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学校
舞台「学校」に分類された 62 作品。
- 001 2026 吸血鬼 きゅうけつき 『吸血鬼』は、女性が中学生になると若さや美しさで十二等級に順位付けされ、十五歳での結婚を強いられる社会を描くディストピア長篇です。中学生の有紗は友人たちと学校生活を送りながら、校外学習で出会ったアナウンサーの美優と開業医の白井を通じて、知らなかった富裕な世界へ触れていく。容姿、結婚、階級、迫害を制度…
- 002 2025 曇りなく常に良く くもりなくつねによく 『曇りなく常に良く』は、同じ高校に通う五人の少女たちの一年間を追う青春群像劇です。よく似た声が混ざり合うという公式紹介の言葉が示すように、個々の輪郭と集団の空気が重なり、友情や同調、来年も一緒にいるだろうという予感が揺れていく。大事件よりも、学校生活の時間の流れと会話の重なりから、少女たちの関係が変…
- 003 2025 たのしい保育園 たのしいほいくえん 『たのしい保育園』は、ももちゃんと父が川べりを歩き、保育園へ向かい、連絡帳を書こうとする日々を描く連作小説です。大きな事件ではなく、育児の時間の長さ、忘れてしまう一瞬、子どもを見守る大人たちの視線を丁寧に積み重ねる。父の目線を軸にしながら、子どもの遠い時間感覚へも寄り添うところに読みどころがある。
- 004 2024 普通の子 ふつうのこ 『普通の子』は、小学5年生の息子・晴翔が学校のベランダから転落した出来事をきっかけに、母・美保が理由を探っていく長編。息子が口を閉ざすなか、いじめの可能性を追う現在の調査と、美保自身の小学生時代の記憶が交錯する。タイトルの「普通」が示す見えにくい圧力を、家庭、学校、親子の距離から掘り下げる作品である…
- 005 2024 いつか、あの博物館で。 いつかあのはくぶつかんで 『いつか、あの博物館で。』は、ロボット博物館への校外学習で同じ班になった中学一年生四人を描く群像劇。美しいアンドロイドの気象予報士との出会いをきっかけに、彼らはロボットと人間の違い、自分だけの心、他者との距離を考えていく。中学三年間の視点を重ね、家庭環境も性格も異なる子どもたちが自分を作り直していく…
- 006 2024 め生える めばえる 髪の毛が根こそぎ抜ける感染症によって、中高生以下を除く大人がみな髪を失った世界を描く中編。薄毛を気にしてきた真智加は開放感を覚える一方、幼少期に髪を切られた高校生・琢磨は恋人と訪れた占い師の言葉をきっかけに別の悩みに直面する。外見の差異が一見平等化された社会を通して、身体へのまなざし、コンプレックス…
- 007 2024 常盤団地の魔人 ときわだんちのまじん 常盤団地の三号棟に住む小学三年生の今野蓮は、喘息を抱え、学校ではまだ友人関係をつくりきれずにいる。団地に越してきた同い年のシンイチ、乱暴だが求心力をもつ年上の少年たち、老朽化した団地の池や空き地をめぐる出来事のなかで、蓮は子どもだけの社会にある憧れ、序列、暴力を少しずつ知っていく。冒険譚の軽やかさを…
- 008 2023 腹を空かせた勇者ども はらをすかせたゆうしゃども コロナ禍のさなか、陽気な中学生レナレナが、「公然不倫」中の母と暮らしながら学校、友人、食べること、恋愛や家族の問題に向き合う青春長篇である。明るさと浅はかさを抱えた少女たちの日常を通して、困難が当たり前になった時代をどう生き抜くかが描かれる。従来の金原ひとみ作品の切迫した身体感覚を保ちつつ、軽やかな…
- 009 2023 共に明るい ともにあかるい 『共に明るい』は、早朝のバス、野鳥園、恋人の家、島への修学旅行、工場の作業部屋など、異なる場所で人が抱える痛みや不安に触れる五篇の小説集である。語られない心の内がふと漏れ出す瞬間をすくい、「他人」がつながりたい「他者」へ変わる手つきを静かに描く。『この世の喜びよ』で芥川賞を受けた後の第一作として、井…
- 010 2022 ななみの海 ななみのうみ 『ななみの海』は、児童養護施設で暮らす高校生ななみが、医学部進学を目指しながら自分の進路を選び取っていく青春小説である。祖母の「馬鹿にされるな」という言葉を胸に、受験勉強、ダンス部最後の発表会、初めての恋、進学費用のためのアルバイトが重なる。十代の心許なさと揺らぎをすくい、支援や家庭環境に規定される…
- 011 2022 青木きららのちょっとした冒険 あおききらら のちょっとしたぼうけん 「きらら」という名を手がかりに、人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、若いアイドルの死を願う会社員など、八つの人生を照らす連作的な作品集。無責任な暴力、すれ違う意識、他者への思い込みが、日常の少しずれた場面から立ち上がる。誰かであり誰でもない存在として生きる人々を…
- 012 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が…
- 013 2022 教育 きょういく 成績向上のために性的な規律が制度化された学校を舞台に、生徒たちは管理された欲望と競争のなかで「正しさ」に従っていく。語り手は異様なルールを淡々と受け入れ、読者は倫理の壊れた環境が日常として語られる不気味さに引きずり込まれる。学園小説の形を借りながら、教育、身体、成績主義、同調の圧力が人間の判断をどう…
- 014 2022 Schoolgirl すくーるがーる 表題作は太宰治「女生徒」を現代に移し、社会派YouTuberとして活動する14歳の娘と、小説に囚われた母のすれ違いを描く。娘の投稿が「女生徒」へ向かうことで、母娘の断絶は文学の記憶と現在のメディア環境のなかで照らし返される。第126回文學界新人賞受賞作「悪い音楽」も併録し、学校、芸術、言葉への過剰な…
- 015 2022 私の盲端 わたしのもうたん 表題作は、大学生活や飲食店のアルバイトを楽しんでいた涼子が、人工肛門とともに生きることになり、自分の身体の変化と周囲の視線に向き合う物語である。医師でもある作者が、病や障害を医学的説明だけに閉じず、身体の境界、恥、欲望、生活の手触りとして描く。併録の「塩の道」は第7回林芙美子文学賞受賞作で、朝比奈秋…
- 016 2021 翼の翼 つばさのつばさ 『翼の翼』は、小学二年生の息子・翼が進学塾の全国テストをきっかけに中学受験へ向かい、母・円佳が塾、ライバル、保護者、家族の期待に巻き込まれていく長篇。子を思う気持ちが、親のプライドや世間の噂、家族内の力学と結びつき、愛情と支配の境目が見えにくくなる過程を描く。中学受験という制度の熱を通じて、家族の内…
- 017 2021 オーラの発表会 オーラのはっぴょうかい 『オーラの発表会』は、大学一年生の海松子が、人を好きになる気持ちや他人の感情をうまく読めないまま、友情と恋愛未満の関係に巻き込まれていく長篇。凧揚げを趣味にし、周囲に脳内であだ名をつける彼女の少しずれた観察が、幼なじみや社会人男性からの接近を通じて揺さぶられる。綿矢りさらしい軽やかな口語感とユーモア…
- 018 2020 ピエタとトランジ〈完全版〉 ぴえたととらんじ かんぜんばん ピエタを語り手に、天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、その才能に惹かれて助手になるピエタの関係を描く長篇。周囲で次々と事件が起きるトランジの体質は、探偵小説、友情譚、終末SFの要素を巻き込み、やがて人類滅亡のスケールへ広がっていく。軽やかな語り口で、女性バディ、才能への憧れ、破滅に向かう世界を…
- 019 2020 破局 はきょく 主人公の陽介は、筋トレと公務員試験の勉強に励む大学4年生。母校のラグビー部でコーチも務め、政治家を目指す恋人・麻衣子がいる。やがて新入生の灯に好意を寄せられ、関係を持つようになる。陽介は常に「正しさ」やマナー、他人にどう見られるかを基準に行動するが、その整いすぎた思考と行動のあいだには、どこか空洞が… 第163回 芥川賞
- 020 2020 星月夜 ほしつきよる 日本の大学で日本語を教える台湾出身の柳凝月と、新疆ウイグル自治区出身で大学院進学を目指す玉麗吐孜の恋を描く長篇。二人は日本語という共通語で近づくが、家族、国家、在留資格、セクシュアリティをめぐる負荷は同じ形では共有できない。親密さの甘さよりも、相手を分かっていると思うことの危うさを静かな語りで照らす…
- 021 2020 完全犯罪の恋 かんぜんはんざいのこい 『完全犯罪の恋』は、芥川賞受賞後も地味な暮らしを送る四十男の小説家「田中」が、新宿で初恋の相手の娘に声をかけられるところから始まる長編。物語は現在の東京と、下関の高校時代に読書を通じて近づいた才女・真木山緑との記憶を往還し、恋の独りよがりと罪悪感を掘り下げる。作家本人を思わせる語り手を置き、私小説的…
- 022 2020 小鳥、来る ことり、くる 『小鳥、来る』は、夏休みの始まり、9歳の「おれ」が父を倒す日を待っているところから始まる長篇。周囲には、勉強のできる友人、万引きを繰り返す兄弟、学年一強い女子、何度も車にはねられる少年、動物園のゴリラがいて、子どもの日常が暴力とユーモアを帯びて浮かぶ。山下澄人らしい口語のリズムと飛躍する視点が、大人…
- 023 2020 流卵 りゅうらん 『流卵』は、中学2年の男子が性の目覚めとオカルト的な妄想に取りつかれ、自分を「選ばれた民」とみなして向こう側の世界へ進もうとする長篇。河出書房新社公式は、官能と陶酔を帯びた吉村萬壱版『金閣寺』として紹介している。母親に「ヘンタイ」と呼ばれる少年の半生をたどる書評もあり、性・信仰・自己神話が混ざる不穏…
- 024 2019 君たちは今が世界 きみたちはいまがせかい 『君たちは今が世界』は、小学校という閉じた場で、子どもたちの関係、序列、沈黙の圧力が日々の世界そのものになっていく様子を描く長篇。副題的に示される英題「All grown-ups were once children」が示すように、子ども時代を単なる回想ではなく、現在進行形の切実な社会として捉える…
- 025 2019 駒音高く こまおとたかく 『駒音高く』は、将棋の勝負の世界に関わる七人の青春と人生を描く短篇集。プロを志す中学生や引退間際の棋士だけでなく、将棋会館の清掃員など周辺にいる人々にも視線を向け、勝敗の外側にある家族、仕事、誇りを浮かび上がらせる。実業之日本社公式が「青春・家族小説の名手」の温かなまなざしと紹介する通り、競技小説で…
- 026 2019 藁の王 わらのおう 小説家として一冊だけ本を出した語り手が、巨大私立大学で創作を教えることになり、学生たちの苦悩と自身の行き詰まりに向き合う表題作を含む作品集。新潮社公式は、文学の迷宮や小説の樹海を彷徨う人々を描く作品集として紹介している。書くこと、読むこと、他者の言葉に侵されることの怖さを、静かな幻想性と記憶の反復で…
- 027 2018 星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き ほしがおかこうこうりょうりぶ へんさちろくじゅうはちのめだまやき 廃部寸前の私立星ヶ丘高校料理部に、篠原皐月が友人に誘われて入部する連作料理ミステリ。目玉焼き、オムレツ、ハンバーグ、カレーなどの料理を通じて、皐月たちは調理の理屈と、身近な出来事に潜む謎を少しずつ解いていく。学校小説の軽やかさに、料理の知識と日常の推理を重ねた読み味が特徴。
- 028 2017 星の子 ほしのこ 中学3年生の林ちひろは、優しい両親に愛されて育った。だが両親は、生まれつき病弱だったちひろが「あやしい宗教」の水で救われたと信じて以来、その教団に深くのめり込んでいる。緑のジャージ姿で頭に濡れタオルを載せる両親は周囲の目を引き、姉は家を出て、親戚との関係も軋んでいく。一目惚れした新任の先生に、夜の公… 第39回 野間新人賞
- 029 2016 しんせかい しんせかい 19歳のスミトは、神戸からフェリーと汽車を乗り継ぎ、北海道の【谷】で脚本家の【先生】が主宰する私塾に二期生として入る。俳優や脚本家を志す年齢も経歴も様々な仲間たちとの共同生活は、しかし稽古よりも、施設造りや農作業、馬の世話といった肉体労働に明け暮れるものだった。倉本聰主宰の富良野塾での著者自身の体験… 第156回 芥川賞
- 030 2009 ヘヴン ヘヴン 『ヘヴン』は、いじめを受ける「僕」と同級生コジマの連帯を通じて、暴力と倫理を問う長篇です。弱さを共有する二人の関係は救いに見えますが、暴力を意味づけて耐えることの危うさも浮かび上がります。身体の痛みと思想的な問いが同時に迫る、川上未映子の代表的長篇の一つです。
- 031 2009 犬はいつも足元にいて いぬはいつもあしもとにいて 中学生の主人公の日常に、犬が公園の茂みから探り当てた正体不明の「肉」が入り込んでくる。誰も名指せないその物体は、思春期の鬱屈や家族のぎこちなさと響き合いながら、生き物の生々しさと死の気配を物語の中心に居座らせる。登場人物はどこか不快なのに目を離せないという独特の距離感で語られ、生命の循環を思わせる視… 第46回 文藝賞
- 032 2009 カメレオン狂のための戦争学習帳 かめれおんきょうのためのせんそうがくしゅうちょう 独身教員のための「修身寮」に入寮した高校教師・田中は、寮の内情をレポートするという任務を課される。規律と監視の空気のなかで、彼は次第に正体の見えない「戦争」へと組み込まれていく。饒舌な語りと不穏な緊張感で、組織に飼い慣らされていく個人の煩悶を描いた現代の不条理劇。学校と寮という閉域を通して、同調圧力… 第52回 群像新人賞
- 033 2009 白い紙 しろいかみ イラン・イラク戦争下のイランの地方都市。成績優秀な高校生の男女が、勉強を口実に心を通わせていく。だが前線が近づくにつれ、家族の事情と戦争の影がふたりの未来を静かに引き裂いていく。日本語を母語としない書き手が、平易で簡潔な日本語によって戦時下の日常と若い恋の痛みを描き、戦争文学と青春小説を重ねてみせた… 第108回 文學界新人賞
- 034 2008 ぼくは落ち着きがない ぼくはおちつきがない 『ぼくは落ち着きがない』は、学校や図書室の空気を背景に、落ち着かなさを抱える若い人物たちの会話と距離を描く作品です。長嶋有らしい少しずれたユーモアが、青春の居場所のなさを軽く見せます。図書館的な静けさと、内側のざわつきの対比が読みどころです。
- 035 2008 ギンイロノウタ ギンイロノウタ 『ギンイロノウタ』は、歪んだ自意識を抱えた少女の性と暴力の衝動を描く表題作を含む作品です。村田沙耶香らしく、学校や身体をめぐる「普通」の感覚が鋭く異化されます。痛ましい題材を、過剰な説明ではなく、人物の感覚の切迫として読ませる作品です。 第31回 野間新人賞
- 036 2008 子守唄しか聞こえない こもりうたしかきこえない 田舎町に暮らす女子高生・美里は、男友達4人に囲まれた一見満ち足りた日々を送っている。だが「愚鈍な真沙子」と見下していた同級生が自分に執着し、つきまとうようになると、保っていたはずのエゴの均衡が崩れはじめる。幼い日の海の記憶や謎めいた老婆との出会いを織り込みながら、思春期の自意識の残酷さと出口のなさを… 第51回 群像新人賞
- 037 2008 マウス マウス 『マウス』は、教室で息をひそめて生きる少女・律と、転校生との関係を描く長編です。学校という共同体のなかで、目立たず生きることと、誰かに見つけられることの怖さが描かれます。村田沙耶香らしく、「普通」に合わせる身体感覚が息苦しく異化されます。
- 038 2007 大人ドロップ おとなどろっぷ 『大人ドロップ』は、若者が大人になる前後の感情を、学校や地方の時間のなかで描く青春小説です。恋愛や友情の明るさだけでなく、過ぎてしまう時間への痛みが語りの底にあります。簡潔な文体で、思い出になる直前の出来事をすくい取る作品として読めます。
- 039 2007 図書準備室 としょじゅんびしつ 『図書準備室』は、高校卒業後にひきこもり続ける男の独白を中心に、閉じた場所と停滞する時間を描く第一作品集です。図書準備室という学校の余白のような場所が、社会へ出られない人物の内面と重なります。田中慎弥の硬質な語りが、青春の後に残った孤独を乾いた感触で示します。
- 040 2006 煙幕 えんまく 14歳の「わたし」は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、「14年戦争を生き抜いてきた」という感慨を抱いて生きている。理科教師の川端、クラスメイトの衣川、母を捨てた川端と名乗る男、プロデューサー——複数の登場人物が重なり合い、誰が誰なのか分からないまま視点が次々と入れ替わる。読者を文字どおり煙に巻く実験…
- 041 2006 不思議の国のペニス ふしぎのくにのペニス 『不思議の国のペニス』は、性欲に振り回される男子高校生の日常を、露骨さと滑稽さを交えて描く作品です。青春小説の枠組みを使いながら、身体の変化や欲望を制御できない不安を前面に出しています。題名の挑発性に対して、語りは若い自意識のぎこちなさを追うところに読みどころがあります。
- 042 2005 BGM びーじーえむ 現役教師として文藝賞を受賞した岡田智彦の、受賞後第一作として発表された作品。題名の「BGM」は、人物の感情を大きな事件で説明するのではなく、日常の背後で鳴り続ける気配として捉える読みを誘う。若い感覚と学校・生活の現場が交差する、2000年代文藝賞周辺の一作である。
- 043 2005 平成マシンガンズ へいせいましんがんず 母は家を出て行き、家には横暴な父とその愛人。学校は戦場のようで、教室に居場所はない。逃げ場のない女子中学生の夢に死神が降臨し、マシンガンを手渡す——。現役中学生の書き手が、ローティーンの苛立ちと無力感を、撃ちまくるような言葉のスピードで叩きつけた。マシンガンという暴力的なイメージは実際の銃撃ではなく… 第42回 文藝賞
- 044 2005 ナラタージュ ならたーじゅ かつての恩師への思いを断ち切れない女子大生が、過去の記憶と現在の恋の間で揺れる長篇。恋愛の美しさよりも、戻れない時間に縛られる痛みが中心に置かれている。語りは静かだが、人物の未練や罪悪感が長く尾を引き、島本理生の代表的な恋愛小説として読まれてきた。
- 045 2005 冷たい水の羊 つめたいみずのひつじ 級友たちの生け贄のようにいじめの標的にされた中学生の少年。彼は「いじめられたと感じたらそれがいじめ」という定義を逆手に取り、「自分はいじめられていない」という独自の論理に立てこもって、陰惨な仕打ちを受け続ける。いじめを告発した同級生の少女・水原里子との心中の計画が、物語に暗い水脈のように流れる。羊の… 第37回 新潮新人賞
- 046 2004 人のセックスを笑うな ひとのせっくすをわらうな 美術専門学校に通う19歳の「オレ」は、20歳年上の講師・ユリと恋に落ちる。年の差も、ユリに夫がいることも、ふたりの関係のゆるさを変えはしないが、恋はやがて静かに終わっていく。性愛を声高に語らず、軽くやわらかい口語の文体で、若さの側から見た年上の女性のかわいさと残酷さをすくいとる。タイトルの挑発性と中… 第41回 文藝賞
- 047 2004 野ブタ。をプロデュース のぶた。をぷろでゅーす クラスの人気者を巧みに「演じる」高校生・桐谷修二は、いじめの標的になっている転校生・小谷信太=野ブタを人気者にプロデュースする計画を始める。教室という市場でキャラクターを売り出すゲームは成功していくが、演じることでしか居場所を作れない修二自身の空虚が次第に露わになる。スクールカーストと自己演出の時代… 第41回 文藝賞
- 048 2004 タイムカプセル たいむかぷせる 過去にしまいこんだ感情や記憶を、現在の自分が開け直すようにたどる作品。若い人物の時間感覚を、懐かしさだけでなく、未来へ残してしまったものへの不安として描く。生田紗代のデビュー後の文脈では、青春の明るさと居場所のなさを同時に読む入口になる。
- 049 2003 ハリガネムシ はりがねむし 中学教師の男が、教え子の母親との関係をきっかけに、性と暴力の泥沼へ落ちていく芥川賞受賞作。語りは冷たく湿っており、主人公の欲望や嫌悪が、昆虫的・寄生的なイメージと重なって増殖していく。家族や学校という制度の薄い膜の下にある衝動を、読後感の悪さごと突きつける作品である。 第129回 芥川賞
- 050 2003 授乳 じゅにゅう 中学生の少女「私」は、母が選んだ冴えない家庭教師の青年に、嫌悪とも支配欲ともつかない倒錯した感情を抱き、「授乳」と呼ぶ秘密の行為へと彼を引き込んでいく。教育熱心な母への息苦しさ、性とも甘えともつかない身体感覚——のちに「コンビニ人間」へと結実する村田沙耶香の核、つまり「普通」とされる世界への違和を身…
- 051 2003 蹴りたい背中 けりたいせなか 高校に入学したばかりのハツ(長谷川初実)は、クラスの輪に加わることを拒み、余り者として過ごしている。同じく孤立しているにな川は、女性モデル「オリチャン」に病的なまでに夢中な少年。ハツはオリチャンに会ったことがある縁でにな川と関わるようになり、彼の無防備な背中を「蹴りたい」という奇妙な衝動を抱えていく… 第130回 芥川賞
- 052 2002 死せる魂の幻想 しせるたましいのげんそう お節介な祖母と二人暮らしで、アパートと大学を往復するだけの真面目な女子大生・千明。女友達はいても恋人はいない彼女の日常に潜む孤独感と、他者との関係への切実な渇望を描く。後半、奇妙な雨宿りの場面で物語は一変し、卑近な日常が途方もない神々しさへと接続される。現役京大生だった22歳の作者によるデビュー作で… 第45回 群像新人賞
- 053 2001 シルエット しるえっと 高校二年生の「私」を語り手に、人との出会いと別れ、恋愛にともなう心の揺れと痛みを、等身大の言葉で丁寧にすくいとった中篇。書いたのは当時現役高校生の島本理生で、十代の感受性をそのまま閉じ込めたような瑞々しさと、年齢に不釣り合いなほど抑制の効いた文章が同居している。痛みを声高に語らず、静かな観察として差…
- 054 2000 希望の国のエクソダス きぼうのくにのエクソダス 中学生たちの集団不登校と、ネットワークを使った経済的自立を描く近未来小説。学校や国家に回収されない若者の集団が、情報技術と経済を武器に別の社会を作ろうとする。教育、労働、国家、テクノロジーを同時に扱う、2000年前後の不安と期待を映す作品。
- 055 1998 ゲルマニウムの夜 げるまにうむのよる 問題行動を重ねた少年が小学校高学年から中学卒業まで暮らした修道院兼教護院に、殺人を犯した後に逃亡先として舞い戻る物語。暴力・性・宗教が過剰な密度で交錯する花村萬月の代表作。 第119回 芥川賞
- 056 1998 二匹 にひき 堕落犬と呼ばれる高校生を主人公に学園を舞台とした小説。ジャンクな日本語とクールな思考が特徴の前衛的デビュー作。後に六〇〇〇度の愛(三島賞)、冥土めぐり(芥川賞)へ続く鹿島田真希の出発点。 第35回 文藝賞
- 057 1993 氷の海のガレオン こおりのうみのがれおん 孤独な少女が想像世界へと旅立つ幻想的な物語。のちに文庫化・シリーズ化された人気作となった。
- 058 1992 チューリップの誕生日 ちゅーりっぷのたんじょうび 『チューリップの誕生日』は、女子高生がロックバンドで活動する姿を描く青春小説です。音楽を通じて学校生活や仲間との関係が動き、若い身体感覚と自己表現への欲求が前面に出ます。すばる文学賞受賞作として、1990年代初頭の若い書き手の感性を示す作品です。 第16回 すばる文学賞
- 059 1991 至高聖所(アバトーン) しこうせいしょ あばとーん 『至高聖所(アバトーン)』は、大学生活と若者の精神的な苦闘を叙情的に描く松村栄子の芥川賞受賞作です。親密な関係と孤独、学びの場での息苦しさを、若い語りの感覚で立ち上げます。『海燕』掲載作として芥川賞を受けた点でも、1990年代初頭の文芸誌環境を示す作品です。 第106回 芥川賞
- 060 1959 人間の壁 にんげんのかべ 教育現場を舞台に、教師たちの苦闘と理想を描いた石川達三の大河社会小説。学校という制度を通じて、戦後社会の矛盾、労働、政治的な圧力を広く描く。個人の善意だけでは越えられない「壁」を、複数の人物の視点で見せる作品である。
- 061 1957 裸の王様 はだかのおうさま 『裸の王様』は、企業の付設美術教室で働く主人公が、子どもたちの表現を管理しようとする組織と向き合う短篇です。子どもの自由な絵と大人の制度的な論理を対比させ、個人が組織に取り込まれていく過程を批評します。開高健の社会批評性と寓話性が、読みやすい構図のなかに収まった出世作です。 第38回 芥川賞
- 062 1954 アメリカン・スクール あめりかん・すくーる 『アメリカン・スクール』は、占領下日本の英語教師たちがアメリカ人学校を見学する一日を描く短篇です。英語を教えながら英語に怯える教師たちの滑稽さを通して、敗戦後の対米感情と自意識のゆがみが浮かびます。小島信夫らしいユーモアと違和感のある会話が、戦後日本の心理的占領状態を照らします。 第32回 芥川賞