Themes

戦争

主題「戦争」に分類された 57 作品。

  1. 001 2025 去年、本能寺で きょねんほんのうじで 円城塔 単行本・新潮社 『去年、本能寺で』は、日本史上の人物や出来事を素材にしながら、AI、ミステリ、宇宙的想像力、異世界転生までを混ぜ込む全11篇の短篇集です。新潮社公式は、軍事AIや文事AIが働く戦乱世界を掲げ、歴史とSFが交差する作品集として紹介している。史実の圧縮と改変を遊びながら、歴史を固定された過去ではなく、言… 戦争テクノロジー芸術と表現
  2. 002 2024 DJヒロヒト ディージェイヒロヒト 高橋源一郎 単行本・新潮社 『DJヒロヒト』は、パラオ放送局のラジオ番組という奇想の形式を通して、昭和史・文学史・戦争の記憶を再構成する大長編です。中島敦、南方熊楠、森鴎外らの名が交差し、謎のDJの語りが歴史上の人物とフィクションの声をリミックスしていく。ラジオ、録音、放送というメディアの仕掛けを使いながら、天皇制と近代日本を… 戦争記憶芸術と表現
  3. 003 2024 月ぬ走いや、馬ぬ走い つちぬはゆいや、うんまぬはゆい 豊永浩平 初出・「群像」2024年6月号 沖縄に生きるアメリカルーツの少年、幻肢痛に苦しむ元米兵と結婚したコザの女性、特攻へ向かう旧日本軍将校など14人の語りを通して、戦中から現代までの沖縄の80年史を描く。第67回群像新人文学賞と第46回野間文芸新人賞のダブル受賞作。 戦争記憶アイデンティティ 第46回 野間新人賞
  4. 004 2023 あなたの燃える左手で あなたのもえるひだりてで 朝比奈秋 単行本・河出書房新社 ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサトは、目覚めると自分の身体に見知らぬ白人の手がつながれていることを知る。身体の一部が他者のものになる違和感から、国境、民族、所有、故郷の喪失へと思考が広がっていく中篇である。医師でもある作者の冷静な筆致が、身体の境界と自己同一性の揺らぎを切実な問題として立… 身体アイデンティティ戦争 第45回 野間新人賞
  5. 005 2022 水平線 すいへいせん 滝口悠生 単行本・新潮社 硫黄島を墓参したことのある妹に見知らぬ男から電話がかかり、兄は不思議なメールに導かれて船に乗る。祖父母世代の疎開、激戦地に残された人々、現在の兄妹の時間が交差し、死者の言葉が海を越えて現在へ届く。視点や人称を変えながら、戦争の記憶と島の隆起する時間を重ねる長篇。 戦争記憶死と喪失
  6. 006 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 小野正嗣 単行本・毎日新聞出版 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶… 記憶戦争死と喪失
  7. 007 2020 百年と一日 ひゃくねんといちにち 柴崎友香 単行本・筑摩書房 人や店、駅、家、空港、家族の記憶が、数ページの掌編の中で十年、二十年、百年の時間へ伸びていく短篇集。個々の人物の大事件ではなく、場所に積み重なる時間、誰かが去り誰かが来る反復、忘れられていく出来事の痕跡を描く。長いタイトルと淡々とした語りが、日常の一瞬を歴史の厚みへ接続する。 記憶家族死と喪失
  8. 008 2020 日本蒙昧前史 にほんもうまいぜんし 磯﨑憲一郎 単行本・文藝春秋 大阪万博や日航機墜落事故など、戦後日本の狂騒と蒙昧を彩った出来事の陰にある無数の生を描く長篇。文藝春秋公式は、語り手を自在に換えつつ戦後日本の手触りを蘇らせる作品として紹介している。歴史的事件を単なる背景にせず、語りのリレーによって個人の記憶と時代の空気を重ねるところに読みどころがある。 記憶戦争死と喪失 第56回 谷崎賞
  9. 009 2020 逃亡者 とうぼうしゃ 中村文則 単行本・幻冬舎 第二次大戦後から現代へまたがる逃亡と追跡を軸に、暴力、信仰、戦争の記憶が絡み合う長編。中村文則が得意とする犯罪小説的な緊張を保ちながら、個人の罪と歴史の暗部が切り離せないものとして立ち上がる。五百ページ規模の構成で、サスペンスの推進力と思想的な問いを並走させる読みどころがある。 戦争暴力信仰
  10. 010 2019 キュー キュー 上田岳弘 初出・新潮 2017年10月号より連載 平凡な医師である「僕」が突然拉致され、世界の趨勢をめぐる暗闘の中心に、長年寝たきりだったはずの祖父がいることを知る。新潮社公式は、祖父の秘密が「人類を一つに溶かす」使命に関わるものとして紹介している。戦争、愛、運命、人類の統合という大きな主題を、現代的な技術感覚と哲学的な思考実験の語りで押し広げる作… テクノロジー戦争アイデンティティ
  11. 011 2019 遠の眠りの とおのねむりの 谷崎由依 単行本・集英社 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇… 労働青春芸術と表現
  12. 012 2018 日の出 ひので 佐川光晴 単行本・集英社 明治の終わり、13歳の清作は徴兵から逃れて故郷を飛び出し、北陸から九州、横浜へ移りながら鍛冶職人として生きる。もう一つの軸として、清作を曾祖父にもつ現代の女子大生・あさひが、教職免許取得のために学ぶ姿が置かれる。時代を隔てた二人を並行させ、労働、逃走、家系の記憶、希望の継承を描く長編。 労働家族記憶
  13. 013 2018 今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇 こんやはひとりぼっちかい? にほんぶんがくせいすいし せんごぶんがくへん 高橋源一郎 単行本・講談社 『日本文学盛衰史』の続編として、戦後文学そのものを小説の素材にする長編。大岡昇平や小林秀雄らを思わせる文学史上の存在が、ロック、パンク、ラップ、ブログ、Twitter、YouTubeまで巻き込みながら、読まれなくなった戦後文学を現在の言葉へ揉みほぐしていく。文学史講義、パロディ、メタフィクションが交… 芸術と表現言葉と言語戦争
  14. 014 2017 騎士団長殺し きしだんちょうごろし 村上春樹 単行本・新潮社 『騎士団長殺し』は、肖像画家の「私」が小田原の山荘で謎の絵と「イデア」に遭遇する長編二部作です。絵画、地下空間、戦争の記憶が重なり、現実と寓話の境界がゆっくり崩れていきます。村上春樹の長編らしく、喪失と創作、歴史の暗部が大きな物語として展開します。 芸術と表現記憶戦争
  15. 015 2016 太陽の側の島 たいようのそばのしま 高山羽根子 単行本・朝日新聞出版 『太陽の側の島』は、戦時中を背景に、女性と兵士の関係を架空の日記や手紙の連なりでたどる中篇。第2回林芙美子文学賞の大賞受賞作として発表され、のちに短篇集『オブジェクタム』に収録された。戦争の記憶、記録の不確かさ、島という隔絶した場所を、SF的・幻想的な想像力で結びつける作品として位置づけられる。 戦争記憶芸術と表現 第2回 林芙美子賞
  16. 016 2016 伯爵夫人 はくしゃくふじん 蓮實重彦 初出・「新潮」2016年4月号、同年6月新潮社より単行本刊行 帝大入試を控えた二朗が謎めいた伯爵夫人に誘われ、性の昂ぶりと戦争前夜の不穏な空気に巻き込まれていく長篇。伯爵夫人、従妹、和製ルイーズ・ブルックスら魅力的な女性たちが二朗を挑発し、個人の感情教育と時代の破滅が交錯する。エロス、映画的記憶、戦争の気配が入れ子状に重なる作品である。 戦争芸術と表現 第29回 三島賞
  17. 017 2014 指の骨 ゆびのほね 高橋弘希 初出・「新潮」2014年11月号 太平洋戦争中の南方戦線で負傷した一等兵の「私」が、臨時野戦病院で過ごす日々を語る戦争小説。食料の調達、戦友の死、退避を余儀なくされる状況を通じて、戦場の空白と狂気が描かれる。身体の損傷と形見としての骨が、忘れられた戦場の記憶を呼び戻す。静かな語りのなかに、死が日常化した場所の異様さがにじむ。 戦争身体死と喪失 第46回 新潮新人賞
  18. 018 2014 名誉と恍惚 めいよ と こうつ 松浦寿輝 初出・「新潮」2014年5月号〜連載。単行本は2017年、新潮社刊。 日中戦争下の上海で、工部局に勤める日本人警官・芹沢が軍と青幇の面会を仲介したことから警察を追われ、潜伏生活へ追い込まれていく長篇。祖国や名前を失う男の生存を通じて、戦争、都市、裏社会、アイデンティティが交錯する。大部の分量で、歴史の混沌と個人の逃走を描き込む作品。 戦争移民と越境アイデンティティ 第53回 谷崎賞
  19. 019 2013 燃える家 もえるいえ 田中慎弥 単行本・講談社 『燃える家』は、下関を舞台に家族と国家の暴力を問う大長篇として既存データに記録されている田中慎弥作品です。家という場所は保護の空間ではなく、血縁、地域、歴史が燃え移る場として扱われます。今回の調査では単行本レコードをNDLで確認できなかったため、紹介は既存データと関連する『群像』書誌に基づく暫定情報… 家族暴力戦争
  20. 020 2013 世界泥棒 せかいどろぼう 桜井晴也 初出・「文藝」2013年冬号 放課後の教室で、男子二人が実弾入りの銃を使って死ぬまで撃ち合う「決闘」が行われるという設定から始まる。決闘を取り仕切る百瀬くんの存在をめぐり、学校という日常空間に戦争の論理が持ち込まれる。暴力を制度化した寓話として、現代の戦争文学を試みる作品。 暴力青春戦争 第50回 文藝賞
  21. 021 2012 わたしがいなかった街で わたしがいなかったまちで 柴崎友香 単行本・新潮社 『わたしがいなかった街で』は、柴崎友香が、経験していない戦争や過去の映像と、現在の都市生活を重ねる小説です。自分がいなかった場所や時間をどう想像するかが、記憶と責任の問いになります。静かな語りのなかで、戦争の記録と個人の日常が交差します。 戦争記憶孤独と疎外
  22. 022 2012 夜蜘蛛 よぐも 田中慎弥 単行本・文藝春秋 『夜蜘蛛』は、亡父の戦争の記憶をめぐる手紙の謎を描く田中慎弥の中篇です。父の過去は家族の内部に沈み込み、手紙という媒体を通じて遅れて現在に届きます。戦争、父子、記憶の問題を、不穏で乾いた語りで掘り下げます。 戦争父と子記憶
  23. 023 2010 乙女の密告 おとめのみっこく 赤染晶子 初出・「新潮」2010年6月号 『乙女の密告』は、『アンネの日記』を読む大学の授業を舞台に、朗読、暗唱、密告の記憶が絡み合う小説です。語りは教室内の人間関係と戦争の記憶を重ね、誰が誰を裏切るのかという問いを現在の言葉の問題へ引き寄せます。軽やかな会話の奥に、同調圧力と自己認識の危うさが残る作品です。 言葉と言語戦争同調圧力 第143回 芥川賞
  24. 024 2009 カメレオン狂のための戦争学習帳 かめれおんきょうのためのせんそうがくしゅうちょう 丸岡大介 初出・群像 2009年6月号 独身教員のための「修身寮」に入寮した高校教師・田中は、寮の内情をレポートするという任務を課される。規律と監視の空気のなかで、彼は次第に正体の見えない「戦争」へと組み込まれていく。饒舌な語りと不穏な緊張感で、組織に飼い慣らされていく個人の煩悶を描いた現代の不条理劇。学校と寮という閉域を通して、同調圧力… 労働同調圧力戦争 第52回 群像新人賞
  25. 025 2009 白い紙 しろいかみ シリン・ネザマフィ 初出・文學界 2009年6月号 イラン・イラク戦争下のイランの地方都市。成績優秀な高校生の男女が、勉強を口実に心を通わせていく。だが前線が近づくにつれ、家族の事情と戦争の影がふたりの未来を静かに引き裂いていく。日本語を母語としない書き手が、平易で簡潔な日本語によって戦時下の日常と若い恋の痛みを描き、戦争文学と青春小説を重ねてみせた… 戦争恋愛青春 第108回 文學界新人賞
  26. 026 2009 水死 すいし 大江健三郎 単行本・講談社 『水死』は、父の死の記憶と「水死小説」の構想をめぐる、大江健三郎晩年の古義人もの長篇です。家族史、戦後史、文学を書くことが複層的に絡み、個人の記憶は国家や天皇制の問題にも接続します。長い息の文体で、作家自身の過去を再検討する作品です。 父と子記憶戦争
  27. 027 2008 時が滲む朝 ときがにじむあさ 楊逸 単行本・文藝春秋 『時が滲む朝』は、天安門事件前後の中国に生きる若者たちの青春と政治の時間を描く作品です。留学生作家である楊逸の日本語が、祖国の記憶、民主化への希望、移動する身体の感覚を重ねます。個人の朝の光景に、歴史が滲み出してくる点が読みどころです。 移民と越境青春戦争 第139回 芥川賞
  28. 028 2005 バースト・ゾーン 爆裂地区 ばーすと・ぞーん ばくれつちく 吉村萬壱 単行本・早川書房 吉村萬壱が、暴力と管理の気配を強めた架空的な地区を描く長編。純文学の枠を越えて、SFやディストピア小説に近い想像力で、身体が制度や集団にさらされる状況を押し広げる。『ハリガネムシ』の閉じた暴力とは別方向に、社会全体が不穏化していく読み味がある。 暴力戦争身体
  29. 029 2005 半島を出よ はんとうをでよ 村上龍 単行本・幻冬舎 北朝鮮の特殊部隊が福岡を占拠するという危機を、政治、軍事、若者たちの暴力性を絡めて描く大部の長編。現実の東アジア情勢を踏まえながら、国家の危機管理と個人の生存感覚を同時に扱う。村上龍らしい社会不安への感度と、エンターテインメント的な速度が結びついた作品である。 戦争暴力テクノロジー
  30. 030 2001 ゴヂラ ゴヂラ 高橋源一郎 単行本・新潮社 高橋源一郎が2001年に刊行した作品で、怪獣映画を思わせる表記を小説の入口に置く。戦後日本の記憶、メディアの記号、文学の語りを重ね、現実とフィクションの境界を揺さぶるタイプの作品として読める。内容細部は追加確認が必要だが、実験的な社会批評性を持つ作品として分類する。 芸術と表現言葉と言語戦争
  31. 031 2001 ベラクルス べらくるす 堂垣園江 初出・単行本(講談社、2001年)。初出誌は未確認。 カナダ・メキシコに長く在住した経験を持つ堂垣園江が書いたメキシコのベラクルスを舞台にした作品。清水博子「処方箋」と同時受賞した第23回野間文芸新人賞受賞作。 戦争記憶移民と越境 第23回 野間新人賞
  32. 032 1999 蔭の棲みか かげのすみか 玄月 初出・「文學界」1999年11月号 在日朝鮮人が暮らす大阪の下町を舞台に、戦争で手首を失った最古参の住人ソバンの68年間の人生と、集落で起きる事件や日常を描く。在日文学の系譜に連なりつつ独自の土着性を持つ作品。藤野千夜「夏の約束」と同時受賞。 移民と越境戦争家族 第122回 芥川賞
  33. 033 1999 零歳の詩人 れいさいのしじん 楠見朋彦 初出・「すばる」1999年 短歌誌「玲瓏」同人でもある詩歌人・楠見朋彦の小説デビュー作。第122回芥川賞候補となった。 戦争言葉と言語実験的文体 第23回 すばる文学賞
  34. 034 1997 水滴 すいてき 目取真俊 初出・「文學界」1997年4月号 ある日突然足がはれて指先から水が流れ出した沖縄の老人を主人公に、沖縄戦の死者たちの記憶が現実に浸食してくる幻想譚。ユーモアとペーソスが共存する目取真俊の代表作。 戦争死と喪失寓話・幻想 第117回 芥川賞
  35. 035 1996 ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II ヒュウガ・ウイルス ごふんごのせかいツー 村上龍 単行本・幻冬舎 「五分後の世界」の続編。現実と五分ずれた架空の日本(旧九州)で致死率100%の「ヒュウガ・ウイルス」が発生し、医療チームが感染の拡大と戦いながら、追い詰められた者のみが生還できるという極限の生存を描く長編。 戦争身体架空社会
  36. 036 1996 「アボジ」を踏む あぼじをふむ 小田実 初出・「群像」1996年10月号初出。 「アボジ」(朝鮮語で「父」)という言葉を踏みにじった戦前日本の歴史を、在日コリアンの父親への眼差しを通して問い直す短篇。ベ平連設立者でもある小田実の思想的核心が凝縮されている。坂上弘「台所」との同時受賞。 移民と越境父と子戦争 第24回 川端賞
  37. 037 1994 五分後の世界 ごふんごのせかい 村上龍 単行本・幻冬舎 現実と五分ずれた、地下で戦い続けるもう一つの「日本」に迷い込んだ男を描く長編。 戦争架空社会息苦しい
  38. 038 1994 ねじまき鳥クロニクル ねじまきどりくろにくる 村上春樹 単行本・新潮社 失踪した猫と妻を探す「岡田トオル」が、歴史と暴力の深みへ降りていく長編3部作。 暴力戦争記憶
  39. 039 1993 石の来歴 いしのらいれき 奥泉光 初出・「文學界」1993年12月号 第二次大戦中から戦後にわたる男の人生と、その男が持ち続ける一個の石をめぐって歴史と記憶が交錯する中編。奥泉光の歴史的想像力と実験精神が凝縮された芥川賞受賞作。 戦争記憶日本史 第110回 芥川賞
  40. 040 1993 マシアス・ギリの失脚 ましあす・ぎりのしっきゃく 池澤夏樹 初出・書き下ろし。1993年6月新潮社刊(純文学書下ろし特別作品)。 赤道近くの架空の島国ナビダード諸島を舞台に、絶大な権力を集める大統領マシアス・ギリをめぐる政治的陰謀と、日本からの慰霊団行方不明事件を重ね合わせて描く長篇。 戦争死と喪失三人称・多視点 第29回 谷崎賞
  41. 041 1993 セミの追憶 せみのついおく 古山高麗雄 初出・「新潮」1993年5月号初出。 戦時中の記憶とセミの声を結びつけた老境の短篇。従軍体験を持つ古山高麗雄が、生き残った者の罪責感と記憶の透明な残像を繊細に描く。 戦争記憶死と喪失 第21回 川端賞
  42. 042 1991 やすらかに今はねむり給え やすらかにいまはねむりたまえ 林京子 初出・各短篇は1980年代後半に複数誌に発表。単行本1991年講談社刊。初出連載年の特定が困難なため単行本刊行年を year とした。 『やすらかに今はねむり給え』は、長崎、上海、アメリカを背景に、被爆者としての記憶と海外体験を重ねる短篇集です。戦争の傷を大きな声で告発するだけでなく、戦後を生き続ける人物の静かな時間に沈めて描きます。林京子の原爆文学の系譜にあり、移動と記憶が響き合う一冊です。 戦争記憶死と喪失 第26回 谷崎賞
  43. 043 1987 カワセミ かわせみ 図子英雄 初出・「新潮」1987年11月号(新潮社) 戦時下の四国を舞台に、飛ぶ宝石とも呼ばれるカワセミの生命に魅せられた少年の日々を描く表題作を含む短篇集。紀伊國屋の内容説明では、無頼の道を歩む幼なじみの苛烈な生を写す「牙」なども収録される。自然へのまなざし、少年の感受性、戦時下の地方の時間が静かに重なっていく。 戦争青春死と喪失 第19回 新潮新人賞
  44. 044 1977 海の向こうで戦争が始まる うみのむこうでせんそうがはじまる 村上龍 単行本・講談社 村上龍が『限りなく透明に近いブルー』後に発表した初期長編。題名の通り、戦争が遠くで始まるという感覚を、若者の身体や都市的な不安と接続する。暴力、メディア、距離感のずれを通じて、初期村上龍の社会への鋭い視線を読む作品である。 戦争青春暴力
  45. 045 1973 洪水はわが魂に及び こうずいはわがたましいにおよび 大江健三郎 単行本・新潮社 核シェルターに籠る父子と「自由航海団」の若者たちの交流と破局を描く長編。核時代の不安、障害のある子との関係、共同体への希求が、大江らしい寓話的な構図で結びつく。個人の魂の危機を、世界的な破局の想像力へ接続する作品。 障害父と子戦争
  46. 046 1972 みずから我が涙をぬぐいたまう日 みずからわがなみだをぬぐいたまうひ 大江健三郎 単行本・講談社 大江健三郎の1970年代の作品で、個人的な記憶や家族の傷が、天皇制や戦後史への問いと重なっていく。題名の荘重さに対し、語りは自己の痛みを過剰なほど意識化する。大江の私的主題と政治的主題が強く結びつく作品である。 記憶父と子戦争
  47. 047 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 大江健三郎 単行本・講談社 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自… 戦争暴力青春
  48. 048 1958 飼育 しいく 大江健三郎 初出・文學界 1958年1月号 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 戦争暴力青春 第39回 芥川賞
  49. 049 1957 硫黄島 いおうじま 菊村到 初出・「文學界」1957年6月号 『硫黄島』は、太平洋戦争末期の激戦地・硫黄島を題材にした戦争小説です。戦闘の記憶を扱いながら、兵士個人の生と死が国家や軍事の物語に回収されていく重さを描きます。公開出典から確認できる内容紹介は限られるため、ここでは受賞・書誌情報を中心に整理しています。 戦争死と喪失暴力 第37回 芥川賞
  50. 050 1955 白い人 しろいひと 遠藤周作 初出・「近代文學」1955年5〜6月号(第33回芥川賞受賞) 『白い人』は、ナチ占領下のフランスを舞台に、拷問と背徳を通して悪の問題を問う遠藤周作の中篇です。信仰の有無を単純に裁くのではなく、人間が悪へ傾く瞬間を内面から探ります。カトリック作家としての遠藤の問題意識が、以後の『沈黙』などへつながる出発点として読めます。 信仰暴力戦争 第33回 芥川賞
  51. 051 1954 アメリカン・スクール あめりかん・すくーる 小島信夫 初出・「文學界」1954年9月号(第32回芥川賞受賞、庄野潤三「プールサイド小景」と同時受賞) 『アメリカン・スクール』は、占領下日本の英語教師たちがアメリカ人学校を見学する一日を描く短篇です。英語を教えながら英語に怯える教師たちの滑稽さを通して、敗戦後の対米感情と自意識のゆがみが浮かびます。小島信夫らしいユーモアと違和感のある会話が、戦後日本の心理的占領状態を照らします。 戦争言葉と言語同調圧力 第32回 芥川賞
  52. 052 1952 真空地帯 しんくうちたい 野間宏 初出・書き下ろし長篇。1952年2月、河出書房刊。 『真空地帯』は、軍隊内務班という閉じた空間で、暴力と服従が日常化していく構造を描いた長篇です。野間宏自身の軍隊経験を背景に、命令・階級・沈黙が個人を追い詰める過程を厚いリアリズムで追います。戦争を前線の英雄譚ではなく、組織の非人間性として描いたところに作品の強さがあります。 戦争暴力同調圧力
  53. 053 1951 風にそよぐ葦 かぜにそよぐあし 石川達三 単行本・新潮社 戦後の混乱期を生き抜く民衆の姿を、新聞社を舞台に描いた長編社会小説。報道、政治、生活の不安が交差する場として新聞社を置き、戦後民主主義の理想と現実のずれを描く。複数の人物を通じて社会全体を見渡す、大河的な読み味がある。 労働同調圧力戦争
  54. 054 1951 広場の孤独 ひろばのこどく 堀田善衛 初出・「中央公論」1951年(第26回芥川賞受賞) 『広場の孤独』は、朝鮮戦争下の東京を舞台に、新聞社に勤める在日中国人の知識人が戦争と民族のあいだで引き裂かれていく姿を描く作品です。政治状況を背景にしながら、個人の倫理と所属の不安を前景化する点に読みどころがあります。戦後文学の中でも、国際政治と内面の孤独を同時に扱った作品として位置づけられます。 戦争移民と越境孤独と疎外 第26回 芥川賞
  55. 055 1949 異邦人 いほうじん 辻亮一 初出・「新小説」1949年(1950年上半期 第23回芥川賞受賞) 『異邦人』は、敗戦後の中国で中国共産党軍に徴用された日本人の体験を描く短篇です。異国の軍事・政治状況に投げ込まれた人物を通して、戦後直後の日本人が抱えた疎外感と帰属の不安を切り取ります。物語の細部については公開出典が限られるため、ここでは受賞作として確認できる範囲を中心に紹介します。 戦争移民と越境孤独と疎外 第23回 芥川賞
  56. 056 1947 望みなきに非ず のぞみなきにあらず 石川達三 単行本・読売新聞社 石川達三が戦後間もない時期に刊行した作品で、新潮社版などの書誌が確認できる。題名には敗戦後の絶望と、それでも残る可能性への視線が併存している。公開情報が少ないため、戦後社会を背景にした再出発と倫理の小説として暫定的に整理する。 戦争記憶孤独と疎外
  57. 057 1945 生きてゐる兵隊 いきてゐるへいたい 石川達三 単行本・河出書房 南京攻略戦に従軍した日本兵の実態を描いた戦争小説。戦場の兵士を英雄化せず、加害と疲弊のただ中に置くことで、戦争が人間の身体と倫理をどう壊すかを見つめる。発売直後に発禁処分を受けた問題作として知られ、石川達三の社会的リアリズムを代表する重要作である。 戦争暴力身体