Setting

舞台「山」に分類された 24 作品。

  1. 001 2025 彼の左手は蛇 かれのひだりてはへび 中村文則 単行本・河出書房新社 『彼の左手は蛇』は、仕事を辞め、女性と別れて、蛇信仰の残る土地に来た男が「この手記」を書くところから展開する小説です。白蛇を祀る神社、毒蛇狩り、議員の死、刑事、謎めいた人物たちが絡み、蛇のイメージが信仰・恐怖・罪悪感・暴力の記憶を結びつけていく。手記形式の語りは、書くことそのものの危うさを含みながら… 暴力信仰記憶
  2. 002 2025 熊はどこにいるの くまはどこにいるの 木村紅美 単行本・河出書房新社 『熊はどこにいるの』は、震災から7年後の地で、ショッピングモールで保護された身元不明の幼子と、暴力から逃れて山奥の家に暮らす女たちをめぐる小説です。リツ、アイ、サキ、ヒロらの視点が交錯し、保護と加害、避難場所と閉ざされた共同体の危うさを同時に浮かび上がらせる。熊という存在は、現実の脅威であると同時に… 災害暴力ジェンダー 第61回 谷崎賞
  3. 003 2024 あきらめる あきらめる 山崎ナオコーラ 単行本・小学館 『あきらめる』は、近所の川沿いを歩く早乙女雄大が、入院中の大切な人との時間や家を出た家族のことを抱えながら、親子風の二人組と出会う長編。火星移住が身近になった近未来を背景に、彼らと「オリンポス山」を目指す展開へ進む、現実の悩みとゆるいSF的飛躍が混ざる作品である。題名の「あきらめる」を敗北ではなく「… 家族アイデンティティ
  4. 004 2024 バリ山行 バリさんこう 松永K三蔵 初出・群像 2024年3月号 転職して関西の建物修繕会社に入った波多は、社内の親睦登山をきっかけに六甲山に通うようになる。やがて、職人気質で社内では変人扱いされるベテラン社員・妻鹿が、整備された登山道を外れ、地図を読みながら道なき道を行く「バリ山行(バリエーションルートの登山)」を独りで続けていることを知る。会社の経営が傾き、リ… 労働孤独と疎外身体 第171回 芥川賞
  5. 005 2020 踏み跡にたたずんで ふみあとにたたずんで 小野正嗣 単行本・毎日新聞出版 『踏み跡にたたずんで』は、毎日新聞大分県版連載をもとに、土地と人々の記憶をめぐる36篇を収めた掌編小説集。掩体壕、赤い波、磨崖仏、港、道の駅、診療所など、場所や物の名を起点に、戦争の痕跡、伝説、老い、自然との遭遇が短い物語として立ち上がる。現実と幻の境目をあいまいにする語りで、土地に残る見えない記憶… 記憶戦争死と喪失
  6. 006 2020 月の客 つきのきゃく 山下澄人 単行本・集英社 親や社会から守られなかった少年トシと少女サナ、そして犬の時間をたどる長編。集英社公式は、どこから読んでもよい構成と通読の呪いを解く書として紹介しており、山下澄人の文体実験が物語そのものの主題になっている。暴力、死、災害、老いをめぐる生の断片が、直線的なあらすじよりも体験の積み重なりとして読ませる。 孤独と疎外暴力災害
  7. 007 2019 かか かか 宇佐見りん 初出・文藝 2019年秋季号 19歳の浪人生うーちゃんは、離婚を機に心を病み、酒に酔っては荒れる母「かか」と、弟とともに暮らしている。かかを誰より愛しながらその存在に苦しむうーちゃんは、かかの痛みが自分の身体にも及ぶような一体感のなかで、「自分がかかを生み直すしかない」という切実な祈りを抱え、ひとり熊野へと旅に出る。SNSの裏ア… 母と子家族 第33回 三島賞
  8. 008 2019 ウナノハテノガタ うなのはてのがた 大森兄弟 単行本・中央公論新社 海の民の少年オトガイは父からある役目を引き継ぎ、山の民の少女マダラコは生贄の儀式から逃れて山を下りる。中央公論新社の文庫版公式ページは、二人の出会いからすべてが始まる「原始の物語」として紹介している。共同体の掟、信仰、暴力、出会いによる世界の更新を、神話や寓話に近い距離感で描く作品。 信仰暴力家族
  9. 009 2018 鏡のなかのアジア かがみのなかのあじあ 谷崎由依 単行本・集英社 チベット、台湾、クアラルンプール、京都など、アジアの土地をモチーフにした全5篇の幻想短篇集。集英社公式は、少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、台湾・九份の村を舞台にする「Jiufenの村は九つぶん」、熱帯雨林の巨樹であった過去を持つ男を描く「天蓋歩行」などを挙げている。翻… 移民と越境言葉と言語記憶
  10. 010 2008 射手座 いてざ 上村渉 初出・文學界 2008年12月号 日系ブラジル人の語り手が、妹ルシアに関わる謎めいた男・加賀芳明と向き合う。妹の万引きに関わった加賀は、やがて妹が遺棄した赤ん坊について語り出し、赤ん坊を運んで山道をひとりさまよう。語り手が加賀から聞いた話を伝聞のかたちで重ねていく重層的な構造により、何が真実かは最後まで曖昧なまま、登場人物の誰ひとり… 移民と越境孤独と疎外死と喪失 第107回 文學界新人賞
  11. 011 2003 ジャージの二人 じゃーじのふたり 長嶋有 単行本・集英社 仕事や家庭から少し離れた父と息子が、山の別荘で同じようなジャージを着て夏を過ごす。大きな事件の代わりに、食事、虫、テレビ、会話の間合いといった細部が積み重なり、親子でありながらどこか他人同士でもある二人の距離が浮かび上がる。長嶋有らしい、脱力したユーモアと静かな寂しさが同居する作品。 家族父と子労働
  12. 012 2002 王国 その1 アンドロメダ・ハイツ おうこく そのいち アンドロメダ・ハイツ 吉本ばなな 単行本・新潮社 山奥で祖母と暮らした雫石が、都会で占い師の助手となる「王国」シリーズ第一作。自然の記憶、都市での仕事、スピリチュアルな感受性が交差し、傷ついた人が別の居場所を作る過程を描く。吉本ばなならしい癒やしと不思議さが、生活の手ざわりと結びつく。 記憶労働孤独と疎外
  13. 013 1994 首飾り くびかざり 雨森零 初出・「文藝」1994年 文藝時評で「カポーティを思わせる才能」と絶賛されたデビュー作。山形県文学全集にも収録された。 青春孤独と疎外地方 第31回 文藝賞
  14. 014 1993 燃えあがる緑の木 もえあがるみどりのき 大江健三郎 単行本・新潮社 四国の森の村で「救い主」と呼ばれる青年をめぐる魂の救済を描く三部作(1993〜95年刊)。 信仰地方
  15. 015 1993 暗い森を抜けるための方法 くらいもりをぬけるためのほうほう 足立浩二 初出・「群像」1993年6月号(第36回優秀作、木地雅映子と同時受賞) 『暗い森を抜けるための方法』は、足立浩二が第36回群像新人文学賞の小説優秀作となった作品です。NDLでは『群像』1993年6月号と受賞発表記事を確認しました。暗い森を抜けるという題名が示す閉塞と脱出のイメージは明確ですが、具体的な筋は未確認です。 孤独と疎外青春簡潔な文体
  16. 016 1993 骸骨山脈 がいこつさんみゃく 野間井淳 初出・「新潮」1993年11月号 『骸骨山脈』は、野間井淳が第25回新潮新人賞を受賞した作品です。NDLでは『新潮』1993年11月号と受賞作発表記事を確認できますが、具体的な筋や書評は今回確認できませんでした。題名の死や山岳のイメージを手がかりにした分類は暫定です。 死と喪失身体簡潔な文体 第25回 新潮新人賞
  17. 017 1987 愛と幻想のファシズム あいとげんそうのファシズム 村上龍 単行本・講談社 経済危機に揺れる日本を舞台に、狩猟者トウジがカリスマ的な政治運動を率いていく長編。金融、メディア、暴力、共同体の欲望が絡み合い、個人の野性や身体性が国家的な幻想へ接続されていく過程を描く。近未来政治小説の形を取りながら、1980年代末の消費社会と権力への不安を大きなスケールで物語化した作品。 暴力アイデンティティテクノロジー
  18. 018 1987 懐かしい年への手紙 なつかしいとしへのてがみ 大江健三郎 単行本・講談社 語り手が導き手である「ギー兄さん」との関係をたどりながら、自分の文学的半生と故郷の森の記憶を再構成する自伝的長編。私小説の形式を借りながら、実際には作家自身と架空の人物をずらし、記憶・読書・共同体の物語を重ねていく。ダンテを媒介に、帰郷できない作家が森の村と文学の場所を問い直す。 記憶芸術と表現アイデンティティ
  19. 019 1986 M/Tと森のフシギの物語 エムティーともりのフシギのものがたり 大江健三郎 単行本・岩波書店 四国の森に伝わる物語を、M=母権的な存在とT=トリックスター的な存在の対立・変奏として語る長編。村の伝承、神話、人類学的な型を組み合わせ、作家の幼年期の森を大きな物語装置へ変えていく。短い断章を積み重ねる構成で、個人の記憶と共同体の神話が互いに照らし合う。 記憶アイデンティティ家族
  20. 020 1982 羊をめぐる冒険 ひつじをめぐるぼうけん 村上春樹 単行本・講談社 広告代理店で働く「僕」は、耳に星形の斑紋を持つ謎の羊を探すよう依頼され、ガールフレンドとともに北海道へ向かう。右派の大物、秘書、羊男、そして姿を消した鼠の痕跡が重なり、探偵小説めいた筋立ては次第に幻想と喪失の物語へ変質していく。初期の軽やかな一人称の語りを保ちながら、政治的な力、戦後の記憶、個人の空… 記憶孤独と疎外アイデンティティ 第4回 野間新人賞
  21. 021 1979 同時代ゲーム どうじだいゲーム 大江健三郎 単行本・新潮社 四国の森の谷間にある「村=国家=小宇宙」を、手紙・神話・歴史の断片を重ねて語り直す実験的長編。語り手は村の起源、反乱、血縁、移住の記憶を再編し、個人の物語ではなく共同体が自分自身を語る仕組みそのものを小説化する。大江の森の神話と戦後政治への問いが、濃密な語りの構造として展開される。 記憶アイデンティティ暴力
  22. 022 1967 万延元年のフットボール まんえんがんねんのフットボール 大江健三郎 単行本・講談社 友人の死と家族の危機を抱えた蜜三郎が、弟の鷹四とともに四国の谷間の村へ戻り、百年前の一揆の記憶と向き合う長編。兄弟の対立、障害をもつ子の存在、共同体に残る暴力の記憶が、過去と現在を重ねる構成の中で展開する。閉ざされた村落を神話的な舞台として、個人史と共同体史、政治的熱狂と責任の問題を絡み合わせた大江… 家族記憶暴力 第3回 谷崎賞
  23. 023 1958 芽むしり仔撃ち めむしりこうち 大江健三郎 単行本・講談社 戦争末期、感化院の少年たちが山村へ移送され、疫病を恐れた村人たちに置き去りにされる初長編。少年たちは閉ざされた村で短い自治と連帯を作ろうとするが、共同体の暴力と大人たちの保身によってその世界は崩れていく。少年の身体感覚に近い切迫した語りで、戦時下の排除、無垢の破壊、周縁に追いやられた者たちの一瞬の自… 戦争暴力青春
  24. 024 1958 飼育 しいく 大江健三郎 初出・文學界 1958年1月号 戦争末期、外界から隔てられた山間の寒村に米軍機が墜落し、生き残った黒人兵が捕虜として捕らえられる。県の指示が出るまで村で「飼う」ことになった黒人兵に食事を運ぶ役を担った少年「僕」は、言葉の通じない相手とのあいだに、獣を飼い馴らすような、しかし確かな親密さを育てていく。子どもたちの祝祭めいた共生の日々… 戦争暴力青春 第39回 芥川賞