Est. 1933 / 文藝春秋
文學界
文藝春秋が発行する月刊文芸誌。文學界新人賞を主催し、芥川賞の登竜門として知られる。
この誌が初出の収録作 First Appearances 95 works
- 001 2023 ハンチバック ハンチバック 重度の先天性ミオチュブラー・ミオパチーのため人工呼吸器と電動車椅子を使い、両親が遺したグループホームで暮らす井沢釈華。背骨がS字に湾曲した彼女は、通信制大学で学び、ウェブにコタツ記事や性的な小説を書き、匿名アカウントで「妊娠と中絶がしてみたい」と挑発的な呟きを放つ。その呟きを、彼女の書いたものをすべ… 第169回 芥川賞
- 002 2021 彼岸花が咲く島 ひがんばながさくしま 彼岸花が咲き乱れる浜辺に、記憶を失った少女が流れ着く。海の向こうから来たため「宇実(ウミ)」と名付けられた彼女がたどり着いたのは、日本と台湾の間に浮かぶ架空の島。そこでは〈ニホン語〉と、女性だけが学ぶことを許された〈女語〉という二つの言語が話され、「ノロ」と呼ばれる女性たちが祭祀と政治、歴史の伝承を… 第165回 芥川賞
- 003 2019 五つ数えれば三日月が いつつかぞえればみかづきが 表題作は、日本で働く台湾人の「私」と、台湾人と結婚して台湾へ移った友人・実桜が、平成最後の夏に東京で五年ぶりに再会する物語。話す言葉、住む国、選び取った人生の差異が、再会の会話のなかで静かに立ち上がる。収録作「セイナイト」とあわせて、移動、言語、親密さ、記憶のずれを、越境する人のアイデンティティとし…
- 004 2019 逃げ水は街の血潮 にげみずはまちのちしお 地下アイドルとして全速力で修羅を生きる20代女性の内面を鮮烈に描いたデビュー作。法政大学大学院在籍中に受賞した。 第124回 文學界新人賞
- 005 2019 レンファント れんふぁんと 育児休暇を取った父親が、重篤な皮膚疾患を持つ子の看護と妻との関係に迷走する様子を描く。「イクメン文学」の新地平として注目されたデビュー作。 第124回 文學界新人賞
- 006 2018 送り火 おくりび 東京から青森の山間の中学へ転校した歩が、クラスのリーダー格・晃を中心とした男子グループに引き込まれていく。花札・ロシアンルーレット的な遊びが常態化するなかで、集団の暴力と服従のメカニズムが静かに露わになる。 第159回 芥川賞
- 007 2017 影裏 えいり 会社の出向で岩手に移り住んだ今野は、釣り仲間となった同僚・日浅にだけ心を許していた。二人で川に通った日々はやがて途絶え、日浅は何も告げずに会社を去る。そして東日本大震災の後、今野は日浅の行方を追ううちに、親しいと思っていた男のもう一つの顔に触れることになる。北国の自然や釣りの場面を丹念に描きながら… 第157回 芥川賞
- 008 2016 コンビニ人間 コンビニにんげん 36歳未婚の古倉恵子は、大学卒業後も就職せず、同じコンビニで18年間アルバイトを続けている。幼い頃から人と感覚がずれていることを自覚してきた恵子にとって、マニュアルが完備されたコンビニは「普通の人間」を演じられる唯一の場所だった。しかし、婚活目的で店にやってきた皮肉屋の新人男性・白羽の出現により、そ… 第155回 芥川賞
- 009 2016 市街戦 しがいせん 陸上自衛隊でAH-1S操縦士として勤務した著者が、リアルな軍事描写と現代の都市戦争を重ねて描いたデビュー作。後の芥川賞受賞(「ブラックボックス」)へと続く自衛隊文学の出発点。 第121回 文學界新人賞
- 010 2016 人生のアルバム じんせいのあるばむ 人生という時間の記録をアルバムに喩えながら、記憶と現在の関係を探るデビュー作。 第121回 文學界新人賞
- 011 2016 カブールの園 かぶーるのその 日系アメリカ人三世の女性がIT企業を立ち上げた友人とともにヨセミテへ向かい、日系人強制収容所の跡地に引き寄せられる表題作と、幼少期に不法入国したニューヨーカーを描く「半地下」を収録。第156回芥川賞候補にもなった。 第30回 三島賞
- 012 2015 火花 ひばな 売れない若手漫才師の徳永は、熱海の花火大会の営業で出会った先輩芸人・神谷の才能と破天荒な生き方に惹かれ、弟子にしてほしいと申し出る。神谷の伝記を書くという条件で交流が始まり、二人は東京の街を飲み歩きながら笑いの本質をめぐる対話を重ねていく。やがて徳永のコンビは少しずつ世に出る一方、笑いに純粋すぎる神… 第153回 芥川賞
- 013 2015 スクラップ・アンド・ビルド スクラップ・アンド・ビルド 無職で資格試験の勉強と転職活動を続ける28歳の健斗は、母と、87歳の祖父との三人暮らし。「早う死にたか」と口癖のように繰り返す祖父に対し、健斗は介護職の友人の助言をひねって解釈し、あえて何もかも世話を焼いて自立の機会を奪う「足し算の介護」によって、祖父の望む穏やかな死を後押ししようと思い立つ。同時に… 第153回 芥川賞
- 014 2015 死んでいない者 しんでいないもの 秋のある日、大往生を遂げた85歳の男の通夜に、子や孫、ひ孫まで30人ほどの親族が集まってくる。通夜振る舞いの席で酒を酌み交わす者、川辺をさまよう者、初めて会う親戚と言葉を交わす少年少女。語りは特定の人物に留まらず、出席者から出席者へと自在に移りながら、故人の記憶と一族それぞれの来し方、共有しえない日… 第154回 芥川賞
- 015 2015 サバイブ さばいぶ ビジネスコンサルタントとして活動するバンコク在住の著者が描く、サバイバルをめぐる人間の本性。「シェア」「キャピタル」で続けて芥川賞候補となった著者のデビュー作。 第120回 文學界新人賞
- 016 2015 ヴェジトピア ゔぇじとぴあ 植物性食品のみが存在するユートピア的共同体を舞台に、食と欲望と社会の関係を描いた異色作。 第120回 文學界新人賞
- 017 2014 春の庭 はるのにわ 離婚を機に世田谷の取り壊し予定のアパートに越してきた太郎は、隣に建つ水色の洋館を熱心に観察する住人の女・西と知り合う。漫画家の西は、高校時代に魅了された写真集『春の庭』の舞台がその家であることを知り、この場所へ引っ越してきたのだった。二人は次第にその水色の家への接近を試みるようになる。再開発で消えて… 第151回 芥川賞
- 018 2014 熊の結婚 くまのけっこん 大学卒業後7年の引きこもり生活を経て書いたデビュー作。熊を比喩的に用いた婚姻関係の不思議を描く。 第118回 文學界新人賞
- 019 2014 トレイス とれいす 山形出身の大学院生が描いた地方都市と高齢化社会の現実。24歳の著者による「鮮烈なデビュー作」と評された。 第119回 文學界新人賞
- 020 2013 アフリカ鯰 あふりかなまず アフリカ大陸をオートバイで旅した著者の実体験を背景に持つデビュー作。静岡の無職男性の日常とアフリカの記憶が交錯する。 第117回 文學界新人賞
- 021 2013 息子の逸楽 むすこのいつらく 息子の放逸な生き方と家族の関係を描いたデビュー作。 第117回 文學界新人賞
- 022 2012 こどもの指につつかれる こどものゆびにつつかれる 花村萬月に「新人離れしている」と絶賛されたデビュー作。子どもの視点と身体感覚を通して家族の深層を描く。 第114回 文學界新人賞
- 023 2012 隙間 すきま 人と人の間にある見えない距離と隙間を主題にしたデビュー作。 第115回 文學界新人賞
- 024 2012 最後のうるう年 さいごのうるうどし 新潟弁の語りが印象的なデビュー作。うるう年という特別な時間軸を用いて人間の孤独と繋がりを描く。 第115回 文學界新人賞
- 025 2012 給水塔と亀 きゅうすいとう と かめ 大阪の下町を舞台に、ありふれた日常の風景と人間関係の機微を柔らかく描いた短篇。第39回川端康成文学賞受賞作。 第39回 川端賞
- 026 2011 甘露 かんろ 家と家族をめぐる不穏さに満ちた小説。21歳の著者が「抜群の筆力」と評されたデビュー作で、第145回芥川賞候補となった。 第112回 文學界新人賞
- 027 2011 癌だましい がんだましい 食道癌の患者の視点から、病と生を独特のブラックユーモアで描いたデビュー作。看護経験を持つ著者ならではの内側からの視点が評価された。 第112回 文學界新人賞
- 028 2011 髪魚 かみうお 人体と異形なるものの関係を独自の感覚で描いたデビュー作。「河童日誌」が第147回芥川賞候補となった著者の出発点。 第113回 文學界新人賞
- 029 2011 きんのじ きんのじ 大阪文学学校在籍中に書かれたデビュー作。製造業従事者の日常と内面を静かな文体で描く。 第113回 文學界新人賞
- 030 2011 異郷 いきょう 夫・吉村昭の死後の喪失と生者の日常を静かに描いた短篇。第37回川端康成文学賞受賞作。 第37回 川端賞
- 031 2010 乾燥腕 かんそうで 元大相撲行司という異色の経歴を持つ著者のデビュー作。人体の感覚と異物感を独特の文体で描く。 第110回 文學界新人賞
- 032 2010 自由高さH じゆうたかさH 建築的な視点から人間の空間認識と自由の関係を探る。第143回芥川賞候補作となった著者のデビュー作。 第110回 文學界新人賞
- 033 2010 ゴルディータは食べて、寝て、働くだけ ごるでぃーたはたべて ねて はたらくだけ 中南米系移民女性・ゴルディータの日常をユーモラスに描いたデビュー作。異文化が交差する日本社会を独自の視点で切り取る。 第111回 文學界新人賞
- 034 2009 ディヴィジョン でぃゔぃじょん 大阪在住の奥田真理子が、別名義での最終候補(第106回)、「カルテル」での最終候補(第108回)を経て、三度目の挑戦でつかんだ受賞作。応募総数2008編の頂点に立ち、『文學界』2009年12月号に掲載された。同じ回では合原壮一朗「狭い庭」が選考委員名を冠した「花村萬月・松浦理英子特別賞」に選ばれてお… 第109回 文學界新人賞
- 035 2009 白い紙 しろいかみ イラン・イラク戦争下のイランの地方都市。成績優秀な高校生の男女が、勉強を口実に心を通わせていく。だが前線が近づくにつれ、家族の事情と戦争の影がふたりの未来を静かに引き裂いていく。日本語を母語としない書き手が、平易で簡潔な日本語によって戦時下の日常と若い恋の痛みを描き、戦争文学と青春小説を重ねてみせた… 第108回 文學界新人賞
- 036 2008 廃車 はいしゃ 車検切れが迫る壊れかけの車を、主人公は中国人留学生に無償で譲り渡す。ところが期限を過ぎても相手は約束した廃車手続きをせず、それどころか、わけのわからないまま主人公のほうが怨まれていく。日常の小さな親切が言葉も論理も通じない泥沼へ転がり落ちる過程を、乾いたユーモアで描いた不条理劇。応募時の題名「革命」… 第107回 文學界新人賞
- 037 2008 射手座 いてざ 日系ブラジル人の語り手が、妹ルシアに関わる謎めいた男・加賀芳明と向き合う。妹の万引きに関わった加賀は、やがて妹が遺棄した赤ん坊について語り出し、赤ん坊を運んで山道をひとりさまよう。語り手が加賀から聞いた話を伝聞のかたちで重ねていく重層的な構造により、何が真実かは最後まで曖昧なまま、登場人物の誰ひとり… 第107回 文學界新人賞
- 038 2008 逃げ道 にげみち シャワートイレ業者に雇われ、一般人のふりをして製品を試す「モニター工作員」として働く若い女性が主人公。アルバイト先の不祥事を機に、彼女は営業担当の田尻とともに街を離れ、千葉の屛風ヶ浦へと車を走らせる。隣人が全裸で現れるなどのノンセンスな場面や、エクセルの表を組み込む形式の実験を織り交ぜながら、どこに… 第106回 文學界新人賞
- 039 2007 乳と卵 ちちとらん 東京で一人暮らしをする「わたし」のもとへ、大阪でホステスとして働く姉の巻子と、その娘で小学6年生の緑子が上京してくる。離婚後ひとりで娘を育ててきた巻子は豊胸手術を受けることに執拗にこだわり、初潮を迎える年頃の緑子は、自分の身体が変わっていくことへの違和感をノートに書きつけ、母とは筆談でしか口をきかな… 第138回 芥川賞
- 040 2007 舞い落ちる村 まいおちるむら 生まれ育った女系の村では、時間の進み方や年齢の重ね方が定まらず、ものの数も曖昧で、人々は個々の名前すらめったに持たない。「わたし」はその「言葉を信じない」村のあり方に違和感を抱き、村と大学のある街とを行き来するうち、言葉を信じ言葉で武装した人物に強く惹かれていく。土俗的な幻想と言語への意識を重ね合わ… 第104回 文學界新人賞
- 041 2007 オブ・ザ・ベースボール おぶ・ざ・べーすぼーる 年に一度くらいの割合で空から人が降ってくる町、ファウルズ。「私」はユニフォームとバットを支給されたレスキュー・チームの一員として、落ちてくる人をフルスイングで打ち返すべく日々待機している。およそ役に立たない職務をめぐる思弁が、乾いた論理の積み重ねでどこまでも転がっていく。不条理な設定を理詰めで駆動す… 第104回 文學界新人賞
- 042 2007 ワンちゃん わんちゃん 日本に渡って暮らす中国人女性「ワンちゃん」は、中国の女性たちと日本の男たちを引き合わせる見合いツアーの世話役を務めている。国境をまたぐ結婚の斡旋という生々しい現場を通して、経済格差のなかを生きる女たちのたくましさと哀感を、来日20年の作者がよどみのない日本語で描いた。日本語を母語としない書き手が日本… 第105回 文學界新人賞
- 043 2006 風化する女 ふうかするおんな 突然死んだ会社の先輩れい子には、職場で見せていたのとは別の顔があった。「私」はその謎をたどって東京から地方へと旅をし、死んだ女の生の痕跡に自分を重ねていく。日々がたえず「風化」していく都会の生活感覚を背景に、死者をなぞることでしか確かめられない自分の輪郭を、抑制された筆致で描いたデビュー作。 第102回 文學界新人賞
- 044 2006 いやしい鳥 いやしいとり 飲み会で初めて会った学生を家に連れ帰るはめになった非常勤の大学講師。その夜を発端に、男が鳥へと変身していく惨劇が起こる。講師の視点と隣に住む専業主婦の視点を交互に置き、時系列を少しずつずらす構成で、日常に走る裂け目をグロテスクな滑稽さとともに見せる。藤野の出発点となった変身譚で、奇想と冷静な観察眼の… 第103回 文學界新人賞
- 045 2006 裏庭の穴 うらにわのあな 主婦の朝子は、幼い頃に母親が裏庭に何かを埋めるのを目撃したという記憶を、大人になっても抱え続けている。掘り返されないまま家族の足元に空いた「穴」のような記憶を軸に、平穏に見える家庭の日常の底に沈む鬱屈と、母と娘のあいだのほどけない結び目を描く。受賞作は2009年刊の作品集『霊降ろし』(文藝春秋)に収… 第103回 文學界新人賞
- 046 2005 さりぎわの歩き方 さりぎわのあるきかた 29歳の「僕」は、青春の終わりを記念するかのように一泊の合コンに参加する。怪しげな新事業の話、旧友の転落と自殺——若さの賞味期限が切れかかった男たちの周りで起こる出来事を、「こういうのがお望みのドラマなんだろう?」と斜に構えた語りで突き放しながら、それでも去り際の身の処し方を探っていく。まっとうな成… 第101回 文學界新人賞
- 047 2004 初子さん はつこさん あんパンとクリームパンしか売らないパン屋の二階で、ひたすらミシンを踏む洋裁職人の初子さん。一枚の布が誰かの身体を待つ服になることに魅せられて職人になったものの、夢を叶えた先に広がるのは単調な日々だった。京都の田舎町のよどんだ空気と、そこで生きる女性の手仕事の時間を、とぼけたユーモアと正確な観察で描く… 第99回 文學界新人賞
- 048 2004 介護入門 かいごにゅうもん 寝たきりの祖母を在宅で介護する無職の「俺」が、深夜のおむつ替えや褥瘡のケアといった介護の現実を、ヒップホップのライムを思わせる呼びかけと畳みかける長文で語る。「ヨォ、と俺は呼びかける」という挑発的な語りは、介護を美談にも悲劇にも回収せず、祖母への愛と世間への呪詛を同じ熱量で吐き出していく。介護文学に… 第98回 文學界新人賞
- 049 2003 ハンゴンタン はんごんたん タイトルの「ハンゴンタン(反魂丹)」は、死者の魂を呼び戻すという伝承を持つ富山の伝統的な丸薬の名。哲学科出身の27歳の新人が、第95回・第96回と受賞作が1作以下の状態が続いた文學界新人賞の2003年下期に単独受賞した。選考委員は浅田彰・奥泉光・島田雅彦・辻原登・山田詠美。単行本化されておらず、内容… 第97回 文學界新人賞
- 050 2003 イッツ・オンリー・トーク いっつ・おんりー・とーく 躁鬱病を抱えた30代半ばの独身女性「私」は、東京の場末めいた蒲田の町に引っ越してくる。EDの痴漢、鬱病のヤクザ、出世コースを外れた従兄——彼女の周りに集まるのは、どこか欠けた男たちばかり。誰とも深く結ばれないまま交わされる「ただのおしゃべり」を通して、病とともに生きる日常を、自己憐憫ゼロの乾いたユー… 第96回 文學界新人賞
- 051 2002 飴玉が三つ あめだまがみっつ アルコール依存症者の自助グループ「断酒会」に母と通う既婚の娘が、死を前に断酒を誓った医師の父との歳月を振り返る。父から受けた一度きりの暴力すら幸福の記憶として抱え込み、会で告白する他の依存症者を見下す主人公は、自身もまた高校時代から酒に頼ってきた。父への愛と自己への愛が分かちがたく絡まり、その呪縛か… 第94回 文學界新人賞
- 052 2002 わたしの好きなハンバーガー わたしのすきなはんばーがー 広告会社を定年まで勤め上げた67歳の新人が、蒔岡雪子「飴玉が三つ」と同時に第94回文學界新人賞を射止めた作品。新人賞の受賞者が軒並み若返っていく2000年代初頭にあって、企業社会を生き切った世代の書き手の登場は異彩を放った。選考委員は浅田彰・奥泉光・島田雅彦・辻原登・山田詠美。単行本化されておらず… 第94回 文學界新人賞
- 053 2001 クチュクチュバーン くちゅくちゅばーん ある時から人間たちが異形のものへと変容しはじめ、世界そのものが崩壊へ向かう過程を、複数の人物のエピソードを束ねて描く黙示録的な中篇。グロテスクで生々しい身体描写を畳みかけながら、悲惨さの中に奇妙な可笑しさと祝祭性が同居するのが特徴で、「世界の破壊か、新しい人類の始まりか」という終末イメージを正面から… 第92回 文學界新人賞
- 054 2001 サイドカーに犬 さいどかーにいぬ 小学四年生の夏、母が家出した薫の家に、父の知り合いである洋子さんが入り込んでくる。自転車を教えてくれ、缶コーヒーを飲み、堂々と振る舞う洋子さんと過ごしたひと夏を、大人になった薫が淡々と回想する。家庭の危機という湿りがちな題材を、軽やかでユーモラスな距離感と即物的なディテールで描き、深刻にならないのに… 第92回 文學界新人賞
- 055 2000 看板屋の恋 かんばんやのこい 受賞作なしが続いた時期の文學界新人賞で、2000年下期に単独で選ばれた短篇。『文學界』2000年12月号に掲載されたが単行本未収録のままで、今日では掲載誌でしか読めない。作者の都築隆広は当時22歳の若さでデビューしたものの、その後は脚本家・放送作家として映像分野へ活動の軸を移した。新人賞受賞が必ずし… 第91回 文學界新人賞
- 056 1999 蔭の棲みか かげのすみか 在日朝鮮人が暮らす大阪の下町を舞台に、戦争で手首を失った最古参の住人ソバンの68年間の人生と、集落で起きる事件や日常を描く。在日文学の系譜に連なりつつ独自の土着性を持つ作品。藤野千夜「夏の約束」と同時受賞。 第122回 芥川賞
- 057 1999 LA心中 えるえーしんじゅう LA心中は、羽根田康美による1999年発表の作品です。初出は「文學界」1999年6月号(第88回受賞、松崎美保と同時受賞)。単行本化は確認できていません。第88回文學界新人賞受賞。 第88回 文學界新人賞
- 058 1999 DAY LABOUR でい・れいばー DAY LABOURは、松崎美保による1999年発表の作品です。初出は「文學界」1999年6月号(第88回受賞、羽根田康美と同時受賞)。単行本化は確認できていません。第88回文學界新人賞受賞。 第88回 文學界新人賞
- 059 1998 ゲルマニウムの夜 げるまにうむのよる 問題行動を重ねた少年が小学校高学年から中学卒業まで暮らした修道院兼教護院に、殺人を犯した後に逃亡先として舞い戻る物語。暴力・性・宗教が過剰な密度で交錯する花村萬月の代表作。 第119回 芥川賞
- 060 1998 腦病院へまゐります。 のうびょういんへまゐります。 旧仮名遣いを用いた独特の文体で、精神の病と言語の関係を探った問題作。第119回芥川賞候補となった。 第86回 文學界新人賞
- 061 1997 水滴 すいてき ある日突然足がはれて指先から水が流れ出した沖縄の老人を主人公に、沖縄戦の死者たちの記憶が現実に浸食してくる幻想譚。ユーモアとペーソスが共存する目取真俊の代表作。 第117回 芥川賞
- 062 1997 最後の息子 さいごのむすこ 長崎から上京した若者が、新宿の中年ゲイ男性と同居するうちに互いの孤独と依存を見つめ合う中編。吉田修一のデビュー作であり、芥川賞候補ともなった。 第84回 文學界新人賞
- 063 1997 くろい、こうえんの くろい、こうえんの くろい、こうえんのは、橘川有彌による1997年発表の作品です。初出は「文學界」1997年12月号(第85回受賞)。単行本化は確認できていません。第85回文學界新人賞受賞。 第85回 文學界新人賞
- 064 1996 蛇を踏む へびをふむ 藪で蛇を踏んだ女が女に変身した蛇に「蛇になれ」と迫られ続ける物語。異界と現実が地続きに溶け合う川上弘美の作風の出発点となった芥川賞受賞作。 第115回 芥川賞
- 065 1996 物語が殺されたあとで ものがたりがころされたあとで 物語が殺されたあとでは、最上煬介による1996年発表の作品です。初出は「文學界」1996年12月号(第83回受賞、大村麻梨子と同時受賞)。単行本化は確認できていません。第83回文學界新人賞受賞。 第83回 文學界新人賞
- 066 1996 ギルド ぎるど ギルドは、大村麻梨子による1996年発表の作品です。初出は「文學界」1996年12月号(第83回受賞、最上煬介と同時受賞)。単行本化は確認できていません。第83回文學界新人賞受賞。 第83回 文學界新人賞
- 067 1996 くっすん大黒 くっすん だいこく 3年前に仕事を辞めて放浪生活を続けるうち妻に出て行かれた楠が、全ての不運を自宅の不気味な金属の大黒像のせいにして捨てに行く物語。大阪弁に近いリズムと独特の語り口が斬新なデビュー作。第7回Bunkamuraドゥマゴ文学賞・第19回野間文芸新人賞受賞。 第19回 野間新人賞
- 068 1995 豚の報い ぶたのむくい 沖縄のスナックに豚が乱入し、その厄落としのためにスナックのママ・従業員・大学生の4人が離れ小島の御嶽へ向かうというファルス的構造の中に、沖縄の霊的世界観と生の逞しさを描いた作品。 第114回 芥川賞
- 069 1995 ジェロニモの十字架 じぇろにものじゅうじか 長崎を舞台に、カトリックの信仰と歴史的暴力の記憶が交差する世界を描いたデビュー作。 第80回 文學界新人賞
- 070 1995 目印はコンビニエンス めじるしはこんびにえんす 目印はコンビニエンスは、塩崎豪士による1995年発表の作品です。初出は「文學界」1995年12月号(第81回受賞、清野栄一と同時受賞)。単行本化は確認できていません。第81回文學界新人賞受賞。 第81回 文學界新人賞
- 071 1995 デッドエンド・スカイ でっどえんど・すかい 都市の音楽シーンと若者の閉塞感を描いたデビュー作。DJでもある著者の感性が横溢する。 第81回 文學界新人賞
- 072 1994 タイムスリップ・コンビナート たいむすりっぷ・こんびなーと 自宅から海芝浦駅までの道程で時間が前後にスリップしていく幻想的な作品。笙野頼子の自由奔放な文体と独自の時間感覚が凝縮されており、三島賞・野間新人賞との三冠をなした。 第111回 芥川賞
- 073 1994 ファースト・ブルース ふぁーすと・ぶるーす ファースト・ブルースは、松尾光治による1994年発表の作品です。初出は「文學界」1994年6月号(第78回受賞)。単行本化は確認できていません。第78回文學界新人賞受賞。 第78回 文學界新人賞
- 074 1994 マイナス因子 まいなすいんし マイナス因子は、木崎巴による1994年発表の作品です。初出は「文學界」1994年12月号(第79回受賞)。単行本化は確認できていません。第79回文學界新人賞受賞。 第79回 文學界新人賞
- 075 1993 石の来歴 いしのらいれき 第二次大戦中から戦後にわたる男の人生と、その男が持ち続ける一個の石をめぐって歴史と記憶が交錯する中編。奥泉光の歴史的想像力と実験精神が凝縮された芥川賞受賞作。 第110回 芥川賞
- 076 1993 無人車 むじんしゃ 『無人車』は、高林杳子が第76回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1993年6月号の書誌を確認できますが、詳細なあらすじ・書評は今回確認できませんでした。題名の移動体と空白のイメージから、都市的な疎外を扱う作品として暫定分類しています。 第76回 文學界新人賞
- 077 1993 冗談関係のメモリアル じょうだんかんけいのめもりある 『冗談関係のメモリアル』は、中村邦生が第77回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1993年12月号の書誌を確認できます。題名から、冗談や記憶をめぐる人間関係を扱う作品と見られますが、内容の詳細は未確認です。 第77回 文學界新人賞
- 078 1993 壊音 KAI-ON かいおん 高校生の少女が、自分の身体感覚の崩壊と再生をたどるデビュー作。17歳の最年少受賞として注目された。 第77回 文學界新人賞
- 079 1992 樹木内侵入臨床士 じゅもくないしんにゅうりんしょうし 『樹木内侵入臨床士』は、架空の職業をめぐる実験的な物語です。人間の身体や治療の感覚を、樹木の内部へ侵入するという奇妙な設定に置き換えています。現実的な職業小説ではなく、身体と自然の境界をずらす寓話として読むのが近い作品です。 第74回 文學界新人賞
- 080 1992 春の手品師 はるのてじなし 『春の手品師』は、大島真寿美が第74回文學界新人賞を受賞したデビュー中篇です。名古屋を舞台に、ある関係性の始まりと変化を丁寧に描いた作品として既存調査で確認されています。恋愛や都市生活の気配を、清新な文体で扱う初期作品として位置づけられます。 第74回 文學界新人賞
- 081 1992 ちょっとムカつくけれど、居心地のいい場所 ちょっとむかつくけれど、いごこちのいいばしょ 『ちょっとムカつくけれど、居心地のいい場所』は、伏本和代が第75回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1992年12月号の書誌を確認できました。タイトルが示すような、反発と居心地のよさが同居する人間関係を扱う作品と見られますが、詳細内容は未確認です。 第75回 文學界新人賞
- 082 1991 自動起床装置 じどうきしょうそうち 『自動起床装置』は、通信社の仮眠室で眠る人々を起こす「起こし屋」を主人公にした作品です。眠りを管理する仕事を通して、現代の労働、身体、文明の疲弊を問います。ジャーナリストでもある辺見庸の観察眼と、実験的な文体が交差する芥川賞受賞作です。 第105回 芥川賞
- 083 1991 背負い水 せおいみず 『背負い水』は、荻野アンナが三年連続候補を経て芥川賞を受けた作品です。ラブレー研究者としての言語感覚を背景に、肉体、性、笑いを奔放な語りで絡ませます。湿った私小説性よりも、身体と言葉がはねるようなユーモアが前面に出る作品です。 第105回 芥川賞
- 084 1991 海を渡る植物群 うみをわたるしょくぶつぐん 『海を渡る植物群』は、みどりゆうこが第72回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLで受賞作発表記事と『文學界』1991年6月号の書誌を確認できました。題名から越境や移動のイメージがうかがえますが、物語内容を具体的に確認できる公開資料は今回見つからず、紹介は書誌中心です。 第72回 文學界新人賞
- 085 1991 名前のない表札 なまえのないひょうさつ 『名前のない表札』は、市村薫が第73回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1991年12月号の書誌を確認できますが、詳細な内容紹介は今回確認できませんでした。題名が示す匿名性や住まいの感覚に関わる作品と見られますが、内容面は低確信です。 第73回 文學界新人賞
- 086 1990 村の名前 むらのなまえ 『村の名前』は、中国奥地を舞台に、ある村の名をめぐる記憶と謎を追う中篇です。旅と聞き書きのような手触りを持ちながら、地名が個人や共同体の歴史をどのように抱え込むかを幻想的に描きます。辻原登のデビュー期の越境感覚と、語りの迷宮性が読みどころです。 第103回 芥川賞
- 087 1990 妊娠カレンダー にんしんかれんだー 『妊娠カレンダー』は、妊娠した姉とその夫と同居する「私」が、妊娠の経過を日々観察していく短篇です。生命の誕生を祝福だけでなく、匂い、食べ物、身体への嫌悪や違和感として描く点が際立ちます。淡々とした一人称の記録が、家族の親密さの裏にある不穏さを増幅します。 第104回 芥川賞
- 088 1990 渇水 かっすい 『渇水』は、水道料金を滞納した家庭の給水停止に向かう水道局員・岩切俊作と、その家の子どもたちをめぐる中篇です。行政の仕事としての「停止」と、生活の水を断たれる人々の現実がぶつかります。乾いた社会派リアリズムで、貧困、労働、家庭の孤立を描く作品です。 第70回 文學界新人賞
- 089 1990 狂いバチ、迷いバチ くるいバチ、まよいバチ 『狂いバチ、迷いバチ』は、竹野昌代が第71回文學界新人賞を受賞した作品です。NDLでは受賞作発表記事と『文學界』1990年12月号の書誌を確認できますが、公開された詳細なあらすじ・書評は今回確認できませんでした。題名の不穏さを含め、現時点では新人賞受賞作としての書誌的紹介を中心に扱います。 第71回 文學界新人賞
- 090 1958 飼育 しいく 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 第39回 芥川賞
- 091 1957 裸の王様 はだかのおうさま 『裸の王様』は、企業の付設美術教室で働く主人公が、子どもたちの表現を管理しようとする組織と向き合う短篇です。子どもの自由な絵と大人の制度的な論理を対比させ、個人が組織に取り込まれていく過程を批評します。開高健の社会批評性と寓話性が、読みやすい構図のなかに収まった出世作です。 第38回 芥川賞
- 092 1956 海人舟 かいとぶね 『海人舟』は、千葉・鴨川の海辺を背景に、漁師たちの労働と土地に根ざした生活を描く短篇です。近藤啓太郎自身の漁業体験に近い素材を、海と身体の感覚を伴うリアリズムで扱っています。都市の内面劇とは違う、海辺の共同体と労働の重さが読みどころです。 第35回 芥川賞
- 093 1955 太陽の季節 たいようのきせつ 裕福な家庭に育ち、拳闘に打ち込む高校生・津川竜哉が主人公。湘南の海やヨット、盛り場を舞台に、既成の倫理や大人の価値観を軽蔑し、喧嘩や女性関係を遊戯のように楽しむ戦後世代の若者たちの生態を描く。竜哉は英子という女性と出会い、互いに駆け引きめいた恋愛を続けるうちに、欲望と愛情の間で関係は思わぬ方向へ傾い… 第34回 芥川賞
- 094 1954 驟雨 しゅうう 『驟雨』は、料亭の女との短い逢瀬を軸に、中年男の倦怠と孤独を描く短篇です。感情を大きく説明せず、会話や身振りの細部から男女の距離を読ませるところに特徴があります。吉行淳之介の乾いた都市的感覚が、第三の新人の作風を代表するかたちで現れています。 第31回 芥川賞
- 095 1954 アメリカン・スクール あめりかん・すくーる 『アメリカン・スクール』は、占領下日本の英語教師たちがアメリカ人学校を見学する一日を描く短篇です。英語を教えながら英語に怯える教師たちの滑稽さを通して、敗戦後の対米感情と自意識のゆがみが浮かびます。小島信夫らしいユーモアと違和感のある会話が、戦後日本の心理的占領状態を照らします。 第32回 芥川賞