Themes
暴力
主題「暴力」に分類された 150 作品。
- 001 2026 吸血鬼 きゅうけつき 『吸血鬼』は、女性が中学生になると若さや美しさで十二等級に順位付けされ、十五歳での結婚を強いられる社会を描くディストピア長篇です。中学生の有紗は友人たちと学校生活を送りながら、校外学習で出会ったアナウンサーの美優と開業医の白井を通じて、知らなかった富裕な世界へ触れていく。容姿、結婚、階級、迫害を制度…
- 002 2025 ジャスティス・マン じゃすてぃす・まん 『ジャスティス・マン』は、仙台の老舗ホテルに勤続30年の初老ホテルマンが、特撮ヒーローに重ねた「正義」を暴走させていく長篇です。家庭も職もある中年男性の独りよがりな正義が、職場や周囲との軋轢を深めていく。正義という言葉の快さと危うさを、地方都市の労働現場と生活者の視点から描く作品です。
- 003 2025 彼の左手は蛇 かれのひだりてはへび 『彼の左手は蛇』は、仕事を辞め、女性と別れて、蛇信仰の残る土地に来た男が「この手記」を書くところから展開する小説です。白蛇を祀る神社、毒蛇狩り、議員の死、刑事、謎めいた人物たちが絡み、蛇のイメージが信仰・恐怖・罪悪感・暴力の記憶を結びつけていく。手記形式の語りは、書くことそのものの危うさを含みながら…
- 004 2025 熊はどこにいるの くまはどこにいるの 『熊はどこにいるの』は、震災から7年後の地で、ショッピングモールで保護された身元不明の幼子と、暴力から逃れて山奥の家に暮らす女たちをめぐる小説です。リツ、アイ、サキ、ヒロらの視点が交錯し、保護と加害、避難場所と閉ざされた共同体の危うさを同時に浮かび上がらせる。熊という存在は、現実の脅威であると同時に… 第61回 谷崎賞
- 005 2025 世界99 せかいきゅうじゅうきゅう 『世界99』は、性格のない人間・如月空子が、場ごとにふさわしい人格を作りあげて生き延びる世界を描く上下巻の長編です。空子のいる社会には、当初は愛らしいペットのような存在だったピョコルンがおり、技術の進展によってその位置づけが変わっていく。かわいさ、適応、暴力、正常と異常の境界が反転していくディストピ…
- 006 2025 YABUNONAKA ヤブノナカ 『YABUNONAKA』は、文芸誌元編集長への性加害告発をきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の人物たちの日常が絡み合っていく長篇です。MeToo運動、マッチングアプリ、SNSといった現代の環境を背景に、性、権力、暴力、愛、そして「わかりあえないこと」の先を群像劇として描く。文芸業界そのものを…
- 007 2025 カンザキさん かんざきさん 『カンザキさん』は、家電配送会社に就職した語り手が、暴力的なベテラン配送員カンザキさんと組まされるところから始まる。離職者の絶えない職場で、罵倒、暴力、不条理な命令に耐える日々が、自伝的小説の強度で描かれる。労働現場の暴力を、悪魔なのか別の何かなのか判然としない人物像とともに押し出す。 第47回 野間新人賞
- 008 2024 めでたし、めでたし めでたしめでたし 桃太郎の「その後」を出発点に、鬼ヶ島から財宝を持ち帰った桃次郎をめぐる物語として昔話を組み替える長編。桃次郎は財宝の元の持ち主を集めるものの、犬・猿・雉たちが困惑するほど一向に返そうとしない。勧善懲悪の結末の先に、所有、英雄性、暴力の後始末を置き直し、「めでたし」で閉じられない物語の余白をユーモラス…
- 009 2024 しをかくうま しをかくうま 人が初めて馬に乗った太古の瞬間から、馬と人類の関係を壮大な歴史としてたどり直す長篇。現代で競馬実況を生業とする「わたし」は、愛する牝馬しをかくうま号へ近づくため、人類と馬のあいだに起きたすべてを知ろうとする。疾走する語りは、競馬小説や歴史小説の枠を越え、優生思想、純血主義、アニマルライツ、人間中心主… 第45回 野間新人賞
- 010 2024 常盤団地の魔人 ときわだんちのまじん 常盤団地の三号棟に住む小学三年生の今野蓮は、喘息を抱え、学校ではまだ友人関係をつくりきれずにいる。団地に越してきた同い年のシンイチ、乱暴だが求心力をもつ年上の少年たち、老朽化した団地の池や空き地をめぐる出来事のなかで、蓮は子どもだけの社会にある憧れ、序列、暴力を少しずつ知っていく。冒険譚の軽やかさを…
- 011 2023 黄色い家 きいろいいえ 2020年春、惣菜店に勤める花が、かつて疑似家族のように暮らした黄美子の事件記事を見つけるところから、二十年前の「黄色い家」の記憶が開かれる。少女たちはまっとうに稼ぐ道を失い、生活を守るためにより危うい金稼ぎへ踏み込んでいく。貧困、金、犯罪、記憶、家族の擬態を重ね、善悪で割り切れない生存の痛みを長い…
- 012 2023 無敵の犬の夜 むてきの いぬの よる 『無敵の犬の夜』は、北九州の片田舎で学校へ行かず、不良グループと過ごす中学生・界を描く長編。幼少期に右手の指を失った界は、地元で出会った男・橘に心酔し、彼のために単身東京へ向かう。方言と虚勢を帯びた熱のある語りが、思春期の暴走、尊敬されたい欲望、世界とつながれない孤独を押し出す。 第60回 文藝賞
- 013 2022 CF しーえふ 罪の責任を「無化」する超巨大企業Central Factoryをめぐり、加害、被害、償いの意味が揺らいでいく群像劇。キャバクラ嬢、主婦、中学生、ホームレス、CFで働く中年、広報室長、そしてCFへのテロを企てる男など、社会の周縁と制度の内部にいる人々が交錯する。荒唐無稽な設定を通して、責任を引き受ける…
- 014 2022 青木きららのちょっとした冒険 あおききらら のちょっとしたぼうけん 「きらら」という名を手がかりに、人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、若いアイドルの死を願う会社員など、八つの人生を照らす連作的な作品集。無責任な暴力、すれ違う意識、他者への思い込みが、日常の少しずれた場面から立ち上がる。誰かであり誰でもない存在として生きる人々を…
- 015 2022 嫌いなら呼ぶなよ きらいならよぶなよ 『嫌いなら呼ぶなよ』は、表題作を含む四篇で、有毒に暴走するコミュニケーションと、その遮断を描く短篇集である。妻の親友宅に招かれた「僕」が突然ミニ裁判にかけられる表題作をはじめ、美容整形、YouTuberへの粘着的なコメント、深夜まで続く助言など、現代的なつながりの圧力がブラックユーモアを帯びて展開す…
- 016 2022 くるまの娘 くるまのむすめ 17歳のかんこは、家族とともに車中泊をしながら祖母の葬儀へ向かう。狭い車内と旅先の景色は、父母と子のあいだに積み重なった暴力、依存、愛着を逃げ場なく浮かび上がらせる。少女の身体感覚に寄り添う濃密な語りが、家族を単純な加害と被害に分けられないものとして描き、読者に「救うなら誰を救うのか」という問いを突…
- 017 2022 教育 きょういく 成績向上のために性的な規律が制度化された学校を舞台に、生徒たちは管理された欲望と競争のなかで「正しさ」に従っていく。語り手は異様なルールを淡々と受け入れ、読者は倫理の壊れた環境が日常として語られる不気味さに引きずり込まれる。学園小説の形を借りながら、教育、身体、成績主義、同調の圧力が人間の判断をどう…
- 018 2022 ジャクソンひとり ジャクソン ひとり 『ジャクソンひとり』は、東京で整体師として働くブラックミックスの青年ジャクソンが、Tシャツに仕込まれたコードから流出した動画をめぐって職場で疑われるところから動き出す。本人が否定しても身体的特徴で同一視される彼は、動画の男は自分だと主張する三人の男と出会い、逆襲へ向かう。人種、身体、アイデンティティ… 第59回 文藝賞
- 019 2021 カード師 かーどし 『カード師』は、占いを信じていない占い師であり違法カジノのディーラーでもある「僕」が、ある組織から冷酷な資産家の顧問占い師になるよう命じられる長篇。カード、占い、ギャンブルをめぐる偶然と操作の感覚が、個人では抗いがたい理不尽な力と結びついていく。語りはサスペンスの推進力を持ちながら、不確かな未来を知…
- 020 2021 あなたに安全な人 あなたにあんぜんなひと 3.11直前の少年の死をめぐる出来事に苛まれる元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中の事故を抱える便利屋の忍が、「感染者第一号」を誰もが恐れる土地で出会う。二人は人を傷つけ、傷つけられる社会のなかで、孤独で安全な逃亡生活のような関係を築いていく。東日本大震災、沖縄、感染症下の共同体の視線を交差…
- 021 2020 地に這うものの記録 ちにはうもののきろく 再開発計画に揺れる駅前ビルに現れた、言葉を話すネズミのポールを主人公にした寓話的長篇。市議会議員の浦田さんの助けを得て、ポールは欲望や利害が渦巻く人間社会へ踏み込み、やがて市議会で語るところまで進む。人間とネズミの古い因縁を、都市再開発、政治、他者への嫌悪と共存の問題に重ねて描く。
- 022 2020 ピエタとトランジ〈完全版〉 ぴえたととらんじ かんぜんばん ピエタを語り手に、天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、その才能に惹かれて助手になるピエタの関係を描く長篇。周囲で次々と事件が起きるトランジの体質は、探偵小説、友情譚、終末SFの要素を巻き込み、やがて人類滅亡のスケールへ広がっていく。軽やかな語り口で、女性バディ、才能への憧れ、破滅に向かう世界を…
- 023 2020 小鳥、来る ことり、くる 『小鳥、来る』は、夏休みの始まり、9歳の「おれ」が父を倒す日を待っているところから始まる長篇。周囲には、勉強のできる友人、万引きを繰り返す兄弟、学年一強い女子、何度も車にはねられる少年、動物園のゴリラがいて、子どもの日常が暴力とユーモアを帯びて浮かぶ。山下澄人らしい口語のリズムと飛躍する視点が、大人…
- 024 2020 幼な子の聖戦 おさなごのせいせん 第162回芥川賞候補作の表題作と、ビルの窓拭きを描く『天空の絵描きたち』を収める作品集。表題作では、青森の小さな村で村議をしている「おれ」が、人妻との関係を県議に握られ、同級生候補への選挙妨害を強いられる。地方政治の閉塞、個人の弱み、労働現場の緊張を、怒りと諦めのあわいにかすかな希望を探る語りで描く…
- 025 2020 流卵 りゅうらん 『流卵』は、中学2年の男子が性の目覚めとオカルト的な妄想に取りつかれ、自分を「選ばれた民」とみなして向こう側の世界へ進もうとする長篇。河出書房新社公式は、官能と陶酔を帯びた吉村萬壱版『金閣寺』として紹介している。母親に「ヘンタイ」と呼ばれる少年の半生をたどる書評もあり、性・信仰・自己神話が混ざる不穏…
- 026 2020 逃亡者 とうぼうしゃ 第二次大戦後から現代へまたがる逃亡と追跡を軸に、暴力、信仰、戦争の記憶が絡み合う長編。中村文則が得意とする犯罪小説的な緊張を保ちながら、個人の罪と歴史の暗部が切り離せないものとして立ち上がる。五百ページ規模の構成で、サスペンスの推進力と思想的な問いを並走させる読みどころがある。
- 027 2020 月の客 つきのきゃく 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。
- 028 2020 象牛 ぞうぎゅう 表題作は、インド・ガンジス河岸の聖地にやってきた女子大生が、謎の存在である象牛に翻弄される物語。併録の『星曝し』は大阪の淀川河岸を思わせる比ラカ駄を舞台に、恋に似た激しい熱情と死者の気配を描く。現実の痛みと法螺話めいた幻想が混ざり合う、石井遊佳の芥川賞受賞後初の作品集。
- 029 2020 ほんのこども ほんのこども 町屋良平が「群像」に分載した長編。大人と子どもの境界線、成長することの意味を問う作品。単行本刊行年は2021年だが初出年は2020年。第44回野間文芸新人賞受賞作。 第44回 野間新人賞
- 030 2019 出来事 できごと 『季刊文科』連載「転落」を単行本化した長篇。OpenBDの出版社由来データでは、見慣れた日常世界が歪み、人間の嘘や文明の虚妄が露出していく哲学小説として紹介されている。吉村萬壱の身体感覚の強い描写と、日常を異様なものへ反転させる語りが読みどころになる。
- 031 2019 DRY どらい 不倫の末に二人の子を置いて家を出た北沢藍が、十年ぶりに実家へ戻るところから始まる長編。母と祖母の暮らす袋小路の家、そして祖父を一人で介護する幼馴染・馬場美代子の家を通じて、家族、介護、女性の行き場のなさが暗く絡み合う。光文社公式が示す袋小路の家に潜む罪の構図どおり、生活の現実がサスペンスへ変質してい…
- 032 2019 瓦礫の死角 がれきのしかく 『瓦礫の死角』は、父の性犯罪によって解体した家族の記憶と、服役を終えようとする「あの人」の影を描く表題作を中心にした短篇集。講談社公式は、十七歳で無職の北町貫多が、刑期を終えようとする父、復讐に怯える母、消息不明の姉を抱えた家族の瓦礫に向き合う物語として紹介している。「病院裏に埋める」と表裏をなす不…
- 033 2019 改良 かいりょう 女装し、美しくなることに執着する大学生の「私」を描くデビュー作。コールセンターのアルバイト収入を美容やデリヘルに費やす私は、メイクや服装、仕草を研究し、やがて女装した自分を他人に認められたいという欲望を抱く。その望みは、性をめぐる理不尽な暴力と絶望へ向かっていく。 第56回 文藝賞
- 034 2019 ウナノハテノガタ うなのはてのがた 海の民の少年オトガイは父からある役目を引き継ぎ、山の民の少女マダラコは生贄の儀式から逃れて山を下りる。中央公論新社の文庫版公式ページは、二人の出会いからすべてが始まる「原始の物語」として紹介している。共同体の掟、信仰、暴力、出会いによる世界の更新を、神話や寓話に近い距離感で描く作品。
- 035 2019 尾を喰う蛇 おをくうへび 『尾を喰う蛇』は、病院で介護士として働く小沢興毅が、患者の老人、同僚、家族への憎悪を募らせ、暴力に呑まれていく過程を描く新潮新人賞受賞作。中西智佐乃は受賞者インタビューで、戦争における「仕方がなかった」という感覚と、現代の労働・介護の場に潜む暴力を接続して本作が動き出したと語っている。肌と肌が過剰に… 第51回 新潮新人賞
- 036 2018 5時過ぎランチ ごじすぎランチ 「グリーンゾーン」「内なる殺人者」「誰が為の昼食」の三篇からなる、労働と犯罪が絡み合う短篇集。ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギーを抱える殺し屋、写真週刊誌の女性記者が、それぞれ過酷な仕事の延長線上でヤクザや警察、国家権力に触れていく。ブラックな職場感覚とクライムノベルの緊張を重ね、仕事にまつわ…
- 037 2018 その先の道に消える そのさきのみちにきえる アパートの一室で発見された緊縛師の死体をめぐり、重要参考人の女性と彼女に惹かれる刑事・富樫、別の刑事たちの視線が絡み合う長編ミステリー。謎と嘘を追う捜査の形を取りながら、暴力、欲望、死者の痕跡を通じて、この世界を生きる意味を問い詰めていく。犯罪小説の緊迫感と、中村文則らしい倫理的・実存的な暗さが重な…
- 038 2018 夜更けの川に落葉は流れて よふけのかわにおちばはながれて 北町貫多の二十代前半を描く「寿司乞食」「夜更けの川に落葉は流れて」「青痰麺」の三篇を収める作品集。表題作では、無気力で受け身になっていた貫多が梁木野佳穂という女性との関わりによって、わずかに外の世界へ引き戻されていく。貧しさ、職場の失敗、恋愛の痛み、長く尾を引く恨みを、私小説的な乾いた筆致で読ませる…
- 039 2018 前世は兎 ぜんせはうさぎ 表題作「前世は兎」のほか、「夢をクウバク」「宗教」「沼」「梅核」「真空土練機」「ランナー」を収める短篇集。兎だった前世の記憶を持つ女、カタログを書き写すことで不安を鎮める休職中の教員、破滅後の世界でマラソンに選ばれる姉など、現実の足場をずらす設定が並ぶ。身体、性、信仰、労働不能や破滅のイメージを通じ…
- 040 2018 送り火 おくりび 東北の小さな中学校へ転校した少年が、土地の集団に馴染んでいく過程で、同級生たちの危うい力関係に巻き込まれていく。表面的な適応の裏に、暴力と同調圧力が蓄積していく構造を描く作品。閉じた学校空間の息苦しさと、少年たちの均衡が崩れる瞬間が読みどころになる。 第159回 芥川賞
- 041 2018 あなたが私を竹槍で突き殺す前に あなたがわたしをたけやりでつきころすまえに 排外主義が加速する近未来の日本を舞台に、在日三世の柏木太一を中心とした青年たちが反攻を計画する群像劇。差別・憎悪・アイデンティティの問題を正面から描いた怒りと悲しみの青春小説。第42回野間文芸新人賞受賞作。 第42回 野間新人賞
- 042 2017 血と肉 ちとにく 『血と肉』は、中山咲が身体と血縁、暴力的な生の感覚を扱う小説として整理できます。血は家族や継承を、肉は身体そのものの存在感を指し、抽象的な関係を物質的に捉え直します。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 043 2017 R帝国 あーるていこく 『R帝国』は、中村文則が独裁的な国家、情報統制、戦争の気配を描くディストピア長編です。架空の帝国を通して、政治的な言葉が現実を支配する怖さと、個人が制度に巻き込まれる過程が描かれます。現代社会への寓話として、同調と暴力の構造を読む作品です。
- 044 2017 囚われの島 とらわれのしま 『囚われの島』は、谷崎由依が島という閉じた場所を舞台に、隔離や記憶の問題を扱う小説として整理できます。囚われることは地理的な閉塞であると同時に、過去や関係から自由になれない状態でもあります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 045 2017 美しい国への旅 うつくしいくにへのたび 『美しい国への旅』は、田中慎弥が「美しい国」という政治的・理念的な言葉を旅の物語へずらして扱う小説として整理できます。旅は理想の場所へ向かう行為である一方、現実の醜さや暴力を見せる過程にもなります。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 046 2017 蛇沼 じゃぬま 『蛇沼』は、宮城県の田園地帯を舞台に、少年時代の監禁事件と少女セイコの不可解な死を抱え続ける青年・恭二を描く新潮新人賞受賞作。受賞者インタビューでは、作者が宮城県亘理郡の田んぼや沼のある風景を原風景としており、主人公が「生きていてもいいのか」という答えのない問いの中でもがく人物として構想されたことが… 第49回 新潮新人賞
- 047 2016 ヒーロー! ひーろー 『ヒーロー!』は、ヒーローばかの男子と文化系女子がいじめゼロを目指す、痛快学園小説です。ヒーローへの憧れは、学校内の同調圧力やいじめに抗うための言葉として働きます。明るい語りの中に、正義を演じることの難しさと切実さがあります。
- 048 2016 炎と苗木 田中慎弥の掌劇場 ほのおとなえぎ たなかしんやのてのひらげきじょう 『炎と苗木 田中慎弥の掌劇場』は、田中慎弥の短い掌編を集めた作品集です。炎の破壊性と苗木の成長という対照的なイメージが、凝縮された場面や感情を支えます。短い形式の中で、暴力、記憶、生活の暗部を鋭く切り出す作品です。
- 049 2016 イサの氾濫 いさのはんらん 『イサの氾濫』は、木村友祐がイサという人物や存在をめぐる記憶、土地、暴力の広がりを描く短篇集として整理できます。氾濫という語は、抑え込まれたものがあふれ出す感覚を示します。既存データには三島由紀夫賞候補作品を収めるとあるが、今回の調査では公式候補出典を確認できていません。
- 050 2016 野良ビトたちの燃え上がる肖像 のらびとたちのもえあがるしょうぞう 『野良ビトたちの燃え上がる肖像』は、格差と貧困の中で生きる人々を描いた長篇です。野良ビトという呼び名は、制度や共同体の外へ押し出された人びとの姿を示します。肖像という形式を通じて、個々の生活と社会の暴力を結びつけて読む作品です。
- 051 2016 私の消滅 わたしのしょうめつ 『私の消滅』は、中村文則が自己の消滅、記憶、犯罪的な心理の闇を扱う長編です。タイトルの「私」は安定した主体ではなく、記録や他者の視線によって揺らぐ存在として現れます。読者を不安定な意識の中へ引き込み、自己同一性の崩壊を追体験させる作品です。
- 052 2015 あなたが消えた夜に あなたがきえたよるに 『あなたが消えた夜に』は、連続通り魔殺人事件を追う二人の刑事の視点が交錯する中村文則の長篇です。事件の真相を追うミステリー的構造のなかで、暴力、記憶、加害と被害の境界が揺らぎます。暗い犯罪小説の形を取りながら、人間の空洞を覗き込む作品です。
- 053 2015 復讐屋成海慶介の事件簿 ふくしゅうやなるみけいすけのじけんぼ 『復讐屋成海慶介の事件簿』は、原田ひ香が復讐を請け負う人物を軸に、事件と人間関係を描く小説として整理できます。復讐は単なる解決ではなく、依頼者や加害者の生活のゆがみを浮かび上がらせます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 054 2015 オールド・テロリスト オールド・テロリスト 『オールド・テロリスト』は、村上龍が老い、暴力、国家への不信を結びつけて描く長編です。高齢者たちの怒りが社会への攻撃として噴出する設定により、希望のなさと政治的な閉塞が前景化します。エンターテインメントの速度を持ちながら、老いと社会の断絶を問う作品です。
- 055 2015 ドール どーる 自分だけの特別な人形を手に入れたいと思う少年の衝動を軸に、性と闇を描く作品。少年の内面にある欲望や不快感を直視し、読者を落ち着かない心理の流れへ引き込む。人形という対象を通じて、身体と所有、成長期の暴力性が浮かび上がる。出版社紹介でも、不穏な少年の衝動を前面に出したデビュー作として位置づけられている… 第52回 文藝賞
- 056 2014 A えー 『A』は、中村文則が匿名性、犯罪、倫理の境界を扱う作品集として整理できます。アルファベット一文字の題名は、固有名を失った人物や出来事の不気味さを示します。公開資料では収録作の細部を十分に確認できていないため、書誌と掲載レコードに基づく暫定的な紹介です。
- 057 2014 ファイナルガール ふぁいなるがーる 『ファイナルガール』は、ホラー映画の用語を思わせる題名を通じて、生き残る女性の身体と恐怖を扱う藤野可織の小説として整理できます。恐怖は外部の怪物だけでなく、視線や役割として人物にまとわりつきます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 058 2014 金を払うから素手で殴らせてくれないか? かねをはらうからすでになぐらせてくれないか 『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』は、暴力と交換の論理を露骨な題名で突きつける木下古栗の作品です。金銭、身体、欲望が奇妙な取引として結びつき、常識的な倫理が不条理にずれていきます。過激なユーモアと不快感が同居する読み味です。
- 059 2014 教団X きょうだんえっくす 『教団X』は、巨大宗教団体をめぐって複数の男女の欲望と思想が交差する中村文則の長篇です。信仰、性、暴力、社会不安がからみ合い、個人が何に救いを求めるのかを暗い群像劇として描きます。連載小説らしい大きな構成で、現代社会の空洞とカルト的共同性を問う作品です。
- 060 2014 臣女 しんにょ 『臣女』は、吉村萬壱が身体、服従、権力関係を不穏に描く小説として整理できます。題名は、誰かに従属する女性像や、支配の構造を想起させます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 061 2014 死にたくなったら電話して しにたくなったらでんわして 大阪・十三のキャバクラで働く初美と出会った浪人生・徳山が、外部とのつながりを失い、悪意と厭世へ引き込まれていく。河出書房新社の紹介では、初美が語る残虐史と徳山の関係の断絶が軸に置かれ、現代の「心中もの」と位置づけられている。欲望、虚無、言葉の呪術性が破滅へ向かって濃密に絡む、強い閉塞感のある作品。 第51回 文藝賞
- 062 2013 爪と目 つめとめ 『爪と目』は、幼い娘、父、父の恋人をめぐる関係を、視覚と身体感覚の不穏さから描く短篇です。家庭内の出来事は、保護されるはずの子どもの目を通して、異様な近さと距離を同時に帯びます。語りの中心に視覚を置くことで、家族と暴力の境目を静かに揺さぶる作品です。 第149回 芥川賞
- 063 2013 棺に跨がる かんにまたがる 『棺に跨がる』は、北町貫多ものの系譜に属し、秋恵との同棲の終わりを軸にする西村賢太の連作集です。語りは私小説的で、屈辱、執着、生活の破綻がむき出しの文体で綴られます。恋愛や家族の物語というより、自己破壊的な男の孤立を読む作品です。
- 064 2013 去年の冬、きみと別れ きょねんのふゆきみとわかれ 『去年の冬、きみと別れ』は、猟奇事件をめぐる取材と記録の迷路を描く中村文則の長篇です。人物の語る真実は次々に反転し、取材する側もまた物語に巻き込まれていきます。犯罪小説の外形を使いながら、欲望、表現、他者を所有する暴力を問う作品です。
- 065 2013 燃える家 もえるいえ 『燃える家』は、下関を舞台に家族と国家の暴力を問う大長篇として既存データに記録されている田中慎弥作品です。家という場所は保護の空間ではなく、血縁、地域、歴史が燃え移る場として扱われます。今回の調査では単行本レコードをNDLで確認できなかったため、紹介は既存データと関連する『群像』書誌に基づく暫定情報…
- 066 2013 ピン・ザ・キャットの優美な叛乱 ぴんざきゃっとのゆうびなはんらん 『ピン・ザ・キャットの優美な叛乱』は、猫の名を含む奇妙な題名が示すように、現実の秩序からずれた出来事を扱う荻世いをらの作品集です。優美さと叛乱という相反する語が並び、日常に潜む暴力や逸脱を寓話的に読ませます。公開資料では内容細部を十分に確認できていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 067 2013 世界泥棒 せかいどろぼう 放課後の教室で、男子二人が実弾入りの銃を使って死ぬまで撃ち合う「決闘」が行われるという設定から始まる。決闘を取り仕切る百瀬くんの存在をめぐり、学校という日常空間に戦争の論理が持ち込まれる。暴力を制度化した寓話として、現代の戦争文学を試みる作品。 第50回 文藝賞
- 068 2012 迷宮 めいきゅう 『迷宮』は、得体の知れない引力に動かされる人物を通して、記憶、罪、孤独を描く中村文則の小説です。迷宮は謎解きの舞台であると同時に、人物の内面から抜け出せない感覚を示します。暗い吸引力を持つ語りが、暴力と自己認識の問題を掘り下げます。
- 069 2011 BANG! BANG! BANG! ばんばんばん 『BANG! BANG! BANG!』は、題名の破裂音が示すように、若い人物の感情や関係の衝突を強く響かせる朝比奈あすかの小説です。公開資料では内容細部を十分に確認できていないが、青春の勢いと暴発する不安を読む作品として暫定的に整理できます。軽快さと息苦しさが併存する読み味です。
- 070 2011 ぬるい毒 ぬるいどく 『ぬるい毒』は、学生時代に現れた得体の知れない男・向井との関係に、女性が長く絡め取られていく本谷有希子の小説です。暴力は分かりやすい激しさではなく、ぬるく続く支配や依存として描かれます。恋愛、孤独、自己破壊が、息苦しい一人称の感覚で迫ります。 第33回 野間新人賞
- 071 2011 王国 おうこく 『王国』は、中村文則が犯罪、支配、孤独をめぐって描く暗い寓話的な小説です。王国という語は安定した共同体ではなく、力や欲望によって作られる閉じた支配空間を思わせます。都市の裏側にある暴力と、そこに巻き込まれる個人の不安が読みどころです。
- 072 2011 共喰い ともぐい 昭和63年夏、川辺の町に暮らす17歳の遠馬は、父・円とその愛人琴子との三人暮らし。父は性交の際に女を殴る男で、遠馬の実母・仁子はその暴力ゆえに家を出て、川向こうで魚屋を営んでいる。恋人の千種との関係が深まるにつれ、遠馬は自分の中にも父と同じ暴力の血が流れているのではないかという恐れに苛まれていく。鰻… 第146回 芥川賞
- 073 2011 WANTED!! かい人21面相 うぉんてっど かいじんにじゅういちめんそう 『WANTED!! かい人21面相』は、グリコ・森永事件を想起させる「かい人21面相」を題材に、記憶、犯罪、言葉のパロディを組み合わせる赤染晶子の小説です。事件の固有名は、昭和的な大衆記憶と文学的な語りの遊びを同時に呼び込みます。芥川賞受賞後第一作として、ユーモアと不穏さが交錯する作品です。
- 074 2010 悪と仮面のルール あくとかめんのるーる 『悪と仮面のルール』は、悪になるよう育てられた青年を軸に、犯罪、宿命、自己形成を描く中村文則の長篇です。仮面という題名が示すように、人物は本当の顔と与えられた役割のあいだで揺れます。ノワール的な緊張を持ちながら、悪を選ぶことと選ばされることの境界を問う作品です。
- 075 2010 「悪」と戦う あくとたたかう 『「悪」と戦う』は、幼い兄弟が世界を脅かす「悪」と対峙する、高橋源一郎の冒険小説的な長篇です。子どもの視点を借りながら、現実の政治性や倫理を寓話として組み替えます。軽やかな語りの裏側に、悪とは何か、物語は悪に対抗できるのかという問いが置かれています。
- 076 2010 実験 じっけん 『実験』は、田中慎弥の硬質な語りで、人間関係や自己意識を極限まで試すように描く小説です。題名の「実験」は、科学的手続きというより、人物が自分や他者を材料にしてしまう冷たさを思わせます。不穏で息苦しい空気のなかに、孤独と暴力の気配が漂います。
- 077 2010 歌うクジラ うたうクジラ 『歌うクジラ』は、不死遺伝子が発見された未来の階層社会を、少年の旅として描く村上龍の長編です。SF的設定を使いながら、テクノロジーが身体、寿命、階級をどう変えるかを問います。寓話的な移動の物語として、未来社会の暴力と孤独が前景化します。
- 078 2009 1Q84 いちきゅうはちよん 『1Q84』は、1984年に似て非なる世界「1Q84」を舞台に、青豆と天吾の二つの視点が交差していく長篇です。宗教的共同体、暴力、物語を作ることへの問いが、並行世界の構造の中で結びつきます。恋愛小説でありながら、世界の成り立ちそのものを疑わせる大きな構成が特徴です。
- 079 2009 ヘヴン ヘヴン 『ヘヴン』は、いじめを受ける「僕」と同級生コジマの連帯を通じて、暴力と倫理を問う長篇です。弱さを共有する二人の関係は救いに見えますが、暴力を意味づけて耐えることの危うさも浮かび上がります。身体の痛みと思想的な問いが同時に迫る、川上未映子の代表的長篇の一つです。
- 080 2009 犬と鴉 いぬとからす 『犬と鴉』は、田中慎弥の硬質な文体で、人間の生の暗さや動物的な感覚を前面に出す作品です。犬と鴉という題名の組み合わせは、従順さと不吉さ、近さと遠さを同時に呼び込みます。閉じた生活の中で、身体と孤独がざらついた手触りで描かれます。
- 081 2009 何もかも憂鬱な夜に なにもかもゆううつなよるに 『何もかも憂鬱な夜に』は、死刑囚と向き合う若い刑務官が、自らの孤独な子供時代と現在を重ねていく中村文則の長篇です。犯罪や死刑制度の問題は、単なる社会的題材ではなく、人が他者の罪をどう受け止めるかという倫理の問いになります。暗い語りの中に、救いの可能性がかすかに残ります。
- 082 2009 世界の果て せかいのはて 『世界の果て』は、中村文則が世界の終端に立たされたような人物の孤独や罪の感覚を描く作品です。題名は地理的な果てというより、他者との関係や倫理が行き詰まる場所を示しているように読めます。暗い心理描写と、逃げ場のない空気が特徴です。
- 083 2009 掏摸 スリ 『掏摸』は、天才的なスリ師が闇の組織に支配され、逃げ場のない選択へ追い込まれていく中村文則の長篇です。犯罪小説の緊張を持ちながら、偶然、宿命、倫理の問題が強く前面に出ます。都市の雑踏と孤独な身体技術が結びつく、暗く硬質な作品です。
- 084 2009 ソードリッカー そーどりっかー 『ソードリッカー』は、題名の剣や舌の感触が示すように、身体感覚と暴力のイメージを強く帯びた佐藤憲胤の小説です。講談社刊の単行本として確認できるが、今回の公開資料では詳細な内容紹介までは確認できませんでした。現時点では、身体、攻撃性、孤立した人物像を軸に読む作品として暫定的に整理します。
- 085 2009 ヤイトスエッド やいとすえっど 『ヤイトスエッド』は、吉村萬壱らしい異物感のある題名と身体の手ざわりを持つ小説です。日常の秩序が少しずつゆがみ、人物の身体や欲望が不穏なかたちで前景化します。公開資料では内容細部を確認しきれていないため、書誌確認に基づく暫定的な紹介です。
- 086 2008 ギンイロノウタ ギンイロノウタ 『ギンイロノウタ』は、歪んだ自意識を抱えた少女の性と暴力の衝動を描く表題作を含む作品です。村田沙耶香らしく、学校や身体をめぐる「普通」の感覚が鋭く異化されます。痛ましい題材を、過剰な説明ではなく、人物の感覚の切迫として読ませる作品です。 第31回 野間新人賞
- 087 2008 灰色猫のフィルム はいいろねこのふぃるむ 母親を殺した「僕」は、動機も経緯も語らないまま町を放浪する。公園での野宿を経てホームレスの「ハタさん」と出会い、河川敷の小屋でともに暮らしはじめるが、ハタさんが大切にしていた灰色の猫が殺される日まで、束の間の安らぎは続かない。公衆トイレなどの不潔で醜悪な細部が彷徨う心理を映し出す一方、動物や迷子の少… 第32回 すばる文学賞
- 088 2008 切れた鎖 きれたくさり 『切れた鎖』は、地方の閉ざされた土地に生きる血族を描く三篇を収めた作品集です。家族や土地の結びつきは守りではなく、逃れがたい暴力や因縁として迫ってきます。簡潔で硬い語りが、血縁の鎖が切れる瞬間の不穏さを際立たせます。 第21回 三島賞
- 089 2008 波打ち際の蛍 なみうちぎわのほたる 『波打ち際の蛍』は、傷を抱えた人物が、波打ち際のように揺れる場所で他者との距離を測り直す島本理生の作品です。蛍の光のようなかすかな希望と、身体に残る痛みが同時に描かれます。恋愛や回復を単純に美化せず、触れ合うことの怖さまで含めて読ませます。
- 090 2008 乱暴と待機 らんぼうとたいき 『乱暴と待機』は、奇妙な共同生活のなかで、加害と被害、依存と復讐がねじれていく本谷有希子の小説です。閉じた生活空間にいる人物たちの言葉は、笑えるほど過剰でありながら、相手を縛る力を持っています。戯曲的な会話のテンポと、待ち続けることの不穏さが読みどころです。
- 091 2007 最後の命 さいごのいのち 『最後の命』は、少年時代の傷と再会、罪の記憶をめぐって、人が最後に何を拠りどころに生きるのかを問う作品です。中村文則らしい暗い心理描写が、暴力や孤独を抽象化せず、身体に残る感覚として描きます。過去に囚われた人物が他者との関係を回復できるのかが、緊張を生みます。
- 092 2007 ピストルズ ぴすとるず 『ピストルズ』は、山形県の架空の町「神町」を舞台に展開する阿部和重の「神町サーガ」第二部です。連載開始は2007年で、単行本は2010年に刊行されました。血縁、土地、暴力、神話的な町の歴史が入り組み、現代日本の地方を壮大なフィクション空間に変える作品です。 第46回 谷崎賞
- 093 2006 いやしい鳥 いやしいとり 飲み会で初めて会った学生を家に連れ帰るはめになった非常勤の大学講師。その夜を発端に、男が鳥へと変身していく惨劇が起こる。講師の視点と隣に住む専業主婦の視点を交互に置き、時系列を少しずつずらす構成で、日常に走る裂け目をグロテスクな滑稽さとともに見せる。藤野の出発点となった変身譚で、奇想と冷静な観察眼の… 第103回 文學界新人賞
- 094 2005 悪意の手記 あくいのてき 悪意や罪の意識を抱えた人物の内面を、手記という形式に近い暗い語りで追う中村文則の初期作品。出来事の派手さよりも、語り手が自分の中の暴力や孤独をどう正当化し、どう崩れていくかが中心になる。後の中村作品に続く、犯罪、自己嫌悪、倫理の揺らぎが濃く表れた一作。
- 095 2005 バースト・ゾーン 爆裂地区 ばーすと・ぞーん ばくれつちく 吉村萬壱が、暴力と管理の気配を強めた架空的な地区を描く長編。純文学の枠を越えて、SFやディストピア小説に近い想像力で、身体が制度や集団にさらされる状況を押し広げる。『ハリガネムシ』の閉じた暴力とは別方向に、社会全体が不穏化していく読み味がある。
- 096 2005 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ ふぬけども、かなしみのあいをみせろ 両親の事故死をきっかけに、女優を夢見る自己中心的な姉・澄伽が田舎の実家へ戻ってくる。妹、兄夫婦、家族内の記憶と嫉妬が、痛烈な喜劇として噴き出す。本谷有希子の戯曲的な会話と、家族を安全な場所として描かない毒の強さが読みどころである。
- 097 2005 半島を出よ はんとうをでよ 北朝鮮の特殊部隊が福岡を占拠するという危機を、政治、軍事、若者たちの暴力性を絡めて描く大部の長編。現実の東アジア情勢を踏まえながら、国家の危機管理と個人の生存感覚を同時に扱う。村上龍らしい社会不安への感度と、エンターテインメント的な速度が結びついた作品である。
- 098 2005 平成マシンガンズ へいせいましんがんず 母は家を出て行き、家には横暴な父とその愛人。学校は戦場のようで、教室に居場所はない。逃げ場のない女子中学生の夢に死神が降臨し、マシンガンを手渡す——。現役中学生の書き手が、ローティーンの苛立ちと無力感を、撃ちまくるような言葉のスピードで叩きつけた。マシンガンという暴力的なイメージは実際の銃撃ではなく… 第42回 文藝賞
- 099 2005 さようなら、私の本よ! さようならわたしのほんよ 『さようなら、私の本よ!』は、老作家・長江古義人と建築家・塙吾良を軸に、文学、暴力、記憶の継承を問い直す長編です。作中人物と作者像が重なり合うメタフィクション的な構えのなかで、晩年の作家が自作と時代にどう別れを告げるかが描かれます。会話と回想を積み重ねる長い息の文体が、個人史と政治的記憶を結びつけて…
- 100 2005 土の中の子供 つちのなかのこども 『土の中の子供』は、幼少期の虐待の記憶を抱えた青年が、暴力と性のただなかで自分の生を測り直す作品です。語りは身体感覚に近く、外から説明するよりも、壊れた自己認識の内側から世界を見せます。暗い題材を扱いながら、傷の再演とそこからの微かな抵抗を描く点に緊張があります。 第133回 芥川賞
- 101 2005 冷たい水の羊 つめたいみずのひつじ 級友たちの生け贄のようにいじめの標的にされた中学生の少年。彼は「いじめられたと感じたらそれがいじめ」という定義を逆手に取り、「自分はいじめられていない」という独自の論理に立てこもって、陰惨な仕打ちを受け続ける。いじめを告発した同級生の少女・水原里子との心中の計画が、物語に暗い水脈のように流れる。羊の… 第37回 新潮新人賞
- 102 2004 アフターダーク あふたーだーく 深夜0時過ぎから夜明けまでの東京を舞台に、ファミリーレストラン、ホテル、オフィス、眠り続ける部屋がゆるく接続される。視点はカメラのように人物の間を移動し、姉妹、孤独な青年、暴力の痕跡を、夜の都市の断片として映し出す。長大な物語ではなく、時間を区切った構成と映像的な語りで、村上春樹作品の都市感覚を凝縮…
- 103 2004 アッシュベイビー アッシュベイビー 『蛇にピアス』後の第二作で、同居人の男と赤ん坊をめぐる歪んだ関係に巻き込まれる女性を描く。身体、依存、母性への違和感が、金原ひとみらしい硬い感覚の文体で押し出される。家庭的な題材を扱いながら、安心できる家族像を反転させる不穏な作品である。
- 104 2003 ハリガネムシ はりがねむし 中学教師の男が、教え子の母親との関係をきっかけに、性と暴力の泥沼へ落ちていく芥川賞受賞作。語りは冷たく湿っており、主人公の欲望や嫌悪が、昆虫的・寄生的なイメージと重なって増殖していく。家族や学校という制度の薄い膜の下にある衝動を、読後感の悪さごと突きつける作品である。 第129回 芥川賞
- 105 2003 蛇にピアス へびにピアス 19歳のルイは、蛇のように舌先が割れた「スプリット・タン」を持ち、全身にピアスと刺青を施した青年アマと出会い、同棲を始める。自らも舌にピアスを開け、拡張し、背中に麒麟と龍の刺青を彫ろうと、アマの紹介で知り合ったサディストの彫り師シバとも危険な関係を結んでいく。痛みによってしか生の実感をつかめない若者… 第130回 芥川賞
- 106 2003 黒冷水 こくれいすい 弟の修作は兄・正気の部屋を毎日執拗に「家捜し」し、兄はそれに気づいて巧妙な罠と報復を仕掛ける。家庭内の些細な悪意の応酬は、黒く冷たい水のような憎悪へと際限なくエスカレートしていく——。思春期の自意識と家族間の生理的な憎しみを、17歳の現役高校生がここまで執拗に書き切ったという事実そのものが衝撃を与え… 第40回 文藝賞
- 107 2002 ジャイロ! じゃいろ 「僕」と友人・猟平が繰り返す「危険なキャッチボール」が、ついに猟平の家を全焼させてしまう——少年たちの遊びと暴力が地続きになった世界を、熱を孕んだ文体で一気に語る。選考では、世界へのルサンチマン(鬱屈した恨み)を呪詛のような語りで繋ぎ留めた「現代の悪童日記」と評された。受賞の翌年まで『群像』に短篇を… 第45回 群像新人賞
- 108 2002 銃 じゅう 雨の夜、大学生の「私」は河原で死体のそばに落ちていた拳銃を拾う。磨き、眺め、持ち歩くうちに、銃は退屈な日常に輪郭を与える唯一の存在となり、「撃つ」ことへの欲望が抗いがたく膨らんでいく——。一挺の銃という即物的なモチーフだけで青年の内面の崩壊を追い詰めていく構成と、乾いた硬質な一人称は、ドストエフスキ… 第34回 新潮新人賞
- 109 2002 キッズ アー オールライト きっず あー おーるらいと やくざの愛人の息子として育った「オレ」は、親父の失脚をきっかけに組織同士の闘いへと足を踏み入れてしまう。手当たり次第に何でも破壊するビリィの右手など、過剰でマンガ的なイメージを叩きつけながら、暴力の世界のただなかにいる子どもたちの姿を疾走感のある語りで描く。現役の小学校教師が書いたアウトロー小説とい… 第39回 文藝賞
- 110 2002 海辺のカフカ うみべのかふか 15歳の少年・田村カフカと老人ナカタの物語が並行して進む長編。家出、父と子、予言、暴力、異界的な出来事が絡み合い、現実と神話が重なる場所へ読者を導く。村上春樹の長編の中でも、寓話性と物語性が大きく広がった作品である。
- 111 2002 ファンタジスタ ふぁんたじすた 首相公選制が敷かれた近未来の日本で、サッカーのスタープレイヤーだった政治家・長田が圧倒的な支持率で最高権力者になろうとする。ファシズムの空気を濃密に描いた政治小説。島本理生「リトル・バイ・リトル」と同時受賞した第25回野間文芸新人賞受賞作。 第25回 野間新人賞
- 112 2001 ジャムの空壜 じゃむのあきびん 屠畜の現場を舞台にした短篇集で、労働、身体、動物の死を生活の近くから描く。清潔な消費の背後にある仕事を見つめることで、社会の見えにくい暴力と人間の尊厳を浮かび上がらせる。佐川光晴の労働への視線がよく表れる作品。
- 113 2001 クチュクチュバーン くちゅくちゅばーん ある時から人間たちが異形のものへと変容しはじめ、世界そのものが崩壊へ向かう過程を、複数の人物のエピソードを束ねて描く黙示録的な中篇。グロテスクで生々しい身体描写を畳みかけながら、悲惨さの中に奇妙な可笑しさと祝祭性が同居するのが特徴で、「世界の破壊か、新しい人類の始まりか」という終末イメージを正面から… 第92回 文學界新人賞
- 114 2000 共生虫 きょうせいちゅう 引きこもりの青年ウエハラが、「共生虫」という妄想に取り憑かれていく長編。ネット、孤立、身体への不安が結びつき、社会から退いた人物の内側が危うく膨張していく。2000年前後のテクノロジーと精神の不穏な接続を描く村上龍作品。 第36回 谷崎賞
- 115 2000 メイドインジャパン めいどいんじゃぱん 「この国にしか起こりえない少年犯罪」を題材に、リアルで残酷な殺人描写を、グルーヴ感のあるクールな文体で押し切った問題作。応募時の原題は「YOU LOVE US」で、単行本化に際して『メイドインジャパン』と改題された。1990年代末の少年犯罪報道の記憶が生々しい時期に、暴力を内側から描く若い書き手が現… 第37回 文藝賞
- 116 1999 無情の世界 むじょうのせかい 「トライアングルズ」「無情の世界」「鏖(みなごろし)」の3短編を収録。表題作は深夜の公園で死体を発見した高校生の物語で、若者の鬱屈した暴力衝動と現代社会の無情を描く。阿部和重の前衛的・批評的な初期作風が凝縮されている。第21回野間文芸新人賞受賞(伊藤比呂美と同時)。 第21回 野間新人賞
- 117 1998 ライン ライン 電話線でつながる20人の人物が連鎖的に描かれる連作。SM嬢・看護婦・IQ170のウエイター・殺人を犯したキャリアウーマンら、現代日本の暴力と孤独の連鎖を圧倒的な筆力で描く。
- 118 1998 ゲルマニウムの夜 げるまにうむのよる 問題行動を重ねた少年が小学校高学年から中学卒業まで暮らした修道院兼教護院に、殺人を犯した後に逃亡先として舞い戻る物語。暴力・性・宗教が過剰な密度で交錯する花村萬月の代表作。 第119回 芥川賞
- 119 1998 二匹 にひき 堕落犬と呼ばれる高校生を主人公に学園を舞台とした小説。ジャンクな日本語とクールな思考が特徴の前衛的デビュー作。後に六〇〇〇度の愛(三島賞)、冥土めぐり(芥川賞)へ続く鹿島田真希の出発点。 第35回 文藝賞
- 120 1997 オーディション オーディション 再婚相手を探す男が映画オーディションで出会った女の狂気に巻き込まれる長編。三池崇史により映画化。
- 121 1997 イン ザ・ミソスープ イン ザ・ミソスープ 歓楽街の案内人ケンジが米国人観光客フランクの狂気に巻き込まれる長編。読売文学賞受賞。
- 122 1996 海峡の光 かいきょうのひかり 津軽海峡を望む青函連絡船の乗組員たちの群像と、かつての仲間との宿命的な再会を描いた海洋的叙情詩。柳美里「家族シネマ」と同時受賞。 第116回 芥川賞
- 123 1994 ねじまき鳥クロニクル ねじまきどりくろにくる 失踪した猫と妻を探す「岡田トオル」が、歴史と暴力の深みへ降りていく長編3部作。
- 124 1994 ピアッシング ピアッシング 強迫観念に駆られた男がコールガールを殺す計画を立てるが、幼少期に虐待を受けた女との奇妙な一夜が予期せぬ方向へと転がっていくサイコスリラー。
- 125 1994 昭和歌謡大全集 しょうわかようだいぜんしゅう 昭和歌謡を愛する青年グループと中年女性グループの殺し合いをブラックユーモアで描く長編。
- 126 1993 エクスタシー エクスタシー ニューヨークのバワリーで謎めいた日本人ホームレスと出会った主人公が、東京のケイコとパリのレイコを巻き込む「恍惚のゲーム」に引き込まれ、ドラッグの運び屋となっていく長編小説。
- 127 1988 トパーズ トパーズ SMクラブで働く女性たちの身体、欲望、孤独を都市の夜の中に描く村上龍の作品。性の描写は刺激としてだけでなく、支配、痛み、金銭、自己感覚をめぐる問いとして機能する。乾いた文体で、バブル期都市の消費と身体の商品化を突きつける。
- 128 1987 愛と幻想のファシズム あいとげんそうのファシズム 経済危機に揺れる日本を舞台に、狩猟者トウジがカリスマ的な政治運動を率いていく長編。金融、メディア、暴力、共同体の欲望が絡み合い、個人の野性や身体性が国家的な幻想へ接続されていく過程を描く。近未来政治小説の形を取りながら、1980年代末の消費社会と権力への不安を大きなスケールで物語化した作品。
- 129 1985 河馬に嚙まれる かばにかまれる 連合赤軍事件の記憶や、その後を生きる人々の傷を背景にした連作短篇集。表題作では、政治的暴力の記憶と個人の身体感覚が奇妙に結びつき、過去を説明しきれないまま抱え続ける人間の多義性が浮かび上がる。寓話的な動物イメージと自己照射的な語りを通して、1970年代の事件の残響を1980年代の生へ引き寄せる。 第11回 川端賞
- 130 1983 虹のカマクーラ にじのかまくーら 東京で知り合った黒人青年ボブとタイ人少女ソムシー(姉妹ともに売春で生計を立てる)が、姉が虹を見たという鎌倉を目指して一緒に旅をする。外国人を主人公に据え、周囲の偏見と暴力を描いた先駆的な作品。 第7回 すばる文学賞
- 131 1982 佐川君からの手紙 さがわくんからのてがみ 『佐川君からの手紙』は、1981年のパリ人肉事件を下敷きに、犯人から届く手紙と映画化をめぐる交渉を通して事件へ接近していく作品です。唐十郎らしいアングラ演劇的な誇張と越境感が、小説の形で犯罪、欲望、表現の倫理を揺さぶります。実在事件を扱うため、読後には不穏さと表現上の危うさが強く残ります。 第88回 芥川賞
- 132 1982 沙耶のいる透視図 さやのいるとうしず 『沙耶のいる透視図』は、ビニ本業界を舞台に、カメラマン、編集者、謎めいたモデル・沙耶の関係が破滅へ向かう物語です。性的な視線、撮ること、消費される身体が重なり、愛と精神の崩壊が乾いた都市の空気の中で描かれます。後に映画化されたことも、作品の映像的な題材性を示しています。 第6回 すばる文学賞
- 133 1980 コインロッカー・ベイビーズ コインロッカー・ベイビーズ 1972年夏、コインロッカーに遺棄されたキクとハシは、施設と養家を経て、それぞれ異なるかたちで母の不在と都市への怒りを抱え込む。ハシは歌声とショービジネスに、キクはアネモネや毒物ダチュラをめぐる破壊衝動に引き寄せられ、東京は欲望と暴力が増殖する異様な空間として立ち上がる。棄児、身体、都市、音の記憶を… 第3回 野間新人賞
- 134 1980 ギンネム屋敷 ぎんねむやしき 『ギンネム屋敷』は、1950年代の米軍占領期の沖縄・浦添を舞台に、ギンネムの茂る屋敷に住む朝鮮人男性への疑惑と暴力を描く又吉栄喜のデビュー作です。沖縄、朝鮮人、米軍占領という複数の歴史的圧力が、地域社会の空気の中に沈み込んでいます。土地の記憶と差別の構造を読む作品です。 第4回 すばる文学賞
- 135 1979 同時代ゲーム どうじだいゲーム 四国の森の谷間にある「村=国家=小宇宙」を、手紙・神話・歴史の断片を重ねて語り直す実験的長編。語り手は村の起源、反乱、血縁、移住の記憶を再編し、個人の物語ではなく共同体が自分自身を語る仕組みそのものを小説化する。大江の森の神話と戦後政治への問いが、濃密な語りの構造として展開される。
- 136 1977 海の向こうで戦争が始まる うみのむこうでせんそうがはじまる 村上龍が『限りなく透明に近いブルー』後に発表した初期長編。題名の通り、戦争が遠くで始まるという感覚を、若者の身体や都市的な不安と接続する。暴力、メディア、距離感のずれを通じて、初期村上龍の社会への鋭い視線を読む作品である。
- 137 1976 限りなく透明に近いブルー かぎりなくとうめいにちかいブルー 米軍基地の街・福生のハウスを舞台に、19歳のリュウとその仲間たちの日々を描く。ドラッグとロック、黒人兵たちとの乱痴気騒ぎ、セックスと暴力に明け暮れる若者たちの退廃を、感傷を排した即物的な描写と、ガラスの破片や雨に濡れた滑走路といった鮮烈なイメージの連なりで定着させる。荒廃の只中にいながらどこか透明な… 第75回 芥川賞
- 138 1967 万延元年のフットボール まんえんがんねんのフットボール 友人の死と家族の危機を抱えた蜜三郎が、弟の鷹四とともに四国の谷間の村へ戻り、百年前の一揆の記憶と向き合う長編。兄弟の対立、障害をもつ子の存在、共同体に残る暴力の記憶が、過去と現在を重ねる構成の中で展開する。閉ざされた村落を神話的な舞台として、個人史と共同体史、政治的熱狂と責任の問題を絡み合わせた大江… 第3回 谷崎賞
- 139 1964 日常生活の冒険 にちじょうせいかつのぼうけん 大江健三郎の1960年代の長編で、「日常生活」と「冒険」という相反する語を重ねる題名が印象的な作品。平凡な生活の内部に、暴力、性、幻想的な逸脱が入り込む大江らしい構図を持つ。日常の足場が崩れていく不穏さを読む作品である。
- 140 1963 叫び声 さけびごえ 大江健三郎が1963年に刊行した作品で、切迫した題名の通り、若者の不安や社会的暴力を強い声として立ち上げる。公開情報では細部の梗概は限定的だが、初期大江の身体性、政治性、孤立感を読む作品として整理できる。全小説・作品集への収録も確認できる。
- 141 1958 完全な遊戯 かんぜんなゆうぎ 若者たちの倦怠と残虐な「遊び」を描いた石原慎太郎の中篇。遊戯の名の下に暴力がエスカレートしていく構図は、戦後若者文化への不安と反発を強く帯びる。太陽族文学の享楽性の裏側にある空虚さを読む作品である。
- 142 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自…
- 143 1958 飼育 しいく 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 第39回 芥川賞
- 144 1957 硫黄島 いおうじま 『硫黄島』は、太平洋戦争末期の激戦地・硫黄島を題材にした戦争小説です。戦闘の記憶を扱いながら、兵士個人の生と死が国家や軍事の物語に回収されていく重さを描きます。公開出典から確認できる内容紹介は限られるため、ここでは受賞・書誌情報を中心に整理しています。 第37回 芥川賞
- 145 1956 処刑の部屋 しょけいのへや 大学生の性的奔放と暴力を描いた石原慎太郎の初期代表短篇。若者の身体感覚、退屈、残酷さを挑発的に描き、「太陽族」文学の衝撃を広げる作品となった。戦後の新しい若者像を、道徳的な安定ではなく暴力と欲望の側から提示する。
- 146 1956 金閣寺 きんかくじ 『金閣寺』は、1950年の金閣寺放火事件に着想を得て、吃音と自己嫌悪を抱える若い僧が美に囚われていく過程を描く長篇です。金閣の絶対的な美が主人公の現実感を侵食し、破壊衝動へ変わるまでを緊密な心理描写で追います。三島由紀夫の美意識とニヒリズムが最も鋭く結びついた戦後文学の代表作です。
- 147 1955 白い人 しろいひと 『白い人』は、ナチ占領下のフランスを舞台に、拷問と背徳を通して悪の問題を問う遠藤周作の中篇です。信仰の有無を単純に裁くのではなく、人間が悪へ傾く瞬間を内面から探ります。カトリック作家としての遠藤の問題意識が、以後の『沈黙』などへつながる出発点として読めます。 第33回 芥川賞
- 148 1952 真空地帯 しんくうちたい 『真空地帯』は、軍隊内務班という閉じた空間で、暴力と服従が日常化していく構造を描いた長篇です。野間宏自身の軍隊経験を背景に、命令・階級・沈黙が個人を追い詰める過程を厚いリアリズムで追います。戦争を前線の英雄譚ではなく、組織の非人間性として描いたところに作品の強さがあります。
- 149 1950 神坂四郎の犯罪 かみさかしろうのはんざい 犯罪を題名に据えた石川達三の長編。個人の罪を社会の中でどう見るかという、石川の社会派的な問題意識に連なる作品として読める。公開情報では細部の筋が限定的なため、犯罪、責任、共同体の視線を主題に持つ作品として暫定分類する。
- 150 1945 生きてゐる兵隊 いきてゐるへいたい 南京攻略戦に従軍した日本兵の実態を描いた戦争小説。戦場の兵士を英雄化せず、加害と疲弊のただ中に置くことで、戦争が人間の身体と倫理をどう壊すかを見つめる。発売直後に発禁処分を受けた問題作として知られ、石川達三の社会的リアリズムを代表する重要作である。