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地方

舞台「地方」に分類された 192 作品。

  1. 001 2026 舞う砂も道の実り まうすなもみちのみのり 井戸川射子 単行本・文藝春秋 『舞う砂も道の実り』は、孤児として育ったワオスリ、大家族の移住先を探すイフン、離れ離れになった子を探すダエの三人が旅に出るロードノベル。文藝春秋公式は、時代も場所も定かでない土地を進む旅人たちが、町々の出会いと別れを通じて人生の意味を手にしていく作品として紹介している。喪失を抱えた人々の移動を、詩的… 移民と越境家族死と喪失
  2. 002 2026 満ちる街 みちるまち 山本莉会 単行本・朝日新聞出版 限界集落に住む電力会社職員の徳真が、農園の土地売却をめぐる出来事に関わっていく第12回林芙美子文学賞大賞受賞作。受賞時タイトルは「満ちる街」で、掲載時には「むこうの景色は知らない」へ改題された。地方のインフラ、土地、暮らしの持続をめぐる問題を、現代的な地域小説として読ませる。 地方労働同調圧力 第12回 林芙美子賞
  3. 003 2025 温泉小説 おんせんしょうせつ 朝比奈あすか 単行本・光文社 『温泉小説』は、おひとり様限定ツアー、後期高齢者のドライブ旅、母の呪縛から逃れられない娘、亡き妻との記憶をたどる男など、六つの旅路を収めた連作的な作品集です。年齢も性別も境遇も違う人物たちが、人生の苦みや迷いを抱えたまま温泉地へ向かい、湯に身体をほどかれながら自分を見つめ直す。温泉ソムリエマスターで… 老い家族身体
  4. 004 2025 ジャスティス・マン じゃすてぃす・まん 佐藤厚志 単行本・文藝春秋 『ジャスティス・マン』は、仙台の老舗ホテルに勤続30年の初老ホテルマンが、特撮ヒーローに重ねた「正義」を暴走させていく長篇です。家庭も職もある中年男性の独りよがりな正義が、職場や周囲との軋轢を深めていく。正義という言葉の快さと危うさを、地方都市の労働現場と生活者の視点から描く作品です。 労働同調圧力暴力
  5. 005 2025 彼の左手は蛇 かれのひだりてはへび 中村文則 単行本・河出書房新社 『彼の左手は蛇』は、仕事を辞め、女性と別れて、蛇信仰の残る土地に来た男が「この手記」を書くところから展開する小説です。白蛇を祀る神社、毒蛇狩り、議員の死、刑事、謎めいた人物たちが絡み、蛇のイメージが信仰・恐怖・罪悪感・暴力の記憶を結びつけていく。手記形式の語りは、書くことそのものの危うさを含みながら… 暴力信仰記憶
  6. 006 2025 熊はどこにいるの くまはどこにいるの 木村紅美 単行本・河出書房新社 『熊はどこにいるの』は、震災から7年後の地で、ショッピングモールで保護された身元不明の幼子と、暴力から逃れて山奥の家に暮らす女たちをめぐる小説です。リツ、アイ、サキ、ヒロらの視点が交錯し、保護と加害、避難場所と閉ざされた共同体の危うさを同時に浮かび上がらせる。熊という存在は、現実の脅威であると同時に… 災害暴力ジェンダー 第61回 谷崎賞
  7. 007 2024 僕たちの保存 ぼくたちのほぞん 長嶋有 単行本・文藝春秋 『僕たちの保存』は、語り手のゲンさん、年上の武上さん、引きこもりの甥シンスケ、人気漫画家の亀谷さんらが、新幹線、自転車、バス、テスラを乗り継いで旅に出るロードノベル。震災被害者の形見であるMSXパソコンが、過去と現在、記憶と情報の保存をつないでいく。サブカルチャーとパソコン以後の時間を背景に、残るも… 記憶テクノロジー災害
  8. 008 2024 森は盗む もりはぬすむ 大原鉄平 単行本・朝日新聞出版 第10回林芙美子文学賞大賞受賞作で、『八月のセノーテ』に収録された小原鉄平の作品。題名の通り、森という場所が単なる背景ではなく、人間の暮らしや記憶を侵食し、奪い返していくような感覚を帯びる。公開資料では受賞・収録情報が中心のため、紹介文は確認できた書誌と題名・収録文脈に基づく控えめな案内にとどめる。 地方記憶孤独と疎外 第10回 林芙美子賞
  9. 009 2024 人にはどれほどの本がいるか ひとにはどれほどのほんがいるか 鈴木結生 初出・小説トリッパー 2024年春季号 「人にはどれほどの本がいるか」は、在野の文化理論家で素人作家でもある人物の蔵書と記憶をめぐって、書物が人の生をどのように支えるかを探る作品。冒頭公開部分だけでも、追悼文、地方紙記事、研究会の記憶が重なり、文学・信仰・蒐集への偏愛が語りの駆動力になっている。書物への愛を題材にしながら、知識や創作を人生… 言葉と言語芸術と表現記憶
  10. 010 2024 光のそこで白くねむる ひかりの そこで しろく ねむる 待川匙 初出・「文藝」2024年冬季号 『光のそこで白くねむる』は、十年ぶりに故郷の田舎町へ戻った「わたし」が、墓地へ続く道で死んだはずの幼馴染の声を聞くところから始まるデビュー作。行方不明の母、神のような父、汚言機械のような祖母が現れ、不確かな記憶の流入によって平凡な田舎が異界へ変わっていく。語り手の性別や過去の事実が曖昧なまま進む文体… 記憶家族死と喪失 第61回 文藝賞
  11. 011 2023 神と黒蟹県 かみとくろがにけん 絲山秋子 単行本・文藝春秋 黒蟹山や黒蟹城、紫苑市と灯籠寺市を擁する架空の県を舞台に、土地に生きる者、赴任してきた者、帰郷した者、地元を訪れた者たちの営みを描く連作小説集。現実のどこかにありそうな地方都市の手触りに、半知半能の神が降臨するようなわずかな神秘が混じる。群像劇として土地の記憶や住民の距離感を浮かび上がらせ、絲山秋子… 信仰記憶孤独と疎外
  12. 012 2023 蝙蝠か燕か こうもりかつばめか 西村賢太 単行本・文藝春秋 2022年2月に急逝した西村賢太の未刊行小説集で、完結作としては最後の表題作を含む三篇を収める。北町貫多が藤澤清造資料の調査や書簡の額装をめぐって動く「廻雪出航」「黄ばんだ手蹟」と、死の前年の貫多を描く「蝙蝠か燕か」によって、師への執着と自分の文学を問い直す。私小説的な分身を通じ、歿後弟子としての覚… 芸術と表現死と喪失記憶
  13. 013 2023 街とその不確かな壁 まちとそのふたしかなかべ 村上春樹 単行本・新潮社 十七歳の「ぼく」は十六歳のガールフレンドから、彼女の本当の自分は高い壁に囲まれた街にいると告げられ、その後彼女は姿を消す。年月を経た語り手は、壁、望楼、図書館、古い夢、影を持たない人々のいる街と現実世界のあわいを行き来することになる。村上春樹が長く抱えてきた「壁に囲まれた街」のモチーフを、喪失、記憶… 記憶死と喪失アイデンティティ
  14. 014 2023 流れる島と海の怪物 ながれるしまとうみのかいぶつ 田中慎弥 単行本・集英社 母に連れられて行った屋敷で、「俺」は朱音と朱里という二人の姉妹に出会う。母がなぜ二人に会わせたのかという謎は、伯母から聞く出生の秘密と、姉妹の母の故郷である「流れる島」の神話へつながっていく。下関という土地、家族と血の記憶、少年と少女の出会いを、現実と神話が絡む濃密な語りで描いた長編である。 家族母と子記憶
  15. 015 2023 立春大吉 りっしゅんだいきち 浅尾大輔 単行本・新日本出版社 『立春大吉』は、過疎の町で町立病院の入院ベッド全廃計画が持ち上がり、病院と町への思いを抱えた住民たちが抗う長編である。新米町議・友川あさひを中心に、主義主張や家庭事情の異なる人々が交わり、地域医療、暮らし、政治参加の問題が重なっていく。『しんぶん赤旗』連載を単行本化した作品で、若い世代の苦悩と住民運… ケアと介護労働家族
  16. 016 2023 無敵の犬の夜 むてきの いぬの よる 小泉綾子 初出・「文藝」2023年冬季号 『無敵の犬の夜』は、北九州の片田舎で学校へ行かず、不良グループと過ごす中学生・界を描く長編。幼少期に右手の指を失った界は、地元で出会った男・橘に心酔し、彼のために単身東京へ向かう。方言と虚勢を帯びた熱のある語りが、思春期の暴走、尊敬されたい欲望、世界とつながれない孤独を押し出す。 青春暴力身体 第60回 文藝賞
  17. 017 2022 くるまの娘 くるまのむすめ 宇佐見りん 単行本・河出書房新社 17歳のかんこは、家族とともに車中泊をしながら祖母の葬儀へ向かう。狭い車内と旅先の景色は、父母と子のあいだに積み重なった暴力、依存、愛着を逃げ場なく浮かび上がらせる。少女の身体感覚に寄り添う濃密な語りが、家族を単純な加害と被害に分けられないものとして描き、読者に「救うなら誰を救うのか」という問いを突… 家族暴力母と子
  18. 018 2022 まっとうな人生 まっとうなじんせい 絲山秋子 単行本・河出書房新社 『逃亡くそたわけ』から十数年後、花ちゃんとなごやんは富山で偶然再会する。かつて精神病院を抜け出して九州を旅した二人は、それぞれ家族を持ち、コロナ禍の同時代を生きる人として再び向き合う。富山の地名、食文化、方言、スーパーの細部までを織り込みながら、家庭を守ろうともがく花ちゃんの怒りや不安を、土地に根ざ… 家族記憶労働
  19. 019 2022 雨滴は続く うてきはつづく 西村賢太 単行本・文藝春秋 2004年、北町貫多は同人誌発表作「けがれなき酒のへど」が同人雑誌優秀作に選ばれ、純文学誌に転載されたことで文壇デビューを果たす。藤澤清造の歿後弟子であろうとする執念、純文学誌への執筆、恋情と自尊心の揺れが、貫多らしい苛立ちと滑稽さを伴って進む。完成直前で未完となった遺作長篇であり、作家になる以前の… 芸術と表現恋愛孤独と疎外
  20. 020 2021 母親からの小包はなぜこんなにダサいのか ははおやからのこづつみはなぜこんなにださいのか 原田ひ香 単行本・中央公論新社 『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』は、実家から届く小包をめぐって、昭和・平成・令和をまたぐ家族の思いを描く連作集。業者から買った野菜を実家からの荷物と偽る女性、父が受け取っていた小包の謎、母からの最後の荷物など、物の中にしまわれた気遣い、ずれ、寂しさが開封されていく。タイトルの軽さに対して… 家族母と子記憶
  21. 021 2021 北斗星に乗って ほくとせいにのって 広小路尚祈 単行本・桜山社 『北斗星に乗って』は、上野発の寝台特急「北斗星」を軸にした8編の短篇小説集。列車という移動空間が、乗客の記憶や人生の分岐、もう一つの世界へ向かうような感覚をつないでいく。旅情だけでなく、日常から少し離れた場所で自分の過去や孤独に触れる、静かな幻想味を持つ作品集である。 記憶孤独と疎外死と喪失
  22. 022 2021 あなたに安全な人 あなたにあんぜんなひと 木村紅美 単行本・河出書房新社 3.11直前の少年の死をめぐる出来事に苛まれる元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中の事故を抱える便利屋の忍が、「感染者第一号」を誰もが恐れる土地で出会う。二人は人を傷つけ、傷つけられる社会のなかで、孤独で安全な逃亡生活のような関係を築いていく。東日本大震災、沖縄、感染症下の共同体の視線を交差… 孤独と疎外災害同調圧力
  23. 023 2021 ここはとても速い川 ここはとてもはやいかわ 井戸川射子 単行本・講談社 児童養護施設で暮らす小学五年生の集と、園での年下の親友・ひじりの日々を描く表題作を中心にした小説集。近くの淀川にいる亀を見に行く楽しみなど、子どもたちの時間が、温もりを含んだ繊細な言葉でたどられる。詩人として出発した著者の初めての小説集で、表題作と小説第一作「膨張」を収録する。 青春家族ケアと介護 第43回 野間新人賞
  24. 024 2021 満天の花 まんてんのはな 佐川光晴 単行本・左右社 幕末の長崎・出島に生まれ、青い目を隠して育った花が、勝海舟との出会いを経て通詞として外交の渦中に入る歴史長篇。咸臨丸、ロシア艦、大政奉還、江戸無血開城へと続く時代の転換点を、女性通訳の視点からたどる。西欧列強、幕府、身分秩序に抗し、言葉と意思で生きる人物像が読みどころになる。 移民と越境言葉と言語ジェンダー
  25. 025 2021 水たまりで息をする みずたまりでいきをする 高瀬隼子 単行本・集英社 ある日、衣津実は夫が風呂に入らなくなったことに気づく。夫は水が臭く、体につくと痒くなると言って入浴を拒み、やがて雨に濡れに外へ出るようになり、職場で体臭が問題にされる。退職と移住を経て、夫が川で水浴びをする生活へ向かう過程を、夫婦の問題として押し返される妻の視点から描き、身体、清潔、共同生活の境界を… 夫婦身体
  26. 026 2021 死者にこそふさわしいその場所 ししゃにこそふさわしいそのばしょ 吉村萬壱 単行本・文藝春秋 折口山に暮らす奇妙でどこか壊れた人々が、町はずれの植物園へ引き寄せられていく連作短篇集。介護、欲望、病、善意の暴走といった日常の歪みを、グロテスクで滑稽な筆致で少しずつ現実からずらしていく。表題作を含む六篇を通じて、怖さと可笑しさが同居する吉村萬壱の寓話的な人間観察が前面に出る。 ケアと介護身体
  27. 027 2021 塩の道 しおのみち 朝比奈秋 単行本・朝日新聞出版 第7回林芙美子文学賞大賞受賞作で、のちに朝比奈秋のデビュー単行本『私の盲端』に収録された作品。医療や身体をめぐる著者の関心に連なる短篇として、移動や土地の感覚を手がかりに、人が抱える見えにくい欠落を描く。受賞作としての書誌は確認できるが、作品本文に踏み込んだ公開資料はまだ限られる。 身体地方孤独と疎外 第7回 林芙美子賞
  28. 028 2021 小島 こじま 小山田浩子 単行本・新潮社 被災地、自宅、保育園など、さまざまな場所で出会う出来事を丹念に描く中短篇集。豪雨災害後の農村で目にする花の世話をする女性や、広島カープをめぐる奇談連作など、何気ない風景が別の時間へずれていく。生きものや植物を通じて、現代の不安と存在の手触りを描く。 孤独と疎外寓話・幻想地方
  29. 029 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 小野正嗣 単行本・毎日新聞出版 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶… 記憶戦争死と喪失
  30. 030 2020 百年と一日 ひゃくねんといちにち 柴崎友香 単行本・筑摩書房 人や店、駅、家、空港、家族の記憶が、数ページの掌編の中で十年、二十年、百年の時間へ伸びていく短篇集。個々の人物の大事件ではなく、場所に積み重なる時間、誰かが去り誰かが来る反復、忘れられていく出来事の痕跡を描く。長いタイトルと淡々とした語りが、日常の一瞬を歴史の厚みへ接続する。 記憶家族死と喪失
  31. 031 2020 かきあげ家族 かきあげかぞく 中島たい子 単行本・光文社 コメディ映画監督の中井戸八郎は、老境に差しかかりながらスランプの渦中にいる。長男の失職、長女の離婚、引きこもる次男によって家族が再び一つの家に集まるなか、名監督の遺稿をめぐる騒動が起き、八郎は家族の一人ひとりと向き合わざるをえなくなる。不安を拾い集めてしまう人間の弱さを、家族喜劇の形で描く。 家族老い芸術と表現
  32. 032 2020 完全犯罪の恋 かんぜんはんざいのこい 田中慎弥 単行本・講談社 『完全犯罪の恋』は、芥川賞受賞後も地味な暮らしを送る四十男の小説家「田中」が、新宿で初恋の相手の娘に声をかけられるところから始まる長編。物語は現在の東京と、下関の高校時代に読書を通じて近づいた才女・真木山緑との記憶を往還し、恋の独りよがりと罪悪感を掘り下げる。作家本人を思わせる語り手を置き、私小説的… 恋愛記憶芸術と表現
  33. 033 2020 小鳥、来る ことり、くる 山下澄人 単行本・中央公論新社 『小鳥、来る』は、夏休みの始まり、9歳の「おれ」が父を倒す日を待っているところから始まる長篇。周囲には、勉強のできる友人、万引きを繰り返す兄弟、学年一強い女子、何度も車にはねられる少年、動物園のゴリラがいて、子どもの日常が暴力とユーモアを帯びて浮かぶ。山下澄人らしい口語のリズムと飛躍する視点が、大人… 青春家族暴力
  34. 034 2020 幼な子の聖戦 おさなごのせいせん 木村友祐 初出・すばる 2019年11月号 第162回芥川賞候補作の表題作と、ビルの窓拭きを描く『天空の絵描きたち』を収める作品集。表題作では、青森の小さな村で村議をしている「おれ」が、人妻との関係を県議に握られ、同級生候補への選挙妨害を強いられる。地方政治の閉塞、個人の弱み、労働現場の緊張を、怒りと諦めのあわいにかすかな希望を探る語りで描く… 同調圧力労働暴力
  35. 035 2020 月の客 つきのきゃく 山下澄人 単行本・集英社 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。 孤独と疎外暴力災害
  36. 036 2019 遠の眠りの とおのねむりの 谷崎由依 単行本・集英社 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇… 労働青春芸術と表現
  37. 037 2019 夢も見ずに眠った。 ゆめもみずにねむった 絲山秋子 単行本・河出書房新社 『夢も見ずに眠った。』は、夫を熊谷に残して札幌へ単身赴任した沙和子が、夫婦のすれ違いと離別を経て、新しい愛と信頼の形へ向かう長篇。岡山、札幌、熊谷など土地の記憶や物語が、二人の関係の変化と響き合う。移動する生活のなかで、結婚や家族の安定ではなく、相手を信じ直す距離を探るところが読みどころになる。 夫婦恋愛記憶
  38. 038 2019 飛族 ひぞく 村田喜代子 初出・「文學界」連載後、単行本2019年3月・文藝春秋。連載開始年は未確認のため単行本年を year に採用 『飛族』は、大分で魚料理店を営む六十五歳のウミ子が、長崎の国境離島を思わせる架空の島に住む九十二歳の母イオと八十八歳のソメ子を訪ねる長編。島には二人の元海女だけが残り、失われた漁師たちを鳥に重ねる「鳥踊り」や、国境離島の維持をめぐる現実的な緊張が、牧歌的な生活に不穏さを差し込む。著者インタビューでは… 老い死と喪失地方 第55回 谷崎賞
  39. 039 2018 ブルーハワイ ぶるーはわい 青山七恵 単行本・河出書房新社 『ブルーハワイ』『辰年』『聖ミクラーシュの日』『わかれ道』『山の上の春子』『わたしのおばあちゃん』を収めた短篇集。河出書房新社は、「あたりまえ」を知らない孤独が世界を撃ち抜く作品集として紹介している。日常のなかでそれぞれのことに夢中になる人々を、平明で少し乾いた語りで捉え、家族や記憶、他者との隔たり… 孤独と疎外家族記憶
  40. 040 2018 5時過ぎランチ ごじすぎランチ 羽田圭介 単行本・実業之日本社 「グリーンゾーン」「内なる殺人者」「誰が為の昼食」の三篇からなる、労働と犯罪が絡み合う短篇集。ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギーを抱える殺し屋、写真週刊誌の女性記者が、それぞれ過酷な仕事の延長線上でヤクザや警察、国家権力に触れていく。ブラックな職場感覚とクライムノベルの緊張を重ね、仕事にまつわ… 労働暴力貧困
  41. 041 2018 日の出 ひので 佐川光晴 単行本・集英社 明治の終わり、13歳の清作は徴兵から逃れて故郷を飛び出し、北陸から九州、横浜へ移りながら鍛冶職人として生きる。もう一つの軸として、清作を曾祖父にもつ現代の女子大生・あさひが、教職免許取得のために学ぶ姿が置かれる。時代を隔てた二人を並行させ、労働、逃走、家系の記憶、希望の継承を描く長編。 労働家族記憶
  42. 042 2018 ゆっくりおやすみ、樹の下で ゆっくりおやすみ、きのしたで 高橋源一郎 単行本・朝日新聞出版 小学5年生のミレイが「さるすべりの館」で夏休みを過ごすうち、遠い過去の謎に触れていく児童文学寄りの長編。赤い部屋、止まっていた時計、館に隠された秘密が、子どもの視点に近い軽やかさと不思議な緊張感で語られる。今日マチ子の挿絵を多数収録し、高橋源一郎が子どもと大人の読者をつなぐ語りに挑んだ作品。 青春記憶家族
  43. 043 2018 わるもん わるもん 須賀ケイ 初出・「すばる」2018年11月号 『わるもん』は、硝子職人の父がいつの間にか家族から取り除かれたように見える家で、純子が父の痕跡をたどり始める物語。母や姉たち、家に現れる男性との関係が、純子の視点から少しずつ歪んで見えてくる。集英社の対談では、時間軸や純子の正体をめぐるわからなさも作品の魅力とされ、家族という閉じた船を外から見つめる… 家族父と子孤独と疎外 第42回 すばる文学賞
  44. 044 2017 吹上奇譚 第一話 ミミとこだち ふきあげきたん だいいちわ ミミとこだち 吉本ばなな 単行本・幻冬舎 『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』は、不思議な町・吹上町を舞台にした双子の姉妹の物語で、シリーズ第一作にあたります。町そのものが現実と幻想の境目に置かれ、家族や記憶の問題が奇譚として語られます。吉本ばなならしいやわらかな語りの中に、喪失と再生の感覚があります。 家族記憶死と喪失
  45. 045 2017 いつか来る季節 名古屋タクシー物語 いつかくるきせつ なごやたくしーものがたり 広小路尚祈 単行本・桜山社 『いつか来る季節 名古屋タクシー物語』は、名古屋のタクシー運転手や乗客をめぐる物語として整理できます。タクシーは都市を移動する仕事の場であり、偶然出会う人びとの会話を運ぶ装置でもあります。地方都市の生活と労働を、移動の視点から読ませる作品です。 労働地方孤独と疎外
  46. 046 2017 ほしのこ ほしのこ 山下澄人 単行本・文藝春秋 『ほしのこ』は、山下澄人が星や子どものイメージを通して、記憶と身体の感覚をずらして描く小説として整理できます。題名のひらがな表記は、幼さと遠さを同時に感じさせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 記憶身体家族
  47. 047 2017 回遊人 かいゆうじん 吉村萬壱 単行本・徳間書店 『回遊人』は、吉村萬壱が漂流するように生きる人物や、社会の中を回り続ける身体を描く小説として整理できます。回遊という語は、目的地へ一直線に進まない移動と反復を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体孤独と疎外労働
  48. 048 2017 騎士団長殺し きしだんちょうごろし 村上春樹 単行本・新潮社 『騎士団長殺し』は、肖像画家の「私」が小田原の山荘で謎の絵と「イデア」に遭遇する長編二部作です。絵画、地下空間、戦争の記憶が重なり、現実と寓話の境界がゆっくり崩れていきます。村上春樹の長編らしく、喪失と創作、歴史の暗部が大きな物語として展開します。 芸術と表現記憶戦争
  49. 049 2017 万次郎茶屋 まんじろうちゃや 中島たい子 単行本・光文社 『万次郎茶屋』は、老いたイノシシ万次郎と画家志望の女性をめぐる、不思議でじんわりする短編集です。茶屋という場は、人と動物、現実と幻想がゆるやかに交わる場所として働きます。老い、芸術、ケアの感覚を、あたたかい寓話として読ませる作品です。 老い芸術と表現ケアと介護
  50. 050 2017 美しい国への旅 うつくしいくにへのたび 田中慎弥 単行本・集英社 『美しい国への旅』は、田中慎弥が「美しい国」という政治的・理念的な言葉を旅の物語へずらして扱う小説として整理できます。旅は理想の場所へ向かう行為である一方、現実の醜さや暴力を見せる過程にもなります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 同調圧力暴力孤独と疎外
  51. 051 2017 光点 こうてん 山岡ミヤ 初出・「すばる」2017年11月号 工場しかない閉じられた町で暮らす実以子が、弁当工場と家を往復する日々のなかで、八つ山と呼ばれる裏山で青年カムトと出会う。母のいらだちや父の無関心から逃れるように神社へ通う語りは、身体感覚と祈りのかたちをめぐって不穏に深まる。閉塞した生活から、言葉以前の祈りや表現を探る作品。 家族孤独と疎外信仰 第41回 すばる文学賞
  52. 052 2017 蛇沼 じゃぬま 佐藤厚志 初出・「新潮」2017年11月号 『蛇沼』は、宮城県の田園地帯を舞台に、少年時代の監禁事件と少女セイコの不可解な死を抱え続ける青年・恭二を描く新潮新人賞受賞作。受賞者インタビューでは、作者が宮城県亘理郡の田んぼや沼のある風景を原風景としており、主人公が「生きていてもいいのか」という答えのない問いの中でもがく人物として構想されたことが… 暴力死と喪失父と子 第49回 新潮新人賞
  53. 053 2017 こことよそ ここ と よそ 保坂和志 初出・「新潮」2017年6月号掲載 『こことよそ』は、鎌倉の道を歩く場面を含む短編で、保坂和志自身の受賞のことばでは、川端康成の記憶や生者と死者の時間感覚が作品に触れられている。物語の具体的な筋は公式ページからは限定的にしか確認できないが、場所の記憶と死者との距離が読解の手がかりになる。川端康成文学賞の受賞作として、短編の凝縮された時… 記憶死と喪失地方 第44回 川端賞
  54. 054 2016 イサの氾濫 いさのはんらん 木村友祐 単行本・未來社 『イサの氾濫』は、木村友祐がイサという人物や存在をめぐる記憶、土地、暴力の広がりを描く短篇集として整理できます。氾濫という語は、抑え込まれたものがあふれ出す感覚を示します。既存データには三島由紀夫賞候補作品を収めるとあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。 地方記憶暴力
  55. 055 2016 壁抜けの谷 かべぬけのたに 山下澄人 単行本・中央公論新社 『壁抜けの谷』は、山下澄人が壁を抜けるという幻想的な身振りと、谷という地形を組み合わせて描く小説として整理できます。壁は境界を、谷は落ち込みや隔たりを思わせ、人物の身体感覚を通常の現実からずらします。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体孤独と疎外記憶
  56. 056 2016 野良ビトたちの燃え上がる肖像 のらびとたちのもえあがるしょうぞう 木村友祐 単行本・新潮社 『野良ビトたちの燃え上がる肖像』は、格差と貧困の中で生きる人々を描いた長篇です。野良ビトという呼び名は、制度や共同体の外へ押し出された人びとの姿を示します。肖像という形式を通じて、個々の生活と社会の暴力を結びつけて読む作品です。 貧困労働暴力
  57. 057 2016 しんせかい しんせかい 山下澄人 初出・新潮 2016年7月号 19歳のスミトは、神戸からフェリーと汽車を乗り継ぎ、北海道の【谷】で脚本家の【先生】が主宰する私塾に二期生として入る。俳優や脚本家を志す年齢も経歴も様々な仲間たちとの共同生活は、しかし稽古よりも、施設造りや農作業、馬の世話といった肉体労働に明け暮れるものだった。倉本聰主宰の富良野塾での著者自身の体験… 青春芸術と表現労働 第156回 芥川賞
  58. 058 2016 のろい男 俳優・亀岡拓次 のろいおとこ はいゆう かめおかたくじ 戌井昭人 単行本・文藝春秋 脇役俳優・亀岡拓次を主人公にした連作短篇集で、全国のロケ地を転々としながら仕事相手との淡い縁を紡ぐ日々を描く。続編として、職業俳優の孤独、現場ごとの仮のつながり、生活の滑稽さが積み重なる。諦観とユーモアを交え、主役ではない人物の時間を照らす作品。 芸術と表現労働孤独と疎外 第38回 野間新人賞
  59. 059 2015 電車道 でんしゃみち 磯﨑憲一郎 単行本・新潮社 『電車道』は、磯﨑憲一郎が移動、時間、反復をめぐって構成する長篇です。電車の軌道は、予想できる進行であると同時に、思いがけない記憶や時代の反復を呼び込みます。刊行記念インタビューの題名にもあるように、時代を超えて繰り返されるものを読む作品です。 記憶労働テクノロジー
  60. 060 2015 薄情 はくじょう 絲山秋子 単行本・新潮社 『薄情』は、群馬の地方都市に生きる男を通して、土地への愛着と冷淡さを描く絲山秋子の長篇です。故郷や人間関係は温かいものとしてだけでなく、切り捨てたり距離を置いたりするものとして現れます。地方の生活感と、人の薄情さを見つめる乾いた文体が読みどころです。 地方孤独と疎外記憶 第52回 谷崎賞
  61. 061 2015 残された者たち のこされたものたち 小野正嗣 単行本・集英社文庫 『残された者たち』は、過疎の集落・潮の浦の分校を舞台に、代用教員アンナと生徒たちの日常をユーモラスに描く文庫オリジナル作品です。小さな共同体に残る人びとの生活から、地方、教育、記憶の問題が見えてきます。大きな事件よりも、場に残る声や関係の細部を読む作品です。 地方青春孤独と疎外
  62. 062 2015 死んでいない者 しんでいないもの 滝口悠生 初出・文學界 2015年12月号 秋のある日、大往生を遂げた85歳の男の通夜に、子や孫、ひ孫まで30人ほどの親族が集まってくる。通夜振る舞いの席で酒を酌み交わす者、川辺をさまよう者、初めて会う親戚と言葉を交わす少年少女。語りは特定の人物に留まらず、出席者から出席者へと自在に移りながら、故人の記憶と一族それぞれの来し方、共有しえない日… 家族死と喪失記憶 第154回 芥川賞
  63. 063 2015 水死人の帰還 すいしにんのきかん 小野正嗣 単行本・文藝春秋 『水死人の帰還』は、小野正嗣が死者、記憶、土地の声をめぐって描く小説として整理できます。水死人という存在は、失われたものが共同体へ戻ってくる不穏な気配を帯びています。生と死の境目を揺らしながら、地方の場所に残る記憶を読む作品です。 死と喪失記憶地方
  64. 064 2015 鳥の会議 とりのかいぎ 山下澄人 単行本・河出書房新社 『鳥の会議』は、山下澄人が鳥という非人間的な視点や集まりのイメージを通して、人間の言葉と身体をずらして描く作品として整理できます。会議という形式は共同性を示す一方、意味が共有されない不穏さも帯びています。断片的な語りと身体感覚から、日常の秩序が崩れる感触を読む小説です。 身体言葉と言語孤独と疎外
  65. 065 2015 地の底の記憶 ちのそこのきおく 畠山丑雄 初出・「文藝」2015年冬号 電波塔に見守られる架空の町を舞台に、百年を超える時間をたどる壮大なデビュー作。ラピス・ラズリ、電波、川の流れといったモチーフが、町と人物の記憶を深い層へ導く。現実と非現実、過去と現在が交錯する長い時間の物語として読むことができる。架空の町の歴史を掘り下げる構成が、記憶そのものの地層を読む感覚を生む。 記憶日本史地方 第52回 文藝賞
  66. 066 2014 コルバトントリ コルバトントリ 山下澄人 単行本・文藝春秋 『コルバトントリ』は、山下澄人が意味をすぐには回収しにくい言葉と、身体の記憶を結びつける小説として整理できます。題名の異物感そのものが、人物の経験を通常の物語に収めない姿勢を示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体記憶孤独と疎外
  67. 067 2014 九年前の祈り くねんまえのいのり 小野正嗣 初出・群像 2014年9月号 35歳のさなえは、カナダ人の夫に去られたあと、激しい癇癪を起こす幼い息子・希敏を連れて、故郷である大分の海辺の小さな集落に帰ってくる。育児に疲弊する彼女の脳裏には、九年前、集落の女たちとカナダを旅した際、世話役の「みっちゃん姉」が異国の教会で見せた祈りの姿が繰り返し蘇る。そのみっちゃん姉の息子がいま… 母と子信仰記憶 第152回 芥川賞
  68. 068 2014 おれたちの故郷 おれたちのふるさと 佐川光晴 単行本・集英社 『おれたちの故郷』は、佐川光晴が少年たちの成長と場所への思いを描く小説です。故郷は単なる懐かしい場所ではなく、十代の人物が他者と併走しながら自分を作る場として現れます。青春と共同性を、まっすぐな語りで読ませる作品です。 青春家族同調圧力
  69. 069 2014 ルンタ ルンタ 山下澄人 単行本・講談社 『ルンタ』は、山下澄人が土地、身体、記憶の断片を独特の語りでつなぐ小説です。題名の音の響きは意味をすぐには固定せず、人物の経験を通常の筋からずらしていきます。身体に残る感覚を、乾いたユーモアと不穏さで読ませる作品です。 身体記憶孤独と疎外
  70. 070 2014 聖地Cs せいちしーず 木村友祐 単行本・新潮社 『聖地Cs』は、木村友祐が聖地と名づけられる場所の力や、土地をめぐる記憶を扱う小説として整理できます。場所は信仰や観光の対象であるだけでなく、共同体の傷や欲望を集めるものとして読めます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評記録に基づく暫定的な紹介です。 信仰記憶地方
  71. 071 2014 鉄童の旅 てつどうのたび 佐川光晴 単行本・実業之日本社 『鉄童の旅』は、佐川光晴が鉄道と少年の移動を結びつける成長小説として整理できます。旅は遠くへ行くことだけでなく、自分の居場所や家族との距離を測る経験になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 青春家族労働
  72. 072 2013 晩年様式集(イン・レイト・スタイル) ばんねんようしきしゅう 大江健三郎 単行本・講談社 『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』は、東日本大震災後に書き継がれた大江健三郎晩年の長篇です。老いた作家の自己検証、家族、死者の記憶が重なり、作品を書くことそのものが喪失への応答として描かれます。大江の後期小説群を締めくくるように、長い息の文体で過去と現在を往還します。 死と喪失記憶芸術と表現
  73. 073 2013 ギッちょん ギッちょん 山下澄人 単行本・文藝春秋 『ギッちょん』は、山下澄人が身体の記憶や言葉になりにくい経験を、断片的な語りで立ち上げる小説です。題名の音の感触そのものが、人物の不器用さや世界とのずれを示します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 身体記憶孤独と疎外
  74. 074 2013 燃える家 もえるいえ 田中慎弥 単行本・講談社 『燃える家』は、下関を舞台に家族と国家の暴力を問う大長篇として既存データに記録されている田中慎弥作品です。家という場所は保護の空間ではなく、血縁、地域、歴史が燃え移る場として扱われます。今回の調査では単行本レコードをNDLで確認できなかったため、紹介は既存データと関連する『群像』書誌に基づく暫定情報… 家族暴力戦争
  75. 075 2013 往古来今 おうこらいこん 磯﨑憲一郎 単行本・文藝春秋 『往古来今』は、古代から現代までを貫く時間と生命の往還を描く磯﨑憲一郎の長篇です。個人の人生より大きな時間の流れのなかで、記憶や土地、身体が結び直されます。題名どおり、過去と現在を同じ地平で読む感覚が作品の核になります。 記憶死と喪失身体
  76. 076 2013 砂漠ダンス さばくダンス 山下澄人 単行本・河出書房新社 『砂漠ダンス』は、山下澄人が乾いた場所の感覚と身体の動きを結びつける小説です。砂漠とダンスという組み合わせは、孤立した空間でなお身体が反応し続けるイメージを作ります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と創作合評に基づく暫定的な紹介です。 身体孤独と疎外記憶
  77. 077 2013 獅子渡り鼻 ししわたりばな 小野正嗣 単行本・講談社 『獅子渡り鼻』は、親の事情で海辺の集落に預けられた少年・尊の日々を描く小野正嗣の小説です。土地の記憶、祈り、共同体の気配が、少年の視界を通じて静かに立ち上がります。海辺の集落を舞台に、家族から離された子どもの孤独と場所への感受性を描きます。 家族信仰孤独と疎外
  78. 078 2013 忘れられたワルツ わすれられたわるつ 絲山秋子 単行本・新潮社 『忘れられたワルツ』は、絲山秋子が記憶からこぼれ落ちる感情や、日常の不意のずれを描く短篇集です。ワルツのような反復と忘却の感覚が、人物の孤独や時間の歪みを浮かび上がらせます。抑えた語りのなかで、喪失とユーモアが同居する作品です。 記憶孤独と疎外死と喪失
  79. 079 2013 あな 小山田浩子 初出・「新潮」2013年5月号 仕事を辞めて夫の田舎へ移った語り手が、見知らぬ黒い獣を追って穴に落ちたことから、日常の風景が異界の気配を帯びていく。義実家周辺の人々や土地の奇妙さが、家庭と郊外生活の不安を静かに増幅する。現実と寓話の境目を曖昧にする語りが特徴の芥川賞受賞作。 身体一人称 第150回 芥川賞
  80. 080 2012 佐渡の三人 さどのさんにん 長嶋有 単行本・講談社 『佐渡の三人』は、佐渡という島の土地性を背景に、三人の人物の関係や記憶を描く長嶋有の小説です。島は閉じた場所でありながら、外から来る者と土地に残るものを結びつけます。長嶋作品らしい抑えたユーモアのなかで、家族や共同体への距離が見えてきます。 家族記憶孤独と疎外
  81. 081 2012 田中慎弥の掌劇場 たなかしんやのてのひらげきじょう 田中慎弥 単行本・毎日新聞出版 『田中慎弥の掌劇場』は、新聞連載から生まれた短い小説を収める掌編集です。短い形式のなかで、孤独、記憶、死の気配が圧縮され、長編とは別の鋭さで田中慎弥の暗い感触が現れます。掌編という制約が、語りの省略と余白を強くしています。 孤独と疎外記憶死と喪失
  82. 082 2012 最後のうるう年 さいごのうるうどし 二瓶哲也 初出・「文學界」2012年12月号 『最後のうるう年』は、新潟弁の語りが印象的な仁瓶哲也のデビュー作です。うるう年という特別な時間のずれを用いて、人間の孤独とつながりを描く作品として整理されています。方言の語りが、土地の感覚と時間の違和を結びつけます。 地方孤独と疎外記憶 第115回 文學界新人賞
  83. 083 2011 あかりの湖畔 あかりのこはん 青山七恵 単行本・中央公論新社 『あかりの湖畔』は、湖畔という静かな場所を背景に、家族や記憶の揺らぎを描く青山七恵の小説です。人物の感情は大きく叫ばれるよりも、風景や会話の間ににじみます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と題名に基づく暫定的な紹介です。 家族記憶孤独と疎外
  84. 084 2011 春待ち海岸カルナヴァル はるまちかいがんかるなゔぁる 木村紅美 単行本・新潮社 『春待ち海岸カルナヴァル』は、海辺の土地と春を待つ時間を重ね、記憶や人間関係の揺れを描く木村紅美の小説です。カルナヴァルという祝祭的な語は、静かな海岸の風景に非日常の気配を差し込みます。公開資料では内容細部を確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 記憶孤独と疎外家族
  85. 085 2011 こちらあみ子 こちらあみこ 今村夏子 単行本・筑摩書房 『こちらあみ子』は、周囲と噛み合わない少女あみ子の言動を通じて、家族、学校、共同体の残酷さを描く今村夏子のデビュー単行本です。純真さは美談としてではなく、他者とのずれを増幅する力として働きます。簡潔な文体のなかで、笑いと痛みが同時に立ち上がる作品です。 青春家族同調圧力 第24回 三島賞
  86. 086 2011 末裔 まつえい 絲山秋子 単行本・講談社 『末裔』は、血筋や受け継がれるものをめぐって、家族と記憶の問題を描く絲山秋子の小説です。題名は、人物が自分の始まりではなく、誰かの後に続く存在として生きている感覚を示します。乾いた文体のなかに、家の歴史と自己認識の不穏さが漂います。 家族記憶アイデンティティ
  87. 087 2011 領土 りょうど 諏訪哲史 単行本・新潮社 『領土』は、諏訪哲史が土地、言葉、所有の感覚を問い直す作品です。領土という政治的な語は、国家だけでなく、身体や記憶、語りが占める場所の問題にも広がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 言葉と言語アイデンティティ記憶
  88. 088 2011 共喰い ともぐい 田中慎弥 初出・すばる 2011年10月号 昭和63年夏、川辺の町に暮らす17歳の遠馬は、父・円とその愛人琴子との三人暮らし。父は性交の際に女を殴る男で、遠馬の実母・仁子はその暴力ゆえに家を出て、川向こうで魚屋を営んでいる。恋人の千種との関係が深まるにつれ、遠馬は自分の中にも父と同じ暴力の血が流れているのではないかという恐れに苛まれていく。鰻… 父と子暴力 第146回 芥川賞
  89. 089 2011 フラミンゴの村 ふらみんごのむら 澤西祐典 初出・「すばる」2011年11月号 『フラミンゴの村』は、二十世紀初頭のベルギーの村で、ある日突然に妻がフラミンゴになるという奇妙な出来事をめぐる幻想小説です。変身譚のかたちを取りながら、共同体の視線や夫婦の距離を浮かび上がらせます。ヨーロッパ文学的な寓話性を帯びた作品として整理できます。 夫婦身体同調圧力 第35回 すばる文学賞
  90. 090 2011 半島へ はんとうへ 稲葉真弓 初出・単行本刊行2011年・講談社。初出誌は未確認のため単行本年を year に採用 『半島へ』は、伊勢志摩の半島地帯を舞台に、衰えゆく自然と人間の静かな対話を描く散文詩的長編です。土地の風景と老い、移ろう自然の気配が、ゆるやかな時間の中で重なります。半島という外縁の場所から、生と死の境目を見つめる作品です。 老い死と喪失地方 第47回 谷崎賞
  91. 091 2010 うちに帰ろう うちにかえろう 広小路尚祈 単行本・文藝春秋 『うちに帰ろう』は、家へ帰るという素朴な動作を通じて、家族や生活の拠点を見つめ直す広小路尚祈の小説です。帰る場所は安心だけでなく、過去や関係の重さを引き受ける場所でもあります。平明な題名のなかに、家族と地方的な生活感への問いが込められています。 家族記憶孤独と疎外
  92. 092 2010 実験 じっけん 田中慎弥 単行本・新潮社 『実験』は、田中慎弥の硬質な語りで、人間関係や自己意識を極限まで試すように描く小説です。題名の「実験」は、科学的手続きというより、人物が自分や他者を材料にしてしまう冷たさを思わせます。不穏で息苦しい空気のなかに、孤独と暴力の気配が漂います。 孤独と疎外暴力アイデンティティ
  93. 093 2010 埋葬 まいそう 横田創 単行本・早川書房 『埋葬』は、死者を葬る行為を通じて、記憶、喪失、残された者の時間を描く横田創の小説です。埋葬は終わらせる儀式であると同時に、過去を地中に置いたまま忘れられない行為でもあります。静かな不穏さのなかで、死と生活の境界を読む作品です。 死と喪失記憶家族
  94. 094 2010 夜よりも大きい よるよりもおおきい 小野正嗣 単行本・リトルモア 『夜よりも大きい』は、小野正嗣が土地、記憶、喪失の感覚を静かに重ねる作品です。夜という時間よりも大きなものに包まれる感覚が、人物の孤独や死者の気配を呼び込みます。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。 記憶孤独と疎外死と喪失
  95. 095 2010 朝が止まる あさがとまる 淺川継太 初出・「群像」2010年6月号 『朝が止まる』は、ある朝の停止をめぐる内省的な物語として登録されている浅川圭太のデビュー作です。日常の時間が止まるという設定を通じて、個人の意識や世界との距離を見つめます。静かな異常事態を扱うことで、日常の輪郭を浮かび上がらせる作品です。 記憶孤独と疎外一人称
  96. 096 2009 犬と鴉 いぬとからす 田中慎弥 単行本・講談社 『犬と鴉』は、田中慎弥の硬質な文体で、人間の生の暗さや動物的な感覚を前面に出す作品です。犬と鴉という題名の組み合わせは、従順さと不吉さ、近さと遠さを同時に呼び込みます。閉じた生活の中で、身体と孤独がざらついた手触りで描かれます。 身体孤独と疎外暴力
  97. 097 2009 神キチ かみきち 赤木和雄 初出・新潮 2009年11月号 屋根屋として建築現場で働く主人公を、不条理な出来事が次々と襲う。だが彼や登場人物たちが本当に悩むのは、世界の理不尽そのものではなく、〈真剣に神に祈れない〉という一点だ。奇妙で黒い笑劇の合間に、切り刻まれた宗教性の断片が乱舞し、信じることが壊れてしまった時代の労働者の魂のありかを照らし出す。地方の建築… 信仰労働孤独と疎外 第41回 新潮新人賞
  98. 098 2009 糞神 くそがみ 喜多ふあり 単行本・河出書房新社 『糞神』は、身体の排泄や汚れのイメージを前面に出しながら、人間の信仰や共同体の感覚を揺さぶる作品です。喜多ふありの題名は挑発的ですが、そこには身体を持って生きることの逃れがたさがあるように読めます。神聖さと汚穢が接近する、不穏な寓話として分類しました。 身体信仰孤独と疎外
  99. 099 2009 世紀の発見 せいきのはっけん 磯﨑憲一郎 単行本・河出書房新社 『世紀の発見』は、巨大な機関車と大きな鯉の記憶、そして消えた友人をめぐって語りが展開する長篇です。現実の出来事と記憶の像が入り混じり、世界の見え方そのものが少しずつ変わっていきます。磯﨑憲一郎らしい、夢のようで乾いた語りの運動が読みどころです。 記憶芸術と表現アイデンティティ
  100. 100 2009 線路と川と母のまじわるところ せんろとかわとははのまじわるところ 小野正嗣 単行本・朝日新聞出版 『線路と川と母のまじわるところ』は、線路と川という移動のイメージを、母の記憶や土地の感覚と重ねる小野正嗣の作品です。場所の記憶は個人の家族史と結びつき、語りは土地をたどるように進みます。母と子、故郷、移動の主題を静かに読む小説です。 母と子記憶家族
  101. 101 2009 瘡瘢旅行 そうはんりょこう 西村賢太 単行本・講談社 『瘡瘢旅行』は、藤澤清造の墓参と女性との旅を描く、北町貫多ものの作品集です。私小説的な語りは、文学への執着、貧しさ、対人関係のこじれを隠さずに差し出します。旅の形を取りながら、過去の傷や屈辱を抱え直す作品として読めます。 貧困芸術と表現孤独と疎外
  102. 102 2009 水死 すいし 大江健三郎 単行本・講談社 『水死』は、父の死の記憶と「水死小説」の構想をめぐる、大江健三郎晩年の古義人もの長篇です。家族史、戦後史、文学を書くことが複層的に絡み、個人の記憶は国家や天皇制の問題にも接続します。長い息の文体で、作家自身の過去を再検討する作品です。 父と子記憶戦争
  103. 103 2009 よもぎ学園高等学校蹴球部 よもぎがくえんこうとうがっこうしゅうきゅうぶ 松波太郎 単行本・文藝春秋 『よもぎ学園高等学校蹴球部』は、高校サッカー部を題材に、競技、学校、青春の共同体を描く松波太郎の長篇です。勝敗だけでなく、集団のなかで身体を動かすこと、仲間や制度に巻き込まれることが主題になります。スポーツ小説の形を取りながら、若者の同調圧力や孤独も見えてくる作品です。 青春同調圧力身体
  104. 104 2008 走ル はしる 羽田圭介 単行本・河出書房新社 『走ル』は、高校生が自転車で北へ向かい続けるロードノベルです。走る身体の疲労と速度が、若い自意識や孤独をそのまま運んでいきます。目的地よりも、移動し続ける時間のなかで自分の輪郭が変わるところが読みどころです。 青春身体孤独と疎外
  105. 105 2008 射手座 いてざ 上村渉 初出・文學界 2008年12月号 日系ブラジル人の語り手が、妹ルシアに関わる謎めいた男・加賀芳明と向き合う。妹の万引きに関わった加賀は、やがて妹が遺棄した赤ん坊について語り出し、赤ん坊を運んで山道をひとりさまよう。語り手が加賀から聞いた話を伝聞のかたちで重ねていく重層的な構造により、何が真実かは最後まで曖昧なまま、登場人物の誰ひとり… 移民と越境孤独と疎外死と喪失 第107回 文學界新人賞
  106. 106 2008 神様のいない日本シリーズ かみさまのいないにほんシリーズ 田中慎弥 単行本・文藝春秋 『神様のいない日本シリーズ』は、「江夏の21球」で知られる1979年の日本シリーズを背景に、父と子の時間を描く中篇です。野球の記憶は、家族の記憶や時代の空気を呼び戻す装置になります。田中慎弥の乾いた語りが、父子関係の近さと断絶を浮かび上がらせます。 父と子記憶芸術と表現
  107. 107 2008 イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集 いぎりすかいがん いーはとーう たんぺんしゅう 木村紅美 単行本・メディアファクトリー 『イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集』は、宮沢賢治のイーハトーヴを思わせる場所の記憶や文学的想像力を、短篇のかたちでたどる作品集です。実在の土地と架空の地名が重なり、読むこと、訪ねること、思い出すことがひとつにつながります。静かな幻想性と地方の手触りが読みどころです。 芸術と表現記憶言葉と言語
  108. 108 2008 切れた鎖 きれたくさり 田中慎弥 単行本・新潮社 『切れた鎖』は、地方の閉ざされた土地に生きる血族を描く三篇を収めた作品集です。家族や土地の結びつきは守りではなく、逃れがたい暴力や因縁として迫ってきます。簡潔で硬い語りが、血縁の鎖が切れる瞬間の不穏さを際立たせます。 家族暴力死と喪失 第21回 三島賞
  109. 109 2008 子守唄しか聞こえない こもりうたしかきこえない 松尾依子 初出・群像 2008年6月号 田舎町に暮らす女子高生・美里は、男友達4人に囲まれた一見満ち足りた日々を送っている。だが「愚鈍な真沙子」と見下していた同級生が自分に執着し、つきまとうようになると、保っていたはずのエゴの均衡が崩れはじめる。幼い日の海の記憶や謎めいた老婆との出会いを織り込みながら、思春期の自意識の残酷さと出口のなさを… 青春同調圧力孤独と疎外 第51回 群像新人賞
  110. 110 2008 マイクロバス マイクロバス 小野正嗣 単行本・新潮社 『マイクロバス』は、移動する小さな乗り物を通して、地方の場所や人々の距離を描く小野正嗣の作品です。バスという共有空間は、共同体に属することと、そこから外れることの両方を見せます。静かな語りのなかで、土地の記憶と孤独がゆっくり浮かび上がります。 記憶孤独と疎外移民と越境
  111. 111 2007 だだだな町、ぐぐぐなおれ だだだなまち、ぐぐぐなおれ 広小路尚祈 初出・群像 2007年6月号 第50回群像新人文学賞優秀作に選ばれたデビュー作。タイトルの擬音めいた口語が示すとおり、ぱっとしない地方の町でくすぶる「おれ」の日々を、脱力した語り口で描く。ホテルマン、タクシー運転手、消費者金融など10以上の職を転々とした作者の経歴がにじむ、働く男の鬱屈とおかしみは、のちに芥川賞候補となる「うちに… 労働孤独と疎外方言・口語
  112. 112 2007 大人ドロップ おとなどろっぷ 樋口直哉 単行本・小学館 『大人ドロップ』は、若者が大人になる前後の感情を、学校や地方の時間のなかで描く青春小説です。恋愛や友情の明るさだけでなく、過ぎてしまう時間への痛みが語りの底にあります。簡潔な文体で、思い出になる直前の出来事をすくい取る作品として読めます。 青春恋愛記憶
  113. 113 2007 島の夜 しまのよる 木村紅美 単行本・角川書店 『島の夜』は、島という隔てられた場所と夜の時間を背景に、孤独や記憶の濃度を描く作品として整理できます。閉じた地理は、人間関係を近づける一方で、逃げ場のなさも作ります。静かな語りのなかに、不安と親密さが同時に漂う読み味があります。 孤独と疎外記憶恋愛
  114. 114 2007 舞い落ちる村 まいおちるむら 谷崎由依 初出・文學界 2007年6月号 生まれ育った女系の村では、時間の進み方や年齢の重ね方が定まらず、ものの数も曖昧で、人々は個々の名前すらめったに持たない。「わたし」はその「言葉を信じない」村のあり方に違和感を抱き、村と大学のある街とを行き来するうち、言葉を信じ言葉で武装した人物に強く惹かれていく。土俗的な幻想と言語への意識を重ね合わ… 言葉と言語記憶家族 第104回 文學界新人賞
  115. 115 2007 二度はゆけぬ町の地図 にどはゆけぬまちのちず 西村賢太 単行本・角川書店 『二度はゆけぬ町の地図』は、戻れない場所への執着と、貧しい生活の記憶を私小説的な語りでたどる作品です。西村賢太らしい露悪的な自己凝視が、地図に残る町と、もう行けない過去を重ねます。労働、金銭、孤独が乾いた笑いと屈辱の感覚で結びついています。 貧困記憶孤独と疎外
  116. 116 2007 ワンちゃん わんちゃん 楊逸 初出・文學界 2007年12月号 日本に渡って暮らす中国人女性「ワンちゃん」は、中国の女性たちと日本の男たちを引き合わせる見合いツアーの世話役を務めている。国境をまたぐ結婚の斡旋という生々しい現場を通して、経済格差のなかを生きる女たちのたくましさと哀感を、来日20年の作者がよどみのない日本語で描いた。日本語を母語としない書き手が日本… 移民と越境ジェンダー貧困 第105回 文學界新人賞
  117. 117 2007 ピストルズ ぴすとるず 阿部和重 初出・「群像」2007年1月号〜2009年11月号連載(初出年2007年、単行本2010年8月・講談社) 『ピストルズ』は、山形県の架空の町「神町」を舞台に展開する阿部和重の「神町サーガ」第二部です。連載開始は2007年で、単行本は2010年に刊行されました。血縁、土地、暴力、神話的な町の歴史が入り組み、現代日本の地方を壮大なフィクション空間に変える作品です。 地方家族暴力 第46回 谷崎賞
  118. 118 2006 風化する女 ふうかするおんな 木村紅美 初出・文學界 2006年6月号 突然死んだ会社の先輩れい子には、職場で見せていたのとは別の顔があった。「私」はその謎をたどって東京から地方へと旅をし、死んだ女の生の痕跡に自分を重ねていく。日々がたえず「風化」していく都会の生活感覚を背景に、死者をなぞることでしか確かめられない自分の輪郭を、抑制された筆致で描いたデビュー作。 死と喪失孤独と疎外労働 第102回 文學界新人賞
  119. 119 2006 銀色の翼 ぎんいろのつばさ 佐川光晴 単行本・文藝春秋 『銀色の翼』は、生活の現場にいる人々の視線から、家族、労働、社会的な孤立を描く佐川光晴の小説です。派手な事件よりも、日々の選択や関係のほころびを通して人物を立ち上げるタイプの作品として位置づけられます。現実に踏みとどまる語りが、傷や希望を過度に美化しない点が読みどころです。 家族労働孤独と疎外
  120. 120 2006 森のはずれで もりのはずれで 小野正嗣 単行本・文藝春秋 『森のはずれで』は、共同体の中心ではなく「はずれ」に立つ人物の感覚を、小野正嗣らしい静かな語りで描く作品です。森や周縁の場所は、記憶、土地、言葉の違いを考えるための舞台になります。中心から外れた場所で人がどう他者と出会うかを読む作品として位置づけられます。 移民と越境孤独と疎外記憶
  121. 121 2006 裏庭の穴 うらにわのあな 田山朔美 初出・文學界 2006年12月号 主婦の朝子は、幼い頃に母親が裏庭に何かを埋めるのを目撃したという記憶を、大人になっても抱え続けている。掘り返されないまま家族の足元に空いた「穴」のような記憶を軸に、平穏に見える家庭の日常の底に沈む鬱屈と、母と娘のあいだのほどけない結び目を描く。受賞作は2009年刊の作品集『霊降ろし』(文藝春秋)に収… 家族母と子記憶 第103回 文學界新人賞
  122. 122 2005 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ ふぬけども、かなしみのあいをみせろ 本谷有希子 単行本・講談社 両親の事故死をきっかけに、女優を夢見る自己中心的な姉・澄伽が田舎の実家へ戻ってくる。妹、兄夫婦、家族内の記憶と嫉妬が、痛烈な喜劇として噴き出す。本谷有希子の戯曲的な会話と、家族を安全な場所として描かない毒の強さが読みどころである。 家族芸術と表現暴力
  123. 123 2005 半島を出よ はんとうをでよ 村上龍 単行本・幻冬舎 北朝鮮の特殊部隊が福岡を占拠するという危機を、政治、軍事、若者たちの暴力性を絡めて描く大部の長編。現実の東アジア情勢を踏まえながら、国家の危機管理と個人の生存感覚を同時に扱う。村上龍らしい社会不安への感度と、エンターテインメント的な速度が結びついた作品である。 戦争暴力テクノロジー
  124. 124 2005 みずうみ みずうみ 吉本ばなな 単行本・フォイル 母を亡くした女性と、過去に深い傷を抱えた青年の恋を描く長編。湖の静けさは、癒やしの場所であると同時に、人物が抱える記憶の暗さを映す場所にもなる。吉本ばななの柔らかな語りが、トラウマと恋愛を過剰に説明しすぎず、余韻として残す。 恋愛死と喪失記憶
  125. 125 2005 踊るナマズ おどるなまず 高瀬ちひろ 初出・すばる 2005年11月号 ナマズにまつわる民話や伝説が数多く残る田多間町。弥生は中学の同級生・一真と民話のレポートを作るうち、「ナマズの番人」と呼ばれる元図書館司書・水口さんから古い伝説を聞き、ナマズの幻を見たという叔母・小夜子の記憶にも触れていく。やがて母となった弥生が胎児に語りかけるという入れ子の構成で、土地の記憶と性… 記憶母と子 第29回 すばる文学賞
  126. 126 2005 逃亡くそたわけ とうぼうくそたわけ 絲山秋子 単行本・中央公論新社 『逃亡くそたわけ』は、精神病院を抜け出した二人の若者が、博多から九州を北へ進む逃避行を描く小説です。方言を含む勢いのある語りが、病や孤立を重く固定せず、滑稽さと切実さの両方で走らせます。逃げることが同時に自分の輪郭を確かめることになる、青春ロードノベルとして読めます。 青春孤独と疎外
  127. 127 2005 冷たい水の羊 つめたいみずのひつじ 田中慎弥 初出・新潮 2005年11月号 級友たちの生け贄のようにいじめの標的にされた中学生の少年。彼は「いじめられたと感じたらそれがいじめ」という定義を逆手に取り、「自分はいじめられていない」という独自の論理に立てこもって、陰惨な仕打ちを受け続ける。いじめを告発した同級生の少女・水原里子との心中の計画が、物語に暗い水脈のように流れる。羊の… 暴力同調圧力孤独と疎外 第37回 新潮新人賞
  128. 128 2004 青空感傷ツアー あおぞらかんしょうツアー 柴崎友香 単行本・河出書房新社 身勝手で魅力的な親友・音生に振り回されながら、「私」が各地を巡るロードノベル。旅は爽快な逃避であると同時に、親友への憧れや苛立ち、自分の輪郭の曖昧さを映し出す時間でもある。柴崎友香らしい移動の感覚と会話のリズムで、若い女性同士の距離を軽やかに描く。 青春恋愛孤独と疎外
  129. 129 2004 介護入門 かいごにゅうもん モブ・ノリオ 初出・文學界 2004年6月号 寝たきりの祖母を在宅で介護する無職の「俺」が、深夜のおむつ替えや褥瘡のケアといった介護の現実を、ヒップホップのライムを思わせる呼びかけと畳みかける長文で語る。「ヨォ、と俺は呼びかける」という挑発的な語りは、介護を美談にも悲劇にも回収せず、祖母への愛と世間への呪詛を同じ熱量で吐き出していく。介護文学に… ケアと介護家族老い 第98回 文學界新人賞
  130. 130 2004 海のふた うみのふた 吉本ばなな 単行本・ロッキング・オン 故郷の海辺の町でかき氷屋を始めた女性のひと夏を描く長編。海、店、訪れる人々とのやりとりを通じて、傷ついた心が生活の手触りを取り戻していく。吉本ばなならしいやさしい幻想味が、地方の小さな商いと再生の感覚に結びついている。 労働家族記憶
  131. 131 2004 海の仙人 うみのせんにん 絲山秋子 単行本・新潮社 海辺で暮らす人物の孤独に、現実から少しずれた存在や関係が入り込んでくる絲山秋子の長篇。日常的な会話の軽さと、死や喪失の気配が同じ平面に置かれ、海辺の時間が寓話のように広がる。恋愛小説でも幻想小説でもあるが、どちらにも収まりきらない余白が読みどころになる。 孤独と疎外恋愛死と喪失
  132. 132 2003 ハゴロモ ハゴロモ 吉本ばなな 単行本・新潮社 恋愛や喪失で傷ついた人物が、都会から少し距離を置いた土地で静かに時間を取り戻していく吉本ばななの長篇。水辺や町の気配、記憶の手触りを重ねながら、壊れた心がすぐに治るのではなく、生活のリズムの中でゆっくりほどけていく過程を描く。幻想味を帯びたやわらかな文体が、再生の物語を日常の側に引き寄せている。 恋愛死と喪失記憶
  133. 133 2003 ハンゴンタン はんごんたん 由真直人 初出・文學界 2003年12月号 タイトルの「ハンゴンタン(反魂丹)」は、死者の魂を呼び戻すという伝承を持つ富山の伝統的な丸薬の名。哲学科出身の27歳の新人が、第95回・第96回と受賞作が1作以下の状態が続いた文學界新人賞の2003年下期に単独受賞した。選考委員は浅田彰・奥泉光・島田雅彦・辻原登・山田詠美。単行本化されておらず、内容… 死と喪失記憶一人称 第97回 文學界新人賞
  134. 134 2003 家畜の朝 かちくのあさ 浅尾大輔 初出・新潮 2003年11月号 中卒で道路工事などの日雇い仕事をしながら日銭を稼ぐ主人公と、その仲間たちのうだつの上がらない日々。労働と競艇と愚行で埋まる時間の隙間に、父親の自殺、学習障害、友人の堕胎といった出来事が断片として挟み込まれ、貧困が人と土地をどう蝕むかが一人称の語りで立ち上がる。労働運動の現場にいた作者が、「ワーキング… 労働貧困孤独と疎外 第35回 新潮新人賞
  135. 135 2003 夏休み なつやすみ 中村航 単行本・河出書房新社 就職も進路も決まりきらない青年が、夏の時間の中で宙ぶらりんの自分を抱えたまま過ごす。中村航らしい軽い会話と瑞々しい感覚で、何者にもなれない時期の切なさを描く。大きな転機よりも、季節の空気や友人関係の揺れが、青春の停滞と再生の気配を作っている。 青春労働孤独と疎外
  136. 136 2002 アルゼンチンババア アルゼンチンババア 吉本ばなな 単行本・ロッキング・オン 母の死後、「アルゼンチンババア」と呼ばれる女性と暮らし始めた父をめぐる物語。奇妙な人物や場所への戸惑いを通して、家族の喪失を別の関係へ開いていく。吉本ばなならしい、死後の時間をやわらかく生き直す物語。 家族死と喪失孤独と疎外
  137. 137 2002 にぎやかな湾に背負われた船 にぎやかなわんにせおわれたふね 小野正嗣 単行本・朝日新聞社 九州の海辺の集落「浦」を舞台に、土地の人々の記憶と語りを紡ぐ長編。個人の物語が、海辺の共同体、死者、土地の歴史と重なり合う。小野正嗣らしい、声の重なりと土地の記憶を読む作品。 記憶死と喪失移民と越境 第15回 三島賞
  138. 138 2002 海辺のカフカ うみべのかふか 村上春樹 単行本・新潮社 15歳の少年・田村カフカと老人ナカタの物語が並行して進む長編。家出、父と子、予言、暴力、異界的な出来事が絡み合い、現実と神話が重なる場所へ読者を導く。村上春樹の長編の中でも、寓話性と物語性が大きく広がった作品である。 父と子記憶暴力
  139. 139 2002 憂い顔の童子 うれいがおのどうじ 大江健三郎 単行本・講談社 大江健三郎の「おかしな二人組」三部作に連なる後期長編。作家・古義人を中心に、家族史、過去の暴力、共同体の記憶が重なり合う。晩年の大江が、自身の文学的記憶と死者との対話を小説化していく流れの中で読む作品である。 記憶家族死と喪失
  140. 140 2002 海馬の助走 かいばのじょそう 若合春侑 初出・単行本・書き下ろし(中央公論新社、2002年9月) 神道学・古典への造詣をもつ若合春侑の長編。佐川光晴「縮んだ愛」と同時受賞した第24回野間文芸新人賞受賞作。 父と子貧困家族 第24回 野間新人賞
  141. 141 2001 水に埋もれる墓 みずにうもれるはか 小野正嗣 単行本・朝日新聞社 小野正嗣のデビュー作で、既存データでは朝日新人文学賞受賞作とされる。水や墓のイメージが示すように、土地、記憶、死者との関係をめぐる作品として位置づけられる。後の小野作品に続く、共同体の記憶と語りへの関心の出発点として読みたい。 記憶死と喪失孤独と疎外
  142. 142 1999 宙返り ちゅうがえり 大江健三郎 単行本・講談社 かつて教団を解散した「師匠」と「案内人」の十年後の再出発を描く長編。 信仰地方
  143. 143 1999 透光の樹 とうこうのき 高樹のぶ子 初出・単行本1999年1月文藝春秋刊。連載誌の特定ができないため単行本刊行年を year とした。 加賀平野・鶴来を舞台に、テレビ業界の中年男性と老父の看護に戻った女性が25年の時を経て再会し、深まる愛を描く恋愛長篇。後に映画化された。単行本刊行年を year に採用。 恋愛老い死と喪失 第35回 谷崎賞
  144. 144 1998 ブエノスアイレス午前零時 ぶえのすあいれすごぜんれいじ 藤沢周 初出・「文藝」1998年夏季号(河出書房新社) 雪深い故郷の温泉旅館に戻った青年が、かつて横浜で娼婦をしていた盲目の老婆と出会い、深夜にタンゴを踊るという抒情的でハードボイルドな短編。花村萬月「ゲルマニウムの夜」と同時受賞。 老い孤独と疎外地方 第119回 芥川賞
  145. 145 1996 季節の記憶 きせつのきおく 保坂和志 初出・「群像」等に発表後、単行本1996年講談社刊。連載誌の詳細は特定できないため単行本刊行年を year とした。 鎌倉・稲村ヶ崎を舞台に、父と息子が過ごす初秋から冬の日々を断片的に描いた長篇。出来事ではなく意識の流れと時間の質感そのものを書こうとした保坂文学の代表作。平林たい子文学賞とのW受賞。単行本刊行年を year に採用。 家族記憶長い息の文体 第33回 谷崎賞
  146. 146 1996 火の山―山猿記 ひのやま やまざるき 津島佑子 初出・「群像」1996年8月号〜1997年8月号連載。単行本1998年6月講談社刊(上下巻)。初出連載開始年(1996年)を year とした。 富士山麓を舞台に、山梨の地質学者の家系をモデルとした有森家5代の歴史を書簡・日記を織り交ぜて描く大作。野間文芸賞との同時受賞。後にNHK連続テレビ小説「純情きらり」の原案となった。 家族長い息の文体地方 第34回 谷崎賞
  147. 147 1995 ジェロニモの十字架 じぇろにものじゅうじか 青来有一 初出・「文學界」1995年6月号(第80回受賞) 長崎を舞台に、カトリックの信仰と歴史的暴力の記憶が交差する世界を描いたデビュー作。 信仰死と喪失家族 第80回 文學界新人賞
  148. 148 1995 夏至祭 なつしさい 佐藤洋二郎 初出・講談社1995年刊 九州の小さな漁港を舞台に、土地の祭りや共同体の記憶と個人の喪失を交錯させた抒情的な長編。佐藤洋二郎の代表作のひとつ。第17回野間文芸新人賞受賞(水村美苗と同時)。 死と喪失記憶島・海辺 第17回 野間新人賞
  149. 149 1995 路地 ろじ 三木卓 初出・「群像」1995年1月号〜1997年1月号に「鎌倉」の通しタイトルで断続掲載。単行本1997年6月講談社刊。初出連載開始年(1995年)を year とした。 鎌倉の路地と古書肆を舞台とした7篇からなる連作短篇集。廃業した店、老いた人々、去りゆく時間を小津安二郎的な視点で丁寧に掬い取る。単行本化にあたり「鎌倉」から「路地」に改題。 老い記憶地方 第33回 谷崎賞
  150. 150 1994 首飾り くびかざり 雨森零 初出・「文藝」1994年 文藝時評で「カポーティを思わせる才能」と絶賛されたデビュー作。山形県文学全集にも収録された。 青春孤独と疎外地方 第31回 文藝賞
  151. 151 1994 虹の岬 にじのみさき 辻井喬 初出・単行本1994年1月中央公論社刊。連載誌の特定ができないため単行本刊行年を year とした。 大企業の要職を辞した男とその恋人である京都大学教授夫人との25年越しの情愛を描く恋愛長篇。加賀平野の鶴来を主な舞台とし、人生の決断と喪失を静謐な文体で綴る。単行本刊行年を year に採用。 恋愛死と喪失長い息の文体 第30回 谷崎賞
  152. 152 1994 みのむし みのむし 三浦哲郎 初出・「新潮」等1994年頃掲載。短篇集『ふなうた(短篇集モザイク 2)』(新潮社、1994年)に収録。初出誌・号の詳細は特定できないため収録単行本刊行年を year とした。 農家の老いた夫婦が蓑虫を題材にした短い会話を通して、生命の儚さと互いへの愛着を静かに語らう短篇。三浦哲郎の短篇集モザイクシリーズの一作で、川端賞の2度目の受賞作。単行本年を year に採用。 老い家族簡潔な文体 第22回 川端賞
  153. 153 1993 燃えあがる緑の木 もえあがるみどりのき 大江健三郎 単行本・新潮社 四国の森の村で「救い主」と呼ばれる青年をめぐる魂の救済を描く三部作(1993〜95年刊)。 信仰地方
  154. 154 1991 撃壌歌 げきじょうか 吉野光 初出・「文藝」1991年 『撃壌歌』は、戦後の信州の農村を舞台に、少年の成長と土地の変化を描く二部構成の作品です。封建的な地主制度の残滓と高度成長期の足音が交差し、個人の青春が村の時間の変化と重なります。歴史美術を専門とする著者らしい、土地と記憶へのまなざしが特徴です。 青春記憶地方 第28回 文藝賞
  155. 155 1990 青春デンデケデケデケ せいしゅんでんでけでけでけ 芦原すなお 初出・「文藝」1990年秋号 『青春デンデケデケデケ』は、1960年代の四国・観音寺で、ベンチャーズに憧れた高校生たちがバンドを組む青春小説です。方言まじりの軽快な語りと音楽への熱中が、地方の高校生活を明るく立ち上げます。懐かしさに寄りかかりすぎず、仲間と音を出す時間の高揚を描くところに魅力があります。 青春地方清新 第27回 文藝賞
  156. 156 1990 ランタナの花の咲く頃に らんたなのはなのさくころに 長堂英吉 初出・「新潮」1990年11月号 『ランタナの花の咲く頃に』は、知的障害を持つ甥に見合い話が来るという設定から、家族と地域の関係を描く表題作を含む短篇集です。沖縄出身の長堂英吉が、障害者の結婚や家族の戸惑いを、硬い告発ではなくユーモアと温かみを交えて描きます。受賞時58歳という遅い文壇デビューも、作品の受け止められ方を特徴づけていま… 家族障害地方 第22回 新潮新人賞
  157. 157 1990 じねんじょ じねんじょ 三浦哲郎 初出・「新潮」1990年掲載。短篇集『みちづれ(短篇集モザイク 1)』(新潮社、1991年)に収録。 『じねんじょ』は、老いた農夫が山芋を掘る日常を通じて、土地への愛着と家族の距離を描く短篇です。大きな事件ではなく、手仕事と沈黙のなかに人生の時間を滲ませるところに味わいがあります。三浦哲郎らしい地方の生活感覚と、老いの静けさが凝縮されています。 家族老い地方 第17回 川端賞
  158. 158 1989 TUGUMI つぐみ 吉本ばなな 単行本・中央公論社 海辺の町を舞台に、語り手まりあと、病弱で美しいが激しい気性を持つ少女つぐみの最後の夏を描く長編。家族経営の宿、海辺の時間、恋の予感、病と別れの気配が重なり、青春のまぶしさと残酷さが同時に立ち上がる。吉本ばなならしい平明な一人称で、親密な関係が永遠には続かないことを痛切に描く。 青春家族身体
  159. 159 1989 流離譚 りゅうりたん 中村隆資 初出・「文學界」1989年 『流離譚』は、中村隆資のデビュー作にあたる第69回文學界新人賞受賞作です。題名が示すように、定住できない感覚や移動の経験を軸にした作品として整理できます。第102回芥川賞候補にもなり、1989年下半期の新人賞作品として注目されました。 移民と越境孤独と疎外記憶 第69回 文學界新人賞
  160. 160 1988 ダンス・ダンス・ダンス だんす・だんす・だんす 村上春樹 単行本・講談社 『羊をめぐる冒険』の後日談として、「僕」が札幌のイルカホテルを再訪し、失われた女性や過去の気配を追っていく長編。現実のホテル、芸能界、ハワイ、羊男のいる異界がつながり、踊り続けることだけが世界との接続の方法として示される。1980年代の都市的な消費社会を背景に、喪失、記憶、孤独を冒険小説のリズムでた… 記憶死と喪失孤独と疎外
  161. 161 1988 ダイヤモンドダスト だいやもんどだすと 南木佳士 初出・「文學界」1988年9月号(第42巻第9号) 『ダイヤモンドダスト』は、信州の病院に勤務する医師が末期患者の死と向き合う日々を描く短篇です。医療現場の現実を過度に説明せず、死のそばにある静けさや、凍った水蒸気が光る表題のイメージを重ねていきます。病と死を扱いながら、情緒に流されない抑制された文体が印象に残ります。 死と喪失病院 第100回 芥川賞
  162. 162 1988 汝ふたたび故郷へ帰れず なんじふたたびこきょうへかえれず 飯嶋和一 初出・「文藝」1988年冬季号(河出書房新社) 『汝ふたたび故郷へ帰れず』は、飯嶋和一のデビュー作です。現代の苦境に置かれた人物を描く作品として整理され、後に歴史小説へ大きく展開する作家の初期の問題意識をうかがわせます。故郷への帰還不能という題が、喪失と自己の行き場のなさを強く示しています。 青春孤独と疎外身体 第25回 文藝賞
  163. 163 1987 懐かしい年への手紙 なつかしいとしへのてがみ 大江健三郎 単行本・講談社 語り手が導き手である「ギー兄さん」との関係をたどりながら、自分の文学的半生と故郷の森の記憶を再構成する自伝的長編。私小説の形式を借りながら、実際には作家自身と架空の人物をずらし、記憶・読書・共同体の物語を重ねていく。ダンテを媒介に、帰郷できない作家が森の村と文学の場所を問い直す。 記憶芸術と表現アイデンティティ
  164. 164 1987 69 sixty nine シックスティナイン 村上龍 単行本・集英社 1969年の佐世保を舞台に、高校生ケンの反乱と文化祭騒動を描く自伝的青春小説。政治の季節、ロック、映画、性への憧れが混ざり合い、重い時代背景を祝祭的な語りで駆け抜ける。村上龍作品の中では、暴力や破滅よりも若者のエネルギーとユーモアが前面に出る。 青春芸術と表現
  165. 165 1987 鍋の中 なべのなか 村田喜代子 初出・「文學界」1987年5月号(第41巻第5号) 『鍋の中』は、九州の農村を舞台に、土地の記憶、老い、血縁の連なりを濃密な語りで掘り起こす作品です。日常の台所や家族の場面から、土地に沈んだ神話的な感覚までを引き寄せるところに村田喜代子の個性が表れています。泥臭い生の肯定と、死や老いへの視線が同じ鍋の中で煮込まれるような読み味です。 家族老い記憶 第97回 芥川賞
  166. 166 1987 遠方より えんぽうより 谷口哲秋 初出・「文學界」1987年 『遠方より』は、谷口哲秋のデビュー作にあたる第65回文學界新人賞受賞作です。遠くから届くもの、遠くへ向かう視線を題名に持つ作品として、距離と記憶を主題化する初期作として整理しました。後に芥川賞候補にもなっており、文學界新人賞から純文学の選考圏へ進んだ作品です。 記憶孤独と疎外私小説的 第65回 文學界新人賞
  167. 167 1987 四万十川―あつよしの夏 しまんとがわ あつよしのなつ 笹山久三 初出・「文藝」1987年冬季号(河出書房新社) 『四万十川―あつよしの夏』は、高知県四万十川流域を舞台に、少年あつよしの夏を豊かな自然とともに描く作品です。川、家族、土地の生活感が、少年の成長と結びついています。後にシリーズとして読み継がれる「四万十川」作品群の出発点です。 青春家族地方 第24回 文藝賞
  168. 168 1987 カワセミ かわせみ 図子英雄 初出・「新潮」1987年11月号(新潮社) 戦時下の四国を舞台に、飛ぶ宝石とも呼ばれるカワセミの生命に魅せられた少年の日々を描く表題作を含む短篇集。紀伊國屋の内容説明では、無頼の道を歩む幼なじみの苛烈な生を写す「牙」なども収録される。自然へのまなざし、少年の感受性、戦時下の地方の時間が静かに重なっていく。 戦争青春死と喪失 第19回 新潮新人賞
  169. 169 1986 M/Tと森のフシギの物語 エムティーともりのフシギのものがたり 大江健三郎 単行本・岩波書店 四国の森に伝わる物語を、M=母権的な存在とT=トリックスター的な存在の対立・変奏として語る長編。村の伝承、神話、人類学的な型を組み合わせ、作家の幼年期の森を大きな物語装置へ変えていく。短い断章を積み重ねる構成で、個人の記憶と共同体の神話が互いに照らし合う。 記憶アイデンティティ家族
  170. 170 1985 午後の祠り ごごのまつり 江場秀志 初出・「すばる」1985年12月号(集英社) 沖縄を舞台に、暑熱の中で樹木、草、石までもが息をつめるような自然と、老婆の心象が一体化していく作品。既存梗概では沖縄赴任中の医師が触れる民俗的世界として位置づけられており、土地の自然と信仰的感覚が物語の中心にある。外から来た者が出会う沖縄の時間と、老いの内面が静かに重なる読み味を持つ。 信仰老い地方 第9回 すばる文学賞
  171. 171 1984 青桐 あおぎり 木崎さと子 初出・「文學界」1984年11月号(第38巻第11号) 『青桐』は、乳癌に冒されながら医療を拒む叔母を、姪・充江の視点から見つめる作品です。看取りの時間に、北陸の旧家、幼時の火傷、叔母との愛憎が重なり、家族の記憶と身体の傷がゆっくり露出していきます。死をめぐる静けさの奥に、親密さの暴力性を感じさせる点が読みどころです。 死と喪失家族 第92回 芥川賞
  172. 172 1984 天北の詩人たち てんぽくのしじんたち 冬木薫 初出・「すばる」1984年12月号(集英社) 北海道の雪深い大地に生きる人々の熱い思いを詩情豊かに描く青春小説。厳しい冬と春への希望を背景に、詩と文学を愛する若者たちの情熱を謳う。 青春芸術と表現地方
  173. 173 1983 光抱く友よ ひかりいだくともよ 高樹のぶ子 初出・「新潮」1983年12月号(第80巻第12号) 『光抱く友よ』は、北陸の旧家を背景に、若い女性の官能と精神の成熟を光のイメージとともに描く中篇です。家、身体、女性の内面が重なり合い、恋愛や性を単純な事件としてではなく、自己の輪郭を獲得する過程として読ませます。抒情性と緊張感のある心理描写が作品の核です。 アイデンティティ地方 第90回 芥川賞
  174. 174 1983 永遠の1/2 えいえんのにぶんのいち 佐藤正午 初出・「すばる」1983年12月号(集英社) 佐藤正午のデビュー長編。独特の軽みある語り口と、埋まらない空白を抱えた人間関係を描き、新世代の書き手として高い評価を受けた。 アイデンティティ恋愛一人称 第7回 すばる文学賞
  175. 175 1982 羊をめぐる冒険 ひつじをめぐるぼうけん 村上春樹 単行本・講談社 広告代理店で働く「僕」は、耳に星形の斑紋を持つ謎の羊を探すよう依頼され、ガールフレンドとともに北海道へ向かう。右派の大物、秘書、羊男、そして姿を消した鼠の痕跡が重なり、探偵小説めいた筋立ては次第に幻想と喪失の物語へ変質していく。初期の軽やかな一人称の語りを保ちながら、政治的な力、戦後の記憶、個人の空… 記憶孤独と疎外アイデンティティ 第4回 野間新人賞
  176. 176 1982 夢の壁 ゆめのかべ 加藤幸子 初出・「新潮」1982年9月号(第79巻第9号) 『夢の壁』は、北京での幼少期の記憶を背景に、異文化の中で形成された自己感覚と現在のまなざしを重ねる作品です。人間と自然、記憶と現実の境目を探る語りには、生態学的な観察と越境の感覚が混ざっています。歴史や国境を大きく語るより、個人の記憶の層から世界を見直すところに読みどころがあります。 記憶移民と越境アイデンティティ 第88回 芥川賞
  177. 177 1982 野餓鬼のいた村 のがきのいたむら 加藤幸子 初出・「新潮」1982年11月号(新潮社) 加藤幸子のデビュー作。北海道の自然と人の苛烈な生を描き、翌年芥川賞を受賞する「夢の壁」へと続く起点となった。 労働貧困地方 第14回 新潮新人賞
  178. 178 1980 コインロッカー・ベイビーズ コインロッカー・ベイビーズ 村上龍 単行本・講談社 1972年夏、コインロッカーに遺棄されたキクとハシは、施設と養家を経て、それぞれ異なるかたちで母の不在と都市への怒りを抱え込む。ハシは歌声とショービジネスに、キクはアネモネや毒物ダチュラをめぐる破壊衝動に引き寄せられ、東京は欲望と暴力が増殖する異様な空間として立ち上がる。棄児、身体、都市、音の記憶を… 暴力身体家族 第3回 野間新人賞
  179. 179 1980 裸足 はだし 木崎さと子 初出・「文學界」1980年 『裸足』は、木崎さと子のデビュー作にあたる第51回文學界新人賞受賞作です。旧満洲生まれという作者の背景を踏まえると、戦後の移動経験や身体感覚を抱えた初期作品として位置づけられます。詳細な筋は今回確認できていないため、作品紹介は受賞・作家史上の位置づけを中心にしています。 移民と越境記憶私小説的 第51回 文學界新人賞
  180. 180 1980 ギンネム屋敷 ぎんねむやしき 又吉栄喜 初出・「すばる」1980年12月号(集英社) 『ギンネム屋敷』は、1950年代の米軍占領期の沖縄・浦添を舞台に、ギンネムの茂る屋敷に住む朝鮮人男性への疑惑と暴力を描く又吉栄喜のデビュー作です。沖縄、朝鮮人、米軍占領という複数の歴史的圧力が、地域社会の空気の中に沈み込んでいます。土地の記憶と差別の構造を読む作品です。 暴力移民と越境寓話・幻想 第4回 すばる文学賞
  181. 181 1980 遠雷 えんらい 立松和平 初出・単行本(河出書房新社、1980年6月)。初出誌は未確認。 栃木県の都市近郊で農業を営む満夫が、工業団地の建設による農地の喪失とビニールハウスのトマト栽培失敗、見合い結婚と祖母の死を経験する。高度成長後の農村解体を若者の視点で描いた第2回野間文芸新人賞受賞作。のちに映画化。 地方労働家族 第2回 野間新人賞
  182. 182 1979 同時代ゲーム どうじだいゲーム 大江健三郎 単行本・新潮社 四国の森の谷間にある「村=国家=小宇宙」を、手紙・神話・歴史の断片を重ねて語り直す実験的長編。語り手は村の起源、反乱、血縁、移住の記憶を再編し、個人の物語ではなく共同体が自分自身を語る仕組みそのものを小説化する。大江の森の神話と戦後政治への問いが、濃密な語りの構造として展開される。 記憶アイデンティティ暴力
  183. 183 1979 風の歌を聴け かぜのうたをきけ 村上春樹 単行本・講談社 1970年の夏、「僕」と友人「鼠」の9日間を描いた村上春樹のデビュー作。短い章、乾いた会話、音楽や翻訳文学の気配によって、青春の終わりと喪失感が軽やかに語られる。後の「鼠三部作」へ続く、村上春樹の文体と世界観の出発点である。 青春記憶孤独と疎外 第22回 群像新人賞
  184. 184 1967 万延元年のフットボール まんえんがんねんのフットボール 大江健三郎 単行本・講談社 友人の死と家族の危機を抱えた蜜三郎が、弟の鷹四とともに四国の谷間の村へ戻り、百年前の一揆の記憶と向き合う長編。兄弟の対立、障害をもつ子の存在、共同体に残る暴力の記憶が、過去と現在を重ねる構成の中で展開する。閉ざされた村落を神話的な舞台として、個人史と共同体史、政治的熱狂と責任の問題を絡み合わせた大江… 家族記憶暴力 第3回 谷崎賞
  185. 185 1959 山塔 さんとう 斯波四郎 初出・「早稲田文学」1959年5月号(第41回芥川賞受賞) 『山塔』は、斯波四郎が第41回芥川賞を受賞した短篇集の表題作です。公開資料で詳しい筋を確認できる範囲は限られますが、生活の厚みと人間の時間を描く作品として評価されました。既存調査にある選評の要点からは、技巧よりも「人生」が感じられる点が評価されたことがわかります。 記憶家族老い 第41回 芥川賞
  186. 186 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 大江健三郎 単行本・講談社 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自… 戦争暴力青春
  187. 187 1958 飼育 しいく 大江健三郎 初出・文學界 1958年1月号 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 戦争暴力青春 第39回 芥川賞
  188. 188 1956 海人舟 かいとぶね 近藤啓太郎 初出・「文學界」1956年2月号(第35回芥川賞受賞) 『海人舟』は、千葉・鴨川の海辺を背景に、漁師たちの労働と土地に根ざした生活を描く短篇です。近藤啓太郎自身の漁業体験に近い素材を、海と身体の感覚を伴うリアリズムで扱っています。都市の内面劇とは違う、海辺の共同体と労働の重さが読みどころです。 労働身体家族 第35回 芥川賞
  189. 189 1956 金閣寺 きんかくじ 三島由紀夫 初出・「新潮」1956年1〜10月号連載。単行本は1956年10月、新潮社刊。 『金閣寺』は、1950年の金閣寺放火事件に着想を得て、吃音と自己嫌悪を抱える若い僧が美に囚われていく過程を描く長篇です。金閣の絶対的な美が主人公の現実感を侵食し、破壊衝動へ変わるまでを緊密な心理描写で追います。三島由紀夫の美意識とニヒリズムが最も鋭く結びついた戦後文学の代表作です。 芸術と表現身体暴力
  190. 190 1954 潮騒 しおさい 三島由紀夫 初出・書き下ろし長篇。1954年6月10日、新潮社刊。 『潮騒』は、三重県の孤島を舞台に、若い漁夫と海女の恋を明るく端正に描く長篇です。古代ギリシャの牧歌的恋愛物語を思わせる構成を、日本の海辺の共同体に置き換えています。三島由紀夫作品のなかでは例外的に清明な青春小説として読まれ、自然と身体の健やかさが強く印象に残ります。 青春恋愛身体
  191. 191 1952 或る「小倉日記」伝 あるこくらにっきでん 松本清張 初出・「三田文学」1952年9月号(第28回芥川賞受賞) 『或る「小倉日記」伝』は、森鷗外の小倉時代を記録することに生涯を傾けた人物を主人公にする短篇です。文学史の周縁にいる無名の調査者の執念をたどり、資料を追う行為そのものを物語化しています。史実と想像を接続する構成が、のちの松本清張の記録性・推理性を予告します。 記憶芸術と表現障害 第28回 芥川賞
  192. 192 1951 春の草 はるのくさ 石川利光 初出・「近代文学」1951年(第25回芥川賞受賞、安部公房「壁」と同時受賞) 『春の草』は、石川利光が第25回芥川賞を安部公房『壁』と同時受賞した作品です。詳しい筋を確認できる公開資料は少ないものの、戦後まもない文学場で、生活の手触りと内面の揺れを描くリアリズム系の短篇として受け止められました。現時点では、書誌・受賞情報を中心に紹介しています。 記憶家族私小説的 第25回 芥川賞