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老い
主題「老い」に分類された 59 作品。
- 001 2025 記念日 きねんび 『記念日』は、23歳のミナイ、42歳のソメヤ、76歳の乙部さんという年齢も境遇も違う女性三人が、奇妙なルームシェアをきっかけに交わっていく長篇です。「明日から、おばあさんになってみませんか?」という提案が、若さや老い、身体のままならなさ、他者と暮らすことの違和感を動かしていく。代わり映えしない日常を…
- 002 2025 温泉小説 おんせんしょうせつ 『温泉小説』は、おひとり様限定ツアー、後期高齢者のドライブ旅、母の呪縛から逃れられない娘、亡き妻との記憶をたどる男など、六つの旅路を収めた連作的な作品集です。年齢も性別も境遇も違う人物たちが、人生の苦みや迷いを抱えたまま温泉地へ向かい、湯に身体をほどかれながら自分を見つめ直す。温泉ソムリエマスターで…
- 003 2025 移動そのもの いどうそのもの 『移動そのもの』は、表題作を含む九篇を収めた短篇集。筑摩書房公式は、一文ごと一語ごとに世界が生まれ変化していく作品集として紹介し、言葉そのものが物語を跳躍させる読書体験を前面に出している。市場、家、旅、老いなどの場面が小さな宇宙のように開かれ、筋を追うだけでなく、言葉に導かれて世界の相貌が変わる感覚…
- 004 2025 ズッキーニ病 ずっきーにびょう 特定の野菜(ズッキーニ)に執着する母の姿を、語り手が回想的に見つめる短篇。父が亡くなる以前からすでに始まっていた母のおかしさを問い直す。単行本未収録。
- 005 2024 無形 むけい 立ち退き勧告が進む海辺の団地を舞台に、年老い病を患う祖父と面倒を見る孫娘、親が失踪した姉弟、夫に先立たれた老女、友情以上の感情を育む少女たちなど、複数の生活がゆるやかに重なる群像長篇。確かにそこにあった暮らしの喜びや悲しみが、形として残らないまま季節とともに流れていく。団地という共同体の消滅を背景に…
- 006 2023 夜のだれかの岸辺 よるのだれかのきしべ 十九歳の春、茜は八十九歳のソヨミから毎晩の添い寝と朝食を頼まれ、家計を助けるためにその仕事を受ける。血縁でも介護契約でもない奇妙な近さのなかで、若さと老い、孤独、生活の手触りが交わっていく。講談社公式の本文抜粋が示すように、語りは茜の現実感に根ざし、働くことと誰かのそばにいることの境目を静かに問う作…
- 007 2023 ユーチューバー ユーチューバー 『ユーチューバー』は、二十代半ばでデビューし七十歳になった作家・矢崎健介が、ユーチューバーに誘われて語り始める連作小説である。矢崎は「自由である人間」について、そして半世紀にわたって出会い、消えていった女性たちについて回想する。YouTubeという現代的な語りの場を借りながら、恋愛、老い、創作の源泉…
- 008 2022 春のこわいもの はるのこわいもの 『春のこわいもの』は、パンデミック前夜の東京を舞台に、六人の男女がそれぞれの欲望、不安、罪悪感に触れる短篇集である。ギャラ飲みに向かう女性、人生を振り返る老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を裏切りつづけた作家など、華やかさと孤独が隣り合う都市の断面が連ねられる。川上未映子の鋭い観察と身体感覚が…
- 009 2022 老人ホテル ろうじんほてる 埼玉県の大家族で育った日村天使は、テレビに出る大家族の一員だったが、16歳で家を出て大宮のキャバクラで働く。生活保護を受けながら流されるように暮らしていた彼女は、かつて店で出会ったビルのオーナー・綾小路光子と、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルで再会する。光子の投資や生活の指南を通じて、天使…
- 010 2022 財布は踊る さいふはおどる 専業主婦の葉月みづほは、ある夢のために生活費を切り詰め、毎月二万円を貯金してきた。努力の末に夢を実現した直後、夫に二百万円以上の借金があることが発覚し、彼女の生活は大きく動き始める。ひとつの財布をめぐる六話を通じて、節約、借金、投資、奨学金、老後資金など、「今より少し、お金がほしい」人々の切実さと再…
- 011 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶…
- 012 2020 一橋桐子(76)の犯罪日記 ひとつばしとうこのはんざいにっき 76歳で一人暮らしの一橋桐子は、親友トモを亡くし、年金と清掃パートだけでは先行きの見えない老後に追い詰められる。孤独死で人に迷惑をかけるくらいなら刑務所に入ればよいのではないかと考え、万引、偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人と、より長く収監される方法を真剣に調べ始める。犯罪計画の滑稽さの奥に、貧困、老い…
- 013 2020 かきあげ家族 かきあげかぞく コメディ映画監督の中井戸八郎は、老境に差しかかりながらスランプの渦中にいる。長男の失職、長女の離婚、引きこもる次男によって家族が再び一つの家に集まるなか、名監督の遺稿をめぐる騒動が起き、八郎は家族の一人ひとりと向き合わざるをえなくなる。不安を拾い集めてしまう人間の弱さを、家族喜劇の形で描く。
- 014 2020 MISSING 失われているもの ミッシング うしなわれているもの 『MISSING 失われているもの』は、制御しがたい抑うつや不眠を抱える小説家の「わたし」が、謎めいた女優や母の声に導かれて、混乱と不安に満ちた迷宮的な世界を彷徨う長篇。章題には成瀬巳喜男映画の題名が並び、現在と過去、現実と幻想、記憶と自己分析が重なり合う。村上龍が自らの創作の源泉や老い、母の記憶に…
- 015 2020 月の客 つきのきゃく 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。
- 016 2019 私の家 わたしのいえ 祖母の法要で一堂に会した親戚たちを起点に、三世代にわたる一族の記憶と秘密をたどる連作短編集。同棲相手に追い出されて戻る梓、過去にこだわる母、孤独を愛する大叔母らの章が重なり、家族であっても他人のように分かり合えない距離を描く。家という場所を、帰る場所であると同時に逃れがたい記憶の容器として読ませる。
- 017 2019 待ち遠しい まちどおしい 北川春子、夫を亡くした青木ゆかり、新婚の遠藤沙希という世代も立場も異なる三人の女性が、ご近所付き合いを通じて少しずつ関わる長編。住まいの距離の近さと、価値観や人生段階のずれが生む噛み合わなさを、柴崎友香らしい生活の手触りのなかで描く。年齢、結婚、独居、見えにくい困難をめぐり、人はどこまで互いを判断せ…
- 018 2019 おっぱいマンション改修争議 おっぱいまんしょんかいしゅうそうぎ 天才建築家が設計した、通称「おっぱいマンション」と呼ばれるヴィンテージマンションを舞台にした長篇。立地もデザインも人気を集める一方で重大な問題が発覚し、建築家の娘、学生運動あがりの元教師、秘密を抱えた住人たちを巻き込む改修争議が起こる。建築という表現物、住まいの記憶、共同体の利害がぶつかる騒動を、軽…
- 019 2019 そこどけあほが通るさかい そこどけあほがとおるさかい 大阪の濃密な地域社会と家族関係のなかで、毒の強い祖母と暮らす女性の日常を関西弁で描く。方言の勢いと閉じた生活圏の圧力が、笑いと息苦しさを同時に生む。家族の親密さが暴力的な支配にもなる感触を、口語の熱量で押し出す作品。
- 020 2019 飛族 ひぞく 『飛族』は、大分で魚料理店を営む六十五歳のウミ子が、長崎の国境離島を思わせる架空の島に住む九十二歳の母イオと八十八歳のソメ子を訪ねる長編。島には二人の元海女だけが残り、失われた漁師たちを鳥に重ねる「鳥踊り」や、国境離島の維持をめぐる現実的な緊張が、牧歌的な生活に不穏さを差し込む。著者インタビューでは… 第55回 谷崎賞
- 021 2018 雪子さんの足音 ゆきこさんのあしおと 東京出張中の薫は、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家・雪子さんが熱中症でひとり亡くなったことを新聞記事で知り、20年ぶりにその場所へ向かう。アパートへ近づく道のりと回想を重ねながら、大家と下宿人、若者と年長者、好意と負担の境目が少しずつ浮かび上がる。日常の会話や距離感の微細な違和を通して、人間…
- 022 2018 三千円の使いかた さんぜんえんのつかいかた 御厨家の女性たちが、結婚、子育て、入院、離婚、老後といった局面でお金の使い方に向き合う連作短篇集。節約や貯金のノウハウに寄せつつ、家族の役割、将来不安、生活を立て直す知恵を物語として読ませる。具体的な金額や家計の話が、女性たちの選択と自立をめぐる現実的なドラマになっている。
- 023 2017 万次郎茶屋 まんじろうちゃや 『万次郎茶屋』は、老いたイノシシ万次郎と画家志望の女性をめぐる、不思議でじんわりする短編集です。茶屋という場は、人と動物、現実と幻想がゆるやかに交わる場所として働きます。老い、芸術、ケアの感覚を、あたたかい寓話として読ませる作品です。
- 024 2017 おらおらでひとりいぐも おらおらでひとりいぐも 主人公は東北出身、74歳の桃子さん。結婚を目前に故郷を飛び出して上京し、住み込みの仕事、周造との結婚、二児の子育て、そして夫との突然の死別を経て、いまは東京郊外の家にひとりで暮らす。静かな日々のなか、桃子さんの内から標準語と懐かしい東北弁の無数の「声」が湧き上がり、孤独や老い、夫への思い、これからの… 第158回 芥川賞
- 025 2017 千の扉 せんのとびら 『千の扉』は、新宿の巨大な都営団地を舞台に、そこで暮らした人々の記憶と時間をたどる長編です。団地の多数の扉は、それぞれ異なる生活史への入口として機能します。都市の住宅を通して、共同体、老い、場所の記憶を静かに掘り起こす作品です。
- 026 2016 縫わんばならん ぬわんばならん 九州長崎の漁村の島を舞台に、一族をめぐる四世代の来歴を女性の語りで編む作品。ほころびていく意識から湧き出る声を拾い、記憶の断片を縫い合わせるように家族史を立ち上げる。方言と声の流れが、過去・記憶・語り継ぎの主題を支えている。島の生活と老いの身体感覚が、個人史を超えた時間の厚みを生む。 第48回 新潮新人賞
- 027 2016 本物の読書家 ほんものの どくしょか 『本物の読書家』は、書物への耽溺、言葉の探求、読むことへの畏怖をめぐる中編二作を収める作品集。表題作では、老人ホームへ向かう大叔父と同行する語り手が、川端康成からの手紙の噂と車内で出会う謎めいた読書家を通じて、読書と記憶の秘密に巻き込まれる。もう一編「未熟な同感者」では文学講義、引用、師弟関係が絡み… 第40回 野間新人賞
- 028 2015 ネンレイズム/開かれた食器棚 ねんれいずむ/ひらかれたしょっきだな 『ネンレイズム/開かれた食器棚』は、山崎ナオコーラが年齢や生活道具をめぐる価値観を問い直す小説集として整理できます。年齢に付随する役割や、食器棚のような身近な場所にしまわれた日常が、人物の自己像を形づくります。軽い語り口の奥に、社会の分類に回収されない生き方への関心があります。
- 029 2015 オールド・テロリスト オールド・テロリスト 『オールド・テロリスト』は、村上龍が老い、暴力、国家への不信を結びつけて描く長編です。高齢者たちの怒りが社会への攻撃として噴出する設定により、希望のなさと政治的な閉塞が前景化します。エンターテインメントの速度を持ちながら、老いと社会の断絶を問う作品です。
- 030 2015 スクラップ・アンド・ビルド スクラップ・アンド・ビルド 無職で資格試験の勉強と転職活動を続ける28歳の健斗は、母と、87歳の祖父との三人暮らし。「早う死にたか」と口癖のように繰り返す祖父に対し、健斗は介護職の友人の助言をひねって解釈し、あえて何もかも世話を焼いて自立の機会を奪う「足し算の介護」によって、祖父の望む穏やかな死を後押ししようと思い立つ。同時に… 第153回 芥川賞
- 031 2014 レールの向こう れーる の むこう 沖縄に生きて創作を続けてきた老年の作家が、妻の入院をきっかけに日常と記憶を往還する作品集。表題作では、病院や家族との現在の生活と、レールの向こうにある創作の記憶が重ねられる。老いと死を含む生活を慈しみながら、作家として切り捨てられない不穏な領域を見つめる。 第41回 川端賞
- 032 2012 55歳からのハローライフ ごじゅうごさいからのハローライフ 『55歳からのハローライフ』は、定年前後の世代が仕事、家族、老いを前に再出発を探る村上龍の連作小説集です。人生の後半は穏やかな余生ではなく、労働市場や家族関係の変化にさらされる時間として描かれます。複数の人物を通じて、老いと孤独の現代的なかたちが見えてきます。
- 033 2012 abさんご えーびーさんご 『abさんご』は、昭和の知的家庭に生まれた子どもが成長し、父母を看取るまでを描く作品です。全文横書き、固有名詞を用いない文体など、形式上の実験が大きな特徴です。家族史を扱いながら、言葉の配置そのものによって記憶のあり方を問い直します。 第148回 芥川賞
- 034 2012 給水塔と亀 きゅうすいとう と かめ 定年後に幼いころ暮らした土地へ戻ってきた独身男性を主人公に、給水塔の記憶と前住人が残した亀をめぐって老いと孤独を見つめる短篇。大きな事件ではなく、製麺所の排水、古い団地、ベランダからの風景といった細部が、人生の時間の流れを静かに立ち上げる。津村記久子らしい抑制された語りが、再出発のかすかな意欲を読み… 第39回 川端賞
- 035 2011 半島へ はんとうへ 『半島へ』は、伊勢志摩の半島地帯を舞台に、衰えゆく自然と人間の静かな対話を描く散文詩的長編です。土地の風景と老い、移ろう自然の気配が、ゆるやかな時間の中で重なります。半島という外縁の場所から、生と死の境目を見つめる作品です。 第47回 谷崎賞
- 036 2011 異郷 いきょう 『異郷』は、津村節子が夫・吉村昭の死後の喪失と生者の日常を静かに描いた短篇です。身近な死を経た後の生活を、過剰な感傷ではなく抑制された語りで見つめます。配偶者の不在を抱えて生きる時間を、静謐な読み味で描く作品です。 第37回 川端賞
- 037 2009 終の住処 ついのすみか 『終の住処』は、妻が突然口をきかなくなる朝から始まり、ある夫婦の二十年を描く磯﨑憲一郎の小説です。大きな事件よりも、時間の経過そのものが関係を変えていく様子に重心があります。淡々とした語りの背後で、夫婦、家、老い、記憶の問題が静かに積み重なります。 第141回 芥川賞
- 038 2007 ひとり日和 ひとりびより 『ひとり日和』は、二十歳の知寿が高齢の遠縁・吟子さんと同居し、働きながら自立の感覚を少しずつ探る作品です。老いと若さ、家族ではない同居、ひとりでいることの自由と寂しさが、淡々とした語りで描かれます。大きな成長物語ではなく、日々の観察から生活の輪郭が変わるところが読みどころです。 第136回 芥川賞
- 039 2007 臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ ろうたしアナベル・リイ そうけだちつみまかりつ 『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』は、文学作品や映画的想像力を下敷きに、老い、成熟、欲望を晩年の大江健三郎が再構成する作品です。語りは引用や記憶を重ねながら、ひとつの恋愛譚に収まらないメタフィクション的な広がりを持ちます。文学を読み直すこと自体が、過去の自己を組み替える行為として描かれま…
- 040 2005 さようなら、私の本よ! さようならわたしのほんよ 『さようなら、私の本よ!』は、老作家・長江古義人と建築家・塙吾良を軸に、文学、暴力、記憶の継承を問い直す長編です。作中人物と作者像が重なり合うメタフィクション的な構えのなかで、晩年の作家が自作と時代にどう別れを告げるかが描かれます。会話と回想を積み重ねる長い息の文体が、個人史と政治的記憶を結びつけて…
- 041 2004 介護入門 かいごにゅうもん 寝たきりの祖母を在宅で介護する無職の「俺」が、深夜のおむつ替えや褥瘡のケアといった介護の現実を、ヒップホップのライムを思わせる呼びかけと畳みかける長文で語る。「ヨォ、と俺は呼びかける」という挑発的な語りは、介護を美談にも悲劇にも回収せず、祖母への愛と世間への呪詛を同じ熱量で吐き出していく。介護文学に… 第98回 文學界新人賞
- 042 2003 魔女の息子 まじょのむすこ 40歳を目前にしたゲイのフリーライター・和紀。77歳の母が「老いらくの恋」に燃え始めたことで、亡き父との確執、ハッテン場の旅館で出会った男との関係、そして自分自身の来し方と否応なく向き合うことになる。ゲイ・ムーブメントの先頭に立ってきた評論家が、運動の言葉では掬えない母子の情愛と人間の弱さを、ユーモ… 第40回 文藝賞
- 043 2002 わたしの好きなハンバーガー わたしのすきなはんばーがー 広告会社を定年まで勤め上げた67歳の新人が、蒔岡雪子「飴玉が三つ」と同時に第94回文學界新人賞を射止めた作品。新人賞の受賞者が軒並み若返っていく2000年代初頭にあって、企業社会を生き切った世代の書き手の登場は異彩を放った。選考委員は浅田彰・奥泉光・島田雅彦・辻原登・山田詠美。単行本化されておらず… 第94回 文學界新人賞
- 044 1999 透光の樹 とうこうのき 加賀平野・鶴来を舞台に、テレビ業界の中年男性と老父の看護に戻った女性が25年の時を経て再会し、深まる愛を描く恋愛長篇。後に映画化された。単行本刊行年を year に採用。 第35回 谷崎賞
- 045 1998 ブエノスアイレス午前零時 ぶえのすあいれすごぜんれいじ 雪深い故郷の温泉旅館に戻った青年が、かつて横浜で娼婦をしていた盲目の老婆と出会い、深夜にタンゴを踊るという抒情的でハードボイルドな短編。花村萬月「ゲルマニウムの夜」と同時受賞。 第119回 芥川賞
- 046 1998 望潮 もちしお 潮の満ち引きを軸に、老年期の女性の意識と記憶が揺れ動く短篇。村田喜代子の南九州的な感性と幻視的な文体が際立つ代表的な短篇作品。 第25回 川端賞
- 047 1995 不随の家 ふずいのいえ 老人介護をめぐる家族の「不随の病」を描いたデビュー作。続く「げつようびのこども」で芥川賞候補となった。 第19回 すばる文学賞
- 048 1995 路地 ろじ 鎌倉の路地と古書肆を舞台とした7篇からなる連作短篇集。廃業した店、老いた人々、去りゆく時間を小津安二郎的な視点で丁寧に掬い取る。単行本化にあたり「鎌倉」から「路地」に改題。 第33回 谷崎賞
- 049 1994 みのむし みのむし 農家の老いた夫婦が蓑虫を題材にした短い会話を通して、生命の儚さと互いへの愛着を静かに語らう短篇。三浦哲郎の短篇集モザイクシリーズの一作で、川端賞の2度目の受賞作。単行本年を year に採用。 第22回 川端賞
- 050 1991 伯父の墓地 おじのぼち 『伯父の墓地』は、亡くなった伯父の墓参を題材に、生と死、記憶の連鎖を老境から見つめる短篇です。大きな事件を置かず、親族の記憶と墓地という場所から、時間の堆積を静かに浮かび上がらせます。安岡章太郎晩年の私小説的な成熟が感じられる作品です。 第18回 川端賞
- 051 1990 じねんじょ じねんじょ 『じねんじょ』は、老いた農夫が山芋を掘る日常を通じて、土地への愛着と家族の距離を描く短篇です。大きな事件ではなく、手仕事と沈黙のなかに人生の時間を滲ませるところに味わいがあります。三浦哲郎らしい地方の生活感覚と、老いの静けさが凝縮されています。 第17回 川端賞
- 052 1987 鍋の中 なべのなか 『鍋の中』は、九州の農村を舞台に、土地の記憶、老い、血縁の連なりを濃密な語りで掘り起こす作品です。日常の台所や家族の場面から、土地に沈んだ神話的な感覚までを引き寄せるところに村田喜代子の個性が表れています。泥臭い生の肯定と、死や老いへの視線が同じ鍋の中で煮込まれるような読み味です。 第97回 芥川賞
- 053 1985 午後の祠り ごごのまつり 沖縄を舞台に、暑熱の中で樹木、草、石までもが息をつめるような自然と、老婆の心象が一体化していく作品。既存梗概では沖縄赴任中の医師が触れる民俗的世界として位置づけられており、土地の自然と信仰的感覚が物語の中心にある。外から来た者が出会う沖縄の時間と、老いの内面が静かに重なる読み味を持つ。 第9回 すばる文学賞
- 054 1981 星空 ほしぞら 石川達三が1981年に刊行した後期作品。公開データでは梗概・批評の確認が薄く、まずは新潮社刊行作としての書誌を押さえる段階にある。作家後期の視点から、記憶や老い、社会の中での孤立を読む軸を仮に与えておく。
- 055 1977 独りきりの世界 ひとりきりのせかい 石川達三が1970年代後半に刊行した作品。題名が示す孤独を中心に、社会や家族から切り離された人物の世界を描く作品として暫定整理する。公開情報が少ないため、内容細部は未確認だが、後期石川の個人の孤立への関心を読む候補作である。
- 056 1974 その最後の世界 そのさいごのせかい 石川達三が1970年代に刊行した後期作品。題名は終末や閉ざされた世界を想起させ、社会の行き詰まりと個人の孤独を読む手がかりになる。公開情報が限られるため、後期石川の社会観・人生観を示す作品として暫定紹介する。
- 057 1969 愉しかりし年月 たのしかりしとしつき 石川達三が1969年に刊行した作品で、新潮社版の書誌が確認できる。題名は過ぎ去った年月への回想を示し、記憶と老い、生活の時間を扱う作品として読める。公開情報が限られるため、後期へ向かう石川の回想的な小説として暫定整理する。
- 058 1959 山塔 さんとう 『山塔』は、斯波四郎が第41回芥川賞を受賞した短篇集の表題作です。公開資料で詳しい筋を確認できる範囲は限られますが、生活の厚みと人間の時間を描く作品として評価されました。既存調査にある選評の要点からは、技巧よりも「人生」が感じられる点が評価されたことがわかります。 第41回 芥川賞
- 059 1949 山の音 やまのおと 『山の音』は、鎌倉に暮らす老齢の会社重役・信吾を中心に、家族の崩れと老いの気配を見つめる連作長篇です。嫁の菊子への静かな愛着、息子夫婦の不和、死の予感が、抑制された三人称の語りで重なっていきます。戦後の家庭小説でありながら、川端康成らしい感覚的な細部が、老いと記憶の陰影を際立たせます。