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貧困

主題「貧困」に分類された 35 作品。

  1. 001 2023 黄色い家 きいろいいえ 川上未映子 単行本・中央公論新社 2020年春、惣菜店に勤める花が、かつて疑似家族のように暮らした黄美子の事件記事を見つけるところから、二十年前の「黄色い家」の記憶が開かれる。少女たちはまっとうに稼ぐ道を失い、生活を守るためにより危うい金稼ぎへ踏み込んでいく。貧困、金、犯罪、記憶、家族の擬態を重ね、善悪で割り切れない生存の痛みを長い… 貧困家族暴力
  2. 002 2023 立春大吉 りっしゅんだいきち 浅尾大輔 単行本・新日本出版社 『立春大吉』は、過疎の町で町立病院の入院ベッド全廃計画が持ち上がり、病院と町への思いを抱えた住民たちが抗う長編である。新米町議・友川あさひを中心に、主義主張や家庭事情の異なる人々が交わり、地域医療、暮らし、政治参加の問題が重なっていく。『しんぶん赤旗』連載を単行本化した作品で、若い世代の苦悩と住民運… ケアと介護労働家族
  3. 003 2022 ななみの海 ななみのうみ 朝比奈あすか 単行本・双葉社 『ななみの海』は、児童養護施設で暮らす高校生ななみが、医学部進学を目指しながら自分の進路を選び取っていく青春小説である。祖母の「馬鹿にされるな」という言葉を胸に、受験勉強、ダンス部最後の発表会、初めての恋、進学費用のためのアルバイトが重なる。十代の心許なさと揺らぎをすくい、支援や家庭環境に規定される… 青春家族貧困
  4. 004 2022 老人ホテル ろうじんほてる 原田ひ香 単行本・光文社 埼玉県の大家族で育った日村天使は、テレビに出る大家族の一員だったが、16歳で家を出て大宮のキャバクラで働く。生活保護を受けながら流されるように暮らしていた彼女は、かつて店で出会ったビルのオーナー・綾小路光子と、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルで再会する。光子の投資や生活の指南を通じて、天使… 貧困老い孤独と疎外
  5. 005 2022 財布は踊る さいふはおどる 原田ひ香 単行本・新潮社 専業主婦の葉月みづほは、ある夢のために生活費を切り詰め、毎月二万円を貯金してきた。努力の末に夢を実現した直後、夫に二百万円以上の借金があることが発覚し、彼女の生活は大きく動き始める。ひとつの財布をめぐる六話を通じて、節約、借金、投資、奨学金、老後資金など、「今より少し、お金がほしい」人々の切実さと再… 貧困家族労働
  6. 006 2022 雨滴は続く うてきはつづく 西村賢太 単行本・文藝春秋 2004年、北町貫多は同人誌発表作「けがれなき酒のへど」が同人雑誌優秀作に選ばれ、純文学誌に転載されたことで文壇デビューを果たす。藤澤清造の歿後弟子であろうとする執念、純文学誌への執筆、恋情と自尊心の揺れが、貫多らしい苛立ちと滑稽さを伴って進む。完成直前で未完となった遺作長篇であり、作家になる以前の… 芸術と表現恋愛孤独と疎外
  7. 007 2020 一橋桐子(76)の犯罪日記 ひとつばしとうこのはんざいにっき 原田ひ香 単行本・徳間書店 76歳で一人暮らしの一橋桐子は、親友トモを亡くし、年金と清掃パートだけでは先行きの見えない老後に追い詰められる。孤独死で人に迷惑をかけるくらいなら刑務所に入ればよいのではないかと考え、万引、偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人と、より長く収監される方法を真剣に調べ始める。犯罪計画の滑稽さの奥に、貧困、老い… 老い貧困孤独と疎外
  8. 008 2019 DRY どらい 原田ひ香 単行本・光文社 不倫の末に二人の子を置いて家を出た北沢藍が、十年ぶりに実家へ戻るところから始まる長編。母と祖母の暮らす袋小路の家、そして祖父を一人で介護する幼馴染・馬場美代子の家を通じて、家族、介護、女性の行き場のなさが暗く絡み合う。光文社公式が示す袋小路の家に潜む罪の構図どおり、生活の現実がサスペンスへ変質してい… 家族ケアと介護母と子
  9. 009 2019 瓦礫の死角 がれきのしかく 西村賢太 初出・群像 2018年7月号・2019年2月号・2019年7月号 『瓦礫の死角』は、父の性犯罪によって解体した家族の記憶と、服役を終えようとする「あの人」の影を描く表題作を中心にした短篇集。講談社公式は、十七歳で無職の北町貫多が、刑期を終えようとする父、復讐に怯える母、消息不明の姉を抱えた家族の瓦礫に向き合う物語として紹介している。「病院裏に埋める」と表裏をなす不… 家族暴力貧困
  10. 010 2019 遠の眠りの とおのねむりの 谷崎由依 単行本・集英社 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は本を読むことを支えにしていたが、女学校には進めず、家を追い出されて女工として働く。市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」で、付属劇場の少女歌劇団に関わる「お話係」として雇われ、娘役のキヨと親しくなる。集英社公式は、福井市に実在した百貨店の少女歌劇部に着想を得た長篇… 労働青春芸術と表現
  11. 011 2018 5時過ぎランチ ごじすぎランチ 羽田圭介 単行本・実業之日本社 「グリーンゾーン」「内なる殺人者」「誰が為の昼食」の三篇からなる、労働と犯罪が絡み合う短篇集。ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギーを抱える殺し屋、写真週刊誌の女性記者が、それぞれ過酷な仕事の延長線上でヤクザや警察、国家権力に触れていく。ブラックな職場感覚とクライムノベルの緊張を重ね、仕事にまつわ… 労働暴力貧困
  12. 012 2018 羅針盤は壊れても らしんばんはこわれても 西村賢太 単行本・講談社 西村賢太の分身的主人公・北町貫多が、二十三歳を迎え、日雇い暮らしのなかで人生の敗北感を濃くしていく小説集。田中英光や藤澤清造の私小説に救いを求める貫多が、自らも私小説を書き始めようとする姿を軸に、貧困、文学への執着、自己嫌悪が泥臭く絡み合う。表題作に加え「陋劣夜曲」などを収め、惨めさと不屈さが同時に… 貧困労働孤独と疎外
  13. 013 2018 夜更けの川に落葉は流れて よふけのかわにおちばはながれて 西村賢太 初出・群像 2017年10月号 北町貫多の二十代前半を描く「寿司乞食」「夜更けの川に落葉は流れて」「青痰麺」の三篇を収める作品集。表題作では、無気力で受け身になっていた貫多が梁木野佳穂という女性との関わりによって、わずかに外の世界へ引き戻されていく。貧しさ、職場の失敗、恋愛の痛み、長く尾を引く恨みを、私小説的な乾いた筆致で読ませる… 貧困労働孤独と疎外
  14. 014 2010 苦役列車 くえきれっしゃ 西村賢太 初出・新潮 2010年12月号 中卒で家を出た19歳の北町貫多は、東京の埠頭で冷凍倉庫から荷を運び出す日雇い仕事でその日暮らしを続けている。日当はすぐに酒と風俗に消え、家賃は滞納し、人付き合いもない。そんな彼が職場で専門学校生の日下部と知り合い、初めて友人と呼べそうな存在を得るが、劣等感と過剰な自意識がその関係に影を落としていく… 労働貧困孤独と疎外 第144回 芥川賞
  15. 015 2009 ブルーシート ぶるーしーと 浅尾大輔 単行本・朝日新聞出版 『ブルーシート』は、デビュー作「家畜の朝」を含む第一創作集として、底辺労働や生活の現場を描く作品です。都市の表面では見えにくい働く身体と貧困の感覚が、青いシートの仮設性と重なります。社会的な題材を、個人の孤独と身体感覚に引き寄せて読むことができます。 労働貧困身体
  16. 016 2009 瘡瘢旅行 そうはんりょこう 西村賢太 単行本・講談社 『瘡瘢旅行』は、藤澤清造の墓参と女性との旅を描く、北町貫多ものの作品集です。私小説的な語りは、文学への執着、貧しさ、対人関係のこじれを隠さずに差し出します。旅の形を取りながら、過去の傷や屈辱を抱え直す作品として読めます。 貧困芸術と表現孤独と疎外
  17. 017 2008 灰色猫のフィルム はいいろねこのふぃるむ 天埜裕文 初出・すばる 2008年11月号 母親を殺した「僕」は、動機も経緯も語らないまま町を放浪する。公園での野宿を経てホームレスの「ハタさん」と出会い、河川敷の小屋でともに暮らしはじめるが、ハタさんが大切にしていた灰色の猫が殺される日まで、束の間の安らぎは続かない。公衆トイレなどの不潔で醜悪な細部が彷徨う心理を映し出す一方、動物や迷子の少… 暴力母と子孤独と疎外 第32回 すばる文学賞
  18. 018 2008 小銭をかぞえる こぜにをかぞえる 西村賢太 単行本・文藝春秋 『小銭をかぞえる』は、金欠と痴話喧嘩にまみれた同棲生活を、私小説的な露悪と乾いた笑いで描く作品です。小銭を数える行為が、貧しさ、欲望、関係の行き詰まりを象徴します。西村賢太の作品らしく、金と性と屈辱が分かちがたく結びつきます。 貧困恋愛労働
  19. 019 2007 乳と卵 ちちとらん 川上未映子 初出・文學界 2007年12月号 東京で一人暮らしをする「わたし」のもとへ、大阪でホステスとして働く姉の巻子と、その娘で小学6年生の緑子が上京してくる。離婚後ひとりで娘を育ててきた巻子は豊胸手術を受けることに執拗にこだわり、初潮を迎える年頃の緑子は、自分の身体が変わっていくことへの違和感をノートに書きつけ、母とは筆談でしか口をきかな… 母と子身体ジェンダー 第138回 芥川賞
  20. 020 2007 二度はゆけぬ町の地図 にどはゆけぬまちのちず 西村賢太 単行本・角川書店 『二度はゆけぬ町の地図』は、戻れない場所への執着と、貧しい生活の記憶を私小説的な語りでたどる作品です。西村賢太らしい露悪的な自己凝視が、地図に残る町と、もう行けない過去を重ねます。労働、金銭、孤独が乾いた笑いと屈辱の感覚で結びついています。 貧困記憶孤独と疎外
  21. 021 2007 ワンちゃん わんちゃん 楊逸 初出・文學界 2007年12月号 日本に渡って暮らす中国人女性「ワンちゃん」は、中国の女性たちと日本の男たちを引き合わせる見合いツアーの世話役を務めている。国境をまたぐ結婚の斡旋という生々しい現場を通して、経済格差のなかを生きる女たちのたくましさと哀感を、来日20年の作者がよどみのない日本語で描いた。日本語を母語としない書き手が日本… 移民と越境ジェンダー貧困 第105回 文學界新人賞
  22. 022 2006 暗渠の宿 あんきょのやど 西村賢太 単行本・新潮社 『暗渠の宿』は、粗暴で不器用な私小説的主人公・北町貫多の同棲生活と生活感情を描く作品集です。貧困、労働、性的な執着が、露悪的な自己観察と乾いたユーモアのなかで語られます。暗渠という見えない水路の比喩のように、日常の底を流れる屈辱と欲望が読みどころになります。 労働恋愛貧困 第29回 野間新人賞
  23. 023 2006 どうで死ぬ身の一踊り どうでしぬみのひとおどり 西村賢太 単行本・講談社 『どうで死ぬ身の一踊り』は、大正期の私小説家・藤澤清造の「歿後弟子」を自任する男をめぐる、西村賢太初期の作品集です。文学への執着、貧しい生活、対人関係の不器用さが、露悪的でありながら妙に律儀な語りで押し出されます。私小説の系譜を現代に引き寄せる作品として読めます。 芸術と表現労働貧困
  24. 024 2004 狐寝入夢虜 きつねねいりゆめのとりこ 十文字実香 初出・群像 2004年6月号 三週間前に職を失った上岡鳥子は、空腹を抱えて神社へ散歩に出かけ、帰り道に迷い、年下の古本屋の倅と茶飲み話をして花札に興じる。働かないこと自体は気にしないが、仕事に存在理由を求める世間様の考え方には反感を覚える——そんな鳥子の「高潔なる怠惰」を、現代の話なのにわざと落語のような古風な語りで聞かせる。語… 労働孤独と疎外ジェンダー 第47回 群像新人賞
  25. 025 2004 白の咆哮 しろのほうこう 朝倉祐弥 初出・すばる 2004年11月号 経済の衰退が止まらない近未来の日本で、「土踊り」と呼ばれる踊りが国全体を覆い尽くしていく。荒唐無稽ともいえる世界の変容を、改行の少ない硬く生真面目な文体で延々と語り続けるという、設定と語り口の落差そのものが読みどころの異色作。寓話的な世界設定によって、不況下の日本社会に広がる集団的な熱狂と閉塞を照ら… 同調圧力貧困アイデンティティ 第28回 すばる文学賞
  26. 026 2003 ダンボールボートで海岸 だんぼーるぼーとでかいがん 千頭ひなた 初出・すばる 2003年11月号 自分を「ボク」と呼ぶ女性アオイ(あだ名はドラ)は、母が借金を残して突然失踪したため大学を休学する。女装が趣味のクロ、自称アーティストのハナら、周縁を漂う人々と関わりながら、ドラはダンボール製のボートで海=外の世界へ漕ぎ出すことを夢想する。濡れればすぐ沈む紙のボートというイメージに、前にも後ろにも進め… 母と子貧困青春 第27回 すばる文学賞
  27. 027 2003 家畜の朝 かちくのあさ 浅尾大輔 初出・新潮 2003年11月号 中卒で道路工事などの日雇い仕事をしながら日銭を稼ぐ主人公と、その仲間たちのうだつの上がらない日々。労働と競艇と愚行で埋まる時間の隙間に、父親の自殺、学習障害、友人の堕胎といった出来事が断片として挟み込まれ、貧困が人と土地をどう蝕むかが一人称の語りで立ち上がる。労働運動の現場にいた作者が、「ワーキング… 労働貧困孤独と疎外 第35回 新潮新人賞
  28. 028 2002 スチール すちーる 織田みずほ 初出・すばる 2002年11月号 男性客相手の風俗のアルバイトで日銭を得て、新宿の24時間営業のロッカールームで夜を過ごす17歳の高校生。ある日見かけた中年男性に惹かれ、彼が経営する倉庫で働き始めると、朗らかなパートの中年女性たちに囲まれて、少しずつ世の中との関わり方を学んでいく。だが、かつての「客」だった男が国語教師として学校に着… 貧困青春 第26回 すばる文学賞
  29. 029 1990 渇水 かっすい 河林満 初出・「文學界」1990年6月号 『渇水』は、水道料金を滞納した家庭の給水停止に向かう水道局員・岩切俊作と、その家の子どもたちをめぐる中篇です。行政の仕事としての「停止」と、生活の水を断たれる人々の現実がぶつかります。乾いた社会派リアリズムで、貧困、労働、家庭の孤立を描く作品です。 労働貧困家族 第70回 文學界新人賞
  30. 030 1966 金環蝕 きんかんしょく 石川達三 単行本・新潮社 政界と財界の癒着を描いた石川達三の政治小説。ダム利権をめぐる汚職を告発的に扱い、個人の倫理よりも制度と権力の腐敗を前景化する。社会派作家としての石川の問題意識が、政治経済の構造へ向けられた作品である。 労働同調圧力貧困
  31. 031 1964 傷だらけの山河 きずだらけのさんが 石川達三 単行本・新潮社 石川達三が1960年代半ばに刊行した社会小説。題名の「山河」は個人だけでなく社会全体の傷を想起させ、戦後復興の陰にある矛盾や疲弊を読む軸を与える。公開梗概は薄いが、政治・経済・生活の歪みを扱う作品として暫定的に整理する。 労働同調圧力貧困
  32. 032 1959 人間の壁 にんげんのかべ 石川達三 単行本・新潮社 教育現場を舞台に、教師たちの苦闘と理想を描いた石川達三の大河社会小説。学校という制度を通じて、戦後社会の矛盾、労働、政治的な圧力を広く描く。個人の善意だけでは越えられない「壁」を、複数の人物の視点で見せる作品である。 労働同調圧力貧困
  33. 033 1951 悪い仲間・陰気な愉しみ わるいなかま・いんきなたのしみ 安岡章太郎 初出・「群像」1951年6月号(「悪い仲間」)、「群像」1953年(「陰気な愉しみ」)。第29回芥川賞はこの2篇への授賞。 『悪い仲間・陰気な愉しみ』は、病と貧しさ、青年期の停滞を背景にした安岡章太郎の初期短篇群です。結核療養や日常の挫折をめぐる内省を、過剰な劇化を避けた私小説的な語りで描きます。第三の新人と呼ばれる世代の、戦後の日常感覚と弱さへのまなざしがよく出た作品です。 青春貧困 第29回 芥川賞
  34. 034 1940 転落の詩集 てんらくのしいしゅ 石川達三 単行本・新潮社 石川達三が戦前から戦後にかけて読まれた作品で、八雲書店版や作品集収録が確認できる。題名の「転落」が示すように、社会的な地位や精神の崩れをめぐる小説として位置づけられる。内容細部は追加確認が必要だが、社会派の視線で人間の弱さを追う作品として分類する。 孤独と疎外貧困アイデンティティ
  35. 035 1935 蒼氓 そうぼう 石川達三 初出・同人誌「星座」1935年 昭和初頭、国策としてブラジル移民に応じた人々を描く三部構成の群像劇。第一部では神戸の国立移民収容所で出港を待つ数日間が、東北の寒村から一家で海を渡ろうとする者たちを中心に描かれ、続いて移民船での45日間の航海、ブラジル到着後に過酷な労働へ踏み出す姿へと続く。貧しさゆえに故郷を棄てざるをえない名もなき… 移民と越境貧困労働 第1回 芥川賞