Est. 1946 / 講談社

群像

講談社が発行する月刊文芸誌。群像新人文学賞からは村上春樹・村上龍など多くの作家が出た。

主催新人賞:群像新人文学賞

この誌が初出の収録作 First Appearances 70 works
  1. 001 2024 バリ山行 バリさんこう 松永K三蔵 初出・群像 2024年3月号 転職して関西の建物修繕会社に入った波多は、社内の親睦登山をきっかけに六甲山に通うようになる。やがて、職人気質で社内では変人扱いされるベテラン社員・妻鹿が、整備された登山道を外れ、地図を読みながら道なき道を行く「バリ山行(バリエーションルートの登山)」を独りで続けていることを知る。会社の経営が傾き、リ… 労働孤独と疎外身体 第171回 芥川賞
  2. 002 2024 カメオ かめお 松永K三蔵 初出・群像 2021年7月号 『カメオ』は、本社命令で期日までに倉庫を建てなければならない会社員の前に、犬を連れた隣地の男・カメオが立ちはだかるデビュー作。職場の命令、土地、期限、隣人との交渉が、現実的な仕事の話でありながら不条理な可笑しみを帯びて進む。労働の現場にある理不尽さと、人がどうにも動かせない他者の存在を、乾いたユーモ… 労働孤独と疎外同調圧力
  3. 003 2022 この世の喜びよ このよのよろこびよ 井戸川射子 初出・群像 2022年7月号 ショッピングセンターの喪服売り場で働く「あなた」は、かつて幼い娘たちとこのセンターで長い時間を過ごした。いまはフードコートに入り浸る中学生の少女と言葉を交わすようになり、彼女との関わりのなかで、子育ての日々の記憶や、言葉にならないまま積もっていた感情が少しずつよみがえってくる。全編が「あなた」への呼… 母と子家族記憶 第168回 芥川賞
  4. 004 2022 おいしいごはんが食べられますように おいしいごはんがたべられますように 高瀬隼子 初出・群像 2022年1月号 食品会社の支店を舞台に、三人の社員の関係を描く。そつなく働くが食への関心が薄い二谷、体が弱く周囲に守られ、手作り菓子を職場に持ってくる芦川、芦川の分の仕事まで引き受けてしまう押尾。二谷は芦川と付き合いながら、「おいしいごはん」を大切にする価値観への苛立ちを募らせ、押尾は守られる芦川への反感を二谷とひ… 労働同調圧力 第167回 芥川賞
  5. 005 2021 貝に続く場所にて かいにつづくばしょにて 石沢麻依 初出・群像 2021年6月号 コロナ禍に覆われたドイツの学術都市ゲッティンゲンで暮らす日本人留学生の「私」のもとに、東日本大震災の津波で行方不明になったはずの友人・野宮が現れる。九年前に仙台で被災した記憶と、疫病下の異国の街の現在が静かに重なり合い、惑星の名を冠した小径、聖人伝や絵画の細部、庭に埋められた様々な品をたどりながら… 死と喪失記憶災害 第165回 芥川賞
  6. 006 2019 瓦礫の死角 がれきのしかく 西村賢太 初出・群像 2018年7月号・2019年2月号・2019年7月号 『瓦礫の死角』は、父の性犯罪によって解体した家族の記憶と、服役を終えようとする「あの人」の影を描く表題作を中心にした短篇集。講談社公式は、十七歳で無職の北町貫多が、刑期を終えようとする父、復讐に怯える母、消息不明の姉を抱えた家族の瓦礫に向き合う物語として紹介している。「病院裏に埋める」と表裏をなす不… 家族暴力貧困
  7. 007 2019 そこどけあほが通るさかい そこどけあほがとおるさかい 石倉真帆 初出・「群像」2019年6月号 大阪のムラ社会で毒祖母と同居する女性の日常を全編関西弁で描いた第62回群像新人文学賞当選作。選考委員が熱量と迫力を絶賛した。
  8. 008 2018 ニムロッド ニムロッド 上田岳弘 初出・群像 2018年12月号 IT企業に勤める中本哲史は、社長から仮想通貨ビットコインの採掘(マイニング)事業を任される。彼の周りには、中絶と離婚の傷を抱える外資系勤務の恋人・田久保紀子と、小説家の夢に挫折し「駄目な飛行機コレクション」と題するメールを送ってくる同僚・荷室仁(ニムロッド)がいる。三人の日常に、天に挑んだバベルの塔… テクノロジー労働孤独と疎外 第160回 芥川賞
  9. 009 2018 美しい顔 うつくしいかお 北条裕子 初出・「群像」2018年6月号 東日本大震災の避難所に暮らす高校生・沙那恵が、弟を守りながらメディアの狂騒と向き合う物語。第61回群像新人文学賞当選作。第159回芥川賞候補。参考文献明示をめぐる論争が起きたことでも知られる。
  10. 010 2017 天袋 てんぶくろ 上原智美 初出・「群像」2017年6月号 他人の部屋の天袋(押し入れの上段の収納スペース)に潜む女性が、ブログと手帳を通して住人の生活を覗き見る奇妙な設定の物語。第60回群像新人文学賞優秀作(当選なし)。
  11. 011 2017 日曜日の人々(サンデー・ピープル) にちようびのひとびと さんでー ぴーぷる 高橋弘希 初出・「群像」2017年6月号、2017年8月講談社より単行本刊行 戦争体験者から受け継がれた記憶と暴力の問題を、現代の若者たちが中庭の存在を通して直面する連作。高橋弘希が戦争・暴力の主題を現代に引き寄せた新境地の作品。 第39回 野間新人賞
  12. 012 2016 ジニのパズル じにのぱずる 崔実 初出・「群像」2016年6月号 在日コリアン三世の高校生・ジニが朝鮮学校での体験と民族のアイデンティティを問い続ける物語。第59回群像新人文学賞当選作で選考委員全員が絶賛。第155回芥川賞候補・第104回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
  13. 013 2016 本物の読書家 ほんものの どくしょか 乗代雄介 初出・「群像」2016年9月号、2017年11月講談社より単行本刊行 老人ホームへ向かう独り身の大叔父と川端康成をめぐる秘密を、語り手の「私」が追う。読書体験と記憶、老いと継承をテーマにした中篇で、乗代雄介の評価を確立した受賞作。 第40回 野間新人賞
  14. 014 2015 異類婚姻譚 いるいこんいんたん 本谷有希子 初出・群像 2015年11月号 結婚して4年になる専業主婦の「私」は、家ではテレビとゲームに没頭するだけの夫と、波風のない生活を送っている。ある日ふと、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気づいた「私」。やがて夫の顔は緩み、溶け、人間の形を失っていくように見え始める。捨てられた飼い猫の行方や、揚げ物に異常に執着する夫の変容… 夫婦アイデンティティジェンダー 第154回 芥川賞
  15. 015 2015 十七八より じゅうななはちより 乗代雄介 初出・「群像」2015年6月号 塾講師として勤務中に書いた第58回群像新人文学賞当選作。若者の言葉とリズムを精緻に捉えた文体が高く評価された。野間文芸新人賞・三島由紀夫賞・坪田譲治文学賞受賞へと続く著者のデビュー作。
  16. 016 2014 九年前の祈り くねんまえのいのり 小野正嗣 初出・群像 2014年9月号 35歳のさなえは、カナダ人の夫に去られたあと、激しい癇癪を起こす幼い息子・希敏を連れて、故郷である大分の海辺の小さな集落に帰ってくる。育児に疲弊する彼女の脳裏には、九年前、集落の女たちとカナダを旅した際、世話役の「みっちゃん姉」が異国の教会で見せた祈りの姿が繰り返し蘇る。そのみっちゃん姉の息子がいま… 母と子信仰記憶 第152回 芥川賞
  17. 017 2014 吾輩ハ猫ニナル わがはいはねこになる 横山悠太 初出・「群像」2014年6月号 北京在住の著者が日本語と中国語を混交した独自の文体で描いた第57回群像新人文学賞当選作。日本人の父を持つ中国人青年のアイデンティティと成長を描き、第151回芥川賞候補となった。
  18. 018 2013 鶏が鳴く にわとりがなく 波多野陸 初出・「群像」2013年6月号 高校3年生の主人公がかつてのバンド仲間で引きこもりになった友人の部屋に忍び込む物語。第56回群像新人文学賞当選作。青春の終わりと孤立を描く。
  19. 019 2012 道化師の蝶 どうけしのちょう 円城塔 初出・「群像」2011年8月号 第146回芥川賞受賞作を含む短篇集。言語・記憶・翻訳をめぐる実験的な作品群。 第146回 芥川賞
  20. 020 2012 架空列車 かくうれっしゃ 岡本学 初出・「群像」2012年6月号 情報工学の博士号を持ち毎日片道3時間の通勤電車で執筆した著者のデビュー作。第55回群像新人文学賞当選作。架空の列車旅をめぐる独特の語りで評価された。
  21. 021 2012 泡をたたき割る人魚は あわをたたきわるにんぎょは 片瀬チヲル 初出・「群像」2012年6月号 明治大学在学中の著者が描いた人魚姫の現代的再解釈。第55回群像新人文学賞優秀作。人魚という異形の存在を通じて孤独と社会への違和感を描く。
  22. 022 2011 美しい私の顔 うつくしいわたしのかお 中納直子 初出・「群像」2011年6月号 顔面神経麻痺に罹った家具屋勤務の女性の内面と人間関係を描いた第54回群像新人文学賞当選作。自己像と他者の視線の齟齬を丁寧に描く。
  23. 023 2010 朝が止まる あさがとまる 淺川継太 初出・「群像」2010年6月号 第53回群像新人文学賞当選作。山梨出身の著者が描く、ある朝の停止をめぐる内省的な物語。受賞後の2014年に収録作品集『ある日の結婚』が野間文芸新人賞候補となった。
  24. 024 2009 カメレオン狂のための戦争学習帳 かめれおんきょうのためのせんそうがくしゅうちょう 丸岡大介 初出・群像 2009年6月号 独身教員のための「修身寮」に入寮した高校教師・田中は、寮の内情をレポートするという任務を課される。規律と監視の空気のなかで、彼は次第に正体の見えない「戦争」へと組み込まれていく。饒舌な語りと不穏な緊張感で、組織に飼い慣らされていく個人の煩悶を描いた現代の不条理劇。学校と寮という閉域を通して、同調圧力… 労働同調圧力戦争 第52回 群像新人賞
  25. 025 2008 子守唄しか聞こえない こもりうたしかきこえない 松尾依子 初出・群像 2008年6月号 田舎町に暮らす女子高生・美里は、男友達4人に囲まれた一見満ち足りた日々を送っている。だが「愚鈍な真沙子」と見下していた同級生が自分に執着し、つきまとうようになると、保っていたはずのエゴの均衡が崩れはじめる。幼い日の海の記憶や謎めいた老婆との出会いを織り込みながら、思春期の自意識の残酷さと出口のなさを… 青春同調圧力孤独と疎外 第51回 群像新人賞
  26. 026 2007 アサッテの人 あさってのひと 諏訪哲史 初出・群像 2007年6月号 吃音を抱えていた叔父は、いつしか「ポンパ!」などの意味を持たない言葉=アサッテの言葉を突発的に口にするようになり、やがて失踪した。「私」はその叔父をめぐる小説を書こうとするが、語りは草稿、叔父の日記、回想が混在するまま進んでいく。言葉の規範から「アサッテ」の方向へ逸脱したいという渇望を、小説の形式そ… 言葉と言語孤独と疎外家族 第50回 群像新人賞
  27. 027 2007 だだだな町、ぐぐぐなおれ だだだなまち、ぐぐぐなおれ 広小路尚祈 初出・群像 2007年6月号 第50回群像新人文学賞優秀作に選ばれたデビュー作。タイトルの擬音めいた口語が示すとおり、ぱっとしない地方の町でくすぶる「おれ」の日々を、脱力した語り口で描く。ホテルマン、タクシー運転手、消費者金融など10以上の職を転々とした作者の経歴がにじむ、働く男の鬱屈とおかしみは、のちに芥川賞候補となる「うちに… 労働孤独と疎外方言・口語
  28. 028 2007 ピストルズ ぴすとるず 阿部和重 初出・「群像」2007年1月号〜2009年11月号連載(初出年2007年、単行本2010年8月・講談社) 山形県の架空の町「神町」を舞台に繰り広げられる、阿部和重の「神町サーガ」第二部。雑誌連載は2007〜2009年、単行本刊行は2010年。 yearは連載開始年を採用。 第46回 谷崎賞
  29. 029 2006 煙幕 えんまく 深津望 初出・群像 2006年6月号 14歳の「わたし」は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、「14年戦争を生き抜いてきた」という感慨を抱いて生きている。理科教師の川端、クラスメイトの衣川、母を捨てた川端と名乗る男、プロデューサー——複数の登場人物が重なり合い、誰が誰なのか分からないまま視点が次々と入れ替わる。読者を文字どおり煙に巻く実験… アイデンティティ身体青春
  30. 030 2006 無限のしもべ むげんのしもべ 木下古栗 初出・群像 2006年6月号 早く目覚めすぎた休日の朝、稔がマンションから見下ろすと、駐車場に円卓を持ち込んでティーパーティーに興じる4人の男女がいた。そのなかの美人に目をつけた稔は、パーティーに加わりあわよくば濃密な性愛を、という淫靡な考えに取り憑かれ作戦を練り始める。性的妄想の無意味な暴走を生真面目な文体で押し切る、木下古栗… 身体孤独と疎外 第49回 群像新人賞
  31. 031 2006 憂鬱なハスビーン ゆううつなはすびーん 朝比奈あすか 初出・群像 2006年6月号 東大を出て有名企業に就職し、弁護士の夫と結婚して仕事を辞めた29歳の「私」。優しい夫も安定した生活もあるのに、なぜこんなに腹が立つのか。かつて神童と呼ばれた同級生との再会に動揺し、自分はまだ自分に何かを期待しているのかと問い直す。「ハスビーン(has-been=終わった人)」という言葉を軸に、優越感… ジェンダーアイデンティティ労働 第49回 群像新人賞
  32. 032 2005 グルメな女と優しい男 ぐるめなおんなとやさしいおとこ 望月あんね 初出・群像 2005年6月号 「人を好きになることは極上の料理より美味しい」——食べることに貪欲なりん子は、優しい男・一郎に純粋な恋心を抱くようになり、クリスマスの夜、ふたりは濃密なデートに繰り出す。食欲と恋愛感情というふたつの「おいしさ」を重ね合わせ、欲望に素直な女と受け止める男の関係をコミカルに描く。群像新人文学賞の優秀作と… 恋愛ジェンダー
  33. 033 2005 さよなら アメリカ さよなら あめりか 樋口直哉 初出・群像 2005年6月号 「ぼく」は頭から袋を被って生活している。袋の後ろには「SAYONARAアメリカ」のロゴ。噂に聞いた同じ袋族の少女に会うために街をさまよい、突然現れた異母弟を名乗る男との奇妙な共同生活が始まる。袋で社会から自分を隔てながら、袋の仲間との出会いだけは求めてしまう——その矛盾を、深刻ぶらないオフビートなユ… 孤独と疎外アイデンティティ恋愛 第48回 群像新人賞
  34. 034 2004 狐寝入夢虜 きつねねいりゆめのとりこ 十文字実香 初出・群像 2004年6月号 三週間前に職を失った上岡鳥子は、空腹を抱えて神社へ散歩に出かけ、帰り道に迷い、年下の古本屋の倅と茶飲み話をして花札に興じる。働かないこと自体は気にしないが、仕事に存在理由を求める世間様の考え方には反感を覚える——そんな鳥子の「高潔なる怠惰」を、現代の話なのにわざと落語のような古風な語りで聞かせる。語… 労働孤独と疎外ジェンダー 第47回 群像新人賞
  35. 035 2004 サージウスの死神 さーじうすのしにがみ 佐藤憲胤 初出・群像 2004年6月号 徹夜明けの帰り道、ビルから飛び降りてきた男と目が合い、その死を目撃した主人公は、同僚に誘われた地下カジノ「freeze」でルーレットにのめり込む。預金を失い借金を重ねるうち、「頭の中に数字を飼っている」という感覚が芽生え、精神の破滅と引き換えに当たりの数字が見えるようになっていく。賭博と死の観念を硬… 死と喪失孤独と疎外身体
  36. 036 2003 授乳 じゅにゅう 村田沙耶香 初出・群像 2003年6月号 中学生の少女「私」は、母が選んだ冴えない家庭教師の青年に、嫌悪とも支配欲ともつかない倒錯した感情を抱き、「授乳」と呼ぶ秘密の行為へと彼を引き込んでいく。教育熱心な母への息苦しさ、性とも甘えともつかない身体感覚——のちに「コンビニ人間」へと結実する村田沙耶香の核、つまり「普通」とされる世界への違和を身… 母と子身体
  37. 037 2003 火薬と愛の星 かやくとあいのほし 森健 初出・群像 2003年6月号 女たらしの「おれ」は、さまざまな女性たちを渡り歩きながら何度も生を重ね、やがて一人の恋人に出会って初めて「ここで死のう」と思う——絵本『100万回生きたねこ』を下敷きに、軽薄な恋愛遍歴の語りの底へ、愛と死の寓話を沈めた一作。決定的なはずの「最後の恋人との出会い」をあえて正面から語らず、別のかたちで小… 恋愛死と喪失孤独と疎外 第46回 群像新人賞
  38. 038 2003 鼠と肋骨 ねずみとろっこつ 脇坂綾 初出・群像 2003年6月号 第46回群像新人文学賞で、村田沙耶香「授乳」と並んで優秀作に選ばれた作品。テレビ局勤務のかたわら小説を書いていた30歳の作者が、旧姓・神宮綾の頃の経験を経て発表した一篇で、鼠と肋骨という即物的で不穏なイメージを組み合わせた題名が目を引く。単行本化されておらず、内容を確認できる資料は乏しい。同期の村田… 身体孤独と疎外一人称
  39. 039 2002 ジャイロ! じゃいろ 早川大介 初出・群像 2002年6月号 「僕」と友人・猟平が繰り返す「危険なキャッチボール」が、ついに猟平の家を全焼させてしまう——少年たちの遊びと暴力が地続きになった世界を、熱を孕んだ文体で一気に語る。選考では、世界へのルサンチマン(鬱屈した恨み)を呪詛のような語りで繋ぎ留めた「現代の悪童日記」と評された。受賞の翌年まで『群像』に短篇を… 青春暴力孤独と疎外 第45回 群像新人賞
  40. 040 2002 死せる魂の幻想 しせるたましいのげんそう 寺村朋輝 初出・群像 2002年6月号 お節介な祖母と二人暮らしで、アパートと大学を往復するだけの真面目な女子大生・千明。女友達はいても恋人はいない彼女の日常に潜む孤独感と、他者との関係への切実な渇望を描く。後半、奇妙な雨宿りの場面で物語は一変し、卑近な日常が途方もない神々しさへと接続される。現役京大生だった22歳の作者によるデビュー作で… 孤独と疎外家族青春 第45回 群像新人賞
  41. 041 2001 蚤の心臓ファンクラブ のみのしんぞうふぁんくらぶ 萩原亨 初出・群像 2001年6月号 「誰にも“蚤の心臓”はあるのです。ちょっと引き抜いてみましょう。今より自由になれますよ」という惹句が示すとおり、人が抱える臆病さや気弱さを「蚤の心臓」という具体物のイメージに転化し、そこからの解放を軽みのある筆致で描いた作品。深刻な内面告白に向かいがちな新人文学賞応募作の中で、ユーモアと寓意で心の問… 孤独と疎外同調圧力一人称 第44回 群像新人賞
  42. 042 2001 シルエット しるえっと 島本理生 初出・群像 2001年6月号 高校二年生の「私」を語り手に、人との出会いと別れ、恋愛にともなう心の揺れと痛みを、等身大の言葉で丁寧にすくいとった中篇。書いたのは当時現役高校生の島本理生で、十代の感受性をそのまま閉じ込めたような瑞々しさと、年齢に不釣り合いなほど抑制の効いた文章が同居している。痛みを声高に語らず、静かな観察として差… 恋愛青春家族
  43. 043 2000 フリースタイルのいろんな話 ふりーすたいるのいろんなはなし 中井佑治 初出・群像 2000年6月号 第43回群像新人文学賞(2000年)で、横田創「(世界記録)」の当選と並んで優秀作に選ばれた作品。『群像』2000年6月号に掲載されたが、単行本化はされておらず、作者・中井佑治のその後の著書も確認できないため、今日では掲載誌でしか読むことができない。「フリースタイル」を掲げる題名が示すとおり、定型に… 言葉と言語青春方言・口語
  44. 044 2000 (世界記録) せかいきろく 横田創 初出・群像 2000年6月号 括弧でくくられた題名がすでに仕掛けになっている、劇作家出身の新人による実験的なデビュー作。世界を「写生=記録」しサンプリングするような手つきで、書くことと現実のあいだのずれを執拗に往復する。単行本には小説とあわせて戯曲二篇が収められ、演劇の言葉と小説の言葉を行き来してきた作者の出自がそのまま本の形に… 言葉と言語芸術と表現アイデンティティ 第43回 群像新人賞
  45. 045 1999 夏の約束 なつのやくそく 藤野千夜 初出・「群像」1999年12月号 ゲイのカップルを中心に、性転換した美容師、売れない小説家とその女友達といった「ゆるやか」な人々のある夏の日常を描いた短編。性的マイノリティを自然体で描いた1990年代末の問題作。玄月「蔭の棲みか」と同時受賞。 恋愛アイデンティティ 第122回 芥川賞
  46. 046 1998 水のはじまり みずのはじまり 長田司 初出・「群像」1998年6月号(第41回優秀作) 水のはじまりは、長田司による1998年発表の作品です。初出は「群像」1998年6月号(第41回優秀作)。単行本化は確認できていません。第41回群像新人賞優秀作。
  47. 047 1997 秒速10センチの越冬 びょうそくじっせんちのえっとう 岡崎祥久 初出・「群像」1997年6月号(第40回当選) 工場労働者の日々と停滞感を、ゆっくりと流れる時間とともに描いたデビュー作。 労働乾いた
  48. 048 1996 家族シネマ かぞくしねま 柳美里 初出・「群像」1996年12月号 関係が崩壊した家族が映画の中で「家族」を演じることによって生まれるすれ違いと摩擦を通じて、家族の本質を問う。柳美里の戯曲的感覚が小説に昇華された作品。 家族アイデンティティ 第116回 芥川賞
  49. 049 1996 やさしい光 やさしいひかり 鈴木景子 初出・「群像」1996年6月号(第39回当選) 第39回群像新人文学賞当選作(著者:鈴木景子)。詳細内容はウェブ調査でも確認できなかった。
  50. 050 1996 足下の土 あしもとのつち 堂垣園江 初出・「群像」1996年6月号(第39回優秀作、鈴木景子と同時受賞) 足下の土は、堂垣園江による1996年発表の作品です。初出は「群像」1996年6月号(第39回優秀作、鈴木景子と同時受賞)。単行本化は確認できていません。第39回群像新人賞優秀作。
  51. 051 1996 火の山―山猿記 ひのやま やまざるき 津島佑子 初出・「群像」1996年8月号〜1997年8月号連載。単行本1998年6月講談社刊(上下巻)。初出連載開始年(1996年)を year とした。 富士山麓を舞台に、山梨の地質学者の家系をモデルとした有森家5代の歴史を書簡・日記を織り交ぜて描く大作。野間文芸賞との同時受賞。後にNHK連続テレビ小説「純情きらり」の原案となった。 家族長い息の文体地方 第34回 谷崎賞
  52. 052 1996 「アボジ」を踏む あぼじをふむ 小田実 初出・「群像」1996年10月号初出。 「アボジ」(朝鮮語で「父」)という言葉を踏みにじった戦前日本の歴史を、在日コリアンの父親への眼差しを通して問い直す短篇。ベ平連設立者でもある小田実の思想的核心が凝縮されている。坂上弘「台所」との同時受賞。 移民と越境父と子戦争 第24回 川端賞
  53. 053 1995 離人たち りじんたち 団野文丈 初出・「群像」1995年6月号(第38回優秀作、萩山綾音と同時受賞) 第38回群像新人文学賞優秀作(著者:団野文丈)。詳細内容はウェブ調査でも確認できなかった。 孤独と疎外
  54. 054 1995 影をめくるとき かげをめくるとき 萩山綾音 初出・「群像」1995年6月号(第38回優秀作、団野文丈と同時受賞) 影をめくるときは、萩山綾音による1995年発表の作品です。初出は「群像」1995年6月号(第38回優秀作、団野文丈と同時受賞)。単行本化は確認できていません。第38回群像新人賞優秀作。
  55. 055 1995 路地 ろじ 三木卓 初出・「群像」1995年1月号〜1997年1月号に「鎌倉」の通しタイトルで断続掲載。単行本1997年6月講談社刊。初出連載開始年(1995年)を year とした。 鎌倉の路地と古書肆を舞台とした7篇からなる連作短篇集。廃業した店、老いた人々、去りゆく時間を小津安二郎的な視点で丁寧に掬い取る。単行本化にあたり「鎌倉」から「路地」に改題。 老い記憶地方 第33回 谷崎賞
  56. 056 1994 おどるでく おどるでく 室井光広 初出・「群像」1994年4月号 東北の主人公の生家の納屋で見つかった大学ノートの日記が日本語内容をロシア文字で表音化されており、主人公が翻訳していくという構成の実験的作品。単行本は芥川賞受賞作史上最低の売れ行きと伝えられる。 言葉と言語記憶実験的文体 第111回 芥川賞
  57. 057 1994 アメリカの夜 あめりかのよる 阿部和重 初出・「群像」1994年6月号(第37回当選) 「アメリカ映画の夜」を舞台に、メディアとアイデンティティの問題を前衛的な手法で描いたデビュー作。 アイデンティティテクノロジー実験的文体
  58. 058 1993 寂寥郊野 じゃくりょうこうや 吉目木晴彦 初出・「群像」1993年1月号 国際結婚してアメリカに在住する日本人女性がアルツハイマー症を発症し、家族と当事者の苦悩と愛情を描いた長めの中編。1998年に松井久子監督により映画「ユキエ」として映画化された。 ケアと介護移民と越境家族 第109回 芥川賞
  59. 059 1993 暗い森を抜けるための方法 くらいもりをぬけるためのほうほう 足立浩二 初出・「群像」1993年6月号(第36回優秀作、木地雅映子と同時受賞) 『暗い森を抜けるための方法』は、足立浩二が第36回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1993年6月号と受賞発表記事を確認しました。暗い森を抜けるという題名が示す閉塞と脱出のイメージは明確ですが、具体的な筋は未確認です。 孤独と疎外青春簡潔な文体
  60. 060 1993 氷の海のガレオン こおりのうみのがれおん 木地雅映子 初出・「群像」1993年6月号(第36回優秀作、足立浩二と同時受賞) 孤独な少女が想像世界へと旅立つ幻想的な物語。のちに文庫化・シリーズ化された人気作となった。 孤独と疎外青春学校
  61. 061 1993 草の上の朝食 くさのうえのちょうしょく 保坂和志 初出・「群像」1993年3月号、講談社1993年8月刊 デビュー作「プレーンソング」の続編。鎌倉を舞台に、だらだらとした日常の時間の流れと複数の登場人物の意識の交錯を丁寧に描く。保坂和志が「小説は何を描くべきか」という問いを実践した初期の代表作。第15回野間文芸新人賞受賞(奥泉光と同時)。 実験的文体都市・郊外静謐 第15回 野間新人賞
  62. 062 1993 私の自叙伝前篇 わたしのじじょでん ぜんぺん 竹野雅人 初出・「群像」1993年7月号、講談社1994年刊 テレビアニメのスタッフを主人公とした自伝的色彩の強い小説。東宝でアニメ制作に携わる作家自身の経験を素材に、若者のアイデンティティと仕事への逡巡を描く。第16回野間文芸新人賞受賞。 アイデンティティ芸術と表現労働 第16回 野間新人賞
  63. 063 1992 運転士 うんてんし 藤原智美 初出・「群像」1992年5月号 『運転士』は、郊外住宅地を走るバス運転士の日常を通じて、家族関係の崩壊と男性の内面を描く作品です。職業の反復的な動きと、家庭の不安定さが重なり、都市郊外の生活の閉塞感が浮かびます。藤原智美の社会観察眼が出た芥川賞受賞作です。 労働家族都市・郊外 第107回 芥川賞
  64. 064 1992 犬婿入り いぬむこいり 多和田葉子 初出・「群像」1992年12月号 『犬婿入り』は、塾講師の女性が犬に変身した男性と同棲する物語を軸に、言語、身体、変身の主題を展開する作品です。民話的な想像力を現代の都市生活へ持ち込み、人間と動物、女と男、日本語と外部の境界を揺らします。多和田葉子の越境的で実験的な文体がよく現れた芥川賞受賞作です。 アイデンティティ言葉と言語実験的文体 第108回 芥川賞
  65. 065 1992 鳩を食う はとをくう 中野勝 初出・「群像」1992年6月号(第35回優秀作) 『鳩を食う』は、中野勝が第35回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1992年6月号と受賞発表記事を確認できますが、具体的なあらすじや批評は今回確認できませんでした。題名の強い身体性を手がかりに分類は暫定補完しています。 身体孤独と疎外
  66. 066 1991 かかとを失くして かかとをなくして 多和田葉子 初出・「群像」1991年6月号(第34回当選) 『かかとを失くして』は、ドイツ語圏に渡った日本人女性の言語と身体の変容を、夢幻的な語りで描く多和田葉子のデビュー作です。足元の感覚を失うというイメージが、母語の外へ出る不安や、身体の境界の揺らぎにつながっていきます。越境文学・エクソフォニーの出発点として重要な作品です。 アイデンティティ言葉と言語身体 第34回 群像新人賞
  67. 067 1990 コンビニエンス ロゴス こんびにえんす ろごす 高野亘 初出・「群像」1990年6月号(第33回当選) 『コンビニエンス ロゴス』は、コンビニエンスストアを舞台に、商品・看板・会話が記号として氾濫する現代社会を描く作品です。労働の現場を扱いながら、消費社会の言葉が人間関係をどのように組み替えるかをポップに見せます。群像新人文学賞受賞作らしく、都市の日常を言語実験へ接続する点が読みどころです。 言葉と言語労働店・施設 第33回 群像新人賞
  68. 068 1976 限りなく透明に近いブルー かぎりなくとうめいにちかいブルー 村上龍 初出・群像 1976年6月号 米軍基地の街・福生のハウスを舞台に、19歳のリュウとその仲間たちの日々を描く。ドラッグとロック、黒人兵たちとの乱痴気騒ぎ、セックスと暴力に明け暮れる若者たちの退廃を、感傷を排した即物的な描写と、ガラスの破片や雨に濡れた滑走路といった鮮烈なイメージの連なりで定着させる。荒廃の只中にいながらどこか透明な… 暴力孤独と疎外 第75回 芥川賞
  69. 069 1954 プールサイド小景 ぷーるさいどしょうけい 庄野潤三 初出・「群像」1954年12月号(第32回芥川賞受賞) 『プールサイド小景』は、社員旅行の一日を舞台に、家庭を持つ男の欲望と罪悪感を細密に描く短篇です。劇的事件よりも視線、沈黙、気まずさの変化を追うことで、都市生活者の不安を浮かび上がらせます。庄野潤三の静かな日常描写のなかに、戦後の家庭と個人の距離感が滲む作品です。 夫婦家族恋愛 第32回 芥川賞
  70. 070 1951 悪い仲間・陰気な愉しみ わるいなかま・いんきなたのしみ 安岡章太郎 初出・「群像」1951年6月号(「悪い仲間」)、「群像」1953年(「陰気な愉しみ」)。第29回芥川賞はこの2篇への授賞。 『悪い仲間・陰気な愉しみ』は、病と貧しさ、青年期の停滞を背景にした安岡章太郎の初期短篇群です。結核療養や日常の挫折をめぐる内省を、過剰な劇化を避けた私小説的な語りで描きます。第三の新人と呼ばれる世代の、戦後の日常感覚と弱さへのまなざしがよく出た作品です。 青春貧困 第29回 芥川賞