者との距離を考えていく。中学三年間の視点を重ね、家庭環境も性格も異なる子どもたちが自分を作り直していく…
- 004 2024 僕たちの保存 ぼくたちのほぞん 『僕たちの保存』は、語り手のゲンさん、年上の武上さん、引きこもりの甥シンスケ、人気漫画家の亀谷さんらが、新幹線、自転車、バス、テスラを乗り継いで旅に出るロードノベル。震災被害者の形見であるMSXパソコンが、過去と現在、記憶と情報の保存をつないでいく。サブカルチャーとパソコン以後の時間を背景に、残るも…
- 005 2024 め生える めばえる 髪の毛が根こそぎ抜ける感染症によって、中高生以下を除く大人がみな髪を失った世界を描く中編。薄毛を気にしてきた真智加は開放感を覚える一方、幼少期に髪を切られた高校生・琢磨は恋人と訪れた占い師の言葉をきっかけに別の悩みに直面する。外見の差異が一見平等化された社会を通して、身体へのまなざし、コンプレックス…
- 006 2024 常盤団地の魔人 ときわだんちのまじん 常盤団地の三号棟に住む小学三年生の今野蓮は、喘息を抱え、学校ではまだ友人関係をつくりきれずにいる。団地に越してきた同い年のシンイチ、乱暴だが求心力をもつ年上の少年たち、老朽化した団地の池や空き地をめぐる出来事のなかで、蓮は子どもだけの社会にある憧れ、序列、暴力を少しずつ知っていく。冒険譚の軽やかさを…
- 007 2023 腹を空かせた勇者ども はらをすかせたゆうしゃども コロナ禍のさなか、陽気な中学生レナレナが、「公然不倫」中の母と暮らしながら学校、友人、食べること、恋愛や家族の問題に向き合う青春長篇である。明るさと浅はかさを抱えた少女たちの日常を通して、困難が当たり前になった時代をどう生き抜くかが描かれる。従来の金原ひとみ作品の切迫した身体感覚を保ちつつ、軽やかな…
- 008 2023 ラーメンカレー ラーメンカレー 『ラーメンカレー』は、ロンドンの結婚式やペルージャへの旅をきっかけに、高校時代の同級生たちの言葉と記憶があふれ出す連作短編集である。表題作を含む「窓目くんの手記」連作と複数の短篇を収め、食べ物の名前の軽さとは裏腹に、青春の偶然や移動、他者との出会いが時間をまたいで響く構成になっている。滝口悠生らしい…
- 009 2023 無敵の犬の夜 むてきの いぬの よる 『無敵の犬の夜』は、北九州の片田舎で学校へ行かず、不良グループと過ごす中学生・界を描く長編。幼少期に右手の指を失った界は、地元で出会った男・橘に心酔し、彼のために単身東京へ向かう。方言と虚勢を帯びた熱のある語りが、思春期の暴走、尊敬されたい欲望、世界とつながれない孤独を押し出す。 第60回 文藝賞
- 010 2022 ななみの海 ななみのうみ 『ななみの海』は、児童養護施設で暮らす高校生ななみが、医学部進学を目指しながら自分の進路を選び取っていく青春小説である。祖母の「馬鹿にされるな」という言葉を胸に、受験勉強、ダンス部最後の発表会、初めての恋、進学費用のためのアルバイトが重なる。十代の心許なさと揺らぎをすくい、支援や家庭環境に規定される…
- 011 2022 カルチャーセンター かるちゃーせんたー カルチャーセンターで共に過ごしたニシハラくんの未発表小説『万華鏡』を収録し、その小説に寄せられた作家・編集者たちのコメントまでも作品の一部として組み込む小説。松波太郎がニシハラくんへ語りかける形で、書きたいという欲望、書かれたものへの責任、そして「これは小説なのか」という問いを空白ごと立ち上げていく…
- 012 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が…
- 013 2022 くるまの娘 くるまのむすめ 17歳のかんこは、家族とともに車中泊をしながら祖母の葬儀へ向かう。狭い車内と旅先の景色は、父母と子のあいだに積み重なった暴力、依存、愛着を逃げ場なく浮かび上がらせる。少女の身体感覚に寄り添う濃密な語りが、家族を単純な加害と被害に分けられないものとして描き、読者に「救うなら誰を救うのか」という問いを突…
- 014 2022 ビューティフルからビューティフルへ ビューティフル から ビューティフル へ 『ビューティフルからビューティフルへ』は、絶望を抱える高校三年生の静と、ネグレクト家庭に育ち「死にたい」感覚を抱えてきたナナを中心に進むモノローグ小説。二人が通う「ことばぁ」の家、駅前で出会う若者との接触を通じて、生と死、自己否定と自己肯定が乱反射する。サンプリングのように異質な言葉を混ぜる文体が… 第59回 文藝賞
- 015 2021 翼の翼 つばさのつばさ 『翼の翼』は、小学二年生の息子・翼が進学塾の全国テストをきっかけに中学受験へ向かい、母・円佳が塾、ライバル、保護者、家族の期待に巻き込まれていく長篇。子を思う気持ちが、親のプライドや世間の噂、家族内の力学と結びつき、愛情と支配の境目が見えにくくなる過程を描く。中学受験という制度の熱を通じて、家族の内…
- 016 2021 オーラの発表会 オーラのはっぴょうかい 『オーラの発表会』は、大学一年生の海松子が、人を好きになる気持ちや他人の感情をうまく読めないまま、友情と恋愛未満の関係に巻き込まれていく長篇。凧揚げを趣味にし、周囲に脳内であだ名をつける彼女の少しずれた観察が、幼なじみや社会人男性からの接近を通じて揺さぶられる。綿矢りさらしい軽やかな口語感とユーモア…
- 017 2021 ここはとても速い川 ここはとてもはやいかわ 児童養護施設で暮らす小学五年生の集と、園での年下の親友・ひじりの日々を描く表題作を中心にした小説集。近くの淀川にいる亀を見に行く楽しみなど、子どもたちの時間が、温もりを含んだ繊細な言葉でたどられる。詩人として出発した著者の初めての小説集で、表題作と小説第一作「膨張」を収録する。 第43回 野間新人賞
- 018 2020 ピエタとトランジ〈完全版〉 ぴえたととらんじ かんぜんばん ピエタを語り手に、天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、その才能に惹かれて助手になるピエタの関係を描く長篇。周囲で次々と事件が起きるトランジの体質は、探偵小説、友情譚、終末SFの要素を巻き込み、やがて人類滅亡のスケールへ広がっていく。軽やかな語り口で、女性バディ、才能への憧れ、破滅に向かう世界を…
- 019 2020 小鳥、来る ことり、くる 『小鳥、来る』は、夏休みの始まり、9歳の「おれ」が父を倒す日を待っているところから始まる長篇。周囲には、勉強のできる友人、万引きを繰り返す兄弟、学年一強い女子、何度も車にはねられる少年、動物園のゴリラがいて、子どもの日常が暴力とユーモアを帯びて浮かぶ。山下澄人らしい口語のリズムと飛躍する視点が、大人…
- 020 2020 推し、燃ゆ おし、もゆ 「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」という一文から始まる。高校生のあかりは、学校でも家庭でも周囲の求める「普通」をうまくこなせず、アイドルグループの一員である「推し」上野真幸を解釈し応援することだけを生活の軸、自らの「背骨」として生きている。推しの炎上をきっかけに、彼の芸能活動もあかりの日常も少… 第164回 芥川賞
- 021 2020 流卵 りゅうらん 『流卵』は、中学2年の男子が性の目覚めとオカルト的な妄想に取りつかれ、自分を「選ばれた民」とみなして向こう側の世界へ進もうとする長篇。河出書房新社公式は、官能と陶酔を帯びた吉村萬壱版『金閣寺』として紹介している。母親に「ヘンタイ」と呼ばれる少年の半生をたどる書評もあり、性・信仰・自己神話が混ざる不穏…
- 022 2020 星に帰れよ ほしに かえれよ 16歳の誕生日深夜の公園で「モルヒネ」と呼ばれる同級生女子と出会った真柴翔の物語。同世代の高校生たちの傲慢で高潔な言葉が彼らの生きる速度で飛び交う、16歳の作者が同世代を鋭く切り取ったデビュー作。
- 023 2019 君たちは今が世界 きみたちはいまがせかい 『君たちは今が世界』は、小学校という閉じた場で、子どもたちの関係、序列、沈黙の圧力が日々の世界そのものになっていく様子を描く長篇。副題的に示される英題「All grown-ups were once children」が示すように、子ども時代を単なる回想ではなく、現在進行形の切実な社会として捉える…
- 024 2019 駒音高く こまおとたかく 『駒音高く』は、将棋の勝負の世界に関わる七人の青春と人生を描く短篇集。プロを志す中学生や引退間際の棋士だけでなく、将棋会館の清掃員など周辺にいる人々にも視線を向け、勝敗の外側にある家族、仕事、誇りを浮かび上がらせる。実業之日本社公式が「青春・家族小説の名手」の温かなまなざしと紹介する通り、競技小説で…
- 025 2019 人間 にんげん 『人間』は、若い日に創作を志す者たちが集ったシェアハウスの記憶と、38歳になった「僕」の現在を往還する長篇。表現者になりたいという願い、仲間と暮らす時間の高揚、その後に残る成功や挫折の差が、自己像を問い直す物語として重なっていく。又吉直樹の初の長編として、芸術への憧れだけでなく、他者と比べながら生き…
- 026 2019 サバティカル さばてぃかる 33歳のエンジニア梶くんは、転職先への入社までに空いた五カ月を「サバティカル」と名づけ、自分にさまざまな宿題を課す。プロジェクト管理ツールで課題を片付けるうち、将棋の師匠が生き別れた娘を探すという思いがけない宿題に向き合うことになる。仕事の切れ目に生まれた時間を、単なる休暇ではなく自分の結びつきや恋…
- 027 2019 遠の眠りの とおのねむりの 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇…
- 028 2018 日の出 ひので 明治の終わり、13歳の清作は徴兵から逃れて故郷を飛び出し、北陸から九州、横浜へ移りながら鍛冶職人として生きる。もう一つの軸として、清作を曾祖父にもつ現代の女子大生・あさひが、教職免許取得のために学ぶ姿が置かれる。時代を隔てた二人を並行させ、労働、逃走、家系の記憶、希望の継承を描く長編。
- 029 2018 星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き ほしがおかこうこうりょうりぶ へんさちろくじゅうはちのめだまやき 廃部寸前の私立星ヶ丘高校料理部に、篠原皐月が友人に誘われて入部する連作料理ミステリ。目玉焼き、オムレツ、ハンバーグ、カレーなどの料理を通じて、皐月たちは調理の理屈と、身近な出来事に潜む謎を少しずつ解いていく。学校小説の軽やかさに、料理の知識と日常の推理を重ねた読み味が特徴。
- 030 2018 ゆっくりおやすみ、樹の下で ゆっくりおやすみ、きのしたで 小学5年生のミレイが「さるすべりの館」で夏休みを過ごすうち、遠い過去の謎に触れていく児童文学寄りの長編。赤い部屋、止まっていた時計、館に隠された秘密が、子どもの視点に近い軽やかさと不思議な緊張感で語られる。今日マチ子の挿絵を多数収録し、高橋源一郎が子どもと大人の読者をつなぐ語りに挑んだ作品。
- 031 2018 送り火 おくりび 東北の小さな中学校へ転校した少年が、土地の集団に馴染んでいく過程で、同級生たちの危うい力関係に巻き込まれていく。表面的な適応の裏に、暴力と同調圧力が蓄積していく構造を描く作品。閉じた学校空間の息苦しさと、少年たちの均衡が崩れる瞬間が読みどころになる。 第159回 芥川賞
- 032 2018 1R1分34秒 いちらうんどいっぷんさんじゅうよんびょう デビュー戦後に勝ちきれなくなった21歳のプロボクサーを語り手に、競技の身体感覚と自意識の停滞を描く小説。長年のトレーナーから離れ、変わり者のウメキチとの練習に入ることで、敗北や弱さをめぐる思考が少しずつ揺さぶられていく。ボクシングを勝敗だけでなく、身体・時間・他者との関係の問題として読ませるところに… 第160回 芥川賞
- 033 2017 ハッチとマーロウ はっちとまーろう 11歳の誕生日に母から「大人を卒業する」と告げられた双子のハッチとマーロウが、突然自分たちの生活を引き受けることになる長編。料理や服選び、双子であることの個性、父の不在といった日常の問いを通じて、子どもから大人へ向かう時間を軽やかに描く。かわいらしい双子の語り口の奥に、母子関係や自立の痛みが少しずつ…
- 034 2017 星の子 ほしのこ 中学3年生の林ちひろは、優しい両親に愛されて育った。だが両親は、生まれつき病弱だったちひろが「あやしい宗教」の水で救われたと信じて以来、その教団に深くのめり込んでいる。緑のジャージ姿で頭に濡れタオルを載せる両親は周囲の目を引き、姉は家を出て、親戚との関係も軋んでいく。一目惚れした新任の先生に、夜の公… 第39回 野間新人賞
- 035 2017 無敵の二人 むてきのふたり 『無敵の二人』は、中村航が二人でいることの強さと危うさを描く小説として整理できます。無敵という言葉は明るい連帯を示す一方、外の世界に対する閉じた感覚も含みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 036 2017 世界のすべてのさよなら せかいのすべてのさよなら 『世界のすべてのさよなら』は、30歳になった同級生四人のそれぞれの変化と別れを描く青春後小説です。かつて共有していた時間が、年齢や仕事、恋愛によって少しずつほどけていきます。青春の終わりではなく、その後に続く関係の変化を読ませる作品です。
- 037 2017 日曜日の人々(サンデー・ピープル) にちようびのひとびと さんでー ぴーぷる 『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』は、死に惹かれる心や自傷、摂食、不眠といった切迫した声を、複数の断片として響かせる青春小説。講談社は「他者に何かを伝えること」が救いになりうるのではないかという問いを掲げ、他者へ届く/届かない声を作品の中心に置いている。硬質で鋭い言葉の連なりが、孤独と希求を同時… 第39回 野間新人賞
- 038 2016 少女は花の肌をむく しょうじょははなのはだをむく 『少女は花の肌をむく』は、朝比奈あすかが少女の身体と成長への違和感を扱う小説として整理できます。花の肌を「むく」という題名は、柔らかさや美しさの裏にある痛みを想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 039 2016 ヒーロー! ひーろー 『ヒーロー!』は、ヒーローばかの男子と文化系女子がいじめゼロを目指す、痛快学園小説です。ヒーローへの憧れは、学校内の同調圧力やいじめに抗うための言葉として働きます。明るい語りの中に、正義を演じることの難しさと切実さがあります。
- 040 2016 まっぷたつの先生 まっぷたつのせんせい 『まっぷたつの先生』は、木村紅美が教師像や学びの場に裂け目を入れる小説として整理できます。先生というひとつの役割が「まっぷたつ」に割れる題名から、教育、権威、個人の内面の分裂が読み取れます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 041 2016 大きくなる日 おおきくなるひ 『大きくなる日』は、佐川光晴が子どもの成長と家族の時間を描く小説として整理できます。成長は単に年齢を重ねることではなく、家族や学校の中で自分の場所を見つけ直す経験として描かれます。日常的な出来事を通して、青春と家族の関係を読みやすくたどれる作品です。
- 042 2016 しんせかい しんせかい 19歳のスミトは、神戸からフェリーと汽車を乗り継ぎ、北海道の【谷】で脚本家の【先生】が主宰する私塾に二期生として入る。俳優や脚本家を志す年齢も経歴も様々な仲間たちとの共同生活は、しかし稽古よりも、施設造りや農作業、馬の世話といった肉体労働に明け暮れるものだった。倉本聰主宰の富良野塾での著者自身の体験… 第156回 芥川賞
- 043 2016 青が破れる あおがやぶれる ボクサーになりたいがなれない青年・秋吉を中心に、恋愛、友人関係、死の予感が交錯する青春小説。ジムでのスパーリングや不倫関係、病床の友人の恋人への見舞いを通じて、若者たちの不安定な生が描かれる。短い枚数の中で、身体の衝動と喪失感を結びつけるデビュー作。 第53回 文藝賞
- 044 2016 二人組み ふたりぐみ 『二人組み』は、鴻池留衣のデビュー作で、第48回新潮新人賞受賞作。新潮社の『ナイス・エイジ』書籍ページでは、啓蒙欲と性欲をこじらせた男子中学生が暴走する作品として収録紹介されている。同ページ掲載の倉本さおり書評は、ほとんど返答しない女子生徒を前に主人公の饒舌が上滑りし、言葉と関係性の不気味で滑稽な姿… 第48回 新潮新人賞
- 045 2015 あこがれ あこがれ 『あこがれ』は、小学生の麦彦とヘガティーの友情と淡い憧れを描く川上未映子の連作長篇です。子どもの視点を通じて、名前、身体、家族への違和感が瑞々しく描かれます。明るい成長物語であると同時に、他者になりたい気持ちの切実さを読む作品です。
- 046 2015 学校の近くの家 がっこうのちかくのいえ 『学校の近くの家』は、青木淳悟が学校と家という近接した場所から、子どもや地域の記憶を描く小説として整理できます。近いはずの場所同士の間に、共同体の視線や距離が生まれます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 047 2015 火花 ひばな 売れない若手漫才師の徳永は、熱海の花火大会の営業で出会った先輩芸人・神谷の才能と破天荒な生き方に惹かれ、弟子にしてほしいと申し出る。神谷の伝記を書くという条件で交流が始まり、二人は東京の街を飲み歩きながら笑いの本質をめぐる対話を重ねていく。やがて徳永のコンビは少しずつ世に出る一方、笑いに純粋すぎる神… 第153回 芥川賞
- 048 2015 残された者たち のこされたものたち 『残された者たち』は、過疎の集落・潮の浦の分校を舞台に、代用教員アンナと生徒たちの日常をユーモラスに描く文庫オリジナル作品です。小さな共同体に残る人びとの生活から、地方、教育、記憶の問題が見えてきます。大きな事件よりも、場に残る声や関係の細部を読む作品です。
- 049 2015 十七八より じゅうななはちより 塾講師として働く作者の経験も背景に、十代後半の言葉やリズムをすくい取るデビュー作。若者の会話や身振りを手がかりに、青春の不安定さと都市生活の距離感を描く。のちの乗代作品につながる、観察と文体への関心が見える作品として位置づけられる。
- 050 2014 きょうのできごと、十年後 きょうのできごと、じゅうねんご 『きょうのできごと、十年後』は、柴崎友香のデビュー作『きょうのできごと』の登場人物たちの十年後を描く続篇です。若さの一日の空気は、時間を経た生活、仕事、関係の変化として戻ってきます。大事件ではなく、都市のなかで少しずつ変わる人間関係を読む作品です。
- 051 2014 おれたちの故郷 おれたちのふるさと 『おれたちの故郷』は、佐川光晴が少年たちの成長と場所への思いを描く小説です。故郷は単なる懐かしい場所ではなく、十代の人物が他者と併走しながら自分を作る場として現れます。青春と共同性を、まっすぐな語りで読ませる作品です。
- 052 2014 鉄童の旅 てつどうのたび 『鉄童の旅』は、佐川光晴が鉄道と少年の移動を結びつける成長小説として整理できます。旅は遠くへ行くことだけでなく、自分の居場所や家族との距離を測る経験になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 053 2014 アルタッドに捧ぐ あるたっどにささぐ 小説を書いている本間の原稿用紙の上で、作中の少年が死に、その少年が飼っていたトカゲのアルタッドが現れるところから始まる。現実の生活と書かれた虚構が継ぎ目なく接続され、創作することそのものが物語の中心に置かれる。青春小説でありながら、虚構の根源へ向かうメタフィクションとして読める。 第51回 文藝賞
- 054 2013 大地のゲーム だいちのゲーム 『大地のゲーム』は、大震災後の近未来の大学キャンパスを舞台に、次の揺れを待つ若者たちを描く綿矢りさの長篇です。災害は出来事として終わらず、身体感覚や人間関係の底に残り続けます。青春小説の形を取りながら、世界の足場が割れる感覚を言葉にする作品です。
- 055 2013 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 しきさいをもたないたざきつくると、かれのじゅんれいのとし 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、36歳の多崎つくるが高校時代の突然の絶交の謎をたどる長篇です。名古屋、東京、フィンランドへ向かう旅は、記憶の欠落と自己像の空白を埋める巡礼として進みます。抑制された語りで、友情、喪失、回復不能な時間を扱います。
- 056 2013 世界泥棒 せかいどろぼう 放課後の教室で、男子二人が実弾入りの銃を使って死ぬまで撃ち合う「決闘」が行われるという設定から始まる。決闘を取り仕切る百瀬くんの存在をめぐり、学校という日常空間に戦争の論理が持ち込まれる。暴力を制度化した寓話として、現代の戦争文学を試みる作品。 第50回 文藝賞
- 057 2012 プールサイドの彼方 ぷーるさいどのかなた 『プールサイドの彼方』は、水辺の境界性を背景に、若い人物の距離感や将来への不安を描く朝比奈あすかの小説です。プールサイドは日常と非日常、身体と視線が交差する場所として機能します。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 058 2012 ひらいて ひらいて 『ひらいて』は、片想いの相手とその恋人の関係に介入していく女子高生・愛の暴走を描く綿矢りさの青春小説です。恋は純粋な感情ではなく、他者の身体や秘密へ踏み込む衝動として描かれます。学校という狭い共同体のなかで、恋愛、性、支配欲が鋭く交差します。
- 059 2012 ブラスデイズ ぶらすでいず 『ブラスデイズ』は、吹奏楽や音楽活動を思わせる題名を通じて、青春と集団の時間を描く中山智幸の小説です。音を合わせる行為は、個人の感情と共同体の規律を同時に浮かび上がらせます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 060 2012 しろいろの街の、その骨の体温の しろいろのまちの、そのほねのたいおんの 『しろいろの街の、その骨の体温の』は、ニュータウンで思春期を迎える結佳を通じて、スクールカースト、性の目覚め、身体への違和感を描く村田沙耶香の長編です。白い街の均質さは、子どもたちの序列や欲望をかえって際立たせます。学校と身体の圧力を、息苦しい成長の物語として読む作品です。 第26回 三島賞
- 061 2012 トリガール! とりがーる! 『トリガール!』は、人力飛行機サークルに入った女子大生を描く中村航の青春スポーツ小説です。ものづくりと飛行への挑戦は、仲間との衝突や自己認識の変化と結びつきます。理系サークルの共同作業を通じて、青春、技術、集団の熱を描く作品です。
- 062 2011 BANG! BANG! BANG! ばんばんばん 『BANG! BANG! BANG!』は、題名の破裂音が示すように、若い人物の感情や関係の衝突を強く響かせる朝比奈あすかの小説です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないが、青春の勢いと暴発する不安を読む作品として暫定的に整理できます。軽快さと息苦しさが併存する読み味です。
- 063 2011 こちらあみ子 こちらあみこ 『こちらあみ子』は、周囲と噛み合わない少女あみ子の言動を通じて、家族、学校、共同体の残酷さを描く今村夏子のデビュー単行本です。純真さは美談としてではなく、他者とのずれを増幅する力として働きます。簡潔な文体のなかで、笑いと痛みが同時に立ち上がる作品です。 第24回 三島賞
- 064 2011 おれたちの青空 おれたちのあおぞら 『おれたちの青空』は、佐川光晴が若者たちの生活、家族、社会の条件を描く小説です。青空という明るい像の下で、人物たちは貧しさや家庭の問題から完全には自由になれません。青春小説のかたちを取りながら、生活の切実さを読む作品です。
- 065 2011 「ワタクシハ」 ワタクシハ 『「ワタクシハ」』は、就職活動に翻弄される元バンドマンの大学生を描く羽田圭介の就活小説です。自己PRや面接の言葉が、主人公の音楽への未練や自己像をゆがめていきます。労働へ入る前の儀礼としての就活を、乾いた違和感とともに読む作品です。
- 066 2011 私のいない高校 わたしのいないこうこう 『私のいない高校』は、1992年の小学校を舞台に、校舎から見える家に住む子供の視点で綴られる青木淳悟の連作です。学校という共同体のなかにいるようでいない感覚が、記憶と観察のずれとして積み上がります。子供の視界を通じて、同調圧力と孤立が静かに浮かぶ作品です。 第25回 三島賞
- 067 2011 クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰 くりすたるう゛ぁりーにふりそそぐはい 『クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰』は、東京大学医学部に進む秀才と、スポーツ推薦で進学した同世代の若者たちが交錯する青春群像です。知性、身体、暴力、階層の断絶が鋭角的に描かれます。若者の成功と孤立を、制度や身体能力の違いから照らす作品です。 第48回 文藝賞
- 068 2010 あのとき始まったことのすべて あのときはじまったことのすべて 『あのとき始まったことのすべて』は、過去のある瞬間から始まった感情や関係を振り返る中村航の小説です。恋愛や青春の出来事は、後になって意味を変え、現在の語りのなかで再構成されます。平易な文体で、記憶のなかの始まりをたどる読み味があります。
- 069 2010 月曜日の朝へ げつようびのあさへ 『月曜日の朝へ』は、週の始まりである月曜の朝に向かう感覚を通じて、若い人物の生活と不安を描く朝比奈あすかの作品です。日常の時間割や働くことの圧力が、人物の気持ちを少しずつ追い込みます。平明な語りのなかに、青春から社会へ出る時期の息苦しさが表れます。
- 070 2010 団地の女学生 だんちのじょがくせい 『団地の女学生』は、団地という生活空間と女学生の視点を結びつけ、家族、学校、性をめぐる閉塞を描く伏見憲明の小説です。集合住宅の近さは共同性であると同時に、見られることや噂の圧力にもなります。成長の物語として、都市郊外の生活感とジェンダーの問題を読めます。
- 071 2010 アクアノートとクラゲの涙 あくあのーととくらげのなみだ 『アクアノートとクラゲの涙』は、水中を思わせるイメージとクラゲの浮遊感を通じて、記憶や孤独を描く樋口直哉の小説です。題名の柔らかい幻想性は、現実から少し離れた視界を与えます。公開資料で内容細部を確認できていないため、書誌と題名から確実に言える範囲での暫定紹介です。
- 072 2010 苦役列車 くえきれっしゃ 中卒で家を出た19歳の北町貫多は、東京の埠頭で冷凍倉庫から荷を運び出す日雇い仕事でその日暮らしを続けている。日当はすぐに酒と風俗に消え、家賃は滞納し、人付き合いもない。そんな彼が職場で専門学校生の日下部と知り合い、初めて友人と呼べそうな存在を得るが、劣等感と過剰な自意識がその関係に影を落としていく… 第144回 芥川賞
- 073 2010 ミート・ザ・ビート ミート・ザ・ビート 『ミート・ザ・ビート』は、郊外で暮らすフリーターの青年の日常を、音楽的なリズムを持つ文体で描く羽田圭介の小説です。労働と無為のあいだを揺れる生活に、ビートのような反復と焦燥が重なります。若い身体、貧困、郊外の閉塞を読む作品です。
- 074 2010 おれのおばさん おれのおばさん 『おれのおばさん』は、少年院出身の少年が叔母の営む学習塾に引き取られ、居場所を作っていく佐川光晴の小説です。家族の外側にあるケアの場が、少年の成長と社会復帰を支えます。教育、貧困、家族の再編を、少年の視点に近い手触りで読む作品です。
- 075 2010 それいゆ それいゆ 『それいゆ』は、題名が示す光や明るさとは対照的に、若い人物の自己認識や恋愛の揺れをたどる小説として整理できます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌情報と作者の同時期作品の文脈に基づく暫定的な紹介です。明るさに向かう感覚と、都市的な孤独のあいだに読みどころがあります。
- 076 2010 アンダスタンド・メイビー あんだすたんど・めいびー 『アンダスタンド・メイビー』は、島本理生が若い女性の恋愛、傷つき、自己理解を長い時間の流れのなかで描く長編です。題名の「たぶん理解する」という感覚どおり、人物は関係を即座に割り切れず、痛みを抱えたまま自分の輪郭を探します。恋愛小説であると同時に、青春期から大人へ向かうアイデンティティの物語です。
- 077 2010 きことわ きことわ 『きことわ』は、葉山の別荘で幼少期を共にした貴子と永遠子が、二十五年後に別荘の解体を機に再会する作品です。夢と記憶が重なり、現在の時間の中にかつての少女時代が静かに蘇ります。大きな事件よりも、時間の層と二人の距離を繊細に読む作品です。 第144回 芥川賞
- 078 2009 かけら かけら 『かけら』は、日常の小さな破片のような出来事から、若い人物の孤独や関係の変化をすくい上げる青山七恵の作品です。簡潔な語りは感情を説明しすぎず、読者に余白を残します。家族や恋愛のはっきりしない揺れを、静かな手ざわりで読む小説です。
- 079 2009 魔法使いクラブ まほうつかいくらぶ 『魔法使いクラブ』は、若い人びとの小さな結びつきや願望を、魔法という言葉の軽やかさで包む作品です。現実を大きく変える力ではなく、日々を少しだけ違って見せる想像力が中心になります。青山七恵らしい静かな文体で、青春と孤独のあいだを描きます。
- 080 2009 ぼくたちは大人になる ぼくたちはおとなになる 『ぼくたちは大人になる』は、成長することの期待と重さを、若い人物の生活感覚から描く佐川光晴の作品です。題名はまっすぐですが、そこには家族や社会の中で大人にならざるをえない苦さも含まれます。青春を懐かしむより、労働や家族へ向かう時間として捉える作品です。
- 081 2009 ヘヴン ヘヴン 『ヘヴン』は、いじめを受ける「僕」と同級生コジマの連帯を通じて、暴力と倫理を問う長篇です。弱さを共有する二人の関係は救いに見えますが、暴力を意味づけて耐えることの危うさも浮かび上がります。身体の痛みと思想的な問いが同時に迫る、川上未映子の代表的長篇の一つです。
- 082 2009 ヒマワリのキス ひまわりのきす 『ヒマワリのキス』は、明るい題名の裏側に、恋愛や記憶の痛みを抱えた人物を置く樋口直哉の作品です。ひまわりのイメージは夏や若さを連想させますが、そこには過ぎ去った時間を取り戻せない感覚も重なります。今回の確認は書誌中心のため、細かな筋は追加調査が必要です。
- 083 2009 犬はいつも足元にいて いぬはいつもあしもとにいて 中学生の主人公の日常に、犬が公園の茂みから探り当てた正体不明の「肉」が入り込んでくる。誰も名指せないその物体は、思春期の鬱屈や家族のぎこちなさと響き合いながら、生き物の生々しさと死の気配を物語の中心に居座らせる。登場人物はどこか不快なのに目を離せないという独特の距離感で語られ、生命の循環を思わせる視… 第46回 文藝賞
- 084 2009 白い紙 しろいかみ イラン・イラク戦争下のイランの地方都市。成績優秀な高校生の男女が、勉強を口実に心を通わせていく。だが前線が近づくにつれ、家族の事情と戦争の影がふたりの未来を静かに引き裂いていく。日本語を母語としない書き手が、平易で簡潔な日本語によって戦時下の日常と若い恋の痛みを描き、戦争文学と青春小説を重ねてみせた… 第108回 文學界新人賞
- 085 2009 海猫ツリーハウス うみねこつりーはうす 海猫の鳴き交わす青森県八戸。25歳の亮介は服飾デザイナーの夢を抱えつつ家業を手伝い、師匠のもとでツリーハウス作りに励んでいる。そこへ、自給自足の暮らしを求めて都会から人気者の兄・慎平が帰ってくると、田舎町の均衡は静かに乱れはじめる。標準語に回収されない南部弁の語りが土地の身体感覚をそのまま運び、地方… 第33回 すばる文学賞
- 086 2009 よもぎ学園高等学校蹴球部 よもぎがくえんこうとうがっこうしゅうきゅうぶ 『よもぎ学園高等学校蹴球部』は、高校サッカー部を題材に、競技、学校、青春の共同体を描く松波太郎の長篇です。勝敗だけでなく、集団のなかで身体を動かすこと、仲間や制度に巻き込まれることが主題になります。スポーツ小説の形を取りながら、若者の同調圧力や孤独も見えてくる作品です。
- 087 2008 やさしいため息 やさしいためいき 『やさしいため息』は、芥川賞受賞後第一作として発表され、日常のなかで揺れる若い人物の息づかいを静かに描く作品です。家族や生活の小さな変化が、はっきりした事件よりも大きく人物の感情を動かします。青山七恵らしい簡潔な文体が、孤独と自立のあいだの時間をすくい取ります。
- 088 2008 僕の好きな人が、よく眠れますように ぼくのすきなひとが、よくねむれますように 『僕の好きな人が、よく眠れますように』は、好きな人の眠りを願うという柔らかな感情から、恋愛と不安を描く中村航の小説です。眠ることは身体の平穏であり、相手を思う距離の象徴でもあります。若い恋愛のまぶしさと、相手に触れきれない切なさを併せ持つ作品です。
- 089 2008 ぼくは落ち着きがない ぼくはおちつきがない 『ぼくは落ち着きがない』は、学校や図書室の空気を背景に、落ち着かなさを抱える若い人物たちの会話と距離を描く作品です。長嶋有らしい少しずれたユーモアが、青春の居場所のなさを軽く見せます。図書館的な静けさと、内側のざわつきの対比が読みどころです。
- 090 2008 走ル はしる 『走ル』は、高校生が自転車で北へ向かい続けるロードノベルです。走る身体の疲労と速度が、若い自意識や孤独をそのまま運んでいきます。目的地よりも、移動し続ける時間のなかで自分の輪郭が変わるところが読みどころです。
- 091 2008 星空の下のひなた。 ほしぞらのしたのひなた 『星空の下のひなた。』は、星空とひなたという対照的なイメージを重ね、若い人物の恋愛や孤独を描く作品として整理できます。明るさと暗さが同じ場面に同居し、日常のなかで見落とされがちな感情をすくいます。書誌以外の資料は少なく、今後は紹介記事・書評で精度を上げたい作品です。
- 092 2008 金色のゆりかご きんいろのゆりかご 『金色のゆりかご』は、ゆりかごのイメージが示す家族や子どもの時間を、現実の生活のなかで見つめる作品です。佐川光晴らしい社会への視線が、保護されるべき場所とそこから漏れる不安を描きます。家族の温かさと脆さを同時に読む小説として整理できます。
- 093 2008 子守唄しか聞こえない こもりうたしかきこえない 田舎町に暮らす女子高生・美里は、男友達4人に囲まれた一見満ち足りた日々を送っている。だが「愚鈍な真沙子」と見下していた同級生が自分に執着し、つきまとうようになると、保っていたはずのエゴの均衡が崩れはじめる。幼い日の海の記憶や謎めいた老婆との出会いを織り込みながら、思春期の自意識の残酷さと出口のなさを… 第51回 群像新人賞
- 094 2008 マウス マウス 『マウス』は、教室で息をひそめて生きる少女・律と、転校生との関係を描く長編です。学校という共同体のなかで、目立たず生きることと、誰かに見つけられることの怖さが描かれます。村田沙耶香らしく、「普通」に合わせる身体感覚が息苦しく異化されます。
- 095 2008 長い終わりが始まる ながいおわりがはじまる 『長い終わりが始まる』は、終わりが一瞬ではなく長く続いていく感覚を、恋愛や生活の変化に重ねる作品です。山崎ナオコーラらしい平明な語りが、別れや変化を大げさにせず日常の速度で見せます。終わりを迎えるまでの時間そのものを読む小説です。
- 096 2008 空で歌う そらでうたう 『空で歌う』は、歌うことや空を見上げる感覚を通して、若い人物の孤独と希望を描く作品として整理できます。芸術や声は、現実から逃げるためだけでなく、誰かに届くための手段になります。書誌以外の資料は少なく、今後は掲載誌・書評で主題を精査したい作品です。
- 097 2008 時が滲む朝 ときがにじむあさ 『時が滲む朝』は、天安門事件前後の中国に生きる若者たちの青春と政治の時間を描く作品です。留学生作家である楊逸の日本語が、祖国の記憶、民主化への希望、移動する身体の感覚を重ねます。個人の朝の光景に、歴史が滲み出してくる点が読みどころです。 第139回 芥川賞
- 098 2008 ミュージック・ブレス・ユー!! みゅーじっく・ぶれす・ゆー 高校3年生のオケタニアザミが「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」とパンクロックを支えに「ぐだぐだの日常」を過ごす青春小説。津村記久子初の書き下ろし長編。第30回野間文芸新人賞受賞作。 第30回 野間新人賞
- 099 2007 青色讃歌 あおいろさんか 28歳の高橋は、同棲する彼女の収入で暮らしている。いなくなった猫を探し、気の進まない仕事を探す——その二つの「探しもの」をめぐるだけの日々が、妙な可笑しみとともに流れていく。働かない男のだめさを断罪も美化もせず、脱力したユーモアで肯定してみせる青春小説で、「読ませる、笑わせる、唸らせる」と選考委員の… 第44回 文藝賞
- 100 2007 ひとり日和 ひとりびより 『ひとり日和』は、二十歳の知寿が高齢の遠縁・吟子さんと同居し、働きながら自立の感覚を少しずつ探る作品です。老いと若さ、家族ではない同居、ひとりでいることの自由と寂しさが、淡々とした語りで描かれます。大きな成長物語ではなく、日々の観察から生活の輪郭が変わるところが読みどころです。 第136回 芥川賞
- 101 2007 アウレリャーノがやってくる あうれりゃーのがやってくる 岩手出身のうっとりするほどの美少年・天地遍人は、高校卒業と同時に姉を頼って上京し、路上で詩を代筆する「代理詩人」を始める。やがて文芸同人「破滅派」に加入し、リーダー・紙上大兄皇子ら風変わりな同人たちにあてられて文芸活動に没頭するが、皇子の恋人・深川潮への恋心と同人の経営難が破滅を呼び寄せる。実在のオ… 第39回 新潮新人賞
- 102 2007 クローバー くろーばー 『クローバー』は、島本理生らしく、恋愛や記憶の細部から若い人物の揺れを描く作品です。幸運を連想させる題名に対して、語りは関係の不安定さや選び取れない気持ちにも目を向けます。淡い感情を、日常の光景のなかで少しずつ変化させる読み味があります。
- 103 2007 大人ドロップ おとなどろっぷ 『大人ドロップ』は、若者が大人になる前後の感情を、学校や地方の時間のなかで描く青春小説です。恋愛や友情の明るさだけでなく、過ぎてしまう時間への痛みが語りの底にあります。簡潔な文体で、思い出になる直前の出来事をすくい取る作品として読めます。
- 104 2007 図書準備室 としょじゅんびしつ 『図書準備室』は、高校卒業後にひきこもり続ける男の独白を中心に、閉じた場所と停滞する時間を描く第一作品集です。図書準備室という学校の余白のような場所が、社会へ出られない人物の内面と重なります。田中慎弥の硬質な語りが、青春の後に残った孤独を乾いた感触で示します。
- 105 2007 夢を与える ゆめをあたえる 『夢を与える』は、子役からCMタレントとして成長する少女・夕子の栄光と転落を描く長編です。芸能の世界が、家族、欲望、消費される身体を映す場所として機能します。若さや人気が商品化される過程を、綿矢りさらしい鋭い観察で追う作品です。
- 106 2006 煙幕 えんまく 14歳の「わたし」は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、「14年戦争を生き抜いてきた」という感慨を抱いて生きている。理科教師の川端、クラスメイトの衣川、母を捨てた川端と名乗る男、プロデューサー——複数の登場人物が重なり合い、誰が誰なのか分からないまま視点が次々と入れ替わる。読者を文字どおり煙に巻く実験…
- 107 2006 不思議の国のペニス ふしぎのくにのペニス 『不思議の国のペニス』は、性欲に振り回される男子高校生の日常を、露骨さと滑稽さを交えて描く作品です。青春小説の枠組みを使いながら、身体の変化や欲望を制御できない不安を前面に出しています。題名の挑発性に対して、語りは若い自意識のぎこちなさを追うところに読みどころがあります。
- 108 2006 ヘンリエッタ へんりえった みーさん、あきえさん、そして「わたし」。女3人は「ヘンリエッタ」に守られながら、ちょっと奇妙な共同生活を送っている。血縁とも友情ともつかない女たちの暮らしのディテールを、幼さの残るまっすぐな言葉でつづり、閉じた生活圏のやわらかさと危うさを同時に感じさせる。高校在学中の17歳が書いたデビュー作として注… 第43回 文藝賞
- 109 2006 月とアルマジロ つきとあるまじろ 『月とアルマジロ』は、現実的な日常に奇妙なイメージを差し込み、若い人物の孤独や自己意識を照らす作品です。月とアルマジロという取り合わせが示すように、遠いものと身近なものの距離感が作品の手ざわりを作っています。簡潔な語りの奥に、寓話的なずれを読む楽しさがあります。
- 110 2006 公園 こうえん 世界の縮図のような公園から始まり、下田へ、ニューヨークへ、そしてグラウンド・ゼロへ。大学生の「ぼく」と友人オノサは、これといった目的もなく移動を続ける。「で、」という接続詞による突飛な場面転換を重ね、「なんとなく」の気分が全編に漂う独特の語りで、9.11後の世界をふわふわと浮遊する若者の感覚を写し取… 第43回 文藝賞
- 111 2006 ポータブル・パレード ぽーたぶる・ぱれーど 第38回新潮新人賞(小説部門)受賞作。同回の評論部門は受賞作なしだった。日本大学芸術学部出身で当時27歳の吉田直美のデビュー作で、「新潮」2006年11月号に全文掲載された。受賞後に単行本化されることはなく、著者のその後の作品発表の記録も乏しいため、雑誌掲載のみで読まれた「幻の受賞作」に近い存在とな… 第38回 新潮新人賞
- 112 2006 その街の今は そのまちのいまは 『その街の今は』は、カフェで働く歌ちゃんが古い写真に写る大阪に惹かれ、街の過去と現在を行き来する作品です。写真という媒体が、個人の記憶だけでなく都市の時間をたどる装置になります。柴崎友香らしい歩くような文体で、街を見ることと自分の現在を確かめることが重なります。
- 113 2006 絶対、最強の恋のうた ぜったい、さいきょうのこいのうた 『絶対、最強の恋のうた』は、恋愛の高揚と自意識のまぶしさを正面から扱う中村航の小説です。強い題名とは裏腹に、語りは若い人物の不安や不器用さにも寄り添います。恋を歌や物語として信じたい気持ちと、現実の揺らぎの間を読む作品です。
- 114 2005 BGM びーじーえむ 現役教師として文藝賞を受賞した岡田智彦の、受賞後第一作として発表された作品。題名の「BGM」は、人物の感情を大きな事件で説明するのではなく、日常の背後で鳴り続ける気配として捉える読みを誘う。若い感覚と学校・生活の現場が交差する、2000年代文藝賞周辺の一作である。
- 115 2005 フルタイムライフ フルタイムライフ 新社会人として働きはじめた春子の日常を、会社の時間、疲れ、同僚との距離感から等身大に描く長編。仕事が劇的な自己実現になるのではなく、生活の大半を占める時間として淡々と積み上がる。柴崎友香らしい心情に寄りすぎない文体で、働きはじめの戸惑いと観察が描かれる。
- 116 2005 平成マシンガンズ へいせいましんがんず 母は家を出て行き、家には横暴な父とその愛人。学校は戦場のようで、教室に居場所はない。逃げ場のない女子中学生の夢に死神が降臨し、マシンガンを手渡す——。現役中学生の書き手が、ローティーンの苛立ちと無力感を、撃ちまくるような言葉のスピードで叩きつけた。マシンガンという暴力的なイメージは実際の銃撃ではなく… 第42回 文藝賞
- 117 2005 一千一秒の日々 いっせんいちびょうのひび 恋愛や日常の短い時間を、きらめくような細部として集めた島本理生の作品集。大きな物語へ急がず、一瞬の表情や会話のずれが、人物の孤独や期待を浮かび上がらせる。若い恋の瑞々しさと、時間が過ぎていくことへの切なさが題名に重なる。
- 118 2005 窓の灯 まどのひ 大学を辞めた「私」は、時代に取り残されたような喫茶店の二階に住み込み、店を営む奔放な女主人のもとで働いている。日課は、向かいの部屋の窓の中の生活を覗き見ること。やがて視線は夜の街の散歩で垣間見える家々の窓へと広がっていく。覗くことのうしろめたさとゆるやかな官能を、抑制の効いた静かな文体でつづり、他人… 第42回 文藝賞
- 119 2005 ナラタージュ ならたーじゅ かつての恩師への思いを断ち切れない女子大生が、過去の記憶と現在の恋の間で揺れる長篇。恋愛の美しさよりも、戻れない時間に縛られる痛みが中心に置かれている。語りは静かだが、人物の未練や罪悪感が長く尾を引き、島本理生の代表的な恋愛小説として読まれてきた。
- 120 2005 さりぎわの歩き方 さりぎわのあるきかた 29歳の「僕」は、青春の終わりを記念するかのように一泊の合コンに参加する。怪しげな新事業の話、旧友の転落と自殺——若さの賞味期限が切れかかった男たちの周りで起こる出来事を、「こういうのがお望みのドラマなんだろう?」と斜に構えた語りで突き放しながら、それでも去り際の身の処し方を探っていく。まっとうな成… 第101回 文學界新人賞
- 121 2005 逃亡くそたわけ とうぼうくそたわけ 『逃亡くそたわけ』は、精神病院を抜け出した二人の若者が、博多から九州を北へ進む逃避行を描く小説です。方言を含む勢いのある語りが、病や孤立を重く固定せず、滑稽さと切実さの両方で走らせます。逃げることが同時に自分の輪郭を確かめることになる、青春ロードノベルとして読めます。
- 122 2004 青空感傷ツアー あおぞらかんしょうツアー 身勝手で魅力的な親友・音生に振り回されながら、「私」が各地を巡るロードノベル。旅は爽快な逃避であると同時に、親友への憧れや苛立ち、自分の輪郭の曖昧さを映し出す時間でもある。柴崎友香らしい移動の感覚と会話のリズムで、若い女性同士の距離を軽やかに描く。
- 123 2004 ぐるぐるまわるすべり台 ぐるぐるまわるすべりだい 失意の青年が、バンドや仲間との関係の中で少しずつ再生へ向かう連作短篇集。若者の閉塞感を、深刻さだけでなく、音楽や会話の軽さ、少しずつ回り続ける遊具のような時間感覚で描く。中村航の青春小説としての明るさと、何者にもなれない痛みが並走する。 第26回 野間新人賞
- 124 2004 High and dry(はつ恋) ハイ・アンド・ドライ(はつこい) 14歳の少女・夕子の、年上の男性への初恋を描く長編。年齢差のある関係を、危うさよりも、少女の感覚が外界へ開かれていく時間として追っていく。吉本ばななの作品らしく、恋の痛みと透明な夢見心地が同じ調子で語られる。
- 125 2004 人のセックスを笑うな ひとのせっくすをわらうな 美術専門学校に通う19歳の「オレ」は、20歳年上の講師・ユリと恋に落ちる。年の差も、ユリに夫がいることも、ふたりの関係のゆるさを変えはしないが、恋はやがて静かに終わっていく。性愛を声高に語らず、軽くやわらかい口語の文体で、若さの側から見た年上の女性のかわいさと残酷さをすくいとる。タイトルの挑発性と中… 第41回 文藝賞
- 126 2004 野ブタ。をプロデュース のぶた。をぷろでゅーす クラスの人気者を巧みに「演じる」高校生・桐谷修二は、いじめの標的になっている転校生・小谷信太=野ブタを人気者にプロデュースする計画を始める。教室という市場でキャラクターを売り出すゲームは成功していくが、演じることでしか居場所を作れない修二自身の空虚が次第に露わになる。スクールカーストと自己演出の時代… 第41回 文藝賞
- 127 2004 ショートカット ショートカット 柴崎友香が、都市の移動や人との距離を軽いタッチで描いた2004年刊行作。道を短く抜ける「ショートカット」の感覚は、場所だけでなく、関係や記憶へ近道を探す若い人物たちの姿にも重なる。淡い会話と細部の観察によって、日常の中にある変化の瞬間をすくう。
- 128 2004 タイムカプセル たいむかぷせる 過去にしまいこんだ感情や記憶を、現在の自分が開け直すようにたどる作品。若い人物の時間感覚を、懐かしさだけでなく、未来へ残してしまったものへの不安として描く。生田紗代のデビュー後の文脈では、青春の明るさと居場所のなさを同時に読む入口になる。
- 129 2003 ダンボールボートで海岸 だんぼーるぼーとでかいがん 自分を「ボク」と呼ぶ女性アオイ(あだ名はドラ)は、母が借金を残して突然失踪したため大学を休学する。女装が趣味のクロ、自称アーティストのハナら、周縁を漂う人々と関わりながら、ドラはダンボール製のボートで海=外の世界へ漕ぎ出すことを夢想する。濡れればすぐ沈む紙のボートというイメージに、前にも後ろにも進め… 第27回 すばる文学賞
- 130 2003 授乳 じゅにゅう 中学生の少女「私」は、母が選んだ冴えない家庭教師の青年に、嫌悪とも支配欲ともつかない倒錯した感情を抱き、「授乳」と呼ぶ秘密の行為へと彼を引き込んでいく。教育熱心な母への息苦しさ、性とも甘えともつかない身体感覚——のちに「コンビニ人間」へと結実する村田沙耶香の核、つまり「普通」とされる世界への違和を身…
- 131 2003 蹴りたい背中 けりたいせなか 高校に入学したばかりのハツ(長谷川初実)は、クラスの輪に加わることを拒み、余り者として過ごしている。同じく孤立しているにな川は、女性モデル「オリチャン」に病的なまでに夢中な少年。ハツはオリチャンに会ったことがある縁でにな川と関わるようになり、彼の無防備な背中を「蹴りたい」という奇妙な衝動を抱えていく… 第130回 芥川賞
- 132 2003 黒冷水 こくれいすい 弟の修作は兄・正気の部屋を毎日執拗に「家捜し」し、兄はそれに気づいて巧妙な罠と報復を仕掛ける。家庭内の些細な悪意の応酬は、黒く冷たい水のような憎悪へと際限なくエスカレートしていく——。思春期の自意識と家族間の生理的な憎しみを、17歳の現役高校生がここまで執拗に書き切ったという事実そのものが衝撃を与え… 第40回 文藝賞
- 133 2003 夏休み なつやすみ 就職も進路も決まりきらない青年が、夏の時間の中で宙ぶらりんの自分を抱えたまま過ごす。中村航らしい軽い会話と瑞々しい感覚で、何者にもなれない時期の切なさを描く。大きな転機よりも、季節の空気や友人関係の揺れが、青春の停滞と再生の気配を作っている。
- 134 2003 オアシス おあしす 愛用の青い自転車を盗まれたフリーターの「私」は、呆然としたままそれを探す日々を送る。家には家事を放棄してしまった母と、その母に「パラサイト」されているOLの姉・サキ。女三人の奇妙な家族の均衡が、自転車の喪失を起点に少しずつあらわになっていく。母を疎みながら捨てられない娘たちの姿は「現代の新種の姥捨て… 第40回 文藝賞
- 135 2002 ジャイロ! じゃいろ 「僕」と友人・猟平が繰り返す「危険なキャッチボール」が、ついに猟平の家を全焼させてしまう——少年たちの遊びと暴力が地続きになった世界を、熱を孕んだ文体で一気に語る。選考では、世界へのルサンチマン(鬱屈した恨み)を呪詛のような語りで繋ぎ留めた「現代の悪童日記」と評された。受賞の翌年まで『群像』に短篇を… 第45回 群像新人賞
- 136 2002 キッズ アー オールライト きっず あー おーるらいと やくざの愛人の息子として育った「オレ」は、親父の失脚をきっかけに組織同士の闘いへと足を踏み入れてしまう。手当たり次第に何でも破壊するビリィの右手など、過剰でマンガ的なイメージを叩きつけながら、暴力の世界のただなかにいる子どもたちの姿を疾走感のある語りで描く。現役の小学校教師が書いたアウトロー小説とい… 第39回 文藝賞
- 137 2002 リトル・バイ・リトル りとる・ばい・りとる 母の不在と継父との関係に揺れる少女の成長を描く島本理生の初期長編。十代の語り手が、家族への違和感、恋愛以前の孤独、日常の不安を少しずつ言葉にしていく。静かな文体で、傷つきやすい感情の変化を丁寧に追う作品。 第25回 野間新人賞
- 138 2002 猛スピードで母は もうすぴーどでははは 芥川賞受賞作「猛スピードで母は」と、デビュー作「サイドカーに犬」を収める短篇集。子どもの視点から、奔放な母や家族の変化を、過度に説明せず鮮やかな場面で捉える。ユーモアと痛切さが同居し、家族小説を軽やかな速度で更新した作品。 第126回 芥川賞
- 139 2002 リレキショ りれきしょ 過去を捨てた19歳の「僕」は、「姉さん」と名乗る女性に拾われ、「半沢良」という新しい名前と居場所をもらう。深夜のガソリンスタンドでアルバイトをしながら、白紙に「どこへでもいける切符」を持つ自分の履歴書を書いてみる——。何者でもなくなった青年が、淡い人間関係のなかでもう一度自分の輪郭をなぞり直していく… 第39回 文藝賞
- 140 2002 世界がはじまる朝 せかいがはじまるあさ 黒田晶が2002年に刊行した作品で、河出書房新社版の書誌が確認できる。公開情報が限られるため内容細部は保留するが、デビュー期の若い書き手による、世界が開ける瞬間や関係の始まりをめぐる作品として暫定整理する。文藝賞周辺の2000年代初頭の感覚を追う上で補完的な一冊。
- 141 2002 死せる魂の幻想 しせるたましいのげんそう お節介な祖母と二人暮らしで、アパートと大学を往復するだけの真面目な女子大生・千明。女友達はいても恋人はいない彼女の日常に潜む孤独感と、他者との関係への切実な渇望を描く。後半、奇妙な雨宿りの場面で物語は一変し、卑近な日常が途方もない神々しさへと接続される。現役京大生だった22歳の作者によるデビュー作で… 第45回 群像新人賞
- 142 2002 スチール すちーる 男性客相手の風俗のアルバイトで日銭を得て、新宿の24時間営業のロッカールームで夜を過ごす17歳の高校生。ある日見かけた中年男性に惹かれ、彼が経営する倉庫で働き始めると、朗らかなパートの中年女性たちに囲まれて、少しずつ世の中との関わり方を学んでいく。だが、かつての「客」だった男が国語教師として学校に着… 第26回 すばる文学賞
- 143 2001 インストール いんすとーる 高校生活から突然降りてしまった17歳の朝子が、部屋の荷物を全部捨てたことをきっかけに、マンションの押入れに住み着くような小学生・かずよしと知り合い、拾った中古パソコンで風俗チャットの「バイト」を代行するようになる。インターネット黎明期の風俗チャットという際どい題材を扱いながら、筆致はあくまで軽やかで… 第38回 文藝賞
- 144 2001 サイドカーに犬 さいどかーにいぬ 小学四年生の夏、母が家出した薫の家に、父の知り合いである洋子さんが入り込んでくる。自転車を教えてくれ、缶コーヒーを飲み、堂々と振る舞う洋子さんと過ごしたひと夏を、大人になった薫が淡々と回想する。家庭の危機という湿りがちな題材を、軽やかでユーモラスな距離感と即物的なディテールで描き、深刻にならないのに… 第92回 文學界新人賞
- 145 2001 シルエット しるえっと 高校二年生の「私」を語り手に、人との出会いと別れ、恋愛にともなう心の揺れと痛みを、等身大の言葉で丁寧にすくいとった中篇。書いたのは当時現役高校生の島本理生で、十代の感受性をそのまま閉じ込めたような瑞々しさと、年齢に不釣り合いなほど抑制の効いた文章が同居している。痛みを声高に語らず、静かな観察として差…
- 146 2001 途中下車 とちゅうげしゃ 高橋文樹のデビュー作で、既存データでは幻冬舎NET学生文学賞大賞受賞作とされる。移動や途中下車のモチーフから、若い語り手が日常の経路を外れ、自分の居場所を探る作品として暫定整理する。公開情報が少ないため、内容紹介は今後の現物確認で補強したい。
- 147 2001 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? つぎのまちまで、きみはどんなうたをうたうの 柴崎友香の初期作品で、次の町へ向かう移動の感覚と、若い人々の会話や音楽の気配を描く。大きなドラマではなく、場所が変わるときの心の揺れ、友人関係の距離、都市の日常の質感が中心になる。後の柴崎作品に通じる、移動と観察の文学として読める。
- 148 2000 フリースタイルのいろんな話 ふりーすたいるのいろんなはなし 第43回群像新人文学賞(2000年)で、横田創「(世界記録)」の当選と並んで優秀作に選ばれた作品。『群像』2000年6月号に掲載されたが、単行本化はされておらず、作者・中井佑治のその後の著書も確認できないため、今日では掲載誌でしか読むことができない。「フリースタイル」を掲げる題名が示すとおり、定型に…
- 149 2000 希望の国のエクソダス きぼうのくにのエクソダス 中学生たちの集団不登校と、ネットワークを使った経済的自立を描く近未来小説。学校や国家に回収されない若者の集団が、情報技術と経済を武器に別の社会を作ろうとする。教育、労働、国家、テクノロジーを同時に扱う、2000年前後の不安と期待を映す作品。
- 150 2000 きょうのできごと きょうのできごと 京都で開かれた引っ越し祝いの飲み会に集まった若者たちの一夜を、複数の視点から描く柴崎友香のデビュー作。大きな事件よりも、会話、部屋の空気、街への移動が作る微細なずれを積み重ねる。日常の時間をそのまま文学の中心に置く、後の柴崎作品へつながる出発点。
- 151 2000 メイドインジャパン めいどいんじゃぱん 「この国にしか起こりえない少年犯罪」を題材に、リアルで残酷な殺人描写を、グルーヴ感のあるクールな文体で押し切った問題作。応募時の原題は「YOU LOVE US」で、単行本化に際して『メイドインジャパン』と改題された。1990年代末の少年犯罪報道の記憶が生々しい時期に、暴力を内側から描く若い書き手が現… 第37回 文藝賞
- 152 1999 Tiny, tiny たいにー たいにー 「わたし」「ぼく」「オレ」という三人の高校生のひと夏を淡々とした文体で描く。第122回芥川賞候補作。 第36回 文藝賞
- 153 1999 ロックンロールミシン ろっくんろーる みしん 会社員の主人公が高校時代の友人が旗揚げしたインディーズファッションブランド「ストロボ・ラッシュ」に関わるうち服作りに巻き込まれていく物語。ファッション業界経験を持つ作者の実感が生きた軽快な青春小説。第12回三島由紀夫賞受賞(堀江敏幸と同時)。 第12回 三島賞
- 154 1999 無情の世界 むじょうのせかい 「トライアングルズ」「無情の世界」「鏖(みなごろし)」の3短編を収録。表題作は深夜の公園で死体を発見した高校生の物語で、若者の鬱屈した暴力衝動と現代社会の無情を描く。阿部和重の前衛的・批評的な初期作風が凝縮されている。第21回野間文芸新人賞受賞(伊藤比呂美と同時)。 第21回 野間新人賞
- 155 1999 ミューズ みゅーず 十七歳の女子高生・美緒が矯正歯科医に恋する情動と身体感覚を鋭敏に描いた中篇。第122回芥川賞候補。岡崎祥久「楽天屋」と同時受賞した第22回野間文芸新人賞受賞作。 第22回 野間新人賞
- 156 1998 二匹 にひき 堕落犬と呼ばれる高校生を主人公に学園を舞台とした小説。ジャンクな日本語とクールな思考が特徴の前衛的デビュー作。後に六〇〇〇度の愛(三島賞)、冥土めぐり(芥川賞)へ続く鹿島田真希の出発点。 第35回 文藝賞
- 157 1997 最後の息子 さいごのむすこ 長崎から上京した若者が、新宿の中年ゲイ男性と同居するうちに互いの孤独と依存を見つめ合う中編。吉田修一のデビュー作であり、芥川賞候補ともなった。 第84回 文學界新人賞
- 158 1997 ラジオデイズ らじおでいず ファッション業界に身を置いた経験を持つ作者によるデビュー小説。続作「ロックンロールミシン」は三島由紀夫賞受賞・映画化された。 第34回 文藝賞
- 159 1996 ラブ&ポップ ラブアンドポップ 援助交際をめぐる女子高生たちの一日を描く長編。庵野秀明により映画化。
- 160 1995 KYOKO キョウコ ダンスを教えてくれた米兵を探してニューヨークへ渡る娘キョウコの旅を描く。
- 161 1995 デッドエンド・スカイ でっどえんど・すかい 都市の音楽シーンと若者の閉塞感を描いたデビュー作。DJでもある著者の感性が横溢する。 第81回 文學界新人賞
- 162 1995 助手席にて、グルグル・ダンスを踊って じょしゅせきにて、ぐるぐる・だんすをおどって 大学在学中の作者が書き上げた青春小説。早稲田大学より小野梓記念賞芸術賞を受賞した。 第32回 文藝賞
- 163 1994 首飾り くびかざり 文藝時評で「カポーティを思わせる才能」と絶賛されたデビュー作。山形県文学全集にも収録された。 第31回 文藝賞
- 164 1993 壊音 KAI-ON かいおん 高校生の少女が、自分の身体感覚の崩壊と再生をたどるデビュー作。17歳の最年少受賞として注目された。 第77回 文學界新人賞
- 165 1993 暗い森を抜けるための方法 くらいもりをぬけるためのほうほう 『暗い森を抜けるための方法』は、足立浩二が第36回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1993年6月号と受賞発表記事を確認しました。暗い森を抜けるという題名が示す閉塞と脱出のイメージは明確ですが、具体的な筋は未確認です。
- 166 1993 氷の海のガレオン こおりのうみのがれおん 孤独な少女が想像世界へと旅立つ幻想的な物語。のちに文庫化・シリーズ化された人気作となった。
- 167 1992 音符 おんぷ 『音符』は、三浦恵が第29回文藝賞を受賞した作品です。NDLでは1993年河出書房新社版の単行本書誌と『文藝』1992年12月号の書誌を確認しました。音楽的な題名を持つ作品ですが、内容を詳述した信頼できる公開資料は今回確認できず、紹介は受賞・書誌中心です。 第29回 文藝賞
- 168 1992 チューリップの誕生日 ちゅーりっぷのたんじょうび 『チューリップの誕生日』は、女子高生がロックバンドで活動する姿を描く青春小説です。音楽を通じて学校生活や仲間との関係が動き、若い身体感覚と自己表現への欲求が前面に出ます。すばる文学賞受賞作として、1990年代初頭の若い書き手の感性を示す作品です。 第16回 すばる文学賞
- 169 1991 至高聖所(アバトーン) しこうせいしょ あばとーん 『至高聖所(アバトーン)』は、大学生活と若者の精神的な苦闘を叙情的に描く松村栄子の芥川賞受賞作です。親密な関係と孤独、学びの場での息苦しさを、若い語りの感覚で立ち上げます。『海燕』掲載作として芥川賞を受けた点でも、1990年代初頭の文芸誌環境を示す作品です。 第106回 芥川賞
- 170 1991 撃壌歌 げきじょうか 『撃壌歌』は、戦後の信州の農村を舞台に、少年の成長と土地の変化を描く二部構成の作品です。封建的な地主制度の残滓と高度成長期の足音が交差し、個人の青春が村の時間の変化と重なります。歴史美術を専門とする著者らしい、土地と記憶へのまなざしが特徴です。 第28回 文藝賞
- 171 1991 ア・ルース・ボーイ あ るーす ぼーい 『ア・ルース・ボーイ』は、名門進学校を中退した十七歳の少年が、恋人と暮らしながら肉体労働の現場へ入っていく青春小説です。学校から外れた少年が、働く身体と他者との関係を通じて自分の輪郭をつかんでいきます。佐伯一麦の自伝的要素を感じさせる、労働と成長の物語です。 第4回 三島賞
- 172 1990 青春デンデケデケデケ せいしゅんでんでけでけでけ 『青春デンデケデケデケ』は、1960年代の四国・観音寺で、ベンチャーズに憧れた高校生たちがバンドを組む青春小説です。方言まじりの軽快な語りと音楽への熱中が、地方の高校生活を明るく立ち上げます。懐かしさに寄りかかりすぎず、仲間と音を出す時間の高揚を描くところに魅力があります。 第27回 文藝賞
- 173 1990 スプラッシュ すぷらっしゅ 『スプラッシュ』は、大鶴義丹が大学在学中に発表し、第14回すばる文学賞を受けたデビュー小説です。NDLでは単行本と受賞作発表記事を確認できますが、作品内容を詳述した信頼できる公開資料は今回確認できませんでした。現時点では、若い書き手の登場を示す新人賞受賞作として紹介します。 第14回 すばる文学賞
- 174 1989 TUGUMI つぐみ 海辺の町を舞台に、語り手まりあと、病弱で美しいが激しい気性を持つ少女つぐみの最後の夏を描く長編。家族経営の宿、海辺の時間、恋の予感、病と別れの気配が重なり、青春のまぶしさと残酷さが同時に立ち上がる。吉本ばなならしい平明な一人称で、親密な関係が永遠には続かないことを痛切に描く。
- 175 1989 YES・YES・YES いえす・いえす・いえす 『YES・YES・YES』は、新宿のゲイバーで働く青年ホストの日常と欲望を描く比留間久夫のデビュー作です。性の解放感と都市の夜の空気を前面に出し、当時の純文学にクィアな身体感覚を持ち込んだ作品として読めます。軽さと痛みが同居する、都市的な性の物語です。 第26回 文藝賞
- 176 1989 ピアニシモ ぴあにしも 転校を繰り返してきた少年・氏家透の内側に住む分身ヒカルをめぐるドッペルゲンガー的な青春小説。辻仁成が1週間で書き上げたというデビュー作。 第13回 すばる文学賞
- 177 1988 汝ふたたび故郷へ帰れず なんじふたたびこきょうへかえれず 『汝ふたたび故郷へ帰れず』は、飯嶋和一のデビュー作です。現代の苦境に置かれた人物を描く作品として整理され、後に歴史小説へ大きく展開する作家の初期の問題意識をうかがわせます。故郷への帰還不能という題が、喪失と自己の行き場のなさを強く示しています。 第25回 文藝賞
- 178 1988 ルイジアナ杭打ち るいじあなくいうち 父の仕事の都合でルイジアナ州バトンルージュに暮らす日々を、少年の目を通して書きとめた短篇集。紀伊國屋書店の紹介では、深南部に住む異邦人としての非適応感覚を、クールさとユーモアを交えて捉えた作品とされる。移住先の風物、家族、周囲の人々との距離感が、記憶と越境の物語になっている。 第10回 野間新人賞
- 179 1987 ノルウェイの森 のるうぇいのもり 1960年代末の学生運動期を背景に、ワタナベと直子、緑の関係を通じて、喪失、恋愛、死者への記憶を描く長編。村上作品としては幻想性を抑えたリアリズム寄りの語りで、音楽、読書、寮生活、療養所の細部が青春の傷を浮かび上がらせる。読みやすい恋愛小説の形を取りながら、親しい死をどう抱えて生きるかという痛切な問…
- 180 1987 69 sixty nine シックスティナイン 1969年の佐世保を舞台に、高校生ケンの反乱と文化祭騒動を描く自伝的青春小説。政治の季節、ロック、映画、性への憧れが混ざり合い、重い時代背景を祝祭的な語りで駆け抜ける。村上龍作品の中では、暴力や破滅よりも若者のエネルギーとユーモアが前面に出る。
- 181 1987 四万十川―あつよしの夏 しまんとがわ あつよしのなつ 『四万十川―あつよしの夏』は、高知県四万十川流域を舞台に、少年あつよしの夏を豊かな自然とともに描く作品です。川、家族、土地の生活感が、少年の成長と結びついています。後にシリーズとして読み継がれる「四万十川」作品群の出発点です。 第24回 文藝賞
- 182 1987 カワセミ かわせみ 戦時下の四国を舞台に、飛ぶ宝石とも呼ばれるカワセミの生命に魅せられた少年の日々を描く表題作を含む短篇集。紀伊國屋の内容説明では、無頼の道を歩む幼なじみの苛烈な生を写す「牙」なども収録される。自然へのまなざし、少年の感受性、戦時下の地方の時間が静かに重なっていく。 第19回 新潮新人賞
- 183 1986 気配 けはい 『気配』は、片山恭一のデビュー作にあたる第63回文學界新人賞受賞作です。既存情報では、九州大学大学院在学中の受賞作で、後に広い読者を得る作家の出発点として位置づけられます。詳細な筋は限定的ですが、青春期の孤独や感受性を扱う初期作として整理しました。 第63回 文學界新人賞
- 184 1986 十六歳のマリンブルー じゅうろくさいのまりんぶるー 16歳の女子高生の青春を描く作品。本城美智子のデビュー作。 第10回 すばる文学賞
- 185 1985 テニスボーイの憂鬱 テニスボーイのゆううつ 村上龍が1985年に刊行した長編。テニスや消費文化の明るい表層を背景に、若者の空虚さ、身体感覚、欲望の行き場のなさを描く作品として読める。初期村上龍の過剰な都市感覚を、暴力だけでなく遊戯性や倦怠から見るための一冊。
- 186 1985 ダックスフントのワープ だっくすふんとのわーぷ 大学の心理学科に通う「僕」が、心を閉ざした少女の家庭教師を引き受け、異空間にワープしたダックスフントの物語を語り聞かせる。文春文庫の紹介では、物語への興味と対話を通じて少女が変化していくが、その先に不穏な展開があることが示されている。語ること、聞くこと、他者の心に近づこうとする試みが中心にあるデビュ… 第9回 すばる文学賞
- 187 1985 水平線上にて すいへいせんじょうにて 中沢けいが女性の性と身体の問題を描いた作品集。増田みず子「自由時間」と同時受賞した第7回野間文芸新人賞受賞作。 第7回 野間新人賞
- 188 1984 虹の彼方に にじのかなたに 高橋源一郎の初期長編で、ポップカルチャーの速度と文学的な実験が混ざり合う作品。既成の小説らしさをずらしながら、語りの軽さ、引用、遊びの感覚で現代の気分を立ち上げる。筋を追うだけでなく、言葉やジャンルがほどけていく過程を読む作品として扱いたい。
- 189 1984 She's Rain しーず・れいん 『She's Rain』は、高校生の恋愛を描く平中悠一のデビュー作です。十七歳で書かれた作品として、若者の感覚を同世代の言葉で小説化した点が特徴です。後に映画化され、1980年代の文藝賞作品の中でも青春・恋愛のメディア展開へつながった一作です。 第21回 文藝賞
- 190 1984 天北の詩人たち てんぽくのしじんたち 北海道の雪深い大地に生きる人々の熱い思いを詩情豊かに描く青春小説。厳しい冬と春への希望を背景に、詩と文学を愛する若者たちの情熱を謳う。
- 191 1983 だいじょうぶマイ・フレンド だいじょうぶマイ・フレンド 村上龍が1983年に刊行した、映画化とも接続するポップな幻想小説。現実の都市感覚に、異質な存在との遭遇や友情のモチーフを重ね、初期村上龍の暴力的なリアリズムとは別の軽さを見せる。サブカルチャー、映像、音楽的な速度感を小説へ持ち込む読みどころがある。
- 192 1983 若者たちの悲歌 わかものたちのひか 石川達三が1983年に刊行した作品。公開情報では詳細な梗概や批評が限定的なため、題名が示す若者像と悲劇性を手がかりに、世代の違和や社会との摩擦を扱う後期作として暫定整理する。内容の精査は現物・書評確認の優先候補として残す。
- 193 1983 草のかんむり くさのかんむり 『草のかんむり』は、伊井直行のデビュー作にあたる群像新人文学賞当選作です。現実と幻想を溶け合わせる作風の出発点として整理され、日常的な世界に異質な感覚を滑り込ませるところに特徴があります。後の作品群につながる、寓話性と実験性を読む作品です。
- 194 1983 雪野 ゆきの 著者の中学以来の友人である実在の画家・雪野恭弘を軸に若い頃の自伝的体験を描く実名小説。ペンネーム「尾辻克彦」による発表。第5回野間文芸新人賞受賞。 第5回 野間新人賞
- 195 1982 さようなら、ギャングたち さようならギャングたち 詩の学校で教える「僕」と、名前や物語のルールがずれていくギャングたちの世界を、断章・引用・言葉遊びで組み上げるデビュー長編。ギャングたちは犯罪集団というより、言語と記憶のなかで生成される虚構の仲間として現れ、物語は詩、ポップカルチャー、メタフィクションを軽やかに横断する。青春小説の形式を借りながら…
- 196 1982 浮上 ふじょう 『浮上』は、医師・田野武裕のデビュー作にあたる第55回文學界新人賞受賞作です。既存梗概では、病や死を背景にした青春の痛みを扱う作品として整理されています。文學界新人賞から芥川賞候補へ進んだ作品で、1980年代前半の新人賞と芥川賞の接続を示す一作です。 第55回 文學界新人賞
- 197 1981 1980 アイコ十六歳 せんきゅうひゃくはちじゅう あいこじゅうろくさい 『1980 アイコ十六歳』は、名古屋の女子高生アイコの等身大の日常を描く青春小説です。高校生活、友人関係、身体感覚を大きな事件に回収せず、十六歳の時間の手触りとして描く点に特徴があります。若い書き手による若者の日常表現として、1980年代初頭の文藝賞を象徴する一作です。 第18回 文藝賞
- 198 1980 1973年のピンボール せんきゅうひゃくななじゅうさんねんのぴんぼーる 『風の歌を聴け』に続く「鼠三部作」第二作で、翻訳事務所を営む「僕」の生活と、故郷に残る鼠の停滞が並行して語られる。「僕」はかつて通ったバーにあったピンボール台を探し、双子の女性との奇妙な同居や電話配電盤の葬送を経て、失われた時間の手触りに近づいていく。軽い会話と乾いたユーモアの背後に、青春の終わり…
- 199 1980 なんとなく、クリスタル なんとなく、くりすたる 『なんとなく、クリスタル』は、東京の女子大生・由利の学業、モデル活動、恋愛、消費生活を、膨大な注釈とともに描くデビュー作です。物語そのものより、ブランド名や都市風俗を含む表層的な記号の連なりが、1980年前後の若者文化を浮かび上がらせます。軽さを武器に、消費社会の感覚を小説の形式へ取り込んだ作品です… 第17回 文藝賞
- 200 1980 海を越えた者たち うみをこえたものたち 海外を放浪する日本人若者たちを描いたデビュー作。笹倉明が後にミステリー作家へと転じる前の純文学的出発点。
- 201 1979 風の歌を聴け かぜのうたをきけ 1970年の夏、「僕」と友人「鼠」の9日間を描いた村上春樹のデビュー作。短い章、乾いた会話、音楽や翻訳文学の気配によって、青春の終わりと喪失感が軽やかに語られる。後の「鼠三部作」へ続く、村上春樹の文体と世界観の出発点である。 第22回 群像新人賞
- 202 1977 海の向こうで戦争が始まる うみのむこうでせんそうがはじまる 村上龍が『限りなく透明に近いブルー』後に発表した初期長編。題名の通り、戦争が遠くで始まるという感覚を、若者の身体や都市的な不安と接続する。暴力、メディア、距離感のずれを通じて、初期村上龍の社会への鋭い視線を読む作品である。
- 203 1968 青春の蹉跌 せいしゅんのさてつ 夢を持つ青年が挫折と欲望に追い詰められていく過程を描いた長編。青春の理想が、社会的成功への欲望や恋愛、罪の意識によって崩れていく。ベストセラーとなり映画化もされた、石川達三の通俗性と社会批評が接続する作品である。
- 204 1963 叫び声 さけびごえ 大江健三郎が1963年に刊行した作品で、切迫した題名の通り、若者の不安や社会的暴力を強い声として立ち上げる。公開情報では細部の梗概は限定的だが、初期大江の身体性、政治性、孤立感を読む作品として整理できる。全小説・作品集への収録も確認できる。
- 205 1962 遅れてきた青年 おくれてきたせいねん 大江健三郎の初期長編で、「遅れてきた」若者の屈折した自己意識を描く作品。戦後の政治的・性的な不安を背景に、青年が自分の時代に乗り遅れた感覚を抱える。初期大江らしい、青春小説でありながら痛切で不穏な読み味を持つ。
- 206 1959 われらの時代 われらのじだい 大江健三郎が1959年に刊行した初期長編。敗戦後世代の若者たちの閉塞、政治感覚、性や暴力への傾斜を通じて、「われら」と呼べる時代の不安を描く。初期大江の実存的な焦燥と社会への違和感が前面に出る作品。
- 207 1958 完全な遊戯 かんぜんなゆうぎ 若者たちの倦怠と残虐な「遊び」を描いた石原慎太郎の中篇。遊戯の名の下に暴力がエスカレートしていく構図は、戦後若者文化への不安と反発を強く帯びる。太陽族文学の享楽性の裏側にある空虚さを読む作品である。
- 208 1958 亀裂 きれつ 石原慎太郎が1950年代に刊行した作品で、戦後社会の価値観のひび割れを思わせる題名を持つ。公開情報では細部の梗概が少ないため、初期石原の若者像や社会への挑発を含む作品として暫定整理する。個人と社会、欲望と規範の間に走る亀裂を読む軸を置く。
- 209 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自…
- 210 1958 飼育 しいく 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 第39回 芥川賞
- 211 1957 裸の王様 はだかのおうさま 『裸の王様』は、企業の付設美術教室で働く主人公が、子どもたちの表現を管理しようとする組織と向き合う短篇です。子どもの自由な絵と大人の制度的な論理を対比させ、個人が組織に取り込まれていく過程を批評します。開高健の社会批評性と寓話性が、読みやすい構図のなかに収まった出世作です。 第38回 芥川賞
- 212 1956 処刑の部屋 しょけいのへや 大学生の性的奔放と暴力を描いた石原慎太郎の初期代表短篇。若者の身体感覚、退屈、残酷さを挑発的に描き、「太陽族」文学の衝撃を広げる作品となった。戦後の新しい若者像を、道徳的な安定ではなく暴力と欲望の側から提示する。
- 213 1955 太陽の季節 たいようのきせつ 裕福な家庭に育ち、拳闘に打ち込む高校生・津川竜哉が主人公。湘南の海やヨット、盛り場を舞台に、既成の倫理や大人の価値観を軽蔑し、喧嘩や女性関係を遊戯のように楽しむ戦後世代の若者たちの生態を描く。竜哉は英子という女性と出会い、互いに駆け引きめいた恋愛を続けるうちに、欲望と愛情の間で関係は思わぬ方向へ傾い… 第34回 芥川賞
- 214 1954 潮騒 しおさい 『潮騒』は、三重県の孤島を舞台に、若い漁夫と海女の恋を明るく端正に描く長篇です。古代ギリシャの牧歌的恋愛物語を思わせる構成を、日本の海辺の共同体に置き換えています。三島由紀夫作品のなかでは例外的に清明な青春小説として読まれ、自然と身体の健やかさが強く印象に残ります。
- 215 1951 悪い仲間・陰気な愉しみ わるいなかま・いんきなたのしみ 『悪い仲間・陰気な愉しみ』は、病と貧しさ、青年期の停滞を背景にした安岡章太郎の初期短篇群です。結核療養や日常の挫折をめぐる内省を、過剰な劇化を避けた私小説的な語りで描きます。第三の新人と呼ばれる世代の、戦後の日常感覚と弱さへのまなざしがよく出た作品です。 第29回 芥川賞