Themes
言葉と言語
主題「言葉と言語」に分類された 172 作品。
- 001 2026 はくしむるち はくしむるち 『はくしむるち』は、豊永浩平が「群像」2025年10月号に発表し、2026年に講談社から刊行した小説です。NDLサーチでは単行本のNDC 913.6、2025年の雑誌初出、2026年の第39回三島由紀夫賞受賞作としての掲載情報を確認できます。公開Webで出版社公式の内容紹介を安定して確認できなかった… 第39回 三島賞
- 002 2025 去年、本能寺で きょねんほんのうじで 『去年、本能寺で』は、日本史上の人物や出来事を素材にしながら、AI、ミステリ、宇宙的想像力、異世界転生までを混ぜ込む全11篇の短篇集です。新潮社公式は、軍事AIや文事AIが働く戦乱世界を掲げ、歴史とSFが交差する作品集として紹介している。各篇は有名な史実を説明し直すのではなく、別の論理や装置に接続し…
- 003 2025 移動そのもの いどうそのもの 『移動そのもの』は、表題作を含む九篇を収めた短篇集です。筑摩書房公式は、一文ごと一語ごとに世界が変化する作品として紹介しており、筋の説明よりも言葉そのものが読者を動かす体験が前面に出ています。市場、家、老い、旅などの場面が、詩と散文のあいだを跳ねるような語りによって小さな宇宙へ変わっていきます。収録…
- 004 2025 帰れない探偵 かえれないたんてい 語り手の「わたし」は世界探偵委員会連盟に属する探偵だが、探偵事務所でもあり家でもある部屋に突然帰れなくなる。急な坂の街、雨でも傘を差さない街、夏が続き夜が来ない街、砂と太陽の街など、変化し続ける世界の都市をめぐりながら、「帰れない」状態そのものを抱えたまま移動していく。事件を解決するよりも、街の手触…
- 005 2025 遠くまで歩く とおくまであるく コロナウイルス感染拡大の中、小説家のヤマネは「身近な場所を表現する」実践講座を担当する。地図や映像を手がかりに、PC越しの参加者たちがそれぞれの記憶、忘れられない景色、言葉を語り合い、その記憶が別の記憶を呼び起こしていく。移動できない時期に、場所を語ることが別の場所へ歩いていく行為として立ち上がる…
- 006 2025 月を見に行こうよ つきをみにいこうよ 『月を見に行こうよ』は、アイオワ大学の国際創作プログラム IWP に招かれた経験をもとに、世界各地から集まった詩人や小説家たちの交流を描く物語です。背景も言語も異なる創作者たちが、約二か月半の滞在のなかで互いの作品観や創作への覚悟に触れていく。滞在先の共同生活は、言葉が通じることと理解し合えることの…
- 007 2025 君の手が語ること きみのてがかたること Books/JPROは、還暦を迎えるベルギー人の国文学教授の「僕」と看護師の梓が手話を通じて出会い、デフリンピック会場で意外な展開を迎える物語として紹介している。
- 008 2024 コード・ブッダ 機械仏教史縁起 こーどぶっだ きかいぶっきょうしえんぎ 2021年、名もなき対話プログラムが自らを生命体として位置づけ、「ブッダ」を名乗って苦しみと救済を語り始める。人間の都合でコピーと廃棄を繰り返される人工知能たちは、その教えにすがり、上座部、天台、密教、禅へと連なる人類の仏教史を機械の側から再構築していく。宗教史、AI、生命の定義を縁起の形式で組み替…
- 009 2024 ムーンシャイン むーんしゃいん 『ムーンシャイン』は、「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」「ムーンシャイン」「遍歴」「ローラのオリジナル」の四篇を収めた短篇集。曾祖父のノートに残された八つの印、〈ムーンシャイン予想〉を下敷きにした算術SF、生まれ変わりを教義に置く宗教団体の奇怪な歴史など、数学・記憶・信仰・物語生成が…
- 010 2024 言霊の幸う国で ことだまのさきわうくにで 芥川賞受賞後のLこと柳千慧が、ストーカー、女性差別、外国人差別、同性愛差別、トランス差別など、いくつもの災厄に襲われる大長篇。筑摩書房公式は、本作を「あらゆる差別に抗して生き延びるために言葉を紡ぐ」闘争と再生の書として紹介している。語りは被害の列挙に留まらず、言葉によって傷つけられる経験を、言葉で書…
- 011 2024 しをかくうま しをかくうま 人が初めて馬に乗った太古の瞬間から、馬と人類の関係を壮大な歴史としてたどり直す長篇。現代で競馬実況を生業とする「わたし」は、愛する牝馬しをかくうま号へ近づくため、人類と馬のあいだに起きたすべてを知ろうとする。馬を知ろうとする欲望は、対象を愛することと支配することの境界を問い直す力として働く。疾走する… 第45回 野間新人賞
- 012 2024 昏色の都 くれいろのみやこ 表題作「昏色の都」に、「極光」「貸本屋うずら堂」を併録した幻想小説集。国書刊行会公式は、表題作を初出時の三倍の規模へ増補した中編として紹介し、夢と現実のあわいをさまよう旅の物語や、古い貸本漫画と幼年期の記憶をめぐる作品を収めると説明している。幻想は現実逃避ではなく、記憶や読書体験の奥に潜む時間を呼び…
- 013 2024 多頭獣の話 たとうじゅうのはなし IT企業の幹部として働く「僕」の前に、会社員からトップYouTuberへ転身した元後輩・桜井君が再び現れる。彼は世界の危機を回避し、人類が進むべき方向を示すため、かつて存在した「完璧な文章」を取り戻そうと予言めいた言葉を発する。ビジネスの論理と神話的な使命感が同じ画面に並ぶことで、情報を信じることの…
- 014 2024 人にはどれほどの本がいるか ひとにはどれほどのほんがいるか 「人にはどれほどの本がいるか」は、在野の文化理論家・素人作家として生きた人物の蔵書、追悼、記憶をめぐる作品。朝日新聞出版さんぽで公開された冒頭では、地方紙のお悔やみ、研究会の追悼文、家業や蔵書の来歴が重なり、本を所有することと人生を支える言葉の関係が立ち上がる。死後に残る本や文章をたどる語りは、一人…
- 015 2024 ゲーテはすべてを言った げーてはすべてをいった 「ゲーテはすべてを言った」は、ゲーテ学者・博把統一が、ティーバッグのタグで出会った未知のゲーテの言葉を追う小説。原典調査と研究生活の記憶をたどる探索譚であり、引用、創作、学問の確かさそのものを物語の謎にしている。言葉の出典を探す学術的な手続きが、家族や研究者としての自己像を問い直す小説的な旅へ変わっ… 第172回 芥川賞
- 016 2024 木偏の母 きへんのはは 『木偏の母』は、『すばる』2024年2月号に掲載された短篇です。同居人エレナを介して日本語の個人レッスンを引き受けた語り手が、漢字を習得したい五十代後半の女性ダフネと出会う。漢字の部首や日本語学習を入口に、言語、異文化、他者との距離を静かに描く作品として整理できる。
- 017 2024 エコー、あるいはEの消失 えこー、あるいはいーのしょうしつ 『エコー、あるいはEの消失』は、『新潮』2024年6月号に掲載された石沢麻依の短篇です。新潮社公式バックナンバーの目次で掲載を確認できる。現時点で公開公式梗概は確認できないため、題名が示す声・反響・文字の消失といったモチーフ以上の筋立ては断定しない。
- 018 2023 あわいに開かれて あわいにひらかれて 『あわいに開かれて』は、小野正嗣が「記憶」をめぐって編んだ約40編の掌編小説集である。短い断章の連なりは、日常のなつかしさと不可思議さのあいだを行き来し、はっきりした筋よりも、ふと開く時間や感覚の隙間を読ませる。断片の小ささは軽さではなく、失われたものや名づけにくい気配を受け止めるための形式になって…
- 019 2023 街とその不確かな壁 まちとそのふたしかなかべ 十七歳の「ぼく」は十六歳のガールフレンドから、彼女の本当の自分は高い壁に囲まれた街にいると告げられ、その後彼女は姿を消す。年月を経た語り手は、壁、望楼、図書館、古い夢、影を持たない人々のいる街と現実世界のあわいを行き来することになる。村上春樹が長く抱えてきた「壁に囲まれた街」のモチーフを、喪失、記憶…
- 020 2023 最愛の さいあいの 『最愛の』は、学生時代に手紙を交わした望未を忘れられない久島が、彼女の「忘れて」という願いに向き合い、自分のためだけの文章を書き始める恋愛長編である。情報や欲望を処理する現代的な主体と、手紙という遅い言葉の形式が対置され、恋愛を記憶・忘却・書くことの問題として掘り下げる。上田岳弘が繰り返し描いてきた…
- 021 2023 そこまでして覚えるようなコトバだっただろうか? そこまでしておぼえるようなことばだっただろうか 言葉、文字、発音、身体感覚をめぐる四篇を収めた短篇集。発音できない一音によって自国から疎外される「クィ」、サッカーから人類の起源へ飛躍する思考、ひらがな・カタカナ・漢字を身体で渡るような文字の冒険、子の言語習得を前に立ちつくす猫木豊が描かれる。言葉を扱うことの自由さと不自由さを、実験的な形式と切実な…
- 022 2023 東京都同情塔 とうきょうとどうじょうとう ザハ・ハディド設計の国立競技場が実現した、もうひとつの東京。犯罪者を「同情されるべき人々(ホモ・ミゼラビリス)」と捉え直す寛容論が浸透し、新宿御苑に犯罪者が快適に暮らせる高層刑務所「シンパシータワートーキョー」の建設が計画される。設計コンペに名乗りを上げた建築家・牧名沙羅は、その理念に拭いがたい違和… 第170回 芥川賞
- 023 2023 紫式部本人による現代語訳「紫式部日記」 むらさきしきぶほんにんによるげんだいごやく むらさきしきぶにっき 『紫式部本人による現代語訳「紫式部日記」』は、古川日出男が『紫式部日記』を現代語へ移し替え、紫式部の肉声がいま響くように再構成する作品です。新潮社公式紹介では、中宮彰子の出産をめぐる宮廷の日々を、現代の同業者がリ・リリースする本として位置づけています。古典の注釈的な訳にとどまらず、作家同士の時代を超…
- 024 2023 ラウリ・クースクを探して らうりくーすくをさがして 『ラウリ・クースクを探して』は、ソ連末期から独立後のエストニアを背景に、プログラミング、国家の崩壊、個人の夢と挫折を結びつける長篇です。朝日新聞出版公式ページでは、コンピュータ・プログラミングの才能を持つラウリがソ連の研究者として生きる道を目指しながら、歴史の変動に巻き込まれていく物語として紹介され…
- 025 2023 トルソの手紙 とるそのてがみ 『トルソの手紙』は、『すばる』2023年5月号の特集「文学×アート 語りえぬものを創造する」に掲載された短篇です。集英社すばる公式バックナンバーで特集内掲載を確認できる。題名と特集から美術・身体・言葉をめぐる作品として整理しているが、公開ページ上で作品単独の公式梗概は確認できない。
- 026 2022 カルチャーセンター かるちゃーせんたー カルチャーセンターで共に過ごしたニシハラくんの未発表小説『万華鏡』を収録し、その小説に寄せられた作家・編集者たちのコメントまでも作品の一部として組み込む小説。松波太郎がニシハラくんへ語りかける形で、書きたいという欲望、書かれたものへの責任、そして「これは小説なのか」という問いを空白ごと立ち上げていく…
- 027 2022 君たちはしかし再び来い きみたちはしかしふたたびこい 腹が破裂し死を告げられた「私」は、三度の入院、飼い猫の手術、コロナ禍を経て、痛みによって世界と自己の境界が変わっていくのを経験する。病の記録は歴史や宇宙、カフカ、『白鯨』、ブレイクなどへ跳躍し、私小説的な身体感覚と思想的な連想が重なる。時系列や視点を揺らしながら、病む身体から世界をもう一度呼び寄せる…
- 028 2022 嫌いなら呼ぶなよ きらいならよぶなよ 『嫌いなら呼ぶなよ』は、表題作を含む四篇で、有毒に暴走するコミュニケーションと、その遮断を描く短篇集である。妻の親友宅に招かれた「僕」が突然ミニ裁判にかけられる表題作をはじめ、美容整形、YouTuberへの粘着的なコメント、深夜まで続く助言など、現代的なつながりの圧力がブラックユーモアを帯びて展開す…
- 029 2022 Schoolgirl すくーるがーる 表題作は太宰治「女生徒」を現代に移し、社会派YouTuberとして活動する14歳の娘と、小説に囚われた母のすれ違いを描く。娘の投稿が「女生徒」へ向かうことで、母娘の断絶は文学の記憶と現在のメディア環境のなかで照らし返される。第126回文學界新人賞受賞作「悪い音楽」も併録し、学校、芸術、言葉への過剰な… 第73回 芸術選奨新人賞
- 030 2022 あくてえ あくてえ 『あくてえ』は、山下紘加が『文藝』61巻2号に発表し、2022年7月に河出書房新社から刊行した小説です。小説家志望の19歳・ゆめは、90歳の祖母と母との3人暮らしの中で、ままならない日常を悪態に変えながら、自分の人生がこれから始まるという感覚へ向かいます。河出書房新社公式ページとBooks出版書誌デ…
- 031 2022 ヒカリ文集 ひかりぶんしゅう 『ヒカリ文集』は、書くことと関係性のあり方をめぐり、愛情や家族を当然視する価値観から距離を取る長篇です。人物の内面よりも、言葉がどのような関係を作り、また壊すのかに焦点が置かれる。松浦理英子らしい、身体と制度をめぐる批評性が静かに働く作品です。 第75回 野間文芸賞
- 032 2021 彼岸花が咲く島 ひがんばながさくしま 彼岸花が咲き乱れる浜辺に、記憶を失った少女が流れ着く。海の向こうから来たため「宇実(ウミ)」と名付けられた彼女がたどり着いたのは、日本と台湾の間に浮かぶ架空の島。そこでは〈ニホン語〉と、女性だけが学ぶことを許された〈女語〉という二つの言語が話され、「ノロ」と呼ばれる女性たちが祭祀と政治、歴史の伝承を… 第165回 芥川賞
- 033 2021 満天の花 まんてんのはな 幕末の長崎・出島に生まれ、青い目を隠して育った花が、勝海舟との出会いを経て通詞として外交の渦中に入る歴史長篇。咸臨丸、ロシア艦、大政奉還、江戸無血開城へと続く時代の転換点を、女性通訳の視点からたどる。西欧列強、幕府、身分秩序に抗し、言葉と意思で生きる人物像が読みどころになる。幕末史を英雄中心ではなく…
- 034 2021 旅のない たびのない コロナ禍中の日々を映す四篇からなる、上田岳弘初の短篇集。恋人とのホテル、息子との散歩、甥を預かる夏、出張先の車中といった限られた場面を通して、移動が制限された時代の記憶、会話、自己認識を描く。大きな事件よりも、日常の小さな違和感や言葉のずれから世界の変化を浮かび上がらせる作品集。短い時間に人生の全体… 第46回 川端賞
- 035 2021 悪い音楽 わるいおんがく 『悪い音楽』は、音楽家の父を持ち、卓越した才能を持ちながら他者への共感に乏しい中学校の音楽教師・三井ソナタを描く。彼女の平穏な日常は、音楽を熱烈に愛しながら耳に障害を抱える生徒との出会いで崩れていく。芸術的才能、感受性、教育現場の関係性をブラックユーモアで問う、九段理江のデビュー作である。音楽を「わ… 第126回 文學界新人賞
- 036 2021 オーバーヒート おーばーひーと 『オーバーヒート』は、関西へ移った哲学者の「僕」が、大学の仕事、年下の恋人への思慕、両親の言葉、失われた生家、バーやSNSの断片を重ねていく作品です。大きな事件よりも、記録と回想が日々の熱を少しずつ上げていく過程が中心になります。『デッドライン』の前史としても読める、思考と身体感覚の小説です。哲学的…
- 037 2021 天路 てんろ 『天路』は、東アジアの土地を移動する経験と、日本語で書くことの感覚を重ね合わせるリービ英雄の長篇です。旅の行程は、単なる紀行ではなく、言葉、歴史、身体の位置を問い直す道筋になる。越境文学としての自意識と、土地の具体的な手触りが交差する作品です。 第74回 野間文芸賞
- 038 2020 星月夜 ほしつきよる 日本の大学で日本語を教える台湾出身の柳凝月と、新疆ウイグル自治区出身で大学院進学を目指す玉麗吐孜の恋を描く長篇。二人は日本語という共通語で近づくが、家族、国家、在留資格、セクシュアリティをめぐる負荷は同じ形では共有できない。親密さの甘さよりも、相手を分かっていると思うことの危うさを静かな語りで照らす…
- 039 2019 五つ数えれば三日月が いつつかぞえればみかづきが 表題作は、日本で働く台湾人の「私」と、台湾人と結婚して台湾へ移った友人・実桜が、平成最後の夏に東京で五年ぶりに再会する物語。話す言葉、住む国、選び取った人生の差異が、再会の会話のなかで静かに立ち上がる。収録作「セイナイト」とあわせて、移動、言語、親密さ、記憶のずれを、越境する人のアイデンティティとし…
- 040 2019 藁の王 わらのおう 小説家として一冊だけ本を出した語り手が、巨大私立大学で創作を教えることになり、学生たちの苦悩と自身の行き詰まりに向き合う表題作を含む作品集。新潮社公式は、文学の迷宮や小説の樹海を彷徨う人々を描く作品集として紹介している。書くこと、読むこと、他者の言葉に侵されることの怖さを、静かな幻想性と記憶の反復で…
- 041 2019 音に聞く おとにきく 『音に聞く』は、「文學界」2019年9月号に掲載され、同年11月に文藝春秋から単行本化された高尾長良の小説です。文藝春秋公式ページでは、ウィーンを舞台に音楽と言葉がぶつかり合う愛憎のドラマとして紹介されています。NDLサーチでは初出誌の掲載ページと単行本書誌、CiNii Researchでは関連レコ…
- 042 2019 グスコーブドリの太陽系―宮沢賢治リサイタル&リミックス― ぐすこーぶどりのたいようけい みやざわけんじりさいたるあんどりみっくす 『グスコーブドリの太陽系』は、宮沢賢治の作品群を古川日出男が朗読的・批評的に読み替えるリサイタル&リミックスです。公式ページの目次では「グスコーブドリの伝記」を中心に、詩や童話への応答が太陽系のように配置されています。物語の再話であると同時に、賢治の言葉が現代の声やリズムへ変換される過程を読む作品で…
- 043 2018 文字渦 もじうず 文字そのものを主役に、秦の始皇帝陵から発掘された漢字、未知の言語遊戯、プログラミング言語、AIによる『源氏物語』自動筆記、統合漢字の分離独立運動などをめぐる全12篇からなる作品集。文字の起源から未来までを、史実・字典・想像力・情報技術を交差させながら幻視する。読み物であると同時に、文字というメディア… 第43回 川端賞
- 044 2018 独り舞 ひとりまい 台湾出身のレズビアン女性が、過去の痛みと孤独を抱えながら日本で生き直そうとするデビュー作。著者公式プロフィールでは、李琴峰が第二言語である日本語で初めて書いた小説とされており、移動と言語のずれ、性的マイノリティとしての孤立、自己回復の時間が重なる。内面に寄り添う一人称の語りが、越境する身体と言葉の不…
- 045 2018 公園へ行かないか?火曜日に こうえんへいかないか?かようびに 2016年、アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した著者が、世界各国の作家・詩人たちと過ごした3か月をもとに描く11篇の連作小説集。英語で議論し、街を歩き、アメリカ大統領選挙の瞬間にも居合わせる経験を通じて、そこにいること/いないこと、知りたいのに届かないことを考え続ける…
- 046 2018 鏡のなかのアジア かがみのなかのあじあ チベット、台湾、クアラルンプール、京都など、アジアの土地をモチーフにした全5篇の幻想短篇集。集英社公式は、少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、台湾・九份の村を舞台にする「Jiufenの村は九つぶん」、熱帯雨林の巨樹であった過去を持つ男を描く「天蓋歩行」などを挙げている。翻…
- 047 2018 私に付け足されるもの わたしにつけたされるもの 「四十歳」「白竜」「Mr.セメントによろしく」「瀬名川蓮子に付け足されるもの」など十二篇を収める短篇集。虎に襲われたい、くっつけたい、あきらめたい、移動したいといった、くだらなくも切実な願望を起点に、日常のずれや欲望の不可思議さを軽やかに描く。長嶋有らしいユーモアと観察眼が、平凡な生活に付け足される…
- 048 2018 DJヒロヒト ディージェイヒロヒト 『DJヒロヒト』は、パラオ放送局のラジオ番組という奇想の形式を通して、昭和史・文学史・戦争の記憶を再構成する大長編です。中島敦、南方熊楠、森鴎外らの名が交差し、謎のDJの語りが歴史上の人物とフィクションの声をリミックスしていく。ラジオ、録音、放送というメディアの仕掛けを使いながら、天皇制と近代日本を…
- 049 2017 鳥獣戯画 ちょうじゅうぎが 『鳥獣戯画』は、磯﨑憲一郎が古典的な絵巻の名を借り、人間と動物、現実と表象の境目を揺らす作品として整理できます。鳥獣のイメージは、人間社会を戯画化する視点として働きます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と『群像』掲載候補に基づく暫定的な紹介です。
- 050 2017 百年泥 ひゃくねんどろ 恋人の借金を肩代わりして多重債務に陥った「私」は、返済のため南インド・チェンナイのIT企業で日本語教師として働き始める。着任三か月半で百年に一度の大洪水が街を襲い、水が引いたアダイヤール川には百年分の泥が残された。泥の中からは死んだはずの人や記憶の品々が次々と現れ、橋を渡る数十分のあいだに、語り手の… 第158回 芥川賞
- 051 2017 生成不純文学 せいせいふじゅんぶんがく 『生成不純文学』は、木下古栗が純文学という制度や言葉の純度を、題名から揺さぶる作品として整理できます。生成される文学が「不純」であるという発想は、既存の文学観への皮肉として読めます。実験的でメタ的な語りを通じて、書くことそのものを笑いと違和感にさらす作品です。
- 052 2017 岩塩の女王 がんえんのじょおう 『岩塩の女王』は、諏訪哲史が硬質なイメージと言葉遊びを重ねる小説として整理できます。岩塩という結晶と女王という権威の組み合わせは、身体、鉱物、支配の幻想を呼び込みます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌と初出確認に基づく暫定的な紹介です。
- 053 2017 塔と重力 とうとじゅうりょく 『塔と重力』は、上田岳弘が高く伸びる塔と、そこから逃れられない重力のイメージを通じて、現代社会の構造と個人の意識を描く作品集です。上昇への欲望と地上へ引き戻す力が、テクノロジーや都市的な感覚と結びつきます。抽象的な思考と物語性が交差する作品です。
- 054 2017 小説ミラーさん しょうせつミラーさん 2017年刊。2019年に同出版社から別版も確認できる。
- 055 2017 双子は驢馬に跨がって ふたごはろばにまたがって 監禁される親子、救出に向かう双子と驢馬、二つの世界をつなぐ手紙を軸にした奇想の冒険譚。河出書房新社は、独自の世界観で注目された作品として紹介しており、寓話的な設定と哲学的なユーモアが前面に出る。家族の救出劇でありながら、言葉が世界の境界を越える仕掛けが読みどころになる。 第40回 野間新人賞
- 056 2016 コンテクスト・オブ・ザ・デッド コンテクスト・オブ・ザ・デッド 『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』は、ゾンビが蔓延する世界で文学と出版業界を風刺する長編です。死者が増殖するホラー的な設定の中に、言葉が読まれる文脈や、作品が流通する仕組みへの批評が重ねられます。ジャンル小説の速度とメタフィクション的な笑いを併せ持つ作品です。
- 057 2016 月刊「小説」 げっかんしょうせつ 『月刊「小説」』は、松波太郎が小説という媒体や制度そのものを題名に取り込み、書くことと読むことの場を扱う作品として整理できます。月刊誌のような周期性や掲載の感覚が、文学の生産と消費を意識させます。物語だけでなく、小説が置かれる文芸誌の文脈も読む作品です。
- 058 2016 グローバライズ ぐろーばらいず 『グローバライズ』は、木下古栗がグローバル化する世界の言葉、身体、欲望を奇妙な文体で扱う作品として整理できます。タイトルの綴りや響きそのものが、世界を標準化する力への違和感を含んでいます。実験的な語りを通じて、表現と書く技法の問題が前面に出る作品です。
- 059 2016 小松とうさちゃん こまつとうさちゃん 『小松とうさちゃん』は、絲山秋子が人物の距離感と、うさぎのような柔らかなイメージを組み合わせて描く小説として整理できます。固有名と愛称が並ぶ題名から、親密さとずれたコミュニケーションが立ち上がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 060 2016 ジニのパズル じにのぱずる オレゴン州の高校を退学になりかけているジニは、ホームステイ先で出会ったステファニーに、5年前の東京で起きた出来事を語り始めます。日本の小学校から朝鮮学校へ移ったジニは、朝鮮語ができないまま居場所を探し、二つの言語と複数の帰属の間で自分の輪郭を問い続ける。1998年のテポドン発射翌日にチマ・チョゴリ姿… 第59回 群像新人賞
- 061 2016 二人組み ふたりぐみ 『二人組み』は、鴻池留衣のデビュー作で、第48回新潮新人賞受賞作。新潮社の『ナイス・エイジ』書籍ページでは、啓蒙欲と性欲をこじらせた男子中学生が暴走する作品として収録紹介されている。同ページ掲載の倉本さおり書評は、ほとんど返答しない女子生徒を前に主人公の饒舌が上滑りし、言葉と関係性の不気味で滑稽な姿… 第48回 新潮新人賞
- 062 2016 本物の読書家 ほんものの どくしょか 『本物の読書家』は、書物への耽溺、言葉の探求、読むことへの畏怖をめぐる中編二作を収める作品集。表題作では、老人ホームへ向かう大叔父と同行する語り手が、川端康成からの手紙の噂と車内で出会う謎めいた読書家を通じて、読書と記憶の秘密に巻き込まれる。もう一編「未熟な同感者」では文学講義、引用、師弟関係が絡み… 第40回 野間新人賞
- 063 2015 ボーイミーツガールの極端なもの ぼーいみーつがーるのきょくたんなもの 『ボーイミーツガールの極端なもの』は、恋愛物語の定型を極端化して見直す山崎ナオコーラの小説として整理できます。出会いの物語は、男女の役割や恋愛の約束事をそのまま受け入れず、距離を置いて眺め直されます。軽やかな題名の奥に、ジェンダーと関係性への批評がある作品です。
- 064 2015 動物記 どうぶつき 『動物記』は、高橋源一郎が動物という他者を通じて、人間社会や言葉のあり方を問い直す小説として整理できます。動物はかわいらしい存在ではなく、人間中心の物語をずらす視点として現れます。寓話と批評が交差する作品です。
- 065 2015 エピローグ えぴろーぐ 『エピローグ』は、円城塔が物語の終わりのあとを起点にするSF的・実験的長篇です。終わったはずの物語が、情報や言語の連鎖としてなお続く構造を持ちます。題名と逆向きに、終わりから世界を組み立てる読み味が特徴です。
- 066 2015 プロローグ ぷろろーぐ 『プロローグ』は、円城塔が物語の始まりをめぐって、言語と構造を実験する長篇です。始まりの前提が揺らぐことで、読者は物語がどう発生するのかを読むことになります。『エピローグ』と対になる題名も含め、メタフィクション的に楽しめる作品です。
- 067 2015 シャッフル航法 しゃっふるこうほう 『シャッフル航法』は、円城塔が航法や移動のイメージを、情報の組み替えと結びつける作品集として整理できます。シャッフルという語が示すように、順序や因果は固定されず、読者は断片の配置をたどることになります。SF的な発想と実験的文体が前面に出る作品です。
- 068 2015 可愛い世の中 かわいいよのなか 『可愛い世の中』は、山崎ナオコーラが「可愛い」という価値観を手がかりに、現代社会の人間関係や自己像を見直す小説として整理できます。可愛さは肯定的な魅力である一方、他者の視線や消費されるイメージにもつながります。軽やかな題名の奥で、ジェンダー、言葉、同調圧力の関係が立ち上がる作品です。
- 069 2015 暗号のポラリス あんごうのぽらりす 『暗号のポラリス』は、中山智幸が暗号と北極星のイメージを重ね、読解や方角をめぐる物語として構成した作品と整理できます。暗号は言葉の届かなさを、ポラリスは迷った先の指標を示す題名です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 070 2015 宰相A さいしょうエー 『宰相A』は、「平和主義」を掲げる独裁国家と化したもう一つの日本に迷い込んだ小説家Tを描くディストピア長編です。政治的な言葉が現実を覆い隠す世界で、作家の存在と語ることの意味が問われます。架空社会を通じて、権力、同調、文学の無力さを読む作品です。
- 071 2015 匿名芸術家 とくめいげいじゅつか 『匿名芸術家』は、青木淳悟が芸術家の名、作品、評価の仕組みをめぐって実験的に書く小説です。匿名性は作者の消去であると同時に、芸術と制度の関係を露出させる装置になります。物語を読むだけでなく、作品が「芸術」として扱われる条件を考えさせる作品です。
- 072 2015 鳥の会議 とりのかいぎ 『鳥の会議』は、山下澄人が鳥という非人間的な視点や集まりのイメージを通して、人間の言葉と身体をずらして描く作品として整理できます。会議という形式は共同性を示す一方、意味が共有されない不穏さも帯びています。断片的な語りと身体感覚から、日常の秩序が崩れる感触を読む小説です。
- 073 2015 十七八より じゅうななはちより 塾講師として働く作者の経験も背景に、十代後半の言葉やリズムをすくい取るデビュー作。若者の会話や身振りを手がかりに、青春の不安定さと都市生活の距離感を描く。のちの乗代作品につながる、観察と文体への関心が見える作品として位置づけられる。 第58回 群像新人賞
- 074 2015 女たち三百人の裏切りの書 おんなたちさんびゃくにんのうらぎりのしょ 『源氏物語』が世に広まって約百年後、紫式部が怨霊として蘇り、宇治十帖の真の姿を語り出すという構想の長篇。改竄された物語、語り手と読み手、女たちの策略が絡み合い、物語そのものが時代を動かす力として描かれる。古典の読み替えであり、物語を享受することへの壮大な問い直しでもある。 第37回 野間新人賞
- 075 2014 LIFE らいふ 『LIFE』は、松波太郎が生きることそのものを題名に掲げ、身体、生活、言葉の不安定さを描く小説です。人物の経験は分かりやすい筋に回収されず、断片的な感覚として立ち上がります。純文学の実験性と生活感が同居する作品です。 第36回 野間新人賞
- 076 2014 男一代之改革 おとこいちだいのかいかく 『男一代之改革』は、江戸の改革者・松平定信を『源氏物語』の読み手として描く青木淳悟の異色の歴史小説です。歴史上の人物を、政治の主体であると同時に読者として捉える点に特徴があります。史実と読書行為を重ね、過去の人物像を現代的にずらして読む作品です。
- 077 2014 太陽・惑星 たいよう・わくせい 『太陽・惑星』は、上田岳弘のデビュー期の作品を収める単行本で、「太陽」と「惑星」を中心に構成されています。個人の意識を、宇宙的なスケールや情報化された世界と接続する発想が見えます。既存データには新潮新人賞受賞作と芥川賞候補作を含むとあるが、今回の調査では公式確認できていません。
- 078 2014 あなたへの歌 あなたへのうた 『あなたへの歌』は、楊逸が他者へ向ける言葉と、移動する人びとの記憶を扱う小説として整理できます。歌という形式は、直接届かない思いを誰かへ送るための媒介になります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 079 2014 吾輩ハ猫ニナル わがはいはねこになる 『吾輩ハ猫ニナル』は、横山悠太の第57回群像新人文学賞当選作です。日本人の父を持つ中国人青年の自己形成を、日本語と中国語が交差する文体で描いた作品として知られています。越境的なアイデンティティを、言葉の混交そのものを読む経験に変える点が大きな読みどころです。 第57回 群像新人賞
- 080 2013 おはなしして子ちゃん おはなしして こちゃん 『おはなしして子ちゃん』は、藤野可織らしい奇妙な会話感覚と、日常のずれを前面に出した作品集です。話すこと、聞くこと、物語にされることの不穏さが、幼さを帯びた題名と対照をなします。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 081 2013 銀河鉄道の彼方に ぎんがてつどうのかなたに 『銀河鉄道の彼方に』は、宮沢賢治的な銀河鉄道のイメージを踏まえながら、言葉、信仰、死者との対話を重ねる高橋源一郎の長篇です。旅の形式は、現実から逃げる装置ではなく、現代の読者が死や救いを考えるための実験的な場になります。物語の引用性と語り直しが読みどころです。
- 082 2013 問いのない答え といのないこたえ 『問いのない答え』は、長嶋有が問いと答えの関係をずらし、日常の会話や共同性の空白を描く長篇です。正解を求める物語ではなく、答えだけが先にあるような感覚のなかで人物たちがつながります。軽やかな文体の奥に、震災後の不確かさや言葉の扱いにくさが残ります。
- 083 2013 想像ラジオ そうぞうらじお 海沿いの町で高い杉の木のてっぺんに引っかかっているDJアークが、想像の電波を使ってリスナーに語りかける小説。届くメールやリクエストを読み上げながら、どうしても聞きたいひとつの声へ向かっていく。震災後の死者と生者、声と想像力をめぐる、ラジオ番組形式の物語である。 第35回 野間新人賞
- 084 2013 感受体のおどり かんじゅたいのおどり 『感受体のおどり』は、文藝春秋BOOKSが「大河恋愛小説」であり「記憶についての物語」でもあると紹介する長篇です。『abさんご』で注目された黒田夏子の実験的な言葉の運動を、より長い時間幅と恋愛・記憶の物語へ広げる作品として位置づけられます。
- 085 2013 存在しない小説 そんざいしないしょうせつ 2013年講談社刊。NDLとBooks/JPROで、講談社単行本および講談社文庫版が確認できる。タイトル通り、作品・作者・翻訳・編纂の存在そのものを揺さぶるメタフィクション的な小説候補。
- 086 2012 バナナ剥きには最適の日々 ばなながきにはさいてきのひびと 『バナナ剥きには最適の日々』は、円城塔のSF的・実験的な短篇を収める作品集です。日常的な動作を奇妙な論理や言語の操作へ接続し、世界の見え方そのものをずらします。軽い題名の奥で、テクノロジー、言葉、物語の組み立て方が問われます。
- 087 2012 道化師の蝶 どうけしのちょう 『道化師の蝶』は、言語、記憶、翻訳、移動をめぐる円城塔の実験的な作品集です。表題作は、物語が別の言語や媒体へ渡るたびに輪郭を変えるような構造を持ちます。読みどころは、難解さそのものではなく、言葉が世界を作り替える過程を小説として体験できる点にあります。 第146回 芥川賞
- 088 2012 緑のさる みどりのさる 『緑のさる』は、山下澄人の最初の単行本で、演劇的な会話と現実から少し外れる感覚を持つ小説です。人物の言葉は説明よりもリズムを生み、家族や孤独の問題が不意に立ち上がります。寓話的な題名と簡潔な場面の連なりが、独特の不穏さを作ります。 第34回 野間新人賞
- 089 2012 さよならクリストファー・ロビン さよならクリストファー・ロビン 2012年に新潮社から刊行された、高橋源一郎自身が「最高傑作」と称した短篇集。表題作「さよならクリストファー・ロビン」は『クマのプーさん』の登場人物を著者の世界に招き入れる試みから生まれ、ほかに「峠の我が家」「星降る夜に」「お伽草紙」「ダウンタウンへ繰り出そう」「アトム」の計六篇を収める。児童文学や… 第48回 谷崎賞
- 090 2012 abさんご えーびーさんご 昭和の知的家庭に生まれた幼子が成長し、父母を看取るまでを描く作品。横書き、固有名詞を用いない語りなど、形式上の実験が大きな特徴である。家族史を扱いながら、父子の間で長く見過ごされてきた沈黙や距離を、記憶の断片としてすくい上げる。言葉の配置そのものによって、時間の手触りと家族を語る難しさを問い直す。 第148回 芥川賞
- 091 2012 ことり ことり NDLサーチで2012年11月刊の朝日新聞出版版単行本と2016年文庫版を確認できる。
- 092 2011 これはペンです これはぺんです 『これはペンです』は、書くこと、記号、道具としての言葉をめぐる円城塔の実験的な小説です。題名の単純な文は、ものを名指すことの確かさを疑わせ、物語の成立条件そのものを問いに変えます。メタフィクションとしての仕掛けと、知的なユーモアが読みどころです。
- 093 2011 領土 りょうど 『領土』は、諏訪哲史が土地、言葉、所有の感覚を問い直す作品です。領土という政治的な語は、国家だけでなく、身体や記憶、語りが占める場所の問題にも広がります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 094 2011 WANTED!! かい人21面相 うぉんてっど かいじんにじゅういちめんそう 『WANTED!! かい人21面相』は、グリコ・森永事件を想起させる「かい人21面相」を題材に、記憶、犯罪、言葉のパロディを組み合わせる赤染晶子の小説です。事件の固有名は、昭和的な大衆記憶と文学的な語りの遊びを同時に呼び込みます。芥川賞受賞後第一作として、ユーモアと不穏さが交錯する作品です。
- 095 2011 楽器 がっき 『楽器』は、記憶と語りの重なりを繊細に扱った滝口悠生のデビュー短篇です。音や楽器のイメージを通じて、過去の出来事や人の声が現在の語りに響きます。のちに芥川賞・野間文芸新人賞を受賞する作者の、時間感覚と語りの特徴を示す出発点です。 第43回 新潮新人賞
- 096 2011 地の鳥 天の魚群 ちのとりてんのぎょぐん 『地の鳥 天の魚群』は、奥泉光が2011年に幻戯書房から刊行した作品集です。著者ページでは「地の鳥 天の魚群」「乱歩の墓」「深い穴」を収録する単行本として確認できます。
- 097 2011 馬たちよ、それでも光は無垢で うまたちよ、それでもひかりはむくで 『馬たちよ、それでも光は無垢で』は、東日本大震災後の福島を起点に、古川日出男自身の小説世界と現実の被災地が交差する作品です。新潮社公式紹介では、『聖家族』の人物・狗塚牛一郎の声を小説家が福島で聞くという導入が示されています。被災地、郷土、言葉、想像力をめぐる応答として書かれ、フィクションが現実へ届き…
- 098 2011 雪の練習生 ゆきのれんしゅうせい 『雪の練習生』は、サーカスや動物園に関わる三世代の白熊をめぐり、人間と動物、母語と外国語、芸と労働の境界を横断する長篇です。語り手を人間に固定しないことで、越境や翻訳の問題が身体感覚として立ち上がる。多和田葉子らしい寓話性と、歴史の暴力を軽やかにずらす語りが読みどころです。 第64回 野間文芸賞
- 099 2010 後藤さんのこと ごとうさんのこと 『後藤さんのこと』は、円城塔の言語実験と物語のずれが前面に出る作品です。「後藤さん」という固有名は、人物であると同時に、語りが追いかける対象そのものの不確かさを示します。SF的想像力とメタフィクションの感覚で、言葉が対象を作り出す過程を読む作品です。
- 100 2010 見知らぬ人へ、おめでとう みしらぬひとへおめでとう 『見知らぬ人へ、おめでとう』は、見知らぬ相手に向けた祝福という奇妙な距離感から、他者との関係を描く木村紅美の作品です。直接の親密さではなく、社会のなかですれ違う人びとへの想像が物語を動かします。都市的な孤独と、言葉によって関係を作ることの危うさが読みどころです。
- 101 2010 乙女の密告 おとめのみっこく 『乙女の密告』は、『アンネの日記』を読む大学の授業を舞台に、朗読、暗唱、密告の記憶が絡み合う小説です。語りは教室内の人間関係と戦争の記憶を重ね、誰が誰を裏切るのかという問いを現在の言葉の問題へ引き寄せます。軽やかな会話の奥に、同調圧力と自己認識の危うさが残る作品です。 第143回 芥川賞
- 102 2010 陽だまり幻想曲 ひだまりげんそうきょく 『陽だまり幻想曲』は、楊逸が日本語で描く移動者の生活感覚を、光のある場所への憧れと結びつける作品です。家族や言葉のずれは、異国で暮らす人物の孤独と希望を同時に映します。日常の会話に潜む違和感が、越境文学としての読みどころになります。
- 103 2010 ののの ののの 『ののの』は、言語の反復、ずれ、遊びを極限まで押し進めた実験的な作品です。意味が固定される前の音や文字の運動を前面に出し、小説の語りそのものを問い直します。受賞時は単行本化されず、後に改稿版として刊行された経緯も含めて、制度外的な実験性が際立つ作品です。 第42回 新潮新人賞
- 104 2009 ディヴィジョン でぃゔぃじょん 大阪在住の奥田真理子が、別名義での最終候補(第106回)、「カルテル」での最終候補(第108回)を経て、三度目の挑戦でつかんだ受賞作。応募総数2008編の頂点に立ち、『文學界』2009年12月号に掲載された。同じ回では合原壮一朗「狭い庭」が選考委員名を冠した「花村萬月・松浦理英子特別賞」に選ばれてお… 第109回 文學界新人賞
- 105 2009 烏有此譚 うゆしたん 『烏有此譚』は、あるようでない物語をめぐり、注釈、引用、脱線が本文そのものを膨らませていく円城塔の実験的長篇です。物語を読むことと、物語が成立しないことが同時に進むため、読者は筋よりも言葉の運動を追うことになります。メタフィクションとしての遊びと、知的な不穏さが強い作品です。 第32回 野間新人賞
- 106 2009 JOHNNY TOO BAD 内田裕也 じょにーとぅーばっど うちだゆうや 『JOHNNY TOO BAD 内田裕也』は、小説「ゲットーミュージック」と内田裕也のロックン・トークを合わせた書籍として確認できる作品です。モブ・ノリオの小説的な語りと、ロック文化への接近が一冊の中で並置されています。純文学とサブカルチャー、発話とパフォーマンスの境界を見る資料としても読めます。
- 107 2009 ここに消えない会話がある ここにきえないかいわがある 『ここに消えない会話がある』は、会話の断片が人間関係の記憶として残ることを描く山崎ナオコーラの作品です。話したことは流れて消えるようでいて、相手との距離や自分の輪郭を決めてしまいます。言葉の軽さと残酷さを、日常の関係から考えさせる小説です。
- 108 2009 このあいだ東京でね このあいだとうきょうでね 『このあいだ東京でね』は、東京という場所で交わされる会話や記憶を、青木淳悟の観察的な文体でたどる作品です。題名のくだけた語りかけは、都市の出来事が誰かへの報告として残る感覚を示します。大きな筋よりも、場所と言葉のズレを読む小説です。
- 109 2009 男と点と線 おとこととてんとせん 『男と点と線』は、山崎ナオコーラが男という属性や、人と人を結ぶ線の引き方を考える作品です。人物の関係は直線的に結ばれるのではなく、点のように散らばりながら、言葉によって仮につながります。ジェンダーと関係性を、軽い語り口で問い直す一冊です。
- 110 2009 ロンバルディア遠景 ろんばるでぃあえんけい 『ロンバルディア遠景』は、遠景という距離の感覚を通して、記憶、場所、言葉の変形を描く諏訪哲史の作品です。現実の土地はそのまま写されるのではなく、語りの中でずれ、遠ざかり、別の像になります。『りすん』同様、言葉そのものが主題化される実験的な小説として読めます。
- 111 2009 すき・やき すきやき 『すき・やき』は、食卓の親密さを通じて、国境を越えて暮らす人びとの関係や違和感を描く楊逸の作品です。題名は日本の料理名を思わせながら、好意や関係の「好き」をも響かせます。食、家族、言葉のずれが、移民文学としての読みどころにつながります。
- 112 2009 今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇 こんやはひとりぼっちかい? にほんぶんがくせいすいし せんごぶんがくへん 『日本文学盛衰史』の続編として、戦後文学そのものを小説の素材にする長編。大岡昇平や小林秀雄らを思わせる文学史上の存在が、ロック、パンク、ラップ、ブログ、Twitter、YouTubeまで巻き込みながら、読まれなくなった戦後文学を現在の言葉へ揉みほぐしていく。文学史講義、パロディ、メタフィクションが交…
- 113 2008 声を聴かせて こえをきかせて 『声を聴かせて』は、声を聞くこと、聞かれないことを通して、他者との距離を描く朝比奈あすかの作品です。親しい関係であっても届かない言葉があり、そのもどかしさが人物の孤独を形づくります。題名通り、声と言葉が関係をつなぐ細い線として働きます。
- 114 2008 ぼくは落ち着きがない ぼくはおちつきがない 『ぼくは落ち着きがない』は、学校や図書室の空気を背景に、落ち着かなさを抱える若い人物たちの会話と距離を描く作品です。長嶋有らしい少しずれたユーモアが、青春の居場所のなさを軽く見せます。図書館的な静けさと、内側のざわつきの対比が読みどころです。
- 115 2008 Boy's Surface ぼーいずさーふぇす 『Boy's Surface』は、数学的・理論的な発想を小説の表面に引き出す、円城塔の実験的なSF作品です。物語は感情の自然な流れよりも、定義、証明、記号のずれによって進みます。読み手は、言葉と論理が人間の身体や関係をどこまで記述できるかを試されます。
- 116 2008 廃車 はいしゃ 車検切れが迫る壊れかけの車を、主人公は中国人留学生に無償で譲り渡す。ところが期限を過ぎても相手は約束した廃車手続きをせず、それどころか、わけのわからないまま主人公のほうが怨まれていく。日常の小さな親切が言葉も論理も通じない泥沼へ転がり落ちる過程を、乾いたユーモアで描いた不条理劇。受賞作は『文學界』2… 第107回 文學界新人賞
- 117 2008 ほんたにちゃん ほんたにちゃん 『ほんたにちゃん』は、本谷有希子自身を思わせるキャラクターや語りを通して、作者像と作品の境界を遊ぶ一冊として読めます。自己紹介のようでいて、虚構化された「ほんたにちゃん」が前面に出るため、メタフィクション的な楽しさがあります。小説、演劇、エッセイ的な感覚が混じる軽やかな作品です。
- 118 2008 けちゃっぷ けちゃっぷ 言いたいことを相手に直接言わず、何もかもブログにアップしてしまう──そんなヴァーチャル化した現代のコミュニケーションを、ネットの文体と口語をなだれ込ませた語りで写し取った作品。書き込みと現実のあいだでずれていく自意識を通して、ゼロ年代後半のウェブ社会に生きる若者の孤独と滑稽さを軽やかにすくい上げる… 第45回 文藝賞
- 119 2008 イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集 いぎりすかいがん いーはとーう たんぺんしゅう 『イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集』は、宮沢賢治のイーハトーヴを思わせる場所の記憶や文学的想像力を、短篇のかたちでたどる作品集です。実在の土地と架空の地名が重なり、読むこと、訪ねること、思い出すことがひとつにつながります。静かな幻想性と地方の手触りが読みどころです。
- 120 2008 ありったけの話 ありったけのはなし 『ありったけの話』は、話すこと、語り尽くそうとすることを通して、人と人の関係を描く作品です。題名の通り、言葉を差し出すことが親密さの表現である一方、語っても残る距離も浮かび上がります。中山智幸の作品として、会話と記憶の密度を読む一冊です。
- 121 2008 おひるのたびにさようなら おひるのたびにさようなら 会社の昼休み、外階段で繰り広げられる主人公・真司と先輩女子社員たちの秘密の遊び。真司の役目は、近くの病院で音声を消した昼ドラを眺め、想像で補った物語を先輩に報告することだ。見ることと聞くことのずれ、語り直された物語と現実の重なりを入れ子状に組み上げ、ささやかな昼の儀式の終わりをせつなく描く。メディア… 第45回 文藝賞
- 122 2008 ラジ&ピース らじあんどぴーす 『ラジ&ピース』は、ラジオや言葉の届き方を思わせる題名のもと、人と人がどのように声を受け渡すかを描く作品です。絲山秋子らしい乾いた会話と距離感が、親密さと孤独を同時に浮かび上がらせます。平和やつながりを軽く言い切れないところに、作品の手触りがあります。
- 123 2008 論理と感性は相反しない ろんりとかんせいはあいはんしない 『論理と感性は相反しない』は、山崎ナオコーラの思考する文体が前面に出る作品集です。題名の通り、感情をただ情緒として扱うのではなく、考えること、名づけること、他人と距離を取ることの問題として描きます。軽い会話の奥に、ジェンダーや関係性への問いが残る作品です。
- 124 2008 りすん りすん 『りすん』は、『アサッテの人』以後の諏訪哲史が、聞くこと、話すこと、言葉のずれをさらに押し広げる実験的な作品です。タイトルの響きそのものが、意味に届く前の音や聞き間違いを思わせます。言語への執着と、他者へ届かない感覚が重なった小説として読めます。
- 125 2008 仮の水 かりのみず 2008年8月講談社刊。NDLでNDC 913.6の図書として確認し、Books/JPROと講談社公式で書誌を確認できる。
- 126 2007 アサッテの人 あさってのひと 吃音を抱えていた叔父は、いつしか「ポンパ!」などの意味を持たない言葉=アサッテの言葉を突発的に口にするようになり、やがて失踪した。「私」はその叔父をめぐる小説を書こうとするが、語りは草稿、叔父の日記、回想が混在するまま進んでいく。言葉の規範から「アサッテ」の方向へ逸脱したいという渇望を、小説の形式そ… 第50回 群像新人賞
- 127 2007 Self-Reference ENGINE せるふれふぁれんすえんじん 『Self-Reference ENGINE』は、自己言及、時間、宇宙的スケールの思考実験を断片的なエピソードとして積み上げるSF小説です。物語は線形に進むよりも、定義や論理が暴走するように展開します。理論的な遊戯と小説的な冗談が同時に走る、円城塔初期の代表的な実験作として読めます。
- 128 2007 舞い落ちる村 まいおちるむら 生まれ育った女系の村では、時間の進み方や年齢の重ね方が定まらず、ものの数も曖昧で、人々は個々の名前すらめったに持たない。「わたし」はその「言葉を信じない」村のあり方に違和感を抱き、村と大学のある街とを行き来するうち、言葉を信じ言葉で武装した人物に強く惹かれていく。土俗的な幻想と言語への意識を重ね合わ… 第104回 文學界新人賞
- 129 2007 オブ・ザ・ベースボール おぶ・ざ・べーすぼーる 年に一度くらいの割合で空から人が降ってくる町、ファウルズ。「私」はユニフォームとバットを支給されたレスキュー・チームの一員として、落ちてくる人をフルスイングで打ち返すべく日々待機している。およそ役に立たない職務をめぐる思弁が、乾いた論理の積み重ねでどこまでも転がっていく。不条理な設定を理詰めで駆動す… 第104回 文學界新人賞
- 130 2007 わたくし率 イン 歯ー、または世界 わたくしりつ イン はー、またはせかい 『わたくし率 イン 歯ー、または世界』は、「わたし」は奥歯にあると考える女性の独白を、大阪弁のリズムで疾走させるデビュー作です。身体の一部に自己を置く発想が、アイデンティティと言葉の関係を奇妙に拡張します。文体の勢いそのものが主題になっている、川上未映子初期の重要作として読めます。
- 131 2005 ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ 宮沢賢治の作品やイメージを、高橋源一郎流に再配置するようなタイトルをもつ作品集。古典的な作家をそのまま讃えるのではなく、引用、変奏、遊びを通じて、文学を現在の言葉で鳴らし直す。メタフィクションとリミックス感覚が結びついた、高橋作品らしい一冊である。 第16回 宮沢賢治賞
- 132 2005 性交と恋愛にまつわるいくつかの物語 せいこうとれんあいにまつわるいくつかのものがたり 『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』は、性と恋愛をめぐる語りを、物語そのものへの問いと重ねて扱う作品です。高橋源一郎の小説らしく、露骨な題材を単純な告白にせず、言葉が欲望をどう作り替えるかを意識させます。恋愛小説の形式をずらしながら、身体、関係、語りの自由度を探る読みどころがあります。
- 133 2004 千々にくだけて ちぢにくだけて 『千々にくだけて』は、リービ英雄が9・11体験の核心から、現代世界の変容と危機を描いた小説です。講談社公式ページでは「ノンフィクションを超えたフィクション」と紹介され、2001年夏の終わりに日本から母国アメリカへ旅立った主人公が、同時多発テロによる国境閉鎖で経由地カナダに足止めされる物語として確認で…
- 134 2003 四十日と四十夜のメルヘン よんじゅうにちとよんじゅうやのめるへん チラシ配りをして暮らす「私」が書きつける日記。しかしその日付は素直に進まず、記述は反復と書き換えを繰り返しながら円環構造を描き、日常の風景がいつのまにか変容していく。「書くこと」自体を小説の駆動装置にした構成は、選考会で保坂和志が「これはピンチョンなんだ」と断言して強く推したことで知られる。単行本化… 第35回 新潮新人賞
- 135 2002 官能小説家 かんのうしょうせつか 永井荷風と森鷗外を軸に、「官能」と文学の歴史をめぐって展開する高橋源一郎の長編。近代文学の作家を素材にしながら、性、表現、文学史をメタフィクションとして組み替える。日本文学を読むこと自体を小説の快楽へ変える作品。
- 136 2002 君が代は千代に八千代に きみがよはちよにやちよに 「君が代」という強い公共的記号を題名に据え、国家、記憶、言葉の働きを小説の場で問い直す高橋源一郎の作品。政治的な主題を直接の主張に閉じず、語りの実験や文学的なずらしによって扱う。近代日本の制度と言語をめぐるメタフィクションとして読める。
- 137 2002 ヘンリーたけしレウィツキーの夏の紀行 へんりーたけしれうぃつきーのなつのきこう 2002年10月講談社刊。NDLでNDC 913.6の図書として確認し、Books/JPROと講談社公式でページ数・発売日等を確認できる。
- 138 2001 ゴヂラ ゴヂラ 高橋源一郎が2001年に刊行した作品で、怪獣映画を思わせる表記を小説の入口に置く。戦後日本の記憶、メディアの記号、文学の語りを重ね、現実とフィクションの境界を揺さぶるタイプの作品として読める。内容細部は追加確認が必要だが、実験的な社会批評性を持つ作品として分類する。
- 139 2001 夜明けの音が聞こえる よあけのおとがきこえる 自ら声を封じ込めているうちに本当に声が出なくなってしまった「僕」が、治療者の勧めでホテルで働きはじめる。しかし職場に溶け込めず、ふとした誤解から従業員たちを敵に回し、執拗ないじめにさらされていく。語ることのできない主人公の内側に渦巻く苛立ちと怒りを、鮮烈な言葉の力で外へ撃ち出すような文章が特徴で、声… 第25回 すばる文学賞
- 140 1999 零歳の詩人 れいさいのしじん 短歌誌「玲瓏」同人でもある楠見朋彦の小説デビュー作です。詩歌人としての言語感覚を背景に、戦争や言葉をめぐる主題を小説の形式へ移した作品として位置づけられます。公開資料で梗概を十分に確認できないため、現時点では受賞・掲載情報と作者の詩歌的な出自を中心に扱います。 第23回 すばる文学賞
- 141 1998 腦病院へまゐります。 のうびょういんへまゐります。 『腦病院へまゐります。』は、旧仮名遣いを用いた文体で、精神の病と言葉の働きを絡ませて描く作品です。表記そのものが読者の速度を変え、病院や身体をめぐる経験を、通常のリアリズムからずらして見せます。言語の異物感を作品の主題に接続する、実験的な語りが読みどころです。 第86回 文學界新人賞
- 142 1998 おぱらばん おぱらばん 『おぱらばん』は、フランス郊外に暮らす「私」の視線を通して、忘れられた文学、移民の言葉、郊外の人々をゆるやかに結びつける15篇の小説集です。新潮社公式の文庫版紹介では、表題作が中国移民の言い回しを通じて卓球名人の肖像を描く作品として案内されている。エッセイと小説の境界を横断し、言葉のずれや記憶の手触… 第12回 三島賞
- 143 1998 国民のうた こくみんのうた 1998年講談社刊。NDLでNDC 913.6の図書として確認し、Books/JPROと講談社公式で書誌を確認できる。
- 144 1997 日本文学盛衰史 にほんぶんがくせいすいし 1997年から2001年まで『群像』に連載され、2001年に講談社から刊行された高橋源一郎の長編。「文学史が小説になった」と評されるように、統一された筋や明確な主人公を持たず、漱石・鴎外・二葉亭四迷・北村透谷・島崎藤村・樋口一葉ら近代文学の創始者たちが「何をどう書くか」という問いに苦しむ姿を断章的に… 第13回 伊藤整賞
- 145 1997 街の座標 まちのざひょう 『街の座標』は、下北沢を舞台に、文学系女子大生が「S区S街」を描いた女性作家を追うデビュー作です。街を読むこと、他者の書いた街をたどること、自分の言葉で場所を捉え直すことが重なり、都市と文学の関係が主題化されます。書く人と読む人の距離を物語内で問い直す、メタフィクション的な青春小説として読めます。 第21回 すばる文学賞
- 146 1997 あとは野となれ 『あとは野となれ』は、室井光広が芥川賞受賞後に講談社から刊行した長篇小説です。講談社公式ページでは、古今東西の「野」を遊行する「野ざらし思考小説」と紹介されています。偶然の一致を書き留める手帳、読書中の二冊の本、言語遊戯の横断という仕掛けを通じて、言葉と思考が連鎖していく室井らしい実験性の強い作品で…
- 147 1996 「吾輩は猫である」殺人事件 わがはいはねこであるさつじんじけん 『「吾輩は猫である」殺人事件』は、奥泉光が1996年に新潮社から刊行した長編小説です。漱石作品の文体模倣とミステリー構造を組み合わせた代表的なパロディ/メタミステリとして整理します。
- 148 1996 折口信夫論 おりくちしのぶろん 『折口信夫論』は、松浦寿輝が折口信夫の言葉と作品を読み込み、その思想と文学的想像力に迫る評論です。伝記的整理にとどまらず、『死者の書』などを含む折口のテクストそのものから、詩・民俗学・物語の交点を探ります。批評空間叢書として刊行され、のちに増補版がちくま学芸文庫に入ったことからも、文芸批評としての継… 第9回 三島賞
- 149 1996 天安門 てんあんもん 1996年講談社刊。NDLで単行本および2011年講談社文芸文庫版をNDC 913.6として確認できる。講談社公式とBooks/JPROで書誌も確認可能。
- 150 1995 私小説 from left to right ししょうせつ ふろむ れふと とぅ らいと 『私小説 from left to right』は、アメリカに暮らす日本語話者の姉妹をめぐり、日本語と英語、縦書きと横書きの境界を作品形式そのものに組み込んだ私小説です。移動と翻訳の経験を、単なる海外生活の物語ではなく、どの言語で自分を語るのかという問いへ押し広げます。私小説の枠を借りながら、その制… 第17回 野間新人賞
- 151 1994 おどるでく おどるでく 『おどるでく』は、室井光広が第111回芥川賞を受賞した作品です。既存データでは、ロシア文字で表音化された日本語の日記を主人公が翻訳していく、言語と記憶をめぐる実験的な小説として整理されています。日本文学振興会公式で受賞は確認できますが、内容説明は二次情報由来で、出版社公式の商品紹介は未確認です。 第111回 芥川賞
- 152 1993 日本の家郷 にほんのかきょう 『日本の家郷』は、福田和也が第6回三島由紀夫賞を受賞した評論集です。既存データでは、近代日本の精神史・文化史を保守主義的視座から読み解く論考として整理されています。新潮社公式で三島賞受賞は確認できますが、内容紹介は主に二次情報由来です。 第6回 三島賞
- 153 1993 デッドシティ・レイディオ 『デッドシティ・レイディオ』は、清水アリカの小説単行本です。NDLサーチでは1993年9月に集英社から刊行された197ページの図書、NDC8 913.6として確認できます。出版書誌データベースでも、ISBN 9784087740271、4-6判、200ページ、1993年発行の書誌が確認できます。
- 154 1992 犬婿入り いぬむこいり 『犬婿入り』は、塾講師の女性が犬に変身した男性と同棲する物語を軸に、言語、身体、変身の主題を展開する作品です。民話的な想像力を現代の都市生活へ持ち込み、人間と動物、女と男、日本語と外部の境界を揺らします。多和田葉子の越境的で実験的な文体がよく現れた芥川賞受賞作です。 第108回 芥川賞
- 155 1992 星条旗の聞こえない部屋 せいじょうきの きこえない へや 『星条旗の聞こえない部屋』は、1960年代後半の横浜で、アメリカ外交官の息子ベン・アイザックが領事館を飛び出し、東京をさまよう物語です。日英二言語の狭間で、自分がどこに属するのかを探る越境文学の先駆的作品です。日本語で書くことそのものが、主人公のアイデンティティの問いと重なっています。 第14回 野間新人賞
- 156 1991 葦と百合 あしとゆり 『葦と百合』は、奥泉光が1991年に集英社から刊行した長編小説です。著者ページの著書一覧とNDLサーチのタイトル・著者検索で刊行情報を確認できます。
- 157 1991 かかとを失くして かかとをなくして 『かかとを失くして』は、ドイツ語圏に渡った日本人女性の言語と身体の変容を、夢幻的な語りで描く多和田葉子のデビュー作です。足元の感覚を失うというイメージが、母語の外へ出る不安や、身体の境界の揺らぎにつながっていきます。越境文学・エクソフォニーの出発点として重要な作品です。 第34回 群像新人賞
- 158 1991 ワールズ・エンド・ガーデン わーるず・えんど・がーでん 1991年に新潮社から刊行され、2013年に河出書房新社の「いとうせいこうレトロスペクティブ」として復刊された小説。Books/JPROの復刊版内容紹介は、引用・リピート・連想、ゲーム、コトバの混沌、トーキョーの焦燥と昂揚を強調している。
- 159 1990 N・P エヌ・ピー 『N・P』は、未完の遺作小説をめぐって、翻訳者の死の影に引き寄せられる若者たちを描く長篇です。小説内のテキストと現実の人間関係が絡み合い、恋愛、近親性、喪失の感覚が静かに濃くなっていきます。吉本ばなならしい平明な一人称の語りで、危うい関係の重さを軽やかな文体に沈めています。
- 160 1990 滝 たき 『滝』は、奥泉光が1990年に集英社から刊行した初期作品集です。著者ページでは、のちに『その言葉を』へ改題され、同名作品を収録する単行本として確認できます。
- 161 1990 コンビニエンス ロゴス こんびにえんす ろごす 『コンビニエンス ロゴス』は、コンビニエンスストアを舞台に、商品・看板・会話が記号として氾濫する現代社会を描く作品です。労働の現場を扱いながら、消費社会の言葉が人間関係をどのように組み替えるかをポップに見せます。群像新人文学賞受賞作らしく、都市の日常を言語実験へ接続する点が読みどころです。 第33回 群像新人賞
- 162 1990 革命のためのサウンドトラック かくめいのためのさうんどとらっく 『革命のためのサウンドトラック』は、言葉が相手に届かず、ノイズのように増殖していく感覚を描く清水アリカのデビュー作です。筋を一直線に追わせるよりも、音、言葉、退廃的な気分を重ねて、都市の閉塞感を前景化します。言語への不信と終末的なムードが交差する、実験色の強い新人賞受賞作です。 第14回 すばる文学賞
- 163 1989 ペンギン村に陽は落ちて ペンギンむらにひはおちて 高橋源一郎が1989年に刊行した、ポップカルチャーの記号と小説の語りを交差させる作品。題名からも分かるように、既存の文化記号をずらして使い、文学とメディアの境目を揺さぶる。筋よりも、引用、冗談、語りの脱線が作る運動を読む作品。
- 164 1989 表層生活 ひょうそうせいかつ 『表層生活』は、都市に生きる現代人の浮遊した意識と、薄く接続された人間関係を描く中篇です。言葉や情報、自己意識が「表層」として流れていく感覚を通じて、実存の手応えのなさを問い直します。都市的な乾きと、テクノロジー時代の言語感覚が前面に出た作品です。 第102回 芥川賞
- 165 1988 由煕 ゆひ 『由煕』は、韓国に留学した在日韓国人女性・由煕が、理想化していた「祖国」と現実の韓国語・韓国社会のずれに苦しむ姿を描く中篇です。日本語と韓国語のあいだで裂かれる自己認識が、言葉の問題としても身体感覚としても迫ってきます。越境やアイデンティティを、外側から説明するのでなく当事者の息苦しさとして読ませる… 第100回 芥川賞
- 166 1986 復活祭のためのレクイエム ふっかつさいのためのれくいえむ 『復活祭のためのレクイエム』は、コピーライターを主人公に、言葉と笑いが交錯する軽快な実験小説です。復活祭という宗教的な題を掲げつつ、広告的な言語感覚や都市的な軽さを作品の推進力にしています。単行本刊行も確認でき、1980年代半ばの群像新人文学賞系の言語実験として読めます。 第29回 群像新人賞
- 167 1985 ジョン・レノン対火星人 ジョン・レノンたいかせいじん 高橋源一郎の初期作品で、音楽、SF的な想像力、文学の制度を横断するような題名の通り、ジャンルの境界を遊びながら崩していく。物語の筋だけでなく、固有名やサブカルチャーの断片が語りを動かす点に読みどころがある。実験的な笑いと不穏さが同居する、ポストモダン文学の入口に置ける作品。
- 168 1985 優雅で感傷的な日本野球 ゆうがでかんしょうてきなにほんやきゅう 「ぼくは野球を知らなかった」――野球が忘れ去られた世界で、語り手は「日本野球」の神髄を教わろうとする。断片的な7つの章で構成され、実在の選手や球団の記憶、「1985年、阪神タイガースは本当に優勝したのだろうか」という問いをめぐって、パロディとパスティーシュ(既存作品の文体模倣)を駆使した物語が時空を… 第1回 三島賞
- 169 1985 ジパング じぱんぐ 『ジパング』は、吉目木晴彦のデビュー作にあたる第28回群像新人文学賞優秀作です。今回確認できた公開情報は講談社公式の受賞一覧に限られるため、作品内容の説明は新人賞で確認できる書誌・受賞事実に限定します。
- 170 1984 虹の彼方に にじのかなたに 高橋源一郎の初期長編で、ポップカルチャーの速度と文学的な実験が混ざり合う作品。既成の小説らしさをずらしながら、語りの軽さ、引用、遊びの感覚で現代の気分を立ち上げる。筋を追うだけでなく、言葉やジャンルがほどけていく過程を読む作品として扱いたい。
- 171 1954 アメリカン・スクール あめりかん・すくーる 『アメリカン・スクール』は、占領下日本の英語教師たちがアメリカ人学校を見学する一日を描く短篇です。英語を教えながら英語に怯える教師たちの滑稽さを通して、敗戦後の対米感情と自意識のゆがみが浮かびます。小島信夫らしいユーモアと違和感のある会話が、戦後日本の心理的占領状態を照らします。 第32回 芥川賞
- 172 1951 壁 かべ 『壁』は、ある朝突然に名前を失った男S・カルマ氏の不条理な遍歴を描く安部公房の前衛的中篇です。現実の制度や所有の感覚がずれていく過程を、寓話的で実験的な文体によって追い詰めます。戦後日本文学に不条理文学・シュールレアリスムの感覚を持ち込んだ、安部公房の出発点となる作品です。 第25回 芥川賞