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災害

主題「災害」に分類された 21 作品。

  1. 001 2026 私的応答 してきおうとう 井戸川射子 単行本・講談社 『私的応答』は、1995年の震災を経験した銅子と、母、娘・厚美の三代に流れる時間をたどる長篇。倒れたミシン、避難所の体育館、梅田で浴びるシャワーなどの記憶は、年月を経ても日常の奥に残り続ける。忘れることと許すことの違いを、母娘の時間と震災の記憶を通して問い直す作品である。 災害記憶母と子
  2. 002 2025 熊はどこにいるの くまはどこにいるの 木村紅美 単行本・河出書房新社 『熊はどこにいるの』は、震災から7年後の地で、ショッピングモールで保護された身元不明の幼子と、暴力から逃れて山奥の家に暮らす女たちをめぐる小説です。リツ、アイ、サキ、ヒロらの視点が交錯し、保護と加害、避難場所と閉ざされた共同体の危うさを同時に浮かび上がらせる。熊という存在は、現実の脅威であると同時に… 災害暴力ジェンダー 第61回 谷崎賞
  3. 003 2025 携帯遺産 けいたいいさん 鈴木結生 単行本・朝日新聞出版 「携帯遺産」は、人気ファンタジー作家・舟暮按が自伝小説の執筆を依頼され、自分の人生の記録をたどっていく長編。実家の焼失、震災、父の失踪といった記憶を背景に、作家が「自分の人生」を小説にすることの意味を問う。出版社紹介では『ゲーテはすべてを言った』に続く作品として位置づけられ、記録、蒐集、父をめぐる探… 記憶芸術と表現父と子
  4. 004 2024 僕たちの保存 ぼくたちのほぞん 長嶋有 単行本・文藝春秋 『僕たちの保存』は、語り手のゲンさん、年上の武上さん、引きこもりの甥シンスケ、人気漫画家の亀谷さんらが、新幹線、自転車、バス、テスラを乗り継いで旅に出るロードノベル。震災被害者の形見であるMSXパソコンが、過去と現在、記憶と情報の保存をつないでいく。サブカルチャーとパソコン以後の時間を背景に、残るも… 記憶テクノロジー災害
  5. 005 2023 続きと始まり つづきとはじまり 柴崎友香 単行本・集英社 東日本大震災、熊本地震、未知の病原体の出現を背景に、別々の場所で暮らす男女三人の日常が描かれる。大きな出来事の「始まり」と「続き」は個人の生活時間のなかで重なり、誰にも同じように流れたはずの月日が、それぞれ異なる記憶として蓄積していく。複数の人物の日々を並置し、災害とパンデミック以後の時間感覚を静か… 災害記憶家族 第60回 谷崎賞
  6. 006 2022 荒地の家族 あれちのかぞく 佐藤厚志 初出・新潮 2022年12月号 宮城県亘理町の植木職人・坂井祐治、四十歳。あの「災厄」の二年後に妻を病で亡くし、再婚した相手も流産の後に家を出て、いまは老いた母と中学生の息子と暮らしている。津波という言葉を正面に掲げず「災厄」「海の膨張」と呼びながら、荒れた海辺の土地で黙々と木に向かう男の日常を描く。職を転々とする旧友や没落してい… 災害死と喪失家族 第168回 芥川賞
  7. 007 2022 ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉 ごじらしんぎゅらぽいんと 円城塔 単行本・集英社 TVアニメシリーズ『ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉』を、円城塔自身が小説として再構成した作品。2030年の千葉県逃尾市に未確認飛行生物が現れ、銀色のロボット「ジェットジャガー」との交戦、その怪鳥が「ラドン」と名付けられる出来事を起点に、逃尾市周辺で異変が広がっていく。怪獣、AI、時間や特異点を… テクノロジー災害身体
  8. 008 2021 あなたにオススメの あなたにオススメの 本谷有希子 単行本・講談社 『あなたにオススメの』は、「推子のデフォルト」「マイイベント」の二篇からなる近未来小説集。身体に超小型電子機器を埋めて複数のコンテンツを同時に摂取する推子と、災害時の「安全」な住まいに優越感を覚える渇幸の姿を通じ、アルゴリズム化した消費、育児、階層意識が日常に入り込む怖さを描く。滑稽さを帯びた語りが… テクノロジー同調圧力災害
  9. 009 2021 貝に続く場所にて かいにつづくばしょにて 石沢麻依 初出・群像 2021年6月号 コロナ禍に覆われたドイツの学術都市ゲッティンゲンで暮らす日本人留学生の「私」のもとに、東日本大震災の津波で行方不明になったはずの友人・野宮が現れる。九年前に仙台で被災した記憶と、疫病下の異国の街の現在が静かに重なり合い、惑星の名を冠した小径、聖人伝や絵画の細部、庭に埋められた様々な品をたどりながら… 死と喪失記憶災害 第165回 芥川賞
  10. 010 2021 あなたに安全な人 あなたにあんぜんなひと 木村紅美 単行本・河出書房新社 3.11直前の少年の死をめぐる出来事に苛まれる元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中の事故を抱える便利屋の忍が、「感染者第一号」を誰もが恐れる土地で出会う。二人は人を傷つけ、傷つけられる社会のなかで、孤独で安全な逃亡生活のような関係を築いていく。東日本大震災、沖縄、感染症下の共同体の視線を交差… 孤独と疎外災害同調圧力
  11. 011 2020 月の客 つきのきゃく 山下澄人 単行本・集英社 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。 孤独と疎外暴力災害
  12. 012 2018 美しい顔 うつくしいかお 北条裕子 初出・「群像」2018年6月号 東日本大震災後の避難所で暮らす高校生・沙那恵が、弟を守りながらメディアの視線にさらされる物語。災害下の身体、家族、報道される被災者像をめぐる緊張を描く。被災地の現実と表象の問題が、作品そのものの受容とも重なって読まれる。 災害家族身体
  13. 013 2018 はんぷくするもの はんぷくするもの 日上秀之 初出・「文藝」2018年冬号 東北沿岸の「赤街」を舞台に、仮設の商店で暮らす三十代の男・毅の日々を描く。津波ですべてを流された者と、被害を受けなかった者のあいだに生じる正義や負い目が、わずかなツケをめぐる攻防に凝縮される。小さな生活圏から、災害後の分断と諧謔を掘り起こす作品。 災害貧困労働 第55回 文藝賞
  14. 014 2017 影裏 えいり 沼田真佑 初出・文學界 2017年5月号 会社の出向で岩手に移り住んだ今野は、釣り仲間となった同僚・日浅にだけ心を許していた。二人で川に通った日々はやがて途絶え、日浅は何も告げずに会社を去る。そして東日本大震災の後、今野は日浅の行方を追ううちに、親しいと思っていた男のもう一つの顔に触れることになる。北国の自然や釣りの場面を丹念に描きながら… 災害死と喪失孤独と疎外 第157回 芥川賞
  15. 015 2015 持たざる者 もたざるもの 金原ひとみ 単行本・集英社 『持たざる者』は、震災後の不安の中で、東京を離れる者と残る者、四人の男女の選択を描く長編です。生活の基盤、愛情、経済的な余裕を「持つ/持たない」という感覚が、人物たちの関係を揺らします。社会の大きな不安を、恋愛や家族、都市での暮らしの手ざわりから読む作品です。 災害労働恋愛
  16. 016 2014 ボラード病 ぼらーどびょう 吉村萬壱 単行本・文藝春秋 『ボラード病』は、海辺の新興住宅地に越してきた家族が、地域の同調圧力に絡め取られていく吉村萬壱の小説です。安全や秩序を掲げる共同体が、異物を排除する病のようなものとして描かれます。寓話的な設定によって、災害後の町づくり、家族、排除の感覚が不穏に重なります。 同調圧力家族災害
  17. 017 2013 大地のゲーム だいちのゲーム 綿矢りさ 単行本・新潮社 『大地のゲーム』は、大震災後の近未来の大学キャンパスを舞台に、次の揺れを待つ若者たちを描く綿矢りさの長篇です。災害は出来事として終わらず、身体感覚や人間関係の底に残り続けます。青春小説の形を取りながら、世界の足場が割れる感覚を言葉にする作品です。 災害青春身体
  18. 018 2013 想像ラジオ そうぞうらじお いとうせいこう 初出・「文藝」掲載後、2013年3月河出書房新社より単行本刊行 海沿いの町で高い杉の木のてっぺんに引っかかっているDJアークが、想像の電波を使ってリスナーに語りかける小説。届くメールやリクエストを読み上げながら、どうしても聞きたいひとつの声へ向かっていく。震災後の死者と生者、声と想像力をめぐる、ラジオ番組形式の物語である。 災害死と喪失言葉と言語 第35回 野間新人賞
  19. 019 2011 恋する原発 こいするげんぱつ 高橋源一郎 単行本・講談社 『恋する原発』は、東日本大震災後の言葉とメディアを、チャリティーAV制作という挑発的な設定から問い直す高橋源一郎の小説です。笑いや猥雑さを含む語りは、災害をきれいな物語に回収することへの抵抗として働きます。性、表現、原発事故後の社会を同時に扱うメタフィクションです。 災害芸術と表現
  20. 020 2011 スウィート・ヒアアフター スウィート・ヒアアフター 吉本ばなな 単行本・幻冬舎 『スウィート・ヒアアフター』は、事故で恋人を失った女性が、喪失の後の時間を生き直していく吉本ばななの小説です。既存データでは震災後の再生の感覚も示されており、個人の死別と社会全体の傷が重ねて読めます。やわらかな文体のなかで、痛切さと回復への気配が共存します。 死と喪失恋愛災害
  21. 021 2000 神の子どもたちはみな踊る かみのこどもたちはみなおどる 村上春樹 単行本・新潮社 阪神・淡路大震災後の空気を背景にした六篇の連作短編集。大きな災害を直接描き尽くすのではなく、喪失や不安を抱えた人々の生活に、寓話や偶然の形で揺れを響かせる。「かえるくん、東京を救う」など、現実と幻想の境目を軽やかに越える短篇が含まれる。 災害死と喪失孤独と疎外