Narrative

長篇

語り口「長篇」に分類された 49 作品。

  1. 001 2023 水車小屋のネネ すいしゃごやのねね 津村記久子 初出・単行本(毎日新聞出版、2023年3月刊行) 『水車小屋のネネ』は、親元を離れた姉妹が、水車小屋のある町で人々に支えられながら長い時間を生きていく長篇です。そば粉を挽く水車、言葉をまねる鳥ネネ、町の人たちとの関係が、生活を立て直すためのゆるやかな共同性を形づくります。大きな救済ではなく、誰かが誰かを少しずつ助ける時間を積み重ねる作品です。 家族労働生活 第59回 谷崎賞
  2. 002 2021 女優 大鶴義丹 初出・「すばる」2021年5月号~7月号に連載。単行本は集英社から2022年1月刊行。 『女優』は、大鶴義丹の長篇小説です。集英社公式ページでは、小劇団を主宰する語り手が、昭和を代表する女優である母との葛藤を抱えながら、母への復讐の物語を演出しようとする作品として紹介されています。NDLサーチでは『すばる』2021年5月号から7月号までの掲載と、2022年1月の集英社版単行本を確認でき… 母子関係演劇復讐
  3. 003 2020 暗闇にレンズ くらやみにれんず 高山羽根子 初出・書き下ろし長編。2020年9月に東京創元社より刊行。 『暗闇にレンズ』は、高山羽根子の書き下ろし長編です。東京創元社公式ページでは、親友と監視カメラだらけの街を歩く高校生の「わたし」が、小さなレンズをかざして世界を切り取る場面を起点に、映像と記録、教育、娯楽、戦争や紛争にまつわる物語へ広がる作品として紹介されています。 映像と記録戦争家族史
  4. 004 2019 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び 大島真寿美 初出・単行本(文藝春秋、2019年3月刊行)。初出誌は今回未確定のため単行本年を year に採用。 『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』は、人形浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描く大島真寿美の歴史長篇です。大坂・道頓堀の芝居小屋と竹本座を舞台に、書くこと、語ること、人形を遣うことが交差し、物語が生まれる瞬間の熱を追います。芸能史の細部と、虚構が現実を巻き込む感覚を重ねた作品です。 芸能創作人形浄瑠璃
  5. 005 2018 ある男 あるおとこ 平野啓一郎 初出・「文學界」2018年6月号に掲載。2018年9月、文藝春秋より単行本刊行。 『ある男』は、戸籍上の名前と実際に生きた人物が一致しないという謎から、個人の同一性、家族、出自、社会的偏見を掘り下げる長篇です。ミステリ的な構成を取りながら、平野啓一郎が継続して扱ってきた「分人」的な自己観とも響き合います。 アイデンティティ家族差別
  6. 006 2013 感受体のおどり かんじゅたいのおどり 黒田夏子 初出・単行本(文藝春秋、2013年12月刊行)。初出誌は未確認のため単行本年を year に採用。 『感受体のおどり』は、文藝春秋BOOKSが「大河恋愛小説」であり「記憶についての物語」でもあると紹介する長篇です。『abさんご』で注目された黒田夏子の実験的な言葉の運動を、より長い時間幅と恋愛・記憶の物語へ広げる作品として位置づけられます。 恋愛記憶老い
  7. 007 2012 あたたかい水の出るところ 木地雅映子 初出・単行本(光文社、2012年4月刊行)。 『あたたかい水の出るところ』は、木地雅映子の青春小説です。光文社公式ページでは、温泉を「地上最強のパワースポット」とする主人公が、息が詰まる日常の中で出口を探すガール・ミーツ・ボーイ・ストーリーとして紹介されています。NDLサーチでは2012年4月に光文社から刊行されたNDC9 913.6の図書とし… 青春恋愛家族
  8. 008 2009 武曲 むこく 藤沢周 初出・「文學界」2009年6月号より連載開始、2011年9月号に最終回(NDLサーチ記事書誌で確認)。 『武曲』は、剣道をめぐる身体と言葉のせめぎ合いを描く藤沢周の長篇です。剣を教える男と、無自覚な才能を持つ少年が出会うことで、暴力、継承、父性、才能への恐れが浮かび上がります。武道小説の枠組みを使いながら、身体の奥に沈む痛みを純文学的な密度で描きます。 武道暴力才能
  9. 009 2007 とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起 とげぬき しんすがもじぞうえんぎ 伊藤比呂美 初出・「群像」2006年2月号に第1回、2007年4月号に最終回掲載。講談社2007年6月刊。 『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』は、伊藤比呂美が『群像』に連載し、2007年に講談社から刊行した長篇詩的散文です。カリフォルニアと日本を行き来する語り手が、老いた父母の介護、身体の痛み、家族の変化、仏教的な死生観を、巣鴨地蔵への祈りや縁起譚のような声に重ねて語ります。詩と小説、私的記録と説話がほどけ合う… 老い介護身体
  10. 010 2006 海洞 : アフンルパロの物語 かいどう あふんるぱろのものがたり 三浦清宏 初出・2006年9月、文藝春秋刊。初出誌の詳細は今回確認できないため、単行本刊行年を year とした。 『海洞 : アフンルパロの物語』は、三浦清宏が2006年に文藝春秋から刊行した長篇小説です。NDLサーチでは、文藝春秋2006年9月刊、604ページ、ISBN 4-16-325230-4の単行本として確認できます。公開Webで信頼できる詳細梗概や初出誌は確認できなかったため、紹介は書誌情報を中心に整… 記憶土地歴史
  11. 011 2005 オール・トゥモロウズ・パーティーズ 清野栄一 初出・単行本(双葉社、2005年4月刊行)。 『オール・トゥモロウズ・パーティーズ』は、清野栄一の小説単行本です。NDLサーチでは2005年4月に双葉社から刊行された243ページの図書、NDC9 913.6として確認できます。出版書誌データベースでも、ISBN 9784575235227、4-6判、243ページ、2005年4月19日発売の書誌が… 音楽青春移動
  12. 012 2004 対岸の彼女 たいがんのかのじょ 角田光代 初出・文藝春秋2004年11月刊 『対岸の彼女』は、角田光代が2004年に文藝春秋から刊行した長篇小説です。文藝春秋BOOKSでは、30代で既婚・子持ちの小夜子と、独身で子どものいない葵という、生活環境も性格も異なる二人の女性の友情が成立するのかを問う作品として紹介されています。NDLサーチでは文藝春秋2004年11月刊の図書書誌を… 女性友情結婚
  13. 013 2003 博士の愛した数式 はかせのあいしたすうしき 小川洋子 初出・「新潮」2003年7月号、2003年8月新潮社より単行本刊行 『博士の愛した数式』は、事故の後遺症で新しい記憶を80分しか保てない数学者と、彼の家で働く家政婦、その息子の関係を描く長篇です。素数、友愛数、完全数などの数学的な美しさが、他者を思いやる言葉やふるまいと重ねられます。 記憶家族数学
  14. 014 2002 本格小説 ほんかくしょうせつ 水村美苗 初出・「新潮」2001年1月号-9月号、2002年1月号連載。新潮社2002年9月刊。 『本格小説』は、水村美苗が『新潮』連載をもとに2002年に新潮社から上下巻で刊行した長篇小説です。新潮社公式ページでは、米国での少女時代に出会った男の「小説のような人生」を、軽井沢に芽生え国境を越えて育まれる恋と、血族史・戦後日本の肖像として描く作品と紹介されています。上巻公式ページには『波』200… 恋愛記憶戦後
  15. 015 2001 センセイの鞄 せんせいのかばん 川上弘美 初出・単行本(平凡社、2001年6月刊行)。連載初出の詳細は今回未確定のため単行本年を year に採用。 『センセイの鞄』は、元教師と元教え子の再会から始まる恋愛小説です。居酒屋でのやりとり、季節の食べ物、散歩や旅の場面を積み重ねながら、二人の距離が急がずに変化していきます。川上弘美らしい淡いユーモアと寂しさが同居する代表作です。 恋愛老い孤独 第37回 谷崎賞
  16. 016 1999 あ・だ・る・と あ・だ・る・と 高橋源一郎 単行本・主婦と生活社 1999年に主婦と生活社から刊行された高橋源一郎の小説。「AVのゴダール」と呼ばれるAV監督・ピンを中心に、撮影現場の描写を主軸に置きながら、性と愛の問いを追う異色作。さまざまな女性を相手にAVを完成させようとするピンの現場を描き、エピローグでは業界から忽然と姿を消した先輩がインドから送ってきたフィ… 身体アイデンティティ
  17. 017 1999 宙返り ちゅうがえり 大江健三郎 単行本・講談社 いったん自分の教義を否定して「宙返り」した宗教的リーダーが、十年後、聖痕を帯びて戻ってくる。急進派や祈り続けてきた女性たち、再建をめぐる教会内部の企てが交錯し、四国の森を拠点に新しい共同体の可能性が問われる。信仰が歪められた時代に、神の不在も含めて「魂のこと」をする場所を探る、大江健三郎後期の長大な… 信仰長篇寓話的
  18. 018 1999 スプートニクの恋人 すぷーとにくのこいびと 村上春樹 単行本・講談社 22歳のすみれが、17歳年上で既婚の女性ミュウに激しい恋をするところから始まる長編。語り手の「僕」はすみれへの思いを抱えつつ、すみれとミュウの関係、そして失踪をめぐる奇妙でミステリアスな出来事に巻き込まれていく。スプートニクのイメージが、互いに近づきながら孤独な軌道を回る人間同士の距離を象徴する。 恋愛孤独と疎外一人称
  19. 019 1998 ライン ライン 村上龍 単行本・幻冬舎 『ライン』は、電話線のように結びつく複数の人物を連鎖的に描き、性、暴力、プライド、トラウマが現代日本の暗部へ流れ込んでいく長篇です。SM嬢、看護婦、ウエイター、キャリアウーマンなど断片的な人生を並置し、個々の孤独が通信や接触を通じて増幅される構造をとります。村上龍らしい硬質な速度感で、コミュニケーシ… 暴力孤独と疎外
  20. 020 1998 ゲルマニウムの夜 げるまにうむのよる 花村萬月 初出・「文學界」1998年6月号 『ゲルマニウムの夜』は、かつて暮らした修道院兼教護院へ、殺人の後に戻ってくる青年を中心にした長篇です。信仰の場であるはずの空間に、暴力、性、罪悪感が濃密に入り込み、聖と俗の境界が崩れていきます。荒々しい身体感覚と過剰な熱量によって、逃げ場のない生を押し出す作品です。 暴力信仰 第119回 芥川賞
  21. 021 1998 翔べ麒麟 とべきりん 辻原登 初出・単行本(読売新聞社、1998年刊行)。初出誌・連載媒体は今回未確定のため単行本年を year に採用。 『翔べ麒麟』は、辻原登の物語作家としての顔が前面に出た大部の長篇です。帝国の秩序、流浪、反乱、芸能、異郷の土地が重なり、歴史小説と幻想小説のあわいで物語が進みます。『村の名前』で見られた越境の感覚を、より広い歴史的・冒険的な空間へ押し広げた作品として位置づけられます。 歴史帝国越境
  22. 022 1997 あした、旅人の木の下で 松村栄子 初出・単行本(角川書店、1997年7月刊行)。初出誌は今回未確定のため単行本年を year に採用。 『あした、旅人の木の下で』は、芥川賞受賞後の松村栄子が発表した長篇小説です。旅人の木という題名上の象徴を手がかりに、移動する者の視線、記憶、他者との出会いを静かに描きます。現実の生活感と、どこか遠くへ向かう感覚が重なり合う作品です。 記憶出会い
  23. 023 1997 皆月 花村萬月 初出・単行本(講談社、1997年2月刊行)。初出誌は今回未確定のため単行本年を year に採用。 『皆月』は、花村萬月が芥川賞受賞作『ゲルマニウムの夜』の前後に書いた長篇小説です。妻に金を持ち逃げされた中年男が、義弟や風俗で働く女性との関係のなかで、傷ついた生活を立て直していきます。暴力や性を含む花村作品らしい荒い手触りのなかに、再生の物語が置かれています。 再生家族
  24. 024 1997 あとは野となれ 室井光広 初出・「群像」1997年4月号、6-96頁。単行本は講談社、1997年8月刊行。 『あとは野となれ』は、室井光広が芥川賞受賞後に講談社から刊行した長篇小説です。講談社公式ページでは、古今東西の「野」を遊行する「野ざらし思考小説」と紹介されています。偶然の一致を書き留める手帳、読書中の二冊の本、言語遊戯の横断という仕掛けを通じて、言葉と思考が連鎖していく室井らしい実験性の強い作品で… 言葉と言語読書偶然
  25. 025 1996 ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II ヒュウガ・ウイルス ごふんごのせかいツー 村上龍 単行本・幻冬舎 『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II』は、『五分後の世界』の続編として、別の時間軸の日本で発生した致死的な感染症を描く長編です。幻冬舎公式では、九州東南部の歓楽都市ビッグ・バンでウイルスが蔓延し、キャサリン・コウリーが日本国軍に同行する物語として紹介されています。戦争、感染、極限状況を重ねることで… 戦争身体SF的想像力
  26. 026 1996 ラブ&ポップ ラブアンドポップ 村上龍 単行本・幻冬舎 『ラブ&ポップ』は、1996年に幻冬舎から刊行された村上龍の長編で、援助交際をめぐる若者の性と消費を主題化した作品です。NDLで確認できる石川巧の論考タイトルからも、同作が「援助交際」という当時的な語をめぐる小説として読まれていたことが分かります。庵野秀明監督による実写映画化も確認でき、90年代後半… 青春社会小説
  27. 027 1996 SLY スライ 吉本ばなな 単行本・幻冬舎 『SLY』は、HIVポジティブであることを告げたかつての恋人・喬を、語り手の清瀬と日出雄がエジプトへの旅に連れ出す長篇です。幻冬舎公式の紹介では、絶望から始まる旅の中で友情がたどる運命が作品の核として示されている。恋愛、友情、生と死の距離を、旅の開放感と喪失の予感のあいだで描くよしもとばななの作品と… 恋愛死と喪失一人称
  28. 028 1995 KYOKO キョウコ 村上龍 単行本・集英社 ダンスを最優先に生きるキョウコが、東京、ニューヨーク、マイアミ、ハバナを旅する物語。かつてダンスを教えてくれた米兵を探す旅は、未来への鼓動、やすらぎ、再生を秘めた移動として描かれる。国境を越える身体表現と、孤独な旅のなかで自分の未来を手に取ろうとする清新さが読みどころになる。 移民と越境青春長篇
  29. 029 1995 デッド・エンド・スカイ でっど・えんど・すかい 清野栄一 初出・「文學界」1995年12月号掲載(第81回文學界新人賞受賞、1995年10月18日決定)。2001年に河出書房新社から単行本刊行。 『デッド・エンド・スカイ』は、清野栄一の第81回文學界新人賞受賞作を含む長篇小説です。河出書房新社公式ページでは、レイヴのDJが過去を振り返りながら地の果てを彷徨する作品として紹介されています。音楽文化、移動、回想が重なり、若者の閉塞感をスピリチュアルな放浪の感覚へ変換していく読みどころがあります。 青春芸術と表現長篇 第81回 文學界新人賞
  30. 030 1994 アムリタ アムリタ 吉本ばなな 単行本・福武書店 妹の死と頭部の怪我による記憶喪失を抱えた「私」が、弟の不思議なきざし、妹の恋人との関係、高知やサイパンへの旅を通じて、自分を取り戻せないまま世界を見つめていく長編。上巻紹介では「半分死んでいる」状態から生きることや幸福を感じ取る物語、下巻紹介では記憶の回復、出会いと別れ、生と死、幸福と孤独のあいだで… 記憶アイデンティティ一人称
  31. 031 1994 五分後の世界 ごふんごのせかい 村上龍 単行本・幻冬舎 『五分後の世界』は、現在より五分だけ時間軸のずれたもう一つの地球に迷い込んだ小田桐を通じ、戦後日本の別の可能性を軍事的な想像力で描く長編です。幻冬舎文庫版の内容紹介では、硝煙と泥濘の中を行進する場面から、戦闘国家として歴史を刻んだ「もう一つの日本」が示されています。現実改変SFの枠組みを使いながら… 戦争SF的想像力長篇
  32. 032 1994 ピアッシング ピアッシング 村上龍 単行本・幻冬舎 『ピアッシング』は、強迫観念に駆られた男と、幼少期の傷を抱えた女性の一夜を描く心理サスペンスです。殺害計画という暴力的な筋立てを通じて、身体への衝動、虐待の記憶、他者との接触の危うさが前景化します。村上龍の作品群のなかでは、都市的な閉塞と身体感覚の異常な高まりを緊密に扱う長編として整理できます。 暴力身体心理描写
  33. 033 1994 群体 藤原智美 初出・「群像」掲載作「森番」を改題。単行本は講談社、1994年3月刊行。 『群体』は、藤原智美が芥川賞受賞作『運転士』の後に講談社から刊行した長篇小説です。ウォーターフロントの高層インテリジェントビルで発見された大きなネズミを発端に、社内の噂が情報パニックへと膨張していく過程を描きます。講談社公式ページでは、群像掲載作「森番」を改題した作品として紹介されています。 情報パニック企業社会
  34. 034 1993 エクスタシー エクスタシー 村上龍 単行本・集英社 『エクスタシー』は、ニューヨークで出会った謎めいた日本人ホームレスをきっかけに、主人公が快楽と暴力のゲームへ巻き込まれていく長編です。集英社公式は、ゴッホの耳をめぐる問いから始まる不思議な出会いと、果てしなく反復される「恍惚のゲーム」を紹介している。身体、性、ドラッグをめぐる過激な素材を、村上龍らし… 身体暴力
  35. 035 1993 燃えあがる緑の木 もえあがるみどりのき 大江健三郎 単行本・新潮社 『燃えあがる緑の木』は、大江健三郎が四国の森の村を舞台に、共同体、信仰、救済をめぐって展開した三部作です。第1部『「救い主」が殴られるまで』から始まり、「救い主」と呼ばれる青年をめぐる期待と暴力、魂の再生への問いが重ねられます。後期大江の宗教的・共同体的想像力を読むうえで重要な長編群です。 信仰長篇寓話的
  36. 036 1993 マリア まりあ 川本俊二 初出・単行本(河出書房新社、1993年12月刊行)。 『マリア』は、川本俊二が河出書房新社から1993年に刊行した書き下ろし小説です。河出書房新社公式ページでは、謎の女・秋恵に体を売りながら、亡き母に似た少女へ惹かれていく16歳の卓美をめぐる作品として紹介されています。母性への希求と性の目覚めが重なる思春期の揺らぎを、文藝賞作家の受賞後第一作として描く… 母子関係青春
  37. 037 1992 イビサ イビサ 村上龍 単行本・角川書店 『イビサ』は、精神病院を退院したマチコが男に誘われてパリへ渡り、ドラッグ、セックス、アルコールに浸りながらモロッコ、バルセロナ、イビサ島へ漂流する物語です。海外の都市と身体の破滅感を通じて、自己を失いながらなお移動していく感覚を描きます。初期村上龍の暴力的な欲望と都市的な不安が濃く出た長篇です。 孤独と疎外アイデンティティ
  38. 038 1992 国境の南、太陽の西 こっきょうのみなみ、たいようのにし 村上春樹 単行本・講談社 『国境の南、太陽の西』は、バーを経営する主人公・始のもとに、幼なじみの謎めいた女性・島本さんが現れる恋愛長篇です。家庭と事業を持つ中年男性の安定が、過去の記憶と喪失感によって揺さぶられます。静かな一人称の語りで、欲望、後悔、取り返しのつかない時間を描きます。 恋愛記憶一人称
  39. 039 1992 エンドレス・ワルツ 稲葉真弓 初出・単行本(河出書房新社、1992年刊行)。初出誌は今回未確定のため単行本年を year に採用。 『エンドレス・ワルツ』は、ジャズ奏者・阿部薫と作家・鈴木いづみをモデルに、互いを傷つけながら激しく求め合う男女の軌跡を描く稲葉真弓の長篇です。音、速度、言葉、身体の破滅的な交錯を通して、芸術と恋愛の境界にある熱と痛みを描きます。 音楽恋愛破滅
  40. 040 1990 青春デンデケデケデケ せいしゅんでんでけでけでけ 芦原すなお 初出・「文藝」1990年秋号 『青春デンデケデケデケ』は、1960年代の四国・観音寺で、ベンチャーズに憧れた高校生たちがバンドを組む青春小説です。方言まじりの軽快な語りと音楽への熱中が、地方の高校生活を明るく立ち上げます。懐かしさに寄りかかりすぎず、仲間と音を出す時間の高揚を描くところに魅力があります。 青春長篇現代小説 第27回 文藝賞
  41. 041 1988 ノーライフキング いとうせいこう 初出・単行本(新潮社、1988年8月刊行)。初出誌は今回未確定のため単行本年を year に採用。 『ノーライフキング』は、ゲームをめぐる噂と子どもたちのコミュニケーションを通して、情報化社会の不安と熱狂を描くいとうせいこうの小説です。都市の子ども文化、メディア、流通する物語が重なり、現実とゲームの境界が揺らいでいきます。 ゲーム子ども文化都市
  42. 042 1983 いつもと同じ春 いつもとおなじはる 辻井喬 初出・1983年5月、河出書房新社刊。初出誌の詳細は今回確認できないため、単行本刊行年を year とした。 『いつもと同じ春』は、辻井喬が1983年に河出書房新社から刊行した長篇小説です。NDLサーチでは、1983年5月刊の単行本と、2009年10月刊の中公文庫版を確認できます。公開Webで詳細な内容紹介や初出誌は確認できなかったため、紹介は書誌・再刊情報を中心に整理しています。 人生記憶時間
  43. 043 1969 暗室 あんしつ 吉行淳之介 初出・単行本(講談社、1969年刊行) 『暗室』は、男女関係の親密さと断絶、欲望と倦怠を、吉行淳之介らしい冷ややかな観察で描く長篇です。明るい恋愛小説ではなく、関係の内部にある孤独や自己欺瞞を見つめる作品として、第三の新人以後の心理小説の系譜に置くことができます。 恋愛孤独と疎外 第5回 谷崎賞
  44. 044 1968 若き日の詩人たちの肖像 わかきひのしじんたちのしょうぞう 堀田善衛 初出・単行本(新潮社、1968年刊行) 『若き日の詩人たちの肖像』は、戦争へ向かう時代と敗戦後の転換期を背景に、若い知識人たちが文学や思想を拠り所にしながら自己を形成していく長篇です。堀田善衛が同時代史と個人の精神史を重ねる代表的な仕事として位置づけられます。 戦争青春記憶
  45. 045 1965 夕べの雲 ゆうべのくも 庄野潤三 初出・単行本(講談社、1965年刊行) 『夕べの雲』は、郊外の家庭生活を大きな事件ではなく、家族の会話、子どもの成長、季節の変化の積み重ねとして描く庄野潤三の代表的長篇です。日常の細部を丁寧に見ることで、戦後の家庭小説に独自の静けさをもたらしています。 家族生活子ども
  46. 046 1965 抱擁家族 ほうようかぞく 小島信夫 初出・単行本(講談社、1965年刊行) 『抱擁家族』は、妻とアメリカ兵との関係をきっかけに、家庭が内側から崩れていく過程を描く長篇です。夫婦、子ども、住居、英語、アメリカ的生活様式が絡み合い、戦後日本の家族が抱えた滑稽さと痛みを浮かび上がらせます。 家族戦後異文化 第1回 谷崎賞
  47. 047 1963 廻廊にて かいろうにて 辻邦生 初出・1963年、新潮社刊。初出誌の詳細は今回確認できないため、単行本刊行年を year とした。 『廻廊にて』は、辻邦生の初期長篇です。NDLサーチの原本書誌では、新潮社から1963年に刊行された208ページの単行本として確認できます。NDLサーチ連携のDAISY資料では、愛を失い、結婚に破れ、芸術の空しさを抱えながら、生と芸術の意味を模索し続ける亡命ロシア人女流画家マーシャの生涯を描く作品とし… 芸術喪失
  48. 048 1962 砂の女 すなのおんな 安部公房 初出・単行本(新潮社、1962年刊行) 『砂の女』は、昆虫採集に来た男が砂丘の穴の底にある家へ閉じ込められ、女とともに砂を掻き出す生活を強いられる長篇です。脱出への執着と、砂の生活に適応していく感覚が交錯し、自由とは何か、労働とは何かを不条理な寓話として問い直します。 自由労働身体
  49. 049 1958 海と毒薬 うみとどくやく 遠藤周作 初出・単行本(文藝春秋新社、1958年刊行) 『海と毒薬』は、戦争末期の大学病院で行われた米軍捕虜の生体解剖事件を題材に、医師や学生たちがなぜ残虐行為に加担していくのかを描く長篇です。遠藤周作が繰り返し問う、罪、良心、信仰の不在を、日本の戦争責任と結びつけて考える作品です。 戦争身体